以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の構成をブロック図で説明する説明図である。以下、図1を用いて本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100について説明する。
図1に示したように、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタの一例であり、遅延レジスタ110a、110b、110c、110d、110e、110fと、スイッチS1、S2、S3、S4、S5と、乗算器120a、120bと、加算器130と、を含んで構成される。
チャージドメインフィルタ回路100には、連続時間信号をサンプリング間隔Tで標本化した離散時間信号が入力端子INから入力される。またサンプリング周波数をfs(=1/T)とする。遅延レジスタ110a、110b、110c、110d、110e、110fは、それぞれ入力信号をサンプリング時点から時間T遅延させて出力するものである。遅延レジスタ110aの出力は乗算器120aに入力される。また、遅延レジスタ110b〜110fの出力は、後述のようにいずれかいずれか1つのみが選択されて乗算器120bに入力される。なお、サンプリング間隔Tは任意に設定することができる可変の値である。所望の周波数特性を得るためにサンプリング間隔Tを変化させてもよい。
スイッチS1、S2、S3、S4、S5は、いずれか1つのみが選択されてオン状態となるものである。スイッチS1〜S5のいずれか1つのみが選択されてオン状態となることで、遅延レジスタ110b〜110fのいずれか1つの出力のみを選択して乗算器120bに出力することができる。
乗算器120aは、遅延レジスタ110aからの出力を1/2にして出力するものである。また乗算器120bは、遅延レジスタ110b〜110fのいずれか1つからの出力を1/2にして出力するものである。乗算器120a、120bの出力は、それぞれ加算器130に入力される。加算器130は、乗算器120a、120bからの出力を入力し、両者を加算して出力するものである。
図1のように構成したチャージドメインフィルタ回路100の伝達関数は、以下の数式1で表される。
(ただし、n=2,3,4,5,6である)
例えば、n=4の場合はスイッチS3のみが閉じている状態となる。この場合の正規化周波数特性を図2に示す。図2に示したグラフにおいて、dB_H(f)で示した線がスイッチS3のみが閉じている状態における正規化周波数特性を表している。図2に示したように、n=4の場合は、信号の周波数fをサンプリング周波数fsで割った正規化周波数f/fsが0.167(=1/6)および0.5の位置でノッチが生じていることが分かる。
もし、SINCフィルタを用いて正規化周波数が1/6の位置にノッチを生じさせようとする場合には、以下の数式2のような伝達関数を要する。
数式2で示す伝達関数を実現するためのSINCフィルタのブロック図を図22に示し、図22に示すSINCフィルタの正規化周波数特性を図23に示す。図2の正規化周波数特性と図23の正規化周波数特性とを比較すると、正規化周波数が0.167以下の低い周波数領域では、どちらも同じ周波数特性であることが分かる。しかし、数式1と数式2とを比較すると、数式2に示したSINCフィルタの伝達関数では遅延時間が異なる6つのサンプルを合計する必要があるのに対し、数式1に示したチャージドメインフィルタ回路100の伝達関数では2つのサンプルのみを合計している点で異なっている。そして、正規化周波数が0.167以下の低い周波数領域では、図1に示したチャージドメインフィルタ回路100は、図22に示したSINCフィルタよりも少ない構成で、図22に示したSINCフィルタと同じ周波数特性を得ることができるという利点がある。
さらに、図1に示したチャージドメインフィルタ回路100における正規化周波数特性のノッチの位置は、伝達関数の零点に対応するので、数式1のnの値を変更することで、すなわち、スイッチS1〜S5のいずれか1つのみをオンとすることで、正規化周波数特性のノッチの位置を可変に出来るという利点もある。図3は、チャージドメインフィルタ回路100における正規化周波数特性のノッチの位置を、nの値を変更することで変化させていることを示す説明図である。図3において、dB_H1(f)はn=2の場合の特性を、dB_H2(f)はn=3の場合の特性を、dB_H3(f)はn=4の場合の特性を、dB_H4(f)はn=5の場合の特性を、dB_H5(f)はn=6の場合の特性を、それぞれ示している。図3に示したように、数式1のnの値を変更することで、すなわち、スイッチS1〜S5のいずれか1つのみをオンとすることで、正規化周波数特性のノッチの位置が変化していることがわかる。
以上、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の実施例について説明する。
図4は、図1に示した本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100を、スイッチとキャパシタとからなる実際の回路として実装する場合の回路の一例について示す説明図である。以下、図4を参照して本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の構成について説明する。
図4に示したように、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100は、6個のスイッチと2個のキャパシタとからなる1つの段が8つ構成されている8段構成となっている。そして、図4に図示したスイッチを適宜切り替えることにより、入力端子INからのキャパシタへの電荷の注入や、出力端子OUTへのキャパシタからの電荷の放出が繰り返して行われる。
図5は、図4に示した本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100に入力するクロック信号の波形について説明する説明図である。図5に示したクロック信号において、隣り合ったクロック信号間のパルスの立ち上がりの間隔が上述のサンプリング間隔Tに相当する。そして、図4の各スイッチの近傍に付した記号(φ1、φ2、φ3、φ4、φ5、φ6、φ7、φ8)と、図5のクロック信号φ1〜φ8とが、それぞれ対応している。図5のクロック信号φ1〜φ8がそれぞれHIGHとなるタイミングで、図4に図示した、クロック信号に対応するスイッチがそれぞれオンとなる。例えば、クロック信号φ1がHIGHとなると、図4のスイッチ151a、151b、158c、158dがオンとなる。従って、図5のクロック信号φ1〜φ8がHIGHとLOWとを繰り返すことで、図4に示した各キャパシタに電荷が蓄積され、信号のサンプリングが行われる。
また、図4の記号ψは、それぞれいずれか1つのクロック信号によってスイッチがオンされることを示している。例えば、ψ1a(φ4、φ5、φ6、φ7、φ8)は、クロック信号φ4〜φ8のいずれか1つがHIGHとなるとスイッチ151fがオンとなることを示しており、ψ1b(φ3)は、クロック信号φ3がHIGHとなるとスイッチ151gがオンとなることを示している。また、ψ1a〜ψ8aは、それぞれ同じ位置に対応するクロック信号がHIGHとなると、各スイッチがオンとなる。例えば、クロック信号φ6がHIGHとなるとスイッチ151fがオンになる場合には、クロック信号φ7がHIGHとなるとスイッチ152fがオンになり、クロック信号φ8がHIGHとなるとスイッチ153fがオンになる。以下の記号ψが付されているスイッチについても同様である。
図6は、図4に示した本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100に入力するクロック信号を選択する回路について説明する説明図である。図6に示したように、チャージドメインフィルタ回路100にクロック信号を入力するための各スイッチは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のトランスファゲートで構成してもよい。各スイッチをCMOSのトランスファゲートで構成することにより、全て同じ遅延時間に揃えることが可能となる。図6では、スイッチS1〜S5のいずれか1つをオンとすることで、ψ1aの中からクロック信号φ6がHIGHとなったときにスイッチ151fがオンとなるように構成しており、図6ではスイッチS3をオンとした場合について図示している。
なお、図4に示した16個のキャパシタはいずれも同じ容量を有することが望ましい。また、図4に示した本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の各スイッチとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やCMOSFETを用いてもよい。
図4に示したチャージドメインフィルタ回路100は、入力と出力のサンプリングレートが同じであるフィルタであり、クロック信号を切り替えて入力することによって正規化周波数特性のノッチの位置を5通りに切り替えることが可能である。以上、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の動作について説明する。
まず、キャパシタC1a、C1bに着目すると、クロック信号φ1がHIGHとなっているタイミングでスイッチ151a、151bが共にオンとなり、キャパシタC1a、C1bが接地されるので、キャパシタC1a、C1bに残留している電荷が放出されることによりキャパシタC1a、C1bがリセットされる。そして、クロック信号φ2がHIGHとなっているタイミングで、スイッチ151a、151bが共にオフとなり、スイッチ151c、151dが共にオンとなるので、入力端子INとキャパシタC1a、C1bとが接続され、キャパシタC1a、C1bに電荷が蓄積される。
そして、クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングでスイッチ151c、151dが共にオフとなり、スイッチ151eがオンとなるので、キャパシタC1bに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。また、クロック信号φ4〜φ8のいずれかがHIGHとなっているタイミングでスイッチ151fがオンとなるので、キャパシタC1aに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。ここでは、クロック信号φ6がHIGHとなっているタイミングでスイッチ151fがオンされ、キャパシタC1aに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力されるものとする。
クロック信号φ6がHIGHとなっているタイミングでオンになるスイッチは、スイッチ154eである。スイッチ154eがオンになると、キャパシタC4bから電荷が出力端子OUTに出力される。キャパシタC4bには、クロック信号φ6がHIGHとなったタイミングから、サンプリング周期で1周期前に相当するクロック信号φ5がHIGHとなったタイミングで電荷が蓄積される。
また、1度のサンプリング動作で、同一の容量を有する2つのキャパシタに電荷が蓄積されるので、キャパシタC
4bに着目した場合の伝達関数はz
−1/2であり、キャパシタC
1aに着目した場合の伝達関数はz
−4/2である。従って、クロック信号φ
6がHIGHとなったタイミングでは、キャパシタC
1aに蓄積されている電荷と、キャパシタC
4bに蓄積されている電荷とが同時に出力端子OUTに出力されるので、この場合は上記の数式1のn=4の場合に相当し、伝達関数はキャパシタC
4bに着目した場合の伝達関数とキャパシタC
1aに着目した場合の伝達関数との和となるので、以下の数式3の通りになる。
上記の数式1のn=4の場合に相当するということは、図1に示したチャージドメインフィルタ回路100においてスイッチS3のみがオンになっている状態に相当するので、図1に示したチャージドメインフィルタ回路100が、図4に示したようなスイッチおよびキャパシタからなる回路構成で実現可能であることが分かる。
キャパシタC2a、C2b以降についても、同様にサンプリングクロック毎に電荷の蓄積と放出が繰り返し行われるので、入力と出力のサンプリングレートは同一となる。図4に示した回路は、回路全体として図1に示したチャージドメインフィルタ回路100においてスイッチS3のみがオンになっている状態に相当する。従って、スイッチS3のみがオンになっている場合における、図4に示したチャージドメインフィルタ回路100の正規化周波数特性は、図2に示した正規化周波数特性と同じ特性を有することとなる。
以上、本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100の動作について説明した。以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、2つのチャージを加算するだけで、多数のチャージを加算しなければならないSINCフィルタと同等の正規化周波数特性を有することができる。また、クロック信号の出力を制御することで電荷を放出するタイミングを制御でき、その結果、周波数特性を容易に変更することができる。また、チャージドメインフィルタ回路100に入力するクロック信号は同一の波形であって位相だけが異なっている、短い周期のクロック信号であるので、クロック信号の生成が容易であり、高速に動作させても消費電力を小さく抑えることができる。さらに、チャージドメインフィルタ回路100に入力するクロック信号の波形は単純で、かつ周期が短い矩形波であるため、スペクトラムに低周波成分が含まれず、仮にフィルタの通過帯域内にクロック信号のスペクトラムが混入しても容易に除去することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、異なるタイミングでサンプリングされた2つの信号を合成し、その中の1つの信号のサンプリングタイミングを切り替えることで、周波数特性を変更することができるチャージドメインフィルタ回路について説明した。本発明の第2の実施形態では、異なるタイミングでサンプリングされた3つの信号を合成して、周波数特性を変更することができるチャージドメインフィルタ回路について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の構成をブロック図で説明する説明図である。以下、図7を用いて本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200について説明する。
図7に示したように、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200は、FIRフィルタの一例であり、遅延レジスタ210a、210b、210cと、乗算器220a、220b、220cと、加算器230と、を含んで構成される。
本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100と同じく、チャージドメインフィルタ回路200には、連続時間信号をサンプリング間隔Tで標本化した離散時間信号が入力端子INから入力される。またサンプリング周波数を同様にfs(=1/T)とする。遅延レジスタ210aは、入力信号をサンプリング時点から時間T遅延させて出力するものである。遅延レジスタ210aから出力される信号は、遅延レジスタ210bおよび乗算器220aに入力される。なお、サンプリング間隔Tは任意に設定することができる可変の値である。所望の周波数特性を得るためにサンプリング間隔Tを変化させてもよい。
遅延レジスタ210bは、遅延レジスタ210aから出力される信号を時間n*T(Tのn倍、nは1以上の整数)遅延させて出力するものである。つまり、遅延レジスタ210bからの出力信号はサンプリング時点からT(n+1)だけ遅延した信号となる。遅延レジスタ210bから出力される信号は、遅延レジスタ210cおよび乗算器220bに入力される。遅延レジスタ210cは、遅延レジスタ210bから出力される信号をさらに時間n*T遅延させて出力するものである。つまり、遅延レジスタ210cからの出力信号はサンプリング時点からT(2n+1)だけ遅延した信号となる。遅延レジスタ210cから出力される信号は、乗算器220cに入力される。
乗算器220aは、遅延レジスタ210aから出力される信号に1/(2+|α|)を乗じて出力するものである。同様に、乗算器220bは、遅延レジスタ210bから出力される信号にα/(2+|α|)を乗じて出力するものであり、乗算器220cは、遅延レジスタ210cから出力される信号に1/(2+|α|)を乗じて出力するものである。そして、加算器230は乗算器220a、220b、220cからの出力信号を加算して出力するものである。
なお、ここでαの値を絶対値としているのは、αは負の値も取り得るからである。具体的には、図7に示したチャージドメインフィルタ回路200を差動化して、遅延レジスタ210bに逆相の信号を入力することでαの値が負の値となり得る。
ここでαは以下の数式4を満たすものである。
ここで、frelとはα=0の場合における、ノッチが生じる最も低い周波数を1.0としたときの相対周波数を表している。その結果、図7に示したチャージドメインフィルタ回路200の伝達関数は、以下の数式5の通りとなる。
例えば、n=1で係数αをα=0とした場合には、上記の数式5は以下の数式6のようになる。
数式5において、n=1で係数αをα=0とした場合に、サンプリング周波数f
sで正規化した周波数特性を図8に示す。図8のdB_H3(f)で示した線がこの場合の周波数特性を示している。図8に示したように、n=1で係数αをα=0とした場合には、正規化周波数f/f
sが0.25(=1/4)のところにノッチが生じていることが分かる。係数αが0の場合は乗算器220bからの出力が0となるため、チャージドメインフィルタ回路200は結果的に2つの信号を合成して出力するチャージドメインフィルタとなる。2つの信号を合成して出力する場合には、ノッチ位置が生じる周波数(ノッチ周波数)はサンプリング周波数の整数分の1の周波数に限られる。
次に、このノッチ周波数を20%高くしたい場合を考える。ノッチ周波数を20%高くするには、数式4のfrelを1.2としてαを求める(nの値はn=1で変化させないものとする)。すると、αの値はα=0.618となる。αが0.618の場合のチャージドメインフィルタ回路200の伝達関数は以下の数式7のようになる。
この場合に、サンプリング周波数f
sで正規化した周波数特性を図9に示す。図9のdB_H3(f)で示した線がこの場合の周波数特性を示している。図8と比べてノッチ周波数の位置が20%高い位置(f/f
s=0.3)にあることが分かる。
なお、上記数式4から、αのとり得る値は−2≦α≦2の範囲内であることが分かる。この範囲内でαを変化させることで、サンプリング周波数fsに限定されること無く、ノッチ周波数を可変にすることができる。
以上、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200について説明した。次に、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の実施例について説明する。
図10は、図7に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200を、スイッチとキャパシタとからなる実際の回路として実装する場合の回路の一例について示す説明図である。以下、図10を参照して本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の構成について説明する。
図10に示したチャージドメインフィルタ回路200は、図7に示した構成において、n=1として、スイッチとキャパシタとからなる実際の回路として構成したものの一例を示したものである。図10に示したように、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200は、12個のスイッチと4個のキャパシタとからなる1つの段が6つ構成されている6段構成となっている。そして、それぞれのスイッチを適宜切り替えることにより、入力端子INからのキャパシタへの電荷の注入や、出力端子OUTへのキャパシタからの電荷の放出が繰り返して行われる。
図11は、図10に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200に入力するクロック信号の波形について説明する説明図である。図11に示したクロック信号において、隣り合ったクロック信号間のパルスの立ち上がりの間隔が上述のサンプリング間隔Tに相当する。そして、図10の各スイッチの近傍に付した記号(φ1、φ2、φ3、φ4、φ5、φ6)と、図11のクロック信号φ1〜φ6とが、それぞれ対応している。本発明の第1の実施形態と同様に、図11のクロック信号φ1〜φ6がそれぞれHIGHとなるタイミングで、図10に図示した、クロック信号に対応するスイッチがそれぞれオンとなる。従って、図11のクロック信号φ1〜φ6がHIGHとLOWとを繰り返すことで、図10に示した各キャパシタに電荷が蓄積され、信号のサンプリングが行われる。
また、スイッチの近傍に付した符号に、クロック信号の他にA、Bの文字を付したスイッチがある。例えば、A・φ1と表記されているスイッチ251eは、クロック信号φ1が制御論理Aによってクロック・ゲーティングされていることを示している。すなわち、制御論理Aが1であればクロック信号φ1のHIGH・LOWの状態によってスイッチスイッチ251eがオン・オフし、制御論理Aが0であればクロック信号φ1のHIGH・LOWの状態に関係なくオフになる。
なお、図10に示した24個のキャパシタは、各列についてはそれぞれのキャパシタは同じ容量を有することが望ましい。例えば、キャパシタC1a、C2a、C3a、C4a、C5a、C6aは同じ容量を有していることが望ましい。また、各段のキャパシタは、キャパシタC1cとC1d、キャパシタC2cとC2d、キャパシタC3cとC3d、キャパシタC4cとC4d、キャパシタC5cとC5d、キャパシタC6cとC6dは、それぞれ同じ容量を有することが望ましい。また、上記の数式5のαは、1段目を例にすると、キャパシタC1aおよびC1bの容量をキャパシタC1cの容量で正規化することで決めることができる。
また、図10に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の各スイッチとして、本発明の第1の実施形態と同様に、MOSFETやCMOSFETを用いてもよい。
図10に示したチャージドメインフィルタ回路200は、図4に示した本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100と同様に、入力と出力のサンプリングレートが同じであるフィルタである。そして、チャージドメインフィルタ回路200は、キャパシタの容量や制御論理A、Bの状態によって正規化周波数特性のノッチの位置を切り替えることが可能である。以上、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の構成について説明した。次に、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の動作について説明する。
まず、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dに着目すると、クロック信号φ1がHIGHとなっているタイミングでスイッチ252a、252b、252c、252dがいずれもオンとなり、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dが接地されるので、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dに残留している電荷が放出されることによりキャパシタC2a、C2b、C2c、C2dがリセットされる。
そして、クロック信号φ2がHIGHとなっているタイミングで、スイッチ252a、252b、252c、252dがいずれもオフとなり、スイッチ252g、252hが共にオンとなるので、入力端子INとキャパシタC2c、C2dとが接続され、キャパシタC2c、C2dに電荷が蓄積される。また、スイッチ252e、252fがオンになるかどうかは制御論理A、Bの状態によって決まり、制御論理A、Bの状態によってキャパシタC2a、C2bに電荷が蓄積されるかどうかが決まる。ここでは分かりやすくするために制御論理A、Bが共に1であるとして説明する。制御論理A、Bが共に1の場合は、クロック信号φ2がHIGHとなっているタイミングでスイッチ252e、252fもオンとなり、入力端子INとキャパシタC2a、C2bとが接続され、キャパシタC2a、C2bに電荷が蓄積される。
そして、クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングでスイッチ252e、252f、252g、252hがいずれもオフとなり、スイッチ252kがオンとなるので、キャパシタC2cに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。また、クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングでオンとなるスイッチは、他にスイッチ251i、251j、256lがある。従って、クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングで、キャパシタC1a、C1b、C6dに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。キャパシタC1a、C1bに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ3より2周期前に相当するクロック信号φ1がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものであり、キャパシタC6dに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ3より3周期前に相当するクロック信号φ6がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものである。
このように、他の段のキャパシタにおいても、同様にサンプリングクロック毎に電荷の蓄積と放出が繰り返し行われるので、入力と出力のサンプリングレートは同一となる。
ここで、αを用いて各段におけるキャパシタの容量比を説明する。例えば、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量との比はα:1とする。すると、キャパシタC1cの容量とキャパシタC1dの容量とは同じであることが望ましいので、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量と、キャパシタC1dの容量との比はα:1:1である。従って、各段におけるキャパシタの容量の合計は、キャパシタC1cの容量を1とすると2+αとなり、上述した数式5の分母を満足する。
そして、ここではn=1の場合について説明しているので、数式5の分子第1項はサンプリングタイミングから1周期分、分子第2項は2周期分、分子第3項は3周期分、それぞれ遅延させたものとなっている。従って、数式5の分子第1項はキャパシタC2cに蓄積されていた電荷の出力に相当し、分子第2項はキャパシタC1aおよびC1bに蓄積されていた電荷に相当し、分子第3項はキャパシタC6dに蓄積されていた電荷の出力に相当する。キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC2c(またはキャパシタC6d)の容量との比はα:1であるので、上述した数式5の分子も満足する。
従って、図10に示したチャージドメインフィルタ回路200は、上述した数式5を満足し、図7に示したチャージドメインフィルタ回路200が図10に示した回路構成で実現可能であることが分かる。
なお、数式5のαの値は上述したようにキャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量との比で決まる。簡単な例を示すと、例えばキャパシタC1a、C1bの容量を2進重み付けにして、キャパシタC1aとキャパシタC1cとの容量比を0.5:1、キャパシタC1bとキャパシタC1cとの容量比を1:1とすると、制御論理A、Bの状態を変化させることで、キャパシタC1cの容量を1としたキャパシタC1aおよびC1bの容量の和は(つまり、数式5のαの値)は、0、0.5、1、1.5の4通りをとることができる。なお、キャパシタC1aおよびC1bの代わりに容量を連続的に変更可能な可変キャパシタを用いることで、数式5のαの値を連続的に変化可能であることは言うまでもない。可変キャパシタを用いることで、正規化周波数特性を連続的に変化させることができる。
図12は、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200において、αの値を0、0.5、1、1.5の4通りに変化させた場合の正規化周波数特性を示す説明図である。図12において、dB_H0(f)はαの値が0の場合の正規化周波数特性を、dB_H1(f)はαの値が0.5の場合の正規化周波数特性を、dB_H2(f)はαの値が1の場合の正規化周波数特性を、dB_H3(f)はαの値が1.5の場合の正規化周波数特性を、それぞれ表している。図12に示したように、αの値を変化させることでノッチ周波数の位置が異なる正規化周波数特性を得ることができる。
以上、本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200の動作について説明した。なお、本発明においては、チャージドメインフィルタ回路200を差動
化して、逆相の信号をキャパシタC1aおよびC1b〜キャパシタC6aおよびC6bに入力してもよい。逆相の信号をキャパシタC1aおよびC1b〜キャパシタC6aおよびC6bに入力することで、αの値が負の値となり、数式5で示した伝達関数を満足するチャージドメインフィルタ回路を構成することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、キャパシタの容量を切り替えることによって数式5におけるαの値を変え、第1の実施形態のようにノッチ周波数の位置をサンプリング周波数の整数分の1に限定することなく設定することができる。また、第1の実施形態と同様に、チャージドメインフィルタ回路200に入力するクロック信号は同一の波形であって位相だけが異なっている、短い周期のクロック信号であるので、クロック信号の生成が容易であり、高速に動作させても消費電力を小さく抑えることができる。さらに、チャージドメインフィルタ回路200に入力するクロック信号の波形は単純で、かつ周期が短い矩形波であるため、スペクトラムに低周波成分が含まれず、仮にフィルタの通過帯域内にクロック信号のスペクトラムが混入しても容易に除去することができる。
(第3の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、異なるタイミングでサンプリングされる3つの信号を合成し、周波数特性を変更することができるチャージドメインフィルタ回路について説明した。本発明の第3の実施形態では、異なるタイミングでサンプリングされる4つの信号を合成して、周波数特性を変更することができるチャージドメインフィルタ回路について説明する。
図13は、本発明の第3の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路300の構成をブロック図で説明する説明図である。以下、図13を用いて本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路300について説明する。
図13に示したように、本発明の第3の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路300は、FIRフィルタの一例であり、遅延レジスタ310a、310b、310c、310dと、乗算器320a、320b、320c、320dと、加算器330と、を含んで構成される。
本発明の第1の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路100、および本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200と同じく、チャージドメインフィルタ回路300には、連続時間信号をサンプリング間隔Tで標本化した離散時間信号が入力端子INから入力される。またサンプリング周波数を同様にfs(=1/T)とする。遅延レジスタ310aは、入力信号をサンプリング時点から時間T遅延させて出力するものである。遅延レジスタ310aから出力される信号は、遅延レジスタ310bおよび乗算器320aに入力される。なお、サンプリング間隔Tは任意に設定することができる可変の値である。所望の周波数特性を得るためにサンプリング間隔Tを変化させてもよい。
遅延レジスタ310bは、遅延レジスタ310aから出力される信号を時間n*T(Tのn倍、nは1以上の整数)遅延させて出力するものである。つまり、遅延レジスタ310bからの出力信号はサンプリング時点からT(n+1)だけ遅延した信号となる。遅延レジスタ310bから出力される信号は、遅延レジスタ310cおよび乗算器320bに入力される。
遅延レジスタ310cは、遅延レジスタ310bから出力される信号をさらに時間T遅延させて出力するものである。つまり、遅延レジスタ310cからの出力信号はサンプリング時点からT(n+2)だけ遅延した信号となる。遅延レジスタ310cから出力される信号は、遅延レジスタ310dおよび乗算器320cに入力される。遅延レジスタ310dは、遅延レジスタ310cから出力される信号をさらに時間n*T遅延させて出力するものである。つまり、遅延レジスタ310dからの出力信号はサンプリング時点からT(2n+2)だけ遅延した信号となる。遅延レジスタ310cから出力される信号は、遅延レジスタ310dおよび乗算器320dに入力される。
乗算器320aは、遅延レジスタ310aから出力される信号に1/(2+|2α|)を乗じて出力するものである。同様に、乗算器320bは、遅延レジスタ310bから出力される信号にα/(2+|2α|)を乗じて出力するものであり、乗算器320cは、遅延レジスタ310cから出力される信号にα/(2+|2α|)を乗じて出力するものであり、乗算器320dは、遅延レジスタ310dから出力される信号に1/(2+|2α|)を乗じて出力するものである。そして、加算器330は乗算器320a、320b、320c、および320dからの出力信号を加算して出力するものである。
なお、ここでαの値を絶対値としているのは、本発明の第2の実施形態と同様に、αは負の値も取り得るからである。具体的には、回路を差動化して、遅延レジスタ310b、310dに逆相の信号を入力することでαの値が負の値となり得る。
ここで、frelとはα=0の場合における、ノッチが生じる最も低い周波数を1.0としたときの相対周波数を表している。そして、図13に示したチャージドメインフィルタ回路300の伝達関数は、以下の数式9の通りとなる。
例えば、n=1で係数αをα=0とした場合には、上記の数式9は以下の数式10のようになる。
この場合に、サンプリング周波数fsで正規化した周波数特性を図14に示す。図14に示したグラフにおいて、dB_H4(f)で示した線が、n=1で係数αをα=0とした場合における、サンプリング周波数fsで正規化した周波数特性を表している。図14に示したように、n=1で係数αをα=0とした場合には、正規化周波数f/fsが0.167(=1/6)のところにノッチが生じていることが分かる。係数αが0の場合は乗算器320b、320cからの出力が0となるため、チャージドメインフィルタ回路300は結果的に2つの信号を合成して出力するチャージドメインフィルタとなる。2つの信号を合成して出力する場合には、ノッチ位置が生じる周波数(ノッチ周波数)はサンプリング周波数の整数分の1の周波数に限られる。
次に、このノッチ周波数を20%高くしたい場合を考える。ノッチ周波数を20%高くするには、数式8のfrelを1.2としてαを求める(nの値はn=1で変化させないものとする)。すると、αの値はα=0.382となる。αが0.382の場合のチャージドメインフィルタ回路300の伝達関数は以下の数式11のようになる。
この場合に、サンプリング周波数f
sで正規化した周波数特性を図15に示す。図15に示したグラフにおいて、dB_H4(f)で示した線が、この場合における正規化周波数特性を表している。図14と比べてノッチ周波数の位置が20%高い位置(f/f
s=0.2)にあることが分かる。
以上、本発明の第3の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路300について説明した。
以上説明したように、本発明の第3の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路300によれば、異なるタイミングでサンプリングされる4つの信号を合成し、またαの値を変化させるようにサンプリングタイミングを変化させることでチャージドメインフィルタ回路300の周波数特性を変更することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路について説明する。以下において説明する本発明の第4の実施形態では、本発明の第2の実施形態にしめしたチャージドメインフィルタ回路を2つ組み合わせることで周波数特性を可変とすることを特徴とする。
図16は、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400について説明する説明図であり、図17は、図16に示した本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400を、スイッチとキャパシタとで構成される実際の回路として実装する場合の回路の一例について示す説明図である。以下、図16および図17を参照してチャージドメインフィルタ回路400の構成について説明する。
図16に示したように、本発明の第3の実施形態の実施例であるチャージドメインフィルタ回路400は、遅延レジスタ410a、410b、410c、410d、410eと、乗算器420a、420b、440a、440bと、加算器430a、430bと、を含んで構成される。
図16に示したチャージドメインフィルタ回路400には、上記第1の実施形態〜第3の実施形態と同様に、連続時間信号をサンプリング間隔Tで標本化した離散時間信号が入力端子INから入力される。またサンプリング周波数を同様にfs(=1/T)とする。遅延レジスタ410a、410b、410c、410d、410eは、それぞれ入力信号を時間T遅延させて出力するものである。なお、サンプリング間隔Tは任意に設定することができる可変の値である。所望の周波数特性を得るためにサンプリング間隔Tを変化させてもよい。
乗算器420a、420bは、それぞれ遅延レジスタ410cから出力される信号に係数αを乗じて出力するものである。加算器430aは、遅延レジスタ410a、乗算器420a、および遅延レジスタ410eの出力を加算して出力するものであり、同様に加算器430bは、遅延レジスタ410b、乗算器420b、および遅延レジスタ410dの出力を加算して出力するものである。そして、乗算器440a、440bは、それぞれ加算器430a、430bから出力される信号に1/(2+|α|)を乗じて出力するものである。
図16に示したチャージドメインフィルタ回路400は、図7に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200を、スイッチS1、S2のオン・オフによってn=1の場合とn=2の場合との両方に対応させたものである。
図17は、図16に示した本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400を、スイッチとキャパシタとで構成される実際の回路として実装する場合の回路の一例について示す説明図である。図17に示したように、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400は、12個のスイッチと4個のキャパシタとの組が8つ構成されている8段構成となっている。そして、それぞれのスイッチを適宜切り替えることにより、入力端子INからのキャパシタへの電荷の注入や、出力端子OUTへのキャパシタからの電荷の放出が繰り返して行われる。
図18は、図17に示した本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400に入力するクロック信号の波形について説明する説明図である。図18に示したクロック信号において、隣り合ったクロック信号間のパルスの立ち上がりの間隔が上述のサンプリング間隔Tに相当する。そして、図17の各スイッチの近傍に付した記号(φ1、φ2、φ3、φ4、φ5、φ6、φ7、φ8)と、図18のクロック信号φ1〜φ8とが、それぞれ対応している。図18のクロック信号φ1〜φ8がそれぞれHIGHとなるタイミングで、図17に図示した、クロック信号に対応するスイッチがそれぞれオンとなる。従って、図18のクロック信号φ1〜φ8がHIGHとLOWとを繰り返すことで、図17に示した各キャパシタに電荷が蓄積され、信号のサンプリングが行われる。
また、スイッチの近傍に付した符号に、クロック信号の他にA、Bの文字を付したスイッチがある。例えば、A・φ1と表記されているスイッチ451eは、クロック信号φ1が制御論理Aによってクロック・ゲーティングされていることを示している。すなわち、制御論理Aが1であればクロック信号φ1のHIGH・LOWの状態によってスイッチスイッチ451eがオン・オフし、制御論理Aが0であればクロック信号φ1のHIGH・LOWの状態に関係なくオフになる。
また、図17の記号ψは、それぞれどちらか1つのクロック信号によってスイッチがオンされることを示している。例えば、ψ1c(φ3、φ2)は、クロック信号φ2、φ3のいずれか1つがHIGHとなるとスイッチ451kがオンとなることを示している。また、ψ1c〜ψ8cおよびψ1d〜ψ8dは、それぞれ同じ位置に対応するクロック信号がHIGHとなると、各スイッチがオンとなる。例えば、クロック信号φ3がHIGHとなるとスイッチ451kがオンになる場合には、クロック信号φ5がHIGHとなるとスイッチ451lはオンになり、クロック信号φ4がHIGHとなるとスイッチ452kがオンになり、クロック信号φ6がHIGHとなるとスイッチ452lがオンになる。以下の記号ψが付されているスイッチについても同様である。
なお、記号ψが付されたスイッチでどちらのクロック信号に応答してオン・オフするかは、図16に示したスイッチS1、S2のオン・オフに対応する。従って、どちらのクロック信号に応答するかによって、n=1の場合とn=2の場合とのどちらか一方を選択することができる。
図17に示した24個のキャパシタは、図10に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200と同様に、各列についてはそれぞれのキャパシタは同じ容量を有することが望ましい。例えば、キャパシタC1a、C2a、C3a、C4a、C5a、C6aは同じ容量を有していることが望ましい。また、各段のキャパシタも、図10に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200と同様に、キャパシタC1cとC1d、キャパシタC2cとC2d、キャパシタC3cとC3d、キャパシタC4cとC4d、キャパシタC5cとC5d、キャパシタC6cとC6dは、それぞれ同じ容量を有することが望ましい。また、上記の数式5のαは、1段目を例にすると、キャパシタC1aおよびC1bの容量をキャパシタC1cの容量で正規化することで決定することができる。
また、図17に示した本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400の各スイッチとしてMOSFETやCMOSFETを用いてもよい。
図17に示したチャージドメインフィルタ回路400は、入力と出力のサンプリングレートが同じであるフィルタであり、正規化周波数特性のノッチの位置を8通りに切り替えることが可能である。以上、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400の構成について説明した。次に、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400の動作について説明する。
まず、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dに着目すると、クロック信号φ1がHIGHとなっているタイミングでスイッチ452a、452b、452c、452dがいずれもオンとなり、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dが接地されるので、キャパシタC2a、C2b、C2c、C2dに残留している電荷が放出されることによりキャパシタC2a、C2b、C2c、C2dがリセットされる。
そして、クロック信号φ2がHIGHとなっているタイミングで、スイッチ452a、452b、452c、452dがいずれもオフとなり、スイッチ452g、452hが共にオンとなるので、入力端子INとキャパシタC2c、C2dとが接続され、キャパシタC2c、C2dに電荷が蓄積される。また、スイッチ452e、452fがオンになるかどうかは制御論理A、Bの状態によって決まり、制御論理A、Bの状態によってキャパシタC2a、C2bに電荷が蓄積されるかどうかが決まる。ここでは分かりやすくするために制御論理A、Bが共に1であるとして説明する。制御論理A、Bが共に1の場合は、クロック信号φ2がHIGHとなっているタイミングでスイッチ452e、452fもオンとなり、入力端子INとキャパシタC2a、C2bとが接続され、キャパシタC2a、C2bに電荷が蓄積される。
そして、クロック信号φ3またはφ4がHIGHとなっているタイミングでスイッチ452e、452f、452g、452hがいずれもオフとなり、スイッチ452kがオンとなるので、キャパシタC2cに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。ここでは、クロック信号φ4がHIGHとなっているタイミングでスイッチ452kがオンとなり、キャパシタC2cに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力されるものとする。つまり、図7のチャージドメインフィルタ回路200においてn=1に対応する場合について説明する。
ここで、クロック信号φ4がHIGHとなっているタイミングでオンとなるスイッチは、他にスイッチ451i、451j、458lがある。従って、クロック信号φ4がHIGHとなっているタイミングで、キャパシタC1a、C1b、C8dに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。キャパシタC1a、C1bに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ4より3周期前に相当するクロック信号φ1がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものであり、キャパシタC8dに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ4より4周期前に相当するクロック信号φ8がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものである。
このように、他の段のキャパシタにおいても、同様にサンプリングクロック毎に電荷の蓄積と放出が繰り返し行われるので、入力と出力のサンプリングレートは同一となる。
ここで、αを用いて各段におけるキャパシタの容量比を説明する。例えば、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量との比はα:1とする。すると、キャパシタC1cの容量とキャパシタC1dの容量とは同じであることが望ましいので、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量と、キャパシタC1dの容量との比はα:1:1である。従って、各段におけるキャパシタの容量の合計は、キャパシタC1cの容量を1とすると2+αとなり、上述した数式5の分母を満足する。
そして、ここではn=1の場合について説明しているので、数式5の分子第1項はサンプリングタイミングから1周期分、分子第2項は2周期分、分子第3項は3周期分、それぞれ遅延させたものとなっている。従って、数式5の分子第1項はキャパシタC
2cに蓄積されていた電荷の出力に相当し、分子第2項はキャパシタC
1aおよびC
1bに蓄積されていた電荷に相当し、分子第3項はキャパシタC
8dに蓄積されていた電荷の出力に相当する。キャパシタC
1aおよびC
1bの容量の和と、キャパシタC
2c(またはキャパシタC
8d)の容量との比はα:1であるので、上述した数式5の分子も満足する。伝達関数を数式12に示す。
なお、数式12では、上記数式5にn=1を代入したものと比較して全体的にサンプリングタイミングが1周期分遅延しているが、全体的に1周期分遅延しているため、周波数特性には全く影響は無い。
以上、n=1の場合について説明したが、一方でクロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングでスイッチ452kがオンとなり、キャパシタC2cに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される場合、つまり、図7のチャージドメインフィルタ回路200においてn=2に対応する場合についても同様の動作を行う点について説明する。
クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングでオンとなるスイッチは、他にスイッチ458i、458j、456lがある。従って、クロック信号φ3がHIGHとなっているタイミングで、キャパシタC8a、C8b、C6dに蓄積されている電荷が出力端子OUTに出力される。キャパシタC8a、C8bに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ3より3周期前に相当するクロック信号φ8がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものであり、キャパシタC6dに蓄積されている電荷は、サンプリング周期でクロック信号φ3より5周期前に相当するクロック信号φ6がHIGHとなったタイミングで蓄積されたものである。
ここで、αを用いて各段におけるキャパシタの容量比を説明する。例えば、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量との比はα:1とする。すると、キャパシタC1cの容量とキャパシタC1dの容量とは同じであることが望ましいので、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量と、キャパシタC1dの容量との比はα:1:1である。従って、各段におけるキャパシタの容量の合計は、キャパシタC1cの容量を1とすると2+αとなり、n=1の場合と同様に、上述した数式5の分母を満足する。
そして、ここではn=2の場合について説明しているので、数式5の分子第1項はサンプリングタイミングから1周期分、分子第2項は3周期分、分子第3項は5周期分、それぞれ遅延させたものとなっている。従って、数式5の分子第1項はキャパシタC
2cに蓄積されていた電荷の出力に相当し、分子第2項はキャパシタC
8aおよびC
8bに蓄積されていた電荷に相当し、分子第3項はキャパシタC
6dに蓄積されていた電荷の出力に相当する。キャパシタC
8aおよびC
8bの容量の和と、キャパシタC
2c(またはキャパシタC
6d)の容量との比はα:1であるので、上述した数式5の分子も満足する。伝達関数を数式13に示す。
以上、n=2の場合について説明した。このように、図17に示した本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400は、図16に示したチャージドメインフィルタ回路400の構成を満足することが分かる。
なお、数式11および数式12のαの値は、上記数式5におけるαの値と同様に、キャパシタC1aおよびC1bの容量の和と、キャパシタC1cの容量との比で決まる。簡単な例を示すと、例えばキャパシタC1a、C1bの容量を2進重み付けにして、キャパシタC1aとキャパシタC1cとの容量比を0.5:1、キャパシタC1bとキャパシタC1cとの容量比を1:1とすると、制御論理A、Bの状態を変化させることで、キャパシタC1cの容量を1としたキャパシタC1aおよびC1bの容量の和は(つまり、数式11、数式12のαの値)は、0、0.5、1、1.5の4通りをとることができる。なお、キャパシタC1aおよびC1bの代わりに容量を連続的に変更可能な可変キャパシタを用いることで、数式11および数式12のαの値を連続的に変化可能であることは言うまでもない。可変キャパシタを用いることで、正規化周波数特性を連続的に変化させることができる。
n=1の場合にαの値を0、0.5、1、1.5に変化させた場合の正規化周波数特性は、図12に示した本発明の第2の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路200において、αの値を0、0.5、1、1.5の4通りに変化させた場合の正規化周波数特性と同一の特性を有する。図19は、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400において、αの値を0、0.5、1、1.5の4通りに変化させた場合の正規化周波数特性を示す説明図である。図19において、dB_H4(f)はαの値が0の場合の正規化周波数特性を、dB_H5(f)はαの値が0.5の場合の正規化周波数特性を、dB_H6(f)はαの値が1の場合の正規化周波数特性を、dB_H7(f)はαの値が1.5の場合の正規化周波数特性を、それぞれ表している。図19に示したように、αの値を変えることでノッチ周波数の位置が異なる周波数特性を得ることができる。また、nの値を切り替えることでフィルタの次数が変わり、ノッチ周波数が大幅に変化する。
以上、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400の動作について説明した。なお、本発明においては、チャージドメインフィルタ回路400を差動
化して、逆相の信号をキャパシタC1aおよびC1b〜キャパシタC8aおよびC8bに入力してもよい。逆相の信号をキャパシタC1aおよびC1b〜キャパシタC8aおよびC8bに入力することで、αの値が負の値となり、数式12および数式13で示した伝達関数を満足するチャージドメインフィルタ回路を構成することができる。
以上説明したように、本発明の第4の実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路400によれば、キャパシタの容量を切り替えることによって数式12および数式13におけるαの値を変え、本発明の第1の実施形態のようにノッチ周波数の位置をサンプリング周波数の整数分の1に限定することなく設定することができる。また、本発明の第1の実施形態と同様に、チャージドメインフィルタ回路400に入力するクロック信号は同一の波形であって位相だけが異なっている、短い周期のクロック信号であるので、クロック信号の生成が容易であり、高速に動作させても消費電力を小さく抑えることができる。さらに、チャージドメインフィルタ回路400に入力するクロック信号の波形は単純で、かつ周期が短い矩形波であるため、スペクトラムに低周波成分が含まれず、仮にフィルタの通過帯域内にクロック信号のスペクトラムが混入しても容易に除去することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。