本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、周波数多重された複数のチャネルが含まれた信号を受信し、受信した信号を増幅してから、送信する中継装置に関する。なお、複数のチャネルには、SFNに対応したチャネルおよびMFNに対応したチャネルが混在している。このようなチャネルの構成に対応するために、中継装置は、受信した信号をチャネルごとに分離し、チャネル単位に増幅等の中継処理を実行する。また、中継装置は、中継処理を実行した複数のチャネルを合成してから送信する。ここで、前述のごとく、中継装置の回路規模を低減するために、それぞれのチャネルに対して中継処理を実行するための回路は、拡張性なく設計されている。ここで、拡張性なく設計とは、中継処理のためのフィルタや増幅器が、所定のチャネルの信号に対してチューニングされている状況に相当する。
以上の状況において、チャネル構成の変更などに柔軟に対応するために、本実施例に係る中継装置は、以下のように構成されている。中継装置は、中継処理を実行した複数のチャネルを合成した後に、合成した信号をディジタルフィルタに通過させる。ここで、ディジタルフィルタのタップ係数は、所望のチャネルを通過させるように設定される。また、通過させるべきチャネルの変更に応じて、タップ係数も変更されるので、チャネル構成の変更に柔軟に対応できる。また、複数のチャネルに対してそれぞれ中継処理を実行する回路の後段にディジタルフィルタを付加する構成なので、実施例の構成は、SFNとMFNとが混在したチャネルに対応でき、回路規模の増加も抑制できる。
図1は、本発明の実施例に係る中継装置100の構成を示す。中継装置100は、受信アンテナ10、受信フィルタ12、受信増幅部14、分波部70、中継処理部72と総称される第1中継処理部72a、第2中継処理部72b、第N中継処理部72n、合波部74、後段処理部76、送信増幅部24、送信フィルタ26、送信アンテナ28を含む。また、第1中継処理部72aは、第1前段増幅部80a、第1前段ミキサ82a、第1BPF(Bandpass Filter)84a、第1中継増幅部86a、第1後段ミキサ88a、第1後段増幅部90a、局部発振器92、局部発振器94を含む。
また、第2中継処理部72bは、第2前段増幅部80b、第2前段ミキサ82b、第2BPF84b、第2中継増幅部86b、第2後段ミキサ88b、第2後段増幅部90b、局部発振器96を含む。ここで、第1前段増幅部80a、第2前段増幅部80bは、前段増幅部80と総称され、第1前段ミキサ82a、第2前段ミキサ82bは、前段ミキサ82と総称され、第1BPF84a、第2BPF84bは、BPF84と総称され、第1中継増幅部86a、第2中継増幅部86bは、中継増幅部86と総称され、第1後段ミキサ88a、第2後段ミキサ88bは、後段ミキサ88と総称され、第1後段増幅部90a、第2後段増幅部90bは、後段増幅部90と総称される。
受信アンテナ10は、複数のチャネルによって形成された信号を受信する。複数のチャネルは周波数多重されている。また、複数のチャネルの信号のそれぞれは、SFNあるいはMFNに対応している。また、複数のチャネルの信号のそれぞれには、チャネルの信号を識別するための識別情報が含まれている。識別情報は、例えば、当該チャネルの信号の送信元となる放送局を識別するための情報に相当する。さらに、複数のチャネルの信号のうちの少なくともひとつは、チャネル内において複数の情報をさらに周波数多重してもよい。実施例に係る放送システムは、ISDB−T(Terrestrial Integrated Services Digital Broadcasting)方式に対応しているとする。
その場合、ひとつのチャネルは、13セグメントに周波数分割されている。また、13セグメントがひとつの番組に割り当てられている場合もあれば、1セグメントと残りの12セグメントが別の番組に割り当てられている場合もある。受信アンテナ10は、受信した信号を受信フィルタ12に出力する。受信フィルタ12は、受信アンテナ10において受信した信号に対して、複数のチャネル全体の帯域外の部分を減衰させる。受信増幅部14は、受信フィルタ12からの信号を増幅する。
分波部70は、受信増幅部14からの信号を入力し、入力した信号を複数の中継処理部72にそれぞれ出力する。中継処理部72は、分波部70からの信号を入力し、入力した信号から所望のチャネルの信号を抽出する。また、中継処理部72は、抽出したチャネルの信号を増幅する。ここで、第1中継処理部72aは、複数のチャネルの信号のうち、MFNに対応したチャネルの信号に対して中継処理を実行し、第2中継処理部72bは、SFNに対応したチャネルの信号に対して中継処理を実行する。つまり、第1中継処理部72aは、MFNに対応したチャネルの信号に対して送信時の周波数への変換および増幅を実行し、第2中継処理部72bは、SFNに対応したチャネルの信号増幅を実行する。
また、残りの中継処理部72は、第1中継処理部72aあるいは第2中継処理部72bのいずれかと同等の処理を実行する。なお、どの放送局からの信号がどのチャネルに割り当てられ、それがSFNあるいはMFNのいずれに対応するかは、予め定められているものとする。そのため、複数の中継処理部72は、対応したチャネルの信号に対する中継処理だけを実行し、拡張性を有していない。
第1前段増幅部80aは、分波部70からの信号を増幅する。第1前段ミキサ82aは、第1前段増幅部80aからの放送周波数帯域の信号を中間周波数帯域の信号に変換し、第1BPF84aに出力する。第1前段ミキサ82aには、第1前段増幅部80aからの放送周波数帯域の信号の他、局部発振器92からの局部発振器信号も入力される。第1前段ミキサ82aは、放送周波数帯域の信号に局部発振器信号を乗じて放送周波数帯域の信号を中間周波数帯域の信号に変換する。
第1BPF84aは、第1前段ミキサ82aからの信号から所望のチャネルの信号を抽出する。前述のごとく、抽出すべきチャネルの信号は、予め定められており、それに合うように第1BPF84aの通過周波数帯域等の設計がなされている。第1中継増幅部86aは、第1BPF84aからの信号を増幅する。第1中継増幅部86aは、チャネル内において複数の情報をさらに周波数多重したチャネルの信号に対しても、チャネル全体の処理を実行する。第1後段ミキサ88aは、中間周波数帯域の信号を放送周波数帯域の信号に変換し、第1後段増幅部90aに入力する。第1後段ミキサ88aは、局部発振器94からの局部発振器信号を中間周波数帯域の信号に乗じて中間周波数帯域の信号を放送周波数帯域の信号に変換する。第1後段増幅部90aは、第1後段ミキサ88aからの信号を増幅する。一般的に、局部発振器92からの局部発振器信号と局部発振器94からの局部発振器信号とは、異なった周波数を有する。
第2中継処理部72bの各構成要素は、第1中継処理部72aの各構成要素と同様の機能を有する。なお、第2中継処理部72bでは、SFNに対応するために、ひとつの局部発振器96が備えられている。合成部50は、中継処理部72からの複数のチャネルの信号を合成する。後段処理部76は、合成部50からの信号から、最終的に送信すべきチャネルの信号を抽出する。なお、合成部50の処理の詳細は、後述する。送信増幅部24は、送信増幅部24からの放送周波数帯域の信号を増幅し、送信フィルタ26に入力する。送信フィルタ26は、入力された信号の放送周波数帯域外に含まれるイメージ信号、送信増幅部24の非線形性による高調波成分信号等を減衰し、送信アンテナ28に入力する。送信アンテナ28は、入力された信号を電磁波として送信する。つまり、送信アンテナ28は、後段処理部76において抽出したチャネルの信号を送信する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図2は、後段処理部76の構成を示す。後段処理部76は、周波数変換器16、A/D変換器40、ディジタル入出力フィルタ42、D/A変換器44、周波数変換器22、局部発振器46、制御部78を含む。また、制御部78は、ID確認部30、入力部32、決定部36、設定部38を含む。
周波数変換器16は、入力した放送周波数帯域の信号をベースバンド帯域の信号に変換し、A/D変換器40に出力する。周波数変換器16には、放送周波数帯域の信号の他、局部発振器46からの局部発振器信号も入力される。A/D変換器40は、ベースバンド帯域の信号をディジタル信号に変換し、ディジタル入出力フィルタ42に出力する。
制御部78は、ディジタル入出力フィルタ42において抽出すべき信号を設定する。すなわち、ディジタル入出力フィルタ42では、複数のタップが直列に接続されており、制御部78は、複数のタップのそれぞれに対応したタップ係数を設定する。ここで、制御部78による動作の概要を説明する。なお、ディジタル入出力フィルタ42におけるタップ係数は、時間領域にて規定されているが、ここでは、説明の簡易化のために、図3(a)−(e)を使用しながら周波数領域の特性として説明する。図3(a)−(e)は、制御部78による周波数特性の導出の概要を示す。
図2の制御部78は、中継すべき放送局のチャネル番号を後述のごとく特定してから、タップ係数を算出する。ここで、チャネルに対応した周波数は、「チャネル番号」にて規定されているものとする。例えば、周波数の低いチャネルに対して、小さいチャネル番号が割り当てられ、周波数の高いチャネルに対して、大きいチャネル番号が割り当てられる。図3(a)では、「チャネル番号」が第1チャネル200から第6チャネル210によって示される。ここで、第1チャネル200は、第1中継処理部72aから出力された信号、第2チャネル202は、第2中継処理部72bから出力された信号に相当する。また、第1チャネル200、第2チャネル202、第4チャネル206、第6チャネル210が中継すべき放送局のチャネル番号として予め規定されているものとする。また、第3チャネル204、第5チャネル208は、中継装置100の設置時において中継すべき放送局のチャネル番号として規定されていたが、その後、何らかの理由によって中継すべきでない放送局のチャネル番号に変更に変更されたものとする。
制御部78は、次の(1)から(8)に示す処理にしたがいタップ係数を算出し、後述のディジタル入出力フィルタ42に入力する。
(1)制御部78は、中継すべき放送局のチャネル番号、および中継すべきでない放送局のチャネル番号をそれぞれ区別して特定する。前述のごとく、図3(a)の例では、第1チャネル200等が中継すべきチャネルとして特定され、第3チャネル204等が中継すべきでないチャネルとして特定される。ここで、特定の方法は、後述する。
(2)制御部78は、中継すべきでない放送局のチャネル番号に対応するチャネル周波数帯域の信号を減衰させる帯域除去特性関数を算出する。図3(a)のように構成されたチャネルの場合、帯域除去特性関数は図3(b)のように示される。
(3)制御部78は、抽出すべきチャネルの信号のうち、チャネル周波数帯域が最も低域にあるものを検索する。
(4)制御部78は、検索したチャネル番号に対応するチャネル周波数帯域の低域端をカットオフ周波数とする高域通過特性を表す関数を算出する。この関数は、周波数領域表現の関数であるものとし、以下、高域通過特性関数とする。図3(a)の例では、チャネル周波数帯域が最も低域にあるチャネルは、第1チャネル200であり、高域通過特性関数は図3(c)のように示される。
(5)制御部78は、抽出すべきチャネルの信号のうち、抽出すべきチャネル周波数帯域が最も高域にあるものを検索する。
(6)制御部78は、検索したチャネル番号に対応するチャネル周波数帯域の高域端をカットオフ周波数とする低域通過特性を表す関数を算出する。この関数は、周波数領域表現の関数であるものとし、以下、低域通過特性関数とする。図3(a)の例では、チャネル周波数帯域が最も高域にあるディジタルテレビジョン放送システムのチャネルは第6チャネル210であり、低域通過特性関数は図3(d)のように示される。
(7)制御部78は、帯域除去特性関数、高域通過特性関数、および低域通過特性関数を乗じた特性関数を算出する。図3(a)の例では、算出される特性関数は図3(e)のように示される。
(8)制御部78は、特性関数に逆フーリエ変換を施して時間領域表現の特性関数を算出し、これを離散化することでタップ係数を算出し、後述のディジタル入出力フィルタ42に出力する。以上の構成とは別に、制御部78は、それぞれのチャネルに対応した帯域通過フィルタを組み合わせることによって、タップ係数を算出してもよい。
以上のような制御部78において、入力部32は、ディジタル入出力フィルタ42において抽出すべきチャネルの信号に関する設定を受けつける。入力部32は、管理者がチャネル番号を入力可能なインタフェイスを有しており、管理者は、当該インタフェイスを介して入力部32にチャネル番号を入力する。また、入力部32は、最終的に送信すべきチャネルの信号に関する設定として、抽出すべきチャネルの信号に対応した識別情報を受けつけてもよい。さらに、入力部32は、チャネル内において複数の情報をさらに周波数多重したチャネルに対して、最終的に送信すべき情報に関する設定を受けつける。そのため、入力部32は、ひとつのチャネルのうちの1セグメントに対応した信号だけを抽出する旨を受けつける。
図4は、入力部32においてワンセグメント受信が指定された場合の周波数特性を示す。横軸に周波数が示され、縦軸に信号強度が示される。点線は、すべてのセグメント、すなわち13セグメント(以下、「フルセグメント」という)でのスペクトルに相当する。また、実線は、ワンセグメントでのスペクトルであり、「fc」は、フルセグメントでの中央の周波数に相当する。入力部32は、ひとつのチャネルの信号のうち、図4の実線の部分のみを中継するような指示も受けつける。図2に戻る。
ID確認部30は、A/D変換器40からの信号より、信号に含まれた識別情報を確認する。A/D変換器40からの信号が複数のチャネルによって形成されている場合、ID確認部30は、複数のチャネルのそれぞれに対応した識別番号を確認する。ID確認部30は、確認結果を決定部36に出力する。
決定部36は、入力部32においてチャネル番号を受けつけた場合、当該チャネル番号の抽出を決定する。また、決定部36は、入力部32において、1セグメントに対応した信号だけを抽出する指示を受けつけた場合、1セグメントに対応した信号の抽出を決定する。さらに、入力部32において識別情報を受けつけた場合、決定部36は、受けつけた識別情報と、ID確認部30において確認した識別情報とを比較し、一致した識別番号に対応したチャネルの信号の抽出を決定する。そのため、ID確認部30において確認した識別情報であっても、当該識別情報を受けつけていなければ、決定部36は、当該識別情報に対応したチャネルの信号を抽出しないように決定する。このような構成によれば、夜間の放送休止の時間帯に中継すべきでないチャネルの識別番号が、入力部32に入力されなければ、当該時間帯に他の放送エリアから同一周波数のチャネルの信号が受信された場合であっても、決定部36は、当該チャネルの信号を再送信しない。設定部38は、決定部36での決定結果をもとに、中継すべきチャネルの信号を透過するようにフィルタの特性を設定する。このような処理は、前述の制御部78に関する説明(1)から(8)のごとくなされる。
ディジタル入出力フィルタ42は、設定部38によって設定されたタップ係数によって、A/D変換器40からの信号のうち、中継すべきチャネルの信号を抽出する。すなわち、ディジタル入出力フィルタ42にはタップ係数が設定されることによって、ディジタル入出力フィルタ42のフィルタ特性が決定される。本実施例では、タップ係数は、設定部38から入力される。なお、ディジタル入出力フィルタ42は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタによって構成される。つまり、ディジタル入出力フィルタ42は、入力部32において受けつけた設定に対応したチャネルの信号を、合波部74において合成した複数のチャネルの信号から抽出する。また、ディジタル入出力フィルタ42は、入力部32において受けつけた識別情報に対応したチャネルの信号を、合波部74において合成した複数のチャネルの信号から抽出する。さらに、ディジタル入出力フィルタ42は、チャネル内において複数の情報をさらに周波数多重したチャネルに対して、入力部32において受けつけた設定に対応した情報を抽出する。
D/A変換器44は、ディジタル入出力フィルタ42からの信号をアナログ信号に変換し周波数変換器22に入力する。周波数変換器22は、ベースバンド帯域の信号を放送周波数帯域の信号に変換し、送信増幅部24に入力する。
図5は、設定部38の構成を示す。設定部38は、メモリ60と総称される第1メモリ60a、第2メモリ60b、第3メモリ60c、第Nメモリ60n、スイッチ62と総称される第1スイッチ62a、第2スイッチ62b、第3スイッチ62c、第Nスイッチ62n、合成部50、変換部52を含む。
メモリ60は、それぞれのチャネルを抽出するための周波数特性を記憶する。ここで、第1メモリ60aは、図3(a)の第1チャネル200を抽出するための周波数特性を記憶する。第1メモリ60a以外のメモリ60についても同様であり、ひとつのメモリ60には、ひとつのチャネルを抽出するための周波数特性が記憶される。
決定部36から抽出すべきチャネルに関する情報、すなわち決定部36によって特定されたチャネルに関する情報が入力されると、スイッチ62は、対応したチャネルをオンにする。これにより、オンされたチャネルを抽出するための周波数特性が出力される。合成部50は、スイッチ62によって選択された周波数特性を合成する。変換部52は、合成した周波数特性に対して、周波数領域から時間領域への変換を実行する。変換には、例えば、逆フーリエ変換が使用される。以上の変換によって、変換部52は、タップ係数を生成する。変換部52は、生成したタップ係数をディジタル入出力フィルタ42に出力する。ディジタル入出力フィルタ42は、受けつけたタップ係数を設定する。なお、メモリ60は、各チャネルの周波数特性に対応した時間領域のタップ係数を記憶し、決定部36は、所望のチャネルに対応したタップ係数を組み合わせてもよい。その際、変換部52は、不要になる。
以上の構成による中継装置100の動作を説明する。受信アンテナ10、受信フィルタ12、受信増幅部14は、周波数多重された複数のチャネルの信号を受信する。中継処理部72は、チャネル単位にチャネルの信号に対して、中継処理を実行する。合波部74は、中継処理がなされたチャネルの信号を合成する。ID確認部30、入力部32での処理結果をもとに、決定部36は、合成されたチャネルの信号のうち、中継を実行すべきチャネルの信号を決定する。設定部38は、決定したチャネルの信号を抽出するようなタップ係数を導出し、導出したタップ係数をディジタル入出力フィルタ42に設定する。ディジタル入出力フィルタ42は、設定されたタップ係数にて、合成されたチャネルの信号うちの所望のチャネルの信号を抽出する。送信増幅部24、送信フィルタ26、送信アンテナ28は、抽出されたチャネルの信号を送信する。
以下に、中継装置100の変形例を説明する。変形例に係る中継装置100の構成は、図1に示した中継装置100と同様のタイプである。ここでは、図1に示した中継装置100との差異を中心に説明する。中継装置100は、複数の受信アンテナ10を有する。ここで、複数の受信アンテナ10のアンテナ指向性は、互いに異なるように設定される。例えば、東西南北のそれぞれの方向にアンテナ指向性を有するような4つの受信アンテナ10が設けられる。中継処理部72は、複数の受信アンテナ10において受信した信号の合成信号に対して、中継処理を実行する。また、制御部78には、図示しない測定部が備えられ、測定部は、複数のチャネルの信号のそれぞれに対して、受信した受信アンテナ10ごとに受信強度を測定する。
例えば、測定部は、4つの受信アンテナ10のそれぞれにおいて受信したひとつのチャネルの信号に対して受信強度を測定する。決定部36は、測定部において測定した受信強度をもとに、最終的に送信すべきチャネルの信号を決定する。例えば、東向きの受信アンテナ10において受信したチャネルの信号の受信強度がしきい値よりも大きければ、決定部36は、当該チャネルの信号を中継しないように決定する。一方、東向きの受信アンテナ10において受信したチャネルの信号の受信強度がしきい値以下であれば、決定部36は、当該チャネルの信号を中継するように決定する。
これは、中継装置100の東の方向に当該チャネルの信号を送信するための送信装置が設置されている状況下において、当該送信装置からの送信が停止された場合に相当する。つまり、送信装置が信号を送信しているとき、送信装置によって放送エリアが形成されているので、中継装置100は中継を行わない。一方、送信装置が信号を送信していないとき、送信装置によって放送エリアが形成されていないので、中継装置100は別の方向からのチャネルの信号を中継する。なお、受信アンテナ10にあわせて、受信フィルタ12も複数備えられていてもよい。
図6は、本発明の変形例に係るチャネルの特定手順を示すフローチャートである。測定部は、受信アンテナ10、チャネルごとに受信強度を測定する(S10)。予め定めた受信アンテナ10での受信強度がしきい値よりも大きければ(S12のY)、決定部36、設定部38は、中継しないようにディジタル入出力フィルタ42のタップ係数を設定する(S14)。一方、予め定めた受信アンテナ10での受信強度がしきい値よりも大きくなければ(S12のN)、決定部36、設定部38は、中継するようにディジタル入出力フィルタ42のタップ係数を設定する(S16)。
さらに、中継装置100の別の変形例を説明する。変形例では、中継装置100をルートダイバーシチ可能な中継装置に適用する。図7は、本発明のさらに別の変形例に係る中継装置120の構成を示す。中継装置120は、受信アンテナ10と総称される第1受信アンテナ10a、第2受信アンテナ10b、第1系112、第2系114、合成部110、送信アンテナ28、切替制御部116を含む。また、第1系112は、第1受信フィルタ12a、第1受信増幅部14a、第1分波部70a、第1中継処理部72aから第N中継処理部72n、第1合波部74a、第1後段処理部76a、第1送信増幅部24a、第1送信フィルタ26aを含む。また、第2系114は、第2受信フィルタ12b、第2受信増幅部14b、第2分波部70b、第N+1中継処理部72n+1、第N+M中継処理部72n+m、第2合波部74b、第2後段処理部76b、第2送信増幅部24b、第2送信フィルタ26bを含む。
第1系112と第2系114は、中継装置100にそれぞれ相当し、中継装置100と同様の処理を実行する。第1受信アンテナ10aと第2受信アンテナ10bは、アンテナ指向性がそれぞれ別の方向になるように、設置されている。例えば、第1受信アンテナ10aは、アンテナ指向性が東方向になるように設置されており、第2受信アンテナ10bは、アンテナ指向性が西方向になるように設置されている。このとき、東方向には、定常時の送信装置、つまり上位局が設置されており、西方向には、異常時の上位局が配置されている。ここで、異常時とは、定常時の上位局から受信した信号の受信強度が、フェージング等によって低下した場合に相当する。
ひとつのチャネルに着目したとき、切替制御部116は、図示しない信号線を介して、第1受信アンテナ10aにおいて受信した信号(以下、「第1信号」という)の受信強度と、第2受信アンテナ10bにおいて受信した信号(以下、「第2信号」という)の受信強度とを測定する。第1信号と第2信号の受信強度がいずれもしきい値よりも大きい場合、切替制御部116は、第2後段処理部76bに対して、当該チャネルを通過させないタップ係数を設定するように指示する。つまり、第2後段処理部76bは、当該チャネルを減衰させるようなタップ係数が設定される。そのときの第2後段処理部76bの処理は、前述のとおりなので説明を省略する。
一方、第1信号の受信強度がしきい値以下となれば、切替制御部116は、第1後段処理部76aに対して、当該チャネルを通過させないタップ係数を設定するように指示し、第2後段処理部76bに対して、当該チャネルを通過させるタップ係数を設定するように指示する。合成部110は、第1系112からの信号と第2系114からの信号とを合成し、送信アンテナ28へ出力する。以上の構成によってルートダイバーシチが実現される。一般的に、同一時刻のフェージングの発生状況は、チャネル毎に異なっている。そのため、ルートダイバーシチを実行する際、チャネル毎にスイッチが必要になる。しかしながら、中継装置120の構成によれば、受信アンテナ10の数に応じた後段処理部76が設けられればよく、チャネル毎のスイッチが不要になる。また、最終的に、ひとつの合成部110が設けられればよく、第1後段処理部76aと第2後段処理部76bの出力を合成し、送信増幅部24、送信フィルタ26を1台とした構成としてもよい。簡易な構成にて、ルートダイバーシチ、またはスペースダイバーシチ受信機の実現が可能になる。
本発明の実施例によれば、中継処理部は、予め定められた中継処理を実行するとともに、後段処理部は、受けつけた設定に応じてチャネルの信号の抽出を実行するので、回路規模の増加を抑制しながら、中継すべきチャネルの変更に対応できる。また、中継処理部は、拡張性がないような設計がなされているので、回路規模の増加を抑制できる。また、後段処理部は、受けつけた設定に応じてタップ係数を変更するので、中継すべきチャネルの変更に対応できる。また、中継装置のうち、後段処理部以外の構成が既に存在する場合、後段処理部を追加するだけでよいので、新たな製品の開発コストを低減できる。また、識別情報をもとに抽出を実行しているので、状況に応じて中継不要な信号を受信した場合であっても、柔軟に中継を中止できる。
また、中継を中止するので、希望波に与える干渉を低減できる。また、チャネルの信号の到来方向に応じて、当該チャネルの信号を中継するか否かを柔軟に設定するので、チャネルの信号を本来送信すべき送信装置が送信しない場合であっても、放送エリアの減少を抑制できる。また、ひとつのチャネル内に、1セグメントに対応した信号が含まれている場合であっても、1セグメントに対応した信号だけを中継できる。また、このような設定の変更を柔軟に実行できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
10 受信アンテナ、 12 受信フィルタ、 14 受信増幅部、 24 送信増幅部、 26 送信フィルタ、 28 送信アンテナ、 70 分波部、 72 中継処理部、 74 合波部、 76 後段処理部、 78 制御部、 100 中継装置。