JP4699240B2 - 締付工具 - Google Patents
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Description
一対のクラッチ部材には、係合部が形成されている。係合部は、工具に加えられているトルク(工具がネジ類に加えているトルクに等しい)が所定値未満のときには一対のクラッチ部材の係合を維持し、工具に加えられているトルクが所定値以上となると一対のクラッチ部材の係合を解除する。即ち、モータから工具へのトルク伝達は、ネジ類の締付トルクが所定値に到達した時点で遮断される。
一対のクラッチ部材の係合が解除されるトルクは、係合部の形状や付勢手段による付勢力に応じて変化する。締付工具では、付勢手段による付勢力を調整することによって、一対のクラッチ部材の係合が解除されるトルクを調整できるようになっている。それにより、ネジ類に規定された締付トルクに応じて、モータから工具へ伝達するトルクの制限値を調整することができる。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、クラッチ機構を調整することなく、複数のネジ類を異なる締付トルクで締付けることができる締付工具を提供する。
一対のクラッチ部材は、第1係合部による係合が解除されることにより、第2係合部によって係合可能な状態となっている。従って、再びモータを駆動させたときには、一対のクラッチ部材が第2係合部によって係合される。この状態でネジ類を締付けていくと、ネジ類の締付トルクが第2所定値に到達した時点で、第2係合部による係合が解除されるとともにモータの駆動が中止される。それにより、ネジ類を第2所定値に等しい締付トルクで締付けることができる。
この締付工具では、ネジ類を第1所定値に等しい締付トルクで締付けた後に、付勢手段による付勢力を調整することなく、他のネジ類を第2所定値に等しい締付トルクで締付けることができる。付勢手段による付勢力を調整することなく、締付トルクが第1所定値に規定されている第1のネジ類と、締付トルクが第2所定値に規定されている第2のネジ類を、それぞれに規定された締付トルクで締付けることができる。
それにより、付勢手段による付勢力を調整することなく、締付トルクが第1所定値に規定されている複数のネジ類と、締付トルクが第2所定値に規定されている複数のネジ類を、規定された締付トルクで交互に締付けることができる。
各係合部に他方のクラッチ部材と当接する傾斜面を形成すると、前記した第1所定値と第2所定値のそれぞれは、各傾斜面の傾斜角度によって調整することが可能となる。このとき、第1係合部の傾斜面の傾斜角度と第2係合部の傾斜面の傾斜角度とを互いに異ならせることによって、第1所定値と第2所定値を互いに異ならせることができる。
それにより、作業者がネジ類を締付けたときに、第1所定値の締付トルクで締付けたのか、第2所定値の締付トルクで締付けたのかを知ることができる。
この締付工具によると、付勢手段による付勢力を調整することなく、締付トルクが第1所定値に規定されている複数のネジ類と、締付トルクが第2所定値に規定されている複数のネジ類と、締付トルクが第3所定値に規定されている複数のネジ類を、規定された締付トルクで順に締付けることができる。
(特徴1) 締付工具は、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材を備えている。第1クラッチ部材はモータ側に接続されており、第2クラッチ部材は工具側に接続されている。
(特徴2) 第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の一方には、第1係合部と第2係合部と第3係合部が設けられている。第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の他方には、第1係合部と第2係合部と第3係合部に当接する当接部が設けられている。当接部は、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材との相対回転位置に応じて、第1係合部と第2係合部と第3係合部のいずれかに当接する。
(特徴3) 締付工具は、一対のクラッチ部材の係合が解除されたことを検出する手段を備えている。
(特徴4) 締付工具は、一対のクラッチ部材の第1係合部による係合が解除されたときに点灯する第1表示ランプと、一対のクラッチ部材の第2係合部による係合が解除されたときに点灯する第2表示ランプと、一対のクラッチ部材の第3係合部による係合が解除されたときに点灯する第3表示ランプを備えている。
電動ドライバ10は、作業者が操作するトリガスイッチ24と、作業者に視認可能に設けられている第1表示ランプ26aと第2表示ランプ26bと第3表示ランプ26cと、モータ14や表示ランプ26a、26b、26c等の動作を制御する制御回路28と、電源となる電池パック(図9に示す)100を接続するためのコネクタ30を備えている。
第1クラッチ部材56は、減速機22の出力部材42に固定されており、モータ14の回転に伴って出力部材42とともに回転する。一方、第2クラッチ部材58は、スピンドル15に設けられている。第2クラッチ部材58は、接続球体63を介してスピンドル15に接続されており、スピンドル15に対して相対回転不能に接続されているとともに、スピンドル15の軸方向には移動可能に支持されている。
第1クラッチ部材56には、第1対向面56aが形成されている。第2クラッチ部材58には、第2対向面58aが形成されている。第1クラッチ部材56の第1対向面56aと第2クラッチ部材58の第2対向面58aは、互いに対向している。当接球体64は、第1クラッチ部材56の第1対向面56aと第2クラッチ部材58の第2対向面58aとの間に介在している。圧縮バネ62は、第2クラッチ部材58を第1クラッチ部材56に向けて付勢している。第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58は、当接球体64を介して回転方向に関して係合する。第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58は、互いに係合することによってモータ14からのトルクをスピンドル15側へと伝達し、互いの係合を解除することによってモータ14からスピンドル15へのトルク伝達を遮断する。
バネ拘束部材66は、圧縮バネ62の反第2クラッチ部材58側の端部を拘束している。調整部材68は、スピンドル15の側面に螺合しており、回転することによってスピンドル15の軸方向に移動する。調整部材68がスピンドル15の軸方向に沿って移動することによって、バネ拘束部材66もスピンドル15の軸方向に沿って移動する。作業者は、調整部材68を回転させることによって、圧縮バネ62が第2クラッチ部材58を第1クラッチ部材56側へと押圧する押圧力を調整することができる。
図3は、第1対向面56a側からみた第1クラッチ部材56を示している。図3に示すように、第1クラッチ部材56の第1対向面56aには、当接球体64が遊嵌するための凹部57が3箇所に形成されている。凹部57は、略半球形状に形成されている。3箇所の凹部57は、周方向に沿って等間隔に配置されている。当接球体64は、第1クラッチ部材56の凹部57によって保持され、第1クラッチ部材56と略一体となって回転する。そのことから、当接球体64は第1クラッチ部材56の一部とみなすこともでき、第1クラッチ部材56と当接球体64を一体に形成するようにしてもよい。
図4は、第2対向面58a側からみた第2クラッチ部材58を示している。図5は、図4に示す円形切断線Vにおける断面を展開して示している。図4、図5に示すように、第2クラッチ部材58の第2対向面58aには、周方向に沿って伸びている溝部58bが形成されている。溝部58bは、第1クラッチ部材56の凹部57と対向する位置に設けられている。溝部58bには、第1係合突起部59aと第2係合突起部59bと第3係合突起部59cとを一組とする係合突起部群59a、59b、59cが3組形成されている。3組の係合突起部群59a、59b、59cは、周方向に沿って等間隔に配置されている。
各係合突起部59a、59b、59cには、当接斜面61a、61b、61cが形成されている。当接斜面61a、61b、61cには、第1クラッチ部材56がモータ14によって回転させられたときに、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が当接する。第1係合突起部59aでは、第1当接斜面61aが傾斜角度θ1で形成されている。第2係合突起部59bでは、第2当接斜面61bが傾斜角度θ2で形成されている。第3係合突起部59cでは、第3当接斜面61cが傾斜角度θ3で形成されている。それぞれの当接斜面の傾斜角度θ1、θ2、θ3は互いに異なっている。本実施例では、傾斜角度θ1、θ2、θ3の大小関係が、θ1>θ3>θ2と設定されている。
一方、図8に示すように、スピンドル15に回転を規制するトルクを加えると、圧縮バネ62の付勢力に逆らって、当接球体64は第1係合突起部59aを乗り越える。このとき、第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58は回転方向に関して係合解除され、モータ14からスピンドル15へのトルク伝達が遮断される。即ち、電動ドライバ10によってネジを締付けたときに、その締付トルクが第1の所定値(例えばR1)に達すると、第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58間のトルク伝達が遮断される。このときの第1トルクR1は、主に、圧縮バネ62による付勢力と、第1当接斜面61aの傾斜角度θ1に応じて決まる。第1当接斜面61aの傾斜角度θ1が大きいほど、第1トルクR1は大きくなる。
当接球体64が第3係合突起部59bcを乗り越えると、当接球体64は第3係合突起部59cと第1係合突起部59aとの間に位置する状態となり、クラッチ機構20は図7に示す状態に戻る。
このように、一対のクラッチ部材56、58は、第1係合突起部59aによる係合が解除されると第2係合突起部59bによる係合が可能となり、第2係合突起部59bによる係合が解除されると第3係合突起部59cによる係合が可能となり、第3係合突起部59cによる係合が解除されると第1係合突起部59aによる係合が可能となる。それにより、クラッチ機構20では、ネジ類に加えているトルクが第1トルクR1となった時点でトルク伝達が遮断される状態と、ネジ類に加えているトルクが第2トルクR2となった時点でトルク伝達が遮断される状態と、ネジ類に加えている締付トルクが第3トルクR3となった時点でトルク伝達が遮断される状態とが、順に現れる。電動ドライバ10では、調整部材68を操作して圧縮バネ62による付勢力を調整することなく、一対のクラッチ部材56、58の係合が解除されるトルクが、第1トルクR1、第2トルクR2、第3トルクR3、第1トルクR1・・の順に変化する。
制御回路28は、マイクロコンピュータや定電圧電源回路等を備えている。制御回路28には、トリガスイッチ24や検出スイッチ52や表示ランプ26a、26b、26cが接続されている。制御回路28は、トリガスイッチ24の出力信号と、検出スイッチ52の出力信号に基づいて、半導体スイッチ80や表示ランプ26a、26b、26cの動作を制御する。
先ず、作業者は、ドライバビット18を第1のネジ類に係合させ、トリガスイッチ24をオン操作する。この時点を時刻t1とする。トリガスイッチ24にオン操作が加えられると、制御回路28は半導体スイッチ80に駆動信号を出力し、半導体スイッチ80をオンさせる。時刻t1において半導体スイッチ80がオンすると、モータ14が電池パック100(詳しくは電池パックに内蔵されている電池)に電気的に接続され、モータ14が回転を開始する。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第1係合突起部59aの第1当接斜面61aに当接し、モータ14からのトルクがスピンドル15側へと伝達される。モータ14によってドライバビット18は回転させられることとなり、第1のネジ類は母材へとねじ込まれていく。なお、作業者がトリガスイッチ24のオン操作を中止すると、制御回路28は半導体スイッチ80へ駆動信号の出力を中止し、モータ14は停止する。ここでは、後述する時刻t3まで、作業者がトリガスイッチ24のオン操作を継続するものとする。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第1係合突起部59aと第2係合突起部59bとの間に位置する状態となっている。即ち、モータ14が再び駆動したときに、一対のクラッチ部材56、58が第2係合突起部59bによって係合される状態となっている。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第2係合突起部59bの第2当接斜面61bに当接する。第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58は係合した状態となり、第2のネジ類は母材へとねじ込まれていく。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第2係合突起部59bと第3係合突起部59cとの間に位置する状態となっている。即ち、モータ14が再び駆動したときに、一対のクラッチ部材56、58が第3係合突起部59cによって係合される状態となっている。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第3係合突起部59cの第3当接斜面61cに当接する。第1クラッチ部材56と第2クラッチ部材58は係合した状態となり、第3のネジ類は母材へとねじ込まれていく。
クラッチ機構20では、第1クラッチ部材56側に保持されている当接球体64が、第2クラッチ部材58側に設けられている第3係合突起部59cと第1係合突起部59aとの間に位置する状態となっている。即ち、時刻t1以前と等しい状態となっており、モータ14が再び駆動したときに、一対のクラッチ部材56、58が第1係合突起部59aによって係合される状態となっている。
上記した実施例では、第2クラッチ部材58に3種類の係合突起部59a、59b、59cを設けた例について説明したが、第2クラッチ部材58に2種類のみの係合突起部を設ける形態とすることもできるし、4種類以上の係合突起部を設ける形態とすることもできる。
各係合突起部59a、59b、59cの係合解除を区別して検出する場合、上記した実施例の方式にかえて、例えば各係合突起部59a、59b、59cの高さを互いに相違させておいてもよい。それにより、第2クラッチ部材58が係合解除するときに軸方向に変位する変位量が、係合突起部毎に異なるようになる。第2クラッチ部材58の軸方向の変位量は、例えば変位センサや複数の検出スイッチを用いて検出することができる。第2クラッチ部材58の軸方向の変位量に基づいて、各係合突起部59a、59b、59cの係合解除を区別して検出することができる。
一対のクラッチ部材56、58の係合解除を作業者等に報知する手段は、実施例に示した表示ランプ26a、26b、26cを用いる方式に限られず、例えば音や振動等を発生する他の報知器を用いることもできる。また、一対のクラッチ部材56、58の係合解除を報知する対象は作業者に限られない。例えば工業製品の製造現場等において、一対のクラッチ部材56、58が係合解除したことを通信機器等を利用してコンピュータに報知することで、ネジ類の締付作業が正しく行われているのか否かをコンピュータを利用して監視することも可能となる。
第1クラッチ部材56の第1対向面56aの構成と、第2クラッチ部材58の第2対向面56aの構成は、相互に反転させることができる。即ち、第1クラッチ部材56側に係合突起部59a、59b、59cを設け、第2クラッチ部材58側に当接球体64を保持させてもよい。また、当接球体64は、クラッチ部材56、58と一体に設けることもできる。
12・・ハウジング
14・・モータ
15・・スピンドル
16・・工具チャック
18、・・ドライバビット(工具)
20・・クラッチ機構
22・・減速機
24・・トリガスイッチ
26a、26b、26c・・表示ランプ
28・・制御回路
30・・コネクタ
52・・検出スイッチ
56・・第1クラッチ部材
57・・凹部
58・・第2クラッチ部材
58b・・溝部
59a、59b、59c・・係合突起部群
61a、61b、61c・・当接斜面
62・・圧縮バネ
63・・接続球体
64・・当接球体
Claims (5)
- モータと、
ネジ類に係合する工具と、
モータと工具との間に介装されており、互いに係合することによってモータからのトルクを工具へ伝達し、互いの係合を解除することによってモータから工具へのトルク伝達を遮断する一対のクラッチ部材と、
一対のクラッチ部材の少なくとも一方を他方に押圧する付勢手段と、
一対のクラッチ部材の係合が解除された時に、前記モータの駆動を中止させるモータ制御手段を備え、
一対のクラッチ部材には、少なくとも第1係合部と第2係合部が設けられており、
第1係合部は、工具に加えられているトルクが第1所定値未満のときには一対のクラッチ部材の係合を維持し、工具に加えられているトルクが第1所定値以上となると一対のクラッチ部材の係合を解除し、
第2係合部は、工具に加えられているトルクが第2所定値未満のときには一対のクラッチ部材の係合を維持し、工具に加えられているトルクが第2所定値以上となると一対のクラッチ部材の係合を解除し、
一対のクラッチ部材は、第1係合部による係合が解除されると、第2係合部によって係合可能な状態となることを特徴とする締付工具。 - 前記一対のクラッチ部材は、第2係合部による係合が解除されると、第1係合部によって係合可能な状態となることを特徴とする請求項1の締付工具。
- 前記第1係合部と第2係合部のそれぞれには、他方のクラッチ部材と当接する傾斜面が形成されており、
第1係合部の傾斜面の傾斜角度と、第2係合部の傾斜面の傾斜角度が、互いに異なることを特徴とする請求項1又は2の締付工具。 - 前記第1係合部による係合が解除されたときに第1の報知動作を行うとともに、第2係合部による係合が解除されたときに第2の報知動作を行う報知手段が付加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの締付工具。
- 前記一対のクラッチには、さらに第3係合部が形成されており、
第3係合部は、工具に加えられているトルクが第3所定値未満のときには一対のクラッチ部材の係合を維持し、工具に加えられているトルクが第3所定値以上となると一対のクラッチ部材の係合を解除し、
前記一対のクラッチは、第1係合部による係合が解除されると第2係合部によって係合可能な状態となり、第2係合部による係合が解除されると第3係合部によって係合可能な状態となり、第3係合部による係合が解除されると第1係合部によって係合可能な状態となることを特徴とする請求項1の締付工具。
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