本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
1.ガスの乱流とは、ガスの流れに渦が発生し、その渦が不規則に変化する状態をいう。ガスの乱流においては、渦の位置、向き、形状または大きさなどが一定せずに不規則に変化しあるいはゆらいでいる。
2.常圧および準常圧領域とは、常圧領域と準常圧領域とを合わせたものをいう。常圧領域は、88000〜115000Pa(660〜860Torr)程度の圧力である。準常圧領域は、20000〜88000Pa(150〜660Torr)程度の圧力である準常圧減圧領域と、115000Pa〜180000Pa(860〜1350Torr)程度の圧力である準常圧加圧領域とからなる。従って、常圧および準常圧領域は、20000〜180000Pa(150〜1350Torr、0.2〜1.8気圧)程度の圧力に対応する。
3.非晶質膜とは、原子の配列に秩序性がないアモルファス状態の膜、種々の結晶方位をもつ結晶粒が結晶粒界を境として集合した多結晶膜、およびアモルファスと多結晶の間の微結晶構造を有する微結晶膜を含む。
4.シリコンゲルマニウム等物質名を言う場合、特にその旨記載した場合を除き、表示された物質のみを示すものではなく、示された物質(元素,原子群,分子,化合物等)を主要な成分,組成成分とするまたは、主要な成分とするものを含むものとする。従って、ガス成分等についても、表示されたもののほか、添加ガス,キャリアガス,希釈ガス,副次的な効果を目的として添加された補助成分ガス等の各種添加又は複合成分を排除しないものとする。
5.本願において半導体装置というときは、特に単結晶シリコン基板上に作られるものだけでなく、特にそうでない旨が明示された場合を除き、SOI(Silicon On Insulator)基板、SOS(Silicon On Sapphire)基板あるいはTFT(Thin Film Transistor)液晶製造用基板などといった他の基板上に作られるものを含むものとする。
6.半導体基板とは、半導体集積回路の製造に用いるシリコンその他の半導体単結晶基板(一般にほぼ円板形、半導体ウエハ)、サファイア基板、ガラス基板、その他の絶縁、反絶縁または半導体基板等並びにそれらの複合的基板を言う。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の半導体装置の製造工程で用いられる半導体製造装置の概念的な構造を示す一部切欠き正面図である。図2は、図1の半導体製造装置の一部切欠き上面図である。なお、図1においては、切欠き部分は概念的な断面が示されている。
図1および図2に示される半導体製造装置1は、半導体基板上にシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜を形成する工程で使用される成膜装置であり、例えばバッチ式のCVD装置である。なお、理解を簡単にするために、処理室2およびその内部以外の半導体装置1の構造については、図示および詳しい説明を省略する。
半導体製造装置1は、反応室または処理室2と、処理室2内に配置されたサセプタ3と、サセプタ3を支持するサセプタ支持台4と、サセプタ3の下方に配置され、コイルカバー5内に収容された高周波コイル6と、種々のガスを処理室2内に導入するためのガスノズル7と、処理室2内からガスを排気するためのガス排気口8とを備えている。
処理室2は気密が可能な反応室であり、ベースプレート9と、ベースプレート9にOリングなどを介して気密可能に接続されたベルジャ10と、ベルジャパージ部11とを有している。ベルジャ10は、内壁(内部)側の石英ベルジャ10aと、外壁(外部)側のステンレス製ベルジャ10bとからなり、ステンレス製ベルジャ10bには処理室2内を観察可能とする覗窓10cが設けられている。
ベースプレート9とベルジャ10に囲まれた空間である処理室2内で、サセプタ3はサセプタ支持台4に支持され、かつ処理室2内でサセプタ回転方向3aに回転可能に構成されている。サセプタ3は、例えばカーボンなどからなり、その表面が例えば炭化ケイ素(SiC)などによってコーティングされている。また、サセプタ3上には、複数の半導体ウエハ(半導体基板)12が配置できるように構成されている。
コイルカバー5内に収容された高周波コイル6は、処理室2外部の図示しない高周波電源に接続され、高周波電源から高周波コイル6に高周波電圧または高周波電力を印加または供給できるように構成されている。高周波コイル6に高周波電力を供給すると、内部がカーボンなどからなるサセプタ3には誘導電流が発生し、サセプタ3の温度を例えば1200℃程度まで上昇させることができる。これにより、サセプタ3上に配置された半導体ウエハ12を所望の温度に加熱(RF加熱方式)することができる。
ガスノズル7は、図示しないガス導入手段に接続され、ガスノズル7から所望のガスが所望の流量で処理室2内に導入できるように構成されている。ガス排気口8は、図示しないガス排気管に接続され、ガスノズル7から処理室2内に導入されたガスを排気できるように構成されている。また、図2では、ガス排気口8は1つしか示されていないが、図示されたガス排気口8と対称の位置(処理室2端部)にもガス排気口8が形成されている。ガス排気口8の数は、必要に応じて増減することもできる。
本実施の形態では、ガスノズル7は、サセプタ3の略中央から上方に突出するように配置され、サセプタ3上に配置された複数の半導体ウエハ12の上方において、ガスを処理室2内に導入するように構成されている。
図3は、ガスノズル7の先端付近の構造を概念的に示す側面図であり、図4はその上面図である。ガスノズル7は、丸みを帯びたその先端付近において、複数の孔7aが形成されており、各孔7aから所定のガスが処理室2内に放出または導入される。各孔7aは例えば4mmの直径を有し、例えば9個の孔7aが、ガスノズル7の先端の曲面の種々の位置に形成されている。このため、孔7aは種々の方向を向いており、ガスノズル7の孔7aを介して、処理室2の内部から処理室2の内壁に向かう複数の方向にガスが放出される。また、ガスノズル7を処理室2内で回転できるように構成することもできる。
ガスノズル7の複数の孔7aから処理室2内に導入または放出されたガスの流れは、処理室2内で様々な方向性を有する。例えば、図1〜図4においてガス放出方向13として示されるように、ガスノズル7から孔7aを介して、水平方向(サセプタ3に平行な方向すなわち半導体ウエハ12の主面に平行な方向)、上方または垂直方向(サセプタ3に垂直な方向すなわち半導体ウエハ12の主面に垂直な方向)、および水平と垂直との中間の任意の方向などにガスが放出される。ガスノズル7からガスを放出または噴出する際の、ガスノズル7の孔7aからのガスの噴出し速度は例えば25m/秒である。ガスノズル7からガスを放出する際のガス圧力(ガス供給圧力)は例えば約200000Pa(約2kgf/cm2)であり、ガス流量は例えば170slm(standard liters per minute)である。また、ガスノズル7の孔7aから処理室2内に放出されたガスは、処理室2の内壁などに衝突する。このため、処理室2内に導入されたガスの流れは層流とはならずに、乱流が発生する。図1および図2においては、処理室2内での平均流または代表的なガスの流れ13aが矢印で模式的に示されているが、乱流により処理室2内のガスの流れには渦(渦流)が生じ、この渦は不規則に変化する。乱流が生じ、半導体ウエハ12の上方において流れに渦が生じたガスは、処理室2内で強制的に対流させられる。また、処理室2内のガスの流れの渦は、一定せずに不規則に変化する。このため、処理室2内のガスは均質化される。これにより、サセプタ3上に配置された複数の半導体ウエハ12上でガス成分が均一または均質に滞在できる。従って、半導体ウエハ12上にCVD法などで形成されたシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜の膜質および膜厚を、半導体ウエハ12間および半導体ウエハ12面内で均一にすることができる。反応に寄与しなかったガスは、ガス排気口8から処理室2の外部に排出される。なお、この実施の形態の場合はガスノズル7から複数方向にガスが放出されているが、一方向、たとえば上方または垂直方向の一方向のみでもよい。
次に、本実施の形態の半導体装置、例えばMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、の製造工程を、図面を参照して説明する。図5〜図9は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
まず、例えばシリコン基板からなる複数の半導体ウエハ(半導体基板)12を準備する。半導体ウエハ12としては、例えばシリコン単結晶の(100)4度off基板、すなわちシリコンの(100)面から4度傾いた主面を有する単結晶シリコン基板(シリコンウエハ)を用いることができる。
次に、半導体ウエハ12を半導体装置1に搬入し、サセプタ3上に半導体ウエハ12を配置する。それから、半導体製造装置1の高周波コイル6に高周波電源から高周波電力を印加または供給する。これにより、サセプタ3が誘導電流によって加熱され、それによって半導体ウエハ12が所定の温度に加熱される。そして、処理室2内にガスノズル7から、成膜用のガスを導入する。すなわち、キャリアガスとして例えば水素ガス(H2)、シリコンソースガスとして例えばモノシラン(SiH4)ガス、P型ドーピングガスとして例えばH2で希釈された30ppm濃度のジボラン(B2H6)ガス、およびゲルマニウムソースガスとして例えばH2で希釈された1%濃度のモノゲルマン(GeH4)ガスが、処理室2内に導入される。処理室2に導入されたガスが反応して半導体ウエハ12上に堆積することにより、各半導体ウエハ12上にシリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)21がエピタキシャル成長する。この際、処理室2内の圧力は、常圧および準常圧領域の圧力とすることが好ましく、常圧領域の圧力であればより好ましい。すなわち、シリコンゲルマニウム膜の成膜工程における処理室2内の圧力は、20000〜180000Pa(150〜1350Torr)の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは60000〜140000Pa(450〜1050Torr)、更に好ましくは88000〜115000Pa(660〜860Torr)である。これにより、上記したように、処理室2内でガスノズル7から放出された水素ガス(H2)、モノシラン(SiH4)ガス、ジボラン(B2H6)ガスおよびモノゲルマン(GeH4)ガスは、処理室2内で乱流を発生することができ、シリコンゲルマニウム膜21の膜質および膜厚を均一にすることが可能となる。
また、上記のように本実施の形態では処理室2内の圧力が、MBE装置(成膜時の処理室内の圧力は10−4〜10−3Pa程度の超高真空領域)、UHV−CVD装置(成膜時の処理室内の圧力は0.1Pa程度の高真空領域)および減圧CVD装置(成膜時の処理室内の圧力は10〜1000Pa程度の減圧領域)などの場合と比較して高いので、シリコンゲルマニウム膜21の成長速度または成膜速度を、MBE装置、UHV−CVD装置および減圧CVD装置などを用いた場合よりも高めることができる。また、処理室2内の圧力が、常圧および準常圧領域の範囲内で外気の圧力より小さければ、Oリングなどを介したベースプレート9とベルジャ10の結合をより強固にすることもできる。
なお、シリコンソースガスとしては、モノシラン(SiH4)ガスだけでなく、それ以外のシリコンソース、例えばジシラン(Si2H6)ガスを用いてもよい。また、Cl元素を含んだジクロロルシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロルシラン(SiHCl3)ガスまたは四塩化ケイ素(SiCl4)ガスなどをシリコンソースガスとして用いることもできる。また、このようなガスにHClガスを添加してもよい。これにより、シリコンゲルマニウム膜21の成長速度の向上や、異物低減などの品質向上を図ることができる。また、ゲルマニウムソースガスとして、GeH4ガスの代わりに、四塩化ゲルマニウム(GeCl4)ガスまたはGe2H6ガスなどを用いてもよい。また、P型ドーピングガス、例えばB2H6ガスを用いることによりP型のシリコンゲルマニウム膜21を形成したが、P型ドーピングガスの代わりにN型ドーピングガス、例えばホスフィン(PH3)ガスを用いることもできる。これにより、半導体ウエハ12上にN型のシリコンゲルマニウム膜を形成することが可能となる。
その後、処理室2内へのモノゲルマンガスの導入を停止し、処理室2内にガスノズル7から導入するガスを、キャリアガスとしての水素ガス(H2)、シリコンソースガスとしてのモノシラン(SiH4)ガスおよびP型ドーピングガスとしてのB2H6ガスとする。これにより、シリコンゲルマニウム膜21の成長は終了し、シリコンゲルマニウム膜21上にシリコン膜(歪シリコン膜)22がエピタキシャル成長する。この際、シリコンゲルマニウムとシリコンの格子定数の違いにより、シリコンゲルマニウム膜21上には、通常のシリコン結晶の格子定数より大きな格子定数を有するシリコン膜22、いわゆる歪シリコン膜22が形成される。歪シリコン膜22では、通常のシリコン膜と比較して、電子の移動度が向上(増大)する。このため、後述するように歪シリコン膜22に形成されたMISFETでは、ソース・ドレイン間を移動する電子の移動度が向上し、半導体装置を高速化することが可能となる。
このようにして各半導体ウエハ12上にシリコンゲルマニウム膜21および歪シリコン膜22がエピタキシャル成長され、図5の構造が得られる。
半導体ウエハ12が半導体装置1から取り出された後、半導体ウエハ12のそれぞれにおいて半導体素子が形成される。ここでは、1枚の半導体ウエハ12に半導体素子を形成する工程について説明するが、他の半導体ウエハ12についても同様にして半導体素子を形成することができる。
図6には図示してはいないが半導体ウエハ12の主面にウェル領域を形成するための不純物イオン注入を必要に応じて行う。例えばホウ素(B)などの不純物を注入すればP型のウェル領域が形成でき、リン(P)などの不純物を注入すればN型のウェル領域が形成できる。また、ホトレジストをマスクとすることにより、所望の領域のみに不純物を注入できる。
次に、図6に示されるように、シリコンゲルマニウム膜21および歪シリコン膜22が形成された半導体ウエハ(いわゆるSiGeエピタキシャルウエハ)12の主面に、酸化シリコンなどからなる素子分離領域23が形成される。素子分離領域23は、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silicon )法などによって形成することができる。また、素子分離領域23は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、半導体ウエハ12の主面に形成した溝に酸化シリコン膜を埋め込むことにより形成してもよい。
それから、半導体ウエハ12の表面(すなわち歪シリコン膜22の表面)にゲート絶縁膜24が形成される。ゲート絶縁膜24は、例えば薄いシリコン酸化膜などからなり、半導体ウエハ12を熱酸化することなどによって形成することができる。
次に、図7に示されるように、半導体ウエハ12上に、シリコンゲルマニウム膜25が形成される。シリコンゲルマニウム膜25は、半導体製造装置1を用いてシリコンゲルマニウム膜21とほぼ同様にして形成することができる。下地のゲート絶縁膜24はシリコン酸化膜からなり、ゲート絶縁膜24上に形成されるシリコンゲルマニウム膜25は多結晶シリコンゲルマニウム膜からなる。また、半導体製造装置1を用いて、微結晶シリコンゲルマニウム膜またはアモルファスシリコンゲルマニウム膜からなるシリコンゲルマニウム膜25を形成してもよい。すなわち、シリコンゲルマニウム膜25は非晶質のシリコンゲルマニウム膜から構成され得る。シリコンゲルマニウム膜25の成膜工程では、シリコンゲルマニウム膜21の成膜工程と同様のガスを用いることができる。この場合はシリコンゲルマニウム膜25中には、リンをドープしている。
次に、シリコンゲルマニウム膜25上に、タングステンシリサイド(WSi2)膜26を形成する。それから、図8に示されるように、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、シリコンゲルマニウム膜25およびタングステンシリサイド膜26をパターン化することにより、シリコンゲルマニウム膜25とタングステンシリサイド膜26とからなるゲート電極27を形成する。WSi2の代わりにTiSi2あるいはCoSi2を用いてもよい。
次に、ゲート電極27の両側の領域に例えばリン(P)などの不純物をイオン注入することにより、n型半導体領域(ソース、ドレイン)28が形成される。
これにより、nチャネル型のMISFET29が形成される。MISFET29のチャネル領域は、歪シリコン膜22内に形成されるので、MISFET29のソース・ドレイン(n型半導体領域28)間を移動する電子の移動度が向上し、MISFET29の動作を高速化することができる。
次に、図9に示されるように、半導体ウエハ12の主面上に層間膜絶縁膜30が形成される。層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン膜をCVD法にて堆積することによって形成することができる。それから、層間絶縁膜30上に形成した図示しないフォトレジストパターンをマスクにして層間絶縁膜30をドライエッチングすることにより、n型半導体領域28やゲート電極27の上部にスルーホールまたはコンタクトホール31を形成する。その後、コンタクトホール31を埋めるプラグ32が、例えば窒化チタン膜およびタングステン膜によって形成される。
次に、層間絶縁膜30上にバリア膜やアルミ合金膜などを堆積し、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、パターン化することにより配線(第1層配線)33を形成する。それから、層間絶縁膜30上に、配線33を覆うように、層間絶縁膜34が形成される。
その後、図示および詳しい説明は省略するが、層間絶縁膜34に配線33の一部を露出するビア又はスルーホールが形成され、プラグ32や配線33と同様にして、スルーホールを埋めるプラグや、プラグを介して配線33に電気的に接続する上層配線などが形成され、必要に応じてダイシングされて半導体デバイスチップに分割され、本実施の形態の半導体装置が製造される。なお、配線層数などは、設計に応じて適宜変更することができる。
本実施の形態によれば、常圧および準常圧領域の圧力でシリコンゲルマニウム膜21およびシリコンゲルマニウム膜25を形成するので、成膜速度を高めることができる。また、バッチ式の半導体製造装置1を用いることにより、一度に複数の半導体ウエハ12上にシリコンゲルマニウム膜21やシリコンゲルマニウム膜25を形成できる。このため、半導体装置の製造時間を短縮できる。半導体装置の製造コストも低減できる。
また、半導体製造装置1の処理室2内に乱流を生じさせ、処理室2内のガスを強制的に対流させてシリコンゲルマニウム膜21およびシリコンゲルマニウム膜25を形成するので、各半導体ウエハ12間でシリコンゲルマニウム膜21およびシリコンゲルマニウム膜25の膜質および膜厚を均一にすることができる。また、半導体ウエハ12の面内でシリコンゲルマニウム膜21およびシリコンゲルマニウム膜25の膜質および膜厚を均一にすることができる。このため、半導体装置の信頼性を向上することができる。また、半導体装置の製造歩留まりを改善できる。
また、処理室2内の圧力を外気より低い圧力にしない場合には、ガス排気口8を真空ポンプなどに接続する必要がない。このため、半導体製造装置1に真空排気設備が不要となり、小型化できる。また、半導体装置の製造コストを低減できる。
また、常圧および準常圧領域の範囲内で処理室2内の圧力を外気より低い圧力にする場合でも、処理室2内の圧力は、MBE装置、UHV−CVD装置および減圧CVD装置などと比較して高いので、MBE装置、UHV−CVD装置あるいは減圧CVD装置で使用されるような高排気量の排気設備は不要である。
また、常圧および準常圧領域の範囲内で処理室2内の圧力を外気より高い圧力にする場合には、処理室2内へのガスの導入と処理室2からのガスの排気のバランスをとる機構を、排気側に設置すればよい。
また、本実施の形態では、nチャネル型MISFETの例を示したが、pチャネル型MISFETの場合には、リン(P)の代わりにボロン(B)をドープした多結晶のシリコンゲルマニウム膜25を、ゲート電極27の一部として用いる。ボロンをドープした多結晶のシリコンゲルマニウム膜25は、ボロンをドープした多結晶のシリコン膜に比較して、ボロンの活性化率が向上する。このため、ゲート電極27にボロンをドープした多結晶のシリコンゲルマニウム膜25を用いることで、ゲート電極27とゲート絶縁膜24との界面での空乏化を抑制することができる。他の不純物、例えば上記のようにリン(P)がシリコンゲルマニウム膜25中にドープされている場合についても、同様の効果を有する。また、シリコンゲルマニウム膜25がボロンなどがドープされた微結晶またはアモルファスのシリコンゲルマニウム膜からなる場合も、同様の効果を有する。
(実施の形態2)
図10は、本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程で用いられる半導体製造装置の説明図である。
図10に示される半導体製造装置41は、半導体基板上にシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜を形成する工程で使用される成膜装置であり、枚葉式のCVD装置である。なお、理解を簡単にするために、処理室42およびその内部以外の半導体装置41の構造については、図示および詳しい説明を省略する。
半導体製造装置41は、処理室42と、処理室42内に配置されたサセプタ43と、サセプタ43を支持するサセプタ支持部44と、サセプタ43の下方に配置され、コイルカバー45内に収容された高周波コイル46と、種々のガスを処理室42内に導入するためのガスノズル47と、処理室内からガスを排気するためのガス排気口48とを備えている。
処理室42は気密が可能な反応室であり、ベースプレート49と、ベースプレート49にOリングなどを介して気密可能に接続されたベルジャ50とを有している。なお、ベルジャ50の構成は、上記第1の実施の形態のベルジャ10とほぼ同様の構成を有しているので、詳しい図示および説明は省略する。
ベースプレート49とベルジャ50に囲まれた空間である処理室42内で、サセプタ43はサセプタ支持台44に支持され、サセプタ43上には、大口径の一枚の半導体ウエハ(半導体基板)52、例えば直径が200mm以上の半導体ウエハ52が配置できるように構成されている。サセプタ43は、例えばカーボンなどからなり、その表面が例えば炭化ケイ素(SiC)などによってコーティングされている。
コイルカバー5内に収容された高周波コイル46は、処理室42外部の図示しない高周波電源に接続され、高周波電源から高周波コイル46に高周波電圧または高周波電力を印加または供給できるように構成されている。高周波コイル46に高周波電力を供給すると、内部がカーボンなどからなるサセプタ43には誘導電流が発生する。これにより、サセプタ43上に配置された半導体ウエハ52を所望の温度に加熱することができる。
ガスノズル47は、図示しないガス導入手段に接続され、ガスノズル47から所望のガスが所望の流量で処理室42内に導入できるように構成されている。ガス排気口48は、図示しないガス排気管に接続され、ガスノズル47から処理室42内に導入されたガスを排気できるように構成されている。
ガスノズル47は処理室42の上部に設置され、サセプタ43上に配置された半導体ウエハ52の上方で、所定のガスを処理室42内に導入するように構成されている。ガスノズル47は二股に分かれ、2つの先端部を有している。ガスノズル47の2つの先端部のそれぞれにおいて、上記実施の形態1におけるガスノズル7の先端部と同様に、複数の孔(図示せず)が形成されており、各孔から所定のガスが処理室42内に放出または導入される。ガスノズル7と同様に、ガスノズル47の孔は、ガスノズル47の先端の曲面の種々の位置に形成されている。また、ガスノズルは二股に分かれていない構成、あるいは三股以上に分かれた構成にしてもよい。また、ガスノズル47を処理室42内で回転できるように構成することもできる。
このため、ガスノズル47の孔を介して、処理室42の内部から処理室42の内壁に向かう複数の方向に成膜用のガスが放出される。図10において矢印で模式的に示されるガスの流れ53から分かるように、例えば、ガスノズル47から、水平方向(サセプタ43に平行な方向すなわち半導体ウエハ52の主面に平行な方向)、上方または垂直方向(サセプタ43に垂直な方向すなわち半導体ウエハ52の主面に垂直な方向)、および水平と垂直との中間の任意の方向などにガスが放出される。ガスノズル47の孔から処理室42内に放出されたガスは、上記実施の形態1と同様に、処理室42内で乱流を生じ、半導体ウエハ52の上方においてガスの流れに渦を発生する。また、処理室42内のガスの流れの渦は、一定せずに不規則に変化する。これにより、処理室42内のガスを強制的に対流させ、半導体ウエハ52上に形成されるシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜の膜質および膜厚を、半導体ウエハ52面内で均一にすることができる。この実施の形態の場合はガスノズル47から複数方向にガスが放出されているが、一方向、たとえば上方または垂直方向の一方向のみでもよい。
半導体製造装置41を用いた半導体装置の製造工程は、半導体ウエハ52一枚ごとに半導体製造装置41を用いてシリコンゲルマニウム膜を成膜すること以外は、上記実施の形態1とほぼ同様であるので、ここではその説明を省略する。
本実施の形態によれば、枚葉式の成膜装置を用いて大口径(例えば直径200mm以上)の半導体ウエハ52上にシリコンゲルマニウム膜を成膜する場合でも、シリコンゲルマニウム膜の成膜速度を向上し、膜厚および膜質を均一にすることができる。またこのような処理室を複数有する半導体製造装置の構成も可能である。
(実施の形態3)
図11は、半導体ウエハ(半導体基板)60上にシリコンゲルマニウム膜61とシリコン膜(歪シリコン膜)62を形成した状態を概念的に示す断面図である。
シリコンゲルマニウムの格子定数は、ゲルマニウム濃度を増大すると増大する。このため、単結晶シリコンからなる半導体ウエハ60上にシリコンゲルマニウム膜61を成膜する場合、ゲルマニウム濃度が大きなシリコンゲルマニウム膜をいきなり半導体ウエハ60上にエピタキシャル成長させると、格子定数の違いにより、シリコンゲルマニウム膜が大きく歪み、シリコンゲルマニウム膜中に高密度の欠陥が生じるなどの不具合が発生する恐れがある。このため、半導体ウエハ60とシリコンゲルマニウム膜61の界面近傍ではシリコンゲルマニウム膜61中のゲルマニウム濃度を比較的小さくし、半導体ウエハ60とシリコンゲルマニウム膜61の界面で格子定数がマッチングしやすくする。そして、シリコンゲルマニウム膜61の成膜が進むにつれて例えば階段状(ステップ状)にゲルマニウム濃度を増大することで少しずつ応力を印加させ、所定のゲルマニウム濃度に到達したら、ゲルマニウム濃度が一定になるようにシリコンゲルマニウム膜61を形成する(順ステップグレーデッドプロセス)。これにより、半導体ウエハ60とシリコンゲルマニウム膜61の界面近傍に集中する欠陥の発生を抑制し、シリコンゲルマニウム膜61中の貫通転位密度を低減することができる。一方、シリコンゲルマニウム膜61上にシリコン膜(歪シリコン膜)62をエピタキシャル成長させる場合は、下地シリコンゲルマニウム膜61の格子定数に応じて、その上に形成されるシリコン膜62が歪む(通常のシリコンの格子定数より伸びる)が、歪シリコン膜62は比較的薄い(例えば40〜50nm)ため、歪シリコン膜62中に転位はほとんど生じない。
しかしながら、本発明者らの研究によれば、上記のようにシリコンゲルマニウム膜61の厚み方向のゲルマニウム濃度を半導体ウエハ60とシリコンゲルマニウム膜61との界面からシリコンゲルマニウム膜61の内部方向に向かって徐々に増大させると、シリコンゲルマニウム膜61中でストレスまたは応力が同一方向に印加され、累積された応力に起因した種々の不具合、例えばシリコンゲルマニウム膜61中の欠陥の増大や、シリコンゲルマニウム膜61および歪シリコン膜62表面の粗度の増大などが生じてしまうことが分かった。
そこで、本実施の形態においては、シリコンゲルマニウム膜61の厚み方向のゲルマニウム濃度を半導体ウエハ60とシリコンゲルマニウム膜61との界面からシリコンゲルマニウム膜61の内部方向に向かって増大させたことによる上記不具合を改善させることを検討した。
本実施の形態の半導体装置の製造方法、ここでは半導体基板上にシリコンゲルマニウム膜およびシリコン膜(歪シリコン膜)を形成する工程を説明する。
図12は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、半導体ウエハ(半導体基板)70上にシリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)71およびシリコン膜(歪シリコン膜)72が形成された状態を示している。図13は、シリコンゲルマニウム膜71およびシリコン膜72の形成工程における半導体ウエハ70の温度と成膜装置へ導入したモノゲルマン(GeH4)ガスの流量とを示すグラフである。図13のグラフの縦軸が半導体ウエハの温度およびモノゲルマン(GeH4)ガスの流量に対応する。また、図13のグラフの横軸は時間または時刻に対応するが、任意単位(arbitrary unit)であり、時間t1〜t17のそれぞれの時間間隔は均一ではないことに注意すべきである。
まず、半導体ウエハ(半導体基板)70を成膜装置に搬入する。この場合、成膜装置として上記半導体製造装置1や半導体製造装置41を用い、常圧および準常圧領域の圧力でシリコンゲルマニウム膜およびシリコン膜(歪シリコン膜)をエピタキシャル成長させれば、短時間で多数の半導体ウエハ上にシリコンゲルマニウム膜および歪シリコン膜を形成できたり、あるいは成膜速度を向上できるのでより好ましい。しかしながら、減圧CVD装置やUHV−CVD装置などの他の成膜装置を用い、真空下でシリコンゲルマニウム膜および歪シリコン膜を半導体ウエハ70上にエピタキシャル成長させることもできる。ここでは、上記半導体製造装置1を用いた場合について説明する。
半導体ウエハ70としては、例えばシリコン単結晶の(100)4度off基板、すなわちシリコンの(100)面から4度傾いた主面を有する単結晶シリコン基板を用いることができる。
半導体ウエハ70が配置された半導体製造装置1の処理室2内に、窒素(N2)ガスを例えば150slm(standard liters per minute)の流量で導入し、処理室2内の空気を充分に除去する。これにより、空気と後で導入される水素ガスとが反応するのを防止できる。なお、本実施の形態では、ガス流量は、0℃、1気圧で校正されたガス流量を示している。
それから、時間(時刻)t1で窒素ガスの導入を停止し、処理室2内にキャリアガスとしての水素(H2)ガスを例えば170slmの流量で導入する。なお、水素ガスの導入は、時間t17まで継続される。
処理室2内の窒素ガスが除去された後、時間t2で半導体製造装置1の高周波コイル6への高周波電力の印加または供給を開始する。これにより、サセプタ3が誘導電流によって加熱され、半導体ウエハ70の温度が上昇する。そして、半導体ウエハ70を1040℃で例えば10分程度(時間t3〜t4に対応)加熱する。水素雰囲気のような還元性雰囲気中で半導体ウエハ70を加熱すること(前加熱処理)により、半導体ウエハ70の表面の自然酸化膜が除去され、半導体ウエハの表面がクリーニングまたは清浄化される。
次に、時間t4〜t5にかけて半導体ウエハ70の温度を例えば980℃に低下させる。それから、時間t5〜t6にかけて(例えば1分程度)、処理室2内に上記水素ガスに加えてシリコンソースガスとしてのモノシラン(SiH4)ガスを、例えば40sccm(standard cubic centimeters per minute)の流量で導入する。これにより、半導体ウエハ70上に数nm程度のシリコン膜70aが形成され、より清浄なシリコン表面が得られる。その後、時間t6で上記モノシランガスの導入を停止し、半導体ウエハ70の温度を例えば800℃に低下させる。
次に、時間t7で上記キャリアガスとしての水素ガスに加えて、シリコンソースガスとしてのモノシラン(SiH4)ガス、P型ドーピングガスとしてのジボラン(B2H6)ガスおよびゲルマニウムソースガスとしてのモノゲルマン(GeH4)ガスを、例えばそれぞれ20sccm、60sccmおよび80sccmの流量で処理室2内に導入する。これにより、シリコンゲルマニウム膜71のエピタキシャル成長が開始されるが、ゲルマンガスの流量が比較的低いので、この段階で成膜されるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度は比較的低い。なお、モノシラン(SiH4)ガスおよびジボラン(B2H6)ガスの導入は、時間t14まで、例えば同じ流量で継続される。
それから、時間t8で処理室2内に導入しているモノゲルマンガスの流量を、例えば170sccmに増大させる。これにより、成膜されるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度がやや高くなる。
その後、時間t9、t10およびt11で、処理室2内に導入しているモノゲルマンガスの流量を、例えば420sccm、1050sccmおよび3000sccmに順次増大させる。各流量の段階において、成膜されるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度がモノゲルマンガスの流量の増大に応じて順次高くなる。
それから、時間t12で処理室2内に導入しているモノゲルマンガスの流量を例えば2100sccmに低下させる。これにより、時間t12〜t13(モノゲルマンガス流量2100sccm)で成膜されるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度が、時間t11〜t12(モノゲルマンガス流量3000sccm)で成膜されるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度よりも低くなる。
次に、時間t13で処理室2内へのモノゲルマンガスの導入を停止する(モノシランガスおよびジボランガスの導入は継続する)。これにより、シリコンゲルマニウム膜71のエピタキシャル成長が終了し、シリコン膜(歪シリコン膜)72がシリコンゲルマニウム膜71上にエピタキシャル成長する。時間t7〜t13で成膜されたシリコンゲルマニウム膜71の厚みは例えば3〜4μm程度であり、時間t13〜t14でシリコンゲルマニウム膜71上に成膜される歪シリコン膜72の厚みは例えば40〜50nm程度である。
その後、時間t14でモノシランガスおよびジボランガスの処理室2内への導入を停止して歪シリコン膜72の成膜を終了し、高周波コイル6への高周波電力の供給を停止して半導体ウエハ70の温度を例えば室温近くに低下させる。それから、時間t16で処理室2内への水素ガスの導入を停止しかつ窒素ガスを導入する。処理室2内の水素ガスが充分に除去された後、半導体製造装置1から半導体ウエハ70が取り出される。図12は、このようにして半導体ウエハ70上にシリコンゲルマニウム膜71およびシリコン膜(歪シリコン膜)72が形成された状態に対応する。取り出された半導体ウエハ70は、次の製造工程に送られ、半導体ウエハ70に半導体素子が形成される。
これ以降の半導体装置の製造工程は上記実施の形態1とほぼ同様であるので、ここではその説明は省略する。
なお、上記実施の形態では、図13のグラフに示されるようにモノゲルマンガスの流量を時間t7〜t12にかけて階段状(ステップ状)に増減させたが、図14のグラフに示されるように、モノゲルマンガスの流量を時間t7〜t12にかけて連続的に増減させることもできる。
図15は、上記実施の形態に従って形成されたシリコンゲルマニウム膜71の厚み方向のゲルマニウム濃度分布を示すグラフであり、SIMS(secondary ion mass spectroscopy)法によって分析した結果(実測値)が示されている。図15のグラフの横軸は、歪シリコン膜の表面からの深さ方向の距離(深さ)に対応し、グラフの縦軸はゲルマニウム濃度(Ge濃度)に対応する。
図15から分かるように、シリコンゲルマニウム膜71の厚み方向のゲルマニウム濃度分布は、シリコンゲルマニウム膜71の半導体ウエハ(半導体基板)70側の界面(シリコンゲルマニウム膜71と半導体ウエハ70またはシリコン膜70aとの界面)からシリコンゲルマニウム膜71の内部方向に階段状に増大しているが、シリコンゲルマニウム膜71の厚み方向の中間領域で最大値またはピークを形成した後に減少する。シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度は、成膜工程中のゲルマニウムソースガス、ここではモノゲルマン(GeH4)ガスの流量に依存する。シリコンゲルマニウム膜71の半導体ウエハ70側の界面からシリコンゲルマニウム膜71の内部方向にゲルマニウム濃度が階段状に増大している(この濃度増大領域およびその近傍を順ステップグレーデッド領域と称する)のは、上記シリコンゲルマニウム膜71の成膜工程でモノゲルマンガスの流量を80sccm、170sccm、420sccm、1050sccmおよび3000sccmに順次階段状に増大させたためである。従って、ゲルマニウム濃度が最大値またはピークとなるシリコンゲルマニウム膜71の領域は、上記シリコンゲルマニウム膜71の成膜工程でモノゲルマンガスの流量を最大(3000sccm)とした成膜段階(時間t11〜t12)に対応する。シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度がピークを形成した後、シリコンゲルマニウム膜71の歪シリコン膜72側の界面(シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面)方向に階段状に減少する(この濃度減少領域およびその近傍を逆ステップグレーデッド領域と称する)のは、上記シリコンゲルマニウム膜71の成膜工程でモノゲルマンガスの流量を3000sccmから2100sccmに低下させたためである。時間t12〜t13の間モノゲルマンガスの流量を2100sccmに維持した後、モノゲルマンガスの導入が停止されたので、シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度はピークから逆ステップグレーデッド領域で一旦減少した後は、シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面近傍までほぼ一定となる。なお、図15のグラフにおいて、歪シリコン膜72表面からの距離が数十nmの領域でゲルマニウム濃度が急速に減少した領域が、歪シリコン膜72の形成領域に対応する。
図16は、本実施の形態に従ってシリコンゲルマニウム膜71を成膜した場合のシリコンゲルマニウム膜71の厚み方向のゲルマニウム濃度分布を模式的に示すグラフであり、図15に対応する。また、図17は、図14のようにモノゲルマンガスの流量を連続的に増減させてシリコンゲルマニウム膜71を成膜した場合のシリコンゲルマニウム膜71の厚み方向のゲルマニウム濃度分布を模式的に示すグラフである。図16および図17のグラフの横軸は、歪シリコン膜72の表面からの深さ方向の距離(深さ)に対応する。図16および図17のグラフの縦軸はゲルマニウム濃度(Ge濃度)に対応する。
シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面近傍におけるシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度Y1は、5〜40%(原子%)であることが好ましく、より好ましくは10〜30%(原子%)、さらに好ましくは15〜25%(原子%)である。これにより、シリコンゲルマニウム膜71上に、電子の移動度を向上させるのに最適な格子定数を有する歪シリコン膜72を的確に形成でき、高速な半導体装置を製造することが可能となる。
シリコンゲルマニウム膜71中のゲルマニウム濃度のピーク値Y2と上記ゲルマニウム濃度Y1との差、すなわちY2−Y1は、1〜40%(原子%)であることが好ましく、より好ましくは3〜20%(原子%)、さらに好ましくは5〜10%(原子%)である。また、上記ゲルマニウム濃度Y1に対する、シリコンゲルマニウム膜71中のゲルマニウム濃度のピーク値Y2の比、すなわちY2/Y1は、1.02〜9.0であることが好ましく、より好ましくは1.1〜3.0、さらに好ましくは1.2〜1.7である。これにより、後述するように、シリコンゲルマニウム膜71中の歪、ストレスまたは応力を緩和でき、結晶欠陥を抑制したシリコンゲルマニウム膜71および歪シリコン膜72を形成することができる。このため、信頼性が高く、高性能の半導体装置を実現できる。
また、ゲルマニウム濃度を変化または増減させる領域の厚みT1は、例えば1.5〜2μm程度であり、シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度が均一な領域の厚みT2は、例えば1.5〜2μm程度である。また、階段状にゲルマニウム濃度を変化させる場合の各ステップの間隔は、例えば0.3〜0.5μm程度である。
次に、シリコンゲルマニウム膜71中の結晶欠陥を評価するために、シリコンゲルマニウム膜71の最大貫通転位密度を測定した。最大貫通転位密度は、シリコンゲルマニウム膜71および歪シリコン膜72を形成した半導体ウエハ(半導体基板)70を選択エッチングし、表面を金属顕微鏡で観察することによって求めた。その結果、本実施の形態に従って形成されたシリコンゲルマニウム膜71の最大貫通転位密度は1×104cm−2以下程度であった。
比較例として、シリコンゲルマニウム膜の成膜の初期段階からゲルマニウム濃度を階段状に増大させ、ゲルマニウム濃度が最大値に達した後は、ゲルマニウム濃度を減少させることなく一定となるようにシリコンゲルマニウム膜を成膜した場合(すなわち上記シリコンゲルマニウム膜61の場合)についても最大貫通転位密度を測定した。この比較例の場合、最大貫通転位密度は1×106cm−2程度であった。
従って、本実施の形態のように、シリコンゲルマニウム膜の成膜の初期段階からゲルマニウム濃度を階段状に増大させ、ゲルマニウム濃度が最大値に達した後、ゲルマニウム濃度が一旦減少するようにシリコンゲルマニウム膜71を成膜することにより、最大貫通転位密度を小さくすることができる。このため、シリコンゲルマニウム膜71やその上に形成される歪シリコン膜72の欠陥密度を低減することが可能となる。これにより、半導体装置の信頼性を向上できる。また、半導体装置の製造歩留まりも向上できる。
上記のように、シリコンゲルマニウム膜71の厚み方向のゲルマニウム濃度を半導体ウエハ(半導体基板)70側の界面からシリコンゲルマニウム膜71の内部方向に徐々に増大させると、シリコンゲルマニウム膜71中でストレスまたは応力が同一方向に印加され、応力が累積される。本実施の形態のように、ゲルマニウム濃度がピークに達した後にゲルマニウム濃度を低下させることで、順ステップグレーデッド領域で累積された応力を逆ステップグレーデッド領域付近で緩和することができる。このため、シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面近傍でのシリコンゲルマニウム膜71の欠陥を減少させることが可能となる。これにより、欠陥の少ない下地シリコンゲルマニウム膜71上に歪シリコン膜72をエピタキシャル成長させることが可能となる。このため、歪シリコン膜72中の欠陥の発生も抑制できる。なお、このような効果は、シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度がピークを形成した後、シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面方向にゲルマニウム濃度を階段状に減少させた場合(図16のゲルマニウム濃度分布の場合に対応)も、あるいは連続的に減少させた場合(図17のゲルマニウム濃度分布の場合に対応)も、同様に得ることができる。
次に、本実施の形態に従ってシリコンゲルマニウム膜71を形成した半導体ウエハ(半導体基板)70の表面粗度を測定した。ここでは、半導体ウエハ70上にシリコンゲルマニウム膜71および歪シリコン膜72を形成し、その表面(歪シリコン膜表面)の表面粗度をAFM(atomic force microscopy)によって測定し、表面粗度のRMS(root mean square)を計算した。薄い歪シリコン膜72の表面粗度は、下地のシリコンゲルマニウム膜71の表面粗度に依存する。
本実施の形態に従ってシリコンゲルマニウム膜71を形成すると、シリコンゲルマニウム膜71の成膜温度が777℃の場合、表面粗度のRMSは3.6nmであり、シリコンゲルマニウム膜71の成膜温度が800℃の場合、表面粗度のRMSは2.5nmであった。
比較例として、シリコンゲルマニウム膜の成膜の初期段階からゲルマニウム濃度を階段状に増大させ、ゲルマニウム濃度が最大値に達した後は、ゲルマニウム濃度を減少させることなく一定となるようにシリコンゲルマニウム膜を成膜した場合(すなわち上記シリコンゲルマニウム膜61の場合)についても表面粗度のRMSを測定した。ただしシリコンゲルマニウム膜61の成膜温度は777℃である。この比較例の場合、表面粗度のRMSは4.1nmであった。
従って、本実施の形態のように、シリコンゲルマニウム膜の成膜の初期段階からゲルマニウム濃度を階段状に増大させ、ゲルマニウム濃度が最大値に達した後、ゲルマニウム濃度が一旦減少するようにシリコンゲルマニウム膜71を成膜することにより、表面粗度を小さくすることができる。このため、シリコンゲルマニウム膜71およびその上に形成される歪シリコン膜72の表面粗度を小さくでき、半導体装置の信頼性を向上することが可能になる。また、半導体装置の製造歩留まりも向上できる。また、シリコンゲルマニウム膜71の成膜温度を高くすることで、表面粗度を更に小さくすることもできる。なお、このような効果は、シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度がピークを形成した後、シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72との界面方向にゲルマニウム濃度を階段状に減少させた場合(図16のゲルマニウム濃度分布の場合に対応)も、あるいは連続的に減少させた場合(図17のゲルマニウム濃度分布の場合に対応)も、同様に得ることができる。
図18は、本実施の形態に従って形成されたシリコンゲルマニウム膜71上に形成した歪シリコン膜72の格子定数の伸び率を測定した結果を示すグラフである。図18のグラフの横軸は、シリコンゲルマニウム膜71と歪シリコン膜72の界面近傍でのシリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度(図16および図17のグラフのY1)に対応する。図18のグラフの縦軸は、歪シリコン膜72の格子定数のxy方向(半導体ウエハ70の主面に平行な面内方向)の伸び率に対応し、通常のシリコン単結晶の格子定数を1とした相対値で示してある。また、図18のグラフ中の黒丸が、歪シリコン膜72の格子定数の実測値に対応し、グラフ中の直線はシリコンゲルマニウムの格子定数とゲルマニウム濃度の関係を示す理論値(立方晶歪緩和時)に対応する。
図18のグラフから分かるように、歪シリコン膜72の格子定数実測値は、シリコンゲルマニウムの格子定数とゲルマニウム濃度の関係を示す理論直線にほぼ一致している。すなわち、歪シリコン膜72の格子定数は、下地層であるシリコンゲルマニウム膜71の格子定数に対応して伸びた(歪んだ)格子定数を有している。従って、本実施の形態に従って形成された歪シリコン膜72は、下地シリコンゲルマニウム膜71のゲルマニウム濃度(Y1)に対応した歪みを有し、かつシリコンゲルマニウム膜71は十分に歪みが緩和されていることが確認できる。
次に、シリコンゲルマニウム膜71を形成する前の半導体ウエハ(半導体基板)70の処理方法について説明する。以下のような処理を行った後に、シリコンゲルマニウム膜71を半導体ウエハ70上にエピタキシャル成長させるとより好ましい。なお、以下の処理方法は、前記実施の形態1において、シリコンゲルマニウム膜21を形成する前の半導体ウエハ(半導体基板)12の処理方法として適用することもでき、そのような処理を行った後にシリコンゲルマニウム膜21を半導体ウエハ12上にエピタキシャル成長させるとより好ましいことはもちろんである。
例えば、水素ガスのような還元性雰囲気中で半導体ウエハ70を例えば1040℃に加熱(前加熱処理)することで、半導体ウエハ70の表面の自然酸化膜を除去し、半導体ウエハ70の表面を清浄化することができる。これにより、半導体ウエハ70の清浄な表面上にシリコンゲルマニウム膜71をエピタキシャル成長することが可能になる。
また、上記前加熱処理によって自然酸化膜を除去した後、処理室2内にモノシランガス(SiH4)を導入しかつ半導体ウエハ70を例えば980℃で加熱して半導体ウエハ70上に薄いシリコン膜70aをエピタキシャル成長させ、清浄なシリコン表面を形成することもできる。図13に従って説明された上記実施の形態では、この処理が行われている。
あるいは、塩化水素(HCl)ガスを処理室2内に導入しかつ半導体ウエハ70を例えば900℃で加熱して半導体ウエハ70表面をエッチングし、半導体ウエハ70の表面の自然酸化膜を除去することもできる。この工程は、半導体ウエハ70の温度を1000℃以下に抑えなければならない場合などに特に有効である。
あるいは、上記のように半導体ウエハ70の表面を清浄化するために前加熱処理を行った後、更に上記のように塩化水素ガスを処理室2内に導入して半導体ウエハ70表面のエッチングを行うこともできる。
あるいは、上記のように半導体ウエハ70の表面を清浄化するために上記前加熱処理を行った後、更に上記のように塩化水素ガスを処理室2内に導入して半導体ウエハ70表面のエッチングを行い、その後上記のように半導体ウエハ70上に薄いシリコン膜70aをエピタキシャル成長させることもできる。
これらの表面処理方法は、半導体ウエハ70上にシリコンゲルマニウム膜71を形成する場合について述べたが、半導体ウエハ70上に既に形成されたシリコンゲルマニウム膜71上に、更にシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜を形成する際の表面処理方法としても有効である。また、例えばシリコンゲルマニウム膜71の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)などで研磨した後に、更にシリコンゲルマニウム膜やシリコン膜を形成する際の表面処理方法としても有効である。
また、上記実施の形態では、シリコンソースガスとしてモノシラン(SiH4)ガスを用いたが、SiH4ガスの代わりにSiH2Cl2ガスをシリコンソースガスとして用いることもできる。これにより、シリコンゲルマニウム膜71および歪シリコン膜72の成長速度をより向上したり、異物発生を抑制することが可能となる。
また、シリコンソースガスとして最初にSiH2Cl2ガスを用い、シリコンゲルマニウム膜71の成膜の最終段階(例えば図13のグラフの時間t12〜t13の間の最後の数分間)と歪シリコン膜72の成膜段階(時間t13〜t14)とにおけるシリコンソースガスをモノシラン(SiH4)ガスに切り換えることもできる。これにより、成長した膜の表面をより平坦にすることができる。また、歪シリコン膜72のみにモノシランガスを用いても効果がある。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
前記実施の形態では、MISFETを有する半導体装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、シリコンゲルマニウム膜を形成した種々の半導体装置の製造方法および半導体装置に適用することができる。たとえば、バイポーラ素子のベース部分としてSiGe膜を選択的に形成することも可能である。