以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1の実施の形態>
図1に示すように、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、電動過給機216と、カバー108,110と、NC(Numerical Control)工作機械400,404と、回転数センサ116と、加速度ピックアップセンサ104,106と、直流電源100と、インバータ102とから構成される。
電動過給機216は、バランス修正時においては、コンプレッサハウジングもタービンハウジングも取り外された状態であるか、あるいは、未だいずれも組み付けられていない状態である。
バランス修正時における電動過給機216は、ハウジング230と、回転シャフト210と、ラジアルベアリング222,224と、ロータ214と、ステータ234と、スラストベアリング228と、スペーサ238と、カラー232と、コンプレッサホイール206と、タービンホイール208と、ナット236とから構成される。
ハウジング230は、中空円筒形状を有し、ハウジング230の内周部には、ステータ234がたとえば、ボルトの締結により固定される。ステータ234には、回転軸に平行な方向に沿ってスロットとティースとが形成される。各ティースには、予め定められた回数だけ輪状に巻回されたコイルが設けられる。ロータ214は、外周面がステータ234のティースと対向する位置になるように回転シャフト210に固定される。
回転シャフト210は、ハウジング230の中心軸に沿って、ハウジング230を貫通するように設けられる。回転シャフト210は、一方端のタービンホイール208と一体的に形成される形状を有する。なお、回転シャフト210とタービンホイール208とは別体で形成されて、ボルトあるいはナット等により締結されるようにしてもよい。
回転シャフト210には、ロータ214、スペーサ238、カラー232、スラストベアリング228およびコンプレッサホイール206が設けられる。回転シャフト210は、上述した構成部品が組み付けられた後に、ナット236が締結されることにより固定される。
ロータ214とコンプレッサホイール206とは、回転シャフト210の回転方向に対して位置決めされて設けられる。たとえば、回転シャフト210の外周面に軸方向に沿って溝形状が形成され、ロータ214(あるいは、コンプレッサホイール206)の内周面に溝形状と嵌合可能な突起形状が形成されるようにしてもよい。このようにすると、回転シャフト210へのロータ214の組み付けの際に、突起形状を溝形状に嵌合することにより、ロータ214が回転方向に位置決めされる。
また、ロータ214には、永久磁石(図示せず)が設けられる。たとえば、本実施の形態において電動過給機216として2相の交流モータが用いられる場合において、ロータ214は、N極およびS極の2極を有する永久磁石から構成される。
スペーサ238とカラー232とは、それぞれ回転軸方向に予め定められた長さを有する中空円筒形状に形成される。スペーサ238およびカラー232の内周部分は、回転シャフト210の軸部分が嵌合可能になるように形成される。スペーサ238とカラー232とは、コンプレッサホイール206およびロータ214を軸方向に位置を制限する部材である。スペーサ238とカラー232との間には、スラストベアリング228が設けられる。
ラジアルベアリング222,224は、軸中心が回転軸と合致するようにハウジング230に固定される。特に固定方法は限定されるものではないが、たとえば、ラジアルベアリング222,224がそれぞれハウジング230の予め定められた位置に圧入されるなどして固定される。ラジアルベアリング222は、回転シャフト210のタービンホイール208側の軸部分を回転自在に支持する。ラジアルベアリング224はスペーサ238を介して回転シャフト210のコンプレッサ206側の軸部分を回転自在に支持する。
ハウジング230の外周面には、加速度ピックアップセンサ104,106が設けられる。加速度ピックアップセンサ104,106は、電動過給機216との接触部位の加速度を検知することにより、電動過給機216に生じている振動を検知するセンサである。加速度ピックアップセンサ104,106において検知された加速度を示す信号は、PC(Personal Computer)118に送信される。PC118は、CPU(図示せず)およびメモリ(図示せず)を含み、各種センサから取得された情報に基づいてプログラムを実行する。本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正処理は、PC118により実行されるプログラムにより実現される。
さらに、回転シャフト210のコンプレッサホイール206側には、回転シャフト210の回転数を検知する回転数センサ116が設けられる。回転数センサ116は、回転シャフト210の軸部分、ナット236およびコンプレッサホイール206のうちのいずれかに対向して設けられ、回転数を検知する。検知された回転数を示す信号は、PC118に送信される。
ステータ234に巻回されたコイルには、直流電源100からインバータ102を介して電力が供給される。インバータ102は、直流電源100から供給される直流電力を交流電力に変換する。ステータ234に巻回されたコイルに供給される電力量は、PC118がインバータ102を介して制御する。
さらに、本実施の形態において、電動過給機216のコンプレッサ側には、コンプレッサホイール206の周囲を覆うカバー108が設けられる。また、電動過給機216のタービン側には、タービンホイール208の周囲を覆うカバー110が設けられる。
カバー108,110は、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転する際に、発生する空気の圧力変化に対しても形状が変化しない剛性を有する材質であれば、特に材質は限定されるものではないが、たとえば、金属により形成されてもよいし、樹脂により形成されてもよいものとする。
カバー108は、ハウジング230側を除くコンプレッサホイール206の全周を覆うように形成される。また、カバー110は、ハウジング230側を除くタービンホイール208の全周を覆うように形成される。カバー108,110には、それぞれ回転軸周りの一部に開口部268,270が形成される。回転軸周りに形成される開口部268,270の形状は特に限定されるものではなく、たとえば、矩形形状であってもよいし、楕円あるいは円形状であってもよいものとする。
さらに、カバー108,110には、それぞれ軸方向に貫通する貫通穴が形成される。図2に、図1の矢視Aから視たカバー108の外観を示す。
図2に示すように、カバー108は、軸方向から視て円筒形状を有する。カバー108の軸中心には、予め定められた半径を有する円形状の貫通穴264が形成される。貫通穴264の半径は、NC工作機械400に設けられるエンドミル402が挿入されたときに、エンドミル402がナット236の全周に接触可能になる半径であれば、特に限定されるものではない。
なお、カバー110についても同様に軸中心に貫通穴266が設けられる。その詳細な説明は繰り返さない。
NC工作機械400は、PC118の制御信号を受信すると、ナット236の一部分を切削するようにエンドミル402を作動させる。NC工作機械404についても同様に、PC118の制御信号を受信すると、タービンホイール208の一部分を切削するようにエンドミル406を作動させる。
次に、エンジン(図示せず)に搭載された電動過給機216の構成および動作について説明する。エンジンに搭載された電動過給機216は、図3に示すように、ハウジング230の回転軸方向の両端側にコンプレッサハウジング302とタービンハウジング304とが設けられる。
コンプレッサハウジング302は、回転軸方向に開口部が形成され、エアクリーナからの空気が流入される。また、コンプレッサハウジング302の回転軸周りには、一方端がインタークーラ(図示せず)に接続される吸気通路の他方端が接続される。すなわち、回転シャフト210が回転することにより、エアクリーナから流入した空気が圧縮されてインタークーラに送出される。
タービンハウジング304の回転軸周りには、一方端がエキゾーストマニホールド(図示せず)に接続される排気通路の他方端が接続される。タービンハウジング304は、回転軸方向に開口部が形成され、一方端が触媒に接続される排気管の他方端が接続される。
以上のような構成を有する電動過給機216の作動時においては、エンジンで、燃料と混合された空気が燃焼された後、排気ガスは、排気通路からタービンハウジング304内に導かれる。排気ガスはそこでタービンホイール208を回転させ、その回転力が回転シャフト210に伝達される。その後、排気ガスは、排気管を流通して、触媒に導かれる。触媒に導かれた排気ガスは、浄化された状態で車外へ排出される。
一方、エンジンに供給するため車外より吸入された空気は、エアクリーナによってろ過された後、吸気通路を流通して、コンプレッサハウジング302内に導かれる。空気は回転シャフト210と一体となって回転するコンプレッサホイール206によって圧縮(過給)される。圧縮された空気は、インタークーラに導かれ、冷却された状態でエンジンの吸気通路を介して燃焼室に吸入される。
また、エンジンの低回転域においては、コンプレッサハウジング302内で圧縮された空気が所望の過給圧に到達しない場合(たとえば、エンジンの回転数が予め定められた回転数以下である場合)には、ステータ234に巻回されたコイルに電力を供給することにより、回転シャフト210が回転して、コンプレッサハウジング302内の過給圧が強制的に上昇するように制御される。
このような電動過給機216においては、エンジンに搭載される前に、回転シャフト210のアンバランス状態がバランス修正装置により修正される。たとえば、図4に示すように、コンプレッサハウジング302を取り外した状態で、タービンハウジング304内に空気を送り込むことにより、供給された空気圧で回転シャフト210の回転数をアンバランス量を検知するための目標回転数まで上昇させた後、アンバランス量を検知して、検知されたアンバランス量に応じて回転シャフト210の構成部品を切削することが考えられる。しかしながら、タービンホイール208側の回転シャフト210は、タービンハウジング304により覆われるため、バランス修正は、コンプレッサホイール206側の構成部品(たとえば、ナット236)を切削することでしか実施できない。そのため、バランス修正に長時間を要する場合もある。さらに、タービンホイール208側がタービンハウジング304により覆われるため、タービンホイール208側でのバランス修正を実施することができない。そのため、コンプレッサホイール206側の構成部品だけでは修正しきれない場合には、ロータ214を再度組み付け直す必要性が生じる。
さらに、コンプレッサハウジング302およびタービンハウジング304を取り外した状態で、ステータ234に巻回されたコイルに電力を供給することにより、回転シャフト210の回転数を上昇させることも考えられるが、上述したように、コイルへの電力供給により得られる電動過給機216の回転数は、エンジンの低回転数領域に対応するものである。電動過給機216の実使用回転数領域は、コイルへの電力供給により回転力が付与される回転数領域よりも高い。そのため、コイルへの電力供給によりアンバランス量を検知するための目標回転数まで回転シャフト210を上昇させることが困難になる場合もある。
そこで、本発明は、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲をそれぞれカバー108,110で覆った状態で、電動過給機216のステータ234に電力を供給して、回転シャフト210を予め定められた目標回転数まで回転させることにより、PC118がアンバランス量を検知する点に特徴を有する。
以下、図5を参照して、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。なお、電動過給機216のアンバランス量の検知およびバランス修正は、電動過給機216が固定台等に固定されて、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲にそれぞれカバー108,110が取り付けられた状態で実施されるものとする。カバー108,110は、アンバランス量の検知時に取り付けられていればよい。すなわち、カバー108,110の取り付けは、バランス修正前に行われてもよいし、バランス修正の手順に含められてもよい。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、PC118は、回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇するように、ステータ234に供給される電力を制御する。PC118は、回転数センサ116により検知される回転シャフト210の回転数が目標回転数で維持されるようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。予め定められた目標回転数は、電動過給機216の実使用回転数領域の回転数であって、ステータ234への電力供給により到達可能な回転数であれば、特に限定されるものではない。
S102にて、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106によりハウジング230に生じる振動を測定する。具体的には、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106よりそれぞれ検知される加速度の時系列変化を取得する。PC118は、取得された加速度の時系列変化に基づいて強度あるいは周波数等の振動特性を算出して、回転シャフト210の回転時のバランス状態を検知する。PC118は、測定が開始されてから予め定められた時間が経過するまで振動の測定を継続する。
S104にて、PC118は、回転シャフト210の回転が停止するようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。
S106にて、PC118は、測定された振動が許容範囲内の振動であるか否かを判断する。たとえば、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106により測定された振動の強度がそれぞれ予め定められた強度以下であると、許容範囲内の振動であると判断するようにしてもよいし、測定された振動の周波数が予め定められた周波数帯であると、許容範囲内の振動である(あるいは、許容範囲内の振動ではない)と判断するようにしてもよい。振動が許容範囲内の振動であると(S106にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS108に移される。
S108にて、PC118は、アンバランス量および位相を算出する。PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106により測定された振動特性に基づいて回転シャフト210の回転時のバランス状態を解析して、アンバランス量および位相を算出する。たとえば、PC118は、加速ピックアップセンサ104,106により測定された振動の強度(振幅)の最大値に基づいて回転シャフト210のアンバランス量を算出する。また、PC118は、振動の強度が最大となるときの回転角度に基づいて位相を算出する。なお、ロータ214の回転角度は、たとえば、レゾルバ等を用いて検知すればよい。また、PC118は、たとえば、振動特性とアンバランス量および位相との関係(たとえば、マップ、表、数式など)を予め適合しておき、測定された振動特性に基づいてアンバランス量および位相を算出するようにしてもよい。
S110にて、PC118は、バランス修正を実施する。具体的には、算出されたアンバランス量および位相に基づいて、回転シャフト210の切削される位置および切削量が決定される。なお、切削される位置については、回転シャフト210のコンプレッサホイール206およびタービンホイール208のうちの少なくともいずれか一方に決定される。たとえば、アンバランス量が比較的大きい場合には、回転シャフト210の両端部双方が切削位置として決定される。また、アンバランス量が比較的小さい場合には、回転シャフト210の両端部のうちのいずれか一方が切削位置として決定される。算出されたアンバランス量および位相と、切削位置および切削量との関係は、予め実験等により適合されるものであって、特に限定されるものではない。
切削位置および切削量が決定されると、PC118は、NC工作機械400,404に制御信号を送信する。NC工作機械400,404は、受信した制御信号に基づいて、決定された切削位置において決定された切削量だけ回転シャフト210の一部分を切削する。本実施の形態においては、たとえば、ナット236およびタービンホイール208の軸部分の一部は、エンドミル402,406が接触することにより切削されるが、特に、切削される構成部品は、ナット236およびタービンホイール208の軸部分に限定されるものではない。なお、切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作について説明する。
コンプレッサハウジング302およびタービンハウジング304が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110が取り付けられる。このような状態で回転シャフト210のバランス修正が実施される。すなわち、電動過給機216には直流電源100からインバータ102を介して交流電力が供給される。ステータ234に交流電力が供給されることに応じて、回転シャフト210の回転数が上昇する。
このとき、ハウジング230の軸方向の両端部側には、カバー108,110が設けられるため、回転シャフト210が回転するとともに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転しても、カバー108,110によりコンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出が抑制される。そのため、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転することによる回転負荷が低減されるため、回転シャフト210の回転数は、カバー108,110が設けられない場合と比較して、速やかに上昇する。
そして、回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。そして、予め定められた時間が経過するまで振動測定が実施された後に、回転シャフト210の回転が停止される(S104)。
測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。一方、測定された振動が許容範囲内の振動でなければ(S106にてNO)、測定された振動特性に基づいてアンバランス量および位相が算出される(S108)。
そして、算出されたアンバランス量および位相に基づいて回転シャフト210のアンバランス状態が修正される(S110)。このとき、アンバランス量および位相に基づいて切削位置および切削量が決定されると、回転シャフト210のナット236またはタービンホイール208は、NC工作機械400,404により決定された切削位置において決定された切削量だけ切削される。このとき、回転シャフト210を構成する部品の一部分は、エンドミル402,406が接触することにより切削されて、回転シャフト210のバランス状態が変化する。また、切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
そして、再び、ステータ234に電力が供給されて、回転シャフト210が回転を開始する。回転数センサ116により検知された回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。振動測定が予め定められた時間が経過するまで実施された後に電動過給機216の回転が停止される(S104)。測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、コンプレッサホイールおよびタービンホイールの周囲をそれぞれカバーで覆った状態で、電動過給機のステータに電力を供給して、回転シャフトを回転させると、コンプレッサホイールおよびタービンホイールへの空気の流入および排出が抑制される。そのため、回転シャフトが回転してもコンプレッサホイールおよびタービンホイールの回転による負荷が低減される。そのため、回転シャフトの回転数をより上昇させることが可能となる。そのため、目標回転数に容易に到達させることができる。したがって、コンプレッサハウジングおよびタービンハウジングを取り外した状態で、電動過給機における実使用回転数領域におけるアンバランス量を検知して、検知されたアンバランス量に基づいて、ロータのアンバランス状態を修正することができる。すなわち、回転シャフトの両端側を切削加工するなどしてバランス修正が図れるため、回転シャフトのバランス修正の精度が向上する。したがって、電動過給機のバランス修正を精度よく実施する電動過給機のバランス修正装置を提供することができる。
また、加速度ピックアップセンサを用いて電動過給機に生じた振動を検知することにより、回転シャフトに検知装置を直接設けることなく、回転シャフトのアンバランス量を精度よく検知することができる。
なお、好ましくは、カバーには、開口部および貫通穴を開閉する機構として、たとえば、蓋部材がそれぞれ設けられることが望ましい。このようにすると、アンバランス量を検知する際においては、開口部および貫通穴を塞ぐように蓋部材を閉じておくことにより、コンプレッサホイールおよびタービンホイールの回転による負荷が低減されて、回転シャフトの回転数を目標回転数に容易に到達させることができる。また、バランス修正時においては、貫通穴が貫通するように蓋部材を開くことによりエンドミルの挿入が可能となり、さらに、開口部が開口するように蓋部材を開くことにより、切削により生じる切削粉を吸引するなどして、切削粉を排出することができる。
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と比較して、加速度ピックアップセンサ104,106に代えて変位検知センサ112,114が設けられる点と回転シャフト210に代えて回転シャフト310を含む点とが異なる。それ以外の構成については、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態において、図6に示すように、回転シャフト310のタービン側の端部には、円筒形状の突起部240が形成される。また、回転シャフト310のコンプレッサ側の端部は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機の回転シャフト210と比較して軸方向に長い形状を有する。なお、回転シャフト310は、突起部240が形成される点およびコンプレッサ側の端部が軸方向に長い点以外の構造は回転シャフト210と同じ構造である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
さらに、変位検知センサ112,114がカバー108,110を回転軸に直交する方向から貫通するように設けられる。変位検知センサ112は、上述した回転シャフト310の円筒形状の突起部240の外周面に対向するように設けられる。変位検知センサ112は、突起部240との距離、すなわち、回転軸に直交する方向における突起部240の変位量を検知して、検知された変位量を表わす信号PC118に送信する。
また、変位検知センサ114は、コンプレッサ側端部の軸部分の外周面に対向するように設けられる。変位検知センサ114は、回転シャフト310の軸部分との距離、すなわち、回転軸に直交する方向における軸部分の変位量を検知して、検知された変位量を表わす信号をPC118に送信する。
加速度ピックアップセンサによりハウジング230の振動を検知する場合においては、回転シャフト310のアンバランス状態を検知しようすると、固有振動数における共振により振幅が増大するため、アンバランス状態を精度よく検知できない可能性がある。
図7に示すように、5万回転付近が電動過給機216における固有振動数となるため、この回転数付近においては、回転シャフト310のアンバランス状態が精度よく検知できない可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、回転シャフト310の両端部の回転軸に直交する方向の変位量を変位検知センサにより検知して、検知された変位量により算出されるアンバランス量に基づいて回転シャフト310のバランス状態を修正する点に特徴を有する。
なお、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置におけるバランス修正の手順は、図5を用いて説明したフローチャートと比較して、振動測定が変位検知センサにより実施される以外の点については、同じである。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作について説明する。
コンプレッサハウジング302およびタービンハウジング304が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110が取り付けられる。このような状態で回転シャフト310のバランス修正が実施される。すなわち、電動過給機216には直流電源100からインバータ102を介して交流電力が供給される。ステータ234に交流電力が供給されることに応じて、回転シャフト310の回転数が上昇する。
このとき、ハウジング230の軸方向の両端部側には、カバー108,110が設けられるため、回転シャフト310が回転するとともに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転しても、カバー108,110によりコンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出が抑制される。そのため、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転することによる回転負荷が低減されるため、回転シャフト310の回転数は、カバー108,110が設けられない場合と比較して、速やかに上昇する。
そして、回転数センサ116により検知された回転シャフト310の回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、変位検知センサ112,114により振動測定が開始される(S102)。そして、予め定められた時間が経過するまで振動測定が実施された後に、回転シャフト310の回転が停止される(S104)。
測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。一方、測定された振動が許容範囲内の振動でなければ(S106にてNO)、測定された振動特性に基づいてアンバランス量および位相が算出される(S108)。
そして、算出されたアンバランス量および位相に基づいて回転シャフト310のアンバランス状態が修正される(S110)。このとき、アンバランス量および位相に基づいて切削位置および切削量が決定されると、回転シャフト310のナット236またはタービンホイール208は、NC工作機械400,404により決定された切削位置において決定された切削量だけ切削される。このとき、回転シャフト310を構成する部品の一部分はエンドミル402,406が接触することにより切削されて、回転シャフト310のバランス状態が変化する。また、切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
そして、再び、ステータ234に電力が供給されて、回転シャフト310が回転を開始する。回転数センサ116により検知された回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、変位検知センサ112,114により振動測定が開始される(S102)。振動測定が予め定められた時間が経過するまで実施された後に電動過給機216の回転が停止される(S104)。測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置において発現される効果に加えて変位検知センサにより回転シャフトの回転のアンバランスを検知することにより、加速度ピックアップセンサを用いる場合と比較して、電動過給機の固有振動数に影響されることなく、精度よく回転シャフトのバランス状態を検知することができる。
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と比較して、エンドミル402,406が貫通するカバー108,110の貫通穴264,266の形状が異なる。それ以外の構成については、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
図8に示すように、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置において、カバー108,110のエンドミル402が挿入される貫通穴264,266のそれぞれの形状は、回転シャフト210の回転軸を中心とする90度の内角を有する扇形状である。
本実施の形態においては、PC118がロータ214を予め定められた回転位置に固定するようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する点に特徴を有する。
具体的には、ロータ214を予め定められた目標回転数まで上昇させた後に、アンバランス量が算出されて、算出されたアンバランス量に基づいて切削位置および切削量が決定されたときに、決定された切削位置に対して、貫通穴264,266からエンドミル402,406が接触可能になるように、ロータ214の回転位置が固定されるように、ステータ234に電力が供給される。
本実施の形態において、電動過給機216に設けられる回転電機は、2相の交流モータである。ロータ214は、N極とS極の2極の磁極を有する。
図9(A)に示すように、ロータ214よりも紙面上方向に位置する、ティース242に巻回されたコイル250がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面下方向に位置する、ティース246に巻回されたコイル254がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース242に対向し、ロータ214のS極がティース246に対向する位置において発現した磁力により位置が固定される。
本実施の形態において、カバー108,110には、ティース242とティース252との間に、90度を内角とする扇形状の貫通穴264,266がそれぞれ形成される。そのため、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入された場合においては、エンドミル402,406は、回転シャフト210の一方端におけるD点からA点までの円周面に接触することが可能となる。
図9(B)に示すように、ロータ214よりも紙面右方向に位置する、ティース244に巻回されたコイル252がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面左方向に位置する、ティース248に巻回されたコイル256がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース244に対向し、ロータ214のS極がティース248に対向する位置において発現した磁力により位置が固定される。
このとき、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入された場合においては、エンドミル402,406は、回転シャフト210のA点からB点までの円周面に接触が可能となる。図9(B)のロータ214の回転位置は、図9(A)に示すロータ214を紙面時計回りに90度だけ回転させた位置である。
図9(C)に示すように、ロータ214よりも紙面下方向に位置する、ティース246に巻回されたコイル254がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面上方向に位置する、ティース242に巻回されたコイル250がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合にはロータ214のN極がティース246に対向し、ロータ214のS極がティース242に対向する位置において発現した磁力により位置が固定される。
このとき、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入された場合においては、エンドミル402,406は、回転シャフト210のB点からC点までの円周面に接触が可能となる。図9(C)のロータ214の回転位置は、図9(B)に示すロータ214を紙面時計回りに90度だけ回転させた位置である。
図9(D)に示すように、ロータ214よりも紙面左方向に位置する、ティース248に巻回されたコイル256がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面右方向に位置する、ティース244に巻回されたコイル252がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース248に対向し、ロータ214のS極がティース244に対向する位置において発現した磁力により位置が固定される。
このとき、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入された場合においては、エンドミル402,406は、回転シャフト210のC点からD点までの円周面に接触が可能となる。図9(D)のロータ214の回転位置は、図9(C)に示すロータ214を紙面時計回りに90度だけ回転させた位置である。
以下、図10を参照して、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。
なお、図10に示したフローチャートの中で、図5を用いて説明したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、そられについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
S200にて、PC118は、ロータロック位相を算出する。たとえば、PC118は、S108にて算出されたアンバランス量および位相に基づいてロータロック位相を算出する。
具体的には、たとえば、図9におけるA点をロータ214の基準位置としたときに、基準位置から切削位置が何度回転した位置であるかを算出する。そして、算出された回転位置に基づいて図9(A)から図9(D)のうちのいずれかひとつのロック位置が設定される。たとえば、切削位置がA点とD点との間であれば、図9(A)に示すロータ214とステータ234との位置関係がロータロック位置として設定される。
S202にて、PC118は、設定されたロータロック位置にロータ214が固定されるように、インバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。
S204にて、PC118は、アンバランス修正を実施する。具体的には、切削位置については、S200にてロータロック位相が算出される際に決定されており、PC118は、算出されたアンバランス量に基づいて切削量を決定する。
なお、算出されたアンバランス量および位相と切削位置および切削量との関係は、予め実験等により適合されるものであって、特に限定されるものではない。
切削位置および切削量が決定されると、PC118は、NC工作機械400,404に制御信号を送信する。NC工作機械400,404は、受信した制御信号に基づいて、決定された切削位置において決定された切削量だけ回転シャフト210の一部分を切削する。本実施の形態においては、たとえば、ナット236およびタービンホイール208の軸部分の一部は、エンドミル402,406が接触することにより切削されるが、特に、切削される構成部品は、ナット236およびタービンホイール208の軸部分に限定されるものではない。切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
以上のような構成およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作について説明する。
コンプレッサハウジング302およびタービンハウジング304が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110が取り付けられる。このような状態で回転シャフト210のバランス修正が実施される。すなわち、電動過給機216には直流電源100からインバータ102を介して交流電力が供給される。ステータ234に交流電力が供給されることに応じて、回転シャフト210の回転数が上昇する。
このとき、ハウジング230の軸方向の両端部側には、カバー108,110が設けられるため、回転シャフト210が回転するとともに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転しても、カバー108,110によりコンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出が抑制される。そのため、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転することによる回転負荷が低減されるため、回転シャフト210の回転数は、カバー108,110が設けられない場合と比較して、速やかに上昇する。
さらに、本実施の形態においては、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置のカバー108,110の貫通穴264,266と比較して、開口面積が約4分の1となる。したがって、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出がさらに抑制される。そのため、回転負荷をさらに低減させることができる。
そして、回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。そして、予め定められた時間が経過するまで振動測定が実施された後に、回転シャフト210の回転が停止される(S104)。
測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。一方、測定された振動が許容範囲内の振動でなければ(S106にてNO)、測定された振動に基づいてアンバランス量および位相が算出される(S108)。
そして、算出されたアンバランス量および位相に基づいてロータロック位置が設定される(S200)。ロータロック位置が設定されると、PC118は、ロータ214が設定されたロック位置に回転するように、インバータ102を介してステータ234に供給される電力が制御される(S202)。アンバランス量および位相に基づいて決定された切削位置および切削量に基づいてアンバランスが修正される(S204)。このとき、決定された切削位置および切削量に基づいて回転シャフト210の構成部品の一部分は、エンドミル402,406が接触することにより切削されて、回転シャフト210のバランス状態が変化する。また、切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
そして、再び、ステータ234に電力が供給されて、回転シャフト210が回転を開始する。回転数センサ116により検知された回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。振動測定が予め定められた時間が経過するまで実施された後に電動過給機216の回転が停止される(S104)。測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置において発現される効果に加えて、回転シャフトを90度毎に固定できるようにすることにより、貫通穴を回転軸を中心とした90度の内角を有する扇形状としても、全周に対してエンドミルを接触可能にすることができる。そのため、貫通穴の貫通面積を減少させることができる。そのため、アンバランス量を検知する際に、回転シャフトを回転させたときの、貫通穴における空気の流出量および流入量を低減させることができる。そのため、コンプレッサホイールおよびタービンホイールの負荷の低減を図ることができる。そのため、容易に回転シャフトを目標回転数まで上昇させることができる。
また、NC工作機械400,404を回転シャフト210に対して、全周に接触可能に移動させる必要がない。バランス修正装置としての設備の簡素化が図られる。これにより、コストの上昇を抑制することができる。
本実施の形態においては、2相の回転電機が設けられる電動過給機を一例として説明したが、特に、これに限定されるものではない。たとえば、2相以上の回転電機であってもよい。たとえば、2相の回転電機が設けられる電動過給機においては、60度ごとに回転シャフトを固定することが可能となる。そのため、貫通穴の形状は、回転軸を中心とした60度の内角を有する扇形状に形成しても、回転シャフトの全周に対してエンドミルを接触可能にすることができる。そのため、貫通穴の面積をさらに減少させることができる。
<第4の実施の形態>
以下、第4の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の構成と比較して、エンドミル402,406が貫通するカバー108,110の貫通穴264,266の形状が異なる。それ以外の構成については、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
図11に示すように、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置において、カバー108,110のエンドミル402,406が挿入される貫通穴264,266のそれぞれの形状は、軸中心から予め定められた距離だけ離れた位置に設けられ、かつ、少なくともエンドミル402,406の直径よりも大きい直径を有する円形状である。
本実施の形態においては、PC118がロータ214の予め定められた回転位置に固定するようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する点に特徴を有する。
具体的には、PC118は、ロータ214を予め定められた目標回転数まで上昇させるように制御した後に、アンバランス量を算出する。PC118は、算出されたアンバランス量に基づいて切削位置および切削量を決定する。PC118は、決定された切削位置における切削量を、貫通穴264,266からエンドミル402,406により接触される予め定められた複数の位置における切削量に変換する。PC118は、ロータ214の回転位置が予め定められた複数の位置でそれぞれ固定されるように、ステータ234に供給される電力を制御する。
本実施の形態において、電動過給機216に設けられる回転電機は、2相の交流モータである。ロータ214は、N極とS極の2極の磁極を有する。
図12(A)に示すように、ロータ214よりも紙面上方向に位置する、ティース242に巻回されたコイル250がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面下方向に位置する、ティース246に巻回されたコイル254がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース242に対向し、ロータ214のS極がティース246に対向する位置を回転シャフト210の切削位置(1)として固定される。
本実施の形態において、カバー108,110には、ティース242とティース252との間に、ティース242と軸中心とを結ぶ直線とのなす角度がαとなる位置であって、軸中心から予め定められた距離に貫通穴264,266がそれぞれ形成される。
このとき、図12(A)において、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入されると、回転シャフト210のA点からD点までの間の予め定められた位置における円周面に接触が可能となる。
図12(B)に示すように、ロータ214よりも紙面右方向に位置する、ティース244に巻回されたコイル252がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面左方向に位置するティース248に巻回されたコイル256がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース244に対向し、ロータ214のS極がティース248に対向する位置を回転シャフト210の切削位置(2)として固定される。
このとき、図12(B)において、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入されると、回転シャフト210のA点からB点までの間の予め定められた位置における円周面に接触が可能となる。
図12(C)に示すように、ロータ214よりも紙面下方向に位置するティース246に巻回されたコイル254がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面上方向に位置するティース242に巻回されたコイル250がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース246に対向し、ロータ214のS極がティース242に対向する位置を回転シャフト210の切削位置(3)として固定される。
このとき、図12(C)において、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入されると、回転シャフト210のB点からC点までの間の予め定められた位置における円周面に接触が可能となる。
図12(D)に示すように、ロータ214よりも紙面左方向に位置するティース248に巻回されたコイル256がS極の磁力を発現し、ロータ214よりも紙面右方向に位置するティース244に巻回されたコイル252がN極の磁力を発現するようにステータ234に電力が供給された場合には、ロータ214のN極がティース248に対向し、ロータ214のS極がティース244に対向する位置を回転シャフト210の切削位置(4)として固定される。
このとき、図12(D)において、エンドミル402,406が貫通穴264,266に挿入あれると、回転シャフト210のC点からD点までの間の予め定められた位置における円周面に接触が可能となる。
図13に示すように、アンバランス量に基づいて決定された切削位置が、回転シャフト210のA点とD点との間であって、D点から円周に沿って15度移動した位置(以下、E点という)であるとする。また、切削量は50mgであると決定されたものとする。なお、図13の紙面左右方向をx軸とし、紙面上下方向をy軸とする。
本実施の形態において、PC118は、図14に示すように、E点の切削量を切削位置(1)軸上のF点および切削位置(2)軸上のG点における切削量にベクトル変換する。なお、F点およびG点は、回転シャフト210が図12(A)〜(D)のうちのいずれかに切削位置に固定されたときにエンドミル402,406が貫通穴264,266から挿入されて接触可能となる位置である。
図15に示すように、切削位置(1)軸と、E点および軸中心を結ぶ直線とがなす角度は、30度である。また、切削位置(2)軸と、E点および軸中心を結ぶ直線とがなす角度は、60度である。したがって、E点における50mgの切削量は、切削位置(1)軸および切削位置(2)軸にベクトル変換すると、切削位置(1)における43.3mgの切削量と、切削位置(2)における25mgの切削量とに分けられる。
すなわち、回転シャフト210が切削位置(1)に固定されたときに、上述のF点において43.3mgだけ切削され、回転シャフト210が切削位置(2)に固定されたときに、上述のG点において25mgだけ切削される。
以下、図16を参照して、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。
なお、図16に示したフローチャートの中で、図5を用いて説明したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
S300にて、PC118は、算出されたアンバランス量に対応する切削量を切削位置(1)〜(4)のうちのいずれか隣接する2つの位置に対応する切削量を算出するためにベクトル変換する。詳細は図13〜図15を用いて説明した通りであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
S302にて、PC118は、ロータロック(1)を実施する。すなわち、PC118は、変換された2つの切削位置のうちの一方の位置にロータ214が固定されるようにステータ234に供給される電力を制御する。たとえば、決定された切削位置が、図13に示すE点であるとすると、切削位置(1)および切削位置(2)における切削量にベクトル変換されるため、回転シャフト210は、切削位置(1)に固定される。
S304にて、PC118は、アンバランス修正を実施する。具体的には、変換された切削量だけ切削されるように、NC工作機械400,404が制御される。エンドミル402,406がロータ214の円周面に接触することにより切削される。切削により生じた切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
S306にて、PC118は、ロータロック(2)を実施する。すなわち、PC118は、変換された2つの切削位置のうちの他方の位置にロータ214が固定されるようにステータ234に供給される電力を制御する。たとえば、決定された切削位置が、図13に示すE点であるとすると、回転シャフト210は、切削位置(2)に固定される。
S308にて、PC118はアンバランス修正を実施する。具体的には、変換された切削量だけ切削されるように、NC工作機械400,404が制御される。エンドミル402,406がロータ214の円周面に接触することにより切削される。切削された後に生じる切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作について説明する。
コンプレッサハウジング302およびタービンハウジング304が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110が取り付けられる。このような状態で回転シャフト210のバランス修正が実施される。すなわち、電動過給機216には直流電源100からインバータ102を介して交流電力が供給される。ステータ234に交流電力が供給されることに応じて、回転シャフト210の回転数が上昇する。
このとき、ハウジング230の軸方向の両端部側には、カバー108,110が設けられるため、回転シャフト210が回転するとともに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転しても、カバー108,110によりコンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出が抑制される。そのため、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転することによる回転負荷が低減されるため、回転シャフト210の回転数は、カバー108,110が設けられない場合と比較して、速やかに上昇する。
さらに、本実施の形態においては、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置のカバー108,110の貫通穴264,266と比較して、貫通面積が小さい。したがって、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208への空気の流入および流出がさらに抑制される。そのため、回転負荷をさらに低減させることができる。
そして、回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。そして、予め定められた時間が経過するまで振動測定が実施された後に、回転シャフト210の回転が停止される(104)。
測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。一方、測定された振動が許容範囲内の振動でなければ(S106にてNO)、測定された振動に基づいてアンバランス量および位相が算出される(S108)。
そして、算出されたアンバランス量および位相に基づく切削量は、切削位置(1)〜(4)のうちの隣接する2つの切削位置に対応する切削量がベクトル変換により算出される(S300)。2つの切削位置のうちのいずれか一方の位置にロータ214が固定される(S302)。固定された切削位置において、ベクトル変換された切削量だけ切削されることにより回転シャフト210のバランス状態が変化させられる(S304)。切削された後に生じる切削粉は、カバー108,110に形成された開口部268,270から吸引される。
さらに、2つの切削位置のうちの他方の位置にロータ214が固定される(S306)。固定された切削位置において、ベクトル変換された切削量だけ切削されることにより、回転シャフト210のバランス状態がさらに変化させられる。
そして、再び、ステータ234に電力が供給されて、回転シャフト210が回転を開始する。回転数センサ116により検知された回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S100)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S102)。振動測定が予め定められた時間が経過するまで実施された後に電動過給機216の回転が停止される(S104)。測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S106にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置において発現される効果に加えて、回転シャフトを90度毎に固定して、さらに、切削位置をベクトル変換することにより、カバーに形成される貫通穴の大きさを小さくすることができる。そのため、アンバランス量を算出する際に、回転シャフトを回転させたときの、貫通穴における空気の流出量および流入量を低減させることができる。そのため、コンプレッサホイールおよびタービンホイールの負荷の低減を図ることができる。そのため、容易に回転シャフトを目標回転数まで上昇させることができる。
また、NC工作機械400,404を回転シャフト210に対して、全周に接触可能に移動させる必要がない。バランス修正装置としての設備の簡素化が図られる。これにより、コストの上昇を抑制することができる。
本実施の形態においては、2相の回転電機が設けられる電動過給機を一例として説明したが、特に、これに限定されるものではない。たとえば、2相以上の回転電機であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 直流電源、102 インバータ、104,106 加速度ピックアップセンサ、108,110 カバー、112,114 変位検知センサ、116 回転数センサ、118 PC、206 コンプレッサホイール、208 タービンホイール、210,310 回転シャフト、214 ロータ、216 電動過給機、222,224 ラジアルベアリング、228 スラストベアリング、230 ハウジング、232 カラー、234 ステータ、236 ナット、238 スペーサ、242,244,246,248 ティース、250,252,254,256 コイル、264,266 貫通穴、268,270 開口部、400,404 NC工作機械、402,406 エンドミル。