本発明は、トラクタの後部に昇降可能に装着された作業機に設けられた施肥装置による局所施肥方法、及び施肥ノズルに関するものである。
畦に対する施肥方法の1つである局所施肥は、畦に植えられる作物の根の部分にのみ肥料を与えるもので、作物が肥料を吸収する効率が良好であると共に、施肥量を少なくできるという利点がある。
局所施肥を行う場合、ロータリー耕耘装置によって土壌を膨軟にした後、該土壌に畦を成形する。続いて、前記畦の所定深さ位置に施肥溝を形成し、該施肥溝の底部に肥料を散布する。通常の場合、上記した畦成形作業と、施肥作業はほぼ同時に行われる。以降、ロータリー耕耘作業と、該耕耘作業によって膨軟にされた土壌に畦を成形して局所施肥する作業とを同時に行うことを「同時局所施肥作業」と記載する。図1に示されるように、同時局所施肥作業をする装置として、トラクタTに牽引される作業機Wに、施肥装置Cを装着したものが公知である。前記トラクタTは、畦Rの長手方向P1 に沿って前進する。そして、前記施肥装置Cは、肥料ホッパ(本実施例の場合、2基の肥料ホッパ6)に収容された肥料Sを、各肥料ホッパ6に内装された繰出し装置Vによって所定量ずつ繰り出し、畦R(この場合、成形途中の畦R')に挿入したパイプ状の施肥ノズルN1 から落下させ、前記施肥ノズルN1 によって形成される施肥溝G1 に局所施肥を行う構成である。図2及び図4に示されるように、一方側の肥料ホッパ6に内装された繰出し装置Vは、該肥料ホッパ6に取付けられた繰出しモータMによって作動される。そして、前記繰出しモータMの駆動力が、連結軸20を介して他方側の肥料ホッパ6に内装された繰出し装置Vに伝達され、該繰出し装置Vが作動される。これにより、各肥料ホッパ6に内装された2基の繰出し装置Vが、同時に作動される。
同時局所施肥作業において、作業機Wが畦端に達すると、土壌から作業機Wの全体を持ち上げて旋回を行い、旋回後においては、畦Rの幅方向P2 に作業機Wを移動させ、当該土壌(未畦立部R")に作業機Wを降ろしてトラクタTを前進させることにより、前記未畦立部R”に畦Rを成形しながら局所施肥を行う(図7参照)。
図26を参照しながら、従来の施肥ノズルN’によって、成形途中の畦R’に局所施肥を行うときの作用について説明する。施肥ノズルN’を成形途中の畦R’に挿入させて前進させると、施肥ノズルN’の下端部(畦R’に挿入された部分)と接触する土が押し分けられて排除され、該施肥ノズルN’の直後方に施肥溝G’が形成される。肥料ホッパ6から落下された肥料Sは、施肥ノズルN’の下端面(肥料排出口51)から排出され、施肥溝G’の底部52に散布される。肥料Sが散布された直後の施肥溝G’は、施肥ノズルN’が前進することによって該施肥ノズルN’の支持を失い、しかも、前記施肥ノズルN’の両側に配設された各畦成形板F1 〜F3 (図7参照)に押し付けられて内側に崩れ落ちる土53,54によって埋め戻されながら畦R’が成形される。そして、施肥ノズルN’の後方に配設されたならし板4によって、畦R’の上面がならされる。上記した結果、土壌に畦Rが成形されると同時に、該畦Rの所定深さDの位置(深層部)に局所施肥が行われる(同時局所施肥作業)。
従来の施肥ノズルN’の場合、成形途中の畦R’に挿入された施肥ノズルN’の肥料排出口51は、施肥溝G’の底部52の直上に配置される。また、従来の施肥ノズルN’の下端部は、僅かに斜めに切除されているのみである。このため、施肥ノズルN’の肥料排出口51と施肥溝G’の底部52との間に形成される空間部Q’が狭く、しかも、施肥ノズルN’の肥料排出口51が後方に向かって斜めに設けられているので、作溝中の施肥ノズルN’の下端部に、埋め戻される土53,54が入り込むおそれがある。更に、作業開始時に施肥ノズルN’を土中に挿入させたときに肥料排出口51に土53,54が入り易くなり、また、トラクタTを停止させたときに作業機Wが僅かに後退する場合があり、この場合には特に土53,54が入り込み易くなる。施肥ノズルN’の下端部に入り込んだ土53,54が凝縮すると、肥料排出口51が閉塞されてしまい、施肥溝G’の底部52に肥料Sを散布することができない。
上記した不具合を回避すべく、施肥ノズルN’にエアを通気させて詰まりを除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、施肥ノズルN’の構成が複雑になってしまう。
特開2004−180613号公報
本発明は、作業機を降ろす時、及び施肥時の双方において、施肥ノズルの肥料排出口に土が詰まらないようにして、自身で形成した施肥溝に局所施肥することを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、トラクタの後部に昇降可能に装着された作業機は、ロータリー耕耘装置と施肥装置とを備え、前記ロータリー耕耘装置により膨軟にされた土壌中に、前記施肥装置を構成するパイプ状の施肥ノズルの下端部が挿入された状態で、前記作業機が前進することにより、土壌をロータリー耕耘した直後の前記膨軟土壌の内部の設定深さ部分に連続して肥料を散布する局所施肥方法であって、前記施肥ノズルの軸心に対して垂直な断面部の全周がパイプ壁で囲まれた第1領域と、前記断面部の全周の少なくとも一部が外部空間に解放されている第2領域との境界面を肥料排出口と定義した場合において、前記施肥ノズルの下端から所定長さの部分までは、非下端側の切除開始部において前記軸心の側に向けて急激に切除されることにより、前記軸心を通る平面で当該施肥ノズルを前後に二分した場合において、背面側のほぼ全てが連続して切除されて開口され、当該背面側開口の形成により残った部分が、落下された肥料の落下案内部となっており、当該施肥ノズルにおける前記落下案内部の上端部となる前記背面側開口の上端部が、当該施肥ノズルの下端から嵩上げされた前記肥料排出口となっていて、前記肥料排出口から排出された肥料は、前記落下案内部に案内されて、前記施肥ノズルの土壌挿入部分により作溝された施肥溝の底部に達して、当該底部に肥料が局所施肥されると共に、当該施肥溝の底部に肥料が達してから僅かに時間が経過した後に、前記施肥溝を構成する側壁の崩落により、底部に肥料が局所施肥された施肥溝が埋め戻されることを特徴としている。
ロータリー耕耘作業と、該作業により膨軟にされた土壌内部の所定深さ部分に局所施肥を行う施肥作業とを同時に行う作業(同時局所施肥作業)において、作業機が畦端に達すると、土壌に対して作業機を持ち上げて旋回を行い、旋回後においては、作業機を土壌に降ろして次の畦の成形作業を行う。土壌に対して作業機を降ろす際には、施肥装置の施肥ノズルの下端部は、所定の前進速度を有した状態で挿入される。すると、施肥ノズルの下端部(落下案内部)が作溝作用を発揮するために、前記落下案内部の直後方には施肥溝が形成される。
本発明の局所施肥方法の実施に使用される施肥ノズルは、施肥ノズルの下端から所定長さの部分までは背面側の全面、及び両側面側の少なくとも一部が連続して切除されて、同側に解放されることにより、肥料排出口は、該施肥ノズルの下端よりも落下案内部の長さだけ上方に嵩上げされて配置されている構造であって、従来の施肥ノズルの肥料排出口に比較して、前記落下案内部の長さ分だけ高い位置に配置されることとなる。この結果、施肥ノズルの前記構造と、施肥ノズルが下降される際の上記作用とが相俟って、作溝中の施肥ノズルの肥料排出口は、施肥溝の底部よりも上方に配置される。従って、畦端において作業機を旋回させた後に、該作業機を降ろす際に、施肥ノズルの肥料排出口に土が詰まらなくなる。
施肥時においても、施肥ノズルの肥料排出口は、前記施肥ノズルの下端部により作溝された施肥溝の底部よりも落下案内部の長さ分だけ上方の空間部に配置されていて、施肥溝を形成する周囲の土と隔離されている。ここで、従来の施肥ノズルの場合、施肥ノズルの下端部に肥料排出口が設けられていて、前記土が崩れ落ちる速度は、肥料が散布される速度よりも遅いけれども、該肥料排出口が施肥溝の底部に近接しているため、崩れ落ちる土によって前記肥料排出口が詰まるおそれがある。しかし、本発明の施肥ノズルの肥料排出口は、施肥溝の底部から嵩上げされているため(換言すれば、施肥ノズルの肥料排出口と施肥溝の底部との間に大きな空間部が形成されているため)、溝底よりも高い位置に配置された前記肥料排出口から排出された肥料は、落下案内部に案内されて溝底に達して僅かの時間が経過した後に、施肥溝を構成する両側壁が崩落して、当該肥料が施肥された溝底の部分が崩落土壌により埋められる。換言すると、肥料排出口、及び落下案内部の背面側に、施肥溝が成形された後の僅かの時間だけ一時的に空間部が形成され、当該空間部が、嵩上げされた肥料排出口が常に形成直後の施肥溝の空間部に配置されること、及び落下肥料が溝底に確実に達することの双方を可能にしている。従って、施肥ノズルの肥料排出口が詰まることなく、前記肥料排出口から排出された肥料は、周囲の土の影響を受けることなくそのまま落下され、施肥ノズルの落下案内部に案内されて施肥溝の底部に散布される。その直後に、成形板が前記施肥溝を押しつぶし、肥料が散布された施肥溝が埋め戻されて局所施肥される。この結果、施肥時においても、施肥ノズルの肥料排出口が詰まることはない。
請求項2の発明は、請求項1に記載の局所施肥方法を実施するための施肥ノズルであって、前記施肥ノズルの軸心に対して垂直な断面部の全周がパイプ壁で囲まれた第1領域と、前記断面部の全周の少なくとも一部が外部空間に解放されている第2領域との境界面を肥料排出口と定義した場合において、前記施肥ノズルの下端から所定長さの部分までは、非下端側の切除開始部において前記軸心の側に向けて急激に切除されることにより、前記軸心を通る平面で当該施肥ノズルを前後に二分した場合において、背面側のほぼ全てが連続して切除されて開口され、当該背面側開口の形成により残った部分が、落下された肥料の落下案内部となっており、当該施肥ノズルにおける前記落下案内部の上端部となる前記背面側開口の上端部が、当該施肥ノズルの下端から嵩上げされた前記肥料排出口となっていて、前記肥料排出口から排出された肥料は、前記落下案内部に案内されて、前記施肥ノズルの土壌挿入部分により作溝された施肥溝の底部に達する構成であることを特徴としている。請求項2の発明は、請求項1の発明である局所施肥方法の実施に使用される施肥ノズルであって、その局所施肥に係る作用効果は、上記した請求項1の発明の作用効果と同様である。
請求項3の発明は、請求項2の発明を前提として、前記施肥ノズルは、上端部が進行方向に沿って前方に位置するような前傾姿勢で配置されることを特徴としている。請求項3の発明によれば、畦端において作業機を降ろす際に、前傾姿勢となった施肥ノズルの進行方向側に配置された落下案内部が土壌に最初に接触して、前記背面側開口の上端に設けられた肥料排出口が前記落下案内部により覆われるために、施肥ノズルの肥料排出口が詰まるのを一層確実に防止できる。また、施肥ノズルが前傾姿勢となっているために、前進走行時に、施肥ノズルが土壌から受ける抵抗を小さくできる。
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明を前提として、前記施肥ノズルの下端部は、複数股状に分岐されて、それぞれが独立して下側ノズル本体として機能していて、各下側ノズル本体は、それぞれ下端から上端に近い部分までは背面側の全面、及び両側面側の少なくとも一部が連続して切除されることにより開口されて、落下された肥料の落下案内部となっており、当該施肥ノズルにおける前記落下案内部の上端部となる前記背面側開口の上端部が肥料排出口となっていることを特徴としている。請求項4の発明によれば、1本の施肥ノズルの下端部が分岐されて複数の下側ノズル本体が形成されているため、各ノズル本体の肥料排出口が土壌により詰まるのを防止した状態で、複数条の施肥を同時に行うことができる。
本願発明の局所施肥方法の実施に使用する施肥ノズルはパイプ状であって、その下端から所定長さの部分までは、非下端側の切除開始部が前記軸心の側に向けて急激に切除されることにより、前記軸心を通る平面で当該施肥ノズルを前後に二分した場合において、背面側のほぼ全てが連続して切除されて開口され、当該背面側開口の形成により残った部分が、落下された肥料の落下案内部となっており、当該施肥ノズルにおける前記落下案内部の上端部となる前記背面側開口の上端部が前記肥料排出口となっていて、前記肥料排出口から排出された肥料は、前記落下案内部に案内されて、前記施肥ノズルの土壌挿入部分により作溝された施肥溝の底部に達する構成であって、施肥ノズルの肥料排出口から排出された肥料は、前記落下案内部に案内されて、前記施肥ノズルの土壌挿入部分により作溝された施肥溝の底部に達して、当該底部に肥料が局所施肥されると共に、当該施肥溝の底部に肥料が達してから僅かに時間が経過した後に、前記施肥溝を構成する側壁の崩落により、底部に肥料が局所施肥された施肥溝が埋め戻されるので、施肥ノズルの肥料排出口に土が詰まることなく、自身で形成した施肥溝の底部に肥料を局所施肥できる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1はトラクタTに連結された作業機Wの側面図、図2は同じく背面図、図3は同じく平面図、図4はトラクタTの後方から見た作業機Wの全体斜視図である。
図1ないし図4に示されるように、トラクタTの後部には作業機Wが装着されている。本実施例の作業機Wは、土壌を膨軟にするためのロータリー耕耘装置Aと、膨軟にされた土壌に畦Rを成形するための畦成形装置Bと、前記畦Rの深層部に肥料Sを散布(局所施肥)するための施肥装置Cを備えている。前記作業機Wは、三点リンクヒッチ方式等によりトラクタTに昇降可能に連結されていて、トラクタTが旋回するときには土壌から持ち上げられる。
前記ロータリー耕耘装置Aは、トラクタTの後方に延設されたPTO軸1に連結されている。前記PTO軸1を介して伝達されるトラクタTの駆動力により、ロータリー軸2に取付けられた多数枚の耕耘爪3が所定方向に回転され、土壌が膨軟にされる。
図3に示されるように、前記畦成形装置Bは、ロータリー耕耘装置Aの後方に配設されていて、ロータリー耕耘装置Aによって膨軟にされた土壌を寄せ集めて畦Rを成形するため、種類の異なる複数基(本実施例の場合、3基)の畦成形板F1 〜F3 と、畦Rの上面の土をならすための各ならし板4とから構成されている。トラクタTの前進に伴い、各畦成形板F1 〜F3 によって施肥溝G1 の内側に寄せ集められた土が押し寄せられ、各ならし板4で畦Rの上面がならされて、各畦成形板F1 〜F3 どうしの間に断面略台形状の畦Rが所定ピッチをおいて成形される(図7参照)。
図1に示されるように、前記施肥装置Cは、作業機Wのフレーム5(図4参照)に支持される肥料ホッパ6と、前記フレーム5に連結して設けられた施肥装置Cの装置フレーム7に対して高さ調整可能に取付けられた複数本(本実施例の場合、2本)の施肥ノズルN1 とから構成されている。本実施例の施肥装置Cの場合、各施肥ノズルN1 は、3基の畦成形板F1 〜F3 の間に、成形される畦Rのピッチに対応して配置されている。また、各施肥ノズルN1 の下端部は、各畦成形板F1 〜F3 の長手方向(畦Rの長手方向P1 に沿った方向)のほぼ中央部に配置されている。肥料ホッパ6に収容された肥料Sは、トラクタTの前進に伴い、繰出し装置Vによって所定量ずつ繰り出され、各肥料ホース8を介して施肥ノズルN1 に送られ、自重により落下する。なお、図1において、9は作業機Wを支持するための接地輪であり、10はトラクタTの後輪である。
第1実施例の施肥ノズルN1 について、詳細に説明する。図5は第1実施例の施肥ノズルN1 単体の斜視図、図6は一部を破断した施肥ノズルN1 の側面図である。図5及び図6に示されるように、第1実施例の施肥ノズルN1 は、パイプ材より成るノズル本体11の背面部(トラクタTの前進方向に対する後方部分)に、略L字状で断面方形状の高さ調整ロッド12が、前記ノズル本体11の軸方向の中央部よりも少し下方の部分から上端部にかけて固着された形態である。本実施例の施肥ノズルN1 は、施肥装置Cの装置フレーム7から延設された支持アーム13に、土壌に対して傾斜角度θの前傾姿勢(ノズル本体11の上端部を下端部よりも前方に配置させた状態)で取付けられている。即ち、前記支持アーム13の先端部には、前記高さ調整ロッド12の断面形状に対応する角筒体13aが斜めに取付けられていて、該角筒体13aに、施肥ノズルN1 の高さ調整ロッド12が挿通されている。施肥ノズルN1 は、前記角筒体13aに螺合された押圧ねじ14を締め込むことにより、所定の高さ位置に前傾状態で配置される。そして、前記押圧ねじ14を緩めることにより、施肥ノズルN1 の高さ位置(即ち、施肥溝G1 の施肥深さD)が調整される。
図5及び図6に示されるように、第1実施例の施肥ノズルN1 を構成するノズル本体11の下端部は、ノズル本体11の軸心CLよりも少し前方の部分から背面部にかけて切除面が凹面となるようにわん曲状に切除されていて、開口部15が形成されている。施肥ノズルN1 が、土壌に対する傾斜角度θでもって支持アーム13に取付けられたとき、ノズル本体11の前方下端縁部11aと開口部15の上方開口縁部15aは、土壌に対してほぼ垂直な直線L上に配置される。この結果、開口部15における一対の下方開口縁部15bは、前記直線Lよりも後方(背面側)に配置される。前記開口部15の開口長さH(ノズル本体11の下端面11bから開口部15の上方開口縁部15aまでの長さ)は、前傾姿勢における施肥ノズルN1 のノズル本体11の前方下端縁部11aから開口部15の上方開口縁部15aまでの高さH'(H’=H/sinθ)が、畦Rに形成される施肥溝G1 の施肥深さDとほぼ同一になるように定められる。なお、第1実施例の施肥ノズルN1 は、前述した高さH’が、畦Rに形成される施肥溝G1 の施肥深さDとほぼ同一になるように取付けられているが、高さH’が施肥深さDより高くても、或いは低くても構わない。別の表現を用いると、パイプ状の施肥ノズルN 1 を軸心CLを通る平面で前後に二分した場合に、当該施肥ノズルN 1 の下端から所定長さの部分までは、背面側のほぼ全てが連続して切除されて開口部15を形成しており、図6において、前後に二分された背面側の切除部分が二点鎖線で示されている。このため、前記開口部15は、非下端側の切除開始部において軸心CLに向けて急激に切除されている。
前記ノズル本体11の開口部15の上端部で、上方開口縁部15aに臨んで軸心CLと直交する円形部分が、当該施肥ノズルN1 における肥料排出口16となっている。また、ノズル本体11の下端部で、前記肥料排出口16から下端面11bまでの部分は、落下する肥料Sを案内するための落下案内部17となっている。施肥ノズルN1 の上端部から自重によって落下される肥料Sは、肥料排出口16から排出された後、前記落下案内部17に案内されて、施肥溝G1 の底部18に散布される。前記落下案内部17は、畦Rに施肥溝G1 を形成するための作溝部材としての機能をも有している。
次に、畦成形装置Bについて、図7を参照しながら詳細に説明する。図7は、図面視における右側から、畦Rの幅方向P2 の側に、順に土壌に畦Rを成形する状態を示す図であり、成形済みの畦を「R」で示し、成形途中の畦を「R’」で示し、未畦立状態の土壌を「R”」で示す。本実施例の畦成形装置Bは、幅方向のほぼ中央部に配設された1基の第1畦成形板F1 と、成形される畦Rのピッチに対応する配置ピッチをおいて前記第1畦成形板F1 の両側に配設された各第2畦成形板F2,F3 とから成る。第1畦成形板F1 について説明する。第1畦成形板F1 は、ロータリー耕耘装置Aによって膨軟にされた土壌を両側方に押し上げることができるように、平板状の畦成形板原体19を、平面視において鋭角状になるように、しかも、高さ方向に所定の角度を設けて屈曲させた形態である。この結果、第1畦成形板F1 の前部には、一対の土押上げ部19aが鋭角状に形成される。また、二股に形成された畦成形板原体19の後部は、成形される畦Rの側方形状に対応して内側に屈曲されていて、前記土押上げ部19aによって押し上げられた土を押し寄せるための畦成形部19bとなっている。
次に、各第2畦成形板F2,F3 について説明する。各第2畦成形板F2,F3 は、平面視において対称形状なので、ここでは、前述した第1畦成形板F1 に対して図7の図面視における右側に配設される第2畦成形板F2 についてのみ説明する。第2畦成形板F2 は、2枚の畦成形板原体21,22を、平面視において鋭角状になるように、それらの先端部を固着させた形態である。外側の畦成形板原体21は、畦Rの長手方向P1 にほぼ沿って配設されていて、その後端部の上部21aが外側に屈曲されている。このため、外側の畦成形板原体21が、隣接する畦(成形済みの畦R)を損傷させるおそれはない。また、内側(第1畦成形板F1 と対向する側)の畦成形板原体22は、上記した外側の畦成形板原体21に対して所定の角度で斜め後方に配設されていて、前部に土押上げ部22aが設けられていると共に、後部は、成形される畦Rの側方形状に対応して内側に屈曲されていて、前記土押上げ部22aによって押し上げられた土を押し寄せるための畦成形部22bとなっている。
そして、各畦成形板F1 〜F3 どうしの間の部分で、かつ、それらの前後方向における各畦成形部19b,22b の部分には、成形をほぼ終えた畦Rの上面をならすためのならし板4が配設されている。ロータリー耕耘装置Aによって膨軟にされた土壌は、各畦成形板F1 〜F3 における土押上げ部19a,22a によって両側に押し上げられた後、各畦成形部19b,22b によって押し寄せられて畦Rの両側面が成形される。更に、各ならし板4によって畦Rの上面がならされて、畦Rの最終形状が成形される。
図7に示されるように、本実施例の各施肥ノズルN1 は、畦成形装置Bを構成する各畦成形板F1 〜F3 どうしの間で、各畦成形板F1 〜F3 の土押上げ部19a,22a の終端部よりも少し前方に配置されている。施肥ノズルN1 を前記位置に配置した理由を説明する。ロータリー耕耘装置Aによって膨軟にされた土壌は、前記各畦成形板F1 〜F3 の土押上げ部19a,22a によって寄せ集めて押し上げた後、各畦成形板F1 〜F3 の畦成形部19b,22b で押し寄せられて所定の畦形状に成形される。各施肥ノズルN1 を、前記土押上げ部19a,22a の前部の側方に配置させた場合、畦Rの成形開始直後であり、該畦Rの概略形状が定まらない状態であるため、肥料Sの散布位置が定まりにくくなる。また、各施肥ノズルN1 を、前記土押上げ部19a,22a の終端部よりも後方で、前記畦成形部19b,22b の側方に配置させた場合、畦Rが成形終了直前で、各畦成形部19b,22b に押し寄せられている状態の畦Rに各施肥ノズルN1 を挿入させて前進させることとなるため、各施肥ノズルN1 に大きな抵抗が作用してしまう。上記した結果、各施肥ノズルN1 は、膨軟にされた土壌が寄せ集められて畦Rの概略形状が成形された後で、しかも、大きな側面土圧K(後述)が作用していない状態の畦Rに挿入される位置に配置されることが最も望ましい。
上記した実施形態は、畦成形装置Bによって2つの畦Rを同時に成形させる場合であるが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、作業機Wの幅方向のほぼ中央部に、畦Rのピッチに対応させて2基の第1畦成形板F1 を並設し、それらの両側にそれぞれ第2畦成形板F2,F3 を配設させた場合には、3つの畦Rが同時に成形される。
第1実施例の施肥ノズルN1 の作用について説明する。最初に、施肥ノズルN1 を畦Rに挿入させるときの作用を説明する。本実施例の場合、図6に示されるように、施肥ノズルN1 の高さは、予め、ノズル本体11に設けられた開口部15の上方開口縁部15aが、畦Rの上面とほぼ同一の高さに配置されるように調整されている。作業機Wが下降されると、前傾姿勢で取付けられた施肥ノズルN1 のノズル本体11の下端部は、成形途中の畦R’に斜めに挿入される。
図8及び図9に示されるように、成形途中の畦R’に挿入されたノズル本体11の落下案内部17によって土壌が左右に押し分けられて、該落下案内部17の直後方に空間部Qが形成される。また、ノズル本体11の開口部15における一対の下方開口縁部15bは、ノズル本体11の前方下端縁部11aと上方開口縁部15aを通る直線Lよりも後方に配置されている。このため、ノズル本体11の落下案内部17の背面部17aは前記落下案内部17によって覆われていて、ノズル本体11の落下案内部17を畦R’に挿入させたときに、落下案内部17の背面部17aの部分に直接入り込む土の量は少ない。この状態で作業機Wを前進させると、施肥ノズルN1 も前進される。ノズル本体11の落下案内部17と接触する土が排除され、成形途中の畦R’の所定深さDの位置に施肥溝G1 が連続して形成される。
図8及び図9に示されるように、肥料ホッパ6に収容された肥料Sは、各繰出し装置Vによって所定量ずつ繰り出され、肥料ホース8を通って施肥ノズルN1 に供給される。施肥ノズルN1 に供給された肥料Sは、ノズル本体11の肥料排出口16から排出された後、落下案内部17に案内され、ノズル本体11の下端面11bから放出されて施肥溝G1 の底部18に散布される(施肥作用)。
また、作業機Wが、畦Rの長手方向P1 に沿って前進するのに伴い、畦成形装置Bも前進される。各畦成形板F1 〜F3 によって膨軟にされた土壌が側方に押し上げられて、畦R(成形途中の畦R')が成形される。即ち、畦Rは、膨軟にされた土壌が左右一対の畦成形板F1 〜F3 の内側で対向する各土押上げ部19a,22a により中央に寄せ集められながら、各畦成形部19b,22b によって側面土圧K(図9参照)を受けることにより成形される。
前記成形途中の畦R’に挿入された施肥ノズルN1 によって形成された施肥溝G1 は、その直後において、前記側面土圧Kにより幅方向から消滅させられる溝消滅作用と、前記施肥溝G1 の開口両側に盛り上げられた盛土が消滅中の施肥溝G1 内に崩れ落ちる作用とが相乗して、埋められる。
ここで、肥料Sが供給される速度に比較して、施肥溝G1 を形成する周囲の土E1,E2 が崩れ落ちて施肥溝G1 を埋め戻す速度の方が遅いため、施肥ノズルN1 の下端部の直後の部分には、必ず施肥溝G1 が形成される。そして、本実施例の施肥ノズルN1 の下端部の背面側には開口部15が設けられているため、ノズル本体11の肥料排出口16と施肥溝G1 の底部18との間には、一時的に空間部Qが形成される。しかも、施肥ノズルN1 の肥料排出口16は、ノズル本体11の下端面11bよりも開口長さHの分だけ、常に上方に配置されている(換言すれば、肥料排出口16が「嵩上げ」されている)。このため、前記肥料排出口16は、施肥溝G1 を形成する周囲の土E1,E2 と離隔されていて、前記肥料排出口16に土が入り込むことはない。
従来の施肥ノズルN’の場合、肥料排出口51が施肥溝G’の底部52に近接した状態で配置されていて、肥料排出口51と施肥溝G’の底部52との間に形成される空間部Q’の大きさは小さい(図26参照)。このため、施肥ノズルN’の下端部に土が入り込み易くなり、施肥ノズルN’の肥料排出口51が詰まり易い。これに対して、本実施例の施肥ノズルN1 の場合、ノズル本体11の肥料排出口16及び下端面11bが土によって詰まるおそれはない。
そして、ならし板4によって畦Rの上面の土がならされ、畦Rが最終的に成形される。この結果、畦Rにおける所定深さDの位置(深層部)に、局所的に肥料Sが散布される(局所施肥)。トラクタTが畦Rの端部に達すると、作業機Wを持ち上げて旋回させることによって該作業機Wを側方(畦Rの幅方向P2)に移動させ、引き続いて隣接する土壌(未畦立部R")に局所施肥を行う。
上記したように、本発明に係る施肥ノズルN1 では、畦R’に施肥ノズルN1 の下端部を挿入させる場合、或いは、該施肥ノズルN1 が施肥溝G1 を作溝している場合のいずれの場合であっても、施肥ノズルN1 のノズル本体11の肥料排出口16に土が入り込まなくなり、前記肥料排出口16に土が詰まらなくなる。しかも、施肥ノズルN1 に複雑な加工を施す必要はなく、従来の施肥ノズルN’に対しても適用することができる。
上記した第1実施例の施肥ノズルN1 は、ノズル本体11の背面側に、開口部15がわん曲状にして設けられた形態である。これにより、ノズル本体11の下端部の剛性が確保されるという効果が奏される。しかし、図10の(イ)に示される第2実施例の施肥ノズルN2 のように、ノズル本体11の背面側に開口部23を直角に設けても構わない。第2実施例の施肥ノズルN2 の場合、図10の(ロ)に示されるように、作溝中の施肥ノズルN2 の肥料排出口16は施肥溝G1 の底部18よりも上方に配置され、しかも、前記肥料排出口16の下方には空間部Qが形成される。この結果、第1実施例の施肥ノズルN1 とほぼ同一の利点を有することに加えて、前記開口部23の加工が容易であるという利点がある。別の表現を用いると、パイプ状の施肥ノズルN 2 を軸心CLを通る平面で前後に二分した場合に、当該施肥ノズルN 2 の下端から所定長さの部分までは、背面側の全てが連続して切除されて開口部23を形成しており、図10(ロ)において、軸心CLで前後に二分された施肥ノズルN 2 の背面側の切除部分が二点鎖線で示されている。このため、前記開口部23における非下端側の切除開始部は、軸心CLに向けて急激に切除されている。
更に、図11の(イ),(ロ)に示される施肥ノズルN2'は、ノズル本体11の背面側を単純に斜めに切断して開口部23’を形成したものであって、当該ノズル本体11を軸心CLで前後に二分した場合において、背面側のほぼ4分の1が切除されているのみであって、開口部23’における非下端側の切除開始部は、軸心CLに向けて急激には切除されていない点において、前記施肥ノズルN 1 ,N 2 とは開口部の形状が異なる。
上述した各実施例の施肥ノズルN1,N2,N2'は、単管パイプから成るノズル本体11の下端部に開口部15,23,23’を設けたものであるが、前記ノズル本体11は単管パイプに限らない。次に、第3実施例の施肥ノズルN3 について説明する。図12の(イ),(ロ)に示されるように、単管パイプより成るノズル本体11の下端部に、単管パイプより成る一対の下側ノズル本体11’が、所定の角度をおいて二股状に取付けられている。即ち、第3実施例の施肥ノズルN3 は、第1実施例の施肥ノズルN1 の下端部をほぼそのままの形態で二股に分岐させ、かつ、それらを後方に向かって斜めに延設させたものである。一対の下側ノズル本体11’の下端部には、第1実施例の施肥ノズルN1 と同様にしてそれぞれ開口部15が形成されていて、該開口部15の上端部(上方開口縁部15aの部分)に各肥料排出口16が設けられている。前記各開口部15は、肥料が各下側ノズル本体11’の下端面11bから確実に排出されるように(換言すれば、肥料Sが各開口部15の途中から落下しないように)、各下側ノズル本体11’の背面部ではなく、少し上側寄りに設けられている。前後方向(畦Rの長手方向に沿った方向)における上方開口縁部15aの位置は、下側ノズル本体11’の前方下端縁部11aとほぼ同じ位置に配置されていて[図12(ロ)参照]、施肥ノズルN3 の挿入時に土が入り込むことはない。
図12の(ロ)に示されるように、第3実施例の施肥ノズルN3 は、成形途中の畦R’にほぼ垂直にして挿入され、畦Rの長手方向P1 に沿って前進する。一対の下側ノズル本体11’に形成された各落下案内部17により、2本の施肥溝G1 が形成される。上側のノズル本体11を落下する肥料Sは、該ノズル本体11と一対の下側ノズル本体11’との接合部で分岐され、一対の肥料排出口16から落下案内部17を通って各施肥溝G1 の底部18に排出される。一対の下側ノズル本体11’の各肥料排出口16と各施肥溝G1 の底部18との間に、一時的に大きな空間部Qが形成されて、前記各肥料排出口16に土が入り込むことがないこと、及び、各畦成形板F1 〜F3 の作用によって各施肥溝G1 が埋め戻されるのは、第1実施例の施肥ノズルN1 の場合と同様である。
第3実施例の施肥ノズルN3 の場合、成形途中の畦R’に一度に2本の施肥溝G1 を形成しながら、各施肥溝G1 に肥料Sを排出する。上側のノズル本体11を落下する肥料Sは、該ノズル本体11内で二方向に分岐された後、一対の下側ノズル本体11’の各肥料排出口16から排出される。肥料Sは確実に二方向に分岐され、各施肥溝G1 に均等に排出される。このため、複数条施肥(本実施例の場合、2条施肥)が可能となる。また、各条の下方に施肥できるので、作物に対する肥料効果が高まる。更に、各下側ノズル本体11’がパイプより成り、一対の落下案内部17の前部がわん曲しているため、作溝抵抗が小さくて済む。第3実施例の施肥ノズルN3 は2条用であるが、それ以上の条数用であっても構わない。
参考例1
次に、第1参考例の施肥ノズルN4 について説明する。第1参考例の施肥ノズルN4 は、図13の(イ)に示されるように、パイプ状のノズル本体24と、該ノズル本体24の下方に延設された平板状の作溝板25とから成る。作溝板25の幅は、ノズル本体24の下端面(肥料排出口26)の内径と同じ位であり、長手方向をノズル本体24の軸心CLにほぼ沿わせて取付けられている。第1参考例の施肥ノズルN4 は、図13の(ロ)に示されるように、前傾姿勢で畦Rに挿入される。このとき、作溝板25の下端縁部25aとノズル本体24の肥料排出口26の後方縁部26aとは、畦Rの上面とほぼ直交する直線L上に配置される。そして、前記施肥ノズルN4 が前進することにより、畦Rの所定深さDの位置(畦Rの深層部)に施肥溝G1 が形成される。
施肥ノズルN4 のノズル本体24の下端部が成形途中の畦R’に挿入されるとき、作溝板25によってノズル本体24の肥料排出口26のほぼ全体が覆われるため、肥料排出口26の部分に土が入り込むことはない。そして、作溝中の肥料排出口26は、施肥溝G1 の底部18よりも常に上方に配置されていて、該肥料排出口26の下方には空間部Qが形成されている。このため、前記肥料排出口26は、施肥溝G1 を形成する周囲の土壌と離隔されていて、施肥溝G1 を形成する周囲の土E1,E2 が、ノズル本体24の肥料排出口26に入り込むおそれは極めて少ない。ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sは、作溝板25に案内されて施肥溝G1 の底部18に散布される。該施肥溝G1 は、前記土E1,E2 によって埋め戻される。
第1参考例の施肥ノズルN4 は、ノズル本体24に作溝板25を一体に固着させた形態であり、従来の施肥ノズルN’であっても、簡単な加工を施すだけで取付けることができる。また、作溝板25の長さ及び幅を変更するだけで、施肥溝G1 の深さD及び幅に容易に対応させることができる。
参考例2
第2参考例の施肥ノズルN5 は、図14の(イ)に示されるように、第1参考例の施肥ノズルN4 に対して、作溝板27が断面略V字状になっていて、しかも、その折曲げ部分27aを前方(施肥ノズルN5 が前進する方向)に向けてノズル本体24の下方に延設させた形態である。この第2参考例の施肥ノズルN5 の場合、図14の(ロ)に示されるように、施肥ノズルN5 を前進させるとき、作溝板27の折曲げ部分27aによって畦R’の土が排除されるため、施肥ノズルN5 が畦Rから受ける抵抗力を小さくできるという利点がある。また、ノズル本体24の肥料排出口26から排出される肥料Sは、作溝板27においてV溝状に形成された背面部27bを流下するため、施肥溝G1 における肥料Sの散布位置がほぼ一定になるという利点がある。更に、作溝板27をV字状にすることにより、該作溝板27の強度が増す。
参考例3
第3参考例の施肥ノズルN6 は、図15の(イ)に示されるように、第1参考例の施肥ノズルN4 に対して、作溝板28を側面視において略「く」の字状に屈曲させて下方に延設させた形態である。即ち、第3参考例の施肥ノズルN6 を構成する作溝板28は、ノズル本体24の下端部(肥料排出口26)の近傍から後方(背面側)に向けて屈曲されている。そして、ノズル本体24の肥料排出口26の後方縁部26aと作溝板28の下端縁部28aとは、ノズル本体24の軸心CLに沿った直線L上に配置される。この第3参考例の施肥ノズルN6 は、図15の(ロ)に示されるように、ほぼ垂直姿勢で畦Rに挿入される。そして、作溝板28の屈曲部が土を排除する。ノズル本体24の肥料排出口26の大部分は、作溝板28によって覆われるため、該肥料排出口26に入り込む土の量はほとんどない。しかも、作溝中において、ノズル本体24の肥料排出口26と作溝板28の背面部28bとの間には空間部Qが形成されるため、前記肥料排出口26は施肥溝G1 を形成する周囲の土壌と離隔され、施肥溝G1 に埋め戻される土E1,E2 が肥料排出口26に入り込むことはない。前記肥料排出口26から排出された肥料Sは、作溝板28の背面部28bに落下された後、施肥溝G1 の底部18に散布される。
第3参考例の施肥ノズルN6 の場合、施肥ノズルN6 は、施肥装置Cに対して垂直姿勢で取付けられる。このため、施肥ノズルN6 の高さ位置を調整しても、前後方向の位置は常に一定に保持されるという利点がある。
参考例4
第4参考例の施肥ノズルN7 は、図16の(イ),(ロ)に示されるように、第3参考例の施肥ノズルN6 の作溝板28を、断面視において略V字状の作溝板29としたものである。このため、第4参考例の施肥ノズルN7 は、第2及び第3の各参考例の施肥ノズルN5,N6 の利点を併せ持っている。
参考例5
第5参考例の施肥ノズルN8 について説明する。図17の(イ),(ロ)に示されるように、第5参考例の施肥ノズルN8 を構成する作溝板31は、前述した第2参考例の施肥ノズルN5 における作溝板28の下端部に、該作溝板28の全幅の略半分の幅を有する補助作溝板31’を、そのまま下方に延設させた形態である。第5参考例の施肥ノズルN8 により、成形途中の畦R’には、深さの異なる2本の施肥溝G1,G1'が形成される。即ち、第5参考例の施肥ノズルN8 により、畦Rに異なる施肥深さD,D’の施肥溝G1,G1'を同時に形成し、各施肥溝G1,G1'の底部18,18’に同時に局所施肥を行うことができる。
参考例6
第6参考例の施肥ノズルN9 について説明する。図18の(イ),(ロ)に示されるように、第6参考例の施肥ノズルN9 を構成する作溝板32は、第5参考例の施肥ノズルN8 の作溝板31におけるノズル本体24からの延設部分を、幅方向のほぼ中心で前後方向(畦Rの長手方向P1 )にずらして、長さの異なる2本の作溝板(第1及び第2の各作溝板32a,32b)を設けた形態である。そして、短い方の第1作溝板32aの下端縁部33aと、長い方の第2作溝板32bの下端縁部33bは、ほぼ同一の直線L上に配置されている。第6参考例の施肥ノズルN9 の場合、前述した第5参考例の施肥ノズルN8 と同一の効果が奏されるのに加えて、第2作溝板32bにおけるノズル本体24からの突出量が小さくて済むため、施肥ノズルN9 の全体の大きさをコンパクトなものにすることができる。
参考例7
第7参考例の施肥ノズルN10は、図19の(イ),(ロ)に示されるように、断面略U字状の作溝板34を、ノズル本体24の下端部に取付けた形態である。作溝板34の奥行長さ(畦Rの長手方向P1 に沿った長さ)は、ノズル本体24の外径よりも少し大きい。このため、作溝板34により、ノズル本体24の下端部の大部分が覆われていて、ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sが施肥溝G1 の底部18に散布されるときに、周辺部に飛散することが抑止され、確実に局所施肥される。また、第7参考例の施肥ノズルN10の場合、ノズル本体24の下端部の大部分が覆われているため、ノズル本体24の肥料排出口26を畦Rの上面よりも上方に配置させる(H>D)ことも可能である。これにより、施肥ノズルN10の高さ調整を簡単に済ますことができるという利点がある。
参考例8
上記した各実施例1〜3の施肥ノズルN1 〜N3 及び各参考例1〜7の施肥ノズルN4 〜N10は、畦Rに通常幅(25mm程度)の施肥溝G1 を形成しながら局所施肥するためのものである。これに対して、第8参考例の施肥ノズルN11は、土中における畦Rの底部39にのみ幅広の施肥溝G2 を形成しながら局所施肥するためのものである。図20に示されるように、施肥ノズルN11は、パイプ状のノズル本体24と、その下端部に下方に延設して取付けられた作溝板35とから構成されている。作溝板35は、正面視において略台形状の本体部36と、該本体部36の上端部に設けられたノズル取付部37とから成る。ノズル取付部37は略半円筒形状であり、その内径はノズル本体24の外径とほぼ同一である。また、作溝板35の本体部36の背面部のほぼ中央部には、略半円筒形状の肥料案内体38が、左右方向(畦Rの幅方向P2)に沿って固着されている。該肥料案内体38は、本体部36の後方に向けて突出されている。該肥料案内体38は、ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sを、底部39が幅広の施肥溝G2 の幅方向の全体に亘って均等に散布させるという機能を有している。
図21の(イ),(ロ)に示されるように、作溝板34の本体部36は、ノズル本体24の下端部(肥料排出口26)から後方に屈曲して取付けられている。そして、ノズル本体24の肥料排出口26の後方縁部26aと作溝板35の本体部36の下端縁部36aとは、ノズル本体24の軸心CLに沿った直線L上に配置される。このため、施肥ノズルN11が垂直姿勢で成形途中の畦R’に挿入されたとき、ノズル本体24の肥料排出口26は作溝板35の本体部36に覆われて、前記肥料排出口26に土が入り込むことはない。施肥溝G2 の底部39に散布された肥料Sは、時間的に遅れて崩れ落ちる施肥溝G2 の周囲の土E1,E2 によって覆土される。また、作溝中の施肥ノズルN11のノズル本体24の肥料排出口26は、施肥溝G2 の底部39よりも上方に配置されていて、前記土E1,E2 が入り込むおそれはない。前記施肥ノズルN11における作溝板35の本体部36の高さは、作溝中に土壌から受ける抵抗を小さくするため、できるだけ低くすることが望ましい。
施肥ノズルN11を前進させると、作溝板35によって成形途中の畦R’に、一時的に底部39が幅広の施肥溝G2 が形成される。ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sは、作溝板35の本体部36の背面部に落下し、該本体部36に案内されてそのまま流下する。流下する肥料Sのうち、肥料案内体38に当接した肥料Sは、該肥料案内体38を乗り越えて施肥溝G2 における幅方向のほぼ中央部に散布され、肥料案内体38に衝突した肥料Sは幅方向にも拡散するので、溝底に拡がって播かれる。即ち、肥料Sが、幅広の施肥溝G2 の全体に亘って局所施肥される。
参考例9
次に、第9参考例の施肥ノズルN12について説明する。図22に示されるように、施肥ノズルN12は、第8参考例の施肥ノズルN11が幅広の施肥溝G2 の幅方向の全体に亘って局所施肥するためのものであるのに対して、該施肥溝G2 の幅方向の両端部にのみ局所施肥するためのものである。施肥ノズルN12は、施肥ノズルN11に対して、作溝板41の本体部42のみが異なっているため、ここでは施肥ノズルN12の本体部42についてのみ説明する。施肥ノズルN12の作溝板41の本体部42は、正面視において略台形状であり、前記本体部42の背面部で幅方向のほぼ中央部に、後方(背面側)に向かって略三角錐形状の肥料案内体43が突設されている。
図23の(イ),(ロ)に示されるように、施肥ノズルN12を前進させると、作溝板41によって成形途中の畦R’に幅広の施肥溝G2 が形成される。ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sは、肥料案内体43に当接すると左右のいずれかの方向に振り分けられる。そして、本体部42と肥料案内体43との接合部分42aに沿って流下し、施肥溝G2 における幅方向の両端部に散布される。即ち、肥料Sが、幅広の施肥溝G2 の両端部において局所施肥される。
参考例10
上記した第8及び第9参考例の各施肥ノズルN11,N12は、いずれも畦Rに1条の幅広の施肥溝G2 を形成するためのものである。次に説明する第10参考例の施肥ノズルN13は、畦Rに2条の施肥溝G3 を一度に形成するためのものである。即ち、図24に示されるように、施肥ノズルN13を構成する作溝板44の本体部45の下部で幅方向のほぼ中央部が、正面視において略三角形状に切除されている。これにより、本体部45の下端部は二股に分離されていて、一対の作溝部45a,45b が設けられている。また、前記切除された部分(切除部46)の周縁部には、肥料案内体46aが取付けられている。
図25の(イ),(ロ)に示されるように、施肥ノズルN13を前進させると、作溝板44の本体部45における一対の作溝部45a,45b によって、畦Rに2条の施肥溝G3 が平行に形成される。一対の作溝部45a,45b の間には、切除部46が設けられているため、当該部分の土は排除されない。ノズル本体24の肥料排出口26から排出された肥料Sは、肥料案内体46aに当接すると左右のいずれかの方向に振り分けられる。そして、肥料案内体46aに沿って流下し、各施肥溝G3 の底部47に散布される。即ち、肥料Sが、2条の施肥溝G3 のそれぞれに局所施肥される。そして、第10参考例の施肥ノズルN13は2条用であるが、それ以上の条数用であっても構わない。
上記した第8ないし第10の各参考例の施肥ノズルN11〜N13は、各作溝板35,41,44を、後方(背面側)に向けて屈曲させた形態である。このため、各施肥ノズルN11〜N13は、畦Rに対して垂直姿勢で挿入させることができる。しかし、各作溝板35,41,44を、ノズル本体24の軸心CLに沿わせて取付けても構わない。この場合、各施肥ノズルN11〜N13は、畦Rに対して前傾姿勢で挿入される。
上記した各実施例1〜3、及び各参考例1〜10では、膨軟にされた土壌に成形される畦Rに同時局所施肥作業を行う場合について説明した。しかし、同時局所施肥されるのは畦Rに限られることはなく、例えば、各実施例1〜3、及び各参考例1〜10の各施肥ノズルN1 〜N13を、土壌を平面耕して形成される平畦に局所施肥する場合に使用しても構わない。ただし、この場合には、各ならし板4で土壌の全面をならして施肥溝G1 〜G3 を埋め戻す必要がある。
トラクタTに連結された作業機Wの側面図である。
同じく背面図である。
同じく平面図である。
トラクタTの後方から見た作業機Wの全体斜視図である。
第1実施例の施肥ノズルN1 単体の斜視図である。
施肥装置Cに取付けられた状態の施肥ノズルN1 の一部を破断した側面図である。
(イ)は施肥ノズルN1 と畦成形装置Bとの位置関係を示す平面図であり、(ロ)は(イ)のX−X線断面図である。
施肥ノズルN1 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
図8のY−Y線断面図である。
(イ)は、第2実施例の施肥ノズルN2 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN2 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、別の実施例の施肥ノズルN2'の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN2'によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第3実施例の施肥ノズルN3 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN3 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第1参考例の施肥ノズルN4 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN4 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第2参考例の施肥ノズルN5 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN5 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第3参考例の施肥ノズルN6 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN6 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第4参考例の施肥ノズルN7 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN7 によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第5参考例の施肥ノズルN8 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN8 によって異なる施肥溝G1,G1'が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第6参考例の施肥ノズルN9 の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN9 によって異なる施肥溝G1,G1'が形成される状態の作用説明図である。
(イ)は、第7参考例の施肥ノズルN10の下端部の斜視図であり、(ロ)は、該施肥ノズルN10によって施肥溝G1 が形成される状態の作用説明図である。
第8参考例の施肥ノズルN11の下端部の斜視図である。
(イ)は、第8参考例の施肥ノズルN11の作溝状態の側面図であり、(ロ)は、同じく背面図である。
第9参考例の施肥ノズルN12の下端部の斜視図である。
(イ)は、第9参考例の施肥ノズルN12の作溝状態の側面図であり、(ロ)は、同じく背面図である。
第10参考例の施肥ノズルN13の下端部の斜視図である。
(イ)は、第10参考例の施肥ノズルN13の作溝状態の側面図であり、(ロ)は、同じく背面図である。
従来の施肥ノズルN’の作溝状態の側面図である。
A:ロータリー耕耘装置
B:畦成形装置
C:施肥装置
D:設定深さ
G1 〜G3,G1':施肥溝
L:直線
N1 〜N13:施肥ノズル
R',R:畦(土壌)
S:肥料
T:トラクタ
W:作業機
11,11',24:ノズル本体
15,23:開口部(背面開口)
16,26:肥料排出口
17:落下案内部(施肥ノズルの下端部)
18,39,47:底部
25,27〜29,31,32,34,35,41,44:作溝板(作溝部材)
38,43,46a:肥料案内体
45a,45b :作溝部(作溝部材の下端部)