JP4694160B2 - 観察補助具および観察補助システム - Google Patents

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本発明は、生体組織に近接配置される細径の対物光学系の前方に薬液を投与し、あるいは対物光学系における視界を確保するために液体(例えば、生理食塩水等)を供給し、供給した液体と体液との混合液を吸引するための観察補助具および観察補助システムに関するものである。
従来、内視鏡においては、血管内に薬液を投与したり、受光用光ファイバの視界の妨げになる血液を押し出すための液体を噴射したりするためのフラッシュ用チャネルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、生体組織に薬剤を送達するための方法および装置も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平8−24341号公報 特表2003−515383号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されたフラッシュ用チャネルや送達手段は、いずれも、観察用の光ファイバが収容されるチューブ内に内蔵されるものであるとともに、単に、液体や薬液を生体組織に供給するために使用される。しかしながら、マウス等の実験小動物を生きたまま(in vivo)の状態で観察するためには、対物光学系を細く構成することが必要であり、フラッシュ用チャネルを内蔵することは困難である。また、マウス等の実験小動物を生きたままの状態で観察するためには、単に洗浄用の液体を供給するだけでは足りず、供給した液体や生体内から漏れ出てくる血液を回収する必要もある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、マウス等の実験小動物を生きたままの状態で観察するための対物光学系に簡易に取り付けることができ、液体の供給および回収を同時に行うことが可能な観察補助具および観察補助システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、前記管状部材からなる取付手段が、長手方向に沿う少なくとも1つの分割線により分割可能に設けられるとともに、該分割線における管状部材を連結する連結手段が備えられている観察補助具を提供する。
本発明によれば、取付手段の作動により、対物ユニットの外面に液体供給路と液体吸引管路とが取り付けられる。対物ユニットを生体内に挿入した状態で、液体供給路を介して液体、例えば、生理食塩水を生体内の観察部位近傍に導くことにより、生理食塩水によって観察部位を洗浄し、対物ユニットによる視界を確保することができる。また、液体吸引管路を介して観察部位近傍の液体を吸引することにより、供給した生理食塩水と生体内から漏れ出てきた血液等の体液との混合液を吸引し、これらの液体が生体内に溜まることを防止できる。対物ユニットの外面に取り付けるので、対物ユニット自体の外形寸法を拡大することがない。また、視界を確保しつつ液体が生体内に止まることを防止するので、生体にかかる負担を軽減して長期間にわたり、生きたまま観察することが可能となる。
また、管状部材からなる取付手段を対物ユニットの外面に簡易に着脱することができる。そして、液体吸引管路に接続された対物ユニットの外面と環状部材との間の円環状の流路を介して、生体内の液体を吸引することができる。円環状の流路とすることにより、外形寸法をさほど大きくすることなく、大きな流通断面積を確保できるという利点がある。
さらに、分割線によって管状部材を長手方向に沿って分割しあるいは分割線において連結することにより液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に着脱することができる。この場合に、着脱に際して管状部材を対物ユニットに対して長手方向から取り付ける必要がなく、対物ユニットによる生体組織の観察中においても対物ユニットへの取り付け、および対物ユニットからの取り外しを行うことができる。
また、本発明は、生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、前記管状部材の先端面が、対物ユニットの先端面よりも前方に配置される観察補助具を提供する。
本発明によれば、管状部材の先端面を対物ユニットの先端面よりも前方に配置することにより、対物ユニットを生体組織に近接させると、対物ユニットの先端面よりも先に、管状部材の先端面がしたい組織に当接し、対物ユニットと生体組織との間に空間が形成される。形成された空間には液体供給路から供給された液体が流通させられ、液体吸引管路により、生体から漏れ出た体液とともに液体が吸引される。したがって、対物ユニットの先端面に常に液体を流通させておくことができ、対物ユニットの視界を長期にわたって確保することができる。
また、本発明は、生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、前記管状部材からなる取付手段が、長手方向に沿う少なくとも1つの分割線により分割可能に設けられるとともに、該分割線における管状部材を連結する連結手段が備えられ、前記管状部材の先端面が、対物ユニットの先端面よりも前方に配置される観察補助具を提供する。
上記発明においては、前記液体供給路が、前記取付手段の外面に長手方向に沿って形成された溝からなることとしてもよい。
生体内の体液を吸引する必要がある液体吸引管路と比較すると、液体供給路はその流通断面積を小さくすることができる。そこで、このようにすることで、取付手段の外面の溝により、簡易に液体を生体内の観察部位近傍まで導くことができる。
上記発明の参考例においては、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に円環状の流路を形成する管状部材からなり、該管状部材に、前記円環状の流路に連通し、先端面に開口する複数の貫通孔が、周方向に間隔をあけて複数備えられ、前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、前記貫通孔の少なくとも1つに、チューブからなる液体供給路が接続されていることとしてもよい。
このように構成することで、チューブからなる液体供給路が接続された貫通孔を介して管状部材の先端面から生体の観察部位近傍に液体を供給することができる。また、液体吸引管路を通じて吸引力を付与することにより、管状部材の先端面に開口する複数の貫通孔を介して液体および体液が吸引され、これらの貫通孔が連通する円環状の流路を介して液体吸引管路により液体および体液を吸引排出することができる。
上記発明の参考例においては、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定される管状部材からなり、前記液体供給路および液体吸引管路が、それぞれ、取付手段と対物ユニットとの間に挟まれて、先端を対物ユニットの先端近傍に配置されるチューブからなることとしてもよい。
このように構成することで、チューブからなる液体供給路と液体吸引管路とが、取付手段によって簡易に対物ユニットの外面に固定される。
また、上記発明の参考例においては、前記液体供給路および液体吸引管路の基端側に、チューブ径を拡径し、シリンジの先端部を装着可能な拡径部が設けられていることとしてもよい。
チューブの拡径部を備える液体供給路および液体吸引管路の基端側にシリンジの先端部を取り付けて、シリンジを作動させることにより、観察部位近傍に液体を供給し、観察部位近傍から液体と体液との混合液を吸引することができる。
さらに、上記発明の参考例においては、前記液体吸引管路の先端吸引口近傍に、該液体吸引管路を構成するチューブの側壁を貫通する1つ以上の小穴が設けられていることが好ましい。
チューブからなる液体吸引管路の場合、先端吸引口が生体に接触すると、先端吸引口が生体組織によって塞がれて、それ以上の吸引が困難になる。本発明によれば、先端吸引口近傍にチューブの側壁を貫通する小穴が設けられているので、先端吸引口が塞がれても小穴を介して液体の吸引を継続することができ、吸引機能が完全に停止してしまうことを防止することができる。
また、上記発明の参考例においては、前記液体吸引管路の先端吸引口が、該液体吸引管路を構成するチューブの先端を長手方向に対して斜めに切断した形態を有することが好ましい。
チューブの先端を斜めに切断した形態とすることにより、チューブの先端が生体組織に到達しても、先端開口部が生体組織によって塞がれることが防止される。
また、上記発明の参考例においては、前記管状部材が熱収縮チューブからなることとしてもよい。
このように構成することで、液体供給路および/または液体吸引管路を対物ユニットの外面に沿って配置して、熱収縮チューブを収縮させることにより、簡易に対物ユニットに取り付けた状態に保持することができる。
また、上記発明の参考例においては、前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に巻き付けられる粘着テープからなり、前記液体供給路および液体吸引管路が取付手段に一体的に取り付けられていることとしてもよい。
このように構成することで、取付手段を対物ユニットの外面に粘着させるだけで、取付手段に一体的な液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットに固定することができる。
さらに、上記発明においては、前記取付手段が、前記液体供給路と前記液体吸引管路とを、対物ユニットを挟んで反対側に位置するように取り付けることとしてもよい。
このように構成することで、液体供給路から供給した液体を対物ユニットの先端面を通過させて、生体の観察部位から漏れ出てくる血液や体液を回収し、液体吸引管路に吸引させることができる。
また、上記発明においては、前記液体供給路の先端供給口および前記液体吸引管路の先端吸引口が対物ユニットの先端面よりも先端側において半径方向内方に向けて配置されることとしてもよい。
対物ユニットの外面に、対物ユニットの半径方向内方に向けて配置された先端供給口から液体を供給すると、供給された液体は対物ユニットの先端面を半径方向に向けて流動し、対物ユニットの反対側に半径方向内方に向けて配置されている液体吸引管路の先端吸引口から吸引されて排出される。したがって、液体を効率よく対物ユニットの先端面において流動させ、効率よく排出することができる。
また、上記発明においては、前記液体吸引管路の先端吸引口が、対物ユニットの先端面よりも後退した位置に配置されることとしてもよい。
先端吸引口を対物ユニットの先端面よりも後退した位置に配置することにより、対物ユニットの先端面を生体組織に接触させても永代吸引管路の先端吸引口は生体組織に接触せず、したがって、生体組織によって先端吸引口が閉塞されてしまうことを防止できる。
また、本発明は、上記観察補助具と、前記液体供給路の基端側に接続される液体供給手段と、前記液体吸引管路の基端側に接続される液体吸引手段とを備える観察補助システムを提供する。
本発明によれば、液体供給手段の作動により液体供給路の基端側から液体が供給され、対物ユニットの先端部に配されている生体の観察部位近傍に液体を流通させることができる。また、液体吸引手段の作動により液体吸引管路の基端側において吸引することにより、観察部位近傍の液体が吸引され、余分な液体が対物ユニットの視界を狭くしたり、生体内部に溜まって生体に負荷をかけたりすることを未然に防止できる。
上記発明においては、前記液体供給手段および/または前記液体吸引手段が、それぞれ1本以上のシリンジからなることとしてもよい。
シリンジによれば、液体供給手段および/または液体吸引手段を簡易に構成することができる。また、液体供給手段として複数本のシリンジを並列に設け、液体の供給に用いるシリンジを交換していくことにより、液体を途切れることなく供給することができる。また、複数本のシリンジを並列に設けた液体吸引手段によれば、吸引するシリンジを交換して途切れることなく吸引できるとともに、同時使用により、吸引量を増大させることができる。
また、上記発明においては、前記液体供給手段が、供給する液体を加温する加温手段を備えることが好ましい。
加温手段の作動により供給する液体を加温することによって、観察しようとする生体の体温と同程度の温度の液体を供給することが可能となる。その結果、体温に対して大きく離れた温度の液体が供給されることにより生体にかかる負担を軽減して、生体を、生きたままの状態で長期間にわたり観察することができる。
さらに、上記発明においては、前記液体供給手段による液体の供給と、前記液体吸引手段による液体の吸引とを連動させる連動手段を備えることが好ましい。
連動手段の作動により、液体の供給と吸引とを連動させることで、対物ユニットの先端面に流通させる液体を常に入れ替えることができる。また、手動で行う場合には、少ない動作で簡易に液体の供給と吸引とを行わせることができる。
また、上記発明においては、前記液体供給路の途中位置に、蛍光薬剤を供給する薬剤供給手段が接続されていることが好ましい。
このように構成することで、蛍光薬剤から対物ユニットの先端面までの管路の長さを低減することができ、管路内に止まって無駄になる蛍光薬剤の量を低減することができる。
さらに、上記発明においては、前記液体供給手段および前記液体吸引手段を駆動する駆動手段を備えることとしてもよい。
駆動手段の作動により液体供給手段と液体吸引手段とを作動させることにより、より精密に液体の供給量および吸引量を制御することができる。
また、上記発明においては、観察補助具を取り付けた対物ユニットの先端面と観察部位との近接状態を検出するセンサを備え、該センサの出力に基づいて、対物ユニットの先端面が観察部位に所定値以上近接しているときには液体吸引手段の液体吸引力を強くし、所定値より離れているときには液体吸引手段の液体吸引力を弱めるように駆動手段を駆動させることとしてもよい。
対物ユニットの先端面が観察部位に近接しているときに液体吸引力を強くすることで、先端吸引口に生体組織を吸着して固定し、対物ユニットに対して生体が移動することを防止することができる。これにより対物ユニットに対する観察部位の移動を防止して、ブレのない画像を得ることができる。
一方、対物ユニットの先端面が観察部位から離れているときには液体吸引力を弱めることで、先端吸引口に生体組織を吸着することなく、液体を吸引して、対物ユニットの先端面を洗浄し、あるいは、不要な液体を排出することができる。
また、上記発明においては、前記液体供給手段により供給する液体が液浸対物レンズ用の液体であることとしてもよい。
このようにすることで、液体供給手段から液身体物レンズ用液体を注入し、チューブ31から吸入を行うことにより、適量の液浸対物レンズ用液体を対物先端面と生体との間に配置することが可能となる
本発明に係る観察補助具および観察補助システムによれば、マウス等の実験小動物を生きたままの状態で観察するための対物光学系に簡易に取り付けることができ、液体の供給および回収を同時に行うことができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係る観察補助具1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察補助具1は、図1に示される観察システム2において使用される。図1の観察システム2は、実験小動物等の生体Aを載置するステージ3と、該ステージ3の上方に配置される光走査型顕微鏡観察装置4と、さらにその上方とに配置される実体顕微鏡観察装置5とを備えている。
なお、ここでは、観察補助具を適用する観察システムとして、顕微鏡観察装置4を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、対物ユニット22を有する任意の生体観察装置に適用することができる。
実体顕微鏡観察装置5は、ステージ3を備えるベース6から立ち上がる支柱7に、上下方向に移動可能に設けられ、生体Aを比較的小さな倍率で観察するための接眼部8およびCCDカメラ9を備えている。CCDカメラ9は、ケーブル10によって第1のモニタ11に接続され、撮像された画像を第1のモニタ11において観察することができるようになっている。
光走査型顕微鏡観察装置4は、図1に示されるように、顕微鏡観察装置本体12とこれに接続される光源13、光検出器14、制御装置15および第2のモニタ16を備えている。
顕微鏡観察装置本体12も、ベース6から立ち上がる支柱17に上下方向に移動可能および任意の角度方向に傾斜可能に設けられている。顕微鏡観察装置本体12と光源13とは光ファイバ18により接続されている。また、顕微鏡観察装置本体12と制御装置15、光検出器14と制御装置15とはそれぞれケーブル19,20によって接続されている。第2のモニタ16には、制御装置15内において画像処理を加えられた画像が表示されるようになっている。
前記顕微鏡観察装置本体12は、図2に示されるように、光ファイバ18の一端に取り付けられる筐体21と、該筐体21に取り付けられる対物ユニット22とを備えている。
筐体21内には、光ファイバ18により伝播されてきた光を平行光に変換するコリメート光学系23、平行光を2次元的に走査する近接ガルバノミラーのような光走査部24、および走査された光の中間像を結像する瞳投影光学系25が備えられている。また、対物ユニット22内には、中間像を結像した光を集光する結像光学系26および集光された光を生体Aにおいて再結像させる対物光学系27を備えている。
対物ユニット22は、前記結像光学系26および対物光学系27を収容する外筒部材28を備えている。
本実施形態に係る観察補助具1は、図3に示されるように、生体Aに差し込まれる対物ユニット22の外筒部材28の先端外面に嵌合される弾性材料からなる管状部材(取付部材)29と、該管状部材29の長手方向の途中位置の側面に設けられた貫通孔30に接続され、管状部材29の内面に開口するチューブ(液体吸引管路)31とを備えている。チューブ31を貫通する貫通孔30は、例えば、接着剤32により気密状態に密封されている。
管状部材29の外側面には長手方向に沿って溝(液体供給路)33が形成されている。図2に示す例では、対物ユニット22の外筒部材28の外面には、先端の細径部28aよりも一段径の大きな大径部28bが形成され、前記管状部材29は、大径部28bに嵌合するようになっている。
管状部材29は、自由状態において、細径部28aよりも大きく、大径部28bよりも若干小さな内径寸法を有しており、外筒部材28の外面に嵌合されるときには、内径寸法を若干押し広げて大径部28bに嵌合し、その弾性により管状部材29の内面と大径部28bの外面との間に生ずる摩擦力によって外筒部材28の外面に取付状態に保持されるようになっている。また、管状部材29の内面と外筒部材28の細径部28aとの間には、管状部材29と大径部28bとの密着嵌合によって上端を気密状態に閉塞された円環状の流路34が形成されるようになっている。また、前記チューブ31の先端開口は、この円環状の流路34に開口するように構成されている。
また、チューブ31の基端側には、チューブ31の開口面積を広げるテーパ状の拡径部35が備えられており、該拡径部により広がった開口部にシリンジ36等の液体吸引手段が接続されるようになっている。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具1の作用について、以下に説明する。
上述した顕微鏡観察システム2によって生体Aを観察するには、まず、マウスやラットを初めとする実験小動物等の生体Aをステージ3に固定し、その上方に配置した実体顕微鏡観察装置5を用いて観察部位の画像を第1のモニタ11に表示しながら、表皮を切開し、内部組織を露出させる。このとき、走査型顕微鏡観察装置4の顕微鏡観察装置本体11は実体顕微鏡観察装置5の視野内から待避した位置に配置されている。
また、走査型顕微鏡観察装置4においては、所望の観察倍率を達成するのに適した対物ユニット22を筐体21に取り付けておく。また、本実施形態に係る観察補助具1を対物ユニット22に取り付けておく。観察補助具1は、管状部材29を対物ユニット22の外筒部材28の大径部28bに嵌合させるだけで、液体供給用の溝33と液体吸引用のチューブ31とを対物ユニット22の外面に取り付けることができる。
準備ができた時点で、走査型顕微鏡観察装置4の顕微鏡観察装置本体11を実体顕微鏡観察装置5と生体Aとの間に挿入する。そして、対物ユニット22の先端面22aを図4に示されるように、マウス等の生体Aの表皮を切開して露出させた内部組織の表面の観察部位近傍に近接配置させる。このとき、観察補助具1の管状部材29と対物ユニット22の外筒部材28の細径部28aとの間に形成された円環状の流路34の先端も、対物ユニット22の先端面22aと同じ位置で観察部位に近接配置される。
この状態で、光走査型顕微鏡観察装置4を作動させて、制御装置15、光源13および光検出器14等を作動させ、制御装置15が光源13の波長指令、光走査部24の偏向角度指令を出力する。波長指令が光源13に送られると、光源13は図示しない波長調整手段によって、指定された波長のレーザ光を出力するように設定される。
光源13から出射されたレーザ光は、光ファイバ18を介して顕微鏡観察装置本体11の筐体21内に伝播される。光ファイバ18の先端から発せられたレーザ光は、コリメート光学系23を通過させられることにより平行光に変換され、光走査部24に入射される。光走査部24は、制御装置15からの偏向角度指令に応じて、レーザ光を2次元方向に走査する。これにより、偏向されたレーザ光が瞳投影光学系25、結像光学系26および対物光学系27を通過させられて生体Aに照射される際に、2次元的に走査され、所定の視野範囲にわたって照射される。
光走査部24において偏向されたレーザ光は、瞳投影光学系25によって中間像を結像した後、結像光学系26により集光され、対物光学系27によって生体Aに再結像させられる。レーザ光が生体Aに照射されると、生体Aにおいて蛍光が発せられ、発せられた蛍光は、対物光学系27、結像光学系26、瞳投影光学系25、光走査部24、コリメート光学系23および光ファイバ18を介して同一光路を戻り、ダイクロイックミラー37によってレーザ光から分離されて光検出器14により検出される。
この場合において、本実施形態に係る観察補助具1により、観察部位近傍に生理食塩水38を供給する。例えば、生理食塩水38を充填したシリンジ44先端の針44cを管状部材29の外面に形成された溝33に当てて、生理食塩水38を放出することにより、シリンジ44から放出された生理食塩水38が溝33を伝って管状部材29の先端まで導かれ、対物ユニット22と生体Aの観察部位との隙間に供給される。
また、チューブ31の基端側に接続されたシリンジ36を作動させて吸引することにより、チューブ31を介して管状部材29と対物ユニット22の外筒部材28との間の円環状の流路34が負圧に吸引され、対物ユニット22の先端面22aと生体Aの表面との隙間に存在する液体が、円環状の流路34内に吸引されることになる。対物ユニット22の先端面22aと生体Aの表面との間には、シリンジ44により供給された生理食塩水38と、生体組織内から流出してきた血液等の体液との混合液39が配されているので、この混合液39が円環状の流路34内に吸引されることになる。
すなわち、本実施形態に係る観察補助具1によれば、対物ユニット22の先端面22aに生理食塩水38を供給し、供給された生理食塩水38と体液との混合液39を、対物ユニット22の先端面22aと生体Aとの隙間から除去するように吸引するので、対物ユニット22の先端面22aと観察部位との間に血液等が流入して視界が狭まることを防止できる。また、供給した生理食塩水38を吸引するので、生理食塩水38が生体A内に溜まることが防止され、生体Aにかかる負担を軽減することができる。したがって、本実施形態に係る観察補助具1によれば、生体を生きたまま観察する際に、生体組織から血液等の体液が漏出してきても、広い視界を確保して鮮明な画像を得ることができるとともに、生体にかかる負担を軽減して長期間にわたる安定した観察を行うことができるという効果を奏する。
なお、上記実施形態においては、対物ユニット22の先端面22a近傍の観察部位に供給する液体として生理食塩水38を例に挙げて説明したが、これに代えて、例えば、レーザ光により励起されて蛍光を発光する蛍光薬剤を供給することにしてもよい。
また、液体吸引手段としてシリンジ36を例示したが、これに代えて、ローラーポンプ等の任意の送液ポンプを採用してもよい。
また、対物ユニット22が液浸対物レンズの場合、対物先端面22aと生体Aとの間にイマージョンオイルや生理食塩水等の液浸対物レンズ用液体が必要になる。その場合も、シリンジ44から液浸対物レンズ用液体を注入し、チューブ31から吸入を行うことにより、適量な液浸対物レンズ用液体を対物先端面22aと生体Aとの間に配置することが可能となる。
また、上記実施形態においては、管状部材29が、図13または図14に示されるように、長手方向に沿って形成された分割線によって2片に分割可能に設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、管状部材29の先端部が、図15に示されるように、対物ユニット22の先端面22aよりも突出して配置されることとしてもよい。また、管状部材29は、分割線により部活可能に設けられた構成と、その先端部が対物ユニット22の先端面22aよりも突出して配置された構成とを同時に有することとしてもよい。
次に、本発明の第参考実施形態に係る観察補助具40について、図5を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る観察補助具1と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助具40は、第1の実施形態において液体供給路として管状部材29の外面に設けられていた溝33に代えて、管状部材29の管壁を貫通して管状部材29の内部を先端まで導かれるチューブ41を採用している点で、第1の実施形態と相違している。チューブ41を貫通させている管壁の貫通孔42は、例えば、接着剤43によって気密状態に密封されている。また、チューブ41の基端側には、シリンジ44を接続するためのテーパ状の拡径部45が設けられている。液体供給路を構成するチューブ41は、液体吸引管路を構成するチューブ31よりも細い内径寸法を有している。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具40によれば、例えば、生理食塩水38を充填したシリンジ44により、チューブ41を介して、対物ユニット22の先端面22aに生理食塩水38を直接供給することができる。特に、チューブ41によって、生理食塩水38の供給位置を対物ユニット22の周方向の特定位置に設定することができる。
なお、対物ユニット22の先端面22aに供給された生理食塩水38と体液との混合液39が、管状部材29と対物ユニット22の細径部28aとの間の円環状の流路を介してチューブ31に吸引される点は第1の実施形態に係る観察補助具1と同様である。
次に、本発明の第参考実施形態に係る観察補助具50について、図6および図7を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第参考実施形態に係る観察補助具40と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助具50は、第1の実施形態および第1の参考実施形態において液体吸引管路としてのチューブ31が、管状部材29の長さ方向の途中位置において、管状部材29の内面に開口していたのに対し、図6に示されるように、チューブ51が対物ユニット22の先端面22aまで延びている点において相違している。このようにすることで、チューブ51による吸引位置を、対物ユニット22の周方向の所定位置に設定することができる。
本実施形態に係る観察補助具50は、図6に示されるように、液体供給路としてのチューブ41が、第参考実施形態と同様に対物ユニット22の先端面22aまで延びているので、液体の供給位置も周方向の所定位置に設定することができる。したがって、例えば、図7に示されるように、対物ユニット22を挟んで周方向の正反対の位置にチューブ41による液体の吐出位置と、チューブ51による吸引位置とを配置することができる。このようにすることによって、チューブ41により供給された液体が対物ユニット22の先端面22aを流通してチューブ51によって吸引されるようにすることができる。チューブ41に清浄な生理食塩水を供給することにより、対物ユニット22の先端面22aと生体Aの観察部位との間の体液を常に押し流して、良好な視界を保つことができるという効果がある。
この場合に、管状部材29は、対物ユニット22の外筒部材28との間に円環状の流路を形成するのではなく、単に、チューブ41,51を対物ユニット22の外面に固定する機能を有する。したがって、管状部材29を、必ずしも対物ユニット22の外筒部材28の大径部28bに嵌合させる必要はなく、図8に示されるように、熱収縮チューブによってチューブ41,51を細径部28aに直接固定することにしてもよい。このような構成にすることにより、管状部材29を外筒部材28に気密状態に嵌合させる必要がなく、さらに簡易に取り付けることができる。
また、図9(a)、(b)に示されるように、チューブ41,51を対物ユニット22に固定する固定用の管状部材53を、帯板部材54と、ボルト55およびナット56等の締結手段によって、外筒部材28に締め付けて固定することにしてもよい。
次に、本発明の第参考実施形態に係る観察補助具60について、図10を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した各実施形態に係る観察補助具1,40,50と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助具60は、液体供給路を構成するチューブ61と、液体吸引管路を構成するチューブ62と、これらチューブ61,62に一体的に設けられ、一面に粘着層63aを配してなる粘着フィルム63とから構成されている。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具60によれば、対物ユニット22の外筒部材28の細径部28aの外面に、粘着層63aを貼り付けて粘着フィルム63を巻き付けることにより、チューブ61,62を対物ユニットの先端部に簡易に固定することができる。
各チューブ61,62の先端は対物ユニット22の先端面22aと同一の位置に配置され、かつ、対物ユニット22の周方向に正反対の位置に配置されるように対物ユニット22に取り付けられる。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具60によれば、粘着フィルム63を対物ユニット22の外面に粘着させるだけで、簡易にチューブ61,62を対物ユニット22に固定することができる。また、不要な場合には、粘着フィルム63をはがすことにより、簡易にチューブ61,62を対物ユニット22から取り外すことができる。特に、対物ユニット22への着脱を対物ユニット22の半径方向から行うことができるので、生体の観察中においても、対物ユニット22を観察部位近傍に配したままの状態でチューブ61,62を着脱できる。したがって、例えば、チューブ62が詰まった場合等に容易に交換することができ、その際に、観察作業を中断する必要がないという利点がある。
なお、粘着フィルム63の粘着層63aとは反対側にチューブ61,62を一体化したものを例に挙げて説明したが、チューブ61,62を粘着層63a側に配置してもよい。
次に、本発明の第参考実施形態に係る観察補助具70について、図11および図12を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、図5に示した第参考実施形態に係る観察補助具40と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助具70は、チューブ31,41を取り付ける管状部材71において第2の実施形態に係る観察補助具40と相違している。
本実施形態に係る観察補助具70の管状部材71は、図11に示されるように、長手方向の途中位置までは、第参考実施形態の管状部材29と共通しているが、先端部に配される所定長さにわたって、対物ユニット22の外筒部材28の細径部28aに密着する厚肉部72を有し、該厚肉部72に、長手方向に沿う貫通孔72aが周方向に間隔をあけて複数設けられている点で相違している。
本実施形態に係る観察補助具70を対物ユニット22の先端部に取り付けると、図12に示されるように、管状部材71の上部内面と外筒部材28の大径部28bとが嵌合するとともに、管状部材71の下部に配されている厚肉部72が細径部28aに嵌合する。これにより、大径部28bと厚肉部との間に、上端を密封された円環状の流路34が形成され、厚肉部72の貫通孔72aが円環状の流路34に連通して対物ユニット22の先端面22aまで延びるようになっている。
また、管状部材71の長手方向の途中位置に形成された貫通孔42に挿入されているチューブ41の先端は、前記厚肉部72に設けられている貫通孔72aの内の1つに液密状態に嵌合している。また、管状部材71の長手方向の途中位置に接続されたチューブ31は、管状部材71内部の円環状の流路34内に開口している。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具70によれば、管状部材71の先端に開口する貫通孔72aの内の1つからチューブ41を介して供給されてきた生理食塩水38が対物ユニット22の先端面22aに供給され、残りの貫通孔72aから円環状の流路34内に集約されるように吸引されて、チューブ31を介して排出される。この場合において、貫通孔72aは対物ユニット22の周囲に周方向に間隔をあけて複数配置されているので、対物ユニット22の先端面22a近傍に配されている体液と生理食塩水38との混合液39を、対物ユニット22の半径方向外方に向けて複数箇所から吸引して満遍なく除去することができる。
また、チューブ41を貫通孔72aの1つに嵌合させるので、チューブ41の先端を管状部材71の先端に合わせることなく、貫通孔72aの長手方向の途中位置に配すれば足りる。したがって、簡易に組み立てることができるという利点がある。
次に、本発明の第参考実施形態に係る観察補助具80について、図13を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第参考実施形態に係る観察補助具50と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助具80は、チューブ61,62を対物ユニット22に取り付ける管状部材81が、長手方向に沿って設けられた分割線によって2片に分割されている点において第参考実施形態と相違している。
管状部材81を構成する2つの小片81a,81bは、それぞれ、チューブ61,62を嵌合状態に取り付ける貫通孔または溝82,83を備えている。また、対物ユニット22の細径部28aを挟むようにして取り付けられたときに、小片81a,81bの相互に対向する分割面には、極性が反対となるように配置された磁石(連結手段)84が固定されている。
すなわち、対物ユニット22を挟んで半径方向外方から近接させた小片81a,81bの分割面に配置された磁石84どうしを吸着させて円筒状の管状部材81を構成すると、各小片81a,81bに固定されているチューブ61,62が対物ユニット22に取り付けられるようになっている。
このように構成された本実施形態に係る観察補助具80によれば、磁石84どうしを吸着させるだけで、チューブ61,62を対物ユニット22に簡易に取り付けることができる。また、管状部材81を分割線によって対物ユニット22の半径方向に分離することにより、チューブ61,62を対物ユニット22から取り外すことができるので、対物ユニット22による生体組織の観察状態のままで、チューブ61,62を対物ユニット22に対して着脱することができる。
なお、本実施形態においては、管状部材81を構成する小片81a,81bを相互に連結する連結手段として磁石84を採用したが、これに代えて、図14に示されるように、あり形状に形成された凹凸84′を嵌合させることにより2つの小片81a′,81b′を連結する管状部材81′を採用してもよい。
また、上記各実施形態においては、液体供給路を構成するチューブ41,61および液体吸引管路を構成する円環状の流路34、チューブ51,62および貫通孔72aを、全て対物ユニット22の先端面22aと同一位置に配し、観察すべき生体組織Aに対して対物ユニット22の先端面22aを浮かせた状態で観察する際に、生理食塩水等の液体を供給して体液とともに吸引する場合について例示した。これに代えて、図15に示されるように、管状部材29の先端部を対物ユニット22の先端面22aよりも突出して配置することにしてもよい。
このようにすることで、管状部材29の先端を生体Aに接触させると、管状部材29と生体Aとにより囲まれた空間Sが形成されるので、生理食塩水38の供給と、混合液39の吸引とをこの閉じられた空間S内において行うことができる。したがって、供給した生理食塩水38が外部に漏れることなく、対物ユニット22の先端面22aにおける視界確保のために効率的に使用することができる。
また、この場合においては、図15に示されるように、生理食塩水38を供給するチューブ41と混合液39を吸引するチューブ51とを対物ユニット22を挟んで周方向に正反対の位置に配置するとともに、各チューブ41,51の先端を斜めに切断した形態とし、各開口が対物ユニット22の先端面22aの中心方向を向くように配置することが好ましい。このようにすることで、チューブ41から供給される生理食塩水38を対物ユニット22の先端面22aの中心に向けて流入させ、対物ユニット22を挟んで反対側に配置されているチューブ51から効率的に吸引することができる。したがって、対物ユニット22の先端面22aと生体Aとの間の血液等の体液を効率的に除去することができる。
また、この図15の例の場合のように、液体吸引管路を構成するチューブ51の先端を斜めに切断した形態とすることにより、チューブ51の先端が生体Aに突き当てられたときに、生体Aによってチューブ51の先端開口が閉塞されてしまい、混合液の吸引能力が低下してしまうことを防止できる。すなわち、図16(a)に示されるように、チューブ51の先端が生体Aに突き当たっても、先端開口51aが閉じられないように保持されるので、混合液39の吸引能力が低下させられることなく維持される。
同様にして、図16(b)に示されるように、チューブ51の先端開口51a近傍の側壁に、1つまたは2つ以上の貫通孔51bを設けておくことにしてもよい。このようにすることで、先端開口51aが生体Aを吸着することによって閉塞されても、貫通孔51bを介して混合液39の吸引能力を維持することができる。
さらに、図16(c)に示されるように、チューブ51の先端開口51aを対物ユニット22の先端面22aよりも長手方向に若干引っ込んだ位置に配置することにしてもよい。このようにすることで、対物ユニット22の先端面22aを生体Aに密着させて観察する際に、チューブ51の先端開口51aが生体Aによって閉塞されることが防止され、供給され続ける生理食塩水と体液との混合液39の吸引を継続して、生理食塩水等が生体A内に溜まることを防止することができる。
また、この場合には、対物ユニット22の先端面22aを生体Aに密着させた状態での観察と、先端面22aを生体Aに対して若干浮かせた状態での先端面22aと生体Aとの間の隙間の洗浄とを切り替えて行うことが好ましい。すなわち、対物ユニット22の先端面22aを生体Aの表面に密着させる際には、チューブ51による混合液39の吸引力を増大させて、対物ユニット22の先端面22aに生体Aを吸着状態に維持する一方、対物ユニット22の先端面22aの洗浄を行う際には、チューブ51による混合液39の吸引力を低下させて先端面22aから生体Aを離間させ、両者間に生理食塩水が流通可能な隙間を形成することにすればよい。
また、上記実施形態においては、液体供給路および/または液体吸引管路としてチューブ31,41,51,61,62を用い、該チューブ31,41,51,61,62の基端側に、さらに太いチューブあるいはシリンジ36,44の先端を接続するための拡径部34,35を設けることとしたが、これとともに、図17に示されるように、チューブ86の基端側を複数のチューブ87,88に分岐させる分岐部89を設けることにしてもよい。液体供給路側のチューブ41,61に分岐部89を設けることにより、複数のチューブ87,88から液体を供給することが可能となる。
すなわち、複数のチューブ87,88から順次液体を供給することにより、供給する液体の総量を増加させることができる。また、シリンジ44を各チューブ87,88に接続する場合には、1つのシリンジ44の液体を供給し終えたら、他のシリンジ44からの供給を開始し、その間に、供給し終えたシリンジ44を、液体を充填したシリンジ44に交換することにより、液体を供給するシリンジ44を交換しながら、長期間にわたり液体を供給し続けることができる。
また、複数のチューブ87,88を介して液体を吸引することにより、吸引する液体の総量を増加させることができる、また、シリンジ36を各チューブ87,88に接続する場合には、1つのシリンジ36が吸引された液体により充填されたら、他のシリンジ36による吸引を開始し、その間に、吸引し終えたシリンジ36を、空のシリンジ36に交換することにより、液体を吸引するシリンジ36を交換しながら、長期間にわたり液体を吸引し続けることができる。
また、生理食塩水38の他に蛍光薬剤を供給する場合には、図18に示されるように、生体Aに近い位置に分岐部89を設け、蛍光薬剤を充填したシリンジ90を接続することにより蛍光薬剤を供給することにしてもよい。図中符号91はバルブである。このようにすることで、チューブ86,31中に留まる蛍光薬剤量を低減することができ、高価な蛍光薬剤が余分に使用される無駄を省くことができる。
次に、本発明の一実施形態に係る観察補助システム100について、図19〜図21を参照して、以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る観察補助具1と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態に係る観察補助システム100は、上記観察システム2において使用されるものであって、上記観察補助具1と、該観察補助具1に接続される液体供給・吸引装置101と、該液体供給・吸引装置101を制御する制御装置102とを備えている。
液体供給路を構成するチューブ41は、その基端側において拡径部45により拡径されている。図19中、図18に示される蛍光薬剤供給用のシリンジ90が接続されているが、必ずしも必要ではない。
拡径部45により拡径されたチューブ41の基端側には、図20に示されるように、生理食塩水を供給するためのシリンジ44が接続されている。また、シリンジ44には、ヒータ103が取り付けられ、生理食塩水を所定の温度、例えば、観察する生体Aの体温と略同等の温度に調節することができるようになっている。
また、シリンジ44には、該シリンジ44を構成するシリンダ44aを固定するベース104と、固定されたシリンダ44aに対してピストン44bを押し込む駆動装置105とが設けられている。駆動装置105は、ベース104に固定されたリニアガイド106と、該リニアガイド106により直線移動可能に支持されたスライダ107と、該スライダ107に取り付けられたボールネジ108と、ボールネジ108を回転させるモータ109とを備えている。スライダ107は前記ピストン44bに固定され、スライダ107をリニアガイド106に沿って移動させると、ピストン44bがシリンダ44aに対して押し込まれるように構成されている。
液体吸引管路を構成するチューブ31の基端側にも、図21に示されるように、生理食塩水を吸引するためのシリンジ36が接続されている。シリンジ36には、該シリンジ36を構成するシリンダ36aを固定するベース110と、固定されたシリンダ36aに対してピストン36bを引き出す方向に変位させる駆動装置111とが設けられている。駆動装置111は、上記液体供給路用の駆動装置105と同様に、ベース110に固定されたリニアガイド112と、該リニアガイド112により直線移動可能に支持されたスライダ113と、該スライダ113に取り付けられたボールネジ114と、該ボールネジ114を回転させるモータ115とを備えている。スライダ113はピストン36bに固定され、スライダ113をリニアガイド112に沿って移動させると、ピストン36bがシリンダ36aから引き出されるように構成されている。
前記制御装置102は、例えば、前記液体供給路のシリンジ44に取り付けたヒータ103の温度設定を行うダイヤル102aと、生理食塩水を注入するよう駆動装置105を駆動させる駆動スイッチ102bと、生理食塩水を吸引する吸引力を強弱調整するスイッチ102cとを備えている。
また、ここでは図示しないが、例えば、対物ユニット22に変位計を取り付け、対物ユニット22と生体Aとの近接状態を検出して表示することで、スイッチ102cの強弱を調整させるように構成してもよい。また、変位計に代えて、対物ユニット22の先端に設けた圧力センサによって、対物ユニット22の先端面22aと生体Aとの接触状態を検出することにしてもよい。
本実施形態に係る観察補助システム100によれば、光走査型顕微鏡観察装置4により、生体組織Aを観察する際に、制御装置102の作動により、液体供給用のシリンダ44および液体吸引用のシリンダ36を作動させ、かつ、液体供給用のシリンダ44に設けたヒータ103を作動させる。これにより、駆動装置105の作動によって、生体Aと略同等の温度に加温された生理食塩水38がシリンジ44からチューブ41を介して対物ユニット22の先端面22aに供給され、供給された生理食塩水38と体液との混合液39が、駆動装置111の作動によって対物ユニット22の先端面22aから除去される。その結果、観察中に対物ユニット22の視界を向上して鮮明な観察画像を得ることができる。
また、供給する生理食塩水38の温度を、ヒータ103により生体Aの温度と略同等に加温しているので、温度が過度に異なる生理食塩水38が供給されることが防止され、生体にかかる負担を低減して、より長期間にわたる観察においても生体Aを健全な状態に維持することができる。また、駆動装置105,111の作動により生理食塩水38の供給および吸引を安定して行うことができる。
なお、本実施形態に係る観察補助システム100においては、液体供給および液体吸引の両方ともシリンジ44,36を駆動装置105,111により駆動して、生理食塩水38の自動供給および自動吸引を行うこととしたが、これに代えて、いずれか一方または両方とも手動によりシリンジ44,36を駆動することにしてもよい。この場合に、液体供給用のシリンジ44に対しては、図22に示すように、ヒータ103を設けることにしてもよい。
また、上記観察補助システム100においては、液体供給および液体吸引を別々の駆動装置105,111により駆動することとしたが、これに代えて、図23に示されるように、駆動装置116を共通化して、液体の供給および吸引を連動させることにしてもよい。吸引される液体には生体から発生した体液が含まれるため、供給される液体よりも量が多くなるが、チューブ41,31の径あるいはシリンジ44,36の径を調節しておくことにより、供給した生理食塩水38と吸引する混合液39とをバランスさせて、混合液39が生体Aに溜まってしまうことを防止できる。
駆動装置116の共通化によるシリンジの連動は、図23に示されるように、共通化した駆動装置116のスライダ117に両シリンジ44,36のピストン44b,36bを固定し、一方向に移動させるだけで、一方のシリンジ44から生理食塩水38を供給し、他方のシリンジ36に体液を含む混合液39を吸引することができる。図中、符号118はリニアガイド、符号119はボールネジ、符号120はベース、符号121はモータである。
なお、液体の吸引と供給とを連動させる方法としては、図24に示すように、軸線回りに揺動するレバー122を用意し、ベース120に固定した2つのシリンダ44,36のピストン44b,36bをレバー122の両端に係合させる。例えば、レバー122の中心にモータ(図示略)等の駆動源を備えておくことにより、レバー122を一方向に揺動させると、一方のピストン44bはシリンダ44a内に押し込まれる一方、他方のピストン36bはシリンダ36a内から抜き出すように移動させることができる。
上記各実施形態においては、液体を供給または吸引する装置としてシリンジ44,36を例に挙げて説明したが、これに代えて、ローラーポンプ等の他の装置を採用することにしてもよい。また、モータとボールネジとを有する駆動装置を例に挙げて説明したが、他のプランジャ等の任意の駆動装置を採用できる。
本発明の一実施形態に係る観察補助具を備えた観察システムを示す全体構成図である。 図1の観察システムにおける光走査型顕微鏡観察装置に本実施形態に係る観察補助具を取り付けた状態を示す図である。 本実施形態に係る観察補助具の要部を示す斜視図である。 図3の観察補助具の縦断面図である。 本発明の第参考実施形態に係る観察補助具を示す縦断面図である。 本発明の第参考実施形態に係る観察補助具を示す縦断面図である。 図6の観察補助具を先端方向から見た図である。 図6の観察補助具の変形例を示す縦断面図である。 図6の観察補助具の他の変形例を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。 本発明の第参考実施形態に係る観察補助具の一部を示す斜視図である。 本発明の第参考実施形態に係る観察補助具の一部を示す斜視図である。 図11の観察補助具の一部を示す縦断面図である。 本発明の第参考実施形態に係る観察補助具の一部を示す分解斜視図である。 図13の観察補助具の変形例を示す側面図である。 図6の観察補助具の変形例を示す縦断面図である。 液体吸引管路の先端部の変形例を部分的に示す縦断面図である。 液体供給路および液体吸引管路の変形例に係る分岐部を示す図である。 液体供給路の分岐部に設けられた蛍光薬剤供給用シリンジを示す図である。 本発明の一実施形態に係る観察補助システムを備えた観察システムを示す全体構成図である。 図19の観察補助システムの液体供給装置を示す図である。 図19の観察補助システムの液体吸引装置を示す図である。 図20の液体供給装置の変形例を示す図である。 図19の観察補助システムの単一の駆動装置を有する液体供給・吸引装置を示す図である。 図23の変形例を示す図である。
符号の説明
A 生体
1,40,50,60,70,80 観察補助具
22 対物ユニット
22a 先端面
29,71,81 管状部材(取付手段)
31,51,62 チューブ(液体吸引管路)
33 溝(液体供給路)
34 流路
35,45 拡径部
36 シリンジ(液体吸引手段)
38 生理食塩水(液体)
44 シリンジ(液体供給手段)
41,61 チューブ(液体供給路)
51a 先端開口(先端吸引口)
51b 貫通孔(小穴)
52 熱収縮チューブ
63 粘着フィルム(粘着テープ)
63a 粘着層
72a 貫通孔
84 磁石(連結手段)
84′ 凹凸(連結手段)
90 シリンジ(薬剤供給手段)
103 ヒータ(加温手段)
105,111,116 駆動装置(駆動手段)
117 スライダ(連動手段)
122 レバー(連動手段)

Claims (14)

  1. 生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、
    生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、
    該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、
    これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え
    前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、
    前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、
    前記管状部材からなる取付手段が、長手方向に沿う少なくとも1つの分割線により分割可能に設けられるとともに、該分割線における管状部材を連結する連結手段が備えられている観察補助具。
  2. 生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、
    生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、
    該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、
    これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え
    前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、
    前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、
    前記管状部材の先端面が、対物ユニットの先端面よりも前方に配置される観察補助具。
  3. 生体内を観察するための対物ユニットの外面に着脱可能に取り付けられる観察補助具であって、
    生体内の観察部位近傍に液体を導く液体供給路と、
    該液体供給路により観察部位近傍に導かれた液体および観察部位近傍の体液を吸引する液体吸引管路と、
    これら液体供給路および液体吸引管路を対物ユニットの外面に取り付ける取付手段とを備え
    前記取付手段が、前記対物ユニットの外面に嵌合して摩擦により固定され、対物ユニットの外周面との間に、対物ユニットの先端まで延びる円環状の流路を形成する管状部材からなり、
    前記円環状の流路に前記液体吸引管路が接続され、
    前記管状部材からなる取付手段が、長手方向に沿う少なくとも1つの分割線により分割可能に設けられるとともに、該分割線における管状部材を連結する連結手段が備えられ、
    前記管状部材の先端面が、対物ユニットの先端面よりも前方に配置される観察補助具。
  4. 前記液体供給路が、前記取付手段の外面に長手方向に沿って形成された溝からなる請求項1から請求項3のいずれかに記載の観察補助具。
  5. 前記取付手段が、前記液体供給路と前記液体吸引管路とを、対物ユニットを挟んで反対側に位置するように取り付ける請求項1から請求項のいずれかに記載の観察補助具。
  6. 前記液体供給路の先端供給口および前記液体吸引管路の先端吸引口が対物ユニットの先端面よりも先端側において半径方向内方に向けて配置される請求項に記載の観察補助具。
  7. 前記液体吸引管路の先端吸引口が、対物ユニットの先端面よりも後退した位置に配置される請求項1から請求項のいずれかに記載の観察補助具。
  8. 請求項1から請求項のいずれかに記載の観察補助具と、
    前記液体供給路の基端側に接続される液体供給手段と、
    前記液体吸引管路の基端側に接続される液体吸引手段とを備える観察補助システム。
  9. 前記液体供給手段および/または前記液体吸引手段が、それぞれ1本以上のシリンジからなる請求項に記載の観察補助システム。
  10. 前記液体供給手段が、供給する液体を加温する加温手段を備える請求項または請求項に記載の観察補助システム。
  11. 前記液体供給手段による液体の供給と、前記液体吸引手段による液体の吸引とを連動させる連動手段を備える請求項から請求項10のいずれかに記載の観察補助システム。
  12. 前記液体供給路の途中位置に、蛍光薬剤を供給する薬剤供給手段が接続されている請求項から請求項11のいずれかに記載の観察補助システム。
  13. 前記液体供給手段および前記液体吸引手段を駆動する駆動手段を備える請求項から請求項12のいずれかに記載の観察補助システム。
  14. 前記液体供給手段により供給する液体が、液浸対物レンズ用の液体である請求項に記載の観察補助システム。
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