JP4689787B2 - 腹腔内脂肪組織量の分析方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腹腔内脂肪組織量の分析方法およびその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、腹腔内の脂肪組織、とりわけ腸間膜脂肪や大網脂肪など門脈に流入する血管の周囲に存在する脂肪組織への脂肪の蓄積による該組織量の増大が、糖尿病、高脂血症、動脈硬化などの代謝性疾患や、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞などの心血管障害等の疾患の発症と密接に関連することが明らかにされた(内臓脂肪型肥満,1995年、医薬ジャーナル社刊)。そこで、このような疾患の発症リスクを予測するために、腹腔内脂肪組織量の簡便でかつ迅速に処理できる分析方法の開発が求められている。
腹腔内脂肪組織量の分析方法としては、ウエストとヒップの周径比(W/H比)を指標として推定する方法(J. Clin. Endocrinol. Metab., vol.54, p.254, 1982)が報告されているが、W/H比は腹部全体の脂肪量をおおまかに示す値であって皮下脂肪組織量と腹腔内脂肪組織量とを明確には区別できず、よって、W/H比を指標として腹腔内脂肪組織量を推定する方法は、精度の点で必ずしも満足できず、腹腔内脂肪組織量の分析方法としては不充分であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、腹腔内脂肪組織量の分析方法として、精度の点において満足できる簡便でかつ迅速に処理できる分析方法の開発が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、ある特定の蛋白質の血液中濃度が、腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値と正の相関関係にあり、該蛋白質の濃度から腹腔内脂肪組織量を求めることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度を測定することを特徴とする腹腔内脂肪組織量の分析方法、
(2)動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度と前記動物の腹腔内脂肪組織量との正の相関性に基き、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する前記蛋白質の濃度から前記被験動物の腹腔内脂肪組織量を求める工程を含むことを特徴とする腹腔内脂肪組織量の分析方法、
(3)腹腔内脂肪組織量が腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値であることを特徴とする(1)または(2)記載の分析方法、
(4)動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度が免疫化学的分析方法で測定された値であることを特徴とする(2)記載の分析方法、
(5)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度が免疫化学的分析方法で測定された値であることを特徴とする(1)または(2)記載の分析方法、
(6)相関性が、一次関数である相関関係式で表されることを特徴とする(2)記載の分析方法、
(7)動物が、哺乳動物であることを特徴とする(1)または(2)記載の分析方法、
(8)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液が、血液であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の分析方法(以下、(1)〜(8)のいずれかに記載の分析方法を、本発明分析方法と記す。)、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の分析方法により特定期間内での同一個体における腹腔内脂肪組織量の増加または減少を調べ、当該結果に基いて腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することを特徴とする検査方法、
(10)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度の、特定期間内での同一個体における増加または減少を調べ、当該結果に基いて腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することを特徴とする検査方法、
(11)(1)〜(8)のいずれかに記載の分析方法により、被験動物の腹腔内脂肪組織量を求め、当該値と前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の腹腔内脂肪組織量との比較結果に基づいて腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することを特徴とする検査方法、
(12)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度と、前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する前記蛋白質の濃度との比較結果に基づいて、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することを特徴とする検査方法(以下、(9)〜(12)のいずれかに記載の検査方法を、本発明検査方法と記す。)、
(13)動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度を測定することを特徴とする腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の治療効果の判定方法、
(14)被験動物の腹腔内脂肪組織量を分析するための、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の使用、
(15)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質と前記動物の腹腔内脂肪組織量との正の相関性を表すことを特徴とする前記濃度の関数、
(16)被験動物の腹腔内脂肪組織量を分析するための標準試薬として、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質を含有することを特徴とする分析・検査用キット(以下、本発明キットと記す。)、および
(17)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質に対する抗体を含有することを特徴とする(16)記載の分析・検査用キット、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、「腹腔内脂肪組織量」とは、腹腔内の腹直筋、外・内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋、大腰筋および錐体の内側に存在する脂肪組織量を意味し、腹腔内脂肪組織量としては、腹腔内脂肪組織の総量(例えば体積値、重量等)、該総量と比例することが知られている腹部横断面における腹腔内脂肪組織面積値(Int.J. Obesity, vol.17, p.187, 1993)等を用いることができる。「腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積」とは、症状から見た画像診断(日本医師会編)に記載された方法、例えばコンピューター断層撮影(computed tomography)法(内臓脂肪型肥満,1995、医薬ジャーナル社刊。以下、CTスキャン法と記す。)、超音波検査法、磁気共鳴映像法などの方法により得られる腹部横断面の撮影像において、腹腔内すなわち腹直筋、外・内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋、大腰筋および錐体の内側にみられる脂肪組織が占める面積を指す。また、「腹部」とは、腹腔内脂肪組織面積値を測定する場合に通常対象とされる測定部位であって、概ね、胸部との境界をなす横隔膜より下部であって鼠径部より上部を指す。
【0006】
本発明分析方法において用いられる蛋白質は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質(以下、一括して本蛋白質という。)であって、具体的には例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質であって配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質等があげられる。ここで、前記の「アミノ酸の欠失、置換もしくは付加」には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異、等が含まれる。
【0007】
本発明において、被験動物の腹腔内脂肪組織量を分析するには、動物、好ましくは被験動物と同じ種の動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する本蛋白質の濃度を測定する。また、該濃度と前記動物の腹腔内脂肪組織量との相関関係に基づき、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度から前記被験動物の腹腔内脂肪組織量を求める。動物の体液としては、例えば血液、尿、唾液等を、組織としては、例えば腸間膜脂肪組織、大網脂肪組織等の腹腔内脂肪組織等を、細胞としては腸間膜脂肪組織、大網脂肪組織等の腹腔内脂肪組織中に存在する脂肪細胞等をあげることができる。前記の動物の体液、組織、細胞のうち、血液を好ましいものとして挙げることができる。また、動物の体液、組織、細胞に、必要に応じて、例えばテフロンホモジナイザー等の破砕機による破砕処理、遠心分離機等による固形分除去処理等の後処理を施すことによって試料液または検査液を調製してもよい。
動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する本蛋白質の濃度と前記動物の腹腔内脂肪組織量との相関関係は、例えば次のようにして求められる。まず、該試料液中の本蛋白質濃度は、動物、好ましくは単一種の動物の複数の個体について、例えば後述の免疫化学的分析方法により測定される。次に、該試料液中の本蛋白質濃度を測定した各個体の腹腔内脂肪組織量は、例えば腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値として求められる。該面積値を測定する場合、例えばCTスキャン法、超音波検査法、磁気共鳴映像法等が用いられる。CTスキャン法による腹部横断面の撮影方法は、具体的には、「内臓脂肪型肥満(1995、医薬ジャーナル社刊)」に記載の方法に準じて行うことができる。該腹部横断面の撮影において対象とされる部位としては、腹腔内脂肪組織量を調べる際に通常測定対象とされ、該脂肪組織量が正確に調べられる部位であれば良く、好ましくは、臍位を挙げることができる。各個体の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する本蛋白質の濃度がX軸に、腹腔内脂肪組織量、例えば腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値がY軸にプロットされると、該試料液中の本蛋白質の濃度と腹腔内脂肪組織量とは正の相関関係を示し、得られた複数のプロットを統計学的に処理することにより、該試料液中の本蛋白質の濃度と腹腔内脂肪組織量とは互いに他の関数として表される。即ち、2つの値の間の相関関係式、例えば一次関数である相関関係式 Y=aX+b が求められる。ここで、プロット数が多いほど該相関関係式の信頼性(即ち、相関関係数)が高まる。より具体的なプロット数としては、例えば50〜500程度を挙げることができ、一例であるが、100程度で約0.7程度の相関関係数を得ることができる。
被験動物の腹腔内脂肪組織量を求めるには、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度を、例えば後述するような方法により測定する。その測定値を、先に求められた相関性に基き、例えば相関関係式 Y=aX+b のXに代入して演算することにより得られるYの値として、前記被験動物の腹腔内脂肪組織量を求めることができる。
【0008】
次に、本発明検査方法について説明する。腹腔内脂肪の過剰な蓄積は、糖尿病、高脂血症、動脈硬化などの代謝性疾患や、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞などの心血管障害等の疾患の発症と密接に関連することがすでに明らかにされており(内臓脂肪型肥満,1995年、医薬ジャーナル社刊)、さらに、前述のとおり試料液中の本蛋白質の濃度と腹腔内脂肪組織量とは正の相関関係を示すことから、試料液中の本蛋白質の濃度は前記疾患の発症と密接に関連する。よって、(1)本発明分析方法を用いて特定期間内での被験動物同一個体における腹腔内脂肪組織量の増加または減少を調べることによって、(2)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度の、特定期間内での同一個体における増加または減少を調べることによって、(3)本発明分析方法を用いて被験動物の腹腔内脂肪組織量を求め、当該値と前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の腹腔内脂肪組織量とを比較することによって、または、(4)被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度と、前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度とを比較することによって、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することができる。
例えば、本発明分析方法によって被験動物の腹腔内脂肪組織量を求める。特定期間後、例えば0.5ヶ月以上の期間後、改めて前記被験動物同一個体の腹腔内脂肪組織量を求め、これらの値を比較すれば、該個体の腹腔内脂肪組織量の増加又は減少を知ることができる。また、複数回、例えば3回以上の同一個体の腹腔内脂肪組織量を記録しておけば、その個体の腹腔内脂肪組織量の経時的な推移を知ることもできる。これによって、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクを予測することができる。即ち、被験動物の腹腔内脂肪組織量が増加すれば、前記疾患の発症リスクが高まると予測され、逆に被験動物の腹腔内脂肪組織量が減少すれば、前記疾患の発症リスクが低くなると予測される。もちろん、被験動物の腹腔内脂肪組織量の代わりに、被験動物の体液、組織、細胞もしくはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度を直接用いてもよい。
また、本発明分析方法を用いて求められる被験動物の腹腔内脂肪組織量を腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値で表すことによって、該面積値が該疾患の発症リスクが高いとされる基準面積値より大きい場合には、前記疾患の発症リスクが高いと予測され、逆に、該面積値が該疾患の発症リスクが高いとされる基準面積値より小さい場合には、前記疾患の発症リスクが低いと予測される。該疾患の発症リスクが高いとされる基準面積値は、被験動物の種、性別、年齢、疾患の種類等によって異なるが、例えばヒトの場合の最適な基準値として、例えば90〜130cm2 程度を挙げることができる。
また、本発明分析方法を用いて求められる被験動物の腹腔内脂肪組織量、または被験動物の体液、組織、細胞もしくはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度を、例えば被験動物と近い種、好ましくは同じ種(さらに被験動物がヒトの場合、同じ人種)、同じ性別、近い年齢の健康状態の個体を中心として構成される集団から得られた腹腔内脂肪組織量の平均値または検査液中の本蛋白質の濃度の平均値と比較して、被験動物の値がこれら平均値よりも高ければ高いほど前記疾患の発症リスクは高くなる。疾患の種類にもよるが、例えば前記平均値の約2倍程度であれば前記疾患の発症リスクが高いと予測され、さらには前記平均値の約3倍程度であれば極めて発症リスクが高いと予測される。
以上のような検査方法は、被験動物の健康管理上極めて有用である。
また、本発明は、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度を測定することによって、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患に対する投薬等の治療の効果を判定することにも有用である。
本蛋白質は、被験動物の腹腔内脂肪組織量を分析するため、即ち、本蛋白質の濃度と動物の腹腔内脂肪組織量との正の相関性に基き、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度から前記被験動物の腹腔内脂肪組織量を求める工程を含むことを特徴とする腹腔内脂肪組織量の分析に使用することができる。
【0009】
上記のような本発明分析方法および本発明検査方法が適用可能な被験動物としては、例えば、哺乳動物を挙げることができ、好ましくは、ヒト、サル等をあげることができる。
【0010】
動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中、または被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する本蛋白質の濃度の測定方法は、該蛋白質を特異的に識別できる方法であれば良く、例えば、
1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質に対する抗体を用いた免疫化学的分析方法、
2)試料液または検査液を遠心分離して得られる上清を液体クロマトグラフィーに導入することによって、該上清に含まれる蛋白質を分離し分画した後、質量スペクトル分析で本蛋白質を同定・定量する方法、
3)試料液または検査液にアルブミン、免疫グロブリン等不要な蛋白質を除去する前処理を行った後、2次元電気泳動に供し、蛋白質の等電点と分子量の差異に基づいて試料中の成分を2次元的に分離・展開することにより、本蛋白質のスポットを同定し、定量する方法(Proteome Research: New Frontiers in Functional Genomics, p.190, 1997;Springer刊)、
4)ランダムに合成した分子ライブラリーから、本蛋白質を特異的に認識することのできる分子(DNA、RNA、蛋白質、低分子化合物など)を選抜し、該分子への特異性と親和性により、試料液または検査液の中から本蛋白質を特異的に分離・定量する方法、
などをあげることができる。
【0011】
上記のような方法のうち、具体例として免疫化学的分析方法について以下に詳述する。
(1)抗原の調製
前記免疫化学的分析方法に使用される抗体を調製するために、まず、抗原を作製する。該抗原としては、例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質(以下、抗原蛋白質と記す。)を用いることができる。
抗原蛋白質は、抗原蛋白質をコードする遺伝子、例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、具体的には配列番号6で示される塩基配列を有するDNAを用いて、通常の遺伝子工学的方法(例えば、J.,Sambrook, E.,F.,Frisch, T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載されている方法)に準じて大量に製造・取得することが出来る。より詳細には、抗原蛋白質をコードする遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養すればよい。
宿主細胞としては、例えば原核生物である微生物細胞または真核生物である微生物細胞もしくは哺乳類、昆虫等の動物細胞をあげることができ、好ましくは抗原蛋白質の大量調製が容易な点で例えば大腸菌等を挙げることができる。
プラスミドとしては、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーをもつ発現ベクターに、抗原蛋白質をコードする遺伝子が導入されたものを好ましくあげることができる。なお、発現ベクターは、各種のものが市販されており、例えば、大腸菌での発現に使用するには、lac,trp,tacなどのプロモーターを含む発現ベクターがファルマシア社、宝酒造等から市販されている。該発現ベクターに抗原蛋白質をコードする遺伝子を導入するために用いられる制限酵素も宝酒造等から市販されている。さらには抗原蛋白質をコードする遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結することにより、さらなる高発現が可能となる場合がある。リボゾーム結合領域としてはGuarente.Lら(Cell 20 p543(1980)) の報告や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms p202 (1982) 講談社)の報告が知られている。
前記のようにして得られたプラスミドは、通常の遺伝子工学的方法により前記宿主細胞に導入することができる。
宿主細胞の培養は、通常の微生物培養に使用される方法によって行うことができる。例えば適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、液体培養のいずれでも可能であり、好ましくは、通気撹拌培養方法をあげることができる。
この様にして得られた宿主細胞からの、抗原蛋白質の調製は、一般の蛋白質の単離・精製に通常使用される方法を組み合わせて実施すれば良い。例えば、培養終了後、菌体を遠心分離等で集め、破砕または溶菌せしめ、必要であれば蛋白質の可溶化を行い、イオン交換,疎水,ゲルろ過等の各種クロマトグラフィーを用いた工程を組み合わせて精製すれば良い。さらに、必要であれば蛋白質の高次構造を復元する操作を行ってもよい。
【0012】
前記免疫化学的分析方法に使用される抗体を調製するために、下記のような方法によって作製された抗原を用いてもよい。例えば、本蛋白質のアミノ酸配列のうち特有な部分アミノ酸配列を含む抗原性ペプチドを高分子量化する方法、または該抗原性ペプチドを直接的またはスペーサーを介して間接的に高分子量担体分子に結合した複合体を得る方法が挙げられる。これらの方法は、それ自身では低分子量で抗原性が低い、すなわち不完全抗原である抗原性ペプチドを、高分子量化することで完全抗原化する方法である。以下に、抗原性ペプチドの完全抗原化工程を述べる。
抗原性ペプチドの選抜の仕方としては、たとえば、抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社刊)に記載の蛋白質中のエピトープ予測法を用いて行うことができる。通常、10〜20個のアミノ酸から成るペプチドを抗原性ペプチドとして選抜する。用いられる特有なアミノ酸配列を含む抗原性ペプチドは、純度の高いものが好ましいが、その合成および精製方法についても、抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社刊)に記載されている。たとえば、必要に応じて事前に高速液体クロマトグラフィー等の通常の方法により精製することができる。
抗原性ペプチドを高分子量化する方法としては、例えばTamらの考案したMAP(Multuple antigen peptide)法(Proc. Natl.Acad.Sci. USA,vol.85,p.5409,1988)がある。この方法は、抗原性ペプチド合成の際にカルボキシル側にリジン残基を導入し、その際リジンのαおよびεアミノ基を利用してペプチドを順次枝分かれさせることで高分子量化し、抗原性を上昇させる手法である。すでに枝分かれしたリジン残基が結合した状態のMAP用樹脂が種々市販されているので、これに抗原蛋白質のアミノ酸配列のうち特有な部分アミノ酸配列を含む抗原性ペプチドの各アミノ酸を、通常のペプチド合成方法で順次結合させてペプチド鎖を伸長させれば良い。
抗原蛋白質のアミノ酸配列のうち、特有な部分アミノ酸配列を含む抗原性ペプチドを直接的にまたはスペーサーを介して間接的に高分子量担体分子に結合した複合体を得る方法で、抗原性ペプチドを結合するのに用いられる高分子量担体分子は、特有なアミノ酸配列を含む抗原性ペプチドおよびこれらにスペーサーが結合した化合物(以下、両者のことをまとめて不完全抗原と記す)との連結反応に自由に利用可能な反応基を有し、かつ該不完全抗原に連結されることによりそれに免疫原性を付与し得るか、または既に存在するそれらの免疫原性を高め得る巨大分子化合物であればよい。自由に利用可能な反応性アミノ基を含む巨大分子化合物が特に好ましい。例えば、分子量が約1万から約15万の間のリジンに富むタンパク質等をあげることができる。具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA:分子量 66200) 、ヒト血清アルブミン(HSA:分子量 58000) 、ウサギ血清アルブミン(RSA:分子量 68000) 、ヤギ血清アルブミン(GSA:分子量 68000) またはキーホールカサガイヘモシアニン(KLH:分子量>1000000)等があげられる。その他の巨大分子化合物が上記の要求に合致しさえすれば、それらを担体分子として使用することは可能であり、そのような化合物には、例えば、ブタチログロブリン、B2ミクログロブリン、ヘモシアニン、免疫グロブリン、毒素(コレラ毒素、破傷風毒素、ジフテリア毒素その他)、多糖、リポ多糖、天然または合成ポリアデニル酸およびポリウリジル酸、ポリアラニルおよびポリリシンポリペプチド、または細胞膜成分、例えばホルマリンまたはグルタルアルデヒド処理赤血球細胞膜等をあげることができる。
上記の不完全抗原の高分子担体分子への結合方法は、不完全抗原中の特有なアミノ酸配列部位が自由に利用可能のままであり、そのため特異的な免疫応答が誘発可能な、すなわち特異的な抗体の産生を誘導可能にするような方法であればよい。具体的には、例えば、(1) 不完全抗原中の特有なアミノ酸配列部位ができるだけ外側になるような不完全抗原を選択し、かつ(2) 選択された不完全抗原中の特有なアミノ酸配列部位が高分子担体分子からできるだけ外側になるようにする、ことが好ましい。
不完全抗原の反応基が反応性アミノ基の場合には、ジアルデヒド、例えばグルタルアルデヒドを用いてスペーサーの反応基を高分子量担体分子の反応性アミノ基の1つに結合させる。不完全抗原の反応基が反応性SH基の場合には、例えば酸化反応により不完全抗原の反応基を高分子量担体分子の反応性SH基の1つに結合させる。不完全抗原の反応基が反応性カルボキシル基の場合には、例えばカルボジイミド、好ましくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて不完全抗原の反応基を高分子量担体分子の反応性アミノ基の1つに結合させる。具体的な例として、例えば、Chem. Pharm. Bull.31,(11), 4001-4007 (1983) に記載されるH.Hosodaらによる活性エステル法またはJ.Biol. Chem.,234, 1090-1094 (1959) に記載されるB.F.Erlangerらによる混合酸無水物法等により、反応性カルボキシル基を有する不完全抗原を高分子量担体分子の反応性アミノ基に結合させることにより製造することができる。
スペーサーを介して間接的に連結する場合に用いられるスペーサーは、高分子量担体分子の自由に利用可能な反応基の共有結合を形成し得る少なくとも1種またはそれ以上の反応基を含む化合物である。例えば、2個から16個の間の架橋性炭素原子を含み、かつ反応基として1個またはそれ以上の反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、マレイミド基またはSH基等を有する化合物をあげることができる。具体的には、一般式 H2N(CH2nCOOH(nは2から16までの整数)が好ましいものとしてあげられる。スペーサーの特有なアミノ酸配列を含む抗原性ペプチドへの連結は、前記の不完全抗原の反応基を高分子量担体分子の反応基の1つに結合させる方法と同様な方法を用いることができる。
【0013】
(2)哺乳動物の免疫感作化工程および抗体取得
このようにして得られた抗原を用いて、例えば、J. ASSOC. OFF. ANAL. CHEM. 70(6) 1025-1027 (1987) 等に記載されるW.H.Newsome 等の通常の免疫感作の方法に従い、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ等の哺乳動物を免疫する。抗原は、1回または複数回投与すればよい。
抗原は、例えば7ないし30日、特に12ないし16日間隔で3または4回の投与等が好ましい。投与量は1回につき、例えば、抗原約0.05から2mg程度を目安とする。投与経路は、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を選択することができ、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に行われうる注射が好ましい投与形態である。さらに皮下注射と腹膜腔内注射との組合せが特に好ましい。なおこの場合、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバンド(Aracel A, Bayol F, 結核死菌を混合したもの)、RAS〔MPL (Monophosphoryl Lipid A) + TDM (Synthetic Trehalose Dicorynomycolate) + CWS (Cell Wall Skeleton) アジュバントシステム]、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントの1種を含有するナトリウム系リン酸緩衝液、生理食塩水等に溶解して用いられるが、投与経路や条件等によっては、上記のようなアジュバントを使用しないこともある。ここでアジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
そして、上記の哺乳動物を 0.5ないし4ケ月間処置せずに放置した後、該哺乳動物の血液を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定する。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば100μgないし1mgの抗原の投与量で1回ないし5回の投与が行われる。最後の投与の1ないし2ケ月間後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いることによる沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清とすることで本発明に用いる抗体を得ることができる。なお抗血清は、例えば、56℃で30分間処理することによって補体系の不活性化を実施してもよい。
また、上記の免疫感作した哺乳動物から免疫適格B細胞を単離し、該免疫適格B細胞を連続的に細胞分裂し得る腫瘍細胞と融合し、生成する融合物を単離する。そして選択の後、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をクローン化し、そしてモノクローナル抗体を製造するために該ハイブリドーマ細胞を試験管内または生体内で培養することにより、高度の特異性および親和性を有する抗体を製造することも可能である。
【0014】
(3)抗体を用いた蛋白質の定量方法
以下に、代表例として、前記のようにして調製した抗体を用いる本蛋白質の濃度を測定する方法につき述べる。なお、測定に用いる抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、また、抗体のクラスやサブクラスの制限もなく、抗体活性を有する限りFabやFab’のようなフラグメントでもかまわない。
(A)イムノブロット法
固体支持材に結合される本蛋白質を、該蛋白質に対する抗体(以下、1次抗体と記す。)によって認識させ、該抗体を検出する方法であり、例えば、Antibodies−A Laboratory Manual, p.471 (1988; Cold Spring Harbor Laboratory刊)に原理と概略が説明されている。
固体支持材としては、膜、シート、フィルター等の形状にされたニトロセルロースが一般的に使用されるが、本蛋白質の吸着が良く、且つ本蛋白質の抗原性を消失させないものであれば特に制限はない。ニトロセルロースメンブランを使用する場合、本蛋白質のニトロセルロースメンブランへの結合は、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の適当な緩衝液に本蛋白質が適切な濃度になるように希釈して得られた溶液をニトロセルロースメンブラン上にスポットする。なお、定量化のためのスポット量は、1次抗体の量が過剰になるような量が望ましく、1μl/3mm角程度がよい。また、本蛋白質を1次抗体によって認識させるためには、本蛋白質を含む試料をあらかじめ0.1% (w/v) SDS等で処理しておくかそれともニトロセルロースへメンブランへの結合時に使用する緩衝液に0.1%(w/v)SDS等を含ませて処理するとよい。または、本蛋白質を含む試料をリン酸緩衝生理食塩水等の適当な緩衝液で希釈し、適当な濃度のアクリルアミドゲルで電気泳動分離する。電気泳動後の本蛋白質を、エレクトロブロッティング法あるいはセミドライ法(バイオ実験イラストレイテッド5、p.105;秀潤社刊)を用いて、Hybond-N [アマシャム] などの適当なメンブランに移行させる。
このようにしてスポットされたニトロセルロースメンブランまたは電気泳動後の本蛋白質を移行させたニトロセルロースメンブラン上で、本蛋白質の存在する部位以外への、抗体の非特異的な吸着を防止するために、本蛋白質を結合させたニトロセルロースメンブランを1次抗体によって認識されない高分子量担体分子、すなわち、ゼラチン、スキムミルクまたは前記の特有なアミノ酸配列を含む抗原性ペプチドの完全抗原化工程において用いることができる高分子量担体分子のうちで、1次抗体の製造において用いられない高分子量担体分子(例えばヤギ、ウシ等の別種の動物の血清アルブミン)を含む溶液と約20分間から約24時間、室温〜37℃で保温することによって該高分子量担体分子でニトロセルロースメンブランの表面を覆う。保温後、ニトロセルロースメンブランを洗浄して遊離状態にある上記の高分子量担体分子を除去する。このように調製されたニトロセルロースメンブランを1次抗体を含む調製液と混合した後、約10分間から約3時間、室温〜37℃で振とうしながら保温する。なお1次抗体を含む調製液とは、1次抗体を遊離の状態で、蒸留水、緩衝液、生理食塩水等の溶液中に存在しうる調製液をいう。このようにして、本蛋白質を1次抗体によって認識させる。つぎに、その抗体を検出する方法について説明する。
1次抗体が、例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等の酵素等で標識されている場合には、保温した後、遊離の状態にある1次抗体を洗浄によって除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて、発色等で反応を測定することによって1次抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じるので、該発色に相当する波長の吸収を定量すれば本蛋白質の濃度を測定することができる。ぺルオキシダーゼ標識された抗体と抗原複合体の検出の別法としては、化学発光により目的の抗原に由来するシグナルをX線フィルム上に検出することができるECL検出システム(Clin.Chem.vol.25, p.1531,1979)[アマシャム]が市販されている。この方法では、X線フィルム上に検出されたシグナルを、デンシトメーターを用いて定量することができる。また、グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、例えば2,2'−アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)等を用いる。また、1次抗体がビオチン標識されている場合は、ビオチンに親和性を有するストレプトアビジンを用いて、酵素標識の場合と同様に呈色反応で抗原に由来するシグナルを検出できる。
また、1次抗体を認識しかつ結合する酵素等で標識された2次抗体を使用する場合には、保温した後、遊離の状態にある1次抗体を洗浄によって除去してから、2次抗体と保温する。この酵素等で標識された2次抗体としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等の酵素を結合した1次抗体に対する抗体、あるいはビオチン標識した1次抗体に対する抗体をあげることができる。具体的な例としては、1次抗体としてウサギ抗血清を使用する場合、2次抗体としては、例えばペルオキシダーゼを結合した抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)ロバ免疫グロブリン(IgG)あるいは抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)ヤギ免疫グロブリン(IgG)を好ましくあげることができる。なお、該抗ウサギIgGロバIgGあるいは抗ウサギIgGヤギIgGは市販されており、容易に入手可能である。これらの2次抗体の検出法としては、上記の標識された1次抗体の場合と同様な方法をあげることができる。さらに、2次抗体として、125I標識されたProteinA[アマシャム]を使用することもできる。この方法は、ProteinAの抗体結合性を利用したものであり、シグナルをX線フィルム上に検出し、デンシトメーターを用いて定量することができる。
【0015】
(B)免疫沈降による分離法
本蛋白質を1次抗体によって認識させ、その抗体と本蛋白質からなる免疫複合体を精製することによって本蛋白質のみを分離し、ゲル電気泳動法、酵素活性測定、イムノブロット法等の方法によって本蛋白質の定量に利用する。
まず、本蛋白質を含む試料と本蛋白質に対する1次抗体を、例えば、約1時間から約24時間、4℃で攪拌しながら混合することによって免疫複合体を形成させる。この際、当該試料と1次抗体との混合比としては、例えば1:8程度をあげることができるが、本蛋白質の量によって適宜増減される。なお、当該試料をあらかじめ0.1%(w/v)SDS等で処理しておくとよい。
つぎに形成された免疫複合体に、必要であれば、1次抗体に特異的に結合しかつ1次抗体および1次抗体と結合している本蛋白質を溶液中から分離することができる2次試薬を添加し、この混合物を保温することによって、免疫複合体と2次試薬からなる複合体を形成させ、これを回収する。ここで2次試薬としては、例えば、プロテインA,プロテインG等の抗体と結合する細菌細胞壁蛋白質または抗免疫グロブリン抗体があげられる。なお、これら2次試薬は不溶性の支持材に結合されたものを用いると免疫複合体と2次試薬からなる複合体の回収を遠心分離、洗浄により行うことができ、きわめて容易である。また、2次試薬を用いず、直接1次抗体を不溶性の支持材に結合させたものを、本蛋白質を含む試料溶液中に添加することにより、本蛋白質を不溶化し回収する方法を取ることもできる。不溶性の支持材は、非常に広範囲のデザインを有し、そして使用に際して意図された特定の目的に応じて非常に異なる形状を有することができる。例えば、ビーズ、皿、球、プレート、小型ロッド、セル、小型ボトル、小型チューブ、ファイバー、ネット等をあげることができる。具体的な例としては、アガロース等の多糖体(例えば、セファロース、バイオゲル等)からなるビーズや透明プラスチック材料、例えばポリ塩化ビニルまたはポリスチレンからなるミクロタイタープレート、ポリスチレンおよびポリスチレンラテックスからなる小球、チューブまたはロッド等が使用可能である。例えば、臭化シアン活性化セファロース、Affi-Gelに代表されるアガロース系ビーズや、セルロース系ビーズ、ポリアクリルアミド系ビーズが市販されており、これらのビーズ上の官能基はすでに活性化されているので、直接カップリング反応により2次試薬あるいは1次抗体を結合することができる(Affinity Chromatography,ファルマシア社刊、あるいはNature, vol.214, p.1302, 1967)。また、すでにアガロース系ビーズに結合された状態のプロテインA,プロテインGも市販されている。
つぎに回収された複合体から、加熱処理や低pHバッファーによる溶出等の操作によって本蛋白質を遊離させる。そして遊離の状態にある本蛋白質をゲル電気泳動法、酵素活性測定、イムノブロット法等の方法によって検出し、定量すればよい。
【0016】
(C)エンザイムイムノアッセイ法
エンザイムイムノアッセイ法としては、例えば、サンドイッチ法、競合法等が挙げられる。サンドイッチ法は、固体支持材に結合された状態の1次抗体に対して、本蛋白質を含む試料を反応せた後、固体支持材に結合していない遊離物を洗浄により除去し、固体支持材上で抗原抗体複合体を形成した状態の量を、標識された2次抗体あるいは2次抗体に特異的に結合する標識された抗体を通して定量することにより、本蛋白質を含む試料中の本蛋白質の濃度を測定する方法である。
また、競合法は、固体支持材に結合された状態の抗原または1次抗体に対して、該抗原には、本蛋白質を含む試料と1次抗体とを、1次抗体には、本蛋白質を含む試料と遊離の競合抗原とを添加して競合反応させた後、固体支持材に結合していない遊離物を洗浄により除去し、固体支持材上で抗原抗体複合体を形成した状態の抗体あるいは競合抗原の量を、あらかじめその1次抗体または競合抗原上に導入された標識、あるいは1次抗体と特異的に結合する標識された2次抗体を通して定量することにより、、当該試料中の本蛋白質の濃度を測定する方法である。
これらの方法の原理および方法の詳細は、生化学実験法11(東京化学同人社刊)やMethod in Enzymology, vol.70(Academic Press刊)などに記載されている。
代表的な例として、以下にサンドイッチ法につきさらに説明する。
固体支持材への1次抗体の結合は、直接的に、あるいはスペーサーまたは2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体すなわち2次抗体を認識しかつ特異的に結合する標識された抗体によって認識されない高分子量担体分子を介して間接的に行うことができる。ここで、2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体によって認識されない高分子量担体分子とは、前記の抗原の特有な部分アミノ酸配列を含む抗原性ペプチドの完全抗原化工程において用いることができる高分子量担体分子のうちで、2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体の製造において用いられない高分子量担体分子のことである。また、1次抗体をスペーサーまたは2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体によって認識されない高分子量担体を介して結合する場合、これらの結合には、前記の特有なアミノ酸配列を含む抗原性ペプチドの完全抗原化工程と同様な方法または準ずる方法を用いることができる。
1次抗体の直接的または間接的な結合に用いられる固体支持材として、通常使用される材質としてはポリスチレン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリメタクリエート、テフロンTM、ニトロセルロース膜、ろ紙、デキストラン、ガラス、アガロース、フェライト、ラテックス(天然ゴム)等が挙げられる。また、形状も非常に広範囲のデザインを有し、そして使用に際して意図された特定の目的に応じて非常に異なる形状を有することができる。例えば、皿、球、プレート、小型ロッド、セル、小型ボトル、小型チューブ、ファイバー、ネット、ゲル、カラム樹脂等をあげることができる。具体的な例としては、透明プラスチック材料、例えばポリ塩化ビニルまたはポリスチレンからなるミクロタイタープレート、ポリスチレンおよびポリスチレンラテックスからなる小球、チューブまたはロッド等が使用可能である。
これらの固体支持材に、1次抗体を直接的に、あるいはスペーサーまたは2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体によって認識されない高分子量担体分子を介して間接的に結合する(以下、コーティングする、と記す。)には、物理吸着させる方法でも共有結合させる方法でも良く、例えば共有結合させる場合は、あらかじめ、グルタルアルデヒドまたは臭化シアン等を用いる通常の方法によって固体支持材の活性化を行う。
用いられるコーティング液としては、例えば140mMの塩化ナトリウムを含む約10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)やPBS(140mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4(pH7.4))液等をあげることができる。コーティングの条件として、1次抗体のコーティング液内の濃度は、例えば約0.05μg/mlから約100μg/ml等を好ましくあげることができる。またコーティング時間としては、例えば数時間から数日間、好ましくは約6時間から約24時間をあげることができ、温度としては4〜37℃程度をあげることができる。さらに、抗体を結合させた固体支持材は本蛋白質を含む試料と反応させる前に、非特異的吸着反応を防ぐための処理を行っておくことが好ましく、その方法としては、例えば固体支持材の表面をウシ血清アルブミン、ゼラチンあるいはスキムミルクを0.1〜5%含む溶液に数時間接触させる方法が挙げられる。
このようにして得られる固体支持材に直接的にまたは間接的に結合した1次抗体に、本蛋白質を含む試料を添加し、通常4℃〜37℃程度で保温する。数分間〜数日間、好ましくは約2時間〜一晩程度の保温後に、固体支持材を洗浄する。次に、2次抗体を含有する溶液を添加して、4℃〜37℃程度で約10分間〜一晩程度保温する。2次抗体が、例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等の酵素あるいはビオチンで標識されている場合には、イムノブロット法の項で説明した方法により、固体支持材上に結合された2次抗体の量を直接測定することができる。
また、2次抗体を認識しかつ特異的に結合する、酵素、ビオチンなどで標識された抗体を使用する場合は、遊離の2次抗体を洗浄により除去した後、該標識抗体液と4℃〜37℃程度で保温する。約10分〜一晩程度の保温後に、固体支持材を洗浄し、洗浄後の固体支持材上に結合した標識抗体の量を測定する。該標識抗体としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等の酵素あるいはビオチンを結合した抗体をあげることができる。
2次抗体を認識しかつ特異的に結合する標識抗体を用いる場合は、該標識抗体が固体支持材に結合させた1次抗体と反応しないために、1次抗体と2次抗体は動物種や免疫グロブリンのクラスなどが異なるものを用いる必要がある。具体的な例としては、固体支持材に結合させた1次抗体としてマウスモノクローナル抗体を使用し、2次抗体としてウサギポリクローナル抗体を使用し、2次抗体を認識しかつ特異的に結合する標識抗体としては、例えばペルオキシダーゼ標識されたロバまたはヤギ由来の抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)抗体を使用すればよい。
予め種々の既知濃度の本蛋白質溶液を調製して、上記方法で検量線を作成しておく。次に、本蛋白質の濃度が未知である試料につき測定を行い、前記検量線に基づいて、当該試料液中の本蛋白質の濃度を算出する。
【0017】
(D)ラジオイムノアッセイ法
基本的な原理はエンザイムイムノアッセイ法と同様であり、例えば、既知量の標識抗原と抗体の反応液中に、本蛋白質を含む試料を添加することで競合反応を起こした後、抗原抗体複合体と遊離状態の抗原とを分離して、そのどちらかを定量し、検量線と比較することにより当該試料液中の本蛋白質の濃度を定量する方法である(新生化学実験講座12;東京化学同人社刊、 Method in Enzymology, vol.70;Academic Press刊)。
ラジオイムノアッセイ法に用いられる抗原は通常125I標識するが、抗原蛋白質への125I導入は、ボルトン−ハンターの方法(Biochem. J., vol.133, p.529,1973)やクロラミンT法を用いて行うことができる。
測定は、ガンマカウンターを用いて行い、エンザイムイムノアッセイ法と同様に予め既知濃度の本蛋白質溶液を用いて検量線を作成し、次に本蛋白質の濃度が未知である試料について測定を行って、前記検量線に基づいて当該試料中の本蛋白質の濃度を求めることができる。
【0018】
次に、本発明キットについて説明する。本発明分析方法および本発明検査方法を行うためのキットを準備することができる。該キットは、標準試薬として本蛋白質を含有していればよく、さらに本発明分析方法を免疫化学的分析方法を用いて行う場合に使用するキットとしては、本蛋白質に対する抗体をも含有していることが好ましい。
さらに、本発明キットは、例えば次の構成成分を含有し得る。即ち、例えばエンザイムイムノアッセイ法のサンドイッチ法の場合、(1)固体支持材、(2)本蛋白質に対する抗体、即ち1次抗体を含有する試薬、(3)2次抗体を含有する試薬、(4)2次抗体に対する標識された抗体を含有する試薬、すなわち2次抗体を認識し特異的に結合する抗体であって、かつ酵素等で標識された抗体を含有する試薬。さらに補助的に、(5)抗体の標識に使用された酵素に対応した基質化合物、(6)配列番号1に示すアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の標準試薬、(7)緩衝液、(8)非特異的吸着および凝集体の形成を防止する高分子量担体、界面活性剤等の添加剤、および(9)ピペット、反応容器、計算曲線等、などを構成成分として含有し得る。
(1)の固体支持材は、予め(2)の1次抗体が、直接的にあるいはスペーサーまたは2次抗体かつ2次抗体に対する標識抗体によって認識されない高分子量担体分子を介して間接的に結合されていても良い。
(2)の1次抗体、(3)の2次抗体、および(4)の標識された抗体を含有する試薬は、緩衝液あるいは水に溶解された状態で提供されてもよく、凍結乾燥品として提供され使用時溶解されてもよい。また、(2)、(3)および(4)は、ウシ血清アルブミンなどの安定剤を溶解時終濃度で0.1%〜10%(W/V)程度含んでいてもよく、必要に応じて例えばTween20等の界面活性剤を溶解時終濃度で0.1%〜2%(W/V)程度含んでいてもよい。
(7)の緩衝液は、動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液あるいは被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液の希釈、固体支持材の洗浄、前記(2)、(3)、(4)および(5)の溶解もしくは希釈等に使用し得る緩衝液であればよい。
【0019】
さらに本発明分析方法および本発明検査方法は、いくつかの装置を組み合わせて行うこともできる。一例として、本蛋白質の濃度の測定として免疫化学的分析方法を用いる場合の本発明分析方法および本発明検査方法では、必要に応じて例えば、(1)動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液あるいは被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液と、抗体を含む試薬とを、該試料液または該検査液中の本蛋白質と該抗体とが反応可能な温度に加温するための恒温器、(2)イムノブロット法もしくは免疫沈降法の場合にシグナルを検出するためのデンシトメーター、エンザイムイムノアッセイ法の場合に反応液の吸光度もしくは蛍光を測定するための光度計、またはラジオイムノアッセイ法の場合に使用するγ−カウンターから選ばれる検出器、(3)試料液中の本蛋白質濃度と腹腔内脂肪組織量との正の相関性に基いて、(2)から得られる検査液中の本蛋白質濃度の測定値から被験動物の腹腔内脂肪組織量を算出するための計算ソフト、(4)(3)の計算を実行する計算機、などを含んで構成される装置が挙げられる。
【0020】
【実施例】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実施例1 (配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子の単離)
ヒト腹腔内脂肪組織からグアニジンチオシアネート(GTC)/セシウムクロライド(CsCl)法(Chirgwin,J.M. et al, Biochemistry, 18, 5294, 1979 )により調製された全RNA1.0μgを鋳型にして、これとcDNA合成キット(宝酒造社製)に添付のオリゴdTプライマーとを混合した後、1mM dNTPの存在下でMMTV逆転写酵素50ユニットを添加し、室温で10分間、次いで42℃、15分間、さらに99℃、5分間保温することによって、1本鎖cDNAを合成した。
続いて該1本鎖cDNA 2.0 ngを鋳型に用いて、配列番号2で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号3で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの各20pmolをプライマーとして、200μM dNTP、1.5 mM MgCl2存在下でDNAポリメラーゼ(パーキンエルマー社)1ユニットを添加し、94℃、1分間、次いで55℃、1分間、さらに72℃、2分間の保温を1サイクルとしてこれを55サイクル行う条件下でPCR反応を行った。得られたPCR反応産物を1%アガロースゲル電気泳動に供し、(泳動バッファー;トリスー硼酸緩衝液(ナカライテスク社製))、約1.5kbpのDNAバンドをゲルから切り出し、J. Sambrook 、E.F.Fritsch 、T.Maniatis著:「Molecular Cloning Second Edition」、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)に記載されている方法により、プラスミドベクターpUC118(宝酒造製)のHincIIサイトにクローニングした。クローニングされたDNAの塩基配列を、Taq Dye Primer Cycle Sequencing Kit 及びTaq Dye Deoxy Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems製) を用いてApplied Biosystems製の373A DNA Sequencerにより決定した。該DNAは配列番号6で示される塩基配列からなり、該塩基配列は、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードしていた。
【0022】
実施例2 (配列番号1で示されるアミノ酸配列の部分配列からなる蛋白質標品(I)の調製)
実施例1でクローニングされたDNAを鋳型にして、配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号5で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、94℃、1分間、次いで60℃、1分間、さらに72℃、2分間の保温を1サイクルとして、これを30サイクル行う条件下でPCRを行い、配列番号6で示される塩基配列の96番目〜1493番目の塩基配列を含むDNAを増幅した。増幅されたDNAをNdeIとBamHIで消化し、発現ベクターpET11a [Novagen社製]のNdeI、BamHIサイトにサブクローニングし、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、27番目以降のアミノ酸配列を有しそのアミノ末端にMetが付加された蛋白質を発現するための発現プラスミドpET11a085(図1)を得た。
次に、該発現プラスミドpET11a085で大腸菌DE3株[Novagen社製]を形質転換した。
得られた形質転換体を、37℃でO.D.600が0.6になるまで培養し、誘導剤として終濃度1mMのIPTGを添加し、さらに一晩培養した。次いで、遠心分離操作により集菌し、菌体を100mM Tris-HCl(pH7.6)、5mM EDTA・2Na、5mM DTT、1mMPMSFバッファー(以下、バッファーAと記す。)に懸濁して、超音波処理(氷冷下、5分間x3回)により菌体を破砕し、この破砕液を12,000xg、15分間、4℃の遠心分離に供し、沈殿を回収して封入体画分とした。
該封入体画分に、バッファーAに尿素を終濃度2Mとなるように加えた溶液を添加し、懸濁して、超音波処理(氷冷下、5分間)を行った。12,000xg、15分間、4℃にて遠心分離を行い、得られた沈殿に、バッファーAに尿素を終濃度4Mとなるように加えた溶液を添加して上記の操作を繰り返した。さらに、バッファーAに尿素を終濃度6Mとなるように加えた溶液を用いて同様の操作を行い、得られた沈殿を20mM Tris-HCl(pH8.5)、2mM DTT、8M尿素バッファーに懸濁し、12,000xg、15min、4℃の遠心分離を行い、上清を分取した。得られた上清を、HiLoad Superdex 200pg[カラムサイズ;Φ16mmx60cm(ファルマシア製)、流速;1.0ml/min、検出;280 nm]を用いたゲルろ過クロマトグラフィーに供した。45分から55分の間に溶出されるピーク画分を集めてセントリコン[グレースジャパン社(旧アミコン社)製、分画分子量30,000]で濃縮し、次に、MonoQ HR10/10イオン交換クロマトグラフィー[カラムサイズ;Φ10mmx10cm(ファルマシア製)、流速1.0ml/min、1M NaClグラディエント、検出;280nm]に供した。約100〜約200mM NaClで溶出される画分を集めて、セントリコン(グレースジャパン社製、分画分子量30,000)で1mg蛋白質/mlになるように濃縮した。上記の操作で得られた画分をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析し銀染色したところ、単一のバンドが検出された。
このようにして調製された画分に、100mM Tris-HCl(pH8.5)を、尿素の終濃度が6Mとなるようにゆるやかに攪拌しながら添加した。さらに、室温で一晩、緩やかに攪拌を続けた。次いで、該画分を18,000xg、20min、4℃にて遠心分離して上清を回収し、これに、2M尿素、20mM Tris-HCl(pH8.5)、4mM還元型グルタチオン、0.4mM酸化型グルタチオン溶液を尿素の終濃度が2.5Mとなるように加えて緩やかに攪拌した。この溶液を分画分子量が25,000の透析チューブに入れ、1000倍容量の2M尿素、20mM Tris-HCl(pH8.5)、4mM還元型グルタチオン、0.4mM酸化型グルタチオン溶液に対して、4℃で約8時間透析した。次に、1000倍容量の20mM Tris-HCl(pH8.5)、2mM還元型グルタチオン、0.2mM酸化型グルタチオン溶液に対して、4℃で一晩透析し、最後に、1000倍容量の20mM Tris-HCl(pH8.5)に対して4℃で一晩透析した。以上の操作で得られた画分の一部を、逆相クロマトグラフィーで分析したところ、単一のピークが検出されたことから、得られた蛋白質を蛋白質標品(I)とした。
【0023】
実施例3 (配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質に対する抗体の調製)
実施例2の方法で調製された蛋白質標品(I)を抗原としてウサギに免疫し、抗体を取得した。
初回免疫は、上記方法で調製した蛋白質標品1.0mgをフロイントアジュバンドと混合し、ウサギの皮下に投与した。以後2週間ごとに4回、同様の方法で抗原を投与した。最終抗原投与から1週間後、ウサギの血清を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定した。その後さらに1回、抗原の投与を行い、ウサギから血液を採取した。該血液を、遠心分離し、血清画分を取得し、該画分を100倍容量の50mMりん酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に対して4℃で一晩透析した。透析した血清をProteinA(ファルマシア製)カラムクロマトグラフィーに供し、100mMクエン酸バッファー(pH4.0)で吸着画分を溶出した後、溶出液に直ちに1M Tris-HCl(pH9.0)を添加して中和し、抗体液を得た。
【0024】
実施例4 (抗体の担体への固定化)
実施例3の方法で得られた抗体を、Affinity Chromatography(ファルマシア社刊)に記載の方法に従って活性化臭化シアン―セファロースビーズに結合させた。具体的には、抗体を、150mM NaHCO3、500mM NaCl(pH8.3)(以下、バッファーBと記す。)で2.5mg蛋白質/mlとなるように希釈し、さらにPD-10カラム[ファルマシア社製]にかけてバッファーBで溶出させた。0.5gの活性化臭化シアン―セファロースビーズ[ファルマシア社製]を予め氷冷した1mM HClで膨潤させ、200mlの1mM HClおよびバッファーBで平衡化してゲル化させ、これに前記溶出液3.5mlのうち、半分を加えて混合し、4℃で一晩攪拌した。該混合液をブフナー漏斗でろ過してろ液を吸引除去した後、ビーズを3.0mlの1Mエタノールアミン、500mM NaCl(pH8.3)に懸濁して、4℃、6時間攪拌して残存する活性基をブロックした。次いで、ブフナー漏斗上で吸引しながら、該ビーズを、3.0mlのバッファーBで洗浄した後、3.0mlの100mM酢酸、500mM NaCl(pH4.0)(以下バッファーCと記す)で洗浄した。このバッファーBとバッファーCによる洗浄操作を交合に5回繰り返し、最後にリシスバッファー(50mM Tris-HCl(pH7.6)、150mM NaCl、1% NP-40、0.02% Na3N)で数回洗浄して、同バッファー中にゲルスラリーとバッファーが1:1になるよう懸濁して4℃で保存した。尚、固定化後のろ液中に抗体が残存しないことを定量して、抗体がビーズへ完全に固定化されたことを確かめた。
【0025】
実施例5 (免疫沈降、ウエスタンブロット法による本蛋白質の試料液中濃度測定)
ヒト血液サンプルから遠心分離(3,000xg、10分間、4℃)により血清画分を調製し、これを検査液とした。該検査液200μlに対して実施例4で調製された抗体固定化ビーズを5μl添加し、4℃で4時間ゆるやかに攪拌した。12,000xg、5秒間、4℃の遠心分離でビーズを沈殿させて上清を除去し、次いで該ビーズに500μlのリシスバッファーを添加し、緩やかに攪拌した後、12,000xg、5秒間、4℃の遠心分離を行い上清を除去した。このビーズの洗浄操作を4回行い、次に、該ビーズに蒸留水500μlを添加して、上記と同様の洗浄操作を3回行った。遠心分離操作後に完全にビーズ上の液体を除去した後、75μlの2%酢酸水溶液をビーズに加えて緩やかに攪拌した。12,000xg、5秒間、4℃の遠心分離操作でビーズを沈殿させて上清を回収し、ビーズに再度2%酢酸溶液を加えて同様の溶出操作を行った。このようにして得られた2%酢酸溶出液を集めて、該溶出液にキャリアーとして牛血清アルブミン蛋白質を終濃度150μg/mlとなるように加え、さらにTCA溶液を75μl加えて、氷上で一晩放置した。15,000xg、20分間、4℃の遠心分離操作で沈殿した蛋白質を回収し、500μlの氷冷アセトンで該沈殿を洗浄した後、乾燥させた。
この沈殿を50mM Tris、0.04NNaOH水溶液に溶解させ、等量のSDSサンプルバッファーを加えてSDS−PAGE 10〜20%ゲル(バイオクラフト社製)に供した。電気泳動後のゲル中の蛋白質を、エレクトロブロッティング法(転写用緩衝液;25mMTris、192mMグリシン、20%メタノール、4℃、80V、1.5時間)でHybond-Nメンブラン(アマシャム社製)にトランスファーした。このようにして調製されたメンブランを、TTBSバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、0.05% Tween20、0.05% Na3N)で洗浄した後、3%ゼラチンを含むTTBSバッファー中で、37℃、1時間保温した。その後、該メンブランを、実施例3で調製された抗体を1%ウシ血清アルブミンを含むTTBSバッファーで1,000倍希釈した溶液中で、37℃、1時間保温した。次いで、該メンブランをTTBSバッファーで室温、5分間x3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を1%ウシ血清アルブミンを含むTTBSで1,000倍希釈した溶液中で、37℃、1時間保温した。その後、該メンブランをTTBSバッファーで、室温にて、5分間、3回洗浄して、HyperfirmECLフィルム(アマシャム社)に露光させ、ECL検出システム(アマシャム社製)を用いて、HyperfirmECLフィルム(アマシャム社製)上の(50Kda付近の)蛍光シグナルを検出した(図2)。
得られた蛍光シグナルの強度を、デンシトメーターを用いて定量した。実施例2で調製された蛋白質標品(I)0.1 ngから5 ngを用いて予め検量線を作成しておき、その検量線に基づいて、各サンプルのシグナル強度から各検査液中の本蛋白質の濃度を算出した。
【0026】
実施例6 (エンザイムイムノアッセイ法による本蛋白質の検査液中濃度測定)
ポリスチレン製の96穴ミクロタイタープレートに、PBS液(140mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、および1.8mM KH2PO4(pH 7.4)を含有する)に実施例3によって得られた抗体を20μg/mlの濃度で含むように調製したコーティング液を150μl/ウエルの割合で添加した後、4℃で一晩保温した。コーティング液を除去した後、各ウエルを300μlのPBS液で2回洗浄し、ミクロタイタープレートの上面を下にしてぺーパータオル上に軽く打ちつけることによりプレート内の水分を除去した。次に、該ミクロタイタープレートに1%(W/V)のウシ血清アルブミンを含むPBS液を150μl/ウエルの割合で添加した後、4℃で一晩保温してブロッキングを行った。
ブロッキング液を除去後、ミクロタイタープレートは洗浄液300μl(50mMNa2PO4‐Na2HPO4、150 mM NaCl、pH 7.4、2.0% Tween20)を用いて2回洗浄した。次に、ヒト血液から、遠心分離(3,000xg、10分間、4℃)により血清画分を調製し、これを検査液とした。洗浄液に1%(W/V)のウシ血清アルブミンを加えた反応液120μlを各ウエルに添加し、続いて前記検査液を30μl/ウエルの割合で添加した後、室温で一晩保温した。次いで、反応液を除去した後、各ウエルを300μlの洗浄液で3回洗浄した。
次に、実施例3で得られた抗体をペプシンで消化し、還元して得た抗体のFab'断片をマレイミド・ヒンジ法(酵素免疫測定法、第3版、医学書院刊、に記載)に従ってぺルオキシダーゼ標識したペルオキシダーゼ標識抗体Fab'断片を、5μg/mlの濃度で含む抗体反応液(50mM Na2PO4‐Na2HPO4、150 mM NaCl、pH 7.4、2.0% Tween20、1%(w/v)正常ウサギ血清、0.067%(w/v) 4−アミノアンチピリン)を各ウエルに150μl添加し、4℃で2時間保温した。抗体反応液を除去後、各ウエルを300μlの洗浄液で4回洗浄した。
次に、1.0 mg/mlの濃度でO−フェニレンジアミンを含み、0.017%(V/V)の濃度で過酸化水素を含む50 mMリン酸−25 mMクエン酸緩衝液(pH4.8)を使用直前に調製し、該緩衝液を上記のミクロタイタープレートに150μl/ウエルの割合で添加した後、該ミクロタイタープレートをアルミホイルで被覆し、室温で30分間インキュベートした。その後、2Nの硫酸50μlを加えることにより反応を停止させ、ミクロタイタープレート内の発色をマルチスキャンニングスペクトロフォトメーター[Bio-Rad社製〕を用いて、492nmでの吸光度と595nmでの吸光度との差を測定した。
0〜100 ng/mlの濃度に調製された蛋白質標品(I)希釈液を使用して、蛋白質標品(I)に対する上記吸光度差の検量線を作成して、この検量線に基づいて、各検査液中の本蛋白質の濃度を算出した。
【0027】
実施例7 (本蛋白質の濃度と腹腔内脂肪組織量との相関性の確認;その1)
100人の血液から、遠心分離(3,000xg、10分間、4℃)により血清画分200μlをそれぞれ調製し、これを試料液とした。得られた試料液につき、実施例5に示した方法を用いて、本蛋白質の濃度を測定した。
これら100人の各個体について、CTスキャンによる腹部横断面のコンピューター撮影像から測定された腹腔内脂肪組織面積値(cm2)をY軸に、試料液中に存在する本蛋白質の濃度(ng/200μl)をX軸にプロットした(図3)。これらのプロットより、XとYとの間の相関関係数は約0.7と求められ、XとYとの間の相関関係式Y= 78.8X+51.4が導かれた。
【0028】
実施例8 (本蛋白質の濃度と腹腔内脂肪組織量との相関性の確認;その2)
実施例6に記載のエンザイムイムノアッセイ法を用いて、5人の被験者の血液中の本蛋白質の濃度を一定期間の前後にそれぞれ測定した。各被験者における一定期間前後の本蛋白質の濃度の大小と、一定期間前後におけるCTスキャンによる腹部横断面の断層撮影像から求めた腹腔内脂肪面積値の大小とは一致していた。すなわち、腹腔内脂肪面積値が減少した被験者においては、血液中の本蛋白質の濃度も減少しており、一方、内臓脂肪面積値が増加した被験者においては、該濃度も増加していた(図4)。
【0029】
実施例9 (腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患を発症したヒトの血液中の本蛋白質の濃度の測定)
糖尿病の発症者38人および冠動脈疾患の発症者14人から採血した血液中の本蛋白質の濃度を、実施例5記載の方法に従って測定した。その結果は、表1に記載のとおりであった。
【0030】
【表1】
Figure 0004689787
【0031】
【発明の効果】
本発明により、腹腔内脂肪組織量の分析方法として、精度の点において満足できる簡便でかつ迅速に処理できる分析方法が提供可能となる。
【0032】
「配列表フリーテキスト」
配列番号2
抗原遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号3
抗原遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
抗原遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
抗原遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【0033】
【配列表】
Figure 0004689787
Figure 0004689787
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【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、27番目以降のアミノ酸からなる蛋白質を大腸菌で発現させるための発現プラスミド pET11a085の構造を示す。図中、斜線部分は、発現させる蛋白質をコードする挿入断片を示す。
【図2】免疫沈降、ウエスタンブロッティング法を用いて血液中の本蛋白質を検出した結果の1例を示す図である。図の横に付記した矢印は、上側が泳動の起点を示し、下側が泳動の先端位置を示す。免疫沈降された蛋白質のシグナルはデンシトメーターで定量した。レーン1;抗原蛋白質 0 ng、レーン2;抗原蛋白質 0.2 ng、レーン3;抗原蛋白質 0.5 ng、レーン4;抗原蛋白質 1.0 ng、レーン5;抗原蛋白質 2.0 ng、レーン6;被検者1血液、レーン7;被検者2血液
【図3】本蛋白質の血液中濃度(ng/200μl)(X)と腹腔内脂肪組織面積値(cm2)(Y)の相関性を示す図である。各プロットは異なる個体由来である。
【図4】エンザイムイムノアッセイ法を用いて測定した5人の被験者の特定期間前後の本蛋白質の血液中濃度の変化と、腹腔内脂肪組織面積値の変化を表した図である。なお、レーン番号1および2は、被験者1の特定期間28日の前の値および後の値を示し、レーン番号3および4は、被験者2の特定期間49日の前の値および後の値を示し、レーン番号5および6は、被験者3の特定期間56日の前の値および後の値を示し、レーン番号7および8は、被験者4の特定期間63日の前の値および後の値を示し、レーン番号9および10は、被験者5の特定期間17日の前の値および後の値を示す。

Claims (13)

  1. 被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度を測定することを特徴とする腹腔内脂肪組織量の分析方法。
  2. 動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度と前記動物の腹腔内脂肪組織量との正の相関性に基き、被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する前記蛋白質の濃度から前記被験動物の腹腔内脂肪組織量を求める工程を含むことを特徴とする腹腔内脂肪組織量の分析方法。
  3. 腹腔内脂肪組織量が腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値であることを特徴とする請求項1または2記載の分析方法。
  4. 動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された試料液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度が免疫化学的分析方法で測定された値であることを特徴とする請求項2記載の分析方法。
  5. 被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度が免疫化学的分析方法で測定された値であることを特徴とする請求項1または2記載の分析方法。
  6. 相関性が、一次関数である相関関係式で表されることを特徴とする請求項2記載の分析方法。
  7. 動物が、哺乳動物であることを特徴とする請求項1または2記載の分析方法。
  8. 被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液が、血液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の分析方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の分析方法により、特定期間内での同一個体における腹腔内脂肪組織量の増加または減少を調べ、当該結果に基いて、被験動物の腹腔内脂肪組織量が増加すれば、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクが高まると予測し、被験動物の腹腔内脂肪組織量が減少すれば、前記疾患の発症リスクが低くなると予測することを特徴とする検査方法。
  10. 被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度の、特定期間内での同一個体における増加または減少を調べ、当該結果に基いて、被験動物の腹腔内脂肪組織量が増加すれば、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクが高まると予測し、被験動物の腹腔内脂肪組織量が減少すれば、前記疾患の発症リスクが低くなると予測することを特徴とする検査方法。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の分析方法により、被験動物の腹腔内脂肪組織量を求め、当該値と前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の腹腔内脂肪組織量との比較結果に基づいて、被験動物の腹腔内脂肪組織量が増加すれば、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクが高まると予測し、被験動物の腹腔内脂肪組織量が減少すれば、前記疾患の発症リスクが低くなると予測することを特徴とする検査方法。
  12. 被験動物の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質に対する抗体により認識され得る蛋白質の濃度と、前記被験動物と同一種である動物における健康状態時の体液、組織、細胞またはそれらから調製された検査液中に存在する前記蛋白質の濃度との比較結果に基づいて、被験動物の腹腔内脂肪組織量が増加すれば、腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患の発症リスクが高まると予測し、被験動物の腹腔内脂肪組織量が減少すれば、前記疾患の発症リスクが低くなると予測することを特徴とする検査方法。
  13. 腹腔内脂肪組織量の増大と密接に関連する疾患が、糖尿病又は冠動脈疾患であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の検査方法。
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