JP4694008B2 - 電解めっき装置、電気めっき装置用めっき液保持部材、銅配線半導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解めっき装置、電気めっき装置用めっき液保持部材、銅配線半導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェハ上に配線を形成する手法、とりわけ近年においては半導体ウェハ上に銅配線を形成する手法として、電解めっき装置を用いた電解銅めっきに注目が集められている。
【0003】
従来における一般的な電解めっき装置では、めっき槽内にめっき液を満たした状態でめっき液に半導体ウェハを浸漬するとともに、半導体ウェハ側に陰極を接続して電気を流すことにより、成膜を行うようになっている。
【0004】
しかしながら、このような従来装置を用いてファインかつ均一な銅配線を形成するためには、例えば、めっき液を流動させたり、陰極と陽極との距離をある程度確保しておく必要があった。このため、装置が巨大化する傾向にあった。また、この従来装置の場合、1回の成膜に必要なめっき液の量が多く、半導体の低コスト化を達成するうえで不利であった。
【0005】
そこで最近では、上記の問題を解消しうる次世代の電解めっき装置が提案されるに至っている。この新しい電解めっき装置は、めっき液供給部、陰極、陽極、めっき液保持部材等を備えている。めっき供給部の下端部には陽極が設けられている。陽極にはめっき液を通過させるためのスリットが形成されている。陽極の下面側には、多孔質アルミナからなるめっき液保持部材が設けられている。一方、陰極には半導体ウェハが接触した状態で支持される。半導体ウェハの上面と、めっき液保持部材の下面とは、僅かな間隙を隔てて対向した状態となる。
【0006】
従って、めっき液供給部に供給されてきためっき液は、陽極のスリットを通過してめっき液保持部材に到った後、めっき液保持部材の気孔を介して半導体ウェハ側に供給される。この状態で電極間に通電を行うことにより半導体ウェハ上に電解めっきが施され、静止浴であってもファインな銅配線が形成されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来装置の場合、めっき液保持部材が多孔質アルミナ製であることから、当該部材がめっき液に侵蝕されやすい。ゆえに、めっき液中に重金属等の不純物が溶出し、これによりめっき液の組成劣化が起こる。そのため、銅めっきの析出挙動が不安定になりやすく、均一な膜厚の銅配線が得られないという欠点がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、均一な膜厚のめっき層を形成することができる電解めっき装置、電気めっき装置用めっき液保持部材を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、均一な膜厚の銅配線を備えた銅配線半導体を確実に製造することができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、めっき液が通過可能にスリットが形成された構造を有する陽極と、前記陽極の下面側に配置される被めっき物に接触する陰極と、前記陽極の下面に接するように設けられる多孔性のめっき液保持部材とを備え、前記めっき液が前記陽極及び前記めっき液保持部材を介して前記被めっき物に供給され、前記めっき液保持部材と前記被めっき物との間に溜まる電解めっき装置において、前記めっき液保持部材が多孔質炭化珪素製であり、前記めっき液保持部材の体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmであることを特徴とする電解めっき装置をその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記めっき液保持部材の気孔率は20%〜50%、平均気孔径は10μm〜60μmであるとした。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記めっき液保持部材の気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値は0.20以下であるとした。
【0012】
請求項4に記載の発明では、多孔質炭化珪素からなり、体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmである電解めっき装置用めっき液保持部材をその要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明では、多孔質炭化珪素からなり、体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmであるめっき液保持部材を実質的に陽極として用いて半導体ウェハ上に電解銅めっきを施すことにより、前記半導体ウェハ上に銅配線を形成することを特徴とする銅配線半導体の製造方法をその要旨とする。
【0014】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1,4に記載の発明によると、多孔質アルミナに比べて耐食性に優れた多孔質炭化珪素を用いためっき液保持部材であるため、当該部材がめっき液により侵蝕されにくくなり、めっき液中への不純物の溶出が防止される。これによりめっき液の組成劣化が回避され、めっきの析出挙動が安定化する。また、多孔質アルミナに比べて電気伝導性に優れた多孔質炭化珪素を用いためっき液保持部材であるため、当該部材が実質的に陽極としての役割を果たすようになる。よって、擬似的な陽極である当該部材が被めっき物に対してより近接した状態となり、被めっき物付近のめっき液に強くかつ安定した電界を与えることができる。さらに、高コスト化を伴うことなく、均一な膜厚のめっき層を確実に形成することができる。体積固有抵抗が10 1 Ωm未満のものを実現しようとすると、材料の選定や焼成条件の設定等が難しくなって製造コストが高騰するおそれがあるばかりでなく、多孔性が損なわれるおそれもある。逆に10 5 Ωmを超える場合には電気伝導性が低くなりすぎてしまい、めっき液保持部材が実質的に陽極として機能しなくなるおそれがある。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、めっき液保持部材の気孔率及び平均気孔径の値を上記好適範囲内にて設定することにより、当該部材からめっき液が均一に滲出可能となる。その結果、均一な膜厚のめっき層を確実に形成することができる。
【0016】
気孔率が20%未満であると、圧力損失の増大によりめっき液がスムーズに流れにくくなることで、めっき液の滲出しやすさが場所によってバラついてしまう結果、めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。逆に気孔率が50%を超える場合には、圧力損失の増大は避けられるものの、めっき液を保持する性質が損なわれる。ゆえに、この場合においてもめっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0017】
平均気孔径が10μm未満であると、圧力損失の増大によりめっき液がスムーズに流れにくくなることで、めっき液の滲出しやすさが場所によってバラついてしまう結果、めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。逆に平均気孔径が60μmを超える場合には、圧力損失の増大は避けられるものの、めっき液を保持する性質が損なわれる。ゆえに、この場合においてもめっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0018】
請求項3に記載の発明によると、気孔径の大きさが揃った状態になる結果、めっき液の滲出しやすさが場所によってバラつかなくなる。ゆえに、めっき層の膜厚がよりいっそう均一になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態の電解銅めっき装置1を図1に基づき詳細に説明する。
【0021】
この電解銅めっき装置1を構成する陰極2は、上端側にいくほど拡径する円環状の部材であって、その下端側にはフランジ3が形成されている。陰極2は例えば導電性の金属材料を用いて形成されている。陰極2の下端側開口部4の径は、被めっき物である半導体ウェハ(例えばシリコンウェハ)5の径よりも若干小さめに設定されている。半導体ウェハ5は図示しないステージにより下方側からフランジ3に対して押圧される。その結果、半導体ウェハ5の上面側外周部がフランジ3の下面側に密着し、この状態で半導体ウェハ5が保持されるようになっている。このとき、陰極2はいわば有底状となるため、半導体ウェハ5の上面側にできる領域には電解銅めっき液15が溜まるようになっている。
【0022】
一方、この電解銅めっき装置1を構成する陽極ホルダ12は、使用時において、陰極2の上方において近接した状態で配置される。陽極ホルダ12の下端側には開口部13が設けられており、その開口部13付近には板状の陽極14が取り付けられている。陽極14は例えば導電性の金属材料を用いて円形状に形成されている。陽極14の複数箇所には、銅めっき液15を上面側から下面側に通過させるための構造としてスリット16が設けられている。陽極ホルダ12の上面には、めっき液供給管17及びめっき液回収管18がそれぞれ設けられている。めっき液供給管17は、陽極ホルダ12及び陽極14によって区画される空間19と、図示しないめっき液タンクとの間を連通させている。銅めっき液15が不足すると、このめっき液供給管17を介して前記空間19内に銅めっき液15が補充されるようになっている。めっき液回収管18は、前記空間19内における銅めっき液15の量が一定量を超えたときに、その余剰分を回収する役割を果たしている。なお、回収された銅めっき液15は、めっき液タンクに戻されて再利用されるようになっている。
【0023】
陽極ホルダ12の開口部13には、陽極14の下面側に接するようにしてめっき液保持部材としてのめっき液保持プレート21が設けられている。めっき液保持プレート21は、陽極14とほぼ同じ大きさかつほぼ同じ形状となっている。めっき液保持プレート21は、銅めっき液15を自身の気孔内に保持することにより、陽極ホルダ12の移送時における下面側からの銅めっき液15の流出を防止する役割も果たしている。なお、めっき液保持プレート21の下面は、半導体ウェハ5の上面と僅かな間隙を隔てた状態で対向配置されている。具体的にいうと、本実施形態では前記間隙の大きさが1mm程度となるように設定されている。また、めっき液保持プレート21の外周部には、当該部分からの銅めっき液15の滲出を防止するためのシールドラバー22が配設されている。
【0024】
次に、本実施形態において用いられるめっき液保持プレート21の材質等について詳細に説明する。
本実施形態のめっき液保持プレート21は、多孔性のセラミック材料からなり、具体的には多孔質炭化珪素(多孔質SiC)からなる。多孔質炭化珪素を選択した理由は、多孔質炭化珪素は多孔質アルミナに比べて耐食性及び電気伝導性に優れており、めっき液保持プレート21用材料として極めて好都合だからである。
【0025】
めっき液保持プレート21の気孔率は20%〜50%であることがよく、30%〜45%であることがなおよい。また、平均気孔径は10μm〜60μmであることがよく、20μm〜50μmであることがなおよい。
【0026】
気孔率が20%未満であると、圧力損失の増大により銅めっき液15がスムーズに流れにくくなることで、銅めっき液15の滲出しやすさが場所によってバラついてしまう。即ち、めっき液保持プレート21の下面側から供給される銅めっき液15の量が不均一になり、結果として銅めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。逆に気孔率が50%を超える場合には、圧力損失の増大は避けられるものの、銅めっき液15を保持する性質が損なわれる。ゆえに、この場合においてもめっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0027】
平均気孔径が10μm未満であると、圧力損失の増大により銅めっき液15がスムーズに流れにくくなることで、銅めっき液15の滲出しやすさが場所によってバラついてしまう。即ち、めっき液保持プレート21の下面側から供給されるめっき液15の量が不均一になり、結果として銅めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。逆に平均気孔径が60μmを超える場合には、圧力損失の増大は避けられるものの、銅めっき液15を保持する性質が損なわれる。ゆえに、この場合においても銅めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0028】
めっき液保持プレート21の面内の気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値は0.20以下、特には0.18以下であることが好ましい。即ち、面内の(特に半導体ウェハ5側を向いている面である下側面内の)気孔径の大きさが、できるだけ揃っていることが望ましい。
【0029】
標準偏差の値が上記値を超える場合、つまり気孔径の大きさが不揃いである場合には、銅めっき液15の滲出しやすさが場所によってバラついてしまう。即ち、めっき液保持プレート21の下面側から供給される銅めっき液15の量が不均一になり、結果として銅めっき層の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0030】
めっき液保持プレート21の体積固有抵抗は101Ωm〜105Ωmであることがよく、102Ωm〜104Ωmであることがなおよい。
体積固有抵抗が101Ωm未満のものを実現しようとすると、材料の選定や焼成条件の設定等が難しくなって、めっき液保持プレート21の製造コストが高騰するおそれがある。また、そればかりでなくめっき液保持プレート21の多孔性が損なわれ、めっき液保持性という基本性能が損なわれるおそれもある。逆に105Ωmを超える場合には電気伝導性が低くなりすぎてしまい、めっき液保持プレート21が実質的に陽極14として機能しなくなるおそれがある。ゆえに、半導体ウェハ5の上面付近の銅めっき液15に、強くかつ安定した電界を与えることができなくなるおそれがある。
【0031】
なお、めっき液保持プレート21の密度は1.6g/cm3〜2.5g/cm3、 曲げ強度は30MPa〜150MPa、ヤング率は50GPa〜200GPa、熱伝導率は50W/m・K〜150W/m・Kであることがよい。また、めっき液保持プレート21を構成する多孔質炭化珪素としては、高純度多孔質炭化珪素が用いられることがよい。具体的には、不純物である重金属の濃度が0.5%以下の多孔質炭化珪素が用いられることがよい。
【0032】
ここで、本実施形態のめっき液保持プレート21を製造する方法について説明する。まず、原料である炭化珪素粉末を1種または2種以上用意する。そして、炭化珪素粉末に溶剤やバインダ等を配合したうえで、これをよく混合する。次いで、この混合物を乾燥した後、その乾燥混合物を顆粒化する。そして、前記造粒工程により得られた顆粒を材料として成形を行い、円板状の成形体を作製する。この場合、成形時の密度分布が±0.05g/cm3の範囲内に収まるように条件を設定することがよい。本実施形態では、これを実現するためのプレス法として静水圧プレスを採用している。次に、成形工程により得られた成形体を不活性雰囲気下にて2000℃〜2300℃程度の温度で常圧焼成することにより、成形体を焼結させて焼結体(即ちめっき液保持プレート21)を得る。この場合、焼成時における成形体の面内温度分布が±1℃以内に収まるように条件を設定することがよい。
【0033】
次に、上記のように構成されためっき液保持プレート21を用いた電解銅めっき装置1の使用方法について説明する。
この電解銅めっき装置1の場合、めっき液供給管17を経て供給されてきた銅めっき液15が、前記空間19に一定量溜まるようになっている。当該空間19に供給されてきた銅めっき液15は、陽極14のスリット16を通過してめっき液保持プレート21に到る。そして、銅めっき液15はさらにめっき液保持プレート21の気孔を介して半導体ウェハ5の上面側に供給される。従って、この状態で陽極14及び陰極2間に通電を行うことにより、静止浴のまま電解銅めっきが施される。すると、半導体ウェハ5の上面側にあらかじめ掘られた配線用溝を埋めるように銅めっき層が析出し、結果として所望パターン形状の銅配線が形成されるようになっている。
【0034】
【実施例】
[実施例1]
実施例1の作製においては、原料炭化珪素粉末として、GC♯240(信濃電気精錬社製、平均粒径57μm)とGMF−15H2(太平洋ランダム社製、平均粒径0.5μm)とを重量比が7:3となるようにして用いた。そして、これら2種の炭化珪素粉末にさらに水、バインダであるアクリル系樹脂を配合し、これをポットミルを用いてよく混合した。前記混合工程により得られた均一な混合物を所定時間乾燥して水分をある程度除去した後、その乾燥混合物を適量採取し、これをスプレードライヤにより顆粒化した。
【0035】
そして、前記造粒工程により得られた顆粒を材料として、100MPa〜130MPa程度の圧力で静水圧プレスを行い、円板状の成形体を作製した。次に、成形工程により得られた成形体をアルゴン雰囲気下にて2100℃〜2200℃の温度で常圧焼成した。その結果、多孔質炭化珪素製の円板状のめっき液保持プレート21を得た。
【0036】
実施例1のめっき液保持プレート21では、気孔率が約25%、平均気孔径は約15μm、上記標準偏差の値が0.18、体積固有抵抗が103Ωm、密度が2.4g/cm3、曲げ強度が130MPa、熱伝導率が140W/m・K、重金属濃度が0.5%以下であった。
【0037】
そして、このようなめっき液保持プレート21を用いて電解銅めっきを実施したところ、半導体ウェハ5上に均一な膜厚の銅配線を形成することが可能であった。
[実施例2]
実施例2の作製においては、原料炭化珪素粉末として、GC♯240(信濃電気精錬社製、平均粒径57μm)とGMF−15H2(太平洋ランダム社製、平均粒径0.5μm)とを重量比が9:1となるようにして用いた。そして、これら2種の炭化珪素粉末にさらに水、バインダであるアクリル系樹脂を配合し、これを万能混合機を用いてよく混合しながら同時に造粒を行った。
【0038】
そして、前記混合・造粒工程により得られた顆粒を材料として、50MPa程度の圧力で静水圧プレスを行い、円板状の成形体を作製した。次に、成形工程により得られた成形体をアルゴン雰囲気下にて2250℃の温度で常圧焼成した。その結果、多孔質炭化珪素製の円板状のめっき液保持プレート21を得た。
【0039】
実施例2のめっき液保持プレート21では、気孔率が約40%、平均気孔径は約30μm、上記標準偏差の値が0.18、体積固有抵抗が103Ωm、密度が1.9g/cm3、曲げ強度が50MPa、熱伝導率が80W/m・K、重金属濃度が0.5%以下であった。
【0040】
そして、このようなめっき液保持プレート21を用いて電解銅めっきを実施したところ、半導体ウェハ5上に均一な膜厚の銅配線を形成することが可能であった。
【0041】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)この電解銅めっき装置1のめっき液保持プレート21は、多孔質炭化珪素製である。つまり、多孔質アルミナに比べて耐食性に優れた材料を用いためっき保持プレート21であるため、銅めっき液15により侵蝕されにくく、銅めっき液15中への重金属の溶出が防止される。これにより銅めっき液15の組成劣化が回避され、めっきの析出挙動が安定化する。また、多孔質アルミナに比べて電気伝導性に優れた材料を用いためっき液保持プレート21であるため、それ自体が実質的に陽極14としての役割を果たすようになる。よって、擬似的な陽極14であるめっき液保持プレート21が半導体ウェハ5に対してより近接した状態となる。その結果、半導体ウェハ5付近の銅めっき液15に強くかつ安定した電界を与えることができる。
【0042】
以上の理由から、本実施形態の電解銅めっき装置1によれば、均一な膜厚の銅めっき層(即ち銅配線)を半導体ウェハ5上に効率よく形成することができる。
(2)この電解銅めっき装置1では、めっき液保持プレート21の気孔率及び平均気孔径の値を上記好適範囲内にて設定している。ゆえに、めっき液保持プレート21の下面側から銅めっき液15が均一に滲出可能となり、結果として均一な膜厚の銅めっき層を確実に形成することができる。
【0043】
(3)この電解銅めっき装置1では、めっき液保持プレート21の気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値を、上記好適範囲内にて設定している。従って、気孔径の大きさが揃った状態となり、銅めっき液15の滲出しやすさが場所によってバラつかなくなる。ゆえに、銅めっき層の膜厚がよりいっそう均一になる。
【0044】
(4)この電解銅めっき装置1では、めっき液保持プレート21の体積固有抵抗の値を上記好適範囲内にて設定している。従って、高コスト化を伴うことなく、均一な膜厚の銅めっき層を確実に形成することができる。
【0045】
(5)本実施形態のめっき液保持プレート21は硬質な炭化珪素からなるため、陽極ホルダ12の移送時に別の部材に接触したとしても、割れたり欠けたりしにくい。従って、耐久性に優れた装置とすることができる。
【0046】
(6)本実施形態においては、電気伝導性に優れた多孔質炭化珪素からなるめっき液保持プレート21を実質的に陽極14として用いて、半導体ウェハ5上に電解銅めっきを施している。従って、このような製造方法によれば、均一な膜厚の銅配線を備えた銅配線半導体を確実に製造することができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 実施形態の電解めっき装置1は、電解銅めっきを実施する場合のみならず、例えば電解ニッケルめっきや電解金めっき等を実施する場合にも勿論使用可能である。
【0048】
・ 被めっき物はシリコンやガリウム砒素などからなる半導体ウェハ5のみに限定されることはなく、例えばセラミック製、金属製またはプラスティック製の基材などであってもよい。
【0049】
・ 実施形態の電解めっき装置1は、配線の形成のみに利用されるばかりでなく、例えばバンプ等のような半導体における外部接続端子の形成などに利用されることも可能である。さらに、当該電解めっき装置1は、上記配線のように電気を流すことを目的とする金属層の形成のみに利用されるに止まらず、電気を流すことを特に目的としない金属層の形成に使用されても構わない。
【0050】
・ 陽極14におけるスリット16の代わりに、厚さ方向に貫通する孔を形成してもよい。
【0051】
・ 陽極14自体を多孔質炭化珪素製とし、これをめっき液保持部材を兼ねるものとして用いることも可能である。この構成によれば、部品点数が減ることから、電解めっき装置1の構成を簡略化することができる。
【0052】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) めっき液が通過可能な構造を有する多孔性の陽極と、被めっき物に接触する陰極とを備え、めっき液保持部材を兼ねる前記陽極を介して前記めっき液が前記被めっき物に供給される電解めっき装置であって、前記陽極が多孔質炭化珪素製であることを特徴とする電解めっき装置。従って、この技術的思想1に記載の発明によれば、装置の構成を簡略化することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によれば、均一な膜厚のめっき層を形成することができる電解めっき装置を提供することができる。
【0054】
請求項4に記載の発明によれば、均一な膜厚のめっき層を形成することができる電解めっき装置用めっき液保持部材を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、均一な膜厚の銅配線を備えた銅配線半導体を確実に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における電解銅めっき装置の概略断面図。
【符号の説明】
1…電解めっき装置としての電解銅めっき装置、2…陰極、5…被めっき物としての半導体ウェハ、14…陽極、21…めっき液保持部材としてのめっき液保持プレート。
Claims (5)
- めっき液が通過可能にスリットが形成された構造を有する陽極と、前記陽極の下面側に配置される被めっき物に接触する陰極と、前記陽極の下面に接するように設けられる多孔性のめっき液保持部材とを備え、前記めっき液が前記陽極及び前記めっき液保持部材を介して前記被めっき物に供給され、前記めっき液保持部材と前記被めっき物との間に溜まる電解めっき装置において、前記めっき液保持部材が多孔質炭化珪素製であり、前記めっき液保持部材の体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmであることを特徴とする電解めっき装置。
- 前記めっき液保持部材の気孔率は20%〜50%、平均気孔径は10μm〜60μmであることを特徴とする請求項1に記載の電解めっき装置。
- 前記めっき液保持部材の気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値は0.20以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解めっき装置。
- 多孔質炭化珪素からなり、体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmである電解めっき装置用めっき液保持部材。
- 多孔質炭化珪素からなり、体積固有抵抗は10 1 Ωm〜10 5 Ωmであるめっき液保持部材を実質的に陽極として用いて半導体ウェハ上に電解銅めっきを施すことにより、前記半導体ウェハ上に銅配線を形成することを特徴とする銅配線半導体の製造方法。
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