本発明のポリアミド系混合樹脂フィルムロールは、後述する方法により試料を切り出した場合に、すべての試料について、全方向の沸水収縮率のうちの最大値である最大沸水収縮率を測定したときに、それらの最大沸水収縮率の平均値である平均沸水収縮率が2%以上6%以下となるように調整されている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂フィルムロールは、後述する方法により試料を切り出した場合に、すべての試料について、長手方向に対し+45度方向の沸水収縮率と長手方向に対し−45度方向の沸水収縮率との差の絶対値である沸水収縮率方向差を求めたときに、それらの沸水収縮率方向差の平均値である平均沸水収縮率方向差が3.0%以下となるように調整されている。
本発明における試料の切り出しは、まず、フィルムの巻き終わりから2m以内に1番目の試料切り出し部を、また、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設けるとともに、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設けるようにする。なお、「約100m毎」というのは、100m±1m程度のところで試料を切り出しても構わないということである。
上記試料の切り出しについてより具体的に説明すると、たとえば、長さ498mのポリアミド系混合樹脂積層フィルムがロールに巻回されている場合、フィルムの巻き終わりから2m以内までの間で、最初の試料(1)を切り取る。なお、試料の切り出しは、便宜上、フィルムの長手方向に沿う辺と長手方向に対して直交する方向に沿う辺とを有するように矩形状に切り取る(斜めには切り取らない)ようにする。続いて、切り取った部分から100m巻き始め側に離れたところで、2番目の試料(2)を切り取る。同様にして、200m巻き始め側に離れたところで3番目の試料(3)を、300m巻き始め側に離れたところで4番目の試料(4)を、400m巻き始め側に離れたところで5番目の試料(5)を切り取る。このように試料を切り出した場合、残りは100mよりも短くなるため、6番目(最終)の試料(6)はフィルムの巻き始めから2m以内のいずれかの部分を切り取る。
そして、切り取られた各試料について、下記の方法で、沸水収縮率(以下、BSという)、最大沸水収縮率(以下、BSxという)、平均沸水収縮率(以下、BSaxという)、沸水収縮率方向差(以下、BSdという)、平均沸水収縮率方向差(以下、BSadという)を測定する。
[沸水収縮率(BS)、最大沸水収縮率(BSx)、平均沸水収縮率(BSax)、沸水収縮率方向差(BSd)、平均沸水収縮率方向差(BSad)の測定方法]
ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールの各切り出し部から切り出されたフィルムを正方形状に切り出し、23℃、65%RHの雰囲気で2時間以上放置する。この試料の中央を中心とする円(直径約20cm程度)を描き、縦方向(フィルム引出し方向)を0°として、15°間隔で時計回りに0〜165°方向に円の中心を通る直線を引き、各方向の直径を測定し、処理前の長さとする。次いで、切り出した試料を沸水中で30分間加熱処理した後、取り出して表面に付着した水分を拭き取り、風乾してから23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置し、上述したように各直径方向に引いた直線の長さを測定して処理後の長さとし、下式1〜5によって、BS(沸水収縮率)、BSx(最大沸水収縮率)、BSax(平均沸水収縮率)、BSd(沸水収縮率方向差)、BSad(平均沸水収縮率方向差)を算出する。
BS=[(処理前の長さ−処理後の長さ)/処理前の長さ]×100(%)・・・1
BSx=15°間隔で0〜165°方向に測定した中で最大の収縮率(%)・・・2
BSax=すべての試料のBSxの総和/試料の数・・・3
BSd=|(45°度方向のBS)−(135°度方向のBS)|・・・4
BSad=すべての試料のBSdの総和/試料の数・・・5
なお、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを構成するフィルムのBSxの値は、フィルムを袋状に成形し熱水処理を施したときの耐熱性(ラミネート強度あるいは耐熱ラミネート強度ともいう)を確保するとともに、フィルム自体の強靭性・耐ピンホール性を高める上で重要であり、BSxの値が2%未満では、強靭性・耐ピンホール性が不十分となり、一方、6%を超えると、ラミネート不良となったり、熱水処理時の耐熱ラミネート強度が不十分となったりするので好ましくない。強靭性・耐ピンホール性とラミネート性や耐熱ラミネート強度を高める上でより好ましいBSxの範囲は3.5〜5.0%である。
また、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを構成するフィルムのBSdの値は、沸水処理時に生じるカール現象に大きな影響を及ぼし、BSdの値が大きいほど袋はそり返り易くなってカールが著しくなるが、BSdを3.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下に抑えれば、沸水処理時における袋の反り返りが可及的に抑えられ、S字カール現象の発生を防止することが可能となる。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の最大沸水収縮率(BSx)の変動率が、平均沸水収縮率(BSa)の±2%〜±20%(±2%以上±20%以下)の範囲内となるように調整されることが必要である。ここで、すべての試料の最大沸水収縮率(BSx)の変動率とは、すべての試料の最大沸水収縮率(BSx)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均沸水収縮率との差の大きい方と平均沸水収縮率との差を求めた場合におけるその差の平均沸水収縮率に対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムにおいては、試料(1)〜(6)の沸水収縮率をXn(n=1〜6)とした場合に、Xnの最大値Xmaxと平均沸水収縮率(BSax)との差と、最小値Xminと平均沸水収縮率(BSax)との差とのいずれもが±20%以内であることが必要である、ということであり、換言すれば、|BSax−Xn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも20%以下であることが必要である、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の最大沸水収縮率(BSx)の変動率が、平均沸水収縮率(BSa)の±15%以内の範囲にあると好ましく、±10%以内の範囲にあるとより好ましく、±8%以内の範囲にあるとさらに好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の最大沸水収縮率(BSx)の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の沸水収縮率方向差(BSd)の変動率が、平均沸水収縮率方向差(BSad)の±2%〜±30%(±2%以上±30%以下)の範囲内となるように調整されることが必要である。ここで、すべての試料の沸水収縮率方向差(BSd)の変動率とは、すべての試料の沸水収縮率方向差(BSd)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均沸水収縮率方向差との差の大きい方と平均沸水収縮率方向差との差を求めた場合におけるその差の平均沸水収縮率方向差に対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムにおいては、試料(1)〜(6)の沸水収縮率方向差をYn(n=1〜6)とした場合に、Ynの最大値Ymaxと平均沸水収縮率方向差(BSad)との差と、最小値Yminと平均沸水収縮率方向差(BSad)との差とのいずれもが±30%以内であるということが必要である、ということであり、換言すれば、|BSad−Yn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも30%以下であることが必要である、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の沸水収縮率方向差(BSd)の変動率が、平均沸水収縮率方向差(BSad)の±25%以内の範囲にあると好ましく、±23%以内の範囲にあるとより好ましく、±21%以内の範囲にあるとさらに好ましく、±17%以内の範囲にあると一層好ましく、±15%以内の範囲にあると特に好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の沸水収縮率方向差(BSd)の変動率が小さいほど好ましいが、フィルム原料がMXD−6、熱可塑性エラストマー、ポリアミド樹脂等からなる混合樹脂であり、熱可塑性エラストマー等の物性を考慮すると、当該変動率の下限は、5%程度が限界であると考えている。また、測定精度のみを考慮した場合、沸水収縮率方向差の変動率の下限は、2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、長手方向全長に亘る厚みの変動率が、平均厚みに対して±2%〜±15%(±2%以上±15%以下)の範囲内となるように調整されることが必要である。ここで、長手方向全長に亘る厚みの変動率とは、長手方向全長に亘る厚み中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均厚みとの差の大きい方と平均厚みとの差を求めた場合におけるその差の平均厚みに対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムにおいては、長手方向全長に亘る厚みの最大値Tmaxと平均厚み(長手方向全長に亘る平均厚みTa)との差と、最小値Tminと平均厚み(Ta)との差とのいずれもが±15%以内であることが必要とされる、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、長手方向全長に亘る厚みの変動率が、平均厚み(Ta)の±10%以内の範囲にあると好ましく、±8%以内の範囲にあるとより好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、長手方向全長に亘る厚みの変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、製膜装置の性能上から2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、上述した方法と同様の方法により試料を切り出した場合に、各切り出し部から切り出された各試料について、酸素透過度を求めたときに、それらの酸素透過度の平均値である平均酸素透過度が140ml/m2 ・MPa・day以下であると好ましく、120ml/m2 ・MPa・day以下であるとより好ましく、100ml/m2 ・MPa・day以下であると特に好ましい。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、酸素透過度の変動率が、平均酸素透過度に対して±2%〜±20%(±2%以上±20%以下)の範囲内となるように調整されていると好ましい。ここで、酸素透過度の変動率とは、酸素透過度中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均酸素透過度との差の大きい方と平均酸素透過度との差を求めた場合におけるその差の平均酸素透過度に対する割合のことをいう。
すなわち、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいては、酸素透過度の最大値Pmaxと平均酸素透過度Paとの差と、最小値Pminと平均酸素透過度Paとの差とのいずれもが±20%以内であることが必要とされる、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、酸素透過度の変動率が、平均酸素透過度(Pa)の±15%以内の範囲にあると好ましく、±10%以内の範囲にあるとより好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、酸素透過度の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、製膜装置の性能上から2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の三次元表面粗さ(SRa)の平均値である平均表面粗さ(SRaa)が0.01〜0.06μmの範囲にあると好ましく、0.02〜0.05μmの範囲にあるとより好ましい(なお、三次元表面粗さの測定方法の一例については実施例において説明する)。平均表面粗さが0.01μmを下回ると、高湿度下での良好な滑り性が得られなくなるので好ましくなく、反対に、平均表面粗さが0.06μmを上回ると、ラミネート加工する際に、ポリオレフィン等のフィルムとの接着性が低下してしまうので好ましくない。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の三次元表面粗さ(SRa)の変動率が、平均表面粗さ(SRaa)の±5%〜±20%(±5%以上±20%以下)の範囲内となるように調整されると好ましい。ここで、すべての試料の三次元表面粗さ(SRa)の変動率とは、すべての試料の三次元表面粗さ(SRa)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均表面粗さとの差の大きい方と平均表面粗さとの差を求めた場合におけるその差の平均表面粗さに対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいては、上記試料(1)〜(6)の三次元表面粗さをSRn(n=1〜6)とした場合に、SRnの最大値SRmaxと平均表面粗さ(SRaa)との差と、最小値SRminと平均表面粗さとの差とのいずれもが±20%以内であると好ましい、ということであり、換言すれば、|SRaa−SRn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも20%以下であると好ましい、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の三次元表面粗さ(SRa)の変動率が、平均表面粗さ(SRaa)の±15%以内の範囲にあるとより好ましく、±10%以内の範囲にあるとさらに好ましく、±8%以内の範囲にあると特に好ましい。加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の三次元表面粗さ(SRa)の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると5%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のヘイズの平均値である平均ヘイズが2.0〜7.0の範囲にあると好ましく、2.0〜5.0の範囲にあるとより好ましい。平均ヘイズが5.0を上回ると、製袋加工を施した際に、形成される袋の外観が低下し、高い透明性を要求される袋として適さなくなるので好ましくない。なお、平均ヘイズは、小さいほど好ましいが、当該平均ヘイズの下限は、コア層を形成するMXD−6、熱可塑性エラストマーの透明性および測定精度を考慮すると2.0程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のヘイズの変動率が、平均ヘイズの±2%〜±15%(±2%以上±15%以下)の範囲内となるように調整されると好ましい。ここで、すべての試料のヘイズの変動率とは、すべての試料のヘイズ中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均ヘイズとの差の大きい方と平均ヘイズとの差を求めた場合におけるその差の平均ヘイズに対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムにおいては、上記試料(1)〜(6)のヘイズをHn(n=1〜6)とした場合に、Hnの最大値Hmaxと平均ヘイズとの差と、最小値Hminと平均ヘイズ(Han)との差とのいずれもが±15%以内であると好ましい、ということであり、換言すれば、|Han−Hn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも15%以下であると好ましい、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のヘイズの変動率が、平均ヘイズの±10%以内の範囲にあると好ましく、±8%以内の範囲にあるとより好ましい。加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のヘイズの変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、上記の如く切り取られた各試料について、熱可塑性エラストマー成分の含有量を定量分析し、それらの含有率の平均値である平均含有率を算出したときに、すべての試料の熱可塑性エラストマー成分の含有量の変動率が、平均含有率に対して±10%の範囲内であると好ましい。
ここで、すべての試料の熱可塑性エラストマー成分の含有量の変動率とは、すべての試料の熱可塑性エラストマー成分の含有量(測定値)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均含有量との差の大きい方と平均含有量との差を求めた場合におけるその差の平均含有量に対する割合のことをいう。なお、熱可塑性エラストマー成分の含有量は、後述するように、フィルムを表面に対して垂直にスライスして超薄片を形成し、特定の物質でエラストマー成分を染色して染色部分の全体に占める面積比を算出する方法によって測定することも可能であるし、エラストマーに特有なピークに着目した赤外線分析やNMR分析等の他の方法によって測定することも可能である。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のエラストマー成分の含有量の変動率が、平均含有量の±9%以内の範囲にあるとより好ましく、±8%以内の範囲にあるとさらに好ましく、±7%以内の範囲にあると特に好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料のエラストマー成分の含有量の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂フィルムロールは、各切り出し部から切り出された各試料について、引張弾性率を測定したときに、それらの引張弾性率の平均値である平均引張弾性率が2.2GPa(2200N/mm2 )以上3.3GPa(3300N/mm2 )未満であるとともに、すべての試料の引張弾性率の変動率が、前記平均引張弾性率に対して±10%の範囲内に調整されていると好ましい。ここで、すべての試料の引張弾性率の変動率とは、すべての試料の引張弾性率中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均引張弾性率との差の大きい方と平均引張弾性率との差を求めた場合におけるその差の平均引張弾性率に対する割合のことをいう。
なお、ポリアミド系混合樹脂フィルムロールを構成するポリアミド系混合樹脂フィルムの引張弾性率は、フィルム自体の強靭性・耐ピンホール性を高める上で重要であり、引張弾性率が2.2GPa未満では、透明性と耐ピンホール性とを同時に要求される袋を形成する場合に、強靭性・耐ピンホール性が不十分となり、反対に、3.3GPaを超えると、3方シール袋としたときに引裂性が悪くなるので好ましくない。強靭性・耐ピンホール性と3方シール袋形成時の引裂性を高める上でより好ましい引張弾性率の範囲は2.5GPa〜3.0GPaである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂フィルムロールは、切り出したすべての試料の引張弾性率の変動率が、平均引張弾性率の±9%以内の範囲にあると好ましく、±8%以内の範囲にあるとより好ましく、±7%以内の範囲にあるとさらに好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂フィルムロールは、切り出したすべての試料の引張弾性率の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると±2%程度が限界であると考えている。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の剥離強度(段落番号0248に記載された測定方法によって求められるもの)の平均値である平均剥離強度が500g/15mm巾以上であることが必要であり、750g/15mm巾以上であるとより好ましい。平均剥離強度が500g/15mm巾を下回ると、製袋加工した後の袋の開口部が破裂し易いものとなるので好ましくない。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の剥離強度の変動率が、平均剥離強度の±5%〜±30%(±5%以上±30%以下)の範囲内となるように調整されることが好ましい。ここで、すべての試料の剥離強度の変動率とは、すべての試料の剥離強度中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均剥離強度との差の大きい方と平均剥離強度との差を求めた場合におけるその差の平均剥離強度に対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいては、試料(1)〜(6)の剥離強度をSn(n=1〜6)とした場合に、Snの最大値Smaxと平均剥離強度(Sa)との差と、最小値Sminと平均剥離強度との差とのいずれもが±30%以内であることが好ましい、ということであり、換言すれば、|Sa−Sn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも30%以下であることが好ましい、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の剥離強度の変動率が、平均剥離強度の±20%以内の範囲にあると好ましく、±15%以内の範囲にあるとより好ましい。加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の剥離強度の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると5%程度が限界であると考えている。
さらに、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムは、切り出したすべての試料の熱水剥離強度(段落番号0249に記載された測定方法によって求められるもの)の平均値である平均熱水剥離強度が150g/15mm巾以上であることが好ましく、250g/15mm巾以上であるとより好ましい。平均熱水剥離強度が150g/15mm巾を下回ると、レトルト食品用途として製袋加工した後の袋の開口部が熱水中で破裂し易いものとなるので好ましくない。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の熱水剥離強度の変動率が、平均熱水剥離強度の±5%〜±30%(±5%以上±30%以下)の範囲内となるように調整されることが好ましい。ここで、すべての試料の熱水剥離強度の変動率とは、すべての試料の熱水剥離強度中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均熱水剥離強度との差の大きい方と平均熱水剥離強度との差を求めた場合におけるその差の平均熱水剥離強度に対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいては、試料(1)〜(6)の熱水剥離強度をHn(n=1〜6)とした場合に、Hnの最大値Hmaxと平均熱水剥離強度(Ha)との差と、最小値Hminと平均熱水剥離強度との差とのいずれもが±30%以内であることが好ましい、ということであり、換言すれば、|Ha−Hn|(なお、||は絶対値を示す)がいずれも30%以下であることが好ましい、ということである。
なお、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の熱水剥離強度の変動率が、平均熱水剥離強度の±20%以内の範囲にあると好ましく、±15%以内の範囲にあるとより好ましい。加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の熱水剥離強度の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度を考慮すると5%程度が限界であると考えている。
さらに、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、上記方法により試料を切り出した場合に、すべての試料について、厚み方向の屈折率(Nz)を求めたときに、それらの屈折率の平均値である平均屈折率(Nza)が1.500以上1.520以下となるように調整されることが好ましい。なお、平均屈折率は、下式6によって算出される。
Nza=すべての試料のNzの総和/試料の数・・・6
なお、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを構成するフィルムのNzの値は、ラミネート強度と厚み斑等のフィルム品位に大きな影響を及ぼす。したがって、平均屈折率が1.500以上1.520以下であるという要件は、二軸配向フィルムをポリオレフィン系樹脂フィルムとラミネートして使用する場合の必須の要件となる。そして、Nzが1.500未満では、ポリオレフィン系樹脂フィルム等とのラミネート強度が不十分となり、製袋後の沸水処理等でラミネート基材との間で剥離が起こり易くなる。一方、このNzは、未延伸のフィルムを二軸延伸する過程で順次低下していく。換言すると、Nzは延伸の指標の1つとも考えることができ、Nzが大きいということは延伸が不十分であることを表わしており、Nzが1.520を超えるものでは、二軸延伸不足による厚み斑等が顕著に現れて、満足なフィルム品位が得られなくなる。ラミネート強度とフィルム品位の両面を考慮して特に好ましいNzの範囲は1.507〜1.516の範囲である。
また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の屈折率(Nz)の変動率が、それらの屈折率の平均値(以下、平均屈折率という)に対して±2%以内の範囲となるように調整されることが好ましい。ここで、すべての試料の屈折率(Nz)の変動率とは、すべての試料の屈折率(Nz)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均屈折率との差の大きい方と平均屈折率との差を求めた場合におけるその差の平均屈折率に対する割合のことをいう。
すなわち、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいては、試料(1)〜(6)の屈折率をNz1〜Nz6とした場合に、Nz1〜Nz6の最大値Nzmaxと平均屈折率との差と、Nz1〜Nz6の最小値Nzminと平均屈折率との差とのいずれもが±2%以内であると好ましい、ということであり、換言すれば、|平均屈折率−Nz1|〜|平均屈折率−Nz6|がいずれも2%以下であると好ましい、ということである。また、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の屈折率(Nz)の変動率が、平均屈折率に対して±1%以内の範囲にあるとより好ましい。
加えて、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、切り出したすべての試料の屈折率(Nz)の変動率が小さいほど好ましいが、当該変動率の下限は、測定精度や機械精度の面から0.1%程度が限界であると考えている。
上述したように、1本のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおける最大沸水収縮率、沸水収縮率方向差、長手方向の厚み斑等の物性を所定の範囲の値に調整するとともに、最大沸水収縮率、沸水収縮率方向差、長手方向の厚み斑等の変動を小さくすることで、製袋加工やラミネート加工における外観の悪化を防止することができ、歩留まり良くスムーズに加工することが可能となる上、加工された各袋毎のガスバリア性のバラツキが低減される。
また、本発明において使用されるポリアミド樹脂としては、たとえば、ε−カプロラクタムを主原料としたナイロン6を挙げることができる。また、その他のポリアミド樹脂としては、3員環以上のラクタム、ω−アミノ酸、二塩基酸とジアミン等の重縮合によって得られるポリアミド樹脂を挙げることができる。具体的には、ラクタム類としては、先に示したε−カプロラクタムの他に、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、ω−アミノ酸類としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸を挙げることができる。また、二塩基酸類としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸を挙げることができる。さらに、ジアミン類としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン等を挙げることができる。そして、これらを重縮合して得られる重合体またはこれらの共重合体、たとえばナイロン6、7、11、12、6.6、6.9、6.11、6.12、6T、6I、MXD6(メタキシレンジパンアミド6)、6/6.6、6/12、6/6T、6/6I、6/MXD6等を用いることができる。加えて、本発明のポリアミドフィルムロールを製造する場合には、上記したポリアミド樹脂を単独で、あるいは、2種以上を混合して用いることができる。
なお、上記ポリアミド系樹脂の中でも本発明において特に好ましいのは、相対粘度が2.0〜3.5の範囲のものである。ポリアミド系樹脂の相対粘度は、得られる二軸延伸フィルムの強靭性や延展性等に影響を及ぼし、相対粘度が2.0未満のものでは衝撃強度が不足気味になり、反対に、相対粘度が3.5を超えるものでは、延伸応力の増大によって逐次二軸延伸性が悪くなる傾向があるからである。なお、本発明における相対粘度とは、ポリマー0.5gを97.5%硫酸50mlに溶解した溶液を用いて25℃で測定した場合の値をいう。
本発明において使用される熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、ナイロン6やナイロン12等のポリアミド系樹脂とPTMG(ポリテトラメチレングリコール)やPEG(ポリエチレングリコール)等とのブロックあるいはランダム共重合体等のポリアミド系エラストマー、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンとブテンとの共重合体、スチレンやブタジエンとの共重合体等のポリオレフィン系エラストマー、エチレン系アイオノマー等のオレフィン系樹脂のアイオノマー等を好適に用いることができる。なお、コア層に含有させる熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン12系のエラストマーより、ナイロン6系のエラストマーを使用した方が、フィルムロールを構成するフィルムの耐衝撃性およびガスバリア性が向上するので好ましい。なお、この原因は明らかではないが、MXD−6のメチレン基数と熱可塑性エラストマーのメチレン基数とを合わせた方が、熱可塑性のエラストマーの微分散性が向上することに起因するものと考えている。
本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、原料であるMXD−6チップ、ポリアミド樹脂チップ、および熱可塑性エラストマーチップを、後述する共押出法を利用して溶融押し出しすることにより、複数の樹脂層を積層した未延伸積層シート(未延伸積層フィルム)を形成し、その未延伸積層フィルム(未延伸積層シート)を縦方向(長手方向)および横方法(幅方向)に二軸延伸した後にロール状に巻き取ることによって製造される。
ポリアミド系混合樹脂積層フィルムは、A/B(二種二層)またはA/B/A(二種三層)、またはA/B/C(三種三層)の構成を有していることが必要である。カールの点から、対称層構成であるA/B/A構成が好ましい。なお、以下の説明においては、積層フィルムを構成する各層の内、最外側に位置しない中心部の層(すなわち、A/B/A、またはA/B/Cの層構成の場合におけるB層)および、二種二層構成である場合の厚い層(すなわち、薄いA層と厚いB層とのA/Bの層構成の場合におけるB層)をコア層という。また、最外側に位置した層(すなわち、A/Bの層構成の場合におけるA,B層、A/B/AまたはA/B/Cの層構成の場合におけるA,C層)および、二種二層構成である場合の薄い層(すなわち、薄いA層と厚いB層とのA/Bの層構成の場合におけるA層)をスキン層という。
ポリアミド系混合樹脂積層フィルムの各層の厚み比率は、A層、またはA層およびC層を5〜50%とすることが好ましく、さらに好ましくは10〜20%であり、特に好ましくは12〜18%である。二種三層のA/B/A構成の場合は、表層のA層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味し、三種三層のA/B/C構成の場合は、表層のA層およびC層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味する。A層、またはA層およびC層の厚み比率が5%未満では、厚み斑による濁り度の変動率が大きくなるため好ましくない。一方、A層、またはA層およびC層の厚み比率が30%を越えると、耐屈曲疲労性が悪化し、ピンホール数が増加するとともに、透明性が悪化するため好ましくない。
なお、上記の如き積層フィルムを製造するためには、A/B,A/B/A、またはA/B/Cの層構成を有する実質的に未配向の樹脂シートを製膜するにあたり、各層を構成する重合体を別々の押出機を用いて溶融し、共押出しし、口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法(いわゆる共押出法)を好適に採用することができる。
また、コア層を形成する樹脂としては、少なくともMXD−6と熱可塑性エラストマーとが含まれていることが必要であり、必要に応じて、ポリアミド系樹脂を混合することができる。MXD−6中に添加する熱可塑性エラストマーの量は、0.5重量%以上8.0重量%未満であることが必要であり、添加量の下限が、1.0重量%以上であると好ましく、3.0重量%以上であるとより好ましい。一方、添加量の上限は、6重量%以下であると好ましく、5重量%以下であるとより好ましい。熱可塑性エラストマーの添加量が0.5重量%を下回ると、常温での良好な耐ピンホール性が得られなくなるので好ましくなく、反対に、熱可塑性エラストマーの添加量が8.0重量%以上となると、高い透明性(ヘイズ)を要求される食品等の包装用途に適さなくなるので好ましくない。また、コア層を形成する樹脂中にポリアミド系樹脂を混合する場合には、MXD−6の含有比率を55〜95.5重量%とし、熱可塑性エラストマーの含有比率を0.5〜5重量%とし、ポリアミド系樹脂の含有比率を0〜44.5重量%とするのが好ましい。さらに、コア層を形成する樹脂中には、必要に応じて、MXD−6、熱可塑性エラストマー、ポリアミド系樹脂以外の樹脂を充填することも可能であるし、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤等を充填することも可能である。
一方、スキン層を形成する樹脂には、少なくともポリアミド系樹脂が含まれていることが必要であり、必要に応じて、MXD−6や熱可塑性エラストマー等の他の樹脂を混合することができる。なお、スキン層を形成する樹脂中にポリアミド系樹脂以外の樹脂を混合する場合には、ポリアミド系樹脂の含有比率を80〜100重量%とするのが好ましい。また、スキン層を形成する樹脂中には、必要に応じて、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤等を充填することも可能である。そのように、硬質なMXD−6を主成分とするコア層の外側に、相対的に軟質なポリアミド系樹脂を主成分とするスキン層を設けるとともに、コア層に熱可塑性エラストマーを充填することにより、MXD−6による良好なガスバリア性を発現させるのと同時に、熱可塑性エラストマーおよびポリアミド系樹脂による良好な耐ピンホール性を発現させることが可能となる。
なお、コア層を形成する樹脂と、スキン層を形成する樹脂とを入れ替え、少なくともポリアミド系樹脂を含む樹脂によってコア層を形成し、少なくともMXD−6と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂によってスキン層を形成することも可能である。また、かかる場合には、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムの各層の厚み比率は、A層、またはA層およびC層を50〜95%とすることが好ましく、さらに好ましくは80〜90%であり、特に好ましくは82〜88%である。なお、かかる場合においても、二種三層のA/B/A構成の場合は、表層のA層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味し、三種三層のA/B/C構成の場合は、表層のA層およびC層の厚み比率は、両表層の厚み比率の和を意味する。そして、かかる場合には、B層の厚み比率が5%未満では、厚み斑による濁り度の変動率が大きくなるため好ましくない。一方、B層の厚み比率が50%を越えると、ガスバリア性が悪化するため好ましくない。
次に、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得るための好ましい製造方法について説明する。本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールは、上述の如く、原料であるMXD−6チップ、ポリアミド樹脂チップ、および熱可塑性エラストマーチップを、共押出法を利用して溶融押し出しすることにより、複数の樹脂層を積層した未延伸積層シート(未延伸積層フィルム)を形成し、その未延伸積層フィルム(未延伸積層シート)を縦方向(長手方向)および横方法(幅方向)に二軸延伸した後にロール状に巻き取ることによって製造される。また、二軸延伸の前後あるいは途中において、ポリアミド系混合樹脂積層フィルム上に接着改質層を積層する必要があるが、当該接着改質層の積層を縦方向(長手方向)に延伸した後に行うのが好ましい。なお、接着改質層の積層方法については後述する。
本発明者らが、フィルムロールの縦方向の厚み斑(フィルムロールの全長に亘る厚み斑)、沸水収縮率等の物性の変動やバラツキについて検討した結果、かかる縦方向の厚み斑や物性の変動やバラツキは、主として、溶融させた樹脂を未延伸フィルムにするキャスト工程における種々の要因により大きな影響を受けることが判明した。すなわち、各押出機と直結した漏斗状ポッパ(以下、単にホッパという)に供給する際の樹脂の温度が低かったり、各押出機にホッパに供給する樹脂の水分率の調整が不適切だったりすると、未延伸フィルムにおける縦方向の厚み斑が大きくなり、二軸延伸フィルムにおける物性の変動やバラツキが大きくなることが分かった。また、Tダイから押し出した樹脂を金属ロールに巻き付ける際に、樹脂と金属ロールとの接触点が乱れた場合にも、未延伸フィルムにおける縦方向の厚み斑が大きくなり、二軸延伸フィルムにおける物性の変動やバラツキが大きくなることが分かった。さらに、二軸延伸工程における延伸条件が不適切であると、未延伸フィルムにおける縦方向の厚み斑が増幅され、物性の変動やバラツキを助長してしまうことも分かった。
さらに、本発明者らは、上記事実に基づいて鋭意検討した結果、フィルムロール製造の際に、以下の手段を講じることにより、ガスバリア性や低温度下おける耐ピンホール性等の物性の変動が少ないフィルムロールを得ることが可能となることを突き止めた。
(1)樹脂チップの形状の均一化
(2)ホッパへの樹脂供給時の温度保持
(3)ホッパ形状の適正化
(4)樹脂混合時における偏析防止剤の添加
(5)偏析防止剤添加による悪影響の除去
(6)延伸条件の適正化
(7)各層を形成する樹脂の溶融時の流動性の調整
以下、上記した各手段について順次説明する。
(1)樹脂チップの形状の均一化
本発明のフィルムロールの製造において、ブレンド方式を採用し、組成の異なる複数の原料樹脂チップをホッパや混合ミキサー内でブレンドした後、溶融混練し、押出機から押出して、フィルム化する。たとえば、原料となる樹脂が3種類ある場合、それらの各原料樹脂チップを3個のホッパに連続式あるいは間欠式に供給し、必要に応じて緩衝ホッパを介して、最終的には、押出機の直前あるいは直上のホッパ(以下、「最終ホッパ」という)で3種類の原料樹脂チップを再度混合しながら、押出量に合わせて定量的に押出機に供給してフィルムを形成する。
ところが、最終ホッパの容量あるいは形状によっては、最終ホッパ内の樹脂チップ量が多い場合および最終ホッパ内の樹脂チップの残量が少なくなった場合に、原料偏析の現象、すなわち、最終ホッパから押出機へと供給される樹脂チップの組成が異なったものとなる現象が発生する。また、かかる偏析現象は、樹脂チップの形状あるいは比重が異なっている場合に、特に顕著に現れる。さらに、かかる偏析現象によって、長尺なフィルムを製造した場合に、最大沸水収縮率、沸水収縮率方向差、フィルム厚み、厚み方向の屈折率等の物性が変動する。
すなわち、樹脂チップの大きさに違いがあると、最終ホッパ内をチップの混合物が落下していくときに、小さい樹脂チップは先に落下し易いため、最終ホッパ内のチップ残量が少なくなると、大きい樹脂チップの比率が多くなって、これが原料偏析の原因となる。したがって、物性変動の少ないフィルムロールを得るためには、使用する複数種の樹脂チップの形状を合わせて、最終ホッパ内での原料偏析の現象を抑止することが必要である。
本発明で原料として使用されるMXD−6、熱可塑性エラストマー、ポリアミドの各樹脂チップは、通常、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後、ストランドカッターでカットされて形成される。このため、樹脂チップは、断面が楕円形の楕円柱状となる。ここで、樹脂チップの形状と原料偏析との関係について検討した結果、使用量の最も多い樹脂チップに混合される他の樹脂チップの断面楕円の平均長径(mm)、平均短径(mm)、平均チップ長さ(mm)を、それぞれ、使用量の最も多い樹脂チップの断面楕円の平均長径(mm)、平均短径(mm)、平均チップ長さ(mm)に対して±20%以内の範囲に調整することにより、上記原料偏析を低減させることが可能となる。なお、使用量の最も多い樹脂チップ以外の樹脂チップの断面楕円の平均長径、平均短径、平均チップ長さを、それぞれ、使用量の最も多い樹脂チップの断面楕円の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対して±15%以内の範囲に調整すると、偏析防止効果がきわめて顕著なものとなるので、より好ましい。
(2)各ホッパへの樹脂供給時の温度保持
加熱乾燥して水分率を調整した後のチップを放置して常温(室温)まで温度を下げた後に各ホッパに供給した場合には、物性の均一なフィルムロールを得ることはできない。すなわち、本発明のフィルムロールを得るためには、ブレンダー等で加熱乾燥させたチップを高温に保持したまま、各ホッパに供給することが必要である。具体的には、ブレンダーで加熱乾燥させたチップは、80℃以上に保持したまま各ホッパに供給することが必要であり、90℃以上に保持したまま各ホッパに供給するとより好ましい。各ホッパに供給するチップの温度が80℃を下回ると、樹脂の噛み込みが悪くなり、縦方向の厚み斑や物性の変動やバラツキの原因となり、本発明のフィルムロールが得られなくなる。なお、ブレンダー等の装置により、チップを乾燥する際には、乾燥温度は、150℃以下に調整することが必要である。乾燥温度が150℃を上回ると、乾燥時に加水分解が起こる可能性があるので好ましくない。また、ブレンダーで加熱乾燥させたチップの温度が、80℃を下回った場合には、80℃以上になるように再度加温してホッパに供給することが必要である。
(3)ホッパ形状の適正化
最終ホッパとして漏斗状ホッパを用い、その傾斜角を65゜以上にすることによって、大きいチップも小さいチップと同様に落とし易くすることができ、内容物の上端部が水平面を保ちつつ下降していくようになるため、原料偏析の低減に効果的である。より好ましい傾斜角は70゜以上であり、さらに好ましい傾斜角は75°以上である。なお、ホッパの傾斜角とは、漏斗状の斜辺と、水平な線分との間の角度である。最終ホッパの上流に複数のホッパを使用しても良く、この場合、いずれのホッパにおいても、傾斜角を65゜以上とする必要があり、より好ましくは70゜以上であり、さらに好ましくは75゜以上である。
また、使用する原料チップの削れ等により発生する微粉体の比率を低減することも、沸水収縮率の変動を抑制するために好ましい。微粉体が原料偏析の発生を助長するので、工程内で発生する微粉体を除去して、各ホッパ内に含まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれる微粉体の比率は、原料チップが各押出機に入るまでの全工程を通じて、1重量%以内とすることが好ましく、0.5重量%以内とすることが、より好ましい。微粉体の比率を低減するための具体的な方法としては、ストランドカッターでチップ形成時に篩を通したり、原料チップを空送する場合にサイクロン式エアフィルタを通したりすることにより、微粉体を除去する方法を挙げることができる。
(4)樹脂混合時における偏析防止剤の添加
さらに、各ホッパ内での原料偏析を低減する手段として、各ホッパ内でのポリアミド系樹脂とエラストマーとの混合において、昇華性の偏析防止剤を添加することも好ましい。かかる昇華性の偏析防止剤としては、低沸点のグリコールを用いることができ、その中でも、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールを好適に用いることができる。また、MXD−6の原料チップ、ポリアミド系樹脂の原料チップやエラストマーの原料チップに加える昇華性の偏析防止剤の量は、それらの樹脂の合計重量に対して0.02%〜2.00%の範囲内とするのが好ましい。0.02%未満とすると十分な偏析防止効果が得られなくなるので好ましくなく、反対に、2.00%以上となると完全に昇華し切らなくなる虞れが生じるので好ましくない。
加えて、各ホッパ内での原料偏析を低減する手段として、使用するホッパの容量を適正化することも好ましい手段である。ここで、各ホッパの適正な容量は、押出機の1時間当たりの吐出量に対して15〜120重量%の範囲内であり、押出機の1時間当たりの吐出量に対して20〜100重量%の範囲内であると、より好ましい。
なお、MXD−6の原料チップ、ポリアミド系樹脂の原料チップとエラストマーの原料チップとを混合する方法としては、混合用の中間ホッパ(緩衝ホッパ)を介して、最終ホッパおよび各押出機に供給することも可能である。
また、ポリアミド系樹脂やエラストマーとして、それぞれ、複数種の原料を混合する際には、原料チップを連続的に定量供給する装置から、各ホッパ内に複数種の原料を定量的に供給しながら混合する方法、あるいは、ブレンダーやパドルドライヤー等を使用して事前に混合する方法等を挙げることができるが、後者を利用する場合には、混合物の排出時に原料偏析が発生しないように、原料チップサイズを小さくすることが好ましい。
(5)偏析防止剤添加による悪影響の除去(溶融樹脂の金属ロールへの接触時の吸引)
チップを溶融押し出しして未延伸フィルムを得る際には、共押出法を利用して、各層を形成するための樹脂チップを、各押出機により、200〜300℃の温度で溶融させ、積層させた状態でTダイから押し出すことによってフィルム状(積層シート状)に成形(すなわち、キャスティング)した後、所定の温度に冷却した金属ロール等の冷却ロールに巻き付ける方法によって急冷する。なお、縦方向の厚み斑、物性の変動やバラツキの観点から、好ましい溶融押し出し温度は、240℃〜290度である。本発明のフィルムロールを得るためには、溶融した樹脂を金属ロールに巻き付ける場合に、エアーギャップ(すなわち、Tダイリップの出口からチルロール表面までの鉛直方向の距離)を20〜60mmに調整するとともに、幅広な吸引口を有するバキュームボックス(バキュームチャンバー)等の吸引装置を利用して、溶融樹脂と冷却ロールの表面に接触する部分を、溶融樹脂の全幅に亘って、巻き取り方向と反対方向に吸引することにより、溶融樹脂を強制的に金属ロールに密着させるのが好ましい。
そして、その際には、上記した昇華性の偏析防止剤が溶融樹脂の冷却ロールへの密着を阻害する事態を防止するため、吸引口の部分の吸引風速を、2.0〜7.0m/sec.に調整する必要があり、2.5〜5.5m/sec.に調整するとより好ましい。さらに、バキュームボックスは、吸入口が一連になっているものでも良いが、吸引口における吸引風速の調整を容易なものとするために、吸引口が横方向に所定数のセクションに区分されており各セクション毎に吸引風速の調整を可能としたものとするのが好ましい。また、キャスティングの速度が大きくなると、金属ロールの回転に伴って随伴流が生じ、溶融樹脂の金属ロールへの密着が阻害されてしまうので、吸引装置による吸引をより効果的なものとし、溶融樹脂の金属ロールへの密着度合いを向上させるために、テフロン(登録商標)等の軟質な素材で幅広に形成された遮蔽板を、吸引装置と隣接する上流側(吸引装置に対して金属ロールの回転方向と反対側)に設置して、随伴流を遮断するのが好ましい。さらに、本発明のフィルムロールを得るためには、バキュームボックスの吸引風速のバラツキを、平均吸引風速(設定値)±20%以内に抑えることが必要であり、±10%以内に抑えるとより好ましい。加えて、オリゴマーの粉塵等によりバキュームボックスの吸引風速が変動しないように、バキュームボックス内にフィルターを設けるとともに、そのフィルター前後の差圧をフィードバックすることにより、吸引力を調節するのが好ましい。
また、本発明のフィルムロールを得るためには、溶融した樹脂を冷却ロールに巻き付ける場合には、溶融した樹脂シートに針状電極より2〜15kvで90〜105mAの直流負電荷を印加して、グロー放電させながら金属ロールに連続的に密着急冷させることが必要である。なお、この場合に、印可する直流負電荷を7〜14kvの範囲に調整すると、縦方向の厚み斑、物性の変動やバラツキが低下するので好ましい。また、本発明のフィルムロールを得るためには、印可する直流負電荷のバラツキを、平均負電荷(設定値)±20%以内に抑えることが必要であり、±10%以内に抑えるとより好ましい。
(6)延伸条件の適正化
未延伸フィルムを二軸延伸する方法としては、未延伸フィルムをロール式延伸機で縦方向に延伸しテンター式延伸機で横方向に延伸した後に熱固定処理および緩和処理を行う縦・横延伸方法等を採用する必要がある。さらに、本発明のフィルムロールを得るためには、二軸延伸する方法として、いわゆる縦−縦−横延伸方法を採用する必要がある。かかる縦−縦−横延伸方法とは、実質的に未配向のフィルムを縦延伸するにあたり、一段目の延伸を施し、Tg以下に冷却することなく、引続き二段目の延伸を行い、しかる後、3.0倍以上、好ましくは、3.5倍以上の倍率で横延伸し、さらに熱固定する方法である。そして、本発明のフィルムロールを得るためには、上記した縦−縦−横延伸を行う際に、一段目の縦延伸倍率を二段目の縦延伸倍率より高くすることが必要である。すなわち、そのように一段目の縦延伸倍率を二段目の縦延伸倍率より高くすることにより、沸水収縮率等の物性が良好な上、それらの物性のバラツキが少ないフィルムロールを得ることが可能となる。なお、縦−縦−横延伸を行う場合には、通常、一段目の縦延伸倍率を二段目の縦延伸倍率より低くした方が、一段目の延伸時にロールへの粘着を生ずることなく容易に延伸できるが、テフロン(登録商標)製ロール等の特殊なロールを使用することにより、一段目の縦延伸倍率を二段目の縦延伸倍率より高くしても、ロールへの粘着を起こすことなく容易に延伸することが可能となる。
上記の如く縦−縦−横延伸を行う場合には、一段目の縦延伸を、80〜90℃の温度下で約2.0〜2.4倍延伸するものとするのが好ましい。一段目の延伸倍率が上記範囲を外れて高くなると、縦方向の厚み斑が大きくなるので好ましくない。加えて、二段目の縦延伸を、65〜75℃の温度下で約1.3〜1.7倍延伸するものとするのが好ましい。二段目の延伸倍率が上記範囲を外れて低くなると、ボイル歪みが大きくなり実用性のないものとなるので好ましくなく、反対に、二段目の延伸倍率が上記範囲を外れて高くなると、縦方向の強度(5%伸長時強度等)が低くなり実用性のないものとなるので好ましくない。
また、上記の如く縦−縦−横延伸を行う場合には、縦延伸方法として、熱ロール延伸、赤外線輻射延伸等を採用することができる。また、このような縦−縦−横延伸方法によって本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを製造した場合には、縦方向の厚み斑、物性の変動やバラツキが小さくなるばかりでなく、横方向の物性変動やバラツキも低減することができる。また、縦−縦−横延伸する場合には、総縦延伸条件を3.0〜4.5倍とするのが好ましい。
また、縦−縦−横延伸を行う場合には、横延伸を、120〜140℃の温度下で約4.0〜5.5倍延伸するものとするのが好ましい。横延伸の倍率が上記範囲を外れて低くなると、横方向の強度(5%伸長時強度等)が低くなり実用性のないものとなるので好ましくなく、反対に、横延伸の倍率が上記範囲を外れて高くなると、横方向の熱収縮率が大きくなるので好ましくない。一方、横延伸の温度が上記範囲を外れて低くなると、ボイル歪みが大きくなり実用性のないものとなるので好ましくなく、反対に、横延伸の温度が上記範囲を外れて高くなると、横方向の強度(5%伸長時強度等)が低くなり実用性のないものとなるので好ましくない。
さらに、本発明のフィルムロールを得るためには、縦−縦−横延伸後の熱固定処理を、180〜230℃の温度にて行うのが好ましい。熱固定処理の温度が上記範囲を外れて低くなると、縦方向および横方向の熱収縮率が大きくなるので好ましくなく、反対に、熱固定処理の温度が上記範囲を外れて高くなると、二軸延伸フィルムの衝撃強度が低くなるので好ましくない。
加えて、本発明のフィルムロールを得るためには、熱固定後の緩和処理を、2〜10%緩和させるものとするのが好ましい。緩和処理の割合が上記範囲を外れて低くなると、縦方向および横方向の熱収縮率が大きくなるので好ましくなく、反対に、緩和処理の割合が上記範囲を外れて高くなると、縦方向および幅方向の強度(5%伸長時強度等)が低くなり実用性のないものとなるので好ましくない。
また、フィルムロールの幅は、特に制限されるものではないが、取扱い易さの点から、フィルムロールの幅の下限は、0.35m以上であると好ましく、0.50m以上であるとより好ましい。一方、フィルムロールの幅の上限は、2.5m以下であると好ましく、2.0m以下であるとより好ましく、1.5m以下であるとさらに好ましい。加えて、フィルムロールの巻長も、特に制限されないが、巻き易さや取扱い易さの点から、フィルムロールの巻長の下限は、500m以上であると好ましく、1,000m以上であるとより好ましい。一方、フィルムロールの巻長の上限は、2,5000m以下であると好ましく、20,000m以下であるとより好ましく、15,000m以下であるとさらに好ましい。なお、フィルム厚みが15μm程度である場合には、12000m以下であると特に好ましい。また、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等の紙、プラスチックコアや金属製コアを使用することができる。
一方、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを構成するフィルムの厚みも、特に限定するものではないが、たとえば、包装用フィルムとしては、8〜50μmが好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。
加えて、本発明のフィルムロールを構成するポリアミド系混合樹脂積層フィルムには、特性を阻害しない範囲内で、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤等の各種の添加剤を含有させることも可能である。特に、二軸延伸フィルムの滑り性を良好にする目的で、各種の無機粒子を含有させることが好ましい。また、表面エネルギーを下げる効果を発揮するエチレンビスステアリン酸等の有機滑剤を添加すると、フィルムロールを構成するフィルムの滑り性が優れたものになるので好ましい。
さらに、本発明のフィルムロールを構成するポリアミド系混合樹脂積層フィルムには、用途に応じて寸法安定性を良くするために熱処理や調湿処理を施すことも可能である。加えて、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したり、印刷、蒸着等の加工を施したりすることも可能である。
(7)各層を形成する樹脂の溶融時の流動性の調整
上記の如く、チップを溶融押し出しして未延伸フィルムを得る際には、共押出法を利用して、各層を形成するための樹脂チップを、各押出機により、溶融させて積層させた状態でTダイから押し出すことによってフィルム状に成形される。従来、共押出法を利用して積層フィルムを製造する場合には、かかるキャスティング工程において、各層を形成する樹脂の流動性を統一するのが、積層フィルムの厚み斑を均一にする上で好ましいと考えられていた。
ところが、発明者らが、さらに高品質なフィルムロールを製造するために、キャスティング工程における樹脂の物性、溶融押出条件と未延伸フィルムの厚み変動や二軸延伸フィルムの厚み、物性の変動との関係について鋭意検討した結果、本発明の如きポリアミド系の混合樹脂を積層したフィルムロールを製造する際には、キャスティング工程において各層を形成する樹脂の流動性を統一するのが、必ずしも、積層フィルムの厚み斑や物性を均一にする上で好ましいとは言えないことが判明した。そして、発明者らは、キャスティング工程において、スキン層を形成する樹脂(以下、スキン層形成用樹脂という)の溶融時の流動性を、コア層を形成する樹脂(以下、コア層形成用樹脂という)の溶融時の流動性に対して相対的に低くすると(すなわち、スキン層形成用樹脂をコア層形成用樹脂より流れ易くすることにより、同時に押出機内に供給されたスキン層形成用樹脂およびコア層形成用樹脂の内、スキン層形成用樹脂をコア層形成用樹脂より先にダイスから押し出すようにすると、スキン層の厚みの変動およびコア層の厚みの変動を防止することができ、ひいては、積層フィルム全体の厚みの変動を小さくすることができることを見出した。そのような現象が起こる理由は明らかではないが、上記の如くスキン層形成用樹脂の流動性を相対的に低くすることにより、コア層の主成分である硬質のMXD−6を滑らかに押し出すことが可能となるとともに、スキン層の主成分であるポリアミド樹脂とダイスの周壁との摩擦を低減し、スキン層の表層がいわゆる“鮫肌化”する現象を緩和することが可能となるためと考えている。そして、その結果、スキン層の厚みの変動およびコア層の厚みの変動を抑え、積層フィルム全体の厚みの変動を低減することができ、ガスバリア性、透明性、低温下での耐ピンホール性等の物性のバラツキを低減することができるものと考えている。
また、スキン層形成用樹脂の溶融時の流動性を、コア層形成用樹脂の溶融時の流動性に対して相対的に低くする方法としては、スキン層形成用の押出機の温度(詳しくは、エクストルーダ付近の温度)をコア層形成用の押出機の温度よりも高くする方法(以下、押出温度調整法という)、スキン層形成用樹脂の相対粘度(RV)や還元粘度をコア層形成用樹脂の相対粘度や還元粘度に対して低くする方法(以下、相対・還元粘度調整法という)、スキン層形成用樹脂の水分率をコア層形成用樹脂の水分率より高くする方法(以下、水分率調整法という)を採用することができる(なお、ポリアミド系樹脂や熱可塑性エラストマーの相対粘度、還元粘度の測定方法の一例については後述する)。
また、上記した3つの方法の内の押出温度調整法は、相対・還元粘度調整法や水分率調整法に比べて、スキン層形成用樹脂およびコア層形成用樹脂の溶融時の流動性を大きく変化させることができるが、押出温度調整法のみで、両樹脂の溶融時の流動性の差を適度な範囲に微調整することは難しい。反対に、相対・還元粘度調整法や水分率調整法によれば、両樹脂の溶融時の流動性の微調整は可能であるが、相対・還元粘度調整法や水分率調整法だけ用いて、両樹脂の溶融時の流動性の差を適度な範囲に調整するには限界がある。スキン層・コア層を形成する樹脂の種類、混合比や、スキン層・コア層の厚み比に応じて、両樹脂の溶融時の流動性の差が所望する差となるように、相対・還元粘度調整法を利用して、両樹脂の重合度等の調整を行い、その上で、押出温度調整法を利用して、両樹脂の流動性の差の粗調整を行い、さらに、それらの相対・還元粘度調整法や押出温度調整法ではなし得ない微調整を、水分率調整法によって行うことが最も好ましい。なお、スキン層やコア層を複数種類の樹脂によって形成する場合には、スキン層を形成する複数種類の樹脂の総合的な相対粘度や還元粘度をコア層を形成する複数種類の樹脂の総合的な相対粘度や還元粘度に対して低くする方法を採用することができる。
加えて、相対・還元粘度調整法においては、スキン層、コア層を形成する樹脂の各相対粘度が2.0〜4.0の範囲内となり、かつ、スキン層を形成する樹脂の相対粘度とコア層を形成する樹脂の相対粘度との差が0.5以下になるように、各層に使用する樹脂の相対粘度を調整すると好ましい。また、押出温度調整法においては、スキン層、コア層を形成する樹脂の各樹脂温度が240〜300℃の範囲内となり、かつ、スキン層を形成する樹脂とコア層を形成する樹脂の温度差が10℃以下になるように、各層を形成する樹脂の温度を調整すると好ましい。一方、水分率調整法においては、スキン層を形成する樹脂の水分率を800〜1200ppmの範囲内でコントロールするとともに、コア層を形成する樹脂の水分率を800ppm以下にコントロールすることが好ましい。
なお、未延伸積層フィルムの形成時に、上記した(1)〜(5)および(7)の手段を用い、未延伸積層フィルムの延伸工程において(6)の手段を用いることにより、積層フィルムを構成する各層の厚み斑を低減することが可能となり、ひいては、積層フィルム全体の厚み斑を低減することが可能となる。そして、そのことに起因して、非常に効率的にフィルムロールの物性変動を低減させることが可能となるものと考えられる。また、上記した(1)〜(7)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムロールの物性変動の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(7)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムロールの物性変動を低減させることが可能となるものと考えられる。
以下、上記の如く物性がきわめて均一なポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを構成するポリアミド系混合樹脂積層フィルム基材の表面に接着改質層を積層する方法について説明する。なお、本発明において、「分散体」とは、エマルジョン、分散液または懸濁液のことをいい、「グラフト化」とは、重合体主鎖に、主鎖とは異なる重合体からなるグラフト部分を導入することをいい、「グラフト化ポリエステル」とは、ポリエステル主鎖に対してポリエステルとは異なる重合体からなるグラフト部分を有するポリエステルのことをいい、「水系溶媒」とは、主として水からなり、必要に応じて水性有機溶媒を含む溶媒をいう。
(共重合ポリエステル水系分散体)
本発明に用いられ得る共重合ポリエステル水系分散体は、グラフト化ポリエステルの粒子と、水、水系溶媒または有機溶媒とを含み、半透明から乳白色の外観を呈する。このグラフト化ポリエステルは、ポリエステル主鎖と、親水性基を有するラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体により形成されるグラフト部分とを有する。
共重合ポリエステル水系分散体中のグラフト化ポリエステル粒子のレーザー光散乱法により測定される平均粒子径は、500nm以下、好ましくは10nm〜500nm、さらに好ましくは10nm〜300nmである。平均粒子径が500nmを超えると、塗布後の塗膜強度が低下する。
共重合ポリエステル水系分散体中のグラフト化ポリエステル粒子の含有量は、通常、1重量%〜50重量%、好ましくは3重量%〜30重量%である。
本発明に用いられ得る共重合ポリエステル水系分散体の13C−NMR(測定条件:125MHz、25℃、測定溶媒;重水、DSSのシグナルが5Hz以下)を測定した場合、重み付け関数をかけずにフーリエ変換して得られたスペクトルにおいて、ポリエステル主鎖に由来するカルボニル炭素のシグナルの半値幅は300Hz以上、グラフト部分に由来するカルボニル炭素のシグナルの半値幅は150Hz以下であることが好ましい。
一般に、13C−NMRにおいてケミカルシフト、半値幅および緩和時間は、被観測炭素原子の置かれている周囲の環境を反映して変わり得ることが知られている。たとえば、重水中に溶解している重合体のカルボニル炭素のシグナルは、170〜200ppmの範囲に観測され、その半値幅はおよそ300Hz以下である。他方、重水に不溶である重合体のカルボニル炭素のシグナルは、170〜200ppmの範囲に観測され、その半値幅はおよそ300Hz以上である。
グラフト化ポリエステル粒子中のポリエステル主鎖およびグラフト部分が上記のような半値幅を有することにより、本発明に用いられ得る共重合ポリエステル水系分散体中の粒子は、水性分散媒体中においてポリエステル主鎖をコアとするコア−シェル構造をとり得る。
ここでいうコア−シェル構造とは、当該技術分野で公知のように、分散媒体に不溶で凝集状態にある重合体からなるコア部が、分散媒体に可溶で溶解状態にある重合体からなるシェル部で包み込まれた二層構造をいう。この構造は、分散媒体への溶解性が異なる重合体がお互いに化学結合して生成した複合重合体の分散体に特徴的に現われる構造であり、単に分散媒体への溶解性が異なる重合体を混合するだけでは発現し得ない構造であることが知られている。さらに、単なる分散媒体への溶解性が異なる重合体の混合物は、500nm以下の粒子径を有する分散体として存在できない。
本発明に用いられる共重合ポリエステル水系分散体中の粒子が上記のようなコア−シェル構造を有することにより、従来の分散体に良く用いられる乳化剤や有機共溶媒を用いなくても重合体粒子の分散媒体への分散状態が安定化される。このことはシェル部の樹脂が十分な水和層を形成し、分散重合体粒子を保護するためである。
このような共重合ポリエステル水系分散体から得られる塗布膜は、ポリアミドフィルムとの接着性が非常に優れている。さらに、耐ブロッキング性が非常に優れているため、ガラス転移点の比較的低いフィルム基材においても問題なく使用し得る。また積層体とする場合、印刷インキやシーラント層を積層するときに使用する接着剤との接着性も非常に良好である。したがって、本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムを使用することにより、得られる積層体(ラミネートフィルム)は、レトルト処理や沸水処理における耐久性が著しく向上され得る。さらに共重合ポリエステル水系分散体中のグラフト化ポリエステルのガラス転移温度が、30℃以下、好ましくは10℃以下であるような柔軟なグラフト化ポリエステルを使用すると、さらに積層体の耐久性が向上する。
(ポリエステル主鎖)
本発明においてグラフト化ポリエステルの主鎖として用い得るポリエステルは、好適には少なくともジカルボン酸成分とジオール成分とから合成される飽和または不飽和ポリエステルであり、得られるポリエステルは、1種の重合体または2種以上の重合体の混合物であり得る。そして、本来それ自身では水に分散または溶解しないポリエステルが好ましい。本発明に用い得るポリエステルの重量平均分子量は、5000〜l00000、好ましくは5000〜50000である。重量平均分子量が5000未満であると乾燥塗膜の後加工性等の塗膜物性が低下する。さらに重量平均分子量が5000未満であると、主鎖となるポリエステル自身が水溶化し易いため、形成されるグラフト化ポリエステルが後述するコア−シェル構造を形成し得ない。ポリエステルの重量平均分子量が100000を超えると水分散化が困難となる。水分散化の観点からは100000以下が好ましい。
ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
上記ジカルボン酸成分としては、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、少なくとも1種の脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸、および少なくとも1種のラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸を含む、ジカルボン酸混合物であることが好ましい。このジカルボン酸混合物中に含まれる、芳香族ジカルボン酸は、30〜99.5モル%、好ましくは40〜99.5モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸は、0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸は、0.5〜10モル%、好ましくは2〜7モル%、より好ましくは3〜6モル%である。ラジカル重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の含有量が0.5モル%未満の場合、ポリエステルに対するラジカル重合性単量体の効果的なグラフト化が行なわれにくく、水系媒体中での分散粒子径が大きくなる傾向があり、分散安定性が低下する傾向がある。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が用いられ得る。さらに、必要に応じて5−スルホイソフタル酸ナトリウムも用い得る。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、これらの酸無水物等を用い得る。
脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロへキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸無水物等を用い得る。
ラジカル重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸としては、α,β−不飽和ジカルボン酸類としてフマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を用い得る。これらの内で、フマール酸、マレイン酸および2,5−ノルボルネンジカルボン酸(エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−へプテン−2,3−ジカルボン酸)が好ましい。
上記ジオール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、およびエーテル結合含有グリコールのうちの少なくとも1種よりなる。
炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を用い得る。
炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を用い得る。
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、たとえば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用い得る。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて用い得る。
上記ジカルボン酸成分およびジオール成分の他に、3官能性以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合し得る。
3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等を用い得る。
3官能性以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用い得る。
3官能性以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、上記ジカルボン酸成分を含む全ポリカルボン酸成分あるいは上記ジオール成分を含む全ポリオール成分に対し0〜5モル%、好ましくは、0〜3モル%の範囲で使用し得る。
(グラフト化ポリエステルのグラフト部分)
本発明に用い得るグラフト化ポリエステルのグラフト部分は、親水性基を有するか、または後で親水性基に変化させることができる基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種含む単量体混合物由来の重合体であり得る。
グラフト部分を構成する重合体の重量平均分子量は500〜50000、好ましくは4000〜50000である。重量平均分子量が500未満の場合には、グラフト化率が低下するのでポリエステルヘの親水性の付与が十分に行なわれなくなり、かつ一般にグラフト部分の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは困難である。グラフト部分は分散粒子の水和層を形成する。粒子に十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体由来のグラフト部分の、重量平均分子は500以上であることが望ましい。ラジカル重合性単量体のグラフト部分の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で上記のように50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、重合開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、およびモノマー組成を適切に選択し、必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行ない得る。
ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
ラジカル重合性単量体が有する親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩、リン酸基等を用い得る。親水性基に変化させ得る基としては、酸無水物、グリシジル、クロル等を用い得る。グラフト化によりポリエステルに導入される親水性基によってグラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールし得る。上記親水性基の中で、カルボキシル基は、そのグラフト化ポリエステルへの導入量を当該技術分野で公知の酸価を用いて正確に決定し得るため、グラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールする上で好ましい。
カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等があり、さらに水/アミンに接して容易にカルボン酸を発生するマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物等が用いられ得る。好ましいカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体はアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物およびマレイン酸無水物である。
上記親水性基含有ラジカル重合性単量体の他に、少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することが好ましい。親水性基含有単量体のみの場合、ポリエステル主鎖に対するグラフト化が円滑に起こらず、良好な共重合ポリエステル水系分散体を得ることが難しい。少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することによってはじめて効率の高いグラフト化が行なわれ得る。
親水性基を含有しないラジカル重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合を有しかつ上記のような親水性基を含有しない単量体の1種またはそれ以上の組み合わせが使用される。このような単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタリン類等の芳香族ビニル化合物;を挙げることができる。これらのモノマーは単独もしくは2つ以上組み合わせて用いられ得る。
親水性基含有単量体と親水性基を含有しない単量体の使用比率は、グラフト化ポリエステルに導入する親水性基の量を考慮して決定されるが、通常、重量比(親水性基含有単量体:親水性基を含有しない単量体)として、95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、さらに好ましくは80:20〜40:60の範囲である。
親水性基含有単量体として、カルボキシル基含有単量体を用いる場合、グラフト化ポリエステルの総酸価は、600−4000eq./106g、好ましくは700−3000eq./106g、最も好ましくは800−2500eq./106gである。酸価が600eq./106g以下の場合、グラフト化ポリエステルを水に分散したときに粒子径の小さい共重合ポリエステル水系分散体が得にくく、さらに共重合ポリエステル水系分散体の分散安定性が低下する。酸価が4000eq./106g以上の場合、共重合ポリエステル水系分散体から形成される接着改質層の耐水性が低くなる。
グラフト化ポリエステルにおけるポリエステル主鎖とグラフト部分との重量比(ポリエステル:ラジカル重合性単量体)は、40:60〜95:5、好ましくは55:45〜93:7、さらに好ましくは60:40〜90:10の範囲である。
ポリエステル主鎖の重量比率が40重量%以下である場合、すでに説明した母体ポリエステルの優れた性能すなわち高い加工性、優れた耐水性、各種基材への優れた密着性を十分に発揮することができず、逆にアクリル樹脂の望ましくない性能、すなわち低い加工性、光沢、耐水性等を付加してしまう。ポリエステルの重量比率が95重量%以上である場合、グラフト化ポリエステルに親水性を付与するグラフト部分の親水性基量が不足して、良好な水性分散体を得ることができない。
(グラフト化反応の溶媒)
グラフト化反応の溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、好ましくは20g/L以上である有機溶媒をいう。沸点が250℃を超える水性有機溶媒は、蒸発速度が遅いため、塗膜形成後の塗膜の高温焼付によっても十分に取リ除き得ないので不適当である。また沸点が50℃以下の水性有機溶媒では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに分解する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。
ポリエステルをよく溶解し、かつ親水性基、特にカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体およびその重合体を比較的良く溶解する水性有機溶媒(第一群)としては、エステル類、たとえば酢酸エチル;ケトン類、たとえばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロへキサノン;環状エーテル類、たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、および1,3−ジオキソラン;グリコールエーテル類、たとえばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、およびエチレングリコールブチルエーテル;カルビトール類、たとえばメチルカルビトール、エチルカルビトール、およびブチルカルビトール;グリコール類またはグリコールエーテルの低級エステル類、たとえばエチレングリコールジアセテートおよびエチレングリコールエチルエーテルアセテート;ケトンアルコール類、たとえばダイアセトンアルコール;N−置換アミド類、たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン;等を挙げることができる。
これに対し、ポリエステルをほとんど溶解しないが、親水性基、特にカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体およびその重合体を比較的よく溶解する水性有機溶媒(第二群)として、水、低級アルコール類、低級グリコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類等を挙げることが出来る。好ましいのは炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
グラフト化反応を単一溶媒中で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒の一種を用い得る。混合溶媒中で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒の複数種または第一群の水性有機溶媒の少なくとも一種と第二群の水性有機溶媒の少なくとも一種とを用い得る。
第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒中および第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒中のいずれにおいても、グラフト化反応を行ない得る。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物およびそれから導かれる水系分散体の外観、性状等の点から、第一群および第二群の水性有機溶媒のぞれぞれ一種からなる混合溶媒を使用することが好ましい。この理由は、ポリエステルのグラフト化反応においてポリエステル分子間の架橋により系のゲル化が起こりやすいが、以下のように混合溶媒を用いることによりゲル化が防止され得るからである。
第一群の溶媒中では、ポリエステル分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、他方、第一群/第二群の混合溶媒中では、ポリエステル分子鎖は広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中のポリエステルの粘度測定により確認された。ポリエステル分子鎖が延びた状態では、ポリエステル主鎖中の反応点がすべてグラフト化反応に寄与し得るので、ポリエステルのグラフト化率は高くなるが、同時に分子間の架橋が起こる率も高くなる。他方、ポリエステル分子鎖が糸まり状になっている場合は、糸まり内部の反応点はグラフト化反応に寄与し得ず、同時に分子間の架橋が起こる率も低くなる。よって、溶媒の種類を選択することによってポリエステル分子の状態を調節することができ、それによりグラフト化率およびグラフト化反応による分子間架橋を調節し得る。
高いグラフト化率とゲル化抑制の両立は、混合溶媒系において達成し得る。第一群/第二群の混合溶媒の最適の混合比率は、使用するポリエステルの溶解性等によって変わり得るが、通常、第一群/第二群の混合溶媒の重量比率は、95:5〜10:90、好ましくは90:10〜20:80、さらに好ましくは85:15〜30:70の範囲である。
(ラジカル重合開始剤およびその他添加剤)
本発明で用い得るラジカル重合開始剤として、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。
有機過酸化物として、ベンゾイルパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。
グラフト化反応を行なうためのラジカル重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性単量体に対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上である。
重合開始剤の他に、グラフト部分の鎖長を調節するための連鎖移動剤、たとえばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等を必要に応じて用い得る。この場合、ラジカル重合性単量体に対して0〜5重量%の範囲で添加されるのが望ましい。
(グラフト化反応)
グラフト部分の形成は、上記ポリエステル中のラジカル重合性不飽和二重結合と上記ラジカル重合性単量体とが重合することおよび/またはラジカル重合性不飽和二重結合と上記ラジカル重合性単量体の重合体の活性末端とが反応することにより進行する。グラフト化反応終了後の反応生成物は、目的とするグラフト化ポリエステルの他にグラフト部分を有さないポリエステルおよびポリエステルとグラフトしなかったラジカル重合性単量体の重合体を含有する。反応生成物中のグラフト化ポリエステルの生成比率が低く、グラフト部分を有さないポリエステル及びグラフトしなかったラジカル重合性単量体の重合体の比率が高い場合は、安定性の良好な分散体が得られない。
通常、グラフト化反応は、加温下で上記ポリエステルを含む溶液に対し、上記ラジカル重合性単量体とラジカル開始剤とを一時に添加して行ない得るか、あるいは別々に一定時間を要して滴下した後、さらに一定時間攪拌下に加温を継続して反応を進行させることによって行い得る。あるいは、必要に応じて、ラジカル重合性単量体の一部を先に添加し、次いで残りのラジカル重合性単量体、重合開始剤を別々に一定時間を要して滴下した後、さらに一定時間攪拌下に加温を継続してグラフト化反応を行い得る。
ポリエステルと溶媒との重量比率は、ポリエステルとラジカル重合性単量体との反応性およびポリエステルの溶剤溶解性を考慮して、重合工程中均一に反応が進行する重量比率が選択される。通常、70:30〜10:90、好ましくは50:50〜15:85の範囲である。
(グラフト化ポリエステルの水分散化)
本発明に用いられ得るグラフト化ポリエステルは、固体状態で水系媒体に投入するか、または親水性溶媒に溶解後、水系媒体に投入することによって、水分散化され得る。特に、親水性の基を有するラジカル重合性単量体として、スルホン酸基およびカルボキシル基のような酸性基を有する単量体を用いた場合、グラフト化ポリエステルを塩基性化合物で中和することによって、グラフト化ポリエステルを容易に平均粒子径500nm以下の微粒子として水に分散して、共重合ポリエステル水系分散体を調製し得る。
塩基性化合物としては塗膜形成時、あるいは以下に述べる硬化剤を配合した場合は焼付硬化時に揮散する化合物が望ましい。そのような塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン類等が好ましい。有機アミン類としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
塩基性化合物の使用量は、グラフト部分中に含まれるカルボキシル基を、少なくとも部分中和あるいは完全中和して、水系分散体のpH値を5.0〜9.0の範囲にする量が好ましい。
塩基性化合物で中和された共重合ポリエステル水系分散体を調製する方法としては、グラフト化反応終了後、反応液から溶媒を、減圧下でエクストルダー等により除去してメルト状または固体状(ペレット、粉末等)にし、次いでこれを塩基性化合物水溶液に投じて加熱下攪拌することまたはグラフト化反応を終了した時点で直ちに塩基性化合物水溶液を反応液に投入し、さらに加熱攪拌を継続すること(ワン・ポット法)により水系分散体を調製し得る。利便性の点からワン・ポット法が好ましい。この場合、グラフト化反応に用いた溶媒の沸点が100℃以下ならば蒸留によって一部または全部を容易に取り除き得る。
(接着改質層)
本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいて、ポリアミドフィルム基材の少なくとも片面に存在する接着改質層は、上記共重合ポリエステル水系分散体を含む塗布剤をポリアミドフィルム基材上に付与することにより形成される。
上記共重合ポリエステル水系分散体は、そのままで接着改質層を形成する塗布剤として使用し得るが、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行なうことにより、接着改質層に高度の耐水性を付与し得る。
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類等とホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物等を用い得る。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、たとえば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4、4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
アミノ樹脂としては、たとえば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
多官能性エポキシ化合物としては、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー卜、およびこれらのイソシアネー卜化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類等の高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製し得る。イソシアネートブロック化剤としては、たとえば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノール等のチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、ν−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダ等を挙げることができる。
これらの架橋剤は、それぞれ単独または2種以上混合して用い得る。
架橋剤の配合量としては、グラフト化ポリエステルに対して、5重量%〜40重量%が好ましい。
架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合、直接水系分散体中に溶解または分散させる方法、または(2)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、水分散化の前または後に架橋剤を加えてコア部にポリエステルと共存させる方法を用い得る。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、硬化剤あるいは促進剤を併用し得る。
本発明に用い得る塗布剤に、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等の添加剤を混合し得る。
本発明に用い得る接着改質層に、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等の添加剤を含有させることができ、これらは塗布剤中に含有させて、基材表面に付与される。
接着改質層を形成するために、共重合ポリエステル水系分散体を含む塗布剤をポリアミドフィルム基材に塗布する方法としては、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式等公知の塗布方式を用い得る。
塗布剤の塗布量は、固形分として0.01〜1g/m2 、好ましくは、0.02〜0.5g/m2 になるように塗布する。塗布量が0.01g/m2 以下になると、接着改質層と他層との十分な接着強度が得られない。1g/m2 以上になるとブロッキングが発生し、実用上問題がある。
接着改質層は、二軸延伸ポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布するか、未延伸あるいは一軸延伸後のポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布した後、乾燥し、必要に応じて、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸後熱固定を行って調製し得る。塗布剤塗布後の乾燥温度としては、150℃以上、好ましくは200℃以上で乾燥および熱固定を行うことにより塗膜が強固になり、接着改質層とポリアミドフィルム基材との接着性が向上する。
塗布後に延伸を行う場合、塗布後の乾燥は、塗布フィルムの延伸性を損なわないために塗布フィルムの水分率を0.1〜2%の範囲に制御する必要がある。延伸後は200℃以上で乾燥および熱固定することによリ、塗膜が強固になリ接着改質層とポリアミドフィルム基材との接着性が飛躍的に向上する。
本発明のフィルムロールに用い得る接着改質層は、共重合ポリエステル水系分散体を含む塗布剤を付与することにより形成され、この共重合ポリエステル水系分散体は、グラフト化ポリエステルの粒子と水系溶媒とを含み、グラフト化ポリエステルは、ポリエステル主鎖と、親水性基を有するラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体により形成されるグラフト部分とを有する。
なお、上記の如く得られる本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを用いてラミネート加工を行う場合には、たとえば以下のようなインキ層、接着剤層、シーラント層を設けることが可能である。
(インキ層)
本発明のポリアミド系フィルム積層体において、ポリアミドフィルム基材上に形成された接着改質層上にインキ層が積層される。
インキ層を形成する印刷インキとしては、セルロース誘導体をバインダーとしたインキあるいは合成樹脂をバインダーとしたグラビアインキを主として用い得る。特に耐水性が要求される場合は、ポリマー鎖末端に水酸基等を有する塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオール等をバインダーとしたインキに硬化剤を添加して用い得る。インキ層は、接着改質層上に全面的または部分的にあるいは任意の図柄として形成される。
(接着剤層)
本発明のポリアミド系フィルム積層体において、上記インキ層上に接着剤層が積層される。接着剤層の厚さは、通常、0.1μm〜10μmである。
接着剤層を形成する接着剤としては、接着剤層上に積層されるシーラント層が押し出しラミネートによって積層される場合、イソシアネート系接着剤が好ましい。イソシアネート系接着剤としては、一液型として、たとえば、ジイソシアネートと多価アルコールとの反応物であって、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタンまたはポリウレタンプレポリマーを用い得る。あるいは、ポリイソシアネートと、ポリオールまたは水酸基を分子末端に有するポリウレタンプレポリマーとを使用直前に混合する二液型を用い得る。
接着剤層上に積層されるシーラント層がドライラミネートによって積層される場合、接着剤としては、当業者には公知のビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ウレタン系の接着剤を用い得る。これらの内で、ポリイソシアネートとポリオールを使用直前に混合する二液型ポリウレタン系接着剤が好ましい。
接着剤層は、上記液状の接着剤を当業者には公知の方法を用いて、インク層上に塗布することによって形成され得る。
(シーラント層)
本発明のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールにおいて、上記接着剤層上にシーラント層が積層される。シーラント層の厚さは、通常、20μm〜100μmである。シーラント層は、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を押し出しラミネートまたはドライラミネートすることによって形成され得る。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例および比較例で使用した原料チップA〜Kの性状、実施例および比較例で使用した原料チップの組成、実施例および比較例におけるフィルムロールの製膜条件を、それぞれ、表1〜4に示す。
チップAは、ナイロン6(相対粘度=2.8,Tg=41℃)99.85重量%、エチレンビスステアリン酸アマイド0.15重量%からなるものであり、チップBは、ナイロン6(チップAと同一物性)85.00重量%、平均粒子径が2.0μmで細孔容積が0.8ml/gのシリカ粒子15.0重量%からなるものであり、チップCは、ナイロン6(チッブAと同一物性)100.00重量%からなるものである。加えて、チップA〜Cの形状は、いずれも楕円柱状であり、断面長径、断面短径、チップ長さとも同一である。また、チップDは、相対粘度が約2.1のポリメタキシリレンアジパミド(MXD−6)からなるものであり、チップEは、相対粘度が約2.65のポリメタキシリレンアジパミド(MXD−6)からなるものであり、チップFは、ナイロン12とPTMG(ポリテトラメチレングリコール)との共重合体(相対粘度=2.0)からなるものであり、チップGは、ナイロン6とPEG(ポリエチレングリコール)との共重合体(相対粘度=2.4)からなるものであり、チップHは、エチレン・メタクリル酸共重合体(190℃におけるMFR(Melt Flow Rate)=2.4g/10分間)からなるものであり、チップIは、エチレン・ブテン共重合体(MFR=2.0g/10分間)からなるものであり、チップJは、エチレン系アイオノマー(MFR=2.4g/10分間)からなるものであり、チップKは、ナイロン12とPTMG(ポリテトラメチレングリコール)との共重合体(相対粘度=2.0)からなるものである。加えて、チップD〜Kの形状は、いずれも楕円柱状であり、チップD〜Jは、断面長径、断面短径、チップ長さとも同一である。なお、実施例および比較例で使用した原料チップの相対粘度(RV)および還元粘度の測定方法を以下に示す。
[相対粘度(RV)]
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlを用い、オストワルド粘度管にて20℃で落下秒数を測定し、下式7より相対粘度を算出した。
RV=t/t(subscript: 0) ・・・7
ただし、t(subscript: 0):溶媒の落下秒数、t:試料溶液の落下秒数。
[還元粘度(ηdp/c)]
試料0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(重量%比=60/40)の混合溶媒25mlに溶解させ、この溶液を用い、オストワルド粘度管にて30℃で落下秒数を測定し、下式8より還元粘度を算出した。
ηsp/c(dl/g)={(t−t(subscript: 0))/t(subscript: 0)}/c・・・8
ただし、t(subscript: 0):溶媒の落下秒数、t:試料溶液の落下秒数、c:試料濃度(g/dl)
一方、実施例および比較例においてフィルムに塗布した接着改質層を構成する物質の特性の測定方法を以下に示す。なお、以下の記載中、単に部とあるのは重量部を表し、単に%とあるのは重量%を示す。
[重量平均分子量]
重合体0.03gをテトラヒドロフラン10mlに溶かし、GPC−LALLS装置 低角度光散乱光度計LS−8000(東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)で測定した。
[ポリエステルのグラフト効率]
グラフト化反応により得られた生成物を、UNITY 500(バリアン社製)を用いて、ポリエステル中の二重結合含有成分の二重結合に由来するプロトンの1H−NMR(220MHz、測定溶媒CDC13 /DMSO−d6 )を測定し、そのシグナルの強度変化を元に、以下の式1を用いてグラフト効率を算出した。
ポリエステルグラフト効率=(1−(グラフト化ポリエステル中の二重結合含有成分の二重結合に由来のシグナルの相対強度/原料ポリエステル中の二重結合含有成分の二重結合に由来のシグナルの相対強度))×100(%)・・1
なお、相対強度は基準シグナルとしての内部インターナルのシグナル強度との比較により算出した。
[グラフト部分の重量平均分子量の測定]
グラフト化ポリエステルを、KOH/水−メタノール溶液中で還流することによりポリエステルの加水分解を行なった。分解生成物を酸性条件下でTHFを用いて抽出を行ない、抽出液からグラフト部分をヘキサンで再沈殿することによリ精製した。得られた重合体をGPC装置(島津製作所製、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン換算)を用いて分子量を測定し、グラフト部分の重量平均分子量を計算した。
[水系分散体の粒子径]
水系分散体を、イオン交換水だけを用いて固形分濃度0.1wt%に調製し、レーザー光散乱粒度分布計Coulter model N4(Coulter社製)を用いて20℃で粒子径を測定した。
[水系分散体のB型粘度]
水系分散体の粘度を、回転粘度計(東京計器(株)製、EM型)を用いて25℃で測定した。
[13C−NMRのシグナルの半値幅の測定]
水系分散体を固形分濃度20重量%になるように重水で希釈し、次いでこれにDSSを添加して測定用サンプルを調製した。UNITY 500(バリアン社製)を用いて、25℃で、DSSのシグナルが5Hz以下になるように測定条件を設定した後、サンプルの13C−NMR(125MHz)を測定し、重み付け関数をかけずにフーリエ変換をした。得られたポリエステル主鎖のカルボニル炭素のシグナルとグラフト部分のカルボニル炭素のシグナルの半値幅をそれぞれ計測した。
[ガラス転移点(Tg)]
水系分散体をガラス板に塗布し、次いで170℃で乾燥してポリエステル固形分を得た。このポリエステル固形分10mgをサンプルパンに取り、示差走査型熱量計で10℃/分の速度で走査してTgを測定した。
[実施例1]
<接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)の調整>
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにジメチルテレフタレート466部、ジメチルイソフタレート466部、ネオペンチルグリコール401部、エチレングリコール443部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.52部を仕込み、160〜220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマール酸23部を加えて200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧したのち0.2mmHgの減圧下で1時間30分攪拌しながら反応させてポリエステルを得た。得られたポリエステルは淡黄色透明で、ガラス転移温度60℃、重量平均分子量は12000であった。NMR測定等により得られた組成は次の通りであった。
ジカルボン酸成分
テレフタル酸 48モル%
イソフタル酸 48モル%
フマール酸 4モル%
ジオール成分
ネオペンチルグリコール 50モル%
エチレングリコール 50モル%
攪拌器、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記ポリエステル樹脂75部とメチルエチルケトン56部とイソプロピルアルコール19部とを入れ65℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、メタクリル酸17.5部とアクリル酸エチル7.5部の混合物と、アゾビスジメチルバレロニトリル1.2部とを25部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.2ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、滴下終了後さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行った後、水300部とトリエチルアミン25部を反応溶液に加え、1時間攪拌してグラフト化ポリエステルの分散体を調整した。その後、得られた分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により溜去して共重合ポリエステル水系分散体を得た。
得られた分散体は、白色で平均粒子径300nm、25℃におけるB型粘度は50cpsであった。この分散体5gに重水1.25gを添加して固形分濃度を20重量%とした後、DSSを加えて、125MHz13C−NMRを測定した。ポリエステル主鎖のカルボニル炭素のシグナル(160−175ppm)の半値幅は∞(シグナルが検出されない)であり、グラフト部分のメタクリル酸のカルボニル炭素のシグナル(181−186ppm)の半値幅は110Hzであった。グラフト化反応終了時点でサンプリングした溶液を100℃で8時間真空下で乾燥を行い、その固形分について酸価の測定、ポリエステルのグラフト効率の測定(NMRの測定)、および加水分解によるグラフト部分の分子量の測定を行った。固形分の酸価は2300eq./106gであった。1H−NMRの測定では、フマール酸由来のシグナル(δ=6.8−6.9ppm、doublet)が全く検出されなかったことから、ポリエステルのグラフト効率は100%であることを確認した。グラフト部分の分子量は、重量平均分子量10000であった。
しかる後、上記の如く得られた分散体を、固形分濃度5%になるように水で希釈して接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)Aを得た。
<ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールの製造>
一方、共押出法を利用して、3つの押出機(第一〜第三押出機)からポリアミド系混合樹脂を溶融押出し(ダイス内で積層して押出し)、17℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが257μmで二種三層構成の未延伸フィルム(ポリアミド系混合樹脂積層シート)を得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約30m/min.であった。未延伸フィルムの各層の形成方法(溶融押出までの工程)は、以下の通りである。なお、以下の説明においては、ポリアミド系混合樹脂積層シートの表層から順に、第一層、第二層、第三層という(すなわち、第三層の表面は、金属ロール接触面である)。
・第一層(外層)の形成
上記したチップA,B,Dを別々に、15klのブレンダー装置を用いて約8.0時間に亘って約100℃に加温しながら予備乾燥した。ブレンダー内から各チップを所定量採取して水分率を測定したところ、チップA,B,Dの水分率は、いずれも1000ppmであった。なお、水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(KYOTO Electronics社製 MKC−210)を用い、試料重量1g、試料加熱温度230℃の条件下にて行った。
しかる後、各ブレンダー内のチップA,B,Dを、押出機(第一押出機)の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。なお、チップAの供給量を94.5重量%とし、チップBの供給量を0.5重量%とし、チップDの供給量を5.0重量%とした。ホッパは、原料チップが150kg入る容量のものであった。また、ホッパの傾斜角は70゜に調整した。
また、チップA,B,Dをホッパ内に供給する際に、各ブレンダー内のチップの温度が低くなりすぎないように乾燥から短時間の内にホッパに供給した。ホッパに供給する直前のチップA,B,Dの温度は、いずれも約91℃であった。そして、供給されたチップA,B,Dをホッパ内で混合し、単軸式の第一押出機により273℃でTダイから溶融押出した。
・第二層(中間層)の形成
上記したチップE,C,Fを別々に、15klのブレンダー装置を用いて約8.0時間に亘って約130℃に加温しながら予備乾燥した。ブレンダー内から各チップを所定量採取して上記した方法により水分率を測定したところ、チップE,C,Fの水分率は、いずれも650ppmであった。
そして、予備乾燥後の各ブレンダー内の各チップを、混合ミキサー内へ、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。なお、チップEの供給量を75重量%とし、チップCの供給量を22重量%とし、チップFの供給量を3重量%とした。また、チップE,C,Fを供給した混合ミキサー内に、昇華性の偏析防止剤として、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール(三洋化学社製 ニューポール PE−64)を、チップE,C,Fの合計重量に対して1000ppmとなるように添加した。
しかる後、上記の如く混合ミキサー内で混合したチップE,C,Fの混合原料を、押出機(第二押出機)の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。ホッパは、原料チップが150kg入る容量のものであった。また、ホッパの傾斜角は70゜に調整した。
また、チップE,C,Fをホッパ内に供給する際に、各ブレンダー内のチップの温度が低くなりすぎないように乾燥から短時間の内にホッパに供給した。ホッパに供給する直前のチップE,C,Fの温度は、いずれも約91℃であった。そして、供給されたチップE,C,F(混合済みのもの)を、単軸式の第二押出機により276℃でTダイから溶融押出した。
・第三層(内層)の形成
上記したチップA,B,Dを別々に、15klのブレンダー装置を用いて約8.0時間に亘って約100℃に加温しながら予備乾燥した。ブレンダー内から各チップを所定量採取して上記した方法により水分率を測定したところ、チップA,B,Dの水分率は、いずれも1000ppmであった。
しかる後、各ブレンダー内のチップA,B,Dを、押出機(第三押出機)の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。なお、チップAの供給量を94.5重量%とし、チップBの供給量を0.5重量%とし、チップDの供給量を5.0重量%とした。ホッパは、原料チップが150kg入る容量のものであった。また、ホッパの傾斜角は70゜に調整した。
また、チップA,B,Dをホッパ内に供給する際に、各ブレンダー内のチップの温度が低くなりすぎないように乾燥から短時間の内にホッパに供給した。ホッパに供給する直前のチップA,B,Dの温度は、いずれも約91℃であった。そして、供給されたチップA,B,Dをホッパ内で混合し、単軸式の第三押出機により273℃でTダイから溶融押出した。
なお、実施例1の第一、第三押出機においては、使用量の最も多い樹脂チップ(チップA)以外の樹脂チップ(チップB,D)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップA)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。また、第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップC,F)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。また、未延伸フィルムの形成における第一〜第三押出機の吐出量は、第一層/第二層/第三層の厚み比が、2/11/2となるように調整した。
また、溶融した樹脂を金属ロールに巻き付ける際のエアーギャップは、40mmに調整し、溶融フィルムに針状電極より11±1.1kvで100mAの直流負電荷を印加して、グロー放電させることにより、溶融した樹脂を金属ロールに静電密着させた。さらに、溶融した樹脂を金属ロールに巻き付ける際に、溶融した樹脂が金属ロールと接触する部分を、溶融した樹脂の全幅に亘って、バキュームボックスを利用して、樹脂が巻き取られる方向と反対の方向へ吸引することにより、溶融樹脂の金属ロールへの密着を促進した。なお、バキュームボックスの吸引風速は、吸引口の全幅(すなわち、溶融樹脂の全幅)に亘って、5.0±0.5m/sec.となるように調整した。
しかる後、得られた未延伸フィルムを、テフロン(登録商標)製ロールによって延伸温度約93℃で約1.94倍に縦延伸(第1縦延伸)した後、セラミック製ロールによって延伸温度約80℃で約1.8倍に縦延伸(第2縦延伸)した。しかる後、縦延伸後のフィルムの表面に、上記した接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)Aをグラビア方式で連続的に塗布し、150℃に調節されたロール上で塗布液を乾燥させた。なお、塗布液の塗布量は、0.2g/m2 の接着改質層が形成されるように調整した。
そして、上記の如く縦延伸後のフィルムの表面に接着改質層を塗布した後に、縦延伸されたシートを連続的にテンターに導き、約130℃で4.2倍に横延伸し、約210℃で熱固定して5.0%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約15μmの二軸延伸フィルムを2000m以上に亘って連続的に製膜してミルロールを作製した。得られた二軸延伸後の積層フィルムを、厚み方向に薄くスライスして電子顕微鏡にて観察したところ、第一層、第二層、第三層の厚みは、それぞれ、約2μm、約11μm、約2μmであった。
なお、フィルムを2000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温度±0.6℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内であった。さらに、得られたミルロールを、幅400mm、長さ2000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、2本のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロール(スリットロール)を得た。そして、得られた2本のスリットロール(すなわち、同一のミルロールから得られたもの)を用いて、以下の方法により特性の評価を行った。なお、以下のBS(沸水収縮率)、BSx(最大沸水収縮率)、BSd(沸水収縮率方向差)、屈折率の測定においては、フィルムの巻き終わりから2m以内に1番目の試料切り出し部を設け、1番目の試料切り出し部から約100m毎に2番目から20番目の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き始めから2m以内に21番目の試料切り出し部を設け、それらの1番目から21番目までの各試料切り出し部から試料フィルムを切り出した。評価結果を表5〜9に示す。評価結果を示す際に、衝撃強度、ラミネート強度については、測定した各試料サンプルの数値の平均値と、各試料サンプルの数値の変動範囲とを示した。また、S字カールについては、各評価レベルとなった試料サンプルの個数と、全試料サンプルの総合評価のレベルとを示した。
[沸水収縮率]
片方のスリットロールの各切り出し部から切り出された二軸配向フィルム(試料フィルム)を一辺21cmの正方形状に切り出し、23℃、65%RHの雰囲気で2時間以上放置した。この試料の中央を中心とする直径20cmの円を描き、縦方向(フィルム引出し方向)を0°として、15°間隔で時計回りに0〜165°方向に円の中心を通る直線を引き、各方向の直径を測定し、処理前の長さとした。次いで、切り出した試料を沸水中で30分間加熱処理した後、取り出して表面に付着した水分を拭き取り、風乾してから23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置し、上述したように各直径方向に引いた直線の長さを測定して処理後の長さとし、上式1〜5によって、BS(沸水収縮率)、BSx(最大沸水収縮率)、BSax(平均沸水収縮率)、BSd(沸水収縮率方向差)、BSad(平均沸水収縮率方向差)を算出した。
そして、全ての試料の最大沸水収縮率(BSx)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均沸水収縮率(BSax)との差の大きい方と平均沸水収縮率との差を算出し、その差の平均沸水収縮率(BSax)に対する割合(%)を算出することによって、平均沸水収縮率(BSax)に対する最大沸水収縮率(BSx)の変動率を求めた。また、全ての試料の沸水収縮率方向差(BSd)中の最大・最小を求め、それらの最大・最小の内の平均沸水収縮率方向差(BSad)との差の大きい方と平均沸水収縮率との差を算出し、その差の平均沸水収縮率方向差(BSad)に対する割合(%)を算出することによって、平均沸水収縮率方向差(BSad)に対する沸水収縮率方向差(BSd)の変動率を求めた。
[三次元表面粗さ]
片方のスリットロールの各切り出し部から切り出された二軸配向フィルム(試料フィルム)の表面について、触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所社製、SE−3AK)を用いて、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/sの条件下で、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたって測定し、2μm間隔で500点に分割し、また、フィルムの幅方向に、前記と同様の条件で測定長0.3mmにわたって測定し、2μm間隔で150点に分割した。得られた分割点の各点の三次元方向の高さについて、三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所社製、TDA−21)を用いて解析し、三次元平均表面粗さ(nm)を求めた。
[ヘイズ]
スリットロールの各切り出し部から切り出した各二軸配向フィルムについて、JIS K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
[縦方向厚み斑]
スリットロールを長手方向全長に亘って約3cm幅にスリットして厚み斑測定用のスリットロールを作製した。しかる後、アンリツ社製の厚み斑測定装置(広範囲高感度電子マイクロメーターK−313A)を用いて、長手方向全長に亘る平均厚み、最大厚み、最小厚みを求めた。そして、下式9により、それらの最大厚み・最小厚みの内の平均厚みとの差の大きい方と平均厚みとの差を算出し、その差の平均厚みに対する割合(%)を算出することによって、長手方向全長に亘る厚みの変動率を算出した。
厚みの変動率=|最大厚みあるいは最小厚み−平均厚み|/平均厚み・・・9
[酸素透過度]
各切り出し部から切り出したフィルムを、湿度65%RH、気温25℃の雰囲気下で、2日間に亘って酸素置換させた後に、JIS−K−7126(B法)に準拠して、酸素透過度測定装置(OX−TRAN 2/20:MOCOM社製)を用いて測定した。
[屈折率]
アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、各試料切り出し部から切り出された各試料フィルムを23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に、厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。また、全試料フィルムの平均の平均屈折率を算出して、表6の如く、全試料中で最大あるいは最小のNzと平均屈折率との差を算出するとともに、その差の平均屈折率に対する割合を変動率として算出した。
[衝撃強度]
各切り出し部から切り出された各試料フィルムを23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後、東洋精機製作所社製の「フィルムインパクトテスター TSS式」を使用し、直径12.7mmの半球型衝突子により破断強度を測定し、衝撃強度とした。また、全試料フィルムの平均の衝撃強度も算出した。
[エラストマー成分の含有率]
各切り出し部から切り出された各試料フィルムを、表面に対して垂直にかつ巻き取り方向に対して垂直に切断して超薄切片を作製し、超薄片法によりリンタングステン酸および酸化ルテニウムで染色して試料を調整した。しかる後、日本電子社製透過型電子顕微鏡(JEM2010)で倍率10000倍で観察して、電子顕微鏡写真(厚み方向約160mm×巻き取り方向約220mm)を撮影した。そして、日本電子社製画像処理装置(analySIS)を利用して、リンタングステン酸および酸化ルテニウムで染色されたエラストマー部分の面積の全体に占める割合を、エラストマー成分の含有率として算出した。
[引張弾性率]
各切り出し部から切り出された各試料フィルムを、長さ150mm、幅15mmにサンプリングし、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間調湿した。そして、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、JIS K−7127に準拠し、島津株式会社製オートグラフAG−100E型を使用し、調湿したフィルムを100mmの距離を隔てたチャック間に掴み、引張速度200mm/分で引っ張り、引張比例限度内における引張応力とこれに対応するひずみの比を、引張弾性率として算出した。
[ラミネート加工性]
上記した沸水収縮率、縦方向厚み斑、屈折率、衝撃強度を測定したスリットロールとは別のスリットロール(同一のミルロールから得られたもの)を用い、そのスリットロールを構成する二軸配向フィルムにウレタン系AC剤(東洋モートン社製「EL443」)を塗布した後、その上に、モダンマシナリー社製のシングルテストラミネーター装置を用いて厚さ15μmのLDPE(低密度ポリエチレン)フィルムを315℃で押し出し、さらに、その上に厚さ40μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルムを連続的にラミネートし、ポリアミド系混合樹脂/LDPE/LLDPEよりなる3層積層構造のラミネートフィルムロールを得た。また、ラミネートフィルムロールを製造する際の加工性を下記の3段階で評価した。
○:ロールに皺が発生せず、条件調整も不要
△:条件調整によりロールの皺が解消
×:どのように条件調整を行っても、ロールに皺が発生
[ラミネート強度(剥離強度)]
また、そのラミネートフィルムロールから切り出したラミネートフィルムを、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、東洋ボールドウイン社製の「テンシロンUMT−II−500型」を用いて、温度23℃、相対湿度65%の条件下でポリアミド系混合樹脂積層フィルム層とLDPE層間の剥離強度を測定した。なお、引張速度は10cm/分、剥離角度は180度とし、剥離部分に水を付けて測定した。また、ラミネート強度の測定は、ラミネートフィルムロールの巻き終わりから2m以内において1番目の試料片を切り出し、1番目の試料片の切り出し部分から約100m毎において2番目から20番目の試料片を切り出し、フィルムの巻き始めから2m以内において21番目の試料片を切り出し、それらの1番目から21番目までの各試料片について測定した。また、それらの測定値の平均も算出した。
[熱水中剥離強度の測定]
上記の如くラミネートしたラミネートフィルムを90℃の熱水中に30分間浸漬させた後、室温下に約30秒間放置した後に、上記測定と同様の方法によって、ポリアミド系混合樹脂積層フィルム層とLDPE層間の剥離強度を測定した。
[S字カール現象]
上記の如くラミネートフィルムロールとして巻き取られたラミネートフィルムを、西部機械社製のテストシーラーを用いて巻き長さ方向に平行に2つに折り畳みつつ縦方向に各両端20mmずつを150℃で連続的に熱シールし、それに垂直方向に10mmを150mm間隔で断続的に熱シールして幅200mmの半製品を得た。これを巻き長さ方向に、両縁部をシール部分が10mmとなるように裁断した後、これと垂直方向にシール部分の境界で切断し、3方シール袋(シール幅:10mm)を作製した。それらの3方シール袋の中から、ラミネートフィルムロールの巻き終わりから2m以内の部分から作製された3方シール袋を1番目のサンプルとして選択し、その1番目のサンプルの作製部分から約100,200,・・・1800,1900m離れた部分から作製された3方シール袋を、それぞれ、2番目〜20番目のサンプルとして選択し、ラミネートフィルムロールの巻き始めから2m以内の部分から作製された3方シール袋を21番目のサンプルとして選択した。そして、それらの21枚の3方シール袋を沸騰水中で30分間熱処理した後、23℃、65%RHの雰囲気で一昼夜保持し、さらに、それらの21枚の3方シール袋を重ねて上から袋全面に1kgの荷重をかけ、一昼夜保持した後に荷重を取り去って袋の反り返り(S字カール)の度合いを以下のようにして評価した。
◎ :全く反り返りがない
○ :わずかに反り返りが見られる
× :明らかに反り返りが見られる
××:反り返りが著しい
[実施例2]
第一層および第三層の形成において、原料チップA,B,Dの予備乾燥条件を、約8.0時間に亘って約120℃に加温する方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。なお、予備乾燥後に、ブレンダー内から各チップを所定量採取して水分率を測定したところ、チップA,B,Dの水分率は、いずれも800ppmであり、ホッパに供給する直前のチップA,B,Dの温度は、いずれも約91℃であった。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例3]
第二層の形成において、溶融樹脂の押出温度を274℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例4]
第一〜第三押出機から溶融押出された各溶融樹脂シートを積層する際に、第一層/第二層/第三層の厚み比が、5/5/5となるように第一〜第三押出機の吐出量を調整するとともに、第三層の形成用の原料として原料チップDの代わりに、原料チップEを用い、第三層の形成において、各ブレンダー内のチップA,B,Eを、混合ミキサーに供給する際に、チップAの供給量を44.5重量%とし、チップBの供給量を0.5重量%とし、チップEの供給量を55.0重量%とした。それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。得られた二軸延伸後の積層フィルムを、厚み方向に薄くスライスして電子顕微鏡にて観察したところ、第一層、第二層、第三層の厚みは、それぞれ、約5.0μm、約5.0μm、約5.0μmであった。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、実施例4の第三押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップA,B)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[実施例5]
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムを、テフロン(登録商標)製ロールによって延伸温度約93℃で約2.04倍に縦延伸(第1縦延伸)した後、セラミック製ロールによって延伸温度約80℃で約1.7倍に縦延伸(第2縦延伸)した。さらに、縦延伸されたシートを、実施例1と同様に、連続的にステンターに導き、約130℃で4.2倍に横延伸し、約210℃で熱固定して5.0%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約15μmの二軸延伸フィルムを2000m以上に亘って連続的に製膜した。なお、フィルムを連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、実施例1と同様であった。得られたフィルムを、実施例1と同様にスリットして巻き取ることによって、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例6]
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムを、実施例1と同様に二段階に縦延伸した。しかる後、縦延伸されたシートを、連続的にステンターに導き、約130℃で3.8倍に横延伸し、実施例1と同様に約212℃で熱固定して5.0%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約15μmの二軸延伸フィルムを2000m以上に亘って連続的に製膜した。なお、フィルムを連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、実施例1と同様であった。得られたフィルムを、実施例1と同様にスリットして巻き取ることによって、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例7]
第一〜第三層の形成において、ブレンダーあるいは混合ミキサー内の原料チップを各押出機(第一〜第三押出機)の直上のホッパに供給する際に、各ホッパの傾斜角を65゜に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例8]
第二層の形成において、各ブレンダー内のチップE,C,Fを、混合ミキサーに供給する際に、チップEの供給量を75.0重量%とし、チップCの供給量を20.0重量%とし、チップFの供給量を5.0重量%とした。それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例9]
第二層の形成用の原料として原料チップFの代わりに、原料チップGを用い、第二層の形成において、各ブレンダー内のチップE,C,Gを、混合ミキサーに供給する際に、チップEの供給量を75.0重量%とし、チップCの供給量を20.0重量%とし、チップGの供給量を5.0重量%とした。それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、実施例9の第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップC,G)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[実施例10]
第二層の形成用の原料として原料チップFの代わりに、原料チップHを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、実施例10の第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップC,H)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[実施例11]
第二層の形成用の原料として原料チップFの代わりに、原料チップIを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、実施例11の第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップC,I)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[実施例12]
第二層の形成用の原料として原料チップFの代わりに、原料チップJを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、実施例12の第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップC,J)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[実施例13]
<接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)の調整>
実施例1で得られるポリエステル樹脂を90部、メタクリル酸7.0部、アクリル酸エチル3.0部、アゾビスジメチルバレロニトリル0.48部と変更した以外は実施例1と同様の調整により共重合ポリエステル水系分散体を得た。しかる後、分散体を固形分濃度5%になるように水で希釈して接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)Bを得た。
そして、縦延伸後のシートに塗布する塗布液を上記の塗布液Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例14]
<接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)の調整>
ジメチルテレフタレート457部、ジメチルイソフタレート452部、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート7.4部に変更・使用した以外は実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。得られたポリエステルは淡黄色透明で、ガラス転移温度62℃、重量平均分子量は12000であった。NMR測定等により得られた組成は次の通りであった。
ジカルボン酸成分
テレフタル酸 49モル%
イソフタル酸 48.5モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 2.5モル%
ジオール成分
ネオペンチルグリコール 50モル%
エチレングリコール 50モル%
このポリエステス樹脂を100部とし、メタクリル酸やアクリル酸エチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等の成分を添加していない共重合ポリエステル水系分散体を実施例1と同様の方法により得た後、分散体を固形分濃度5%になるように水で希釈して接着改質層形成用の塗布液(共重合ポリエステル水系分散液)Cを得た。
そして、縦延伸後のシートに塗布する塗布液を上記の塗布液Cに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例1]
未延伸の樹脂シートを形成する際に、第一層および第三層を形成することなく第二層のみの単層構造とした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た(第二層形成用樹脂の組成、形成条件等は実施例1と同様である)。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例2]
第一層および第三層の形成において、原料チップA,B,Dの予備乾燥条件を、約8.0時間に亘って約125℃に加温する方法に変更するとともに、第二層の形成において、原料チップE,C,Fの予備乾燥条件を、約8.0時間に亘って約100℃に加温する方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。なお、予備乾燥後のチップA,B,Dをブレンダー内から所定量採取して水分率を測定したところ、チップA,B,Dの水分率は、いずれも700ppmであり、ホッパに供給する直前のチップA,B,Dの温度は、いずれも約91℃であった。一方、予備乾燥後のチップE,C,Fをブレンダー内から所定量採取して水分率を測定したところ、チップE,C,Fの水分率は、いずれも1000ppmであり、ホッパに供給する直前のチップE,C,Fの温度は、いずれも約91℃であった。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例3]
第二層の形成用の原料として原料チップEの代わりに、相対粘度の低い原料チップD(RV=2.1)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、比較例3の第二押出機においても、使用量の最も多い樹脂チップ(チップD)以外の樹脂チップ(チップC,F)の平均長径、平均短径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップD)の平均長径、平均短径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれている。
[比較例4]
第二層の形成において、各ブレンダー内のチップE,C,Fを、混合ミキサーに供給する際に、チップEの供給量を75.0重量%とし、チップCの供給量を24.5重量%とし、チップFの供給量を0.5重量%とした。それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例5]
第二層の形成用の原料として原料チップFの代わりに、原料チップKを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。なお、比較例5の第二押出機においては、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)以外の樹脂チップ(チップK)の平均長径、平均チップ長さは、使用量の最も多い樹脂チップ(チップE)の平均長径、平均チップ長さに対し、それぞれ±20%以内の範囲に含まれていない。
[比較例6]
第一〜第三層の形成において、ブレンダーあるいは混合ミキサー内の原料チップを各押出機(第一〜第三押出機)の直上のホッパに供給する際に、各ホッパの傾斜角を45゜に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例7]
第一〜第三層の形成において、原料チップA,B,Dおよび原料チップE,C,Fを、予備乾燥した後に直接にあるいは混合ミキサーを介して各押出機の直上のホッパに供給する前に、各ブレンダー内で約5時間に亘って放置した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。なお、予備乾燥後のチップA,B,Dをブレンダー内から所定量採取して水分率を測定したところ、チップA,B,Dの水分率は、いずれも1000ppmであり、ホッパに供給する直前のチップA,B,Dの温度は、いずれも約30℃であった。一方、予備乾燥後のチップE,C,Fをブレンダー内から所定量採取して水分率を測定したところ、チップE,C,Fの水分率は、いずれも650ppmであり、ホッパに供給する直前のチップE,C,Fの温度は、いずれも約30℃であった。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[比較例8]
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムを、テフロン(登録商標)製ロールによって延伸温度約93℃で約1.5倍に縦延伸(第1縦延伸)した後、セラミック製ロールによって延伸温度約80℃で約2.3倍に縦延伸(第2縦延伸)した。さらに、縦延伸されたシートを、連続的にステンターに導き、実施例1と同様に横延伸し、熱固定して横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約15μmの二軸延伸フィルムを2000m以上に亘って連続的に製膜した。なお、フィルムを連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、実施例1と同様であった。しかる後、得られたフィルムを、実施例1と同様にスリットして巻き取ることによって、ポリアミド系混合樹脂積層フィルムロールを得た。そして、得られたフィルムロールの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表5〜9に示す。
[実施例のフィルムの効果]
表5〜9から、実施例のフィルムロールは、いずれも、ロール全体に亘る縦方向の厚み斑が非常に小さく、沸水収縮率、屈折率、引張弾性率、酸素透過度、透明性、ラミネート強度(剥離強度)や熱水剥離強度等の物性の変動が小さいことが分かる。また、そのように沸水収縮率や屈折率等の物性の変動が小さい実施例のフィルムロールは、いずれも、S字カール現象が起こらず、ラミネート加工性が良好であることが分かる。その上、実施例のフィルムロールを構成するフィルムは、酸素透過度が低く、衝撃強度(強靱性)、透明性が良好であり、ラミネート強度(剥離強度)や熱水剥離強度がきわめて高いことが分かる。これに対して、比較例のフィルムロールは、ロール全体に亘る縦方向の厚み斑や、沸水収縮率、屈折率、引張弾性率、酸素透過度、耐ピンホール性、透明性、ラミネート強度(剥離強度)や熱水剥離強度等の物性の変動が大きくなっており、S字カール現象が見られたり、ラミネート加工性、衝撃強度や透明性が不良であったりすることが分かる。
さらに、