JP4467013B2 - 焼結バルブシートの製造方法 - Google Patents

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本発明は、自動車エンジンの焼結バルブシート製造方法等に係り、特に、CNGエンジン、ヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジンに用いて好適な焼結合金製のバルブシートの開発技術に関する。
近年、自動車エンジンは高性能化により作動条件が一段と厳しくなっており、エンジンに用いられるバルブシートにおいても、従来に増して厳しい使用環境条件に耐えることが必要となってきている。たとえば、タクシー用の自動車に多く搭載されるLPGエンジンにおいては、バルブおよびバルブシートの摺接面が乾燥状態で使用されるため、ガソリンエンジンのバルブシートに比べ摩耗が早い。また、高有鉛ガソリンエンジンのようにスラッジが付着するような環境では、バルブシートに対する面圧が高い場合、あるいはディーゼルエンジンのように高温・高圧縮比の場合に、スラッジにより摩耗が促進される。このような厳しい環境で使用される場合には、耐摩耗性が良いことに併せ、へたり現象を生じないような高い強度が要求される。
一方、バルブシートが摩耗してもバルブの位置とバルブ駆動タイミングとを自動調節できるラッシュアジャスタ装置を備えた動弁機構も実用化されているが、バルブシートの摩耗によるエンジン寿命の問題が解決されているとは言えず、耐摩耗性に優れたバルブシート用材料の開発が望まれている。また、近年では、高性能化を目指すだけではなく、経済性を重視した安価な自動車の開発も重要視されつつあり、したがってこれからのバルブシート用焼結合金としては、上記ラッシュアジャスタ装置のような付加的な機構を必要としない高温耐摩耗性、高強度を有するものであることが求められるようになってきている。
このようなバルブシート用焼結合金としては、Fe−Co系とFe−Cr系との斑状基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術が開示されている(特許文献1参照)。また、Fe−Co系基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術も開示されている(特許文献2参照)。そして、Fe−Co系にNiを添加した基地中にCo−Mo−Si系硬質粒子を分散させた技術も開示されている(特許文献3参照)。さらに、Co−Mo−Si系硬質粒子を分散させたFe基合金も開示されている(特許文献4参照)。
特公昭59−037343号公報 特公平05−055593号公報 特公平07−098985号公報 特開平02−163351号公報
これらの特許文献1〜4に記載されている合金中の硬質粒子は、Mo量が40質量%以下のものであるが、この硬質粒子を含む焼結合金は相当の高温耐摩耗性、高強度を有するものである。しかしながら、近年においては、さらに、高温耐摩耗性、高強度を有する焼結合金が望まれている。特に、近年実用化されてきているCNGエンジンや、高出力用のヘビーデューティーディーゼルエンジン等のエンジンにおいては、金属接触に伴うバルブシート材への負荷が一層高いため、そのような環境下でも高い耐摩耗性を発揮する材料の開発が望まれている。
よって本発明は、特に、CNGエンジンやヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジン環境において、優れた高温耐摩耗性を発揮する焼結バルブシート製造方法を提供することを目的としている。
本発明の焼結バルブシートの製造方法は、下記の基地形成鋼粉末(A)〜(E)のうちの少なくとも1種に、下記の硬質相形成粉末(F)を5〜40質量%と、黒鉛粉末:0.4〜1.2質量%と、下記の硫化物粉末(G)〜(J)のうちの少なくとも1種からなり原料粉末中のS量が0.04〜5質量%となる量を添加して混合した原料粉末を、所望の形状に圧粉成形した後、焼結することを特徴としている。
「基地形成鋼粉末」
(A)Mo:1.5〜5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼粉末。
(B)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(C)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(D)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(E)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、および残部がFeと不可避不純物からなる部分拡散鋼粉。
「硬質相形成粉末」
(F)Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなるCo基合金粉末。
「硫化物粉末」
(G)二硫化モリブデン粉末
(H)二硫化タングステン粉末
(I)硫化鉄粉末
(J)硫化銅粉末
そして、上記製造方法により製造される焼結バルブシートは、金属組織の状態から、第1〜第3の焼結バルブシートである。以下、これらの焼結バルブシートについて説明する。
[1]第1焼結バルブシート
第1焼結バルブシートは基本構成と言えるもので、後述する基地中に、組成が、Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物からなりCo基合金基地中にモリブデン珪化物を主とする析出物が塊状に一体となって析出した硬質相が5〜40質量%分散するとともに、硬質相の周囲にCr硫化物が分散する組織を呈することを特徴としている。図1は、この第1焼結バルブシートの金属組織を模式的に表している。以下、本発明により製造されるバルブシートの金属組織、含有元素等について、個々に説明する。
〈硬質相および硬質相の周囲に形成されるCr硫化物について〉
硬質相は、上記の如く、Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物からなりCo基合金基地中にモリブデン珪化物を主とする析出物が塊状に一体となって析出した組織を呈している。そして、この硬質相の周囲に、図1に示すように、Cr硫化物が析出、分散している。
本発明により製造されるバルブシートの硬質相は、Mo量が増加することによって析出するモリブデン珪化物を増加させ、かつ、一体化させて析出させたもので、併せて、Si量を、必要なモリブデン珪化物を生成する必要量に最適化して、Mo量の増加に伴う粉末の硬さの増加を最小限に止めたものである。
図4は、従来の耐摩耗性焼結合金からなるバルブシートの金属組織を模式的に示す図であり、この図によると、従来のバルブシートの硬質相は、モリブデン珪化物が硬質相の合金基地内に群状に析出しており、このような金属組織によると、金属接触が発生する環境下では、硬質粒子として機能するモリブデン珪化物以外の硬質相の合金基地部分が基点となって、塑性流動、凝着が発生し、摩耗が生じやすかった。
一方、本発明により製造されるバルブシートの硬質相においては、モリブデン珪化物を一体化させ、かつ、塊状に形成したことにより、硬質相の合金基地部分の塑性流動および凝着の発生を、ピン止め効果によって抑制することができ、よって耐摩耗性を向上させることができる。
また、本発明により製造されるバルブシートにおいては上記硬質相の周囲に、潤滑性に優れたCr硫化物が析出分散することで、硬質相自体が塑性流動してしまうことが防止され、その結果、より一層の耐摩耗性の向上が果たせる。
本発明より製造されるバルブシートの硬質相は、焼結バルブシートの基地中に5〜40質量%分散させると、極めて良好な耐摩耗性を示す。5質量%未満では耐摩耗性向上の効果が顕著ではなく、40質量%を越えると、混合粉末の圧縮性が低下することにより焼結体の強度が低下するとともに、相手攻撃性が高まり、かえって摩耗量が増大することとなる。
〈上記成分組成(含有元素)の数値限定の根拠〉
上記硬質相は、後述する基地形成鋼粉末(A)〜(E)のような、従来より焼結バルブシートの基地として用いられている合金基地を適用することができ、基地を形成する鋼粉末あるいは混合粉末に、下記の硬質相形成粉末(F)が添加、混合されることにより、好適に形成される。
(F)Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなるCo基合金粉末。
これら成分組成の数値限定の根拠は、以下の通りである。
・Mo:48〜60質量%
Moは、主にSiと結合して、耐摩耗性、潤滑性に優れたモリブデン珪化物を形成し、焼結合金の耐摩耗性の向上に寄与する。また一部のMoは、硬質相のCo、Crと結合してモリブデン複合珪化物を形成する。Mo含有量が48質量%未満の場合にはモリブデン珪化物が一体化して析出せず、従来のような粒状のモリブデン珪化物がCo基硬質相中に分散する形態となり、耐摩耗性が従来程度に止まる。逆に、Mo含有量が60質量%を超えると、粉末の硬さが高くなって成形時の圧縮性を損ねる。また、形成される硬質相が脆くなるため、衝撃によって一部が欠けてしまい、研摩粉の作用によって耐摩耗性が逆に低下する。よって、Mo含有量は48〜60質量%とした。
・Cr:3〜12質量%
Crは、硬質相のCo基地の強化に寄与する。また、Fe基地へ拡散して、硬質相をFe基地に固着するとともに、Fe基地に固溶して基地を強化することで耐摩耗性の向上に寄与する。さらに、Fe基地に拡散したCrはSと結合することにより、硬質相の周囲に潤滑性に優れたCr硫化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。Cr含有量が3質量%に満たないとこれらの効果が乏しい。逆に、Cr含有量が12質量%を超えると、粉末の酸素量が多くなって粉末表面に酸化被膜が形成され、焼結の進行を阻害するとともに、酸化被膜により粉末が硬くなるため圧縮性の低下が生じる。このため、焼結合金の強度が低下し、耐摩耗性の低下を招くことから、Cr含有量の上限値は12質量%とした。以上により、Cr含有量は3〜12質量%とした。
・Si:1〜5質量%
Siは、主にMoと結合して、耐摩耗性、潤滑性に優れたモリブデン珪化物を形成し、焼結合金の耐摩耗性の向上に寄与する。Si含有量が1質量%未満の場合には、十分なモリブデン珪化物が得られないため、十分な耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、Si含有量が過剰であると、Moと反応せずに基地に拡散するSiが増える。SiはFe基地を硬くするが、同時に脆くもする。このため、ある程度のSiの基地への拡散は、硬質相の基地への固着の点で有効である。しかしながら、過剰なSiの拡散は、Fe基地の耐摩耗性を低下させ、相手攻撃性を増加させることとなるので、好ましくない。ここで、Moと反応しないSi量を低減すれば、その分、粉末の硬さを増加させずに適切なMo量を与えることができる。よって、Mo量と反応しないで基地に拡散するSiが増え始める5質量%をSi含有量の上限とした。以上により、Si含有量は1〜5質量%とした。
〈S供給源である硫化物粉末について〉
硬質相の周囲に形成されるCr硫化物の析出に必要となるSは、以下の(G)〜(J)の硫化物粉末のいずれかの硫化物が分解することによって供給される。
(G)二硫化モリブデン粉末
(H)二硫化タングステン粉末
(I)硫化鉄粉末
(J)硫化銅粉末
金属硫化物は全て安定ではなく、一部の金属硫化物は焼結時に分解しやすいものであり、二硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化鉄、および硫化銅は特定の条件下で分解しやすいことが、参考文献(化学大辞典9縮刷版 共立出版株式会社 昭和39年3月15日発行)にも記載されている。また、実際の焼結過程においては、雰囲気中に含まれる水分、酸素、水素および鉄粉表面に吸着する水分や酸素の脱着により分解条件が満たされて分解することがあり、また硫化物が高温で活性となった金属表面と反応したり、高温で活性となった金属表面が触媒として作用して硫化物の分解を促進することは十分考えられる。一方、硫化マンガンや硫化クロムは、上記参考文献によっても分解し難い金属硫化物であることが判る。
なお、硫化物の形成能は電気陰性度と相関があり、Sは電気陰性度の低い元素と結合して硫化物を形成しやすいという傾向を有する。ここで、各元素の電気陰性度は、
Mn(1.5)<Cr(1.6)<Fe,Ni,Co,Mo(1.8)<Cu(1.9)
の順となっており、Mnが最も結合しやすいため、選択的にマンガン硫化物を析出させることができる。この序列は上記参考文献の記載とも一致する。
上記硫化物粉末を用いて、硬質相の周囲に十分な量のCr硫化物粒子を析出分散させるためには、硫化物粉末の添加量は、S分として0.04質量%以上が必要となる。一方、過剰な硫化物粉末の添加は、分解後に残留する気孔量が増大することによってバルブシートの強度低下を引き起こし、これに起因して耐摩耗性の低下を招くこととなるため、その上限をS分として5質量%となる量に止めるべきである。なお、上記の硫化物粉末が分解した金属成分は基地に拡散するが、硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末、硫化タングステン粉末または硫化銅粉末を選択した場合は、分解して生じたMo、W、Cuは基地に拡散して基地の固溶強化に働き、基地の耐摩耗性向上に寄与する。
〈基地について〉
本発明により製造されるバルブシートの基地は、下記(a)〜(e)に示す従来の基地にすることができる。
(a)Mo:1.5〜5質量%、C:0.4〜1.2質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなり、組織がベイナイトとなる基地。
(b)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%、C:0.4〜1.2質量%および残部:Feと不可避不純物からなり、組織がベイナイトとなる基地。
(c)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、C:0.4〜1.2質量%および残部:Feと不可避不純物からなり、組織がソルバイトとなる基地。
(d)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、C:0.4〜1.2質量%および残部:Feと不可避不純物からな、組織がベイナイト単相組織またはベイナイトとマルテンサイトの混合組織となる基地。
(e)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、C:0.4〜1.2質量%および残部がFeと不可避不純物からなり、マルテンサイトとオーステナイトとベイナイトとパーライトの混合組織となる基地。
本発明により製造されるバルブシートの基地は、上記(a)〜(e)の基地組織から少なくとも1種選択されるが、要求される耐摩耗性の程度およびコストに応じて、適宜選択し組み合わせることができる。
上記(a)〜(e)の単相組織もしくは混合組織は、下記(A)〜(E)の鋼粉末とC:0.4〜1.2質量%の黒鉛粉末を基地形成粉末として用いることで形成する
(A)Mo:1.5〜5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼粉末。
(B)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(C)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(D)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
(E)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、および残部がFeと不可避不純物からなる部分拡散鋼粉。
Cは原料粉末の圧縮性の観点より上記の鋼粉末に黒鉛粉末を添加して付与される。ただし、C量(黒鉛粉末添加量)が0.4質量%に満たないと、基地組織中に強度、耐摩耗性ともに低いフェライト組織が混在するようになる。一方、C量(黒鉛粉末添加量)が1.2質量%を超えると硬いが脆いセメンタイトが析出するようになって相手攻撃性が高くなるとともに、耐摩耗性、強度が低下することとなる。したがって、C量(黒鉛粉末添加量)を0.4〜1.2質量%にする必要がある。
また、上記の基地にニッケル粉末および/または銅粉末を5質量%以下添加することで、基地組織をマルテンサイトとオーステナイトとベイナイトの混合相としても良い。この場合、基地が、5質量%以下のNiおよび/または5質量%以下のCuにより強化され、基地強度の向上が果たされる。ただしニッケル粉添加の場合、添加量が5質量%を超えると軟質なオーステナイトの量が増加するため、また銅粉末の場合、添加量が5質量%を超えると軟質な遊離銅相が基地組織中に発生し始めるため、その添加量の上限を各々5質量%に止める必要がある。
図1に示した金属組織を呈する第1焼結バルブシートは、上記基地形成鋼粉末(A)〜(E)のうちの少なくとも1種に、上記硬質相形成粉末(F)を5〜40質量%と、黒鉛粉末:0.4〜1.2質量%と、上記硫化物粉末(G)〜(J)のうちの少なくとも1種からなり原料粉末中のS量が0.04〜5質量%となる量を添加して混合した原料粉末を、所望の形状に圧粉成形した後、焼結して製造する
本発明方法では、上記のように、基地にNiおよび/またはCuを添加させる目的で、原料粉末が、ニッケル粉末5質量%以下および/または銅粉末5質量%以下を含有することを含む。
[2]第2焼結バルブシート
第2焼結バルブシートは、第1焼結バルブシートの基地中に、さらにCr硫化物粒子が群状に析出した潤滑相を5〜20質量%分散させたものである。図2は、この第2発明の焼結バルブシートの金属組織を模式的に表しており、潤滑性に優れたCr硫化物が硬質相の周囲に加わっており、このCr硫化物を基地中において群状にスポット的に分散させることで、基地の潤滑性が向上して耐摩耗性が改善される。
バルブシートを切削加工するにあたり、硫化物が基地中に均一に分散する場合には、刃先が均一に硫化物にぶつかる。このため、切削抵抗を低減する効果が得られる。また、チップブレーク作用により切削粉の除去が容易となり、刃先への熱のこもりが防止され、刃先温度が低下するという効果も得られる。これらの効果により被削性はさらに向上する。一方、硫化物粒子自体は小さいので、基地組織の潤滑性を向上させて耐摩耗性を向上させるためには、多量の硫化物が必要となるが、多量の硫化物を基地中に分散させると基地の強度が低下を引き起こすこととなる。
このため本発明においては、潤滑性に優れたCr硫化物を群状にスポット的に基地中に分散させることで、基地の強度低下を引き起こさない程度の少量のCr硫化物により基地の耐摩耗性の向上を実現するものである。このような潤滑相は、基地中の分散量が5質量%に満たないと、基地の潤滑性向上による耐摩耗性向上の効果が乏しい。一方、20質量%を超えて分散させると基地の強度低下が顕著となる。このため基地中への潤滑相の分散は5〜20質量%とする必要がある。
上記のCr硫化物粒子が群状に析出した潤滑相は、4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末を原料粉末に添加することで形成することができる。すなわち、焼結過程において上記の硫化物粉末が分解して生じたSが、クロム含有鋼粉末中のCrと結合してCr硫化物が元のクロム含有鋼粉末の部分に析出することで、基地中に群状に分散下組織となる。このため、潤滑相の組成は、元のクロム含有鋼粉末の組成とほぼ一致し、すなわちCr:4〜25質量%を含有するものである。またCr硫化物が群状に析出する部分の合金基地は、Fe−Cr系合金基地となる。
この潤滑相におけるCr量は、4質量%に満たないとCr硫化物が析出せず、耐摩耗性の向上に寄与しない。一方、Cr量が25質量%を超えるとクロム含有鋼粉末が硬くなって圧縮性を損なうとともに、σ相が生じて脆化するため、上限を25質量%とする必要がある。
上記潤滑相は、上記のように4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末により形成できるが、そのクロム含有鋼粉末は、具体的には、下記の(L)〜(Q)のうちの少なくとも1種から選択される。
(L)Cr:4〜25質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末
(M)Cr:4〜25質量%、Ni:3.5〜22質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
(N)Cr:4〜25質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
(O)Cr:4〜25質量%と、Ni:3.5〜22質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
(P)Cr:7.5〜25質量%、Mo:0.3〜3.0質量%、C:0.25〜2.4質量%、およびV:0.2〜2.2質量%とW:1.0〜5.0質量%の1種または2種以上、残部がFeと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
(Q)Cr、4〜6質量%、Mo:4〜8質量%、V:0.5〜3質量%、W:4〜8%、C:0.6〜1.2%、および残部:Feと不可避的不純物からなるクロム含有鋼粉末。
上記(L)はFe−Cr合金であり、Crが12質量%を超えるものはフェライト系ステンレス鋼粉として知られるものである。また、上記(N)のように他の元素で特性を改善したフェライト系ステンレス鋼粉も使用可能である。
上記(M)はFe−Ni−Cr合金であり、Crが12質量%を超えるものはオーステナイト系ステンレス鋼粉として知られるものである。また、(O)のように他の元素で特性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼粉も使用可能である。
上記(P)はダイス鋼粉として知られるものであり、元来、含有されるCrはクロム炭化物として析出するが、本発明のようにSと共存する場合、析出するCrの大部分がCr硫化物として析出する。なお、一部にクロム炭化物が残留したり、モリブデン炭化物、バナジウム炭化物、タングステン炭化物、およびそれらの複合炭化物が析出してCr硫化物と共存する潤滑相が得られる。
上記(Q)は高速度工具鋼粉として知られるものであり、上記(P)と同様、Sと共存してCr硫化物を析出するほか、一部にクロム炭化物が残留したり、モリブデン炭化物、バナジウム炭化物、タングステン炭化物、およびそれらの複合炭化物が析出してCr硫化物と共存する潤滑相が得られる。
図2に示した金属組織を呈する第2焼結バルブシートを製造する方法は、上記技術に基づきなされた本発明のうちの1つであり、すなわち、上記第1焼結バルブシートの製造方法において、原料粉末が、さらに、潤滑相形成粉末として4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末を5〜20質量%を含むことを特徴としている。この場合、さらに、クロム含有鋼粉末が、上記(L)〜(Q)のうちの少なくとも1種からなることを含む。
[3]第3焼結バルブシート
上記の(P)および(Q)の場合は、潤滑相にCr硫化物とともに炭化物が析出した組織となるが、これが第3焼結バルブシートである。図3は、第3焼結バルブシートの金属組織を模式的に表しており、この焼結バルブシートによれば、潤滑相に炭化物が析出することで、潤滑相の合金基地部分の塑性流動を防止して耐摩耗性を一層向上させることができる。(P)と(Q)を比較すると、(P)の方が炭化物が少なく、(Q)の方が炭化物が多く析出する潤滑相が得られ、所望の特性に応じて適宜選択可能である。
さて、上記第1〜第3焼結バルブシートにおいては、従来より行われている被削性改善物質添加法を併用して製造することができる。その方法としては、上記の耐摩耗性焼結部材の気孔中または粉末粒界に、硫化マンガン粒子、弗化カルシウム粒子、窒化硼素粒子、珪酸マグネシウム系鉱物粒子、ビスマス粒子、および酸化ビスマス粒子のうち少なくとも1種を分散させる方法である。
これらの被削性改善物質は高温でも安定であり、粉末の形態で原料粉末に添加しても焼結過程で分解せず、被削性改善物質として上記の箇所に分散して被削性を改善できる。この被削性改善物質添加法の併用により、より一層の耐摩耗性焼結部材の被削性改善を行うことができる。また、被削性改善物質添加法を併用する場合の被削性改善物質粉末の添加量は、過剰に添加すると耐摩耗性焼結部材の強度を損ない、耐摩耗性の低下を招くため、上限を2.0質量%に止めるべきである。
さらに、本発明の焼結バルブシートの製造方法においては、上記特許文献2等に記載されているように、耐摩耗性焼結部材の気孔を、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂のうちのいずれかで、含浸もしくは溶浸する方法で満たし、これによって被削性の改善を図る技術を併用することができる。
すなわち、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂は気孔中に存在すると、切削時に、切削形態が断続切削から連続切削に変化する。このため、工具に与える衝撃を減少させて工具刃先の損傷を防止し、被削性を向上させるといった効果がある。また、鉛または鉛合金、銅または銅合金は軟質であるため、工具刃面に付着して工具の刃先を保護し、被削性および工具の寿命を向上させるとともに、使用時にバルブシートとバルブのフェイス面との間で固体潤滑剤として作用し、双方の摩耗を減少させる働きがある。さらに、銅または銅合金は熱伝導率が高く、切削時に刃先で発生する熱を外部へ逃がし、刃先部の熱のこもりを防止して刃先部のダメージを軽減するといった効果がある。
本発明によれば、基地中に、組成が、Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物からなりCo基合金基地中にモリブデン珪化物を主とする析出物が塊状に一体となって析出した硬質相が5〜40質量%分散するとともに、その硬質相の周囲にCr硫化物が分散する組織を備えさせたことにより、金属接触に伴う負荷を軽減させ、そのような環境下でもより一層の高い耐摩耗性を発揮する焼結バルブシートとなる。よって、CNGエンジンやヘビーデューティーディーゼルエンジン等の高負荷エンジン環境において、優れた高温耐摩耗性を発揮するバルブシートを提供することができるといった効果を奏する。
原料粉末として、以下の組成の各種粉末を混合し、さらに、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)を配合して、原料粉末を調製した。なお、元素記号の前の数字は粉末中に含まれる元素の質量%を示し、例えば「Fe-5Mo」はMoを5質量%含有し残部がFeおよび不可避不純物からなることを示している。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo (残部)
・硬質相形成粉末:成分組成は表1の通り (25質量%;一定)
・硫化物粉末 :MoS (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
この混合粉末を、成形圧力650MPaで、外径:φ30(mm)×内径:φ20(mm)×高さ:h10(mm)のリングに成形した。
Figure 0004467013
次に、これら成形体を、1180℃のアンモニア分解ガス雰囲気中で60分間加熱して焼結し、表1に示す組成の試料01〜16を作製した。これら試料について、次の要領で簡易摩耗試験を行った。
簡易摩耗試験は、高温下で叩きと摺動の入力がかかる状態で行った。具体的には、上記試料を、内径面に45°のテーパ面を有するバルブシート形状に加工し、試料をアルミ合金製ハウジングに圧入、嵌合した。そして、SUH−36素材で作製した、外形面に一部45°のテーパ面を有する円盤形状の相手材(バルブに相当)を、モータ駆動による偏心カムの回転によって上下ピストン運動させることにより、試料と相手材のテーパ面同士を繰り返し衝突させた。
すなわち、バルブの動作は、モータ駆動によって回転する偏心カムによってバルブシートから離れる開放動作と、バルブスプリングによるバルブシートへの着座動作とを繰り返し、上下ピストン運動が実現される。なお、この試験では、相手材をバーナーで加熱して試料が300℃となるように温度設定し、簡易摩耗試験叩き回数を2800回/分、繰り返し時間を15時間とした。このようにして、試験後の試料および相手材(表1では、それぞれバルブシートおよびバルブと表記)の摩耗量を測定し、評価を行った。
実施例1の試験結果を、表1に併記する。
表1の試料番号01〜06を見ると、硬質相形成粉末中のMo量が48〜60質量%の範囲である試料(試料番号02〜05)は、バルブシートおよびバルブの摩耗量が安定して低くなっており、良好な耐摩耗性を示すことが判る。一方、Mo量が48〜60質量%の範囲を逸脱している試料(試料番号01,06)は、特にバルブシートの摩耗量が顕著に高くなっており、バルブの摩耗量も比較的高い。したがって、硬質相形成粉末中のMo量が48〜60質量%の範囲であれば、優れた耐摩耗性が実現されることが確認された。
また、表1の試料番号03,07〜11を見ると、硬質相形成粉末中のCr量が3〜12質量%の範囲である試料(試料番号03,08〜10)は、バルブシートおよびバルブの摩耗量が安定して低くなっており、良好な耐摩耗性を示すことが判る。一方、Cr量が3〜12質量%の範囲を逸脱している試料(試料番号07,11)は、特にバルブシートの摩耗量が顕著に高くなっている。したがって、硬質相形成粉末中のCr量が3〜12質量%の範囲であれば、優れた耐摩耗性が実現されることが確認された。
次に、表1の試料番号03,12〜16を見ると、硬質相形成粉末中のSi量が1〜5質量%の範囲である試料(試料番号03,13,14)は、バルブシートおよびバルブの摩耗量が安定して低くなっており、良好な耐摩耗性を示すことが判る。一方、Si量が1〜5質量%の範囲を逸脱している試料(試料番号12,15)は、特にバルブシートの摩耗量が顕著に高くなっている。したがって、硬質相形成粉末中のSi量が1〜5質量%の範囲であれば、優れた耐摩耗性が実現されることが確認された。
また、上記の本発明範囲の試料は、従来例(試料番号16)に比べてはるかに高い耐摩耗性を示すことが確認された。
さらに、試料番号03の試料について金属組織観察を行ったところ、図1の模式図に示すように、硬質相周囲にクロム硫化物が分散していることを確認した。
以下の原料粉末を用いて、実施例1と同様に、原料粉末を混合し、成形、焼結して、リング状の試料を作製した。そして、これら試料につき、実施例1と同様の条件で簡易摩耗試験を行った。その結果を、表2に示す。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo (残部)
・硬質相形成粉末:Co-50Mo-10Cr-3Si (添加量は表2の通り)
・硫化物粉末 :MoS (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
Figure 0004467013
表2に示すように、混合粉末全体の質量に対する硬質相形成用合金粉末の添加量が5〜40質量%の範囲である試料(試料番号03,18〜22)は、バルブシートおよびバルブの摩耗量が安定して低くなっており、良好な耐摩耗性を示すことが判る。一方、硬質相形成用合金粉末の添加量が5〜40質量%の範囲を逸脱している焼結合金(試料番号17,23)は、特にバルブシートの摩耗量が顕著に高くなっている。したがって、混合粉末全体の質量に対する硬質相形成用合金粉末の添加量が5〜40質量%の範囲であれば、優れた耐摩耗性が実現されることが確認された。
以下の原料粉末を用いて、実施例1と同様に、原料粉末を混合し、成形、焼結して、リング状の試料を作製した。そして、これら試料につき、実施例1と同様の条件で簡易摩耗試験を行った。その結果を、表3に示す。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo鋼粉 (残部)
Fe-6.5Co-1.5Mo-1.5Ni鋼粉 (残部)
Fe-3Cr-0.3Mo-0.3V鋼粉 (残部)
Fe-6.5Co-1.5Mo-1.5Ni鋼粉とFe-3Cr-0.3Mo-0.3V鋼粉を半々(残部)
Fe-4Ni-1.5Cu-0.5Mo部分拡散鋼粉 (残部)
・硬質相形成粉末:Co-50Mo-10Cr-3Si (25質量%)
Co-28Mo-8Cr-2.5Si(従来例) (25質量%)
・硫化物粉末 :MoS (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
Figure 0004467013
表3に示す実施例3は、各種基地に本発明の硬質相および硫化物を適用した場合と、従来の硬質相を適用した場合について、耐摩耗性を比較したものである。これによると、従来より焼結バルブシートに採用されている各種基地に本発明の硬質相および硫化物を適用した場合、従来の硬質相を適用した場合に比べてはるかに優れた耐摩耗性を示すことが確認された。また、併せて本発明の硬質相は従来より使用されている焼結バルブシートの基地に適用できることが確認された。
以下の原料粉末を用いて、実施例1と同様に、原料粉末を混合し、成形、焼結して、リング状の試料を作製した。そして、これら試料につき、実施例1と同様の条件で簡易摩耗試験を行った。その結果を、表4に示す。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo (残部)
・硬質相形成粉末:Co-50Mo-10Cr-3Si (25質量%)
・硫化物粉末 :種類は表4の通り (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
Figure 0004467013
表4の試料番号32〜35の試料について金属組織観察を行い、クロム硫化物の存在を確認したところ、分解しやすい二硫化タングステン、硫化鉄、硫化銅を添加した試料(試料番号32〜34)では、二硫化モリブデンを添加した試料(試料番号03)と同様、硬質相周囲にクロム硫化物粒子が析出していることが認められた。一方、安定な硫化物である硫化マンガンを添加した試料(試料番号35)では、硫化物は硫化マンガンの形態で気孔および粉末粒界に分散しており、硬質相周囲の基地中には析出硫化物は認められなかった。これらのことより、分解しやすい硫化物を原料粉末に添加することで、焼結時に硫化物が分解して生じたSが、硬質相より基地に拡散したCrと結合してクロム硫化物の形態で析出することが確認された。また、表4に示すように、硬質相周囲にクロム硫化物が析出した試料(試料番号03,32〜34)は、耐摩耗性が改善されや値を示しており、優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
以下の原料粉末を用いて、実施例1と同様に、原料粉末を混合し、成形、焼結して、リング状の試料を作製した。そして、これら試料につき、実施例1と同様の条件で簡易摩耗試験を行った。その結果を、表5に示す。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo (残部)
・硬質相形成粉末:Co-50Mo-10Cr-3Si (25質量%)
・硫化物粉末 :MoS (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
・潤滑相形成粉末:Fe-12Cr-1Mo-0.5V-1.4C (添加量は表5に示す通り)
Figure 0004467013
表5によると、潤滑相形成粉末を5質量%添加(試料番号36)すると、未添加の場合(試料番号03)に比べて、摩耗量が小さくなり耐摩耗性が改善されることが確認された。また、潤滑相形成粉末の添加量が10質量%(試料番号37)のとき、耐摩耗性改善の効果は最大となっている。一方、添加量が10質量%を超えると、耐摩耗性改善の効果が逆に薄れていき、添加量が20質量%を超えると、基地の強度低下の影響が大きくなり、かえって摩耗量が増大している。よって、潤滑相形成粉末の添加量は5〜20質量%の範囲で耐摩耗性改善の効果があることが確認された。
また、潤滑相形成粉末を添加した試料(試料番号37)の金属組織を観察したところ、クロム硫化物が硬質相の周囲に析出し、さらに元の潤滑相形成粉末の箇所に、クロム硫化物粒子が群状に析出していることが確認された。また、このクロム硫化物粒子が群状に析出する潤滑相に一部炭化物粒子が併せて析出していることが確認された。
以下の原料粉末を用いて、実施例1と同様に、原料粉末を混合し、成形、焼結して、リング状の試料を作製した。そして、これら試料につき、実施例1と同様の条件で簡易摩耗試験を行った。その結果を、表6に示す。
・基地形成粉末 :Fe-5Mo (残部)
・硬質相形成粉末:Co-50Mo-10Cr-3Si (25質量%)
・硫化物粉末 :MoS (2質量%)
・黒鉛粉末 : (1.1質量%)
・潤滑相形成粉末:種類は表6に示す通り (10質量%)
Figure 0004467013
表6によると、潤滑相形成粉末の種類を変更しても、同様に耐摩耗性改善の効果があることが確認された。また、これらの試料について金属組織を観察したところ、試料番号41,42の試料では、硬質相の周囲にクロム硫化物の析出が認められるとともに、クロム硫化物粒子が群状に析出する潤滑相が基地中に分散していることが確認された。また、試料番号43の試料では、硬質相の周囲にクロム硫化物の析出が認められるとともに、クロム硫化物粒子と炭化物粒子が群状に析出する潤滑相が基地中に分散していることが確認された。
本発明により製造された第1焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 本発明により製造された第2焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 本発明により製造された第3焼結バルブシートの金属組織を模式的に表す図である。 従来のバルブシートの金属組織を模式的に示す図である。

Claims (7)

  1. 下記の基地形成鋼粉末(A)〜(E)のうちの少なくとも1種に、下記の硬質相形成粉末(F)を5〜40質量%と、黒鉛粉末:0.4〜1.2質量%と、下記の硫化物粉末(G)〜(J)のうちの少なくとも1種からなり原料粉末中のS量が0.04〜5質量%となる量を添加して混合した原料粉末を、所望の形状に圧粉成形した後、焼結することを特徴とする焼結バルブシートの製造方法。
    「基地形成鋼粉末」
    (A)Mo:1.5〜5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼粉末。
    (B)Cr:2〜4質量%、Mo:0.2〜0.4質量%、V:0.2〜0.4質量%および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
    (C)Co:5.5〜7.5質量%、Mo:0.5〜3質量%、Ni:0.1〜3質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
    (D)Mo:0.4〜4質量%、Ni:0.6〜5質量%、Cu:0.5〜5質量%、Cr:0.05〜2質量%、およびV:0.05〜0.6質量%、および残部:Feと不可避不純物からなる鋼粉末。
    (E)Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1.0%、および残部がFeと不可避不純物からなる部分拡散鋼粉。
    「硬質相形成粉末」
    (F)Mo:48〜60質量%、Cr:3〜12質量%、Si:1〜5質量%、および残部:Coと不可避不純物よりなるCo基合金粉末。
    「硫化物粉末」
    (G)二硫化モリブデン粉末
    (H)二硫化タングステン粉末
    (I)硫化鉄粉末
    (J)硫化銅粉末
  2. 前記原料粉末が、さらにニッケル粉末5質量%以下を含有することを特徴とする請求項に記載の焼結バルブシートの製造方法。
  3. 前記原料粉末が、さらに銅粉末5質量%以下を含有することを特徴とする請求項またはに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  4. 前記原料粉末が、さらに、潤滑相形成粉末として4〜25質量%のCrを含有するクロム含有鋼粉末を5〜20質量%を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  5. 前記クロム含有鋼粉末が、下記の(L)〜(Q)のうちの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項に記載の焼結バルブシートの製造方法。
    (L)Cr:4〜25質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
    (M)Cr:4〜25質量%、Ni:3.5〜22質量%、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
    (N)Cr:4〜25質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
    (O)Cr:4〜25質量%と、Ni:3.5〜22質量%と、Mo:0.3〜7質量%、Cu:1〜4質量%、Al:0.1〜5質量%、N:0.3質量%以下、Mn:5.5〜10質量%、Si:0.15〜5質量%、Nb:0.45質量%以下、P:0.2質量%以下、S:0.15質量%以下、およびSe:0.15%以下のうち、少なくとも1種以上、および残部:Feと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
    (P)Cr:7.5〜25質量%、Mo:0.3〜3.0質量%、C:0.25〜2.4質量%、およびV:0.2〜2.2質量%とW:1.0〜5.0質量%の1種または2種以上、残部がFeと不可避不純物からなるクロム含有鋼粉末。
    (Q)Cr、4〜6質量%、Mo:4〜8質量%、V:0.5〜3質量%、W:4〜8%、C:0.6〜1.2%、および残部:Feと不可避的不純物からなるクロム含有鋼粉末。
  6. 前記原料粉末が、硫化マンガン粉末、弗化カルシウム粉末、窒化硼素粉末、珪酸マグネシウム系鉱物粉末、ビスマス粉末、および酸化ビスマス粉末のうち少なくとも1種以上を2質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
  7. 焼結後に、焼結体の気孔中に、鉛、鉛合金、銅、銅合金またはアクリル樹脂のいずれかを含浸もしくは溶浸することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の焼結バルブシートの製造方法。
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