JP4707788B2 - ロープ用コーティング及びその形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、請求項1の前文に従ったコーティングを含む合成繊維ロープ、好ましくは芳香族ポリアミドのロープに関する。
【0002】
【従来の技術】
ロープは、特に、例えばエレベータのような運搬技術、クレーンによる建設作業、及び露天掘りなどで使用され、移動するロープは機械装置の重要な部品であり過酷な用途に使用されている。特に複雑な様相は、例えばエレベータ構造体及び懸架されたケーブル・カーに使用される場合のように、駆動されるロープの荷重の問題に見られる。これらの例においては、必要なロープの長さは長いが、一方エネルギーを考慮すると、ロープの質量は可能な限り小さいことが要求される。高張力合成繊維ロープ、例えば高度に配向された分子鎖を有する芳香族ポリアミド又はアラミドのロープは、通常のスチール・ロープよりも、これらの要件を良好に充足する。しかし、アラミドのような物質は、破断応力及び作業能力を低下させる紫外線(UV)光、及び酸化又は還元効果を有する環境に特に敏感である。この理由によって、アラミド・ロープは、通常、光に安定な物質のシース又はブレードで覆われている。
【0003】
例えば、出願人のEP0672781A1から、エレベータ昇降路の中を案内されるエレベータ・ボックスのフレームを平衡錘へ連結するために、そのようなシース付きの合成繊維ロープをエレベータ設備の懸架部品として使用することが知られている。エレベータ・ボックス及び平衡錘を上下させるために、ロープは駆動モータによって駆動される牽引綱車の上を走行する。駆動トルクは、常に巻きつけ角にあるロープ部分の摩擦によって伝達される。
【0004】
ストランドの全体の被覆層を取り巻く1つのシースを設ける代わりに、この層の個々のストランドに、好ましくはポリウレタン又はポリアミドのような合成物質からなる継目のない押出シースが被せ、これらシースが合わさってロープを磨耗から保護し、牽引綱車の上で所望の摩擦係数を確保する。
【0005】
その場合、ストランド間のすべての隙間が充填され、広範囲にわたって粘着領域を有する形態適合が作り出されるように、合成物質のシースを圧力下で押し出すことによって、合成物質のシースと合成繊維ストランドの最外層との間の粘着力が達成される。しかし、或る条件の下では、ロープに負荷がかかったときに生じる横断力により、合成シースのずれ又は重なりが生じる可能性がある。ロープにおけるそのような変化は、ロープの破損を生じるかも知れないので望ましくない。しかし、押出プロセスを使用して、ストランドとシースとの間に必要な粘着力を作り出すシースをストランドに適用することは、費用がかかる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の理由のため、本発明の目的は、変わらぬ高レベルの機能を確保しながら、合成繊維ロープの製造コストを低減することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、上記の目的は、最初に言及したタイプの、請求項1に記載の特徴を有する合成繊維ロープによって達成される。
【0008】
これまでの押出保護シースの代わりに、UV安定剤及び、磨耗並びにロープに有害な環境の影響から保護するための他の添加物を含む液体でストランドの最外層にある合成繊維ストランドを被覆するだけで、UVに対する信頼性のある保護がなされ、かつ磨耗に対するロープの十分な耐性が継続的に保証されることが出願人による綿密なテストにより判明した。
【0009】
本発明からもたらされる利点は、ストランドの最外層の合成繊維ストランドとコーティングが永続的に接合することである。なぜなら、コーティング材とストランドの合成繊維を接合するマトリックス材は同一だからである。適切な添加物を混合するだけで、機能は繊維ロープの全寿命へと容易に延長されることができる。本発明に従うと、コーティングは重なりを形成せず、また合成繊維ストランド上でずれることもない。ツール及び機器の追加費用なしに広範囲にわたってコーティングを形成することができ、しかもその形成方法は簡単かつ安価である。本発明に従ったコーティングを形成するために必要なことは、大規模な連続工程により製造される通常の合成繊維ストランドを出発点として、繊維ストランドの最外層用の合成繊維ストランドを、何れにしても設置してある含浸槽を通して延伸するだけである。コーティングの厚さは、合成繊維ストランドの含浸槽中の滞留時間によって調節することができる。更に、コーティング・プロセスは無制限に反復することができる。
【0010】
耐磨耗性が特に優れたコーティングの実施形態は、例えばアラミドから構成される短繊維を含浸槽に加えることによって達成される。
【0011】
本発明の更に有利な実施形態は、追加の従属項に記載されている。
【0012】
【発明の実施の形態】
液体形状の含浸物質を使用する本発明の好ましい例示的実施形態を、16のストランドから構成されるロープ1の断面図を参照して以下に説明する。コア・ストランド2の周りには、5つの同一ストランド3が螺旋状に撚られて、それと共に、太めの5つのストランド4が、細めの5つのストランド5と交互に並行撚りを形成するように撚られ、被覆層6を形成している。図示したロープ1に使用される荷重支持ストランド2、4、5は、アラミド繊維7の個々の束から撚られている。
【0013】
ストランド2、3、4、5は、本質的にポリウレタンのマトリックスの中へ螺旋状に接合されたアラミド・スレッド8から構成される。撚り合わせるために、アラミド・スレッド8は保護含浸物質、例えばポリウレタンの溶液で処理される。各ストランド2、4、5におけるポリウレタンの割合により、ロープ1の逆曲げ応力による疲労強度が決定される。ポリウレタンの割合が高くなれば、それだけ逆曲げ性能も高くなる。ポリウレタンの割合が増加するにつれて、ロープ1全体の占有率が減少し、それと共にロープ1の荷重支持能力及び伸びも減少する。所望のロープ特性により、ストランド2、4、5の含浸用ポリウレタンの割合は、例えば10から60%の間に定めることができる。
【0014】
例示した実施形態では、7つのアラミド・スレッド8は含浸によってフィラメント7に相互結合され接合される。このようにして、含浸により個々のフィラメント7の周りに薄い保護層9が形成される。7つのフィラメント7がストランド2、3、4、5へと螺旋状に撚られる。実際の実施形態では、フィラメント7は図示されたような円形ではなく、隣接したフィラメント及びストランドの面に適合した形となる。ここまでは、例示した実施形態で使用されるすべてのストランド2、3、4、5の構造は概して同一であるが、メートル当たりの撚り合わせ数は、ストランドの層、及びストランドの直径によって、異なることがある。
【0015】
本発明に従えば、被覆層6に撚られた太めのストランド4及び細めのストランド5は、含浸物質の追加保護層10によって取り囲まれる。この保護層は、太めのストランド4及び細めのストランド5をドロースルー・プロセスで含浸物質の槽へ追加的に浸漬することによって、これらストランドの表面に形成するのが有利である。ポリウレタンに加えて、含浸物質は、添加物としてUV安定剤、好ましくはシリコン結晶と、酸化還元防止剤とを含む。好ましくはアラミドの短繊維を加えると、保護層10の磨耗耐性が改善される。
【0016】
ここで、個々のストランド4、5の周りの保護層10の厚さ11は、0.2mmである。しかし、本発明に従えば、それは所望の保護効果により0.1から1mmの間で選択することができる。保護層10は、被覆層6の太めのストランド4と細めのストランド5との間の磨耗保護の働きをすると共に、被覆層6のすべてのストランド4、5と共に接合され、その結果安価且つ効果的にロープ1のコーティングを形成することができる。これによって、合成物質の追加のロープ・シースは不要になる。本発明に従えば、保護層10のコーティングで被覆されたストランド4、5は半完成製品として前もって製造しておくことができ、次に必要に応じて通常のロープ製造機によって処理することができるため、アラミド繊維ロープ1の製造コストが著しく低減される。
【0017】
含浸物質の代わりに、粘着性を有する別の液体をロープに塗布することもできる。
【0018】
純粋に吊り下げ用ロープとして使用される場合のほかに、ロープは広範囲のマテリアルハンドリング機器に使用することができる。その例はエレベータ、鉱山の巻き揚げ機、ビルディングクレーン、屋内クレーン、船舶クレーン、空中ケーブル、及びスキーリフト、並びにエスカレータの牽引手段である。駆動力は、牽引綱車又はケーペ綱車上の摩擦、又は円形ドラムに巻いたロープによって伝達される。ホーリング・ロープは、時には牽引又は懸架ロープとも呼ばれるもので、駆動されて移動するロープを指すものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】16のストランドから構成されたロープの断面図である。
【符号の説明】
1 ロープ
2 コア・ストランド
3、4、5 ストランド
6 被覆層
7 アラミド繊維(フィラメント)
8 アラミド・スレッド
9、10 保護層
11 厚さ

Claims (13)

  1. ロープ・コア上に荷重支持合成繊維ストランドが撚られた合成ロープであって、合成ロープの最外層を構成する荷重支持合成繊維ストランドが、合成繊維(8)から構成され、コーティング(10)が、合成ロープの最外層の少なくとも荷重支持合成繊維ストランドを取り巻き、
    コーティング(10)が、UV安定剤及び磨耗並びに合成ロープに有害な環境の影響から保護するための添加物を含む混合物を有する液体から形成されることを特徴とする、合成ロープ。
  2. コーティング(10)が、合成ロープの最外層の荷重支持合成繊維ストランドだけを取り巻いていることを特徴とする、請求項1に記載の合成ロープ。
  3. 前記液体が、合成繊維(8)を接合するための含浸物質を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の合成ロープ。
  4. 含浸物質が、磨耗から保護するための短繊維を含むことを特徴とする、請求項3に記載の合成ロープ。
  5. 含浸物質が、酸化及び還元防止剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載の合成ロープ。
  6. 含浸物質が、ポリウレタン溶液を含むことを特徴とする、請求項3に記載の合成ロープ。
  7. コーティング(10)が、0.1から1mmの厚さ(11)の層を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の合成ロープ。
  8. 合成繊維が、ポリアミド繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載の合成ロープ。
  9. ロープ・コア上に荷重支持合成繊維ストランドが撚られた合成ロープ(1)を製造する方法であって、合成ロープの最外層を構成する荷重支持合成繊維ストランドが、合成繊維(8)から構成され、コーティング(10)が、合成ロープの最外層の少なくとも荷重支持合成繊維ストランドを取り巻き、
    合成ロープの最外層の前記荷重支持合成繊維ストランドを、磨耗及び合成ロープに有害な環境の影響から保護する添加物を含む含浸物質に浸漬することによってコーティングすることを特徴とする、方法。
  10. コーティング(10)が、合成ロープの最外層の荷重支持合成繊維ストランドだけを取り巻いていることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 合成ロープの最外層の荷重支持合成繊維ストランドを含浸物質に最初に浸漬した後、前記浸漬によって形成された層へ短繊維を加え、次に再び荷重支持合成繊維ストランドを含浸物質に浸漬することによってコーティングすることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
  12. 合成繊維が、ポリアミド繊維であることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
  13. 請求項1から8のいずれか一項に記載の合成ロープを具備するエレベータ。
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