JP4696380B2 - 移動型炉床炉への原料装入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動型炉床炉への原料装入方法にかかり、詳しくは移動型炉床炉内原料の飛散等による生産性の低下や装入原料層の表面形状が崩れることによる輻射伝熱効果の低下を防止する上で有利な移動型炉床炉の炉床上への原料装入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼は、一般に、高炉−転炉法または電気炉法によって製造されている。このうち、電気炉法は、スクラップや還元鉄を電気エネルギーによって加熱溶融し、さらに精錬することにより鋼とする方法である。この電気炉法において、原料とするスクラップは、近年、市場の変動によって価格が大きく変動するという問題があり、また、高品質化への指向によって原料性状の安定化が求められており、そのため、電気炉法においても、従来のようにスクラップのみに依存することを止め、鉄鉱石などから製造された品位の高い還元鉄を使用する傾向がある。
【0003】
還元鉄は一般に、粉鉱石を塊状化(ペレット)し、これを還元することにより生産されている。そして、その還元方法としては、種々のプロセスについての提案があり、例えば特開昭63−108188号公報では回転炉床炉法を開示している。この従来技術は、鉄(粉)鉱石に炭材を混合して成形したペレットを移動炉床上に装入堆積させ、その炉床の上方に設置したバーナによる輻射伝熱によって加熱して粉鉱石を還元し、ペレット状の還元鉄とする方法である。このようにして得られたペレット状の還元鉄は、金属鉄脈石(鉱石起因のもの)と灰分(炭材起因のもの)とが凝集した構造となっている。
【0004】
ところが、近年は、脈石分の少ない高品位の鉄鉱石が年々減少しているのが実情であり、そのために粉砕や選鉱などの処理によって、脈石の除去を行うことで品位の向上を図っている。しかしながら、高品位の粉鉱石が入手しにくいという現状は変わっておらず、そのために、製品(ペレット状の還元鉄)の品位の低下を招いていた。その結果、そのような還元鉄を電気炉などで使用しようとすると、脈石分を滓化するための造滓剤の増加を招くだけでなく、電力原単位の上昇を招いていた。
【0005】
こうした現状の中にあって、最近、特開平11−172312号公報では、移動型炉床炉の炉床上に、粉状鉄鉱石などの酸化物を装入堆積させてこれを輻射伝熱を利用して加熱し、還元し、溶融する技術が提案されている(図1)。この従来技術は、還元生成物を溶融状態を経て製造するため、溶融時に脈石分がスラグとして分離しやすいという特徴がある。従って、この技術によれば、電気炉用原料として還元鉄を使用する場合に、造滓剤の添加量を少なくして、エネルギー原単位が抑制できるという効果がある。
【0006】
上記移動型炉床炉の操業では、原料への加熱は、炉床の上辺部に設けたバーナの燃焼による輻射伝熱を利用している。従って、この炉の場合、伝熱の効率を上げるには、炉床上の原料の受熱面積を大きくとることが有効になる。こうした要請に応える方法として、特開平10−306304号公報には、炉床上の堆積原料層の表面に、多数の窪みを設けて凹凸形状とする技術を提案している。即ち、この技術は、堆積原料層の表面を受熱、伝熱効果の上から、適宜の形状(窪み形状)に形成する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上掲の特開平10−306304号公報に開示の技術は、上述したように、堆積原料層への輻射伝熱、熱伝導の改善に対し、大いに効果を上げたが、なお不十分であった。その理由は、粉粒状原料を移動型炉床炉の炉床上へ堆積させる場合に、その堆積形状を初期の形のまま永く維持しようとしても、当該粉粒原料が自ら流動して、必ずしも狙いどおりの形状にはならない場合があったからである。
【0008】
本発明の目的は、炉床上へ粉粒状原料を装入堆積させるにあたり、堆積原料層の表面形状を、所望の形に容易にかつ確実に形成、維持するのに有効な、移動型炉床炉への原料装入方法を提案することにある。
【0009】
【発明が解決するための手段】
移動型炉床炉の操業では、粉粒状原料を加熱し、還元し、そして溶融するが、この時もし、粉粒状原料の中に不適切な量の水分が含まれていると、例えば、その量が多いときには、その余分な水分を蒸発させるために、それだけ余計な熱供給を行う必要が生じる。この点において、粉粒状原料の水分はむしろ、低いほど好ましいと言える。このことに対応して、一つの解決手段として、粉粒状原料を予め乾燥して使用するという方法も考えられる。
【0010】
ただし、粉粒状原料をもし、乾燥処理して使用した場合、発明者らの知見によると、炉床上における堆積層表面の形が操作しにくいことがわかった。また、乾燥された粉粒状原料の使用は、微細なものが移動炉床上へ装入されたときに粉塵として舞い上がり、炉内の炉床外の部分に堆積してしまうことがある。さらに、炉内においては、移動炉床の上部をバーナーの燃焼ガスが流通しているが、微細な粉粒状原料がこの燃焼ガスに随伴して排ガスダストとして排出されることもあった。
【0011】
こうした現象は、発明者らが行った実験によれば、粉粒状原料の種類、すなわち粉鉱石、製鉄ダスト、スラジなどといった種類にもよるが、主として粉粒状原料の含有水分値の適否によることがわかった。
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいて案出したものであって、その要旨とするところは、炉内を移動する炉床上に、粉粒状の含金属原料を堆積させると共に、その堆積層の表面に多数の窪みを設けて凹凸表面としてなる堆積原料層を形成し、その堆積原料が炉内を移動する間に加熱し、還元し、溶融し、さらに冷却することによって還元鉄を生成させてこれを回収する移動型炉床炉の操業において、移動炉床上への前記原料の装入に当り、該原料の水分量を3〜15mass%に調整して、堆積原料層表面の前記窪み形状の保持を図ることを特徴とする移動型炉床炉への原料装入方法である。
【0013】
なお、本発明においては、上記原料の少なくともその一部に高炉の乾式集塵ダストを用いることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明方法の実施に用いるのに好適な移動型炉床炉は、金属含有物と固体還元剤とを含む原料等を、この移動型炉床炉の水平移動する炉床上に装入して堆積させ、その炉床が炉内を移動する間に加熱還元し、さらには少なくとも一度は溶融させることにより、金属含有物の還元物(還元生成物)を生成させると同時に、この還元生成物中のメタル分と、脈石および灰分からなるスラグとを分離して還元金属を製造するための炉である。本発明はまた、生成した還元金属が適当な大きさになるようにすることで、排出や、その後のハンドリングを容易にすることのできる方法である。
【0015】
図1は、本発明方法を適用して用いる回転炉床方式の移動型炉床炉を示すものである。図1に示すように、この炉は、原料の供給側から排出側に向って、予熱帯10a、還元帯10b、溶融帯10cおよび冷却帯10dに区画された環状の炉体10を有し、その炉体10内には、環状の移動炉床11が回転移動するように配設してある。その回転する移動炉床11上には、例えば鉄鉱石と固体還元剤との混合物からなる原料12が装入される。なお、前記移動炉床11は、表面に耐火物が施工してあるが、たとえば粒状耐火物を堆積させたようなものであってもよい。そして、この炉体10の上辺部にはバーナ13を配設し、このバーナ13を燃焼熱源として、その輻射伝熱を利用することにより、移動炉床11上に堆積させた鉄鉱石等の金属含有酸化物を還元剤介在の下に加熱還元して還元鉄等の還元生成物を得る。なお、この図において、符号14は、原料を移動炉床11上へ装入するための装入装置、符号15は、還元生成物を排出するための排出装置である。
【0016】
この移動型炉床炉の操業において、本発明では、粉粒状原料の装入に当り、移動炉床上への堆積原料層表面の形(窪みによる凹凸形状)を良好に維持するために、該装入原料の水分を3〜15mass%に調整することが必要である。その理由につき、以下に詳しく説明する。
【0017】
本発明では、移動炉床11上に堆積させた原料12層の表面を、図2に示すような、多数の窪み16を設けて凹凸形状にすることが望まれる。しかも、その凹凸形状が、還元生成物の排出時まできれいな形で維持できるようにすることが好ましい。そこで、発明者らは、その原料12層表面の凹凸形状と原料の水分との関係を調査した。
【0018】
この調査では、所定の受台上に種々の原料を堆積させた後に上方から突起を押し付けて原料層表面に窪みを形成し、このときの窪みの形状を観察することで、原料層表面の形状安定性を評価する実験を行った。
【0019】
即ち、この実験は、図3(a)に示すような受台17(1000mm×1000mm)に原料12を敷き詰めて堆積させ、この堆積原料層に上方から突起18を有する押板19を押し付けて、該原料12層の表面に所定の窪み16を形成し、その押板19を上方に退避させた後の原料12層表面の窪み16の形状を観察するものである。この実験において、前記押板19には、100mm径の円筒形の突起18が多数個設けられている。これらの互いに隣接する突起18間の距離は100mmであり、千鳥配置で設けられている。そして、前記受台17上に、まず、粒径10mm以下のコークスを50mm厚みに平坦に敷き詰め、その後、その上に所定の粉粒状の鉄鉱石を25mmの厚みで敷き詰めて原料層とした。次いで、図3(b)に示すように、前記押板19の突起18面を原料層12の表面から30mmの深さまで押し込んだ。その後、押板19を外して、図3(c)に示すような、窪み16を形成した。この窪み16の形状を観察した。
【0020】
図4は、このようにして形成した窪み16の形状を模式的に示したものである。いわゆる十分に乾燥(0.1mass%)した粉粒状原料を装入堆積させた場合、図4(a)に示すように、突起板を外した時点で窪みの周囲の粉粒状原料12が窪み16内に崩れて窪みの形態が判然としない状態になった。一方、粉粒状原料12中の水分を調整して適当な水分値(5mass%)としたものでは、図4(b)に示すように、押板19を外した後も突起18の形状を正確に写し取った窪み16をそのまま維持することができた。この場合、図4(c)に示すように、窪み16の周囲の原料が若干崩れる場合もあった。これは、押板19を押し付けるときと外すときに、該押板19を垂直に上げ下げするものの、横方向への若干のずれを避けることができないから生じたものと思われる。しかしながら、このような窪み16の周辺部が一部崩れる程度なら、窪み16の底面(平坦面)が上方から見て確認できる程度の状態であれば、堆積原料層の表面積を十分に確保できるので、とくに問題はないと判断した。
【0021】
上記原料装入実験の結果を表1に示す。
【表1】
【0022】
表1中の評価欄の“可”と“不可”は、押板19を外したときの窪み16の形状から判断したものである。即ち、窪み16の底面の平坦面が一部でも観察されたものは、「可」、周囲の粉粒状原料が崩れて窪みの底面の平坦分が見えない状況の場合を「不可」とした。水分値は、粉粒状原料中の水分のmass%を示している。
【0023】
表1に示すとおり、原料として高炉の乾式集塵ダストを堆積させた場合、水分が3mass%を下回ると流動性が非常に良くなり、押板19を押し付けて外す操作を行うと、窪み16の内壁が崩れて、円形の窪みの中心にまで流れ込む現象がおき、窪み16の底面である平坦面が見えない状態になった。
【0024】
次に、粉粒状原料として、ペレットフィードの粉原料(150μm以下)を使用して同様の実験を行ったところ、完全に乾燥したものではやはり不可という評価となった。また、水分2mass%程度の条件では、水分による粉鉱石どうしの付着力があるため、窪み16の底面の平坦面が一部見られる程度になった。しかし、このペレットフィードの場合、水分を15mass%を超える程度まで増加していくと、スラリーに近い性状となり、押板19を外したときに、窪み16の周囲の原料の壁が崩れて窪みの底面の平坦面が隠れる程度まで崩れる場合があったため、これを不可と判定した。
【0025】
以上の理由から、堆積原料層の望ましい表面形状を永く維持するためには、装入する原料の水分は3〜15mass%、また、窪み16の底面の平坦面が50%以上残るようにするためには、装入する原料の水分が5〜12mass%程度とすると、より望ましいことがわかった。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のように水分調整した原料を用いることで、
移動型炉床上に堆積させた粉粒状原料層表面の形状を所望の形に制御することができるようになり、ひいては窪み形状をいつまでも望ましい形のまま保持できるから、粉粒状原料への輻射伝熱を向上させることができる。
しかも、原料の水分を調整することにより、高炉の乾式集塵ダストのような微細で乾燥した流動性の高い原料を用いた場合であっても、堆積初期の原料層表面形状を確実に維持することができると共に、粉塵飛散の防止効果通じて生産性の向上を図ることができる。その上、本発明によれば、原料中の適正な水分量が明確となるため、必要以上に水分を添加して移動型炉床炉への入熱量が増加するようなことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 移動型炉床炉の概念図
【図2】 原料層の断面図
【図3】 原料装入実験方法の説明図
【図4】 原料装入実験結果の説明図
【符号の説明】
10 ・・・移動型炉床炉
10a・・・予熱帯
10b・・・還元帯
10c・・・溶融帯
10d・・・冷却帯
11 ・・・移動炉床
12 ・・・原料(層)
13 ・・・バーナー
14 ・・・装入装置
15 ・・・排出装置
16 ・・・窪み
Claims (2)
- 炉内を移動する炉床上に、粉粒状の含金属原料を堆積させると共に、その堆積層の表面に突起を押し付けて多数の窪みを設けて凹凸表面としてなる堆積原料層を形成し、その堆積原料が炉内を移動する間に加熱し、還元し、溶融し、さらに冷却することによって還元鉄を生成させてこれを回収する移動型炉床炉の操業において、移動炉床上への前記原料の装入に当り、該原料の水分量を3〜15mass%に調整して、堆積原料層表面の前記窪み形状の保持を図ることを特徴とする移動型炉床炉への原料装入方法。
- 上記原料として、高炉の乾式集塵ダストを用いることを特徴とする請求項1に記載の原料装入方法。
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