JP4683572B2 - 組換え蛋白質の定量法 - Google Patents
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Description
また創薬のスクリーニングや医薬品製造等で蛋白質が大量に必要な場合にも、組換え蛋白質の発現、分離精製は避けて通れないステップである。
組換え蛋白質を発現させ、分離精製する際、予想よりも発現量が少なかったり、発現はするものの不溶性の沈殿となってしまったりすることがしばしば起こる。そのため、発現、分離精製について至適な条件を調べる必要があるが、条件検討をする際、組換え蛋白質を定量する機会が頻繁に発生する。
このような場合、一般的にはタグを用いて精製した後に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動方法の他、ELISA、ウェスタンブロット等のイムノアッセイ(非特許文献1)が利用されている。このときの精製効率を上げるための多くのタグが知られている(非特許文献2)。
「実験医学別冊 タンパク質実験ハンドブック」、p128〜134、羊土社、2004年 K.Terpe 、Appl Microbiol Biotechnol、p523〜533、2003年
従って、本発明の課題は、迅速、簡便かつ正確に組換え蛋白質を定量するための方法を提供することである。
[1]
第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグと標的蛋白質との融合タンパク質に、第1エピトープを認識する検出抗体と第2エピトープを認識する検出抗体を接触させ、該両検出抗体が互いに近接することにより生じる現象を検出する工程を含み、該第1エピトープ及び第2エピトープが、それぞれを認識する検出抗体が結合した場合に該両検出抗体が互いに近接することができるように配置されていることを特徴とする標的蛋白質の定量方法、
[2]
該検出抗体が蛍光物質、発光体、ラジオアイソトープ及びビーズのいずれかにより標識されたものである上記[1]記載の方法、
[3]
該検出抗体がともに蛍光物質により標識されたものである上記[2]記載の方法、
[4]
該蛍光物質がユウロピウム化合物及びアロフィコシアニン誘導体の組み合わせからなる上記[3]記載の方法、
[5]
該現象が蛍光の共鳴によるエネルギーの転移である上記[1]から[4]のいずれかに記載の方法、
[6]
該検出抗体のいずれか一方のVH領域のアミノ酸配列が配列番号4として示されるものであり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号5として示されるものである上記[1]記載の方法、
[7]
該検出抗体のいずれか一方のVH領域のアミノ酸配列が配列番号6として示されるものであり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号7として示されるものである上記[1]または[6]に記載の方法、
[8]
該エピトープがいずれも6個以上8個以下のアミノ酸残基からなる上記[1]記載の方法、
[9]
該エピトープのいずれか一方のアミノ酸配列が配列番号1に示されるものである上記[8]記載の方法、
[10]
該エピトープのいずれか一方のアミノ酸配列が配列番号2に示されるものである上記[8]または[9]に記載の方法、
[11]
第1エピトープと第2エピトープが、ペプチドリンカーを通じて互いに連結されている上記[1]記載の方法、
[12]
該ペプチドリンカーが3個以上6個以下のアミノ酸残基からなる上記[11]記載の方法、
[13]
該エピトープタグが15個以上22個以下のアミノ酸残基からなる上記[1]記載の方法、
[14]
該エピトープタグのアミノ酸配列が配列番号3に示されるものである上記[13]記載の方法、
[15]
配列番号14に示される配列からなる遺伝子を有する発現ベクター、
[16]
第1エピトープを認識する検出抗体、第2エピトープを認識する検出抗体、並びに第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグをコードする遺伝子配列からなる遺伝子を有する発現ベクターを含んでなる標的蛋白質の定量用キット、
[17]
上記[6]に記載の検出抗体、上記[7]に記載の検出抗体、及び上記[15]に記載の発現ベクターを含んでなる上記[16]の標的蛋白質の定量用キット、
が提供される。
[18]
請求項[1]の方法を使用するためのキット。
[19]
第1エピトープを認識する検出抗体及び第2エピトープを認識する検出抗体と、第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグと標的蛋白質との融合タンパク質の複合体。
(1)第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグを標的蛋白質に融合させた融合蛋白質を作製する。ここで、第1エピトープ及び第2エピトープは、それぞれを認識する以下の検出抗体が結合した場合に該両検出抗体が互いに近接することができるように配置されている工程。
(2)第1エピトープを認識する検出抗体と第2エピトープを認識する検出抗体を該融合蛋白質に接触させる工程。
(3)各エピトープに結合した検出抗体が互いに近接することにより生じる現象を検出する工程。
本発明に用いられる標的蛋白質とは、該蛋白質をコードするDNAを取得することが可能であって、そのDNAを発現させて蛋白質として生成できるものであればいかなるものであってもよい。また天然に存在する蛋白質、その変異体、人工蛋白質、及びその変異体等いずれも用いることができる。天然に存在する蛋白質としては、種々の生物の器官、組織または細胞に由来するcDNAライブラリーから転写翻訳されて得られるものでもよい。人工蛋白質としては、天然に存在する蛋白質の全てもしくは一部のアミノ酸配列を組み合わせた配列、またはランダムなアミノ酸配列を含むもの等が挙げられる。以下の実施例において、標的蛋白質としてスペルミジン合成酵素(SPDS)を定量する方法を示す。
(A)抗体と特異的に結合するアミノ酸配列を決定する方法としては、該抗体を用いたウェスタンブロット(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,3116(1979))により特定していく方法が挙げられる。具体的には、例えば抗原として蛋白質を用いた場合には、まず蛋白質をコードするDNAを50〜200個程度のアミノ酸をコードする断片に制限酵素等により切断し、それぞれのDNA断片を適当な発現ベクターに挿入し、これを適当な宿主により転写、翻訳させて蛋白質を発現させ、この蛋白質と抗体との結合性を調べる。適当な発現ベクターとは、これを導入する宿主に適したものであればいかなるものであってもよいが、例えば宿主として大腸菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞等を用いる場合には、それぞれpET、pNMT、p cDNA、pFastBac(すべてインビトロジェン社などから入手可)等を用いることができる。また転写、翻訳を行う系として、ウサギ網状赤血球、抽出小麦胚芽、大腸菌からの抽出液(大腸菌S30抽出液)等に基づいて調製された無細胞転写翻訳系を用いることもできる。これによりあるペプチド断片にエピトープを絞り込み、引き続いてそのペプチド断片中のアミノ酸配列5〜50個程度をコードするDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や合成オリゴヌクレオチド等で作製し、これを適当な蛋白質と連結させて融合蛋白質として発現させ、抗体との結合性を調べる。この融合蛋白質に用いる適当な蛋白質とは、解析する抗体に結合しないものであればいかなるものであってもよい。かくして抗体に結合するために必要かつ十分な最も小さい単位のポリペプチドであるエピトープを特定することができる。
6G4抗体
(a)アミノ酸配列GEPGDDAPSからなるペプチドと特異的に結合する。
(b)配列番号4で示されるH鎖の可変領域(VH領域)と、配列番号5で示されるL鎖の可変領域(VL領域)をもつH鎖50kDa、L鎖27kDaからなる150kDaの蛋白質である。
(c)免疫グロブリンクラスIgG1(k)に属する。
2E6抗体
(d)アミノ酸配列GPPGPQGからなるペプチドと特異的に結合する。
(e)配列番号6で示されるVH領域と、配列番号7で示されるVL領域をもつH鎖50kDa、L鎖27kDaからなる150kDaの蛋白質である。
(f)免疫グロブリンクラスIgG2b(k)に属する。
(1)6G4抗体の作製
ヒト2型コラーゲンのアミノ酸番号757-765に相当する領域(配列番号1)のC末端側にシステインを付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドとカギアナカサガイのヘモシアニン(KLH、ピアス社製)を、スルフォスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(sulfo-SMCC、ピアス社製)を用いてコンジュゲートさせ、免疫原とした。免疫原をフロイントの完全アジュバント(ディフコ社製)と混合してエマルジョンとし、3週間毎にマウス(Balb/c CrSlc、6週齢、雌)の腹腔内に40μg投与した。4回免疫後にマウスの脾臓を摘出し、PEG法によりミエローマ細胞(p3×63-Ag8.UI、東京腫瘤研究所)と融合させ、ハイブリドーマを調製した。培養9日目に培養上清を採取し、抗体産生ハイブリドーマを含む陽性ウェルのスクリーニングを行った。スクリーニングは以下に述べる時間分解蛍光イムノアッセイ(DELFIA、アマシャム社、登録商標)で行った。抗マウスIgG抗体(シバヤギ社製)を固相したマイクロタイタープレート(住友ベークライト社製)に、測定緩衝液(150mM NaCl、0.01%Tween80、0.5%BSA、0.05%NaN3を含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5))50μl、培養上清50μl、標識抗原(20ng/mlビオチン標識抗原ペプチドと100ng/mlユウロピウム標識ストレプトアビジン(パーキンエルマーライフサイエンス社製)を含む測定緩衝液)50μlを連続して加え、4℃で16時間反応させた。洗浄液(150mM NaCl、0.02%NaN3、0.01%Tween20)200μlでプレートを2回洗浄した後、エンハンスメントソルーション(パーキンエルマーライフサイエンス社製)を150μl加え、1420ARVOsxマルチラベルカウンタ(パーキンエルマーライフサイエンス社製)で時間分解蛍光を測定した。本スクリーニングで反応性の高かった1ウェルを選択し、限界希釈法によるクローニングを2回繰り返して抗体産生ハイブリドーマTAG-6G4を確立した。TAG-6G4のサブクラスをマウスモノクロナル抗体アイソタイピングELISAキット(BD バイオサイエンス社製)で調べたところ、IgG1(k)であった。ハイブリドーマTAG-6G4をヌードマウス(BALB/cANNCrj-nu-nu)の腹腔内に投与して腹水を採取した(ラボプロダクツ社に委託)。プロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより腹水から精製抗体を得た。
ヒト2型コラーゲンのアミノ酸番号769-775に相当する領域(配列番号2)のN末端側にシステインを付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドとウシ血清アルブミン(BSA、ピアス社製)を(N-e-マレイミドカプロイロキシ)スルフォスクシンイミドエステル(Sulfo-EMCS、ピアス社製)を用いてコンジュゲートさせ、免疫原とした。TAG-6G4と同様、免疫原をマウス(A/J Jms Slc、6週齢、雌)へ投与し、脾臓を摘出して細胞融合を行った。DELFIAによるスクリーニングとクローニングを行い、抗体産生ハイブリドーマTAG-2E6を確立した。抗体のサブクラスはIgG2b(k)であった。ヌードマウスの腹水化とプロテインAカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製抗体を得た。
RneasyMiniキット(キアゲン社製)を用いて1×107個のハイブリドーマからtotal RNAを精製した。SMARTTMRACE cDNA増幅キット(BDバイオサイエンス社製)を利用して、キットの操作手順に従ってVH領域とVL領域の遺伝子配列を決定した。SMARTIIAオリゴヌクレオチドとTAG-6G4のVH領域に特異的なプライマー(配列番号8)、TAG-2E6のVH領域に特異的なプライマー(配列番号9)、Vl領域に特異的なプライマー(配列番号10)を用いてcDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型として、ユニバーサルプライマーとTAG-6G4のVH領域に特異的なプライマー(配列番号11)、TAG-2E6のVH領域に特異的なプライマー(配列番号12)、Vl領域に特異的なプライマー(配列番号13)、を用いてPCRを行い、VH遺伝子、VL遺伝子を増幅した。これらのPCR産物をTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)でクローニングし、シークエンスを解析した(オペロンバイオテクノロジー社に依託)。得られた遺伝子配列からVH領域とVL領域のアミノ酸配列を決定した。
(1)発現ベクターの作製
Gatewayテクノロジー(インビトロジェン社)を利用して行った。標的蛋白質として、配列番号15として配列表に示されるヒトスペルミジン合成酵素(SPDS、GenBank Accession No.NP003123 )を用いた。この遺伝子を当業者に公知の方法でクローニングした後、制限酵素サイトSacIとNotIを介してエントリーベクターpENTR11に挿入し、エントリークローンを得た。さらに3×FLAGタグ(シグマ社製)とGateway Vector Conversion Systemの Reading Frame Cassette Aを連結した遺伝子をPCRで増幅し、NheIとKpnIの制限酵素サイトを介してpShuttleベクター(クロンテック社製)に挿入し、デスティネーションベクターとした。エントリークローンとデスティネーションベクターをClonase存在下混合してattサイト間の部位特異的組み換えを誘導することにより、アミノ末端に3×FLAGタグを繋いだヒトSPDSの発現ベクターをクローニングした。さらにSPDS遺伝子のApaIサイトとNotIサイト間の領域を取り除き、同領域にエピトープタグをコードする遺伝子配列(配列番号14)を有するDNAを連結させ、エピトープタグ融合蛋白質の発現ベクターとした。
リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社製)と前記発現ベクターを用い、手順書に従ってHEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来、アメリカンタイプカルチャーコレクション社より入手)にトランスフェクトした。この細胞を2日間培養した後、遠心分離して回収し、少量のプロテアーゼインヒビターカクテルを含む氷冷PBSに懸濁させ、超音波処理で破砕した。PBSで平衡化した2E6抗体を結合させた担体カラム(ピアス社製アミノリンク固定化キットを用いて手順書に従って調製したもの)に細胞破砕液を通し、PBSで十分に洗浄した。最後に0.2 Mグリシン緩衝液(pH3.0)をカラムに通してタンパク溶出分画を回収し、トリス塩酸(pH9.0)で中和してPBSで透析した。プロテインアッセイ試薬(バイオラッド社製)でタンパク濃度を決定し、標準物質とした。
ウエスタンブロットは一般的な手法(例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition(2001))で行った。アッセイバッファー(0.5%BSA、150mM NaClを含む50mMトリス緩衝液(pH7.4))を用いて標準物質 の2倍希釈系列を調製し、各々10μlを5-10%アクリルアミドゲル(アトー社製)で展開し、PVDFメンブレン(ミリポア社製)へ転写した。メンブレンをブロックエース(大日本製薬社製)でブロッキングした後、6G4抗体または2E6抗体を0.5-1μg/ml含むブロックエースに浸し、室温で1時間反応させた。メンブレンを洗浄バッファー(0.05%Tween20を含むPBS)で十分に洗浄した後、HRP標識抗マウスIgG抗体(アマシャム社製)をブロックエースで5,000倍に希釈した液に浸し、室温で0.5時間反応させた。メンブレンを再度洗浄した後、手順書に従って、化学発光試薬ECL plus(アマシャム社製)と反応させ、HyperFilm-ECL(アマシャム社製)に露光させた。
6G4抗体、2E6抗体どちらを使った場合も、分子量3.5kDaの位置にエピトープタグ融合蛋白質に相当すると思われる単一のバンドが得られた。これらのバンドは使用した標準物質の量に依存して強くなった。またエピトープタグ融合蛋白質の検出限界は、6G4抗体を用いた場合が8.9fmol、2E6抗体を用いた場合が18fmolであった。
(1)6G4抗体のクリプテート標識
6G4抗体を0.1 Mリン酸塩緩衝液(pH8.0)で1 mg/mlとした。抗体1モルに対してクリプテートTBPモノスベレート(CIS バイオインターナショナル社製)を15モル加えて、25 ℃で1時間反応させた。反応液につき、PBSで予め平衡化したPD- 10カラム(アマシャム社製)を用いたゲルろ過を行い標識抗体を分取した。標識抗体は0.1 % ウシ血清アルブミン、0.1 % Tween20、0.05%アジ化ナトリウムを添加して-70 ℃で保存した。
0.1 Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)に溶かした2E6抗体に、8倍モル量のN- スクシンイミジル 3- (2- ピリジルジチオ) プロピオネート(SPDP、Pierce社製)を加えて25 ℃で20分間反応させた。反応液に終濃度10 mMのジチオスレイトール(DTT)を加えてさらに10分間反応させた後、10 mM EDTAを含む0.1 Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したPD-10カラムを用いたゲルろ過を行い、システイン基を導入した2E6抗体を分取した(SH-2E6抗体)。XL665(CISバイオインターナショナル社製)を0.1 Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)に薄め、5倍モル量のSulfo-SMCCを加えて25 ℃で30分間反応させた。0.1 Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したPD-10カラムを用いたゲルろ過を行い、マレイミド基を導入したXL665を分取した(マレイミド化XL665)。1モルのマレイミド化XL665に対して上記のSH- 2E6抗体を3モル加えて4 ℃で16時間反応させ、XL665標識抗体を得た。標識抗体は100倍モル量のN-エチルマレイミドを加えて室温で10分間放置した後、0.1 % ウシ血清アルブミン、0.1 % Tween20、0.05%アジ化ナトリウムを添加して-70 ℃で保存した。
アッセイバッファー(0.5%BSAを含むトリス緩衝生理食塩水(TBS))、動物細胞(HEK293細胞)、昆虫細胞(Sf9細胞)、分裂酵母および大腸菌を破砕した抽出液あるいはこれらの培養上清によって標準物質(実施例2参照)の2倍希釈系列を作製した。これらの標準物質希釈液を384ウェルアッセイプレートに1ウェルあたり10μlずつ添加し、さらに2種類の検出抗体を含むアッセイバッファー(200ng/mlクリプテート標識6G4抗体、5,000ng/ml XL665標識2E 6抗体、0.8Mフッ化カリウム、0.5%BSAを含むTBS)を10 μl添加して室温で反応させた。反応開始5分後及び24時間後について、各ウェルの蛍光強度をRubystar(BMG Labtechnologis社製)により測定した。
次に、実施例2により作製した発現用プラスミドを用いてリポフェクトアミン2000(インビトロジェン社製)によりHEK293細胞をトランスフェクションして5%CO2存在下、37℃で三日間培養した後、遠心分離により細胞を回収し、プロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ社製)を含むP BSに懸濁させた。細胞を超音波破砕し、抽出液中に存在する蛋白質量を本発明の方法により測定した。
次にアッセイで使用したバッファーで調製した既知濃度の標準物質について定量値の変動係数(CV、平均値に対する標準偏差の割合)を求めた(n=16)。このとき変動係数が15%未満の値を示す時の蛋白質の濃度を定量限界値とした。標準物質濃度と変動係数(%)の関係を図4に示す。
本発明の方法で測定を行った場合、5分間後の定量限界値は2.1fmol(210pmol/L)であった。また24時間後では0.27fmol(27pmol/L)であった。いずれの値もウエスタンブロットにおける検出限界(8.9fmol、18fmol)を上回るものであった。これらの結果は、目的のエピトープタグ融合蛋白質の発現量を調べるのに、ウエスタンブロットでは、結果を確認するまでほぼ二日間要するのに対して、本発明の方法では僅か5分間で同等の精度の測定が可能であることを示すものである。また24時間後では、その精度はウエスタンブロット法を超えており微量にしか発現できない組換え蛋白質の測定にも利用できる。
また、実際に標的蛋白質(SPDS)をHEK293細胞により発現させた後、本発明の方法により抽出液中に含まれる標的蛋白質(SPDS)の発現量を測定した結果、僅か5分間の反応で、抽出液中に含まれるエピトープタグ融合蛋白質(SPDS)の測定値を得ることができた(図5)。
以上の結果は、本発明のエピトープタグ融合蛋白質の定量法がウエスタンブロットなどの既存法と比べて迅速、簡便であり、また高感度検出が可能で定量性にも優れていることを示すものといえる。
配列番号2は、抗体を作製するのに用いたポリペプチドの配列である。
配列番号3は、エピトープタグとして用いたポリペプチドの配列である。
配列番号4は、6G4抗体の可変領域(VH)のアミノ酸配列である。
配列番号5は、6G4抗体の可変領域(VL)のアミノ酸配列である。
配列番号6は、2E6抗体の可変領域(VH)のアミノ酸配列である。
配列番号7は、2E6抗体の可変領域(VL)のアミノ酸配列である。
配列番号8は、6G4抗体のVH領域のcDNAを合成するために設計されたオリゴヌクレオチドである。
配列番号9は、2E6抗体のVH領域のcDNAを合成するために設計されたオリゴヌクレオチドである。
配列番号10は、6G4抗体及び2E6抗体のVL領域のcDNAを合成するために設計されたオリゴヌクレオチドである。
配列番号11は、6G4抗体のVH領域の遺伝子を増幅するために設計されたPCRのオリゴプライマーである。
配列番号12は、2E6抗体のVH領域の遺伝子を増幅するために設計されたPCRのオリゴプライマーである。
配列番号13は、6G4抗体及び2E6抗体のVL領域の遺伝子を増幅するために設計されたPCRのオリゴプライマーである。
配列番号14は、配列番号3に記載したエピトープタグのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列である。
配列番号15は、ヒト由来スペルミジン合成酵素(SPDS)のcDNAである。
Claims (17)
- 第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグと標的蛋白質との融合タンパク質を作製し、第1エピトープを認識する検出抗体と第2エピトープを認識する検出抗体を接触させ、該両検出抗体が互いに近接することにより生じる現象を検出する工程を含み、該第1エピトープ及び第2エピトープが、それぞれを認識する検出抗体が結合した場合に該両検出抗体が互いに近接することができるように配置されていることを特徴とする標的蛋白質の定量方法。
- 該検出抗体が蛍光物質、発光体、ラジオアイソトープ及びビーズのいずれかにより標識されたものである請求項1記載の方法。
- 該検出抗体がともに蛍光物質により標識されたものである請求項2記載の方法。
- 該蛍光物質がユウロピウム化合物及びアロフィコシアニン誘導体の組み合わせからなる請求項3記載の方法。
- 該現象が蛍光の共鳴によるエネルギーの転移である請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 該検出抗体のいずれか一方のVH領域のアミノ酸配列が配列番号4として示されるものであり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号5として示されるものである請求項1記載の方法。
- 該検出抗体のいずれか一方のVH領域のアミノ酸配列が配列番号6として示されるものであり、VL領域のアミノ酸配列が配列番号7として示されるものである請求項1または6に記載の方法。
- 該エピトープがいずれも6個以上8個以下のアミノ酸残基からなる請求項1記載の方法。
- 該エピトープのいずれか一方のアミノ酸配列が配列番号1に示されるものである請求項8記載の方法。
- 該エピトープのいずれか一方のアミノ酸配列が配列番号2に示されるものである請求項8または9に記載の方法。
- 第1エピトープと第2エピトープが、ペプチドリンカーを通じて互いに連結されている請求項1記載の方法。
- 該ペプチドリンカーが3個以上6個以下のアミノ酸残基からなる請求項11記載の方法。
- 該エピトープタグが15個以上22個以下のアミノ酸残基からなる請求項1記載の方法。
- 該エピトープタグのアミノ酸配列が配列番号3に示されるものである請求項13記載の方法。
- 第1エピトープを認識する検出抗体、第2エピトープを認識する検出抗体、並びに第1エピトープ及び第2エピトープを有し、該第1エピトープ及び該第2エピトープが、それぞれを認識する検出抗体が結合した場合に該両検出抗体が互いに近接することができるように配置されていることを特徴とするエピトープタグをコードする遺伝子配列からなる遺伝子を有する発現ベクターを含んでなる標的蛋白質の定量用キット。
- 請求項6に記載の検出抗体、請求項7に記載の検出抗体、及び配列番号14に示される配列からなる遺伝子を有する発現ベクターを含んでなる請求項15記載の標的蛋白質の定量用キット。
- 第1エピトープを認識する検出抗体、第2エピトープを認識する検出抗体、および第1エピトープ及び第2エピトープを有し、該第1エピトープ及び該第2エピトープが、それぞれを認識する検出抗体が結合した場合に該両検出抗体が互いに近接することができるように配置されていることを特徴とするエピトープタグと標的蛋白質との融合タンパク質の複合体。
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