JP4715424B2 - 内燃機関の停止制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の停止制御装置に関する。
内燃機関を停止させる際に、機関停止時にクランク軸を所定のクランク角度位置で停止させるべく内燃機関の慣性エネルギを一定する停止制御装置において、内燃機関を停止させる際に内燃機関の負荷を可能な限り小さくする停止制御装置が知られている(特許文献1参照)。
特開2004−263566号公報
内燃機関を停止させる際、内燃機関の運転状態によっては全ての補機を停止させることができない場合がある。この場合、動作している補機の影響によって停止過程の内燃機関の慣性エネルギが変化し、内燃機関の停止時におけるクランク軸の停止位置にばらつきが生じるおそれがある。
そこで、本発明は、内燃機関を停止させる際に補機が動作していても内燃機関の停止時におけるクランク軸の停止位置のばらつきを抑制可能な内燃機関の停止制御装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の内燃機関の停止制御装置は、所定の機関停止条件が満たされた場合に内燃機関の燃焼を停止させる内燃機関の停止制御装置において、前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段と、前記内燃機関の停止時に前記内燃機関のクランク軸を停止させる目標停止範囲に基づいて前記内燃機関の燃焼停止を判定する判定回転数範囲を設定する判定回転数範囲設定手段と、前記クランク軸により駆動される補機の作動状態に基づいて前記クランク軸を減速させるブレーキトルクを推定するブレーキトルク推定手段と、前記ブレーキトルク推定手段により推定されたブレーキトルクに基づいて前記判定回転数範囲を補正する補正手段と、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数が前記判定回転数範囲内にあると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させる機関停止手段と、を備え、前記回転数取得手段は、前記内燃機関の少なくとも一つの気筒の膨張行程の前半に設定された所定のクランク角度範囲における前記内燃機関の回転数を取得し、前記所定のクランク角度範囲として前記内燃機関の膨張行程の前半において前記内燃機関の回転数が最大になるクランク角度を含むクランク角度範囲が設定され、前記機関停止手段は、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数の最大値が前記判定回転数範囲内であると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
本発明の第1の停止制御装置によれば、補機の作動状態に基づいてブレーキトルクを推定し、このブレーキトルクに基づいて判定回転数範囲を補正するので、機関停止時にクランク軸を目標停止範囲内に精度良く停止させることができる。そのため、内燃機関の補機が動作していてもクランク軸を目標停止範囲内に精度良く停止させ、クランク軸の停止位置のばらつきを抑えることができる。膨張行程において回転数が最大値(以降、ピーク回転数と記述することもある。)に達した以降は、次の膨張行程までクランク軸にクランク軸を加速させる力が作用しない。本発明では、膨張行程の回転数を使用して燃焼停止を判定するので、クランク軸を停止させている停止過程にクランク軸に作用する外乱を抑えることができる。そのため、クランク軸の停止位置のばらつきをさらに抑制できる。また、本発明では、内燃機関の燃焼を停止させる直前のピーク回転数をほぼ揃えることができる。一般的に内燃機関の回転数は内燃機関の慣性エネルギと相関しているので、このようにピーク回転数を揃えることで、内燃機関の燃焼を停止させる直前の内燃機関の最大慣性エネルギを揃えることができる。そのため、クランク軸の停止位置のばらつきをさらに抑制できる。
本発明の第1の停止制御装置の一形態において、前記ブレーキトルク推定手段は、前記内燃機関の冷却水の温度、前記内燃機関の潤滑油の温度、及び前記内燃機関が置かれた環境における大気圧の少なくともいずれか一つに基づいて前記クランク軸を減速させるブレーキトルクを補正してもよい(請求項2)。潤滑油の粘度はクランク軸のフリクションに影響を与えるため、潤滑油の粘度と相関する潤滑油の温度又は冷却水の温度に基づいてブレーキトルクを補正することで、ブレーキトルクの推定精度を向上できる。また、大気圧は内燃機関の圧縮反力に影響を与えるので、大気圧に基づいてブレーキトルクを補正することでもブレーキトルクの推定精度を向上できる。このようにブレーキトルクの推定精度を向上させることで、クランク軸の停止位置のばらつきをさらに抑えることができる。
本発明の第2の内燃機関の停止制御装置は、所定の機関停止条件が満たされた場合に内燃機関の燃焼を停止させる内燃機関の停止制御装置において、前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段と、前記所定の機関停止条件が満たされた場合に前記内燃機関のクランク軸により駆動される補機の作動状態が前記補機を動作させる所定状態に固定されるように前記補機の動作を制御する補機動作制御手段と、前記補機動作制御手段により作動状態が前記所定状態に固定されて負荷が固定された前記補機が前記クランク軸に与えるブレーキトルクを推定するとともに、推定したブレーキトルクと前記内燃機関の停止時に前記内燃機関のクランク軸を停止させる目標停止範囲とに基づいて前記内燃機関の燃焼停止を判定する判定回転数範囲を設定する判定回転数範囲設定手段と、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数が前記判定回転数範囲内にあると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させる機関停止手段と、を備えたことにより、上述した課題を解決する(請求項3)。
本発明の第2の停止制御装置によれば、内燃機関を停止させる際の補機の作動状態が予め設定された所定状態に固定されて補機の負荷が一定に固定され、かつ判定回転数範囲がこの作動状態が所定状態に固定された補機の負荷を考慮して設定されるので、補機が動作していてもクランク軸を目標停止範囲に精度良く停止させることができる。そのため、クランク軸を目標停止範囲内に精度良く停止させ、クランク軸の停止位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の第2の停止制御装置の一形態において、前記回転数取得手段は、前記内燃機関の少なくとも一つの気筒の膨張行程に設定された所定のクランク角度範囲における前記内燃機関の回転数を取得してもよい(請求項4)。また、前記所定のクランク角度範囲として前記内燃機関の膨張行程において前記内燃機関の回転数が最大になるクランク角度を含むクランク角度範囲が設定され、前記機関停止手段は、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数の最大値が前記判定回転数範囲内であると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させてもよい(請求項5)。この形態によれば、上述した第1の停止制御装置と同様に、クランク軸の停止過程におけるクランク軸への外乱を抑制できる。また、内燃機関を燃焼を停止させる直前のピーク回転数をほぼ揃えることができる。そのため、クランク軸の停止位置のばらつきをさらに抑制できる。
以上に説明したように、本発明によれば、補機が動作していてもクランク軸を目標停止範囲内に精度良く停止させることができる。そのため、内燃機関の停止時におけるクランク角度位置のばらつきを抑制できる。
[第1の形態]
図1は、本発明の停止制御装置が組み込まれた内燃機関の要部を示している。図1の内燃機関は、車両に走行用動力源として搭載されるもので、4つの気筒(図1では1つのみを示す。)が一列に並べられた、いわゆる直列4気筒のレシプロ式内燃機関(以下、エンジンと呼ぶことがある。)1として構成されている。なお、4つの気筒には、#1〜#4の気筒番号を付して区別する。エンジン1の各気筒2には、それぞれピストン3が往復動自在に挿入される。各気筒2の開口部はシリンダヘッド4にて閉じられ、各気筒2には気筒2の壁面とピストン3とシリンダヘッド4とによって燃焼室5がそれぞれ形成される。各燃焼室5には、吸気を取り込むための吸気通路6と、燃焼室5から排気を所定の排気位置まで導くための排気通路7とが接続される。各燃焼室5には、これら通路6、7を燃焼室5に対して開閉するための吸気弁8及び排気弁9と、燃焼室5内の燃料混合気に点火するための点火プラグ10とがそれぞれ設けられている。各ピストン3の往復運動はコンロッド11を介してクランク軸12に伝達され、クランク軸12を回転させる。吸気通路6には吸気量調整用のスロットルバルブ13と燃料噴射弁14とが設けられ、排気通路7には排気の空燃比に対応した信号を出力する空燃比センサ15が設けられている。エンジン1には、オルタネータ16、エアコン用のコンプレッサ17、パワーステアリング用のPSオイルポンプ18などが補機として設けられている。これらオルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18は、不図示の回転伝達機構を介してクランク軸12と接続されており、クランク軸12によって駆動される。なお、以降、オルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18を区別せずに補機と記述することもある。
エンジン1には、クランク軸12の回転位置(クランク角)を検出するためのクランク角検出装置20が設けられている。クランク角検出装置20は、クランク軸12と一体回転するロータ21と、ロータ21の外周と対向するように配置されたクランク角信号出力手段としてのクランク角センサ22とを備えている。ロータ21の外周には、周方向に所定の間隔、例えば10°間隔で凸部(不図示)が設けられており、クランク角センサ22はこれら凸部の検出に応答して検出信号を出力する。また、周知のようにロータ21の外周には、クランク軸12の基準位置を示すための基準位置指示部(不図示)が設けられている。
クランク角センサ22の出力信号はエンジンコントロールユニット(以下、ECUと呼ぶ。)100に入力される。ECU100は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を備え、そのROMに記録された種々のプログラムを実行してエンジン1の運転状態を制御する周知のコンピュータユニットである。例えば、ECU100は、エンジン1の負荷などに応じてエンジン1に供給すべき燃料量を決定し、この決定した燃料量が供給されるように燃料噴射弁14の動作を制御する。この他、ECU100は、クランク角センサ22の出力信号に基づいて各燃焼室5内の燃料をそれぞれ適切な時期に燃焼させるべく点火プラグ10の点火時期を制御したり、燃焼に必要な吸気が燃焼室5に供給されるようにスロットルバルブ13の開度を調整する。また、例えばエンジン1の加速時などにコンプレッサ17を停止させるなど、ECU100はエンジン1の運転状態に応じてオルタネータ16、コンプレッサ17、PSオイルポンプ18などの補機の動作も制御している。ECU100にはエンジン1の冷却水の温度に対応した信号を出力する冷却水温センサ30、潤滑油の温度に対応した信号を出力する潤滑油温センサ31、エンジン1が置かれた環境の大気圧に対応した信号を出力する大気圧センサ32が接続されており、ECU100はこれらのセンサの出力信号を参照して上述した制御を行っている。なお、これらの具体的な制御方法は、周知のものと同様でよく、ここでは詳細を省略する。
また、ECU100は、クランク角センサ22から出力される検出信号の時間間隔を検出し、30°CA(クランク角度を意味する。)毎のエンジン1の回転数を算出する。図2(a)は、アイドル運転時にECU100によって算出された30°CA毎のエンジン1の回転数の時間変化の一例を示した図である。また、図2(b)は、図2(a)の時間Tの範囲を拡大して示した図である。なお、図2(b)に拡大して示した時間Tの範囲は、ある気筒2の膨張行程の後半から次の気筒2の膨張行程の期間に相当する。図2(a)に示したように各気筒2の膨張行程においてクランク軸12にクランク軸12を回転させる力が伝達されるので、各気筒2の膨張行程においてエンジン1の回転数が上昇している。図2(b)に拡大して示したように、エンジン1の回転数は、各膨張行程における上死点(TDC)〜上死点後30°CA(以後、30°ATDCと記述することもある。)のクランク角度範囲から上昇し、上死点後60°CA〜90°CA(60°ATDC〜90°ATDC)のクランク角度範囲において最大となる。すなわち、各気筒2の燃焼サイクルにおいて膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲にて回転数がピーク回転数になる。その後、回転数は徐々に低下し、次の気筒2の膨張行程において再度上昇する。なお、実際のエンジン1の回転数は図2(b)の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲内に含まれるクランク角度において最大になるが、本発明ではクランク角度センサ22の出力信号に基づいて30°CA毎のエンジン1の回転数を算出するので、60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲における回転数を最大回転数、すなわちピーク回転数と呼ぶ。なお、以降、このエンジン1の回転数がピーク回転数になる膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲をピーク回転数クランク角度範囲と記述することもある。
上述した制御の他にECU100は、エンジン1の運転中に所定の機関停止条件が満たされるとエンジン1の運転を停止させ、所定の再始動条件が満たされるとエンジン1を再始動させる、いわゆるアイドルストップ制御をエンジン1に対して実行する。図3は、ECU100が、このアイドルストップ制御においてエンジン1を停止させるために実行する機関停止制御ルーチンを示している。この制御ルーチンは、ECU100の動作中に所定の周期で、ECU100が実行する他の制御ルーチンと並列に繰り返し実行される。
3の制御ルーチンにおいてECU100は、まずステップS11でエンジン1が停止しているか否か判断する。エンジン1の停止は例えばクランク角センサ22の出力信号に基づいて判断され、この出力信号が所定時間変化しない場合すなわちクランク軸12の回転が停止している場合にエンジン1が停止していると判断する。エンジン1が停止していると判断した場合はステップS12に進み、エンジン1を停止させている途中であることを示す停止過程中フラグをオフの状態に切り替える。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、エンジン1が運転中であると判断した場合はステップS13に進み、ECU100はエンジン1の停止要求が有ったか否か判断する。ECU100は、この機関停止制御ルーチンとは異なる制御ルーチンによってエンジン1の運転状態を監視しており、例えば車速がゼロ、かつアイドリング運転が所定時間継続した場合などに所定の機関停止条件が満たされたと判断してエンジン1の停止を要求する。エンジン1の停止要求が無いと判断した場合は、今回の制御ルーチンを終了する。
一方、エンジン1の停止要求が有ったと判断した場合はステップS14に進み、ECU100は停止過程中フラグがオフの状態であるか否か判断する。停止過程中フラグがオンの状態と判断した場合はステップS23に進み、ECU100は燃料噴射弁14及び点火プラグ10の動作をそれぞれ停止させる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、停止過程中フラグがオフの状態と判断した場合はステップS15に進み、ECU100はエンジン1が停止したときにクランク軸12を停止させる目標停止範囲に基づいて判定回転数範囲を設定する。
判定回転数範囲は、例えば図4に示したマップに基づいて設定される。図4のマップは、各気筒2の膨張行程においてエンジン1の回転数が最大となるクランク角度範囲において取得されたエンジン回転数(ピーク回転数)とそのエンジン回転数のときにエンジン1の燃焼を停止してエンジン1を停止させたときにクランク軸12が停止するクランク角度位置(以降、停止クランク角度位置と記述することもある。)との関係を示している。なお、図2(b)に示したようにエンジン1では膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲において回転数が最大となるので、図4の横軸にはこのクランク角度範囲のエンジン回転数が用いられる。図4に示した関係は、予め実験や数値計算などにより求めてECU100のROMにマップとして記憶させておく。
図4のマップでは、例えばピーク回転数N1のときにエンジン1の燃焼を停止させた(以降、燃焼カットと記述することもある。)場合、エンジン1の停止時にクランク軸12が上死点前90°CA(以降、90°BTDCと記述することもある。)の位置に停止することを示している。そのため、例えばクランク軸12の目標停止範囲を90°BTDC〜180°BTDCと設定した場合、判定回転数範囲として回転数範囲A1、A2、A3を設定することができる。なお、クランク軸12を停止させる目標停止範囲としては、例えばエンジン始動時にエンジン1を始動し易いクランク角度範囲などが設定される。図3の制御ルーチンは、アイドルストップ制御においてエンジン1を停止させるルーチンである。そこで、判定回転数範囲として回転数範囲A1、A2、A3のうちエンジン1のアイドル回転数範囲と重なる回転数範囲、例えば回転数範囲A2を設定する。このように判定回転数範囲を設定することで、アイドル運転状態からエンジン1を停止させることができる。また、このように判定回転数範囲を設定することで、ECU100は本発明の判定回転数設定手段として機能する。
図3に戻って制御ルーチンの説明を続ける。判定回転数範囲の設定後、ステップS16に進み、ECU100はオルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18などの各補機の作動状態をそれぞれ取得するとともに、エンジン1の冷却水の温度、エンジン1の潤滑油の温度、及びエンジン1が置かれた環境における大気圧を取得する。オルタネータ16の作動状態は、例えばオルタネータ16の発電電圧及び発電電流に基づいて取得する。コンプレッサ17の作動状態は、例えばエアコンの設定温度と車両の室内の温度とに基づいて取得する。PSオイルポンプ18の作動状態は、例えば運転者によるハンドルの操作量に基づいて取得する。
続くステップS17においてECU100は、ステップS16にて取得した各補機の作動状態、冷却水温度、潤滑油温度、及び大気圧に基づいて判定回転数範囲を補正する。判定回転数範囲の補正は、例えば以下に示す補正方法により行われる。まず、ECU100は、取得した各補機の作動状態に基づいてクランク軸12に作用するブレーキトルクを推定する。例えば、オルタネータ16の発電電圧及び発電電流が高い場合すなわちオルタネータ16の負荷が高い場合、発電電圧及び発電電流が低い場合すなわち負荷が低い場合よりもオルタネータ16を駆動するための力が必要となるため、クランク軸12に大きいブレーキトルクが作用する。また、コンプレッサ17及びPSオイルポンプ18においても同様にこれらの補機の負荷が大きいほどクランク軸12に作用するブレーキトルクが大きくなる。なお、各補機の負荷とクランク軸12に作用するブレーキトルクとの関係は予め実験や数値計算などによって求め、ECU100のROMに記憶させておく。このように各補機の作動状態に基づいてクランク軸12に作用するブレーキトルクを推定する。この処理を実行することで、ECU100は本発明のブレーキトルク推定手段として機能する。
このブレーキトルクはエンジン1の温度や大気圧の影響を受ける。例えば潤滑油の温度が低い場合、潤滑油の粘度が高くなるため、ブレーキトルクが大きくなる。なお、潤滑油の温度は、エンジン1の温度と相関関係があるため、冷却水温度に基づいて潤滑油の温度を推定してもよい。大気圧が高い場合、燃焼室5内に吸入される空気量が増加するため、圧縮反力が増加してブレーキトルクが大きくなる。そこで、各補機の作動状態に基づいて推定したブレーキトルクをエンジン1の冷却水温度、潤滑油温度、及び大気圧によって補正することで、クランク軸12に作用するブレーキトルクの推定精度を向上させる。その後、この補正したブレーキトルクに基づいて判定回転数範囲を補正する。ブレーキトルクが大きいほど、エンジン1の慣性エネルギすなわちエンジン1の回転数が速く低下する。そのため、ブレーキトルクが大きいほど、クランク軸12は目標停止範囲に達するよりも前に停止する。そこで、ECU100は、ブレーキトルクによる回転数の低下分が相殺されるように判定回転数範囲の上限回転数及び下限回転数をそれぞれブレーキトルクの大きさに応じて高くする。すなわち、ブレーキトルクの大きさに応じて判定回転数範囲を回転数の高い側、図4の右方向にずらす。このように各補機の作動状態、冷却水温度、潤滑油温度、及び大気圧に基づいて判定回転数範囲を補正する。この処理を実行することにより、ECU100は本発明の補正手段として機能する。
次のステップS18においてECU100は、クランク角センサ22の出力信号に基づいてクランク角度及びエンジン1の回転数を取得する。なお、上述したようにエンジン1の回転数は、30°CA毎に算出されているので、この算出された30°CA毎の回転数を取得する。続くステップS19においてECU100は、取得したクランク角度が膨張行程において回転数が最大となるクランク角度範囲内、すなわち膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲内のクランク角度であるか否か判断する。取得したクランク角度がこのクランク角度範囲内ではないと判断した場合は、今回の制御ルーチンを終了する。
一方、取得したクランク角度が膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲内のクランク角度であると判断した場合はステップS20に進み、取得したエンジン1の回転数が判定回転数範囲A2内、すなわち回転数が判定回転数範囲A2の下限値よりも大きく、かつ上限値未満か否か判断する。回転数が判定回転数範囲A2外と判断した場合は今回の制御ルーチンを終了する。一方、回転数が判定回転数範囲A2内であると判断した場合はステップS21に進み、ECU100は以降のエンジン1の燃焼を停止させる。エンジン1の燃焼停止は、例えば燃料噴射弁14からの燃料の供給を停止させたり、点火プラグ10の点火を停止させることにより行う。また、クランク軸12の動作とは別に吸気弁8及び排気弁9の動作を制御可能な可変動弁機構を有している場合は、吸気弁8及び排気弁9の動作を停止させてエンジン1の燃焼を停止させてもよい。次のステップS22においてECU100は停止過程中フラグをオンの状態に切り替え、その後今回の制御ルーチンを終了する。
図3の制御ルーチンによれば、オルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18のそれぞれの作動状態とエンジン1の冷却水温度、潤滑油温度、及び大気圧とに基づいてクランク軸12に作用するブレーキトルクを推算し、この推算したブレーキトルクに基づいて判定回転数範囲を補正するので、補機が動作していてもクランク軸12を目標停止範囲内に精度良く停止させることができる。図3の制御ルーチンを実行することにより、ECU100は本発明の機関停止手段として機能する。また、図3の制御ルーチンのステップS18〜S20の処理を実行することにより、ECU100は本発明の回転数取得手段として機能する。
[第2の形態]
次に図5を参照して本発明の第2の形態について説明する。なお、第2の形態において、第1の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図5の制御ルーチンも図1のECU100にて実行される。図5の機関停止制御ルーチンにおいては、図3のステップS15S17の処理の代わりにステップS31及びS32の処理が設けられている点が異なる。図5の制御ルーチンはECU100の動作中に他の制御ルーチンと並列に所定の周期で繰り返し実行される。
図5の制御ルーチンにおいてECU100は、ステップS14まで図3の制御ルーチンと同様に処理を進める。次のステップS31においてECU100は、エンジン1が停止したときにクランク軸12を停止させる目標停止範囲とオルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18のそれぞれの負荷とに基づいて判定回転数範囲を設定する。後述するように、この制御ルーチンでは、エンジン1を停止させる際の各補機の作動状態が予め設定した所定状態に固定される。すなわち各補機の負荷が一定に固定される。そのため、各補機がクランク軸12に与えるブレーキトルクを予め推定することができる。そこで、この処理では、まず図4のマップを使用し、目標停止範囲に基づいてブレーキトルクを考慮しない判定回転数範囲を設定し、その後この判定回転数範囲を予め推定したブレーキトルクに基づいて修正して以降の処理で使用する判定回転数範囲を設定する。ブレーキトルクに基づく判定回転数範囲の修正は、上述した図3のステップS17の処理と同様に行われる。
続くステップS32においてECU100は、オルタネータ16、コンプレッサ17、及びPSオイルポンプ18の作動状態を予め設定した所定状態に固定する。これにより、各補機の負荷が一定に固定され、クランク軸12に作用するブレーキトルクが一定に固定される。この処理を実行することにより、ECU100は本発明の補機動作制御手段として機能する。その後ステップS18に進み、以降図3の制御ルーチンと同様の処理を行う。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
この形態では、各補機の作動状態を予め設定した所定状態に固定するので、エンジン1を停止させているときにクランク軸12に作用するブレーキトルクを予め推定し、この推定したブレーキトルクを考慮した判定回転数範囲を設定することができる。そのため、各補機を動作させていてもクランク軸12を目標停止範囲内に精度良く停止させることができる。
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明が適用されるエンジンはポート噴射型に限らず、筒内噴射型でもよい。本発明はアイドルストップ制御による停止時に限らず、イグニッションスイッチをオフにしてエンジンを停止させるときにも適用することができる。従って、本発明はアイドルストップ制御の適用対象となるエンジンに限らず、アイドルストップ制御が行われないエンジンに対しても適用することができる。
本発明が適用されるエンジンの気筒数は4気筒に限らず、また気筒の配置方式も直列式に限定されない。例えば、3、6、8、10、12気筒のエンジンに本発明を適用してもよいし、V型エンジンなどに本発明を適用してもよい。また、上述した形態では、膨張行程の60°ATDC〜90°ATDCのクランク角度範囲に取得した回転数に基づいてエンジンの燃焼停止の実行を判断したが、回転数が最大になるクランク角度範囲は、エンジンの気筒数などに応じて変化する。そのため、燃焼停止の実行の判定に使用する回転数を取得するクランク角度範囲は、本発明が適用されるエンジンに応じて適宜設定される。また、エンジンの回転数を算出する間隔は30°CA毎に限らない。例えば10°CA毎に算出してもよい。このようにエンジンの回転数を算出する間隔を狭くすることで、エンジンの回転数をさらに精度良く取得し、エンジンの燃焼を停止させる際の慣性エネルギをさらに精度良く揃えることができる。そのため、クランク軸を目標停止範囲内にさらに精度良く停止させることができる。
膨張行程におけるピーク回転数がピーク回転数判定クランク角度範囲以外に設定された膨張行程のクランク角度範囲にて取得されたエンジンの回転数に基づいて推定できる場合、このピーク回転数判定クランク角度範囲以外の膨張行程のクランク角度範囲にて取得されたエンジン回転数に基づいてエンジンの燃焼停止の実行を判断してもよい。
本発明の第1の形態に係る停止制御装置が組み込まれたエンジンを示す図。 図1のECUにより算出されたエンジンの回転数の時間変化の一例を示した図で、(a)はアイドル運転時における30°CA毎のエンジンの回転数の時間変化の一例を示し、(b)は(a)の時間Tの範囲を拡大して示している。 ECUが実行する機関停止制御ルーチンを示すフローチャート。 各気筒の膨張行程においてエンジンの回転数が最大となるクランク角度範囲において取得されたエンジン回転数とそのエンジン回転数のときにエンジンの燃焼を停止してエンジンを停止させたときのクランク角度位置との関係を示す図。 本発明の第2の形態においてECUが実行する機関停止制御ルーチンを示すフローチャート。
符号の説明
1 エンジン(内燃機関)
12 クランク軸
16 オルタネータ(補機)
17 コンプレッサ(補機)
18 PSオイルポンプ(補機)
100 エンジンコントロールユニット(回転数取得手段、判定回転数範囲設定手段、ブレーキトルク推定手段、補正手段、機関停止手段、補機動作制御手段)

Claims (5)

  1. 所定の機関停止条件が満たされた場合に内燃機関の燃焼を停止させる内燃機関の停止制御装置において、
    前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段と、前記内燃機関の停止時に前記内燃機関のクランク軸を停止させる目標停止範囲に基づいて前記内燃機関の燃焼停止を判定する判定回転数範囲を設定する判定回転数範囲設定手段と、前記クランク軸により駆動される補機の作動状態に基づいて前記クランク軸を減速させるブレーキトルクを推定するブレーキトルク推定手段と、前記ブレーキトルク推定手段により推定されたブレーキトルクに基づいて前記判定回転数範囲を補正する補正手段と、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数が前記判定回転数範囲内にあると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させる機関停止手段と、を備え、
    前記回転数取得手段は、前記内燃機関の少なくとも一つの気筒の膨張行程の前半に設定された所定のクランク角度範囲における前記内燃機関の回転数を取得し、
    前記所定のクランク角度範囲として前記内燃機関の膨張行程の前半において前記内燃機関の回転数が最大になるクランク角度を含むクランク角度範囲が設定され、
    前記機関停止手段は、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数の最大値が前記判定回転数範囲内であると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させることを特徴とする内燃機関の停止制御装置。
  2. 前記ブレーキトルク推定手段は、前記内燃機関の冷却水の温度、前記内燃機関の潤滑油の温度、及び前記内燃機関が置かれた環境における大気圧の少なくともいずれか一つに基づいて前記クランク軸を減速させるブレーキトルクを補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の停止制御装置。
  3. 所定の機関停止条件が満たされた場合に内燃機関の燃焼を停止させる内燃機関の停止制御装置において、
    前記内燃機関の回転数を取得する回転数取得手段と、前記所定の機関停止条件が満たされた場合に前記内燃機関のクランク軸により駆動される補機の作動状態が前記補機を動作させる所定状態に固定されるように前記補機の動作を制御する補機動作制御手段と、前記補機動作制御手段により作動状態が前記所定状態に固定されて負荷が固定された前記補機が前記クランク軸に与えるブレーキトルクを推定するとともに、推定したブレーキトルクと前記内燃機関の停止時に前記内燃機関のクランク軸を停止させる目標停止範囲とに基づいて前記内燃機関の燃焼停止を判定する判定回転数範囲を設定する判定回転数範囲設定手段と、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数が前記判定回転数範囲内にあると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させる機関停止手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の停止制御装置。
  4. 前記回転数取得手段は、前記内燃機関の少なくとも一つの気筒の膨張行程に設定された所定のクランク角度範囲における前記内燃機関の回転数を取得することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の停止制御装置。
  5. 前記所定のクランク角度範囲として前記内燃機関の膨張行程において前記内燃機関の回転数が最大になるクランク角度を含むクランク角度範囲が設定され、
    前記機関停止手段は、前記所定の機関停止条件が満たされ、かつ前記回転数取得手段により取得された回転数の最大値が前記判定回転数範囲内であると判断した場合に、以降の前記内燃機関の燃焼を停止させることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の停止制御装置。
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