JP4686051B2 - メタルハニカム担体の溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車エンジンの排気浄化用キャタライザ等に使用するメタルハニカム担体の溶接方法に関する。更に詳しくは金属製の平板と波板とを重ねて渦巻き状に巻回したメタルハニカム担体における上記平板と波板との溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、メタルハニカム担体の平板と波板とを溶接する方法の一つとして、メタルハニカム担体の端面にレーザービームを照射することにより、上記平板と波板との接触部を溶融接合させることが知られている。具体的には例えばメタルハニカム担体の端面を上に向けて前後左右に多数並べて配置し、それらの上方からレーザー溶接装置のヘッドを左右方法に往復移動させると同時に前後方向に移動走査して各メタルハニカム担体端面の略全面にレーザービームを照射し、それによって上記平板と波板との上記端面側における接触部の略全面を溶融接合させるものである。
【0003】
ところが、上記のように平板と波板との接触部の略全面を溶融接合させると、自動車エンジンのキャタライザ等に実際に使用した場合には、排気ガスによる熱応力で平板と波板との接合部が剥離する等のおそれがある。例えばエンジンの始動時にはハニカム内の中央部が外周部より高温になるのに対し、通常運転からアイドル運転に移行したときには、ハニカム内の中央部が外周部よりも早く低温になり、ハニカム内の中央部と外周部とで大きな温度差が生じる。そのため、平板と波板との略全面が接合されていると、熱膨張差による応力を吸収することができず、平板と波板との接合部が剥離したり、亀裂が生じる等のおそれがある。
【0004】
そこで、レーザービームを照射する際にメタルハニカム担体の端面を部分的に覆う遮蔽部材を設けることによって、メタルハニカム担体の端面の一部を溶接することなく非溶接部として残し、これによって上記平板と波板との接合部に作用する応力を軽減することが提案されている(例えば特開平7−80667号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような遮蔽部材を用いるものは、その製作および組付けが面倒であると共に、レーザービームによって比較的短時間で変形もしくは劣化するため繰り返して多数回使用することはできない。そのため製作コストが増大する等の問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、上記のような遮蔽部材を用いることなく、容易に被溶接部を残して溶接接合することのできるメタルハニカム担体の溶接方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明によるメタルハニカム担体の溶接方法は、以下の構成としたものである。
【0008】
即ち、金属薄板よりなる平板と波板とを重ねて多重に巻回したメタルハニカム担体の端面に、電子ビームを渦巻き状に且つ断続的に照射することにより、前記平板と前記波板との接触部につき溶接部と非溶接部を形成するように溶接接合することを特徴とする。この場合、前記電子ビームを渦巻き状に照射する際の渦巻きのピッチは、0.1mm〜1.0mmの範囲内とするのが望ましく、またメタルハニカム担体端面における電子ビームの断続ピッチは0.1mm〜1.0mmとするのが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるメタルハニカム担体の溶接方法を図に基づいて具体的に説明する。図1(a)は本発明を適用したメタルハニカム担体の平面図、同図(b)はその正面図、図2(a)は溶接状態の概略構成の説明図、同図(b)はその一部の平面図、図3(a)はメタルハニカム担体の平面図、同図(b)はそれに対応する電子ビーム照射軌跡の平面図、同図(c)はその一部の拡大図である。
【0010】
図示例のメタルハニカム担体1は、金属薄板よりなる平板2と波板3とを重ねて渦巻き状に巻回したものを、金属厚板よりなる外筒4内に収容配置した構成である。上記平板2と波板3および外筒4の材質や厚さは適宜であるが、本実施形態にいては平板2および波板3として厚さ0.15mmのステンレス鋼板が用いられ、また外筒4としては厚さ1.5mmのステンレス鋼板が用いられている。
【0011】
上記メタルハニカム担体1の平板2と波板3とを溶接するに当たっては、例えば図2に示すようにメタルハニカム担体1の一端側を上に向けて配置すると共に、そのハニカム担体1の上方の所定距離Dだけ離れた位置に電子ビーム溶接機10のヘッド11を上記メタルハニカム担体1の略中心部に向けて配置する。
【0012】
そして上記ヘッド11からメタルハニカム担体1に向けて電子ビームを断続的に照射すると同時に、溶接機10に備えられた電磁石、図の場合は4つの電磁石12に適宜通電して上記ヘッド11から照射された電子ビームBを渦巻き状に回動走査するもので、図3(b)はその電子ビームBの上記メタルハニカム担体端面(上面)上における照射軌跡を示す。
【0013】
上記平板2および波板3を図示例のように渦巻き状に巻いたものにあっては、その巻き方向と、電子ビームBの渦巻きの巻き方向とを互いに反対方向にするのが望ましく、また電子ビームBの強度は、例えばビーム電力1.4kW(加速電力40kV×ビーム電流35mA)程度のものを用いればよい。なお最も外側の平板2または波板3と外筒4とも同時にビーム溶接するのが望ましく、その場合のビーム電力は4.0kW(加速電力40kV×ビーム電流100mA)程度のものを用いればよい。
【0014】
さらに上記の渦巻き状に照射したメタルハニカム担体端面上における渦巻きのピッチP2は図3(a)における平板2および波板3の積層ピッチP1よりも小さくするのが望ましく、例えば平板2および波板3の積層ピッチP1は通常3.8mm程度であるが、それに対して上記渦巻きのピッチP2は0.1〜1.0mm程度、より好ましくは0.5mm程度とすればよい。また図3(c)に示すメタルハニカム担体端面上における電子ビームの断続ピッチ(ドットピッチ)P3は0.1mm〜1.0mm程度、より好ましくは0.4mm程度とすればよい。なお図示例は電子ビームをドット状(点状)に照射したが、破線状に照射してもよい。
【0015】
上記のようにメタルハニカム担体1の端面に、電子ビームを渦巻き状に且つ断続的に照射することによって、上記平板2と波板3とを非溶接部を残して良好に溶接接合することができるものである。
【0016】
なお上記の実施形態は、メタルハニカム担体1の端面を上に向けて、その上方から電子ビームを照射するようにしたが、例えばメタルハニカム担体1の端面を横向きにして、その横方向外方から電子ビームを照射するようにしてもよい。
【0017】
また上記平板2と波板3との溶接は、メタルハニカム担体1の軸線方向両端部を溶接するのが望ましく、この場合、両端面同時に溶接することも可能であり、また両端面への電子ビームを照射条件を異ならせることもできる。
【0018】
さらに必要に応じて前記筒体4の端部、特に排気流通方向下流側の端部4bに図4に示すような絞り加工を施し、その段部4dに平板2と波板3の端部を当接させる、あるいは図5に示すように筒体4の下流側端部4bにS字状もしくは直線状のストッパ5をビーム溶接等で一体的に設けて上記平板2と波板3とを位置決め固定するようにしてもよい。そのように構成した場合には、排気流通方向下流側端部における平板2と波板3との溶接、および最も外側の平板2または波板3と外筒4との溶接を省略することができる。
【0019】
また上記実施形態は、平板2と波板3とを渦巻き状に巻回したものに適用したが、例えば平板2と波板3とを同心状に積層巻回したもの等にも適用できる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明によるメタルハニカム担体の溶接方法を適用した具体的な実施例について説明する。
【0021】
メタルハニカム担体1として、厚さ0.15mmのステンレス鋼板よりなる平板2および波板3を前記図1のように渦巻き状に巻回し、それを厚さ1.5mmのステンレス鋼板よりなる外筒4内に収容配置したものを用いた。なお上記平板2および波板3の渦巻きのピッチP1は約0.5mmとした。
【0022】
そのメタルハニカム担体1の一端側を、図2のように上に向けて配置すると共に、そのハニカム担体1の上方に前記の距離Dとして約30cm離して電子ビーム溶接機10のヘッド11を、メタルハニカム担体1の略中心部に向けて配置した。
【0023】
そして上記ヘッド11からビーム電力は4.0kW(加速電力40kV×ビーム電流100mA)程度の電子ビームBを断続的に照射して最外側の平板2と外筒4とを周方向全長にわたって溶接すると共に、ビーム電力1.4kW(加速電力40kV×ビーム電流35mA)程度の電子ビームBをドット状に断続的に照射しながら溶接機10に備えられた電磁石12により電子ビームBを渦巻き状に回動走査して平板2と波板3とを溶接した。なお上記電子ビームBの渦巻き方向は、平板2および波板3の巻き方向と反対方向にした。またメタルハニカム担体端面上における渦巻きのピッチP2は0.5mm程度とし、電子ビームのメタルハニカム担体端面上における断続ピッチ(ドットピッチ)P3は約0.4mmとした。
【0024】
上記の要領でメタルハニカム担体1の軸線方向両側の平板2と波板3および外筒4とを溶接したメタルハニカム担体を用いてキャタライザを作製し、それを排気量2000cm3 の自動車用エンジンの排気系内に装着して走行距離約20000kmに相当する実車を模した運転操作を行ったところ、上記溶接部に亀裂が生じるようなことはなく、また溶接箇所の剥離も殆どなく、良好に接合状態を維持できることが確認できた。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によるメタルハニカム担体の溶接方法は、上記のようにメタルハニカム担体1の端面に、電子ビームを渦巻き状に且つ断続的に照射することによって、上記平板2と波板3とを非溶接部を残して良好に溶接接合することができるもので、前記従来のように遮蔽部材を用いる必要がないから、製作が容易であり、熱応力による剥離や亀裂の生じるおそれの少ないメタルハニカム担体を安価に製作出来る等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明を適用したメタルハニカム担体の平面図。
(b)はその一部縦断正面図。
【図2】(a)は溶接状態の概略構成の説明図。
(b)はその一部の平面図。
【図3】(a)はメタルハニカム担体の平面図。
(b)はそれに対応する電子ビーム照射軌跡の平面図。
(c)は電子ビーム照射軌跡の一部の拡大図。
【図4】外筒の端部に絞り加工を施したメタルハニカム担体の一部縦断正面図。
【図5】(a)は外筒端部にストッパを設けたメタルハニカム担体の一部縦断正面図。
(b)はその底面図。
【符号の説明】
1 メタルハニカム担体
2 平板
3 波板
4 外筒
5 ストッパ
10 電子ビーム溶接装置
11 ヘッド
12 電磁石
Claims (2)
- 金属薄板よりなる平板と波板とを重ねて多重に巻回したメタルハニカム担体の端面に、電子ビームを渦巻き状に且つ断続的に照射することにより、前記平板と前記波板との接触部につき溶接部と非溶接部を形成するように溶接接合することを特徴とするメタルハニカム担体の溶接方法。
- 前記電子ビームを渦巻き状に照射する際の渦巻きのピッチを0.1mm〜1.0mmとし、且つメタルハニカム担体の端面における電子ビームの断続ピッチを0.1mm〜1.0mmとした請求項1記載のメタルハニカム担体の溶接方法。
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