JP4715235B2 - 電動車両のクラッチ締結制御装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載のクラッチ締結制御装置は、モータの出力軸の回転数(以下、モータ回転数という)を制御して、クラッチの締結側回転要素と被締結側回転要素との回転数差を所定値以内に収めて、クラッチを締結するようにしたものである。
車輪と、該車輪を駆動する電動モータと、該電動モータと前記車輪との間の駆動伝達経路を断接するクラッチとを具えた電動車両に設けられ、該クラッチのモータ側回転数と車輪側回転数との回転数差が0から所定値までになるよう前記電動モータの回転数を制御して、該クラッチの締結を実行する電動車両のクラッチ締結制御装置において、
前記クラッチを締結する際に発生する車両加速度が許容値となる許容回転数差を、車速が高いほど大きな値となるように算出する許容回転数差算出手段とを具え、
算出した許容回転数差を前記所定値として用いるよう構成したことを特徴としたものである。
図1は本発明の一実施例になるクラッチの締結制御装置を、電気自動車の駆動系とともに模式的に示す全体構成図である。
車両走行のための駆動源であるモータ1は、出力軸2から、変速機構10とディファレンシャルギヤ装置3とを順次経て、車体の左右に設けた車輪4にそれぞれ駆動トルクを伝達する。出力軸2と変速機構10との間の駆動伝達経路上には、駆動トルクの伝達を断接するクラッチ5を挿置する。
また、クラッチ5の断接(解放および締結)のオンオフ的な指令は通常、ハイブリッドシステムや電動車両駆動システムや回生ブレーキ協調システム等本発明とは無関係の駆動制御システムによって決定され、クラッチコントローラ7が実行する。ここでいうクラッチ5の締結にあたっては、後述のクラッチ断接制御を実行して締結ショックの防止を図る。
モータコントローラ6は、出力軸2の実回転数Nmがモータ回転数指令tNmに追従するよう、モータ1の出力を制御する。
ΔN= Np − Nm ・・・・(2)
G=F/(g・M) ・・・・(3)
ここで、Fは車輪の駆動力、gは重力加速度、Mは電気自動車の車両重量、であり、駆動力Fは以下の一般式で表される。
F=T・α(V)/r ・・・・(4)
ここで、Tは回転数差をもったクラッチを締結する時に発生する回転差吸収トルク、rは車輪に装着されたタイヤの転がり半径、であり、クラッチ締結時発生トルクTは下式のように表される。
T=I・d(|ΔN|)/dt ・・・・(5)
ここで、Iはモータ1のイナーシャ(慣性モーメント)、tはクラッチの締結開始から締結完了までの所要時間、d(|ΔN|)/dtは、回転数差ΔN絶対値を時間で微分した値である。
このため本制御では、クラッチ締結時のショックを許容範囲内に収める目的で、式(1)中の車両加速度Gに上限値G_limitを設け、この上限値G_limitに対応する許容回転数差|ΔN_limit|を算出し、実際の回転数差ΔNがクラッチ5の回転数差が|ΔN_limit|以内となったところでクラッチ5を締結する。
車輪側回転数Npは車速Vと正比例の関係にある。車速Vが大きい領域では、総減速比α(V)が小さくなるよう設計されているため、式(1)より許容回転数差ΔN_limitは大きくなる。これに対し、車速Vが小さい領域では、総減速比α(V)が大きくなるよう設計されているため、式(1)より許容回転数差ΔN_limitは小さくなる。
つまり、車速Vの上昇に伴い許容回転数差ΔN_limitは大きくなることから、車速Vと許容回転数差ΔN_limitとの関係は、図2に太線Aで示すような略比例関係となる。
車輪側回転数Npは下式のように表され、車速Vは車輪側回転数Npおよび総減速比α(V)によって決まる。
Np= V・(1000/60)・α(V)/2πr ・・・・(6)
ここで付言すると、モータ1を軽量化したり、軸長を長くしたり、直径を短くしたりすることにより、モータ1のイナーシャを小さくすれば、図2に二点鎖線Bで示すように車速Vの全領域において、許容回転数差ΔN_limitを大きくすることが可能になる。
クラッチ5の締結時には、車輪側回転数Npおよび総変速比α(V)から車速Vを算出し、太線Aの特性を参照して、算出した車速Vに応じた許容回転数差|Np−tNm|を求め、実回転数差ΔN=Np−Nmの絶対値が許容回転数差|Np−tNm|以下であれば、大きな締結ショックを防止することが可能である。しかしながら、モータ側Nmまたは車輪側Npのうちいずれの回転数が大きいかによって、車両の挙動や、操作安定性に好影響または悪影響を与えることとなる。
具体的にはモータコントローラ6は、モータ1の出力制御を図3に示すように、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより行う。すなわち、検出した車輪側回転数Npをモータ回転数指令tNmとして、実際のモータ側回転数である実モータ回転数Nmが、車輪側回転数Npに収束するよう、つまり、回転数差ΔNが0になるように実行する。
これ以外の場合、例えば路面の摩擦係数μが閾値よりも小さい場合やフルブレーキ時には、フィードフォワード補償器72を選択するよう、回路を切り替える。これにより、クラッチ5を締結する際には、車輪側回転数Npよりも大きなモータ側回転数Nmが、車輪側回転数Npを上方に引き込んで、車輪4のスリップやロック防止を図ることができる。
また図には示さなかったが、加速走行中や、一定速走行中には、実モータ回転数Nmを、車輪側回転数Npよりも小さな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させるか、あるいは、車輪側回転数Npよりも大きな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させるかは、設計仕様に沿って決定すればよい。
したがって、アンチスキッド制御装置15の作動時には摩擦係数μが閾値よりも小さいと判断してフィードフォワード補償器72を選択する。これに対し、アンチスキッド制御装置15の非作動時には摩擦係数μが閾値よりも大きいと判断してフィードフォワード補償器71を選択する。
実モータ回転数Nmは外乱により変動し得るところ、補償器74を用いたフィードバック制御によって、実モータ回転数Nmとモータ回転数指令tMmとの偏差の変動を吸収することができる。
これに対し、減速走行中であって路面の摩擦係数μが閾値よりも小さい場合や、フルブレーキ中にクラッチ5を締結する際は、図5に模式的に示すように、実モータ回転数Nmを、車輪側回転数Npよりも大きな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させることにより、クラッチ5を締結する際には車輪側回転数Npを上昇させて車輪4のスリップやロックを防止することができる。
この機能につき、図4,5を参照しつつ説明すると、瞬時t0でクラッチ5の締結指令およびモータ回転数指令tNmが出力されると、実モータ回転数に相当するモータ側回転数Nmは車輪側回転数Npに収束し、瞬時t2または瞬時t5で実回転数差ΔNが許容回転数差ΔN_limit以内に達したところで、クラッチ5を締結する。
なお図5中では、瞬時t3で実回転数差が一旦0になるものの、上述のとおり実モータ回転数Nmを車輪側回転数Npよりも大きな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させる制御をおこなっているため、ここではクラッチ5を締結しないよう制御すること勿論である。
次の後期制御期間では、実モータ回転数Nmが車輪側回転数Npに向けて徐々に収束するよう、フィードバック制御する。
次の瞬時t1から瞬時t2までは、実モータ回転数Nmが車輪側回転数Npより小さな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させる。
瞬時t2では、実回転数差ΔNが本制御の狙いとする正の許容回転数差|ΔN_limit|に達したためクラッチ5を締結する。
次の瞬時t4から瞬時t5までは、実モータ回転数Nmが車輪側回転数Npより小さな状態を維持しつつ車輪側回転数Npに収束させる。
瞬時t5では、実回転数差ΔNが本制御の狙いとする負の許容回転数差−|ΔN_limit|に達したためクラッチ5を締結する。
図6は、他の実施例になるクラッチ締結制御装置を具えた電気自動車の駆動系を模式的に示す全体構成図であり、上述の一実施例と同じ構成部分については、同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
出力軸2は、その両端がモータ1から突出する。出力軸2の一端は、クラッチ5と連結し、出力軸2の他端は、クラッチ12とシャフト14とを順次介して、質量体13(マスともいう)と連結する。このため、クラッチ12のモータ側回転数と、クラッチ5のモータ回転数はともにNmで等しい。
これに対し、クラッチ12締結中は、モータ1側回転数Nmに係る回転要素のイナーシャIが大きいことから、前述の式(1)を参照するように、クラッチ5を締結する際の許容回転数差|ΔN_limit|は、図7に細線Cで示すように小さくなる。
クラッチ12の締結中には、上記の太線Aよりも許容回転数差が小さい特性である細線C(図7)を参照し、車輪側回転数Npに正比例する車速Vに基づき、許容回転数差ΔN_limitを決定し、決定された許容回転数差ΔN_limitとなるよう、モータ回転数Nmを制御するとともに、実回転数差ΔNが許容回転数差ΔN_limitに達したところでクラッチ5を締結するものである。
これにより、モータ1側のイナーシャが変化した場合であっても、当該変化を許容回転数差ΔN_limitに反映させて、クラッチ5締結時のショックを的確に防止することができる。
乗り心地性能を損なわない許容回転数差|ΔN_limit|を、車速Vに相応する車輪側回転数Npに応じて算出することが可能になり、車速Vが低速領域であっても高速領域であっても、クラッチ5締結時にショックを生じることがなく、車速Vに応じてクラッチ5の締結制御を好適に実現することができる。
濡れたアスファルト路面等、摩擦係数μが小さい場合に減速中には、モータ回転数Nmを車輪側回転数Npよりオーバー側にシュートさせつつクラッチ5を締結して(図5)、車輪4のスリップ防止を図り、操作安定性を向上させることができる。
クラッチ5を締結する際には、モータ側回転数Nmが車輪側回転数Npを上方に引き込んで、車輪4のスリップやロック防止を図ることができる。
これらのうち前期制御期間では、モータ回転数Nmが目標値となるモータ回転数指令値となるようフィードフォワード制御し、後期制御期間では、実回転数差ΔNが0から許容回転数差ΔN_limitまでになるようフィードバック制御してもよい。これにより、実回転数差ΔNを、正負いずれかに狙い通りに制御してクラッチ5を締結することが可能となり、クラッチ5締結の際には、車両の減速性能の向上と、車輪4のスリップやロックの防止を実現することができる。
2 出力軸
3 ディファレンシャルギヤ装置
4 車輪
5 クラッチ
8 変速機構入力軸センサ
9 出力回転角センサ
10 変速機構
12 クラッチ
Claims (5)
- 車輪と、該車輪を駆動する電動モータと、該電動モータと前記車輪との間の駆動伝達経路を断接するクラッチとを具えた電動車両に設けられ、該クラッチのモータ側回転数と車輪側回転数との回転数差が0から所定値までになるよう前記電動モータの回転数を制御して、該クラッチの締結を実行する電動車両のクラッチ締結制御装置において、
前記クラッチを締結する際に発生する車両加速度が許容値となる許容回転数差を、車速が高いほど大きな値となるように算出する許容回転数差算出手段とを具え、
算出した許容回転数差を前記所定値として用いるよう構成したことを特徴とする電動車両のクラッチ締結制御装置。 - 請求項1に記載のクラッチ締結制御装置において、路面状況および電動車両の走行状態を判断する手段を具え、
判断した路面状況および走行状態に基づき、前記車輪側回転数から前記モータ側回転数を差し引いた実回転数差を、正負いずれかに制御して前記クラッチを締結することを特徴とする電動車両のクラッチ締結制御装置。 - 請求項2に記載のクラッチ締結制御装置において、前記判断した路面状況が滑りやすい状況であって、かつ前記判断した走行状態が減速走行である場合には、前記モータ側回転数を前記車輪側回転数よりも大きくして、前記クラッチを締結するよう構成したことを特徴とする電動車両のクラッチ締結制御装置。
- 請求項2または3に記載のクラッチ締結制御装置において、
前記電動モータの回転数の制御期間を、前期制御期間と後期制御期間とに分け、
該前期制御期間では、前記モータ側回転数が目標値となる目標モータ側回転数となるようフィードフォワード制御し、
該後期制御期間では、前記実回転数差が0から前記許容回転数差までになるようフィードバック制御することを特徴とする電動車両のクラッチ締結制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のクラッチ締結制御装置において、
前記許容回転数差算出手段は、前記駆動伝達経路のイナーシャを検出する手段を具え、
前記許容回転数差を、車速および検出したイナーシャに基づき算出することを特徴とする電動車両のクラッチ締結制御装置。
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