JP4695008B2 - 保水能力推定装置およびプログラム - Google Patents
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Description
浸水想定区域とは、洪水により河川の堤防が決壊した場合に浸水が予想される区域のことで、河川管理者により指定される。また、浸水想定地域図は、浸水想定区域と各区域内の浸水の深さを示した図面である。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、比較的入手しやすいデータに基づいて対象地区の保水能力を容易に推定できる保水能力推定装置および方法を提供することを目的としている。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる保水能力推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる保水能力推定装置の構成を示すブロック図である。
この保水能力推定装置1は、対象河川の上流河川流域4で計測された降水量データ21と、その対象河川の河川水量データ22とを履歴データ2として取り込み、これら履歴データ2から各対象地区の保水能力を推定する装置である。
保水能力推定装置1は、全体として、入力された処理情報に対して演算処理を行うことにより所望の情報を出力するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、データ入力部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
このデータ入力部11で取り込まれる主な履歴データ2としては、降水量データ21と河川水量データ22とからなる履歴データ2がある。
河川水量データ22は、河川水量推定の対象となる河川の河川水量計測点6で計測された河川水量の時系列変化を示すデータである。
また、河川水量データ22は、面速式流量計測方法など公知の計測方法で計測したものを用いればよい。また河川水量ではなく、河川流量や河川水位でデータが提供される場合には、例えばマニング(Manning)の平均流速公式などの公知技術を応用して、これら河川流量や河川水位を河川水量に換算すればよい。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて、操作メニューや保水能力推定データを画面表示する機能を有している。
記憶部14で記憶される主な処理データとしては、降水量データ14A、河川水量データ14B、積算降水量データ14C、積算河川水量データ14D、最大相関値(最大パターンマッチ度)14E、および保水能力推定データ14Fがある。
積算降水量データ14Cおよび積算河川水量データ14Dは、演算処理部15により、降水量データ14Aおよび河川水量データ14Bが積算されたものである。
最大相関値14Eは、演算処理部15により、積算降水量データ14Cと積算河川水量データ14Dのパターンマッチング分析された結果である。
保水能力推定データ14Fは、演算処理部15により、最大相関値14Eから生成された対象地区の保水能力を示すデータである。
演算処理部15により実現される主な機能手段としては、降水量データ積算手段15A、河川水量データ積算手段15B、パターンマッチング分析手段15C、および保水能力推定手段15Dがある。
次に、図2,図3を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる保水能力推定装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態にかかる保水能力推定装置の動作を示す概略フロー図である。図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる保水能力推定装置の保水能力推定処理を示すフローチャートである。
図5は、河川水量データを示す説明図である。この河川水量データWは、河川水量計測点6における各時点tに計測された単位時間当たりの河川水量W(0),W(1),W(2),…からなる時系列データである。
なお、本実施の形態では、パターンマッチ度として両者の相関値を求める場合を例として説明したが、積算降水量データ14Cと積算河川水量データ14Dの類似性を表す指標であればよく、相関値以外のパターンマッチ度を用いてもよい。
この際、パターンマッチング分析手段15Cで得られた最大相関値Cmax(P,T)は、あくまでも相対的な指標であり、保水能力推定手段15Dにより、対象地区の具体的な保水能力を示すデータを次のようにして生成する。
一方、パターンマッチング分析で得られた積算降水量データ14Cと積算河川水量データ14Dの最大相関値について考察すると、この最大相関値は、対象地区の計測ポイントPに降った雨が河川に流入して河川水量を変化させた影響の度合いを示していることがわかる。すなわち、積算時間Tを用いて算出した最大相関値Cmax(P,T)が大きい場合、積算時間Tに当該対象地区で保水された雨水の保水量と河川水量の変化が類似していることを示す。
また、異なる積算時間Tを用いて、任意の計測ポイントPの最大相関値Cmax(P,T)をそれぞれ算出すれば、当該対象地区の保水時間特性を得ることができる。特に複雑な構造の土地では、固有の保水時間を複数持つ場合もあり、このような保水時間特性を得ることにより、当該対象地区が保水能力としてどのような保水時間を有しているか容易に把握できる。
また、本実施の形態では、パターンマッチング分析の際、最大相関値が所定のしきい値を上回った場合、積算時間からなる当該対象地区の保水時間を保水能力推定データとして出力するようにしたので、複雑な数式や処理を用いることなく容易に保能力を推定できる。
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる保水能力推定装置について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態にかかる保水能力推定装置の保水能力分布生成処理を示すフローチャートである。
第1の実施の形態では、任意の対象地区に着目してその保水能力を推定する場合を例として説明した。本実施の形態では、複数の対象地区に着目して保水能力の分布を推定する場合について説明する。なお、保水能力推定装置1の構成は前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
任意の積算時間Tを用いて算出した各対象地区の最大相関値Cmax(P,T)を比較した場合、各対象地区の保水能力と保水時間Tとの関連性を把握でき、保水時間Tに関する各対象地区の保水能力(重み)の分布と見なすことができる。このことから、各対象地区の保水能力の比較に着目した場合、保水能力推定手段15Dより、各対象地区の保水能力分布を得ることができる。
この後、演算処理部15は、全計測ポイントの処理が終了するまでステップ110に戻って上記処理を繰り返し実行する(ステップ112:NO)。
その後、保水能力推定手段15Dは、これら最大相関値のうち同一値の地点を線分で結ぶことにより2次元の等高線マップを生成し(ステップ114)、保水時間Tに関する保水能力分布を示す保水能力推定データ14Fとして出力し(ステップ115)、一連の保水能力分布生成処理を終了する。
図10は、保水時間Tに関する保水能力分布を示す保水能力推定データの出力例である。これにより、最大相関値が最上位クラスとなった対象地区が、保水時間Tの保水能力を持つと判断できる。
以上の各実施の形態では、任意の対象地区の保水能力を保水時間により出力する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、保水能力推定手段15Dにおいて、前述のようにして当該対象地区の保水当力を示す保水時間Tが得られた場合、この保水時間に相当する積算時間Tを用いた場合の積算降水量データ14Cの代表値(例えば最大値や平均値)と対象地区の面積と積算時間Tの積から当該対象地区での保水量を推定し、これを保水能力推定データとして出力するようにしてもよい。これにより、当該対象地区での積算降水量から浸水発生をリアルタイムで予測することができる。
この場合、演算処理部15により、例えば異なる積算時間の積算降水量データを説明変数とし、河川水量データを目的変数とする線形の推定モデルを生成し、例えばステップワイズ法(step-wise selection)などの変数選択手法により、有用な説明変数の積算時間Tを選択すればよい。これにより、演算処理対象となる積算時間Tを削減でき、演算処理負担を大幅に軽減できる。
なお、本発明では、河川水量はそのほとんどが雨水であると見なしている。また、河川表面や地表からの蒸発分については非常に少なく誤差の範囲であることから対象外とした。
Claims (10)
- 入力された各種データを演算処理する演算処理部により、河川流域内の任意の対象地区の雨水に対する保水能力を推定する保水能力推定装置であって、
前記演算処理部は、
前記対象地区における降水量の時系列変化を示す降水量データを、任意の積算期間でそれぞれ積算し、積算降水量の時系列変化を示す積算降水量データを算出する降水量データ積算手段と、
前記河川流域の下流に設けられた任意の河川水量計測点における河川水量の時系列変化を示す河川水量データを前記積算期間で積算し、積算河川水量の時系列変化を示す積算河川水量データを算出する河川水量データ積算手段と、
前記積算降水量データと前記積算河川水量データを異なる時間差でそれぞれパターンマッチング分析し、両者の最大パターンマッチ度を算出するパターンマッチング分析手段と、
前記最大パターンマッチ度に基づいて前記対象地区の保水能力を示す保水能力推定データを生成する保水能力推定手段と
を備えることを特徴とする保水能力推定装置。 - 請求項1に記載の保水能力推定装置において、
前記パターンマッチング分析手段は、前記パターンマッチング分析の際、前記積算降水量データと前記積算河川水量データの時間位置を順次シフトさせて両者の相関値をそれぞれ求め、これら相関値のうち最大相関値を前記最大パターンマッチ度として算出することを特徴とする保水能力推定装置。 - 請求項1に記載の保水能力推定装置において、
前記保水能力推定手段は、前記最大相関値が所定のしきい値を上回った場合、前記積算時間からなる当該対象地区の保水時間を前記保水能力推定データとして出力することを特徴とする保水能力推定装置。 - 請求項1に記載の保水能力推定装置において、
前記保水能力推定手段は、各対象地区の位置情報に基づいて対象地区ごとに得られた前記最大パターンマッチ度を補間処理し、各地点の保水能力を示す2次元の保水能力分布データを生成し、前記保水能力推定データとして出力することを特徴とする保水能力推定装置。 - 請求項1に記載の保水能力推定装置において、
前記保水能力推定手段は、前記積算降水量データの最大値と前記対象地区の面積の積からなる当該対象地区の保水量を求め前記保水能力推定データとして出力することを特徴とする保水能力推定装置。 - 入力された各種データをコンピュータで演算処理する演算処理部により、河川流域内の任意の対象地区の雨水に対する保水能力を推定する保水能力推定装置のコンピュータに、
河川流域内の対象地区における降水量の時系列変化を示す降水量データを、任意の積算期間でそれぞれ積算し、積算降水量の時系列変化を示す積算降水量データを算出する降水量積算ステップと、
前記河川流域の下流に設けられた任意の河川水量計測点における河川水量の時系列変化を示す河川水量データを前記積算期間で積算し、積算河川水量の時系列変化を示す積算河川水量データを算出する河川水量積算ステップと、
前記積算降水量データと前記積算河川水量データを異なる時間差でそれぞれパターンマッチング分析し、両者の最大パターンマッチ度を算出するパターンマッチング分析ステップと、
前記最大パターンマッチ度に基づいて前記対象地区の保水能力を示す保水能力推定データを出力する保水能力推定ステップと
を実行させるプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記パターンマッチング分析ステップは、前記パターンマッチング分析の際、前記積算降水量データと前記積算河川水量データの時間位置を順次シフトさせて両者の相関値をそれぞれ求め、これら相関値のうちの最大相関値を前記最大パターンマッチ度として算出することを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記保水能力推定ステップは、各対象地区の位置情報に基づいて対象地区ごとに得られた前記最大パターンマッチ度を補間処理して各地点の保水能力を示す2次元の保水能力分布データを生成し、前記保水能力推定データとして出力することを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記保水能力推定ステップは、前記積算降水量データの最大値と前記対象地区の面積の積から当該対象地区の保水量を求め前記保水能力推定データとして出力することを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記保水能力推定ステップは、前記最大相関値が所定のしきい値を上回った場合、前記積算時間からなる当該対象地区の保水時間を前記保水能力推定データとして出力することを特徴とするプログラム。
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