しかしながら、第1、第2および第3の従来例においては、いずれも、窒化ガリウム系化合物半導体層から成る半導体層51bおよび半導体層51c、ならびに窒化ガリウム系化合物半導体層51を、エピタキシャル成長させるために窒化ガリウム系化合物半導体層51と基板54との間に介在させるバッファー層が、アルミニウムおよびガリウムのいずれかを含有していないかまたはアルミニウムおよびガリウムを一部分にしか含有していなかったために、半導体層51bまたは半導体層51cの禁制帯幅が比較的に小さくなって紫外光等の短波長側の光に対する吸収が大きくなってしまうので、紫外光に対する半導体層51の透過率が小さくなってしまって半導体層51のいずれかの主面側から取り出される紫外光の光取り出し効率をあまり高くすることができないという問題点があった。
また、第1の従来例においては、基板54に形成された反射層55により反射した光が光取り出し面である透明電極56側に向かうために基板54中を伝搬する際に基板54に吸収されてしまうために、反射層55により光を反射させても発光素子全体の光取り出し効率があまり改善されないという問題点があった。また、反射層55により反射した光の一部が基板54の表裏面で多重反射されて基板54内に閉じ込められ、光取り出し面である透明電極56側から取り出される前に減衰してしまうため、発光素子全体の光取り出し効率があまり改善されないという問題点があった。さらに、光取り出し面に電極パッド57が設けられ、その電極パッド57に電気的に導通をとるための導線等が接続されるために、電極パッド57や導線等が窒化ガリウム系化合物半導体層51からの光を遮ってしまい、その結果、光取り出し効率を低下させてしまうという問題点もあった。
また、第2の従来例においては、反射層58の上に窒化ガリウム系化合物半導体層51を結晶成長させるためには、反射層58の反射効率を高くすることが難しかったり、反射する光の波長を限定してしまったりするために、反射層58による発光素子全体の光取り出し効率があまり改善されないという問題点があった。また、光取り出し面に電極パッド57が設けられ、その電極パッド57に電気的に導通をとるための導線等が接続されるために、電極パッド57や導線等が窒化ガリウム系化合物半導体層51からの光を遮ってしまい、その結果、光取り出し効率を低下させてしまうという問題点もあった。
また、第3の従来例においては、窒化ガリウム系化合物半導体層51上に形成された反射層52により反射した光が光取り出し面である透明導電膜56側に向かうために基板54中を伝搬する際に基板54に吸収されてしまうために、反射層52により光を反射させても発光素子全体の光取り出し効率があまり改善されないという問題点があった。また、反射層52により反射した光の一部が基板54の表裏面で多重反射されて基板54内に閉じ込められ、光取り出し面である透明導電膜56側から取り出される前に減衰してしまうため、発光素子全体の光取り出し効率があまり改善されないという問題点があった。
また、従来の発光素子の製造方法においては、半導体層51をエピタキシャル成長させる基板として、窒化ガリウム系化合物半導体と格子定数が大きく異なるサファイア、SiC、Si、GaAs等の単結晶基板が用いられていたことから、バッファー層やその上に形成される窒化ガリウム系化合物半導体層として良好な結晶品質であるアルミニウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体(一般式AlxGa1−xN;0<x<1)層を形成することが困難であるという問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、紫外光の光取り出し効率がより大きく改善され、その結果、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能な発光素子およびその高性能な発光素子を確実に作製することができる発光素子の製造方法ならびにその高性能な発光素子を用いた照明装置を提供することにある。
本発明の発光素子は、化学式Ga1−x−yInyAlxN(ただし、0<x+y<1,x>0,y≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型半導体層と、該第1導電型半導体層上に形成された、化学式Ga1−x”−y”Iny”Alx”N(ただし、0<x”+y”<1,x”>0,y”≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層と、該発光層上に、該発光層と接する第1領域および前記発光層と接しない第2領域からなる下面を有するように形成された、化学式Ga1−x’−y’Iny’Alx’N(ただし、0<x’+y’<1,x’>0,y’≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型半導体層と、を備え、エピタキシャル成長させるために用いた基板が前記第2導電型半導体層の上面から除去された窒化ガリウム系化合物半導体層(ただし、x,x’>x”,y,y’≦y”とする。)と、前記第1導電型半導体層の下面に形成された導電性反射層と、前記第2導電型半導体層の前記第2領域に形成され、前記第2導電型半導体層に電気的に接続された導電層と、前記第2導電型半導体層の上面に形成された、基部より頂部が小さくなっている多数の突起または多数の窪みを有している反射防止層とを具備することを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記突起は、前記基部の幅が、前記発光層で発生した光の窒化ガリウム系化合物半導体層における波長に対して1倍以下で形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記突起は、前記基部から前記頂部までの高さが、前記発光層で発生した光の窒化ガリウム系化合物半導体層における波長に対して1倍以上に形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記突起または前記窪みは、前記第2導電型半導体層の上面に隙間なく形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記導電性反射層は、前記第1導電型半導体層の上面全体に設けられていることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記窒化ガリウム系化合物半導体層は、平面視して、円形状であることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、前記窒化ガリウム系化合物半導体層は、前記第1導電型半導体層側の中央部に前記第1導電型半導体層および前記発光層を貫通する凹部が形成されており、該凹部は、側部に形成された、前記発光層に沿って伝搬してきた光を前記第2導電型半導体層側の主面に反射する斜面を有していることを特徴とするものである。
また、本発明の発光素子は、上記各構成において、前記導電層は、前記凹部の底部において前記第2導電型半導体層の前記第2領域に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明の照明装置は、上記各構成の本発明の発光素子と、この発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体および燐光体の少なくとも一方とを具備することを特徴とするものである。
本発明の発光素子によれば、化学式Ga1−x−yInyAlxN(ただし、0<x+y<1,x>0,y≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型半導体層と、化学式Ga1−x’−y’Iny’Alx’N(ただし、0<x’+y’<1,x’>0,y’≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型半導体層との間に、化学式Ga1−x”−y”Iny”Alx”N(ただし、0<x”+y”<1,x”>0,y”≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層が挟まれて接合されている窒化ガリウム系化合物半導体層(ただし、x,x’>x”,y,y’≦y”とする。)と、該窒化ガリウム系化合物半導体層の前記第1導電型半導体層側の主面に形成された導電性反射層と、前記第2導電型半導体層に電気的に接続された導電層とを具備することから、少なくとも第1および第2導電型半導体層がアルミニウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であるため、第1および第2導電型半導体層における禁制帯幅が比較的大きくなり、第1および第2導電型半導体層における紫外光等の短波長側の光の吸収を小さくすることができる。また、導電性反射層が発光層で発生させた紫外光を第2導電型半導体層側に良好に反射するため、第1および第2導電型半導体層を透過させるとともに第2導電型半導体層側の方向に集中させて効率良く紫外光を取り出すことができる。これら第1および第2導電型半導体層ならびに導電性反射層の連係した働きによって窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面から取り出される紫外光の光取り出し効率を高くすることができるので、紫外光の光取り出し効率がより大きく改善され、その結果、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能な発光素子となる。
また、本発明の発光素子によれば、前記窒化ガリウム系化合物半導体層の前記第2導電型半導体層側の主面が前記窒化ガリウム系化合物半導体層をエピタキシャル成長させるために用いた基板または該基板およびバッファー層が除去された面かまたはこの面がエッチングされて形成された新たな面であるときには、導電性反射層と基板が除去された面またはこの面がエッチングされて形成された新たな面とが連係して、発光層から出射された光を窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面に反射し、その反射した光を窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面から基板に吸収されることなく出射する働きをするため、発光層の内部で発生した光を発散させずに第2導電型半導体層側の方向に集中させてさらに効率良く取り出すことができるので窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面からの光取り出し効率がより大きく改善され、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。また、発光素子をバンプ電極等を介して基台等に加熱してフリップチップ実装する際に、従来は窒化ガリウム系化合物半導体層と基板との熱膨張係数の差により窒化ガリウム系化合物半導体層に応力が加わるため基板と窒化ガリウム系化合物半導体層との間に剥がれが生じたり、窒化ガリウム系化合物半導体層に歪みが発生したりすることにより発光素子の信頼性が低下するという問題点があったが、本発明の発光素子によれば、基板が除去されているため、発光素子をフリップチップ実装する際に窒化ガリウム系化合物半導体層に応力が加わることなく、窒化ガリウム系化合物半導体層の歪み等を少なくできることにより信頼性の高いものとなる。
また、本発明の発光素子によれば、窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面に反射防止層が形成されているときには、基板が除去された面(第2導電型半導体層側の主面)に形成された反射防止層により、窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面に到達する窒化ガリウム系化合物半導体層の内部で発生した光を窒化ガリウム系化合物半導体層の第1導電型半導体層側の主面に反射することなく透過させることができるため、窒化ガリウム系化合物半導体層の内部で多重反射することにより減衰する光を減らして窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面から効率良く光を取り出すことができるので、さらに光取り出し効率の向上した高性能な発光素子となる。また、反射防止層をエピタキシャル成長によらずに設けることができるため、反射防止層に用いる材料や作製プロセスを光学的な見地から種々選択することができるので、反射防止層を透過する光の透過特性が向上するように反射防止層の屈折率や表面形状等を適切なものとしてさらに光取り出し効率の向上した高性能なものとなる。
また、本発明の発光素子によれば、上記構成において、反射防止層は、主面に基部より頂部が小さくなっている多数の突起または多数の窪みを有しているときには、突起または窪みが、反射防止層に斜め方向から入射する光に対しても、突起または窪みの表面に入射する光の入射角を臨界角より大きくして反射を防ぐ働きをするため、反射防止層に斜め方向から入射する光を透過させることができ、反射防止層を透過させることができる反射防止層に対する光の入射角の範囲を広くすることができるので、さらに光取り出し効率の向上した高性能なものとなる。また、突起または窪みは光の出射方向に対して屈折率を連続的に変化させて、窒化ガリウム系化合物半導体層が有している高い屈折率から空気等の低い屈折率まで除々に減少させる働きも有しているため、光の出射方向に対する反射率自体を下げる効果も有しており、光取り出し効率のさらに向上した高性能な発光素子となる。
また、本発明の発光素子によれば、窒化ガリウム系化合物半導体層は、円形状であるときには、発光層で発生した光のうち発光層に沿って放射状に伝搬する光の円形状の端面に対する臨界角を広げることができ、その光をその端面から外側に透過させやすくすることができるため、発光層に沿って窒化ガリウム系化合物半導体層の外周の端面からも紫外光を効率よく取り出すことができるので、窒化ガリウム系化合物半導体層からの光取り出し効率がさらに大きく改善され、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。
また、本発明の発光素子によれば、窒化ガリウム系化合物半導体層は、第1導電型半導体層側の中央部に第1導電型半導体層および発光層を貫通する凹部が形成されており、凹部は、側部に形成された、発光層に沿って伝搬してきた光を第2導電型半導体層側の主面に反射する斜面を有しているときには、窒化ガリウム系化合物半導体層の中央部に形成された凹部の斜面が、発光層に沿って窒化ガリウム系化合物半導体層の外周の端面へ伝搬する光の一部がその端面で反射しても、その端面で反射してその中央部に戻ってきた光を第2導電型半導体層側の主面に反射する働きをするため、発光層に沿って伝搬し窒化ガリウム系化合物半導体層の中央部に集光された光を窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型反動層側の主面から取り出すことができるので、窒化ガリウム系化合物半導体層の第2導電型半導体層側の主面からの光取り出し効率がより大きく改善され、さらに小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。
また、本発明の発光素子は、上記構成において、導電層は、凹部の底部において第2導電型半導体層に電気的に接続されているときには、第2導電型半導体層に電気的に接続される導電層が、窒化ガリウム系化合物半導体層に対して第1導電型半導体層に電気的に接続される導電性反射層と同じ側の主面に配置されることとなるため、導電層および導電性反射層を両方とも窒化ガリウム系化合物半導体層の第1導電型半導体層側で接続することができるので、フリップチップ実装等に適した発光素子となる。
また、本発明の照明装置によれば、上記構成の本発明の発光素子と、この発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体および燐光体の少なくとも一方とを具備することから、小さい電力で良好な発光強度を有する発光素子の光により蛍光体または燐光体を強く励起するため、小さい電力で良好な照度を得ることができるものとなる。また、このような本発明の照明装置は、従来の蛍光灯や放電灯等よりも省エネルギー性や小型化に優れたものとなり、蛍光灯や放電灯等よりも優れた照明装置となる。
以下、本発明の発光素子およびその製造方法ならびにその発光素子を用いた照明装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の発光素子の実施の形態の一例である発光素子L1を示す模式的な断面図である。また、図2の(a)〜(h)は、それぞれ発光素子の製造方法の各工程を示す模式的な断面図である。また、図3は本発明の発光素子の実施の形態の他の例である発光素子L2を示す模式的な平面図である。また、図4は図3に示す発光素子L2の模式的な断面図である。図5は、本発明の照明装置の実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。
図1〜図4において、1,11は窒化ガリウム系化合物半導体層であり、1a,11aは発光層、1b,11bは第1導電型半導体層、1c,11cは第2導電型半導体層、1b1,11b1は窒化ガリウム系化合物半導体層1,11の第1導電型半導体層側の主面(一方主面)、1c1,11c1は窒化ガリウム系化合物半導体層1,11の第2導電型半導体層側の主面(他方主面)であり、2,12は導電性反射層、3,13は導電層、4,14は窒化ガリウム系化合物半導体層1,11をエピタキシャル成長するための基板、5,15は反射防止層であり、5a,15aは反射防止層5,15の頂部、5b,15bは基部であり、6a,6b,16a,16bはバンプ電極、7は保護膜である。
また、図5において、18は反射部材、18aは反射部材18の反射面、19は蛍光体、20は絶縁性基台、21a,21bは導体パターンである。
図1に示す本発明の発光素子の実施の形態の一例である発光素子L1は、化学式Ga1−x−yInyAlxN(ただし、0<x+y<1,x>0,y≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型半導体層1bと、化学式Ga1−x’−y’Iny’Alx’N(ただし、0<x’+y’<1,x’>0,y’≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型半導体層1cとの間に、化学式Ga1−x”−y”Iny”Alx”N(ただし、0<x”+y”<1,x”>0,y”≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層1aが挟まれて接合されている窒化ガリウム系化合物半導体層1(ただし、x,x’>x”,y,y’≦y”とする。)と、この窒化ガリウム系化合物半導体層1の第1導電型半導体層1b側の主面(一方主面)1b1に形成された導電性反射層2と、第2導電型半導体層1cに電気的に接続された導電層3とを具備する構成である。
さらに具体的には、この構成において、第1導電型半導体層1bおよび第2導電型半導体層1cは、それぞれp型半導体層およびn型半導体層としている。窒化ガリウム系化合物半導体をp型半導体とするには、原子周期律表において2族の元素である例えばマグネシウム(Mg)等をドーパントとして窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。また、窒化ガリウム系化合物半導体をn型半導体とするには、原子周期律表において4族の元素である例えばシリコン(Si)等をドーパントととして窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。また、第1導電型半導体層1bおよび第2導電型半導体層1cは両方ともアルミニウム(Al)を含む窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとし、いずれも発光層1aに含まれるアルミニウムよりも含有量を多くする。このようにすると、第1および第2導電型半導体層1b,1cの禁制帯幅が両方とも発光層1aの禁制帯幅よりも大きくなるから、発光層1aに電子と正孔とを閉じ込めてこれら電子と正孔とを効率良く再結合させて強い発光強度で発光させることができる。また、第1および第2導電型半導体層1b,1cは、アルミニウムを含んだ窒化ガリウム系化合物半導体層とすることにより、第1および第2導電型半導体層1b,1cにおける禁制帯幅が比較的大きくなり、第1および第2導電型半導体層1b,1cにおける紫外光等の短波長側の光の吸収を小さくすることができる。なお、第1導電型半導体層1bおよび第2導電型半導体層1cはそれぞれn型半導体層およびp型半導体層としても構わない。
また、発光層1aにおける窒化ガリウム系化合物半導体の組成は、所望の発光波長から適当なものに設定すればよい。例えば、アルミニウムもインジウムも含まないGaNからなる発光層1aとすれば、禁制帯幅は約3.4エレクトロンボルト(eV)となり発光層1aにおいて365ナノメートル(nm)程度の発光波長である紫外光を発光させることができる。また、これよりも発光波長を短波長とする場合、発光層1aは、禁制帯幅を大きくする要素であるアルミニウムを発光波長に応じて多く含ませた窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとすればよい。また、発光層1aに禁制帯幅を小さくなる要素であるインジウム(In)を含有させてもよくて、所望の発光波長となるようにアルミニウムをより多く含有させる等してアルミニウム、インジウムおよびガリウムの組成比を適当に設定すればよい。また、発光層1aは禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とから成る量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された超格子である多層量子井戸構造(MQW)としてもよい(図示せず)。
また、導電性反射層2は、発光層1aが発生した紫外光を損失なく反射し、かつ第1導電型半導体層1b(p型半導体層)と良好なオーミック接続がとれる材質から成る表面が滑らかな層状のものを用いる。そのような材質のものとしては、例えばアルミニウム(Al),チタン(Ti),ニッケル(Ni),クロム(Cr),インジウム(In),錫(Sn),モリブデン(Mo),銀(Ag),金(Au),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),バナジウム(V),白金(Pt),鉛(Pb),ベリリウム(Be),酸化錫(SnO2),酸化インジウム(In2O),酸化インジウム錫(ITO),金・シリコン合金(Au−Si),金・ゲルマニウム合金(Au−Ge),金・亜鉛合金(Au−Zn),金・ベリリウム合金(Au−Be)等の薄膜を用いればよい。中でも、アルミニウム(Al)または銀(Ag)は、窒化ガリウム系化合物半導体層1の発光層1aが発光する紫外光に対して反射率が高いので好適である。また、アルミニウム(Al)はp型半導体層とのオーミック接合の点でも特に好適である。また、上記材料の中から複数を選択した複数層を積層しても構わない。なお、導電性反射層2の表面は必ずしも完璧に滑らかでなくてもよいが、滑らかでないと反射率が低下することがあるので注意を要する。
また、導電層3は、第2導電型半導体層1c(n型半導体層)と良好なオーミック接続がとれる材質から成る表面が滑らかな層状のものを用いる。そのような材質のものとしては、例えばアルミニウム(Al),チタン(Ti),ニッケル(Ni),クロム(Cr),インジウム(In),錫(Sn),モリブデン(Mo),銀(Ag),金(Au),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),バナジウム(V),白金(Pt),鉛(Pb),タングステン(W),酸化錫(SnO2),酸化インジウム(In2O),酸化インジウム錫(ITO),金・シリコン合金(Au−Si),金・錫合金(Au−Sn),金・ゲルマニウム合金(Au−Ge),インジウム・アルミニウム合金(In−Al)等の薄膜を用いればよい。
なお、図1においては、第2導電型半導体層1cに発光層1a,第1導電型半導体層1bが形成されていない領域を設け、この領域に導電層3を形成している。このように、導電層3は第2導電型半導体層1cの主面(他方主面)1c1側と反対の面に形成することが好ましい。なぜなら、光取り出し面の一部を導電層3により遮ることがなくなるとともに、発光素子L1を基台等に実装する際に導電性反射層2と導電層3とが同じ向きに形成されていることで、実装が容易になるからである。
上記構成において、導電性反射層2は、導電性反射層2と導電層3とに順方向バイアス電圧を印加することによって窒化ガリウム系化合物半導体層1にバイアス電流を流して発光層1aで波長365ナノメートル(nm)程度の紫外〜近紫外光を発生させるとともに、発光層1aから出射されたその紫外〜近紫外光の内、導電性反射層2側に発する光を窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1側に反射する働きをする。このようにして、本発明の発光素子L1は、窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1側からその紫外〜近紫外光が取り出されるように動作する。
このように、本発明の発光素子によれば、少なくとも第1および第2導電型半導体層1b,1cがアルミニウム(Al)を含む窒化ガリウム系化合物半導体であるため、第1および第2導電型半導体層1b,1cにおける禁制帯幅が比較的大きくなり、第1および第2導電型半導体層1b,1cにおける紫外光等の短波長側の光の吸収を小さくすることができる。また、導電性反射層2が発光層1aで発生させた紫外光を第2導電型半導体層1c側に良好に反射するため、第1および第2導電型半導体層1b,1cを透過させるとともに第2導電型半導体層1c側の方向に集中させて効率良く紫外光を取り出すことができる。これら第1および第2導電型半導体層1b,1cならびに導電性反射層2の連係した働きによって窒化ガリウム系化合物半導体層1の第2導電型半導体層1c側の主面(他方主面)1c1から取り出される紫外光の光取り出し効率を高くすることができるので、紫外光の光取り出し効率がより大きく改善され、その結果、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる。
また、図1に示すように、本発明の発光素子L1は、窒化ガリウム系化合物半導体層1の第2導電型半導体層1c側の主面である他方主面1c1が窒化ガリウム系化合物半導体層1をエピタキシャル成長させるために用いた基板4またはその基板4およびバッファー層(図示せず)が除去された面かまたはこの面がエッチングされて形成された新たな面とすることが好ましい。このようにすれば、他方主面1c1に接合しているエピタキシャル成長させるために用いた基板4が除去されているために、他方主面1c1側に取り出される紫外〜近紫外光のその基板4による吸収損失をなくすことができるので、発光層1aで発生させた紫外〜近紫外光を窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1側に一層効率よく取り出すことができるので、窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1側からの紫外光の光取り出し効率がさらに大きく改善され、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。
また、図1に示すように、本発明の発光素子L1は、窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1に反射防止層5を形成してもよく、さらにこの反射防止層5は、主面に基部5bより頂部5aが小さくなっている多数の突起または窪みを有するものとすることが好ましい。
反射防止層5は、窒化ガリウム系化合物半導体層1において基板4を除去した面に、例えば石英(SiO2),アルミナ(Al2O)またはポリカーボネート等の誘電体を単層もしくは多層形成としてもよい(図1の構成とは異なる)。この場合、窒化ガリウム系化合物半導体層1側から次第に屈折率が小さくなるようにしたり、反射防止層5の膜厚を発光層1aで発生した紫外〜近紫外光の反射防止層5内における波長の4分の1程度となるようにしたりすればよい。なぜなら、反射防止層5内において多重反射する光が互いに弱め合って干渉しやすくなり、定在波が発生しにくくなるからである。
上記のように反射防止層5を設けたときには、反射防止層5により、窒化ガリウム系化合物半導体層1の内部で発生した紫外〜近紫外光を窒化ガリウム系化合物半導体層1の一方主面1b1側に反射することなく透過させることができるため、窒化ガリウム系化合物半導体層1の内部で多重反射することにより減衰する光を減らして窒化ガリウム系化合物半導体層1の一方主面1b1側に効率良く光を取り出すことができるので、本発明の発光素子L1の光取り出し効率をさらに向上させることができる。また、基板4が除去されているため、その面にエピタキシャル成長によらずに反射防止層5を設けることができるので、反射防止層5に用いる材料や作製プロセスを光学的な見地から種々選択することができるという利点もあり、反射防止層5を透過する光の透過特性が向上するように反射防止層5の屈折率や表面形状等を適切なものとして基板4が除去された面側からの光取り出し効率をさらに向上させることもできる。
また、このような反射防止層5に対して主面に基部5bより頂部5aが小さくなっている突起または窪みを形成してもよい。このような反射防止層5の突起または窪みの構造は、具体的には、多角錐状または円錐状のものとすればよい。なお、多角錐状または円錐状とは、多角錐および円錐に加えて多角錐または円錐の斜面が任意の断面において変曲点を持たない曲線となっているようなものも含むものとする。また、多角錐状および円錐状のいずれかのものに対してその頂部5aを平面状としたものとしても構わない。また、反射防止層5は半球状としても構わない。半球状とは、半球に加えて半球の斜面が任意の断面において変曲点を持たない曲線となっているようなものも含むものとする。また、基部5bの幅は、発光層1aで発生した紫外〜近紫外光の窒化ガリウム系化合物半導体層1における波長に対して1倍以下とし、基部5bから頂部5aまでの高さはその1倍以上とすればよい。
このような突起または窪みは、写真蝕刻技術と乾式もしくは湿式エッチング技術とを用いてエッチングすることにより形成すればよい。さらに、窒化ガリウム系化合物半導体層1において基板4を除去した面を写真蝕刻技術と乾式もしくは湿式エッチング技術とを用いてエッチングすることにより窒化ガリウム系化合物半導体層1の一部(第2導電型半導体層1cの一部)にこのような突起または窪みを形成してもよい。この場合、窒化ガリウム系化合物半導体層1を厚さ方向で見たときに、突起または窪みによる凹凸が形成された部位(図1では、第2導電型半導体層1c中に設けた点線から上の部位)を反射防止層5とする。このような突起または窪みは第2導電型半導体層1cの表面に対してできるだけ隙間なく多く形成すればよい。
また、反射防止層5がこのような突起または窪みを有しているときには、突起または窪みが、反射防止層5に斜め方向から入射する光に対しても、突起または窪みの表面に入射する光の入射角を臨界角より大きくして反射を防ぐ働きをするため、反射防止層5に斜め方向から入射する光を透過させることができ、反射防止層5を透過させることができる反射防止層5に対する光の入射角の範囲を広くすることができるので光取り出し効率をさらに向上させることができる。また、このような突起または窪みは光の出射方向に対して屈折率を連続的に変化させて窒化ガリウム系化合物半導体層1が有している高い屈折率から空気等の低い屈折率まで除々に減少させる働きも有しているため、光の出射方向に対する反射率自体を下げる効果も有しており、光取り出し効率がさらに向上した発光素子とすることができる。
さらに、図1に示すように、導電性反射層2の主面にバンプ電極6aを、導電層3の主面に6bが接続されていてもよい。このバンプ電極6a,6bは導電性反射層2側で発光素子L1を基台等に固定するとともに導電性反射層2側で発光素子L1への電気的導通をとる働きをするものである。これにより、光取り出し面側に光を遮る導線等を配置する必要をなくすことができるので、さらに光取り出し効率を向上させることができる。また、基板4が除去されているため、発光素子L1をバンプ電極6a,6bを介して基台等に加熱してフリップチップ実装する際に、窒化ガリウム系化合物半導体層1と基板4との熱膨張係数の差により窒化ガリウム系化合物半導体層1に加わる応力をなくすことができるので、発光素子L1をフリップチップ実装する際に窒化ガリウム系化合物半導体層1に生じる歪み等を少なくして信頼性を高くすることができる。
バンプ電極6a,6bに用いる材料としては、金(Au)、インジウム(In)、金・錫合金半田(Au−Sn)、錫・銀合金半田(Sn−Ag)、錫・銀・銅合金半田(Sn−Ag−Cu)、錫・ビスマス合金半田(Sn−Bi)、錫・鉛合金半田(Sn−Pb)等とすればよい。
次に、図1に示す発光素子L1を例にとり、発光素子L1の製造方法を説明する。図2(a)〜(h)はそれぞれ発光素子L1の製造工程を示す断面図であり、基板4上に発光層1aを含む窒化ガリウム系化合物半導体層1をエピタキシャル成長させる工程と、その窒化ガリウム系化合物半導体層1上に導電性反射層2を形成する工程と、その導電性反射層2上を保護した状態で窒化ガリウム系化合物半導体層1から基板4を除去する工程とを示すものである。
具体的には、図2(a)に示すように、二硼化物単結晶として例えば硼化ジルコニウム(ZrB2)単結晶から成る基板4上に窒化ガリウム系化合物半導体層1を有機金属化学気相成長(MOCVD)法によってエピタキシャル成長させる。窒化ガリウム系化合物半導体層1は、基板4上にGa1−x’Alx’N(ただし、0<x’<1)から成るバッファー層(図示せず)を介して、バッファー層と同じ組成から成る第2導電型半導体層1cと、Ga1−x”Alx”N(ただし、0<x”<1)から成る発光層1aと、Ga1−xAlxN(ただし、0<x<1)から成る第1導電型半導体層1bとが順に形成されている。
これらバッファー層および窒化ガリウム系化合物半導体層1は、さらに具体的には、例えば次のように作製すればよい。バッファー層は基板温度を比較的低温である400〜950℃として基板4上に窒化アルミニウム・ガリウム(Ga1−x’Alx’N;0<x’<1)を20〜300ナノメートル(nm)程度の厚さで作製すればよい。また、第2導電型半導体層1cは、そのバッファー層上にそのバッファー層と同じ組成の窒化アルミニウム・ガリウム(Ga1−x’Alx’N;0<x’<1)を数マイクロメートル(μm)程度(例えば1〜5μm)の厚さで作製すればよい。その際、バッファー層側を比較的低温である400〜950℃で成長させ、その後に比較的高温である950〜1150℃で成長させればよい。また、その際、第2導電型半導体層1cの比較的低温で成長させる層には、導電性反射層2と導電層3との間で流される電流がほとんど流れないから、ドーパントは必ずしも必要ではない。また、窒化アルミニウム・ガリウムは、上記化学式においてx’=0.26のとき(Ga0.26Al0.74N)が、硼化ジルコニウム(ZrB2)単結晶と最も良好に格子定数が整合するから好適である。また、発光層1aは、第2導電型半導体層1c上に基板温度を700℃程度として、厚さ60〜600ナノメートル(nm)程度の窒化アルミニウム・ガリウム(Ga1−x”Alx”N;x”<x’)から成る層を作製すればよい。また、第1導電型半導体層1bは基板温度を700〜1050℃として発光層1a上に窒化アルミニウム・ガリウム(Ga1−xAlxN;x>x”)を0.1〜2マイクロメートル(μm)程度の厚さで作製すればよい。
次に、図2(b)に示すように、窒化ガリウム系化合物半導体層1上に導電性反射層2を真空蒸着やスパッタリングにより形成する。
次に、図2(c)に示すように、導電性反射層2および窒化ガリウム系化合物半導体層1の一部を第2導電型半導体層1cの表面が露出するまでエッチングして、その表面に導電層3を形成する工程を設けることが好ましい。このように導電層3を形成することにより、発光素子L1を基台等に実装する際に、光取り出し面である窒化ガリウム系化合物半導体層1の他方主面1c1側において導電層3に電気的に接続するための導線を形成する必要がなくなるため、光取り出し面を遮ることなく実装することができるからである。
次に、図2(d)に示すように、導電性反射層2上および導電層3上のそれぞれにバンプ電極6a,6bを接続する工程を設けることが好ましい。
次に、導電性反射層2上を保護した状態で窒化ガリウム系化合物半導体層1から基板4を除去する工程においては、まず図2(e)に示すように導電性反射層2、導電層3およびバンプ電極6a,6bを保護膜7で覆ってから、図2(f)に示すように基板4を除去すればよい。基板4を除去するには、基板4の材質に応じて化学的、物理的手法を用いることができる。例えば、基板4の材質が硼化ジルコニウムのときには、基板4を酸等をエッチャントとして化学的にエッチングすればよい。また、保護膜7は基板4を除去する工程に耐え得る材料により形成し、例えば無機系または有機系のコーティング材等をスピンコートして形成すればよい。
次に、図2(g)に示すように、窒化ガリウム系化合物半導体層1の基板4を除去した面に反射防止層5を形成する工程を具備することが好ましい。この工程において、反射防止層5は通常の薄膜形成方法により、例えば石英(SiO2)などにより形成すればよい。また、写真蝕刻技術と乾式エッチング技術とを用いて窒化ガリウム系化合物半導体層1の表面をエッチングして基部5bより頂部5aが小さくなっている突起または窪みを形成した部位を反射防止層5としてもよい。
次に、図2(h)に示すように保護膜7を除去して本発明の発光素子L1が完成される。保護膜7を除去するには、例えば湿式または乾式のエッチング技術(ウェットエッチングまたはドライエッチング)により除去すればよい。
図2に示す発光素子L1の製造方法によれば、二硼化物単結晶から成る基板4が、その
上に形成されるアルミニウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体から成るバッファー層とさらにその上に形成されるバッファー層と同じ組成の第2導電型半導体層1cとをエピタキシャル成長する際に、それらバッファー層および第2導電型半導体層1cの格子定数に良好に整合するために、バッファー層や第2導電型半導体層1cの全体が、アルミニウムが含まれる窒化ガリウム系化合物半導体であってもそれらを良好に成長させることができるので、良好な結晶品質のアルミニウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体層を確実に作製することができる。また、窒化ガリウム系化合物半導体層1から基板4を除去する工程においては、導電性反射層2上が保護されていることにより、窒化ガリウム系化合物半導体層1の表面やその上に形成された導電性反射層2を、例えばエッチング液等による汚染、腐食から保護することができるとともに、窒化ガリウム系化合物半導体層1を機械的に補強することができるため、エッチング等による汚染、腐食や、応力付加により窒化ガリウム系化合物半導体層1や導電性反射層2が劣化することを抑制することができるので、高性能な発光素子L1を確実に作製することができるものとなる。
次に、図3および図4に示す本発明の発光素子の実施の形態の他の例である発光素子L2は、化学式Ga1−x−yInyAlxN(ただし、0<x+y<1,x>0,y≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型半導体層11bと、化学式Ga1−x’−y’Iny’Alx’N(ただし、0<x’+y’<1,x’>0,y’≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型半導体層11cとの間に、化学式Ga1−x”−y”Iny”Alx”N(ただし、0<x”+y”<1,x”>0,y”≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層11aが挟まれて接合されている窒化ガリウム系化合物半導体層11(ただし、x,x’>x”,y,y’≦y”とする。)と、この窒化ガリウム系化合物半導体層11の第1導電型半導体層11b側の主面(一方主面)11b1に形成された導電性反射層12と、第2導電型半導体層11cに電気的に接続された導電層13とを具備し、窒化ガリウム系化合物半導体層11は、円形状とした構成である。
図3および図4に示す本発明の発光素子L2は、上記構成としたことから、図1に示す発光素子L1と同様の作用効果を有するものとなるが、図3および図4に示す発光素子L2においては、それに加えてさらに次の作用効果を有するものとすることができる。すなわち、発光層11aで発生した光のうち発光層11aに沿って放射状に伝搬する光の、空気等との界面を形成する円形状の端面11a1に対する臨界角を広げることができ、その光をその端面11a1から外側に透過させやすくすることができるため、発光層11aに沿って窒化ガリウム系化合物半導体層11の外周の端面11a1からも紫外光を効率よく取り出すことができるので、窒化ガリウム系化合物半導体層11からの光取り出し効率がさらに大きく改善され、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。
また、図4に示すように、本発明の発光素子L2は、窒化ガリウム系化合物半導体層11は、第1導電型半導体層11b側の中央部に第1導電型半導体層11bおよび発光層11aを貫通する凹部17が形成されており、その凹部17は、側部に形成された、発光層11aに沿って伝搬してきた光を第2導電型半導体層11c側の主面11c1に反射する斜面17bを有していることが好ましい。このようにすれば、窒化ガリウム系化合物半導体層11の中央部に形成された凹部17の斜面17bが、発光層11aに沿って窒化ガリウム系化合物半導体層11の外周の端面11a1へ伝搬する光の一部がその端面11a1で反射しても、その端面11a1で反射してその中央部に戻ってきた光を第2導電型半導体層11c側の主面(他方主面)11c1に反射する働きをするため、発光層11aに沿って伝搬し窒化ガリウム系化合物半導体層11の中央部に集光された光を窒化ガリウム系化合物半導体層11の第2導電型反動層11c側の主面から取り出すことができるので、窒化ガリウム系化合物半導体層11の他方主面11c側からの紫外光の光取り出し効率がより大きく改善され、さらに小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能なものとなる。
また、図4に示すように、本発明の発光素子L2は、導電層13は、凹部17の底部17aにおいて第2導電型半導体層11cに電気的に接続されていることが好ましい。このようにすれば、第2導電型半導体層11cに電気的に接続される導電層13が、窒化ガリウム系化合物半導体層11に対して、第1導電型半導体層11bに電気的に接続される導電性反射層12と同じ側の主面に配置されることとなるため、導電層13および導電性反射層12を両方とも窒化ガリウム系化合物半導体層11の第1導電型半導体層11b側で接続することができるので、フリップチップ実装等に適したものとなる。
また、図4に示すように、本発明の発光素子L2は、導電性反射層12の主面にバンプ電極16aを,導電層13の主面にバンプ電極16bが接続されていてもよい。これらバンプ電極16a,16bは導電性反射層12側で発光素子L2を基台等に固定するとともに導電性反射層12側で発光素子L2への電気的導通をとる働きをするものである。これにより、光取り出し面側に光を遮る導線等を配置する必要をなくすことができるのでさらに光取り出し効率を向上させることができる。また、基板14が除去されているため、発光素子L2をバンプ電極16a,16bを介して基台等に加熱してフリップチップ実装する際に、窒化ガリウム系化合物半導体層11と基板14との熱膨張係数の差により窒化ガリウム系化合物半導体層11に加わる応力をなくすことができるので、発光素子L2をフリップチップ実装する際に窒化ガリウム系化合物半導体層11に生じる歪み等を少なくして信頼性を高くすることができる。
バンプ電極16a,16bに用いる材料としては、金(Au)、インジウム(In)、金・錫合金半田(Au−Sn)、錫・銀合金半田(Sn−Ag)、錫・銀・銅合金半田(Sn−Ag−Cu)、錫・ビスマス合金半田(Sn−Bi)、錫・鉛合金半田(Sn−Pb)等とすればよい。
なお、窒化ガリウム系化合物半導体層11、導電性反射層12、導電層13、基板14および反射防止層15のそれぞれの材質等の詳細な構成は、上記の窒化ガリウム系化合物半導体層1、導電性反射層2、導電層3、基板4および反射防止層5と同様にすればよい。
次に、図5に示す本発明の照明装置の実施の形態の一例は、図1および図2に示す本発明の発光素子L1と、この発光素子L1の周囲に設けた発光層1aに沿って出射される紫外〜近紫外光を他方主面1c1側に反射する反射面18aと、発光素子L1からの発光を受けて白色光等の可視光を発する蛍光体19(または燐光体)とを具備する構成である。また、発光素子L1は窒化アルミニウム(AlN)等の高熱伝導の絶縁性基台20上に形成された導体パターン21a,21b上に、導電性反射層2および導電層3側を下にバンプ電極6a,6bを介して接続されており、その発光素子L1の実装面の反対側から発光素子L1の全体を蛍光体19で覆っている。また、絶縁性基台20上には反射面18aを成す導電性反射層2と同様の材質であるかまたは反射面18aがその材質でコーティングされた反射部材18を設けている。
このような照明装置は、例えば、発光素子L1の光取り出し面側に蛍光体19を設けた構成において、発光素子L1が例えば波長365nm前後の紫外〜近紫外光で発光し、蛍光体19が励起光であるその発光を受けて例えば白色光を発することによって照明装置としての動作をする。
本発明の照明装置は、このような構成としたことから、反射面18aが発光素子L1から受けて反射した紫外〜近紫外光と、小さい電力で良好な発光強度を有する発光素子L1自体の紫外〜近紫外光とにより蛍光体19(または燐光体)を強く励起するため、小さい電力で良好な照度を得ることができるものとなる。また、このような本発明の照明装置は、従来の蛍光灯や放電灯等の代替品となり、それらよりも省エネルギー性や小型化に優れたものとなる。
かくして、本発明によれば、紫外光の光取り出し効率がより大きく改善され、小さい電力で良好な発光強度を得ることができる高性能な発光素子およびその高性能な発光素子を用いた照明装置を提供することができる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更、改良を施すことは何等差し支えない。例えば、反射防止層5を形成した後、その反射防止層5の表面を有機系または無機系のコーティング材等からなる、発光層1aからの光を透過させることのできる保護層で覆ってから導電性反射層2等を保護している保護膜7を除去してもよい。この場合には、その反射防止層5を覆っている保護層が反射防止層5を保護するとともに薄い層である窒化ガリウム系化合物半導体層1にクラック等が生じないように窒化ガリウム系化合物半導体層1を構造的に補強する働きをするため、発光素子の製造工程や完成後において様々な外力が加わっても簡単には壊れないようにすることができるので、製造における歩留まりが良好な発光素子の製造方法および完成した発光素子の実装、において壊れにくい丈夫で信頼性の高い発光素子とすることができる。
また、発光層1aで発生する光を反射する絶縁性反射層を窒化ガリウム系化合物半導体層の光取り出し面以外の面に形成してもよい。