JP4706110B2 - 鋼管継手のねじ径測定装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管継手のねじ径測定装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油井用鋼管はねじ継手によって連結される。油井用鋼管は高い内圧と大きなトルク及び推力を受けるので、その継手は優れたシール性能と高い剛性及び強度を有することが必要であり、また、着脱の容易性が要求される。このため、油井用鋼管の継手のねじは特殊な形状のねじを形成すると共に継手部にはテーパを付してあり、正確に加工する必要がある。この加工の精度を検査するために、迅速正確に継手のねじ部の寸法測定を行うことが必要である。
【0003】
このようなねじ部の寸法検査又は測定には、従来、鋼管の継手部のねじの頂部の内径又は外径を測定すると共に、ねじの形状や高さを測定し、これらの数値を組み合わせて検査結果を示すことが行われていた。例えば、ピンねじ(鋼管側のねじ)は、ねじ山の山頂を測定していた。実際にボックスねじ(カップリング側のねじ)と干渉するのはピンねじの谷底であるので、ねじ山頂の径の測定値からねじの高さ分をマイナスする必要がある。このねじ山の高さはねじハイトゲージで測定し、この測定値を加減算することにより、ねじ径の値を求めていた。
【0004】
ところで、鋼管継手のねじはテーパを有するので、測定位置によって外径又は内径の値が異なり、測定位置を正確に特定する必要がある。このため、鋼管のねじ部の寸法測定位置は鋼管継手の端部から鋼管径ごとに一定寸法の位置に決められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来の油井用鋼管のねじ部の検査ないし測定は、種々の測定値の組み合わせによって行われており、迅速性に欠けることや誤差が大きくなるなどの問題があった。本発明は上記問題点を解決した鋼管継手のねじ径測定装置及び方法を開発し、これを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、鋼管継手部の所定位置のねじの谷底寸法をスレッドロールにて直接測定し、ねじ底径の値を直接求めることができる装置又はスレッドロールに代り円筒ロールにてねじの山頂寸法を測定する装置及びこれらの装置を用いてねじ径を迅速正確に測定する方法を開発した。本発明の装置は、次の技術手段を講じたことを特徴とする鋼管継手のねじ径測定装置である。
(a)鋼管継手の雄ねじのねじ底に接触する断面プロフィールを周面に備えたスレッドロール又は鋼管継手のカップリングの雌ねじのねじ山頂面に接触する円筒ロールの何れかのロールと、
(b)スレッドロール又は円筒ロールを挿通する軸を先端側に備えた2本の測定脚と、
(c)基準面を備え基準面に開口した貫通スリットを備え、前記2本の測定脚を基準面から突出させて貫通スリット内に摺動移動自在に保持するフレームと、
(d)前記測定脚によるねじの測定値と基準値との差を検出するダイアルゲージと
から構成されたことを特徴とする鋼管継手のねじ径測定装置である。この測定装置を用いると短時間で正確なねじ底径又はねじ山頂部の径の測定を行うことができる。
【0007】
上記鋼管継手のねじ径測定装置において、前記スレッドロールは、ロール周縁に、ねじピッチと一致しねじ底に接する山谷形状を有し、山部はテーパねじの傾きと平行な頂面を備え、さらに、軸方向に微調整可能なように軸方向両側にコイルスプリングを備えると好適である。これは、ねじの管端からの距離は1円周の間で1ピッチ分だけ寸法が変わるので、周上の測定位置の変動による微調整を自動的に行うことができるからである。
【0008】
次に、本発明の鋼管継手の雌ねじのねじ底径の測定方法は、上記の鋼管継手のねじ径測定装置に前記スレッドロールを装着し、前記2本の測定脚の基準面からの突出寸法を測定管サイズごとに定めた寸法に設定し、次いで、基準面をマスターゲージ上に載せて測定脚のスレッドロールの相互間隔を調整して固定すると共にダイアルゲージのゼロ点を合わせ、次いで基準面を鋼管の端部に当接させ、スレッドロールの山部を雄ねじ底に接触させ、フレームを左右に揺動させてダイアルゲージの振れの最大値を読みとり、鋼管継手の雄ねじ底径を測定することを特徴とする鋼管継手のねじ径測定方法である。この方法により、鋼管の端部から所定の距離の雄ねじ底径を1測定で正確に測定することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。先ず本発明の鋼管継手のねじ径測定装置が測定する鋼管継手について図10〜図12を用いて説明する。図10は鋼管継手の縦断面図で図10(a)は雄ねじ111を備えた鋼管端110の断面図、図10(b)はこの雄ねじ111に螺合する雌ネジ101を備えたカップリング100の縦断面図である。本発明のねじ測定装置は、鋼管端110の雄ねじ111のねじ底径116又はカップリング100の雌ねじの頂部の径105を測定するものである。
【0011】
先ず鋼管の端110の雄ねじ111について説明する。鋼管継手のねじは特殊なねじ山形状をもつテーパねじである。その径は鋼管端110の端面114から管径ごとに定められた一定距離115の所定位置117のねじ底径116を測定する。またカップリング100ではその端面102から管径ごとに定められた一定距離104の所定位置103のねじ山頂部の径105を測定する。この鋼管端110の所定位置117とカップリング100の所定位置103とはこの鋼管継手を組立てたときねじが噛合って対向する位置である。図11は図10(b)の一部拡大断面図である。図12は、さらに拡大されたねじを示し、カップリング100の雌ねじ101と鋼管端110の雄ねじ111との噛合わせを示している。このねじは鋼管端110の雄ねじ111のねじ底面112とカップリング100側の雌ねじ101のねじ山頂面106とを接触させた状態で、スタッビングフランク側の雌ねじ面107と雄ねじ面113との隙間を最適化して鋼管長手方向の耐圧縮性を確保するようになっている。従って、ねじは形状が精度よく所定寸法に正確に形成されていることが重要である。
【0012】
図1は本発明の実施例の鋼管継手のねじ径測定装置1の側面図、図2はその平面図である。本発明の鋼管継手のねじ径測定装置1は、2本の測定脚10と、この2本の測定脚10を取付けるフレーム30とダイアルゲージ50とを基本要素としている。測定脚10は先端部の軸14にスレッドロール11を挿入して装着している。軸14は測定すべきねじ部のテーパに合致するように測定脚10の中心軸に対して傾いている。鋼管110側の雄ねじ111の径を測定するときは軸14は外向きに傾けた状態に取りつける。スレッドロール11はスレッドリングを3個連接したプロフィール形状を有している。このスレッドリングは周縁部が鋼管の継手部のねじ山の間に進入してねじ底に接触する形状のリングとなっている。スレッドロール11の山頂部11aは鋼管継手のテーパねじの傾きと平行な頂面を備えている。このスレッドロール11は測定脚10の先端の軸14に軸方向に遊動可能に嵌挿されており、その軸方向両側にコイルスプリング12を備え、止め金具13によって止めつけられている。2個のコイルスプリング12は互いに対向してスレッドロール11を両側から押すように付勢されており、スレッドロール11は2個のコイルスプリング12によって、所定の中央位置に静止している。測定脚10の根元側部分15はフレーム30の貫通スリット31内に保持され、スリット31内で任意の位置に固定できるようになっている。この固定は下パッド16、上パッド17によってフレームに挟みつけて固定するようになっている。フレーム30は基準面32を基準にして、測定脚10の突出長さを自由に調整できるようになっている。測定脚10の他端には、測定脚の取付方向を示す切欠18が設けられている。この切欠18の方向によりスレッドロール11の取付軸14の傾きが内向きか外向きかを示すようになっている。2個の測定脚10のうちダイアルゲージ50側の一方の測定脚10はフレーム30のスリット31内でスリット31に沿って微動可能に保持され、その微動を検出するダイアルゲージ50がフレーム30の一端側に取付けられている。
【0013】
本発明の鋼管継手のねじ径測定装置1は測定脚10の間隔をマスターゲージ45に合わせて設定し、フレーム30の基準面32を鋼管のねじ継手の端面に接触させ、2個のスレッドロール11をねじ底に当接させ、ねじ底直径をマスターゲージ45の基準値とダイアルゲージ50によって比較し、ねじの測定、検査を行うものである。
【0014】
次に、図1に示す本発明のねじ径測定装置1の使用方法について説明する。図1に示す装置は鋼管端の雄ねじのねじ底径を測定するものである。
【0015】
図3はフレーム30に測定脚10を取りつけ、フレーム30の基準面32からスレッドロール11の端までの突出長さをスケール33により測定すべき鋼管ねじ寸法115(図10参照)に合わせる工程を示している。図3では、雄ねじを測定する場合を示しており、測定脚10の切欠18は外向きになっており、スレッドロール11の軸14は、下端が外向きに開いている。
【0016】
図4、図5は2本の測定脚10の間隔を合わせる工程を示すもので、まず図4に示すように一方の測定脚10aをスパナ41で緩めてスリット31中で動くようにし矢印42で示すように任意の位置(10bで示す位置)まで動かす。次いで図5に示すようにフレーム30の基準面32を基準ゲージ45上に載せ、図4で動かしておいた測定脚10bを矢印44方向に動かし、マスターゲージ45の基準側面47にスレッドロール11を当接させ、測定脚10をスパナ43で固定する。このとき、他方の測定脚も10c,10dで示すように微動させ、その中立位置にセットする。
【0017】
図6は鋼管継手100のねじ端部に測定装置1を載せ、スレッドロール11をねじ底に接触させた状態で測定装置1を左右に微小揺動させダイアルゲージ50の読みを読んでいる工程である。ダイアルゲージ50は、測定装置1をマスターゲージ45に合わせるとき、図7に示すように指示針51の振れをダイアルゲージの周枠を矢印52のように回動させて図8に示すように目盛0に合わせてある。図6に示すように、測定装置1を左右に微小揺動させるとダイアルゲージの読みは左右に振れるが、その時の最大振れの目盛を読み取る。この最大振れの目盛がマスターゲージとの差(測定径の精度)となる。この値が所定値以内であればねじは合格であり、所定値を超えると不良品である。本発明のねじ径測定装置はこのように、簡易、正確に鋼管継手のねじ径を測定することができる。
【0018】
図9は、ねじ山の頂面の径を測定する実施例のねじ径測定装置1で、図1の実施例との差異は、図1のスレッドロール11の代りに円筒ロール71を装着しており、その傾きが逆向になっていることである。その他は図1の実施例と同じである。符号も同一符号を付して示してある。この図9に示すねじ径測定装置1の使用方法は、図1に示す装置について図3〜図8を用いて説明したのと同様である。異なる点は、円筒ロール71が接するのは雌ねじの頂面であり、図10(b)に示す雌ねじ101の所定位置103の山頂部の径105であり、図1に示す装置が雌ねじ111の底面の径116を測定するのとは異なっている。従って、図5に示すマスターゲージ45も内径に基準面がある形状となっている。また、図3で示す距離(図10(a)に示す距離115)に代って、距離(図10(b)に示す距離104)を用いる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼管継手のねじ径測定を迅速、正確に行うことができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の測定装置の側面図である。
【図2】実施例の測定装置の平面図である。
【図3】測定脚の突出長さを設定する工程の説明図である。
【図4】測定脚の間隔を設定する工程の説明図である。
【図5】測定脚の間隔を設定する工程の説明図である。
【図6】鋼管継手ねじ径測定する工程の説明図である。
【図7】ダイヤルゲージの説明図である。
【図8】ダイヤルゲージの説明図である。
【図9】別の実施例の測定装置の側面図である。
【図10】鋼管継手の断面図で、(a)は鋼管端、(b)はカップリングである。
【図11】鋼管継手の部分拡大断面図である。
【図12】鋼管継手のねじの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 測定装置
10,10a,10b,10c,10d 測定脚
11 スレッドロール
11a 山頂部
12 コイルスプリング
13 止め金具
14 軸
15 根元側部分
16 下パッド
17 上パッド
18 切欠
30 フレーム
31 スリット
32 基準面
33 スケール
41 スパナ
42 矢印
43 スパナ
44 矢印
45 マスターゲージ
46 頂面
47 基準側面
50 ダイアルゲージ
51 指示針
52 矢印
60 矢印
71 円筒ロール
100 鋼管継手(カップリング)
101 雌ねじ
102 端面
103 所定位置
104 距離
105 径
106 ねじ山面
107 雌ねじ面(スタッビングフランク側)
110 鋼管端
111 雄ねじ
112 ねじ底
113 雄ねじ面(スタッビングフランク側)
114 端面
115 距離
116 径
117 所定位置
Claims (3)
- 鋼管継手の鋼管の雄ねじのねじ底に接触する山部を有する断面プロフィールを周面に備えたスレッドロールと、該スレッドロールを挿通する軸を先端側に備えた2本の測定脚と、基準面を備え該基準面に開口した貫通スリットを備え、前記2本の測定脚を基準面から突出させて該貫通スリット内に摺動移動自在に保持するフレームと、前記測定脚によるねじの測定値と基準値との差を検出するダイアルゲージとを有し、前記スレッドロールが、前記軸の軸方向に遊動可能に嵌挿されており、その軸方向に微調整可能なように軸方向両側にコイルスプリングを備えたことを特徴とする鋼管継手のねじ径測定装置。
- 前記スレッドロールは、ロール周縁に、ねじピッチと一致しねじ底に接する山谷形状を有し、前記山部はテーパねじの傾きと平行な頂面を備えることを特徴とする請求項1記載の鋼管継手のねじ径測定装置。
- 請求項1又は2記載の鋼管継手のねじ径測定装置の、前記2本の測定脚の基準面からの突出寸法を測定管サイズごとに定めた寸法に設定し、次いで、基準面をマスターゲージ上に載せて測定脚のスレッドロールの相互間隔を調整して固定すると共にダイアルゲージのゼロ点を合わせ、次いで基準面を鋼管の端部に当接させ、スレッドロールの山部を雄ねじ底に接触させ、フレームを左右に揺動させてダイアルゲージの振れの最大値を読みとり、鋼管継手の雄ねじ底径を測定することを特徴とする鋼管継手のねじ径測定方法。
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