JP4696993B2 - ノズルプレート、及びこれを利用した液体噴射ヘッド、並びにノズルプレートの製造方法 - Google Patents
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Description
図10は、従来の液体噴射ヘッド1であり、図10(a)は液体噴射ヘッド1の概略縦断面図、図10(b)は液体噴射ヘッド1の概略底面図である。
また、印刷などを高速化するため、液体を一度に吐出する数を多くできるように、ノズルプレート4をできるだけ大きく形成することが要求されている。
そして、大きな1枚の単体からなるノズルプレートに多数の吐出口を形成する場合に比べて、相対的に小さな基材に少数の吐出口を形成する方が、不良品の発生率は必然的に低くなる。また、もし、製造した基材の中に不良品が発生しても、その不良品だけを他の良品の基材に交換して固定プレートに接合することもできる。したがって、大きな1枚の単体からなるノズルプレートをつくるよりも、本発明のように、相対的に小さな基材を複数つくって、これらを固定プレートで繋いだ方が、歩留まりは良くなる。
また、このように基材と固定プレートとを接合したとしても、固定プレートは、吐出口が露出するようにした開口部を有しているため、この開口部から液体を噴射できる。
また、この開口部は吐出口の周囲も露出するようになっているが、基材の開口部から露出している露出領域は撥液性を有している。このため、吐出口及びその周囲に付着した残留液体をワイピングで擦りとり易くして、吐出口から液体を正確に噴射できる。
また、基材は、固定プレートと接合される表面領域が露出領域に比べて親液性が高くなっているので、基材と固定プレートとを、確実に、しかも位置精度よく接合できる。
かくして、本発明によれば、液体噴出の高密度化と高速化を図ったとしても、生産コストを抑制することができるノズルプレートを提供できる。
第2の発明の構成によれば、開口部の口径は、基材側と反対側に向かうに従って大きくなっている。このため、固定プレートの表面と基材の表面との間に段部が形成されることがなくなり、ワイピングする際のワイピング部材が、固定プレートの表面と基材の表面との間で円滑に移動する。したがって、ワイピング部材が傷むこともなく、確実にワイピングできる。
また、固定プレートは、吐出口が露出するようにした開口部を有しているため、この開口部から液体を噴射できるが、この開口部は吐出口だけではなくその周囲も露出し、一方、基材は開口部から露出している露出領域が撥液性を有している。このため、第1の発明と同様に、吐出口及びその周囲に付着した残留液体をワイピングで擦りとり易くし、吐出口から液体を正確に噴射させることができる。
また、基材は、固定プレートと接合される表面領域が露出領域に比べて親液性が高くなっているので、基材と固定プレートとを確実に、しかも位置精度よく接合できる。
かくして、本発明によれば、液体噴出の高密度化と高速化を図ったとしても、生産コストを抑制することができるノズルプレートを利用した液体噴射ヘッドを提供することができる。
また、基材合体工程では、固定プレートの開口部から、複数の吐出口及びその周囲が露出するようにしているため、この開口部を通って吐出口から液体を噴射できる。
また、複数の基材と固定プレートとは、接着剤塗布工程で塗布した接着剤を用いて接合するが、この接着剤は、表面改質工程において親液性を高くするように改質した表面領域に塗布している。したがって、複数の基材と固定プレートとを、確実に、しかも位置精度よく接合できる。
さらに、基材合体工程において、基材と固定プレートとは、開口部から吐出口及びその周囲が露出するように接合しているが、基材合体工程より前の基材形成工程で、基材には撥液膜が形成されている。このため、開口部から露出した吐出口及びその周囲には撥液膜が形成されている。したがって、吐出口及びその周囲に付着した残留液体をワイピングで擦りとり易くし、吐出口から液体を正確に噴射させることができる。
かくして、本発明によれば、液体噴出の高密度化と高速化を図ったとしても、生産コストを抑制することができるノズルプレートの製造方法を提供することができる。
第5の発明の構成によれば、表面改質工程では、基材の複数の吐出口及びその周囲をマスキングした後にプラズマ処理している。このため、例えばウエットエッチングのようにマスキングした領域にエチング液が進入する恐れがなく、マスキングした複数の吐出口及びその周囲に形成されている撥液膜にダメージを与えることがない。
さらに、このプラズマ処理は大気圧近傍下で行なっているため、チャンバー内を真空にする必要がなく、連続処理が可能であり、また、マスキングも簡易な方法で済む。したがって、製造を容易にしてコストダウンが図れると共に、生産性も向上できる。
第6の発明の構成によれば、表面改質工程では、前記基材の前記複数の吐出口及びその周囲をマスキングした後に、前記基材に対して、紫外線を照射している。このため、例えばウエットエッチングのようにマスキングした領域にエチング液が進入する恐れがなく、マスキングした複数の吐出口及びその周囲に形成されている撥液膜にダメージを与えることがない。
さらに、表面改質方法を紫外線照射の方法にすると、マスキングが簡易な方法で済み、また、紫外線照射用のランプをスキャン或いは複数並べて一括処理することもできる。したがって、製造を容易にしてコストダウンが図れると共に、生産性も向上できる。
なお、理解の便宜のため、図1では液体噴射装置10の所定の内部のみを図示し、図2では図3のケース22等の部分を取り除いて図示している。
液体噴射装置10は、図1に示されるように、筐体12内に取り付けられたガイドレール14に支持されているキャリッジ16と、このキャリッジ16の下部(底面側)に設けられた液体噴射ヘッド20をクリーニングするためのメンテナンス装置18とを有している。
本実施形態のノズルプレート30は、図2および図3に示すように、液体を噴出する複数の吐出口32,32,・・・が形成されている複数の板状の基材34,34,・・・どうしを、1枚の固定プレート36で繋ぐように固定している。なお、図2では、作図の関係上、吐出口32を大きくかつ数を少なく図示しているが、実際の吐出口32は直径数十μm程度の多数の貫通孔からなっている。
このノズルプレート30については、後で詳細に説明する。
そして、圧力室25bを封止するようにした振動板29には、島部21を介して、固定板23に一端側が固定された圧電素子24が接続されており、この圧電素子24の他端側を励振させることで、島部21を圧力室25b側に押したり引っ張ったりして、圧力室25b内の圧力を変動させて、インクを吐出させている。
すなわち、例えば薄手のステンレス板(本実施形態ではSUS316)を用いた複数の基材34を用意し、これら複数の基材34,34,・・・の主面が同一面となるように配列されている。なお、複数の基材34,34,・・・のそれぞれには、図2および図3に示すように、流路ユニット26及び圧電素子24が設けられており、各基材34の圧電素子24は、固定板23で固定されている。
なお、固定プレート36は、基材34と同様にステンレス板で形成されており、図4に示すように、ワイピング部材19で吐出口32及びその周囲の残存液体を上手く擦りとることができるように、厚みD1は極力薄く形成するようになっており、本実施形態の厚みD1は0.1mm程度とされている。
そして、固定プレート36は、各基材34の吐出口32及びその周囲に対応する位置に貫通孔が形成されており、これにより、複数の基材34,・・・と接合された際、吐出口32及びその周囲が紙等の液体吐出対象物側に露出する開口部38,38,・・・が形成されている。なお、本実施形態の開口部38は略矩形状の貫通孔からなっている。
この際、上述のように生産コストを安価にするため、本実施形態では、浸漬法により各基材34の表面全体に均一に撥液膜40を付着させている。このため、基材34の固定プレート36と接合される表面領域34aについては、この撥液膜40の表面を改質するようにしている。
図5はノズルプレート30の製造工程を示し、図6は図5の製造工程のST1〜ST4に対応し、図7は図5の製造工程のST5〜ST7に対応した図である。
本実施形態のノズルプレート30は、まず、図5のST1及びST2に示されるように、基材形成工程を行なう。
具体的には、図6(c)に示すように、基材34の液体吐出対象物側の主面に、例えば、ラミネータ等の着脱可能な簡易フィルムからなるマスク部材44を、複数の吐出口32及びその周囲を覆うように貼付する(図5ST3:マスキング)。このマスク部材44で覆われた領域が、後に、図2に示すように、固定プレート36の開口部38から吐出口32及びその周囲が露出する露出領域になる。
その後、図7(e)に示すように、基材34の主面(液体吐出対象物側となる主面)であって複数の吐出口32,・・・及びその周囲より外側の表面領域34aを、少なくとも撥液膜40に比べて親液性を高くするように改質する(図5のST5:表面改質)。
なお、固定プレート36の液体吐出対象物側の表面は、撥液性或いは親液性のいずれかを有するように薄膜を形成してもよいが、少なくとも基材34側の主面には、親液性がある膜を形成するか、或いは膜を形成しないようにして、基材34との接合強度を高める。
また、このように基材34と固定プレート36とを接合したとしても、固定プレート36は、吐出口32が露出するようにした開口部38を有しているため、この開口部38から液体を噴射できる。また、固定プレート36の開口部38から露出している吐出口32及びその周囲である露出領域に撥液性を有する薄膜が形成されているため、吐出口32及びその周囲に付着した残留液体をワイピングで擦りとり易くして、吐出口32から液体を正確に噴射できる。また、基材34は、固定プレート36と接合される表面領域が露出領域に比べて親液性が高くなっているので、基材34と固定プレート36とを確実に、しかも位置精度よく接合できる。
なお、このノズルプレートの製造方法の変形例については、図5の工程とその流れ自体は略同様であるため、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この変形例に係る製造方法が図1ないし図7で説明した製造方法と主に相違するは、大気圧プラズマ処理の代わりに、UV照射処理をしている点である。
具体的には、図8のチャンバー55内を、湿気が残らないようにN2雰囲気にして、基材34の表面領域34aの上方に配置された光照射部57から、紫外線Lを照射する。この光照射部57からは波長200nm以下の紫外線Lを照射し、本変形例の場合、172nmの波長の紫外線Lを発生させている。
また、本変形例の光照射部57は、ステージ42が図8の矢印SCの方向に移動することで、基材34の液体吐出対象物側となる主面全体をライン処理するようになっているが、例えば、基材34の全ての表面領域34aに、一括して紫外線を照射するように、複数の光照射部57を配置してもよく、これにより表面領域34aを速く改質できる。
次いで図5のST7と同様に、基材合体工程を行なってノズルプレートを完成させるが、上述のように、基材をウエット洗浄したので、図9に示されるように、複数の吐出口32,・・・及びその周囲より外側の表面領域34aにおける撥液膜40は除去されている。このため、基材34と固定プレート36との段差は、除去された撥液膜40の厚みD2の分だけ小さくなっている。
Claims (6)
- 液体を噴出する複数の吐出口がそれぞれ同じ主面に形成されている板状の基材と、
複数の前記基材の前記主面が接合される一枚の固定プレートと
を備え、
前記一枚の固定プレートには複数の開口部が形成され、その複数の開口部の夫々に、一つの前記基材の前記複数の吐出口の全て及びその周囲が露出するようになっており、
前記基材は、前記固定プレートの開口部から露出している露出領域が撥液性を有し、前記固定プレートと接合される表面領域が前記露出領域に比べて親液性が高くなっている
ことを特徴とするノズルプレート。 - 前記開口部の口径は、前記基材側と反対側に向かうに従って大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のノズルプレート。
- 液体を噴出する複数の吐出口が形成されているノズルプレートと、前記吐出口に前記液体を供給する流路部とを備えた液体噴射ヘッドであって、
前記ノズルプレートは、
複数の吐出口がそれぞれ同じ主面に形成されている板状の基材と、複数の前記基材の前記主面が接合される一枚の固定プレートとを備えており、
前記一枚の固定プレートには複数の開口部が形成され、その複数の開口部の夫々に、一つの前記基材の前記複数の吐出口の全て及びその周囲が露出するようになっており、
前記基材は、前記固定プレートの開口部から露出している露出領域が撥液性を有し、前記固定プレートと接合される表面領域が前記露出領域に比べて親液性が高くなっている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 液体を噴出する複数の吐出口をそれぞれ同じ主面に形成した板状の基材に対して、前記主面全体に撥液膜を形成する基材形成工程と、
前記基材の前記主面であって前記複数の吐出口及びその周囲より外側の表面領域を、少なくとも前記撥液膜に比べて親液性を高くするように改質する表面改質工程と、
前記複数の基材の前記表面領域に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記複数の基材のそれぞれの前記表面領域と複数の開口部が形成された一枚の固定プレートとを、前記複数の開口部の夫々から一つの前記基材の前記複数の吐出口の全て及びその周囲が露出するようにして接合する基材合体工程と
を有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。 - 前記表面改質工程では、前記基材の前記複数の吐出口及びその周囲をマスキングした後に、前記基材に対して、大気圧近傍下でプラズマ処理して前記表面領域を改質することを特徴とする請求項4に記載のノズルプレートの製造方法。
- 前記表面改質工程では、前記基材の前記複数の吐出口及びその周囲をマスキングした後に、前記基材に対して、紫外線を照射して前記表面領域を改質することを特徴とする請求項4に記載のノズルプレートの製造方法。
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