高層鉄筋コンクリート造の建物を建築する場合、最下層の柱は大きな軸力を支持することが要求される。このため、設計基準強度が30N/mm2程度の通常強度のコンクリートに代えて、設計基準強度が60N/mm2程度からそれ以上の高強度コンクリートが用いられることが多くなっている。その一方、高強度コンクリートは施工コストがかかるため、基礎のコンクリートには通常強度のコンクリートを用いるのが一般的である。但し、コンクリート基礎の柱直下の部分には高強度コンクリート柱が支持する高い応力が作用するため、部分的に高強度コンクリートを打設している。
図7(a)及び(b)はコンクリート基礎に部分的に高強度コンクリートを打設した従来の基礎構造を示す図である。高層鉄筋コンクリート造の建物の基礎構造は一般に、マットスラブ方式と、基礎梁+耐圧版方式と、に大別される。図7(a)はマットスラブ方式の基礎構造を、図7(b)は基礎梁+耐圧版方式の基礎構造を示しており、各図の上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。
まず、図7(a)を参照してマットスラブ方式の従来例の基礎構造について説明すると、杭300上にコンクリート基礎(鉄筋コンクリート基礎)100が支持されている。コンクリート基礎100はマットスラブ部101と杭300上のフーチング部102とから構成されており、マットスラブ部101と地盤との間には捨てコンクリート400が打設されている。マットスラブ部101には上端主筋103a及び下端主筋103bが埋設されており、上端主筋103aはマットスラブ101の上部において、下端主筋103bはマットスラブ101の下部において、それぞれ格子状に縦横に交差して平面的に布設されている。
コンクリート基礎100上には高強度コンクリートで構成された柱(鉄筋コンクリート柱)200が立設されており、柱200に埋設された柱主筋201はマットスラブ部101の下部にまで延びている。コンクリート基礎100は基本的に通常強度のコンクリートで構成されるが、柱200の下方の一定の範囲に渡る高強度コンクリート部100bにおいては高強度コンクリートが打設されている。
次に、図7(b)を参照して基礎梁+耐圧版方式の従来例の基礎構造について説明すると、杭700上にコンクリート基礎500が支持されている。コンクリート基礎500は基礎梁部501と、杭700上のフーチング部502と、耐圧版部503とから構成されており、耐圧版部503と地盤との間には捨てコンクリート800が打設されている。基礎梁部501と耐圧版部503とにはそれぞれ上端主筋504a、下端主筋504bが埋設されており、上端主筋504a及び下端主筋504bは十字状に縦横に交差して平面的に布設されている。
コンクリート基礎500上には高強度コンクリートで構成された柱600が立設されており、柱600に埋設された主筋601は耐圧版部503にまで延びている。コンクリート基礎500は基本的に通常強度のコンクリートで構成されるが、柱600の下方の一定の範囲に渡る高強度コンクリート部500cにおいては高強度コンクリートが打設されている。
さて、これらの2つの方式の基礎構造の一般的な施工手順について概説すると、まず、図7(a)に示すマットスラブ方式の場合、杭300の杭頭処理⇒捨てコンクリート400打設⇒コンクリート基礎100及び柱200の配筋⇒コンクリート基礎100の領域100aのコンクリート打設⇒高強度コンクリート部100bのコンクリート止め設置⇒高強度コンクリート部100bの高強度コンクリート打設⇒コンクリート基礎100の領域100cの残りの部分のコンクリート打設⇒柱200の高強度コンクリート打設、という手順となる。高強度コンクリート部100bの高強度コンクリート打設前にコンクリート基礎100の領域100cの残りの部分のコンクリート打設を行うという手順も採用できる。
次に、図7(b)に示す基礎梁+耐圧版方式の場合、杭700の杭頭処理⇒捨てコンクリート800打設⇒コンクリート基礎500及び柱600の配筋⇒フーチング部502及び耐圧版部503の型枠組立⇒コンクリート基礎500の領域500aのコンクリート打設⇒基礎梁部501の型枠組立⇒コンクリート基礎500の領域500bのコンクリート打設⇒高強度コンクリート部500cのコンクリート止め設置⇒高強度コンクリート部500cの高強度コンクリート打設⇒コンクリート基礎500の領域500dの残りの部分のコンクリート打設⇒柱600の高強度コンクリート打設、という手順となる。高強度コンクリート部500cの高強度コンクリート打設前にコンクリート基礎500の領域500dの残りの部分のコンクリート打設を行うという手順も採用できる。
これらの2方式の基礎構造の施工にあたっては、このようにコンクリート基礎100、500を形成するにあたり、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートの打ち分けが必要となる。しかし、両者の打ち分けは必ずしも容易ではない。まず、コンクリート止めの設置にあたっては、コンクリート基礎の主筋を避けて設置しなければならず、コンクリート止めに主筋が通過する穴等をあける必要があり手間がかかる。また、高強度コンクリートは流動性が高いため、打ち継ぎ面への配慮が必要となると共に、高強度コンクリートはより厳格な養生管理が必要とされる。更に、高強度コンクリートは自己収縮及び乾燥収縮によるひび割れが発生し易いため、コンクリート基礎の上面の広範囲な部位に打設する場合、ひび割れ等への配慮が必要となり、品質確保が容易ではない。なお、これらの方式は杭基礎の場合であるが、直接基礎の場合は杭とフーチングが省略されることを除いて高強度コンクリートを部分的に打設する点は基本的に同様である。
このようにコンクリート基礎を形成する上で、高強度コンクリートと通常強度のコンクリートとを打ち分けるのは施工上必ずしも容易ではない。この問題点を解決する最も簡単な方法はコンクリート基礎の柱直下の部分に高強度コンクリートを使用せずに通常強度のコンクリートを使用することが挙げられる。つまり、高強度コンクリートと通常強度のコンクリートとを打ち分けずにコンクリート基礎は通常強度のコンクリートのみを使用することが挙げられる。このように通常強度のコンクリートのみを使用したとしても、少なくとも内柱下の部分においては、柱よりも大きな断面を有する基礎コンクリートの支圧強度は設計基準強度よりも大きくなると考えられる。例えば、既往の研究においても支圧強度は支圧面積(柱の断面)に対する支承面積(コンクリート基礎の断面)の比に極めて強い影響を受けることが示されている(非特許文献1)。すなわち、少なくとも内柱下の部分においては、終局耐力の点ではコンクリート基礎に通常強度のコンクリートのみを使用しても問題はないと考えられる。
「鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料」,日本建築学会,1987年,23章及び24章
<第1実施形態>
図1(a)乃至(c)はそれぞれ本発明の第1実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第1実施形態はコンクリート基礎のコンクリート柱下の部分の横方向の変形を拘束する拘束部材を設けた例である。
図1(a)の基礎構造では杭30上にコンクリート基礎(鉄筋コンクリート基礎)10が支持されている。コンクリート基礎10はマットスラブ部11と杭30上のフーチング部12とから構成されており、マットスラブ部11と地盤との間には捨てコンクリート40が打設されている。マットスラブ部11には上端主筋13a及び下端主筋13bが埋設されており、上端主筋13aはマットスラブ11の上部において格子状に縦横に交差して平面的に布設され、コンクリート基礎10の最上端の主筋群を構成している。下端主筋13bはマットスラブ11の下部においてマトリックス状に縦横に交差して平面的に布設されている。コンクリート基礎10は通常強度のコンクリートを打設して形成される。コンクリート基礎10上には高強度コンクリートで構成された柱(鉄筋コンクリート柱)20が立設されており、柱20に埋設された複数本の柱主筋21はマットスラブ部11の下部にまで延びている。
コンクリート基礎10のコンクリート柱20直下の部分(以下、直下部分という。)には、拘束部材であるスパイラル筋50が配筋されている。スパイラル筋50は直下部分の周囲を取り巻くように(コンクリート柱20の断面積と同じ面積分を取り巻くように)螺旋状に、平面視で円形に配設されている。また、スパイラル筋50は上端主筋13aよりも上のかぶり部分から上端主筋13aの下方の一定の深さまで配設されている。このスパイラル筋50を設けたことにより、直下部分のコンクリートがコンクリート柱20から軸力を受けて横方向(水平方向)に変形(膨張)しようとすると、スパイラル筋50により拘束される。従って、直下部分のコンクリートの弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
この基礎構造の施工手順について概説すると、杭30の杭頭処理⇒捨てコンクリート40打設⇒コンクリート基礎10及び柱20並びにスパイラル筋50の配筋⇒コンクリート基礎100のコンクリート打設⇒柱200の高強度コンクリート打設、という手順となる。スパイラル筋50の配筋は、コンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。なお、図1(a)の例ではスパイラル筋50を拘束部材として用いたが、これに代えてフープ筋を用いることもできる。これらは建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
スパイラル筋50やフープ筋は、その線径として例えば6〜25mm程度のものが適用でき、その円の直径として例えばコンクリート柱20の柱主筋21の対角線長〜1000mm程度の範囲で設定することができる。また、コンクリート基礎10の上面からの深さが例えば100mm或いはフーチング部12程度までの範囲で設けることができる。また、スパイラル筋50やフープ筋は必ずしも平面視で円形である必要はなく、角形にしてもよい。
次に、図1(b)の基礎構造について説明する。同図の基礎構造は図1(a)の基礎構造のスパイラル筋50に代えて鋼管51a及び51bを拘束部材として用いたものである。鋼管51a及び51bはいずれもコンクリート基礎10の直下部分の周囲を取り巻くように平面視で円形に配設されている。図1(b)の例では2つの鋼管51a及び51bを用い、鋼管51aを上端主筋13aよりも上のかぶり部分に、鋼管51bを上端主筋13aよりも下の部分に、それぞれ配設している。鋼管は1つ設けてもよいが、この場合は上端主筋13aとの干渉を考慮する必要があり、鋼管に上端主筋13aが通過する穴を設ける等の措置が必要となる。一方、図1(b)のように2つの鋼管51a及び51bを用い、上端主筋13aの上下にそれぞれ配設することで、上端主筋13aとの干渉を避け、施工性を向上できる。
しかして、鋼管51a及び51bをを設けたことにより、直下部分のコンクリートがコンクリート柱20から軸力を受けて横方向(水平方向)に変形(膨張)しようとすると、鋼管51a及び51bにより抑制される。つまり、直下部分のコンクリートが鋼管51a及び51bによって拘束され、その強度が向上する。従って、直下部分のコンクリートの弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図1(b)の基礎構造の施工手順は図1(a)の基礎構造と基本的に同じであり、鋼管51a及び51bの設置はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鋼管は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鋼管51a、51bは、管の厚みが例えば21mm以下程度のものが適用でき、管の直径として例えばコンクリート柱20の柱主筋21の対角線長〜1000mm程度の範囲で設定することができる。また、例えばコンクリート基礎10の上面からの深さ100mm或いはフーチング部12程度までの範囲で設けることができる。また、鋼管の断面が角形のものでもよい。
次に、図1(c)の基礎構造について説明する。同図の基礎構造は図1(a)の基礎構造のスパイラル筋50に代えて、コンクリート基礎10の直下部分の周囲を取り巻くように方形状に鉄筋を配設して拘束部材を構成したものである。この基礎構造では直線状の鉄筋52a乃至52dを、コンクリート柱20の面積分を包含するように方形の枠状に組み付け、この枠体を上端主筋13aよりも上のかぶり部分と上端主筋13aよりも下の部分とにそれぞれ配設したものである。枠体の数はこれに限られず、増設してもよい。
しかして、鉄筋52a乃至52dから構成される2組の枠体を設けたことにより、直下部分のコンクリートがコンクリート柱20から軸力を受けて横方向(水平方向)に変形(膨張)しようとすると、鉄筋52a乃至52dから構成される枠体により抑制される。つまり、直下部分のコンクリートが枠体によって拘束され、その強度が向上する。従って、直下部分のコンクリートの弾性ひずみ及びクリープひずみを低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図1(c)の基礎構造の施工手順も図1(a)の基礎構造と基本的に同じであり、鉄筋52a乃至52dの設置はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鉄筋は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鉄筋52a乃至52dは、その線径として例えば6〜41mm程度のものが適用でき、コンクリート柱20の外面から例えば2000mm程度の範囲内に収まるように設置することが望ましい。
<第2実施形態>
図2(a)及び(b)はそれぞれ本発明の第2実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第2実施形態はコンクリート柱からの軸力をコンクリート基礎の主筋に伝達する伝達部材を設けた例である。以下、上記第1実施形態と異なる構成について説明する。なお、図2(a)及び(b)では上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
まず、図2(a)の基礎構造ではコンクリート基礎10の直下部分において、複数本の直線状の鉄筋53a及び53bが伝達部材として配筋されている。鉄筋53a及び53bは、格子状に縦横に交差して配列されて平面的に布設された鉄筋群を構成している。また、鉄筋53a及び53bは縦横の各上端主筋13aと、それぞれ略平行に設けられて上端主筋13aの主筋群と交差した態様とされており、外観上、上端主筋13aを直下部分において局所的に増設した態様とされている。
しかして、鉄筋53a及び53bを設けたことにより、コンクリート柱20からの軸力が鉄筋53a及び53bを介して上端主筋13aにより効果的に伝達する。上端主筋13aはコンクリート基礎10内に平面的に広範に配設されているため、図2(a)で矢印で示すように、コンクリート柱20からの軸力による応力は上端主筋13aにより広範囲に分散されてコンクリート基礎10に作用する。このため、コンクリート基礎10の直下部分に軸力が集中せず、コンクリート基礎10の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
更に、図2(a)の基礎構造では、鉄筋53a及び53bがコンクリート柱20の断面積よりも広い面積に渡って設置されている。従って、鉄筋53a及び53bそのものがコンクリート柱20からの軸力による応力を分散させる分散部材として機能し、分散された応力はコンクリート基礎10を介して又は直接上端主筋13aに伝達され、上端主筋13aにより更に分散されて上端主筋13a下の部分のコンクリート基礎10に作用する。よって、コンクリート柱20からの軸力をよりより効果的に広範囲に分散することができる。
図2(a)の基礎構造の施工手順は上記第1実施形態の基礎構造と基本的に同じであり、鉄筋53a及び53bの配筋はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鉄筋は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鉄筋53a及び53bの線径は例えば25〜61mm程度とすることができ、その長さは、例えば、√(コンクリート柱20の強度/コンクリート基礎10の強度)×コンクリート柱20のせい−1000mmから、√(コンクリート柱20の強度/コンクリート基礎10の強度)×コンクリート柱20のせい+6000mmの範囲に設定できる。
次に、図2(b)の基礎構造について説明する。同図の基礎構造は図2(a)の基礎構造の鉄筋53a及び53bに代えて鋼板54を伝達部材として用いたものである。鋼板54は主筋13a上に配設されており、また、コンクリート柱20の主筋21が通過する穴54aが穿設されている。なお、図示していないが、鋼板54の中央にはコンクリート打設用の開口部を設けておくことが望ましい。
しかして、鋼板54を設けたことにより、コンクリート基礎10の直下部分が補強されるだけでなく、コンクリート柱20からの軸力が鋼板54を介して上端主筋13aにより効果的に伝達する。上端主筋13aはコンクリート基礎10内に平面的に広範に配設されているため、図2(b)で矢印で示すように、コンクリート柱20からの軸力による応力は上端主筋13aにより広範囲に分散されてコンクリート基礎10に作用する。このため、コンクリート基礎10の直下部分に軸力が集中せず、コンクリート基礎10の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
更に、図2(b)の基礎構造では、鋼板54がコンクリート柱20の断面積よりも広い面積を有している。従って、鋼板54そのものがコンクリート柱20からの軸力による応力を分散させる分散部材として機能し、分散された応力はコンクリート基礎10を介して又は直接上端主筋13aに伝達され、上端主筋13aにより更に分散されて上端主筋13a下の部分のコンクリート基礎10に作用する。よって、コンクリート柱20からの軸力を、より効果的に広範囲に分散することができる。
図2(b)の基礎構造の施工手順も上記第1実施形態の基礎構造と基本的に同じであり、鋼板54の設置はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鋼板は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鋼板54の板厚は、例えば、12〜32mm程度、幅は、例えば、√(コンクリート柱20の強度/コンクリート基礎10の強度)×コンクリート柱20のせい−1000mmから、√(コンクリート柱20の強度/コンクリート基礎10の強度)×コンクリート柱20のせい+6000mmの範囲に設定できる。
<第3実施形態>
図3(a)及び(b)はそれぞれ本発明の第3実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第3実施形態はコンクリート柱の下端部に一端が埋設され、コンクリート基礎に他端が埋設された部材を設けた例である。以下、上記第1実施形態と異なる構成について説明する。なお、図3(a)及び(b)では上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
まず、図3(a)の基礎構造では、コンクリート柱20とコンクリート基礎10とを縦断するように複数本の直線状の鉄筋55が前記部材として上下方向に配筋されている。鉄筋55はその一端がコンクリート柱20の下端部に埋設され、その他端がコンクリート基礎10に埋設されており、本実施形態の場合当該他端は下端主筋13b近傍まで延びている。
しかして、鉄筋55を設けたことにより、コンクリート柱20からの軸力が鉄筋55で負担され、コンクリート基礎10のコンクリート部分が負担する当該軸力による応力が低減する。このため、コンクリート基礎10のひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図3(a)の基礎構造の施工手順は上記第1実施形態の基礎構造と基本的に同じであり、鉄筋55の配筋はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鉄筋は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鉄筋55の線径は25〜61mm程度、コンクリート柱20への埋め込み長さは最大で鉄筋55の線径の50倍程度までとすることができる。
次に、図3(b)の基礎構造について説明する。同図の基礎構造は図3(a)の基礎構造の鉄筋55に代えて鉄骨56を補強部材として用いたものである。鉄骨56はその一端がコンクリート柱20の下端部に埋設され、その他端がコンクリート基礎10に埋設されており、本実施形態の場合当該他端は下部の主筋13bの下方にまで延びている。本実施形態では鉄骨56は断面形状がクロスH型の鉄骨を用いているが、この他にも断面形状がH型のもの、十字型のもの、円環型のもの、中空角型のものを採用できる。また、コンクリートとの付着性能を向上すべくスタッドを植設してもよい。なお、本実施形態では施工性を向上すべく、鉄骨56をコンクリート柱20の柱主筋21と干渉しないように柱主筋21の内側に収まる大きさの断面としている。また、コンクリート基礎の上端主筋13aと鉄骨56との干渉を防止すべく、鉄骨56には上端主筋13aが通過する不図示の穴が適宜設けられる。
しかして、鉄骨56を設けたことにより、コンクリート柱20からの軸力が鉄骨56で負担され、コンクリート基礎10のコンクリート部分が負担する当該軸力による応力が低減する。このため、コンクリート基礎10の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図3(b)の基礎構造の施工手順も上記第1実施形態の基礎構造と基本的に同じであり、鉄骨56の配筋はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鉄骨は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鉄骨56のコンクリート柱20への埋め込み長さは例えば最大でコンクリート柱20のせいの3倍程度までとすることができる。
<第4実施形態>
図4(a)は本発明の第4実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第4実施形態は地下躯体を逆打ち工法にて構築する場合に採用される構真柱を用いた基礎構造に関するものである。以下、上記第1実施形態と異なる構成について説明する。なお、図4(a)では上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
図4(a)の基礎構造では、コンクリート基礎10及びコンクリート柱20を貫通するように杭30から構真柱57が埋設されている。本実施形態の場合、構真柱57はその断面がクロスH型をなした鉄骨であり、コンクリート柱20の下端部からコンクリート基礎10内の領域Xにおいて、補強部材としてスタッドが植設されている(図4(a)において不図示)。図4(b)は領域X以外の構真柱57の断面形状を示す図、図4(c)は領域Xの構真柱57の断面形状を示す図である。図4(c)に示すように領域Xにおいては構真柱57の側部に複数のスタッド57aが植設されている。スタッド57aは領域Xの範囲内において略一様に多数植設され、例えば、溶接により構真柱57の側部に植設される。
しかして、領域Xにおいて構真柱57にスタッド57aを設けたことにより、コンクリート基礎10とコンクリート柱20との境界部分を中心として構真柱57とコンクリート基礎10との付着性能が高められ、構真柱57とコンクリート基礎10との一体性が向上し、コンクリート柱20からの軸力が構真柱57によってより効果的に負担される。このため、コンクリート基礎10のコンクリート部分が負担する前記軸力による応力が低減し、コンクリート基礎10の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図4(a)の基礎構造の施工手順は、基本的に従来の逆打ち工法の施工手順と変わるところがなく、領域Xに相当する部分にスタッド57aを植設した構真柱57を用いるだけであり、比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。スタッド57aは比較的簡易かつ低コストで施工できるので、簡易かつ低コストで基礎構造を施工できる。
なお、図4(a)の基礎構造では領域Xの範囲で構真柱57にスタッド57aを植設したが、これに代えて、領域Xの断面積を領域X以外の部分の断面積よりも拡大させる部材を設けることもできる。図4(d)及び(e)はその例を示す図であり、図4(d)は領域X以外の構真柱57’の断面形状を示す図、図4(c)は領域Xの構真柱57’の断面形状を示す図である。図4(d)に示すように構真柱57’はその断面形状が基本的に十字型のものである場合を想定している。一方、図4(e)に示すように領域Xの範囲ではフランジ57b’を設けて断面形状がクロスH型となるようにして断面積を拡大させている。
しかして、領域Xにおいて構真柱57’にフランジ57b’を設けてその断面積を拡大させることにより、コンクリート基礎10とコンクリート柱20との境界部分を中心として構真柱57’の強度が高められ、領域Xにおける構真柱57’の軸力負担割合を増加させることができ、コンクリート柱20からの軸力が構真柱57’によってより効果的に負担される。このため、コンクリート基礎10のコンクリート部分が負担する前記軸力による応力が低減し、コンクリート基礎10の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。フランジ57b’の形成も比較的簡易かつ低コストで施工できるので、簡易かつ低コストで基礎構造を施工できる。
なお、領域Xの範囲は、例えば、ひび割れが想定される部分の上面(コンクリート基礎20の上面)から上方に、コンクリート柱20のせいの3倍程度の距離、ひび割れが想定される部分の下面(コンクリート基礎20の中間部位)からフーチング部12程度まで、とすることができる。
<第5実施形態>
図5(a)は本発明の第5実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第5実施形態はコンクリート基礎とコンクリート柱との境界部分において、コンクリート基礎に板材を埋設し、更に、板材からコンクリート基礎の下部に向かって複数の鉄筋をコンクリート基礎に埋設した例である。以下、上記第1実施形態と異なる構成について説明する。なお、図5(a)では上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
図5(a)に示すように、コンクリート基礎10とコンクリート柱20との境界部分において、コンクリート基礎10には鋼板58aが板材として埋設されている。本実施形態において鋼板58aは方形をなしているが形状は問われない。鋼板58aは上端主筋13a上のかぶり部分に配設されており、施工性を向上すべく、鋼板58aをコンクリート柱20の柱主筋21と干渉しないように柱主筋21の内側に収まる大きさとしている。
この鋼板58aには複数の鉄筋58bが取り付けられており、鉄筋58bは鋼板58aからコンクリート基礎10の下部に向かってコンクリート基礎10に埋設されている。図5(b)は鋼板58aと鉄筋58bの外観図である。鉄筋58bはその上端が鋼板58aの周縁に設けられた穴に差し込まれて溶接されている。両者の接続方法はボルト接合でもよい。鉄筋58bは真っ直ぐ下方に延びるものと下方外方に斜めに延びるものとが混在している。
しかして、この基礎構造では鋼板58aがコンクリート柱20の直下に設けられているので、これがコンクリート柱20からの軸力を支持し、更に、複数の鉄筋58bを設けたことにより前記軸力による応力を負担することができるので、コンクリート基礎10のコンクリート部分が負担する前記軸力による応力が低減する。従って、コンクリート基礎10のひび割れの発生が抑制される。また、コンクリート基礎10の終局耐力の向上も見込めるので、特にコンクリート柱20が隅柱や側柱であった場合はコンクリート基礎10の終局耐力の向上にも寄与する。
図5(a)の基礎構造の施工手順は上記第1実施形態の基礎構造と基本的に同じであり、鋼板58a及び鉄筋58bの設置はコンクリート基礎10及び柱20の配筋時に行うことができるので比較的簡便に施工できる。また、コンクリート基礎10について、通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けは不要であり、全体として比較的簡便に施工できる。鋼板及び鉄筋は建築資材として常用されているものであるのでコストアップは最小であり、また、施工も比較的簡便である。
鋼板58aの板厚は例えば12〜32mm程度、鉄筋58bの長さは例えば鉄筋径の20倍〜フーチング部12に届く範囲程度にすることができる。
<第6実施形態>
図6は本発明の第6実施形態に係る基礎構造を示す図であり、上段は平面視構造を、下段は側面視構造を示している。第6実施形態はコンクリート基礎とコンクリート柱との境界部分を高強度コンクリートとした例である。以下、上記第1実施形態と異なる構成について説明する。なお、図6では上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
図6の基礎構造は、コンクリート基礎10を通常強度のコンクリートと高強度コンクリートとの打ち分けを行う。図6に示すように、コンクリート基礎10とコンクリート柱20との境界部分において、コンクリート基礎10の上面とコンクリート基礎10の上端主筋13aとの間のかぶり部分を高強度コンクリートが打設される高強度コンクリート部14とし、その余のコンクリート基礎10については通常強度のコンクリートを打設する。本実施形態の場合、高強度コンクリート部14は、コンクリート柱20直下においてその断面積と同じ面積範囲で形成されているが、コンクリート柱20の断面積よりも広い面積範囲で形成してもよい。この場合、コンクリート柱20の外面から例えば1000mm程度の範囲とすることができる。
しかして、この基礎構造ではコンクリート柱20直下のコンクリート基礎20のかぶり部分に高強度コンクリート部14が形成されるので、当該かぶり部分の弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生を抑制できる。また、高強度コンクリート部14が負担するコンクリート柱20からの軸力は上端主筋13aに伝達する。上端主筋13aはコンクリート基礎10内に平面的に広範に配設されているため、図6で矢印で示すように、コンクリート柱20からの軸力による応力は上端主筋13aにより広範囲に分散されてコンクリート基礎10に作用する。従って、高強度コンクリート部14よりも下の部分においても弾性ひずみ及びクリープひずみが低減し、ひび割れの発生を抑制できる。高強度コンクリート部14の面積をコンクリート柱20の断面積よりも広くとれば、コンクリート柱20からの軸力が上端主筋13aに対してより広範囲に渡って伝達され、コンクリート基礎10に作用する応力をより効果的に広範囲に分散することができる。
次に、この基礎構造の施工手順について概説する。上記第1実施形態乃至第5実施形態と異なり、本実施形態では高強度コンクリートと通常強度のコンクリートの打ち分けが必要となるが、比較的簡易な施工が可能である。基礎構造の施工手順は、杭30の杭頭処理⇒捨てコンクリート40打設⇒コンクリート基礎10及び柱20並びにスパイラル筋50の配筋⇒高強度コンクリート部14のコンクリート止め設置⇒コンクリート基礎10の通常強度のコンクリート打設⇒高強度コンクリート部14及びコンクリート柱20の高強度コンクリート打設という手順を採用できる。
ここで、高強度コンクリート部14は上端主筋13aよりも上方のかぶり部分にのみ形成されるため、コンクリート止めの設置に関し、上端主筋13aとの干渉を考慮する必要がない。コンクリート止めは上端主筋13aに桟木等の枠を設置し、結束するだけの簡易なもので足りる。つまり、コンクリート基礎10の通常強度のコンクリート打設時にはコンクリート柱20直下の部分を窪ませるようにすれば足り、その程度のコンクリート止めでよい。そして、高強度コンクリート部14及びコンクリート柱20の高強度コンクリートを同時に打設できるので、実質的にコンクリートの打ち分けがなく、施工が比較的簡便に済ませられる。
<他の実施形態>
本発明の実施形態について、第1実施形態乃至第6実施形態を説明したが、これらは相互に組み合わせて実施することも可能である。例えば、第6実施形態に第1乃至第5実施形態を組合せて実施することができ、この場合、施工性を維持しながら、より一層ひび割れの発生を抑制できる。
また、上記各実施形態ではマットスラブ方式の基礎構造を例に挙げて説明したが、基礎梁+耐圧版方式や直接基礎の基礎構造にも本発明は適用できる。