JP4717771B2 - シリカガラスルツボ - Google Patents
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Description
しかしながら、その反面、溶融の長時間化、加熱用カーボンヒータの大出力化といった厳しい環境下で使用しなければならず、シリカガラスルツボへの悪影響も大きい。
この問題を解決するため、特許文献1には、図5に示すように、外層51がAl添加石英層、中間層52が天然石英層、内層53が高純度合成石英層からなる3層構造の石英ガラスルツボ50について開示されている。
クリストバライトの成長過程においては、粘性が向上し、また、結晶化することで高い耐久性を得ることができるため、前記のようにルツボの変形や破損といった課題を解決することができる。
このため、ルツボ50においては、ルツボ50を抱持するカーボンサセプタとの密着が安定化する前に結晶化が完了する虞があった。
即ち、結晶化が速く完了すると、ルツボ50とカーボンサセプタとの密着性が悪くなり、その結果、カーボンサセプタによるルツボ50の支持が不安定となり、シリコン単結晶の引上げに悪影響を及ぼすという課題があった。
その後、引上げの開始からから完了までの間に亘り、高温加熱により所定範囲の底部コーナー及び側部等の外層の結晶化(クリストバライト化)が進行し、ルツボ全体と、これを支持するカーボンサセプタとの密着安定性が向上する。また、結晶化により耐熱変形性が向上する。
したがって、ルツボの耐熱変形性を確保しつつ、カーボンサセプタによる支持の密着安定性が得られ、シリコン単結晶の単結晶化率を向上することができる。
尚、前記結晶化促進剤としては、Al、Ba、Ca、Kが挙げられ、これらのいずれか、もしくは、このうちの複数の組合せから選択することができるが、Alのみとすることが最も好ましい。
このシリカガラスルツボ1は、例えば単結晶引上装置(図示せず)において用いられ、装置内でカーボンサセプタ(図示せず)によって抱持された状態で使用される。
即ち、単結晶引上装置では、シリカガラスルツボ1内に原料シリコンが溶融され、溶融液からシリコン単結晶が引上げられる。
尚、ここで不透明とは、シリカガラス中に多数の気孔が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。また、天然原料シリカガラスとは、水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味し、合成原料シリカガラスとは、例えばシリコンアルコキシドの加水分解により合成された合成原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味する。
ここで、外層2はルツボ上端6から下方に向けて形成されると共に、外層2の下端は、底部9(曲率半径R)と底部コーナー8(曲率半径r)との間の曲率変化点Pを基準とする所定範囲内まで形成されている。より具体的には、外層2の下端は、半径Rの曲率中心Cと、曲率変化点Pとを結ぶ直線L上を0°として、この直線Lを、曲率中心C周りに±5°回転させた範囲内まで形成されている。
一方、−5°より小さい範囲に外層2の下端を形成すると、ルツボ全体で外層2が占める割合が小さく、耐熱変形性が低くなる傾向があるためである。
一方、35ppmより低いと結晶化速度が遅くなり、所望の耐熱変形性が得られ難いためである。
また、不透明中間層3から連続して形成されたルツボ底部9の不透明外層5における厚さ寸法mt3は6mm以上に形成される。
これは、3層部分での不透明中間層3の厚さが3mmより小さいと、シリカガラス粉溶融中のアーク炎の不規則な流れによる不透明中間層3の結晶化促進剤化合物の飛散防止効果が減殺され易く、外層2の結晶化促進剤化合物が不透明中間層3を通過して透明内層4に混入し、透明内層4の結晶化促進剤濃度が大きくなる虞があるためである。
また、ルツボ底部コーナー8における不透明中間層3の厚さ寸法mt2及びルツボ底部9における不透明外層5の厚さ寸法mt3が6mmより小さいと、充分な耐熱変形性が得られ難いためである。
透明内層4において、ルツボ側部7における厚さ寸法it1と、ルツボ底部コーナー8における厚さ寸法it2と、ルツボ底部9における厚さ寸法it3とは共に、3mm以上の厚さに形成されている。
これは、透明内層4の厚さが3mmより小さいとシリコン溶融と接する透明内層4の内表面の結晶化促進剤濃度を十分に低く、例えば1ppm以下にすることができ難いためである。
その後、引上げの開始からから完了までの間に亘り、高温加熱により所定範囲の底部コーナー8及び側部7等の外層2の結晶化(クリストバライト化)が進行し、ルツボ1全体と、これを支持するカーボンサセプタとの密着安定性が向上する。また、結晶化により耐熱変形性が向上する。
したがって、ルツボ1の耐熱変形性を確保しつつ、カーボンサセプタによる支持の密着安定性が得られ、シリコン単結晶の単結晶化率を向上することができる。
図4に示すようなシリカガラスルツボ製造装置10を用いてシリカガラスルツボ1を製造する。シリカガラスルツボ製造装置10のルツボ成形用型11は、例えば複数の貫通孔が穿設された金型、もしくは高純化処理した多孔質カーボン型などのガス透過性部材で構成された内側部材12と、その外周に通気部13を設けて、前記内側部材12を保持する保持体14とから構成されている。
内側部材12に対向する上部にはアーク放電用のアーク電極19と、結晶化促進剤添加シリカガラス供給ノズル20と、天然原料シリカガラス供給ノズル21と、合成原料シリカガラス供給ノズル22が設けられている。
次いで、ルツボ成形用型11内に結晶化促進剤添加シリカガラス供給ノズル20から上述のようにして得られたAl添加シリカガラス粉を供給する。供給されたAl添加シリカガラス粉は、遠心力によって内側部材12の内面側に押圧され外層2として形成される。
ここで、外層2は、図2を用いて説明したように下端の位置が決められ、底部が除去される。
供給された合成原料シリカガラス粉は、遠心力によって不透明中間層3及び不透明外層5の内面側に押圧されて、透明内層4の成形体として成形される。
さらに、減圧機構18の作動により内側部材12内を減圧し、アーク電極19に通電してルツボ成形体の内側から加熱し、ルツボ成形体の透明内層4、不透明中間層3、不透明外層5および外層2を溶融して、シリカガラスルツボ1を製造する。
その後、引上げの開始からから完了までの間に亘り、高温加熱により所定範囲の底部コーナー及び側部等の外層2の結晶化(クリストバライト化)が進行し、ルツボ全体と、これを支持するカーボンサセプタとの密着安定性が向上する。また、結晶化により耐熱変形性が向上する。
したがって、ルツボの耐熱変形性を確保しつつ、カーボンサセプタによる支持の密着安定性が得られ、シリコン単結晶の単結晶化率を向上することができる。
この実験では、図6に示すように、製造したシリカガラスルツボ100をカーボンサセプタ101内に配置し、単結晶引上げ実験を行った。
尚、このシリカガラスルツボ100の外径は610mm、高さは400mm、全体の平均厚さ寸法は12mmとした。また、シリカガラスルツボ100を支持するカーボンサセプタ101の内周径は615mmとした。
尚、表1において、耐熱変形性は、沈み込み変形割合を式1により求め(図6参照)、その割合が70%を○、70〜100%を△、100%超を×とした。また、単結晶化率は、95%超を○、85〜95%を△、85%未満を×とした。
また、実施例1〜3については、耐熱変形性及び単結晶化率の点で共に比較例1、2よりも格段に向上が認められた。
したがって、3層構造とする境界位置は、図2に示したように曲率変化点から±5°の範囲であるのが好ましく、結晶化促進剤添加外層の結晶化促進剤濃度は35〜100ppmの範囲で設定されるのが好ましいと確認された。
2 外層
3 不透明中間層
4 透明内層
5 不透明外層
6 ルツボ上端
7 側部
8 底部コーナー
9 底部
10 シリカガラスルツボ製造装置
Claims (3)
- 第一の曲率を有する底部と、前記底部の周りに形成され、第二の曲率を有する底部コーナーと、前記底部コーナーから上方に延びる側部を有するシリカガラスルツボにおいて、
ルツボ上端から前記側部、及び前記底部と前記底部コーナーとの間の曲率変化点を基準とする所定範囲までが、結晶化促進剤添加シリカガラスからなる外層と天然原料シリカガラスからなる不透明中間層と天然原料シリカガラスまたは合成原料シリカガラスからなる透明内層とで形成された3層構造からなり、
前記底部が、前記不透明中間層から連続して形成された天然原料シリカガラスからなる不透明外層と天然原料シリカガラスまたは合成原料シリカガラスからなる透明内層とで形成された2層構造からなり、
前記外層の下端が形成される前記所定範囲は、
前記第一の曲率の曲率中心と前記曲率変化点とを結ぶ直線上を0°として、該直線を前記曲率中心周りに底部方向を正方向として、0°より大きく+5°まで回転させた範囲内であることを特徴とするシリカガラスルツボ。 - 前記外層の厚さ寸法は、0.5〜5.0mmの範囲で設定されていることを特徴とする請求項1に記載されたシリカガラスルツボ。
- 前記外層における結晶化促進剤濃度は、35〜100ppmの範囲で設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリカガラスルツボ。
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