JP4716366B2 - 焼結バルブシートの製造方法 - Google Patents

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本発明は、自動車エンジンの焼結バルブシートおよびその製造方法等に係り、特に、CNGエンジン、ヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジンに用いて好適な焼結合金製のバルブシートの開発技術に関する。
近年、自動車エンジンは高性能化により作動条件が一段と厳しくなっており、エンジンに用いられるバルブシートにおいても、従来に増して厳しい使用環境条件に耐えることが必要となってきている。たとえば、タクシー用の自動車に多く搭載されるLPGエンジンにおいては、バルブおよびバルブシートの摺接面が乾燥状態で使用されるため、ガソリンエンジンのバルブシートに比べ摩耗が早い。また、高有鉛ガソリンエンジンのようにスラッジが付着するような環境では、バルブシートに対する面圧が高い場合、あるいはディーゼルエンジンのように高温・高圧縮比の場合に、スラッジにより摩耗が促進される。このような厳しい環境で使用される場合には、耐摩耗性が良いことに併せ、へたり現象を生じないような高い強度が要求される。
一方、バルブシートが摩耗してもバルブの位置とバルブ駆動タイミングとを自動調節できるラッシュアジャスタ装置を備えた動弁機構も実用化されている。しかしながら、バルブシートの摩耗によるエンジン寿命の問題が解決されているとは言えず、耐摩耗性に優れたバルブシート用材料の開発が望まれている。また、近年では、高性能化を目指すだけではなく、経済性を重視して安価な自動車の開発も重要視されつつあり、したがって、これからのバルブシート用焼結合金としては、上記ラッシュアジャスタ装置のような付加的な機構を必要としない高温耐摩耗性、高強度を有するものであることが求められるようになってきている。
このようなバルブシート用焼結合金としては、Fe−Co系とFe−Cr系との斑状基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術や(特許文献1参照)、Fe−Co系基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術が開示されている(特許文献2参照)。また、Fe−Co系にNiを添加した基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術や(特許文献3参照)、Co−Mo−Si系硬質粒子を分散させたFe基合金が開示されている(特許文献4参照)。
特公昭59−037343号公報 特公平05−055593号公報 特公平07−098985号公報 特開平02−163351号公報
これらの特許文献1〜4に記載されている合金は、硬質粒子中のMo量が40質量%以下のものであるが、この硬質粒子を含む焼結合金は高い高温耐摩耗性、高強度を有する。しかしながら、近年においては、さらに、高温耐摩耗性、高強度を有する焼結合金が望まれている。特に、近年実用化されてきているCNGエンジンや、高出力用のヘビーデューティーディーゼルエンジン等のエンジンにおいては、金属接触に伴うバルブシート材への負荷が一層高いため、そのような環境下でも高い耐摩耗性を発揮する材料の開発が望まれている。
よって、本発明は、特にCNGエンジンやヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジン環境において、優れた高温耐摩耗性を発揮する焼結バルブシートおよびその製造方法を提供することを目的としている。
下記の焼結バルブシートは、金属組織の状態から3つの態様を備えている。以下、これらの焼結バルブシートと、このような焼結バルブシートを得るための本発明の焼結バルブシートの製造方法について説明する。
[1]第1態様の焼結バルブシート
第1態様の焼結バルブシートは基本構成と言えるもので、組成がMo:20〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物からなり、Co基合金相中にモリブデン珪化物が析出した硬質相が基地中に40〜70質量%分散した組織を呈するとともに、基地組織がパーライト、ソルバイトおよびベイナイトを含まないことを特徴としている。図1は、この第1態様の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表している。以下、本発明のバルブシートの金属組織、含有元素等について、個々に説明する。
〈硬質相の内容〉
硬質相は、上記のように組成がMo:20〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物からなり、Co基合金相中に主としてモリブデン珪化物が析出する組織を呈するものであり、このような硬質相が鉄基地中に40〜70質量%分散している。
図4は従来の耐摩耗性焼結合金からなるバルブシートの金属組織を模式的に示す図である。この図によると、従来のバルブシートは、モリブデン珪化物が合金相内に群状に析出した硬質相が基地中に5〜40質量%分散している。このような金属組織によると、硬質相の量が少ないため、硬質相以外の基地部分が相手部材と直接接触して摺動するような高面圧環境下では基地部分が基点となって、塑性流動、凝着が発生し、硬質相がこの圧力をくい止めることができずに摩耗する。
一方、第1態様の焼結バルブシートにおいては、硬質相の分散量が40〜70質量%と従来のものに比べて多量に分散しているので、高面圧下であっても硬質相以外の基地部分が相手部材と直接接触しにくく、また接触が生じ基地部分の塑性流動が生じても多量の硬質相によりその変形が防止され摩耗が生じにくい構造となっている。なお、硬質相は40質量%を超えて分散させることが望ましい。
第1態様の焼結バルブシートにおける硬質相は、Moが約45質量%までであると析出するモリブデン珪化物は、図1(a)に示すように、粒子形状でCo基合金基地中に群状に析出する形態を示す。一方、Mo珪化物が約48%以上では、図1(b)に示すように、析出するモリブデン珪化物は塊状に一体となって析出する形態を示す。第1態様の焼結バルブシートにおいては、硬質相を上記のように基地中に多量に分散させて耐摩耗性を向上させるので、析出するモリブデン珪化物の形態は上記のいずれの形態であってもよい。
第1態様の焼結バルブシートの硬質相は、焼結バルブシートの基地中に40〜70質量%と多量に分散させため、極めて良好な耐摩耗性を示す。硬質相形成粉末は圧縮性を低下させるため、硬質相の割合が少ないと密度比が高くなる。硬質相の割合が40質量%未満では、密度比が90%以上と高くなるため、密度比だけに着目すれば耐摩耗性にとって有利である。しかしながら、第1態様の焼結バルブシートでは、硬質相を40質量%以上分散させることにより、圧縮性の低下を補って余りある顕著な耐摩耗性向上の効果を示す。一方、70質量%を超えると、原料粉末の圧縮性の低下の影響が大きく、成形体密度が低下する。その結果、焼結体(バルブシート)密度が低下して、基地強さが低下するとともに、耐摩耗性が却って低下する。
上記硬質相は、従来より焼結バルブシートに適用されている基地形成粉末に、Mo:20〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:5〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなる組成の硬質相形成粉末を添加、混合した原料粉末を圧粉成形し焼結することにより形成される。
硬質相の成分組成の数値限定の根拠は、以下の通りである。
・Mo:20〜60質量%
Moは、主にSiと結合して、耐摩耗性、潤滑性に優れたモリブデン珪化物を形成し、焼結合金の耐摩耗性の向上に寄与する。また、一部はCoも取り込み複合珪化物の形態で析出する。さらにその一部は鉄基地に拡散して硬質相の固着に寄与するとともに、鉄基地の焼き入れ性向上、耐熱性向上、耐食性向上、炭化物形成による耐摩耗性向上等に寄与する。Mo含有量が20質量%未満の場合には、析出するモリブデン珪化物の量が少なくなり耐摩耗性向上が不充分となる。
一方、Mo含有量が20質量%以上では、十分な量のモリブデン珪化物が析出し耐摩耗性向上の効果が顕著となる。またモリブデン珪化物の析出量は硬質相のMo含有量に比例して増加するが、Moは約45質量%までであると析出するモリブデン珪化物は、硬質相の合金基地中に粒子形状で群状に析出する(図1a)。Mo量がこれよりも多くなると群状に析出する析出粒子が増加する結果、析出粒子同士が結合しだし、Mo珪化物が約48%以上では、モリブデン珪化物は塊状に一体となって析出する(図1(b))。ただし、Mo含有量が60質量%を超えると、硬質層形成粉末の硬さが高くなって成形時の圧縮性を損ね、後述する製造方法によってもバルブシートの密度比が90%を下回り、基地強さが低下する結果、耐摩耗性が却って低下することとなる。また、形成される硬質相が脆くなるため、衝撃によって一部が欠けてしまい、研摩粉の作用によって耐摩耗性が逆に低下する。よって、Mo含有量は20〜60質量%とした。
モリブデン珪化物の析出形態は、粒子形状で群状に析出する形態と塊状に一体となって析出する形態のどちらであっても良い。ただし、前者のモリブデン珪化物が群状に析出する形態においては、金属接触が発生する環境下では、硬質粒子として機能するモリブデン珪化物以外の硬質相の合金相部分が基点となって、塑性流動、凝着が発生し、摩耗が生じやすいという傾向を有する。一方、後者のモリブデン珪化物が塊状に一体となって析出したものでは、硬質相の合金相部分の塑性流動および凝着の発生を、ピン止め効果によって抑制することができ、よって耐摩耗性を向上させることができるので好ましい。
・Cr:3〜12質量%
Crは、硬質相のCo基地の強化に寄与する。また、鉄基地へ拡散して、硬質相を鉄基地に固着するとともに、鉄基地に固溶して基地を強化することで耐摩耗性の向上に寄与する。さらに、Crは鉄基地に拡散して硬質相の固着に寄与するとともに、鉄基地の焼き入れ性向上、不動態被膜形成による耐食性向上、炭化物形成による耐摩耗性向上等に寄与する。加えて、後述する第2態様の焼結バルブシートにおいては、硬質層形成粉末中から鉄基地に拡散したCrと、硫化物粉末により供給されるSとが結合することにより、硬質相の周囲に潤滑性に優れたクロム硫化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。Cr含有量が3質量%に満たないとこれらの効果が少ない。逆に、Cr含有量が12質量%を超えると、Crは酸化し易い元素であるため粉末表面に酸化被膜が形成され、焼結の進行を阻害するとともに、酸化被膜により粉末が硬くなるため圧縮性の低下が生じる。このため、後述する製造方法によってもバルブシートの密度比が90%を下回り、基地強さが低下する結果、耐摩耗性が却って低下することとなる。以上により、Cr含有量は3〜12質量%とした。
・Si:1〜5質量%
Siは、主にMoと反応して、耐摩耗性、潤滑性に優れたモリブデン珪化物を形成し、焼結合金の耐摩耗性の向上に寄与する。Si含有量が1質量%未満の場合には、十分なモリブデン珪化物が得られないため、耐摩耗性の向上効果が不充分となる。一方、Si含有量が過剰であると、Moと反応せずに基地に拡散するSiが増える。ある程度のSiの基地への拡散は、硬質相の基地への固着の点および鉄基地を硬化することによる耐摩耗性向上の点で有効である。しかしながら、過剰なSiの拡散は、鉄基地が硬くなりすぎかつ脆くなることで鉄基地の耐摩耗性を低下させるとともに、相手部材の攻撃性を増加させることとなるので、好ましくない。ここで、Moと反応しないSi量を低減すれば、Mo量を適切にして粉末の硬さを増加させないようにすることができる。よって、Mo量と反応しないで基地に拡散するSiが増え始める5質量%をSi含有量の上限とした。以上により、Si含有量は1〜5質量%とした。
・Co:残部
Coは、硬質相の合金基地として硬質相の耐熱性および耐食性の向上に寄与する。また、鉄基地へ拡散して、硬質相を鉄基地に固着するとともに、鉄基地の耐熱性の向上に寄与する。
〈基地の内容〉
第1態様の焼結バルブシートは、金属組織観察を行う際に例えばナイタール等で腐食した場合、全面白色の基地組織中に前記硬質相が分散した金属組織を呈する。この全面白色の金属組織は、上記の硬質相に含まれる各種元素が鉄基地に拡散して形成されるもので、硬質相が多量に含まれることから金属組織全面にその効果が反映されたものである。すなわち、この白色の基地組織は、硬質相からの各合金元素が固溶されることにより、耐摩耗性、耐食性および耐熱性等の特性が改良されたものである。ただし、硬質相からの各種元素の拡散が不十分であると、その部分がパーライト、ソルバイトあるいはベイナイトとして残留して上記効果が不充分となる。このため本発明の焼結バルブシートの基地組織としてはこれらの耐摩耗性、耐食性、耐熱性の乏しい組織、すなわちパーライト、ソルバイトおよびベイナイトを含まないことを必須とする。具体的には、基地組織は、フェライト(高合金フェライト)、残留オーステナイト、マルテンサイトの1種または2種以上の混合組織であり、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの1種また2種の混合組織であるとより好適である。
上記のように第1態様の焼結バルブシートの基地は、多量に分散する硬質相からの各種元素の拡散によりバルブシートとして必要な各種特性が改善されるが、その組成として下記の合金元素を1種もしくは2種以上含有するものを用いることが推奨される。
・Mo:0.2〜5質量%
Moは、基地の焼き入れ性を向上させて強度、耐摩耗性を向上する作用、基地の焼き戻し軟化抵抗を向上させて、繰り返し使用における耐摩耗性低下を防止する作用、高温強さ、クリープ強さを向上させて、強度、耐摩耗性を向上させる作用、オーステナイトを硬化して強度、耐摩耗性を向上させる作用、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる作用、およびCrとともに固溶されることで耐食性を向上させる作用等を有する元素である。基地に与えるMo量が0.2質量%に満たないと上記効果が不充分である。また、Moは拡散速度の比較的遅い元素であり、単味粉末の形態で与えるより合金粉末の形態で付与することが好ましいが、この場合にMo量が5質量%を超えると合金粉末の硬さが増加し、原料粉末の圧縮性がより一層損なわれる。
・Cr:0.05〜4質量%
Crは、基地の焼き入れ性を向上させて強度、耐摩耗性を向上する作用、不動態被膜を形成して耐食性を向上する作用、炭化物を形成して耐摩耗性を向上する作用、およびオーステナイトを硬化して強度、耐摩耗性を向上する作用等を有する元素である。基地に与えるCr量が0.05質量%に満たないと上記効果が不充分である。また、Crは酸化しやすい元素であるので、単味粉末の形態で付与すると強固な酸化物により元素の拡散が進行しない。このため、Crは合金粉末の形態で付与することが望ましい。ただし、Cr量が4質量%を超えると原料粉末の硬さが増加し、原料粉末の圧縮性がより一層損なわれる。
・V:0.05〜0.6質量%
Vは、オーステナイトを硬化して強度、耐摩耗性を向上する作用、炭化物を形成して耐摩耗性を向上する作用、基地の焼き戻し軟化抵抗を向上させて、繰り返し使用における耐摩耗性低下を防止する作用、およびオーステナイト結晶粒の粗大化を防止して強度、耐摩耗性を向上する作用等を有する元素である。基地に与えるV量が0.05質量%に満たないと上記効果が不充分となる。また、Vは、拡散速度の比較的遅い元素であり、単味粉末の形態で与えるより合金粉末の形態で付与することが好ましいが、この場合にV量が0.6質量%を超えると合金粉末の硬さが増加し、原料粉末の圧縮性がより一層損なわれる。
・Ni:0.1〜10質量%
Niは、基地の焼き入れ性を向上させて強度、耐摩耗性を向上する作用、オーステナイトを形成して基地に靱性を付与する作用、およびCrとともに基地の耐食性を向上する作用等を有する元素である。基地に与えるNi量が0.1質量%に満たないと上記効果が不充分となり、Ni量が10質量%を超えると耐食性、靱性の点で優れるものの耐摩耗性の低いオーステナイトが過剰となり却って耐摩耗性が低下するとともに、合金粉末の形態で付与する場合には原料粉末の硬さが増加し、原料粉末の圧縮性がより一層損なわれる。なお、Niは鉄基地への拡散の速度が比較的速い元素であるため、単味粉末の形態で与えてもよいし、合金粉末の形態で与えてもよい。
・Cu:0.5〜5%
Cuは、基地の焼き入れ性を向上させて強度、耐摩耗性を向上する作用を有する元素である。基地に与えるCu量が0.5質量%に満たないと上記効果が不充分となり、Cu量が5質量%を超えると軟質な遊離銅相が基地組織中に多量に分散するようになり耐摩耗性を損なう。なお、Cuは鉄基地への拡散の速度が速い元素であるため、単味粉末の形態で与えてもよいし、合金粉末の形態で与えてもよい。
・Co:5.5〜7.5質量%
Coは、基地に耐熱性を付与して強度、耐摩耗性の低下を防止する作用、オーステナイト中に固溶し繰り返し使用において基地の硬さを保持する作用等を有する元素である。基地に与えるCo量が5.5質量%に満たないと上記効果が不充分となる。また、Coは、拡散速度の比較的遅い元素であり、単味粉末の形態で与えるより合金粉末の形態で付与することが好ましいが、この場合にCo量が7.5質量%を超えると合金粉末の硬さが増加し、原料粉末の圧縮性がより一層損なわれる。
上記の合金元素を含む基地組織は、例えば下記の(A)〜(E)の鋼粉末を用いることで得ることができる。すなわち、(A)Mo:1.5〜5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼粉末、(B)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末、(C)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末、(D)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末、および(E)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、および残部がFeと不可避不純物からなる部分拡散鋼粉末、等の鋼粉末である。これらの鋼粉末は従来の焼結バルブシートにおいて用いられている鋼粉末であり、市販され安価に入手が可能である。これらの鋼粉末は1種のみを用いてもよく、上記の組成となる範囲で複数種混合して用いてもよい。さらに、ニッケル粉末や銅粉末と混合して用いてもよい。
〈焼結バルブシートの製造方法〉
第1態様の焼結バルブシートは、基地中に上記の硬質相を40〜70質量%と多量に分散させるとともに、パーライト、ベイナイト、およびソルバイトが基地中に存在しないことを特徴とするが、このような耐熱性や耐食性の低い個所は硬質相から鉄基地への各合金元素の拡散が不充分な部分であり、基地形成粉末表面から粉末中心までの距離が拡散距離を超えて大きい場合に生じる。したがって基地形成粉末の表面から中心までの距離が各合金元素の拡散距離よりも小さい粉末、すなわち基地形成粉末として微粉末を用いればれば、鉄基地全体に硬質相からの合金元素の拡散が均一となり、これらの合金元素の効果を基地全体に均一に及ぼすことができるようになる。このため、本発明の焼結バルブシートの製造方法においては、使用する基地形成粉末を200メッシュの篩で分級して200メッシュの篩を通過した粉末とする。一方、基地形成粉末として200メッシュの篩を通過しない粉末を含む場合は、基地組織中にパーライト、ベイナイト、およびソルバイトのような耐食性や耐熱性の不充分な個所が残留しやすくなる。
また、本発明の焼結バルブシートは多量の硬質相を分散させるものであるが、基地中に分散する硬質相の量を増加させるため、単に基原料粉末への硬質層形成粉末添加量を増加させたのみでは、良好な密度比を有する焼結バルブシートを得ることができない。すなわち、硬質層形成粉末は硬いため、多量に原料粉末に含有させると原料粉末の圧縮性を損ない、圧粉体の密度が低下する。このような低密度の圧粉体を焼結しても密度が向上せず、低密度の焼結体しか得られない結果、強度および耐摩耗性が低下する。また圧粉体の密度を無理矢理向上させようと圧粉成形時の成形圧力を増加させても、硬い硬質層形成粉末は弾性係数が高いため、成形後金型より抜き出すと圧縮され弾性変形している硬質層形成粉末が弾性回復し、成形時に形成した粉末どうしの密着状態が破壊され、焼結しても粉末間の融着(ネック成長)が行われず強度および耐摩耗性が低下する。一方、上記のように基地形成粉末として微粉末を用いると、粉末の表面積が大きくなり、その分粉末どうしの接触面積が増加することから、焼結が進行して緻密化が達成でき、硬質相形成粉末を多量に含む原料粉末であっても焼結バルブシートとして必要な密度が得られるという効果も奏する。
硬質層形成粉末の添加量が40〜70質量%の場合に、基地形成粉末として200メッシュの篩で分級して200メッシュの篩を通過したものを用いれば、上記のように基地組織中にパーライト、ベイナイト、およびソルバイトが残留しない組織が得られるとともに、焼結バルブシートとして必要な密度が得られるが、基地形成粉末は細かい粉末であるほど表面から中心までの距離が小さくなるとともに、表面積が大きくなり、焼結時の緻密化が進行し易くなる。したがって、300メッシュの篩で分級して、300メッシュの篩を通過する粉末が90%以上を占め、200メッシュの篩を通過し300メッシュの篩を通過しない粉末が残部となる粒度構成を有する微粉末を用いるとより効果的である。
ところで、硬質相形成粉末まで微粉にすると、原料粉末の圧縮性がより一層低下するため、硬質相形成粉末は90メッシュの篩で分級して90メッシュの篩を通過する、ある程度粒径の大きなものを用いる必要がある。好ましくは、硬質層形成粉末として200メッシュの篩で分級して200メッシュの篩を通過しないものが40質量%以上含まれる粉末を用いると、上記の基地形成粉末に対して、硬質層形成粉末の大きさが確保されて圧縮性の低下が僅かですむ。
黒鉛粉末は、焼結時に基地形成粉末中に拡散して鉄基地を強化するとともに、その一部は炭化物として析出して基地および硬質相の耐摩耗性向上に寄与する。このような黒鉛粉末は添加量が0.8質量%に満たないとその効果が不充分となる。一方、2.0質量%を超えると析出する炭化物の量が過大となり、基地強さが低下して耐摩耗性が却って低下するとともに、相手攻撃性が大きくなる。このため黒鉛粉末の添加量は0.8〜2.0質量%とする。
以上のような知見から得られたのが本発明の焼結バルブシートの製造方法であり、200メッシュの篩で分級して200メッシュの篩を通過した基地形成粉末に、90メッシュの篩で分級して90メッシュの篩を通過しかつ組成がMo:20〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなる硬質相形成粉末を40〜70質量%と、黒鉛粉末:0.8〜2.0質量%を添加して混合した原料粉末を、所望の形状に圧粉成形した後、焼結することを特徴とするものである。
なお、最大粒径が74μmの粉末は200メッシュのを通過した粉末、最大粒径が46μmの粉末は300メッシュのを通過した粉末であり、最大粒径が150μmの粉末は90メッシュのを通過した粉末である。よってこれらのにより分級することで所望の上記の粒度構成の粉末を得ることができる。
また、基地形成粉末は、従来より用いられている前記(A)〜(E)の鋼粉末を1種、もしくは2種以上の混合粉末として用いることができる。さらに基地強化のためニッケル粉末や銅粉末を上記組成の範囲内で用いることもできる。
[2]第2態様の焼結バルブシート
第2態様の焼結バルブシートは、上記第1態様の焼結バルブシートの金属組織において、硬質相の周囲にクロム硫化物が析出分散していることを特徴とする。図2は、この第2発明の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表しており、潤滑性に優れたクロム硫化物が硬質相の周囲に析出分散することで、硬質相にかかる荷重を滑らせて受け流して硬質相自体が塑性流動してしまうことが防止され、その結果、より一層の耐摩耗性の向上が果たされる。なお、図2(a)は硬質相中に析出するモリブデン珪化物が群状に析出した形態のもので、図2(b)は硬質相中に析出するモリブデン珪化物が塊状に一体となって析出した形態のものであるが、硬質相周囲に析出分散するクロム硫化物はいずれの場合でも潤滑性改善の効果を有する。
このようなクロム硫化物を硬質相の周囲に析出分散させるためには、原料粉末に(F)二硫化モリブデン粉末、(G)二硫化タングステン粉末、(H)硫化鉄粉末、(I)硫化銅粉末のうちの少なくとも1種からなる硫化物粉末を、原料粉末中のS量が0.04〜5質量%となる量だけ添加すればよい。これにより、(F)〜(I)の硫化物粉末が焼結時に分解して生じたSが、硬質相形成粉末から鉄基地に拡散したCrと反応して硬質相周囲にクロム硫化物を析出する。
ところで、金属硫化物は全て安定ではなく、一部の金属硫化物は焼結時に分解しやすいものであり、二硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化鉄、および硫化銅は特定の条件下で分解しやすいことが、参考文献(化学大辞典9縮刷版 共立出版株式会社 昭和39年3月15日発行)に記載されている。また、実際の焼結過程においては、雰囲気中に含まれる水分、酸素、水素および鉄粉表面に吸着する水分や酸素の脱着により、分解条件が満たされて分解することがあり、また硫化物が高温で活性となった金属表面と反応したり、高温で活性となった金属表面が触媒として作用して硫化物の分解を促進することは十分考えられる。一方、硫化マンガンや硫化クロムは、上記参考文献によっても分解し難い金属硫化物であることが判る。また、硫化物の形成能は電気陰性度と相関があり、Sは電気陰性度の低い元素と結合して硫化物を形成しやすいという傾向を有する。ここで、各元素の電気陰性度は、
Mn(1.5)<Cr(1.6)<Fe,Ni,Co,Mo(1.8)<Cu(1.9)
の順となっており、Mnが最も結合しやすいため、選択的にマンガン硫化物を析出させることができる。この序列は上記参考文献の記載とも一致する。このため、本発明の焼結バルブシートの製造方法においては、S供給源として、(F)二硫化モリブデン粉末、(G)二硫化タングステン粉末、(H)硫化鉄粉末、(I)硫化銅粉末のうちの少なくとも1種からなる硫化物粉末を用いる。
上記のような硫化物粉末を用いて、硬質相の周囲に十分な量のクロム硫化物粒子を析出分散させるためには、硫化物粉末の添加量は、S分として0.04質量%以上が必要となる。一方、過剰な硫化物粉末の添加は、分解後に残留する気孔量が増大することによってバルブシートの強度低下を引き起こし、これに起因して耐摩耗性の低下を招くこととなるため、その上限をS分として5質量%となる量に止める必要がある。また、硫化物粉末は、焼結時に分解して消失するため、粗大な硫化物粉末を用いると、硫化物粉末が存在していた個所が焼結後粗大な気孔となって残留するため、使用する硫化物粉末の粒径は43μm以下のものが適している。
[3]第3態様の焼結バルブシート
第3態様の焼結バルブシートは、第2態様の焼結バルブシートの基地中に、さらにクロム硫化物粒子が群状に析出した潤滑相を5〜20質量%分散させたものである。図3は、この第3発明の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表しており、潤滑性に優れたクロム硫化物を硬質相の周囲に分散させるとともに、このクロム硫化物が基地中において群状に析出した潤滑相をスポット的に分散させることで、基地の潤滑性が向上して耐摩耗性が改善される。なお、図3(a)は硬質相中に析出するモリブデン珪化物が群状に析出した形態のもので、図3(b)は硬質相中に析出するモリブデン珪化物が塊状に一体となって析出した形態のものであるが、基地中にクロム硫化物が群状に析出する潤滑相はいずれの場合でも潤滑性改善の効果を有する。
バルブシートを切削加工するにあたり、硫化物が基地中に均一に分散する場合には、刃先が均一に硫化物に衝突する。このため、切削抵抗が低減されるとともに、チップブレーク作用により切削粉の除去が容易となり、刃先への熱のこもりが防止され、刃先温度が低下する等の被削性向上の効果が高くなる。一方、硫化物粒子自体は小さいため、基地組織の潤滑性を向上させて耐摩耗性を向上させるためには、多量の硫化物が必要となるが、多量の硫化物を基地中に分散させると基地の強度が低下を引き起こす。
このため、第3態様の焼結バルブシートにおいては、潤滑性に優れたクロム硫化物を群状にスポット的に基地中に分散させることで、基地の強度低下を引き起こさない程度の適量のクロム硫化物により基地の耐摩耗性の向上を実現する。このような潤滑相は、基地中の分散量が5質量%に満たないと、基地の潤滑性向上による耐摩耗性向上の効果が不充分である。一方、クロム硫化物が20質量%を超えて分散すると、基地の強度低下が顕著となる。このため基地中へのクロム硫化物の分散は5〜20質量%とする必要がある。
上記のクロム硫化物粒子が群状に析出した潤滑相は、4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末を原料粉末に添加することで形成することができる。すなわち、焼結過程において上記の硫化物粉末が分解して生じたSが、クロム含有鋼粉末中のCrと結合してクロム硫化物が元のクロム含有鋼粉末の部分に析出することで、基地中に群状に分散した組織となる。このため、潤滑相の組成は、元のクロム含有鋼粉末の組成とほぼ一致し、Crを4〜25質量%含有したものとなる。また、クロム硫化物が群状に析出する部分の合金基地は、Fe−Cr系合金基地となる。
この潤滑相におけるCr量は、4質量%に満たないとクロム硫化物の析出が不充分となり、耐摩耗性の向上に寄与しない。一方、Cr量が25質量%を超えると、クロム含有鋼粉末が硬くなって圧縮性を損なうとともに、σ相が生じて脆化するため、上限を25質量%とする必要がある。
潤滑相は、上記のように4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末により形成できるが、そのクロム含有鋼粉末は、具体的には、下記の(L)〜(Q)のうちの少なくとも1種から選択される。すなわち、(L)Cr:4〜25質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末、(M)Cr:4〜25質量%、Ni:3.5〜22質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末、(N)Cr:4〜25質量%と、Ni:3.5〜22質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末、(O)Cr:4〜25質量%と、Ni:3.5〜22質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末、(P)Cr:7.5〜25質量%、Mo:0.3〜3.0質量%、C:0.25〜2.4質量%、およびV:0.2〜2.2質量%とW:1.0〜5.0質量%の1種または2種以上、残部がFeと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末、および(Q)Cr、4〜6質量%、Mo:4〜8質量%、V:0.5〜3質量%、W:4〜8%、C:0.6〜1.2%、および残部:Feと不可避的不純物からなるクロム含有鋼粉末、である。
上記(L)はFe−Cr合金であり、Crが12質量%を超えるものはフェライト系ステンレス鋼粉として知られるものである。また、上記(N)のように他の元素で特性を改善したフェライト系ステンレス鋼粉も使用可能である。上記(M)はFe−Ni−Cr合金であり、Crが12質量%を超えるものはオーステナイト系ステンレス鋼粉として知られるものである。また、(O)のように他の元素で特性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼粉も使用可能である。上記(P)はダイス鋼粉として知られるものであり、元来、含有されるCrはクロム炭化物として析出するが、本発明のようにSと共存する場合、析出するCrの大部分がクロム硫化物として析出する。なお、一部にクロム炭化物が残留したり、モリブデン炭化物、バナジウム炭化物、タングステン炭化物、およびそれらの複合炭化物が析出してクロム硫化物と共存する潤滑相が得られる。上記(Q)は高速度工具鋼粉として知られるものであり、上記(P)と同様、Sと共存してクロム硫化物を析出するほか、一部にクロム炭化物が残留したり、モリブデン炭化物、バナジウム炭化物、タングステン炭化物、およびそれらの複合炭化物が析出してクロム硫化物と共存する潤滑相が得られる。
なお、第3態様の焼結バルブシートにおいては、上記の潤滑相にクロム硫化物とともに炭化物がともに析出していてもよい。具体的には、上記の(P)および(Q)のクロム含有鋼粉末を用いた場合は、潤滑相にクロム硫化物とともに炭化物が析出した組織となるが、この場合には潤滑相に炭化物が析出することで、潤滑相の合金基地部分の塑性流動を防止して耐摩耗性を一層向上させることができる。クロム含有鋼粉末(P)と(Q)を比較すると、(P)の方が炭化物が少なく、(Q)の方が炭化物が多く析出する潤滑相が得られ、所望の特性に応じて適宜選択可能である。
さて、上記第1〜第3態様の焼結バルブシートは、従来より行われている被削性改善物質添加法を併用して製造することができる。たとえば、上記の耐摩耗性焼結部材の気孔中または粉末粒界に、珪酸マグネシウム系鉱物、窒化硼素、硫化マンガン、カルシウム弗化物、ビスマス、硫化クロム、鉛のうち少なくとも1種を分散させる方法を用いることができる。
これらの被削性改善物質は高温でも安定であり、粉末の形態で原料粉末に添加しても焼結過程で分解せず、被削性改善物質として気孔中または粉末粒界に分散して被削性をより一層改善する。また、被削性改善物質添加法を併用する場合の被削性改善物質粉末の添加量は、過剰に添加すると耐摩耗性焼結部材の強度を損ない、耐摩耗性の低下を招くため、上限を2.0質量%とすることが望ましい。
さらに、本発明の焼結バルブシートの製造方法においては、上記特許文献2等に記載されているように、耐摩耗性焼結部材の気孔を、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂のうちのいずれかで、含浸もしくは溶浸する方法で満たし、これによって被削性を改善する技術を併用することができる。
すなわち、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂を気孔中に存在させることにより、切削時に工具の刃先が焼結バルブシートの素材と常に接触する連続切削となる。このため、工具に与える衝撃を減少させて刃先の損傷を防止し、被削性を向上させるといった効果がある。また、鉛または鉛合金、銅または銅合金は軟質であるため、工具刃面に付着して工具の刃先を保護し、構成刃先の形成を防止して被削性および工具の寿命を向上させるとともに、使用時にバルブシートとバルブのフェイス面との間で固体潤滑剤として作用し、双方の摩耗を減少させる働きがある。さらに、銅または銅合金は熱伝導率が高く、切削時に刃先で発生する熱を外部へ放散し、刃先部の熱のこもりを防止して刃先部のダメージを軽減するといった効果がある。
本発明の焼結バルブシートの製造方法によれば、焼結バルブシートの基地中に硬質相を40〜70質量%分散させることにより、金属接触に伴うバルブシート材への負荷が高い過酷な環境でもより一層の高い耐摩耗性を発揮することができる。よって、CNGエンジンやヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジン環境において、優れた高温耐摩耗性を発揮するといった効果を奏する。
[第1実施例]
表1に示す組成および粒度構成を有する基地形成粉末および硬質相形成粉末を用意し、表1に示す配合比で混合した原料粉末を成形圧力800MPaで外径:30mm、内径20mm、高さ:10mmのリング形状に圧粉成形した後、得られた圧粉体を1200℃で1時間、分解アンモニアガス雰囲気中で焼結し、試料番号01〜19の試料を作製した。これらの試料について、圧環強さおよび簡易摩耗試験を行った結果を表2に示す。なお、硬質相形成粉末は最大粒径が150μmのものを用いた。また、試料番号19は、基地形成粉末として従来用いられている粒度構成の粉末を用いた従来例である。
簡易摩耗試験は、高温下で打撃と摺動の入力がかかる状態で行った。具体的には、上記リング状試験片を、内周縁部に45°のテーパ面を有するバルブシート形状に加工し、焼結合金をアルミ合金製ハウジングに圧入嵌合した。そして、SUH−36素材で作製した外周縁部に一部45°のテーパ面を有する円盤形状の相手材(バルブ)を、モーター駆動による偏心カムの回転によって上下ピストン運動させることにより、焼結合金と相手材とのテーパ面同士を繰り返し衝突させた。すなわち、バルブの動作は、モータ駆動によって回転する偏心カムによってバルブシートから離れる開放動作と、バルブスプリングによるバルブシートへの着座動作とを繰り返し、上下ピストン運動を行った。なお、この試験では、相手材をバーナーで加熱して焼結合金が350℃となるように温度設定し、簡易摩耗試験打撃回数を2800回/分、繰り返し時間を10時間とした。このようにして試験後のバルブシートの摩耗量およびバルブの摩耗量を測定して評価を行った。
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・基地中に分散する硬質相の量(硬質相形成粉末の添加量)の影響
表1および表2の試料番号01〜06および19の試料を比較することで、基地中に分散する硬質相の量(硬質相形成粉末の添加量)と摩耗量との関係を調査した。その結果を図5に示す。なお、図5中の番号は試料番号である。図5から判るように、基地中に分散する硬質相の量が40質量%に満たない試料(試料番号01)では、耐摩耗性が不十分で、バルブシート摩耗量が大きくなった。一方、硬質相の量が40質量%(試料番号02)では、耐摩耗性が向上してバルブシート摩耗量が小さくなった。また硬質相の量が増加するとバルブシートの耐摩耗性が向上してバルブシート摩耗量は減少したが、バルブ摩耗量は徐々に増加した。さらに、硬質相の量の増加により原料粉末の圧縮性が低下し、その結果、基地強さ(圧環強さ)が減少した。このため、硬質相の量が70質量%の試料(試料番号05)では、バルブシートの基地強さが低下した結果、逆にバルブシート摩耗量が増加した。ただし、硬質相の量が70質量%の試料(試料番号05)では合計摩耗量が許容できる範囲である。しかしながら、硬質相の量が70質量%を超える試料(試料番号06)では、基地強さ(圧環強さ)の低下によるバルブシートの耐摩耗性低下の影響が大きく、バルブシート摩耗量が著しく増加した。また、バルブ摩耗量もバルブシートの摩耗粉が研磨粒子として作用したために増大し、合計摩耗量は激増した。以上より、基地中に分散する硬質相は、40〜70質量%の範囲で耐摩耗性向上の効果があることが確認された。
・硬質相中のMo量(硬質相形成粉末中のMo量)の影響
表1および表2の試料番号03、07〜11の試料を比較することで、硬質相中のMo量(硬質相形成粉末中のMo量)と摩耗量との関係を調査した。その結果を図6に示す。図6から判るように、硬質相中のMo量が20質量%に満たない試料(試料番号07)は、硬質相中に析出するモリブデン珪化物の量が少ないため耐摩耗性が低く、バルブシート摩耗量が大きくなった。一方、硬質相中のMo珪化物の量が20質量%の試料(試料番号08)では、十分なモリブデン珪化物が析出してバルブシート摩耗量が低く抑制された。また、硬質相中のMo量が増加するに従い析出するモリブデン珪化物の量が増加してバルブシート摩耗量は低下したが、硬質なモリブデン珪化物が増加することにより、相手材であるバルブの摩耗量は、硬質相中のMo量が30質量%を超えると徐々に増加した。さらに、基地強さ(圧環強さ)は硬質相中のMo量が増加するに従い低下し、特に、Mo量が60質量%を超える試料(試料番号11)では著しく低下した。この基地強さの低下の影響のため、硬質相中のMo量が60質量%を超える試料(試料番号11)では、耐摩耗性の低下が著しく、バルブシート摩耗量が著しく増加した。また、バルブシートの摩耗粉が研磨粒子として作用した結果、バルブ摩耗量も増大し、合計摩耗量は激増した。以上より、硬質相中のMo量は20〜60質量%の範囲で耐摩耗性向上の効果があることが確認された。
・基地形成粉末の粒度構成の影響
表1および表2の試料番号03、12〜14および19の試料を比較することで、基地形成粉末の粒度構成と摩耗量との関係を調査した。その結果を図7に示す。図7から判るように、基地形成粉末として74μmを超える粉末を含まない試料番号03、12および13の試料では、焼結による基地の緻密化が達成され基地強度が向上し、耐摩耗性も向上した。一方、基地形成粉末として74μmを超える粉末を含む試料番号14では、焼結による基地の緻密化が不十分となり基地の強度が向上せず耐摩耗性は不充分となった。さらに、基地形成粉末のほとんどが74μmを超える粒度構成を有する試料番号19(従来例)では、その傾向が一層顕著で基地の強度(圧環強さ)および耐摩耗性ともに低くなった。以上より基地形成粉末として最大粒径が74μm以下の粉末を用いれば硬質相を多量に含む場合であっても基地強さおよび耐摩耗性に優れた焼結張るシートが得られることが確認された。
なお、74μm以下の基地形成粉末を用いた試料番号03、12および13の試料を比較すると、46μm以下の粉末の割合が多くなるにしたがい圧環強さは向上しており、46μm以下の粉末の割合が90%の試料番号03の試料が最も高い圧環強さを示した。このことから、最大粒径が46μm以下の粉末が90%以上を占め、最大粒径が74μm以下の粉末が残部となる粒度構成を有すると、特に好ましいことが確認された。
ここで、試料番号03の試料(本発明例)、試料番号14の試料(比較例)および試料番号19の試料(従来例)について、5%ナイタール溶液で腐食して金属組織を確認したときの金属組織写真を図13に示す。図13に示すように、試料番号03の試料(本発明例)では、基地組織中にパーライト、ソルバイトおよびベイナイト等は見られず、硬質相からの元素拡散により形成された白色相のみであることが確認された。一方、試料番号14の試料(比較例)では大きい粉末により形成された基地部分にソルバイトやベイナイト組織が残留している個所があることが確認された。このため試料番号14の試料では基地強さおよび耐摩耗性が低下しているものと考えられる。さらに試料番号19の試料(従来例)では基地組織の大部分がソルバイトやベイナイト組織となっており、さらに焼結時に緻密化が達成されず気孔量が多くなっている。これらのため試料番号19の試料は基地強さおよび耐摩耗性が低いものと考えられる。
・基地の種類(基地形成粉末の種類)の影響
表1および表2の試料番号03、15〜18の試料を比較することで、基地の種類(基地形成粉末の種類)と摩耗量との関係を調査した。その結果を図8に示す。図8から判るように、硬質相形成粉末の添加量が50質量%と多量に含み、かつ基地形成粉末として最大粒径が74μm以下の粉末を用いた場合、基地形成粉末の種類を問わず優れた耐摩耗性を示した。ただし、これらの中でも基地形成粉末としてFe−5Mo鋼粉末を用いたものが合計摩耗量が微差ではあるが最も小さく好ましい。
[第2実施例]
第1実施例の試料番号03の試料で用いた基地形成粉末(46μm以下の粉末の量が90%で46μmを超えて74μm以下の粉末の量が10%のFe−5Mo粉末)と、硬質相形成粉末(最大粒径が150μmのCo−50Mo−3Si−9Cr合金粉末)を用意するとともに、二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、硫化銅粉末、硫化マンガン粉末を用意し、表3に示す配合比で混合した原料粉末を実施例1と同様に圧粉成形、焼結して試料番号20〜29の試料を作製した。これらの試料について、圧環強さおよび簡易摩耗試験を行った結果を実施例1の試料番号03の試料の結果とともに表4に示す。
Figure 0004716366
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・硫化物粉末添加の効果(硬質相の周囲に析出するCr硫化物相の効果)
表3および4の試料番号03、20〜25を比較することで硫化物粉末添加量と摩耗量との関係を調査した。その結果を図9に示す。図9から判るように、第1態様の焼結バルブシート(試料番号03)に全体組成中のS量で5.0質量%以下となる硫化物粉末を添加することで、耐摩耗性が一層向上した。特に、全体組成中のS量で0.8(試料番号22)〜2質量%(試料番号23)の範囲で特に耐摩耗性向上の効果が顕著であった。ただし、圧環強さは硫化物粉末の添加量が増加するにしたがい低下し、特に、全体組成中のS量が5.0質量%を超えて添加(試料番号25)すると、基地の強度低下の影響が大きく、耐摩耗性が却って低下した。
試料番号22の試料について、5%ナイタール溶液で腐食して金属組織を確認したときの金属組織写真を図14に示す。図14より、硬質相の周囲に灰色の組織が分散していることがわかる。この部分を別途EPMA分析したところ、CrとSが共存していることが確認されたことから、この灰色の組織はクロム硫化物であると推定される。なお、S供給源として粉末の形態で添加した二硫化モリブデンは検出されなかったので、全て分解したものと考えられる。したがって、このクロム硫化物(灰色)は、二硫化モリブデンが分解して生じたSが基地中のCrと結合して基地中に析出したものと考えられる。
・硫化物粉末の種類の影響
表3および4の試料番号03、22、26〜29を比較することで硫化物粉末の種類と摩耗量との関係を調査した。その結果を図10に示す。図10から判るように、硫化物粉末を添加することにより種類を問わず圧環強さは低下した。その一方で、硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、および硫化銅粉末を用いた場合は、硫化物粉末未添加の試料(試料番号03)の試料よりも摩耗量が小さくなったが、硫化物粉末として硫化マンガン粉末を用いた場合には、却って摩耗量が増加した。これは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化鉄および硫化銅は焼結時に分解してクロム硫化物を生成したため耐摩耗性が向上したが、硫化マンガンは分解しないため、基地の強度低下の影響で却って耐摩耗性が低下したものと考えられる。
[第3実施例]
第1実施例の試料番号03の試料で用いた基地形成粉末(46μm以下の粉末の量が90%で46μmを超えて74μm以下の粉末の量が10%のFe−5Mo粉末)と、硬質相形成粉末(最大粒径が150μmのCo−50Mo−3Si−9Cr合金粉末)と、硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末を用意するとともに、潤滑相形成粉末として、表5に示す組成のクロム含有鋼粉末を用意し、表5に示す配合比で混合した原料粉末を実施例1と同様に圧粉成形、焼結して試料番号30〜36の試料を作製した。これらの試料について、圧環強さおよび簡易摩耗試験を行った結果を実施例1の試料番号03の試料の結果および実施例2の試料番号22の結果とともに表6に示す。
Figure 0004716366
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・潤滑相分散の効果(潤滑相形成粉末添加の効果)
表5および6の試料番号22、30〜33を比較することで、潤滑相の量(潤滑相形成粉末の添加量)と摩耗量との関係を調査した。その結果を図11に示す。図11から判るように、潤滑相を基地中にさらに分散させることで耐摩耗性がさらに向上した。特に、潤滑相の分散量が5(試料番号30)〜10質量%(試料番号31)の範囲で耐摩耗性向上が顕著であった。ただし、圧環強さは潤滑相の分散量が10質量%を超えると低下し、特に、潤滑相の分散量が20質量%を超える添加(試料番号33)では、基地の強度低下の影響が大きく、耐摩耗性が却って低下した。
試料番号31の試料について、5%ナイタール溶液で腐食して金属組織を確認したときの金属組織写真を図15に示す。図15より、硬質相とは別に灰色の粒子が群状に分散する組織が基地中に分散していることがわかる。この部分を別途EPMA分析したところ、CrとSが共存していることが確認されたことから、この灰色の組織はクロム硫化物であると推定される。このクロム硫化物が群状に分散する相(潤滑相)が基地中に分散することにより、上記のように耐摩耗性が向上したものと考えられる。
・潤滑相形成粉末の種類の影響
表5および6の試料番号22、31、34〜36を比較することで潤滑相の種類(潤滑相形成粉末の種類)と摩耗量との関係を調査した。その結果を図12に示す。図12より、潤滑相をFe−Cr系合金で構成すれば潤滑相未添加の試料(試料番号22)の場合よりも耐摩耗性が向上していることがわかる。このことから、各種Fe−Cr系合金粉末を原料粉末に添加することで潤滑相が形成でき、かつ耐摩耗性を向上できることが確認された。
本発明における第1態様の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 本発明における第2態様の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 本発明における第3態様の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 従来のバルブシートの金属組織を模式的に示す図である。 本発明の実施例における硬質相の量と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における硬質相中のMo量と摩耗量と関係を示す実施例のグラフである。 本発明の実施例における基地形成粉末の粒度構成と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における基地の種類と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における全体組成中のS量と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における硫化物粉末の種類と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における潤滑相と摩耗量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例における潤滑相形成粉末の種類と摩耗量との関係を示すグラフである。 実施例おける本発明例(第1発明の焼結バルブシート)、比較例および従来例の金属組織写真である。 本発明の第2態様の焼結バルブシートの金属組織写真である。 本発明の第3態様の焼結バルブシートの金属組織写真である。

Claims (9)

  1. 200メッシュの篩で分級して200メッシュの篩を通過した基地形成粉末に、90メッシュの篩で分級して90メッシュの篩を通過し、かつ組成がMo:20〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなる硬質相形成粉末を40〜70質量%と、黒鉛粉末:0.8〜2.0質量%とを添加して混合した原料粉末を圧粉成形した後、焼結することを特徴とする焼結バルブシートの製造方法。
  2. 前記基地形成粉末は、300メッシュの篩で分級して、300メッシュの篩を通過する粉末が90%以上を占め、200メッシュの篩を通過し300メッシュの篩を通過しない粉末が残部となる粒度構成を有することを特徴とする請求項に記載の焼結バルブシートの製造方法。
  3. 前記基地形成粉末は、下記(A)から(E)のうちの1種もしくは2種以上の混合粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結バルブシートの製造方法。
    (A)Mo:1.5〜5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼粉末
    (B)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末
    (C)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末
    (D)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末
    (E)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、および残部がFeと不可避不純物からなる部分拡散鋼粉末
  4. 前記原料粉末に、下記(F)〜(I)のうちの少なくとも1種の硫化物粉末であって、原料粉末中のS量が0.04〜5質量%となる量をさらに添加したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
    (F)二硫化モリブデン粉末
    (G)二硫化タングステン粉末
    (H)硫化鉄粉末
    (I)硫化銅粉末
  5. 前記原料粉末に、潤滑相形成粉末として90メッシュの篩で分級して90メッシュの篩を通過する下記(J)〜(N)の内の少なくとも1種からなるクロム含有鋼粉末を5〜20質量%さらに添加したことを特徴とする請求項に記載の焼結バルブシートの製造方法。
    (J)Cr:4〜25質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末
    (K)Cr:4〜25質量%、Ni:3.5〜22質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末
    (L)Cr:4〜25質量%と、Ni:3.5〜22質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末
    (M)Cr:7.5〜25質量%、Mo:0.3〜3.0質量%、C:0.25〜2.4質量%、およびV:0.2〜2.2質量%とW:1.0〜5.0質量%の1種または2種以上、残部がFeと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末
    (N)Cr、4〜6質量%、Mo:4〜8質量%、V:0.5〜3質量%、W:4〜8%、C:0.6〜1.2%、および残部:Feと不可避的不純物からなるクロム含有鋼粉末
  6. 前記原料粉末が、さらにニッケル粉末5質量%以下を含有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  7. 前記原料粉末が、さらに銅粉末5質量%以下を含有することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  8. 前記原料粉末が、硫化マンガン粉末、弗化カルシウム粉末、窒化硼素粉末、珪酸マグネシウム系鉱物粉末、ビスマス粉末、および酸化ビスマス粉末のうち少なくとも1種以上を2質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  9. 焼結後に、焼結体の気孔中に、鉛、鉛合金、銅、銅合金またはアクリル樹脂の何れかを含浸もしくは溶浸することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
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