本発明は、運転者のステアリング操作が入力されるとともにその入力に応じた操舵出力を転舵装置に出力するために車両用ステアリングシステムに設けられる車両用ステアリング装置、および、それの組立方法に関する。
近年では、ステアリング操作部材の操作量に対する車輪の転舵量を変更可能とするために、ステアリング装置に可変伝達機能を設けたシステム、いわゆる操舵転舵比可変システム(VGRS(Variable Gear Ratio System))と呼ばれるステアリングシステムが存在する。このステアリングシステムは、下記特許文献に記載されたようなものである。
特開2002−37115号公報
特開2004−148931号公報
特開2005−162111号公報
特開2005−162124号公報
操舵転舵比可変システムは、運転者の操舵に対する負荷軽減,車両の安定性の担保等、種々の利点を有し、既に一部の車両において採用されているが、採用され始めた段階であるため、実用性を向上させるための余地を多分に残すものとなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、そのシステムを構成するステアリング装置の実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明の車両用ステアリング装置は、操舵転舵比可変機能を実現させるためのアクチュエータとしての回転比変更ユニット、詳しく言えば、ハーモニックギヤ機構を採用して入力軸と出力軸との回転比を変更するユニットを備えたステアリング装置であって、前記回転比変更ユニットが、入力軸および出力軸が共に概して筒状に形成され、それらがウェーブジェネレータのコラムユニット側に配設されるとともに出力軸が入力軸に挿入された構造をなし、出力軸に連結される外部出力シャフトが、ウェーブジェネレータおよび出力軸を貫通し、端面がその出力軸の端面のコラムユニット側に存在する空間に臨む状態で出力軸に連結されたことを特徴とする。また、本発明の車両用ステアリング装置の組立方法は、上記本発明の車両用ステアリング装置の組立に好適な方法であり、外部出力シャフトと出力軸との嵌め合いを緩やかなものとした上で、上記状態に外部出力シャフトを出力軸に嵌入し、それらが互いに嵌め合わされた後に、それらに対してコラムユニットが設けられる側から作業してそれらの連結を強化することを特徴とする。
本発明のステアリング装置によれば、出力軸と連結される外部出力シャフトの端面が、コラムユニット側、つまり、入力側に臨んでいることから、そのことを利用した組立作業が可能となる。具体的には、本発明の組立方法のように、出力軸に対して外部出力シャフトを緩やかに嵌め入れた後のそれらの連結の強化を、コラムユニット側からの作業によって容易に行うことが可能となる。したがって、本発明のステアリング装置、および、本発明の組立方法によれば、組付作業の簡便化が実現され、そのことによって組立コストの低減を図ることが可能となる。また、外部出力シャフトと出力軸との嵌め合いを緩やかにすれば、外部出力シャフトの出力軸への嵌入において、回転比変更ユニットに過度な負荷を与えることのないことから、信頼性の高いステアリング装置が実現することとなる。このような利点から、本発明のステアリング装置およびそれの組立方法によれば、操舵転舵比可変システムを構成するステアリング装置の実用性を向上させることが可能となるのである。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項は、請求可能発明の前提となる態様を示す項であり、(1)項を引用する(2)項以下の項が、請求可能発明の車両用ステアリング装置の態様を示す項となる。ちなみに、以下の各項において、(1)項を引用する(21)項が請求項1に相当し、請求項1に(22)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項2に、請求項2に(23)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれかに(24)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれかに(25)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項5に、請求項5に(26)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項6に、請求項1ないし請求項6のいずれかに(3)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項7に、請求項7に(4)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項8に、請求項7または請求項8に(5)項の技術的特徴による限定を加えたものが請求項9に、それぞれ相当する。また、(51)項が請求項10に相当する。
(1)ステアリング操作部材を一端部に保持するステアリングシャフトと、そのステアリングシャフトを回転可能に保持するコラムチューブとを備えたコラムユニットと、
ケーシングと、そのケーシングに回転可能に保持されるとともに前記ステアリングシャフトの他端部と連結される入力軸と、その入力軸と同軸的に配設されるとともに前記ケーシングに回転可能に保持された出力軸と、前記ケーシングに回転可能に保持されたウェーブジェネレータを有してそのウェーブジェネレータの回転によって前記入力軸と前記出力軸とが相対回転するように構成されたハーモニックギヤ機構と、前記ケーシングに保持されて前記ウェーブジェネレータを回転駆動する駆動源とを備え、前記入力軸と前記出力軸との回転比を変更する回転比変更ユニットと、
一端部が前記回転比変更ユニットの前記出力軸と連結される外部出力シャフトと
を備えた車両用ステアリング装置。
先に説明したように、本項に記載の態様は、請求可能発明の前提と考えることのできる構成要素を列挙した態様である。本項の態様において、「コラムユニット」は、ステアリングコラムとして機能するユニットであり、その構造が特に限定されるものではなく、既に公知の種々の構造のものを採用することが可能である。また、「外部出力シャフト」は、車輪を転舵させるための転舵装置(例えば、ラックピニオン機構を有して入力された操舵力によって転舵ロッドを左右に移動させるような装置)に対して操舵力を出力するためのシャフトであり、その構造が特に限定されるものではない。外部出力シャフトは、上記一端部とは反対側の端部が転舵装置に連結されるものであるが、その連結は、直接的な連結であってもよく、インタミディエットシャフト,ユニバーサルジョイント等を介する間接的な連結であってもよい。
本項の態様における「回転比変更ユニット」は、上述した操舵転舵比可変機能を実現する主体となるユニットであり、いわゆるVGRSアクチュエータとして機能するユニットである。回転比変更ユニットは、上記ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレインウェーブギヤリング機構等と呼ばれることもある)を採用することを除いて、それの構造が特に限定されるものではない。ハーモニックギヤ機構は、減速比の大きな(ウェーブジェネレータの回転量に対する入力側ギヤと出力側ギヤとの相対回転量の比が小さいことを意味する)減速機構であり、電動モータ等の駆動源を小さくすることができるといった理由により、その機構を採用することで、回転比変更ユニットをコンパクトに構成することができる。したがって、本項の態様は、ステアリング装置のコンパクト化が実現可能な態様となる。なお、ハーモニックギヤ機構は、後に説明するような、2つのリングギヤを入力側ギヤ,出力側ギヤとする構造の機構であってもよく、また、例えば、入力側ギヤと出力側ギヤとの一方をリングギヤとし、他方を外周部にリングギヤと噛合する歯が形成された概してカップ形状を有するフレキシブルとするとともに、そのフレキシブルギヤの内周部にウェーブジェネレータの楕円カム板が嵌められたような構造の機構であってもよい。
本項の態様においては、ステアリングシャフトの上記他端部と回転比変更ユニットの入力軸とが、また、外部出力シャフトの上記一端部と回転比変更ユニットの出力軸とが連結される構成とされているが、それらの連結は、直接的な連結であってもよく、何らかの部品,部材を介する間接的な連結であってもよい。
(2)前記ステアリングシャフトと前記回転比変更ユニットの入力軸とが連結され、前記コラムチューブと前記ケーシングとが互いに結合されたことで前記コラムユニットと前記回転比変更ユニットとが一体化された(1)項に記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、コラムユニットと回転比変更ユニットとを一体化させた態様である。本項の態様によれば、回転比変更ユニットがハーモニックギヤ機構を採用することによってコンパクト化されていることに加え、さらに、それをコラムユニットと一体化させたことで、ステアリング装置自体のコンパクト化が図れることとなる。また、ステアリング装置を車体の一部に取り付ける作業、例えば、インスツルメントパネルのリインフォースメントに取り付ける作業の簡便化を図ることができる。なお、コラムチューブとケーシングとの結合は、その手段が特に限定されるものではなく、例えば、ねじ機構による締結等、種々の手段によることが可能である。
(3)当該車両用ステアリング装置が、前記外部出力シャフトと、その外部出力シャフトを回転可能に保持するハウジングとを含んで構成される外部出力ユニットを備えた(1)項または(2)項に記載の車両用ステアリング装置。
(4)前記回転比変更ユニットの前記出力軸と前記外部出力シャフトとが連結され、前記ケーシングと前記ハウジングとが互いに結合されることで前記回転比変更ユニットと前記外部出力ユニットとが一体化された(3)項に記載の車両用ステアリング装置。
(5)前記外部出力ユニットが、動力源を有してその動力源によって前記外部出力シャフトの回転出力を助勢する回転助勢装置を備えた(3)項または(4)項に記載の車両用ステアリング装置。
(6)前記回転助勢装置が、前記外部出力シャフトに固定されたウォームホイールと、前記ウォームホイールと噛合するとともに前記動力源によって回転力が付与されるウォームとを含んで構成された(5)項に記載の車両用ステアリング装置。
上記4つの項に記載の態様は、外部出力シャフトが何らかの機能を有するユニットの一部を構成する態様に関するものであり、そのユニットである外部出力ユニットの機能の一例が、上記回転助勢装置によって実現されるステアリングアシスト機能(いわゆるパワーステアリング機能)である。外部出力ユニットが設けられる場合において、そのユニットを回転比変更ユニットと一体化させれば、コラムユニットと回転比変更ユニットとの一体化と同様、ステアリング装置のコンパクト化,車体の一部への取付作業の簡便化等が図れることとなる。一層のコンパクト化という観点からすれば、コラムユニット,回転比変更ユニット,外部出力ユニットの3つのユニットを一体化させることがより望ましい。なお、一体化における外部出力ユニットのハウジングと回転比変更ユニットのケーシングとの結合は、その手段が特に限定されるものではなく、例えば、ねじ機構による締結等、種々の手段によることが可能である。また、回転助勢装置の構造については、上述のウォーム,ウォームホイールを採用する構造を始めとして、既に公知のステアリングアシスト機構が採用する種々の構造を採用することが可能である。
(7)前記外部出力シャフトが、前記回転比変更ユニットの前記出力軸に連結される入力側シャフトと、その入力側シャフトと同軸的に配設された出力側シャフトと、両端部がそれら入力側シャフトと出力側シャフトとの各々に結合されたトーションバーとを含んで構成された(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、外部出力シャフトの構造に関するものである。本項に記載の態様によれば、トーションバーの捩れ量,つまり、トーションバーの捩れに依拠する入力側シャフトと出力側シャフトとの相対回転変位量によって、操舵トルクを検出することが可能となる。このことから、本項の態様は、外部出力ユニットがステアリングアシスト機能を有するユニットである態様において、特に有効である。
(8)前記ハーモニックギヤ機構が、前記入力軸に固定保持された第1リングギヤと、その第1リングギヤと異なる歯数の歯が形成されて前記出力軸に固定保持された第2リングギヤと、前記ウェーブジェネレータが有する楕円カム板の外周に周回可能に嵌められて前記第1リングギヤおよび前記第2リングギヤと噛合するフレキシブルギヤとを含んで構成された(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、ハーモニックギヤ機構が2つのリングギヤを採用する機構、いわゆる2リングギヤ型の機構とされた態様である。2リングギヤ型のハーモニックギヤ機構は、特にコンパクトな回転比変更ユニットを実現することが可能となる。
(9)前記ステアリングシャフトが、前記ステアリング操作部材を保持するアッパシャフトと、そのアッパシャフトと相対回転不能かつ軸線方向に相対移動可能とされるとともに前記回転比変更ユニットの入力軸と連結されるロアシャフトとを含んで構成され、かつ、前記コラムチューブが、前記アッパシャフトを回転可能に保持するアッパチューブと、そのアッパチューブと相対回転不能かつ軸線方向に相対移動可能とされたロアチューブとを含んで構成されることで、前記コラムユニットが収縮可能とされた(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、コラムユニットに収縮機能を付加した態様である。本項の態様によれば、ステアリング装置に、テレスコピック機構を容易に具備させることができ、また、車両衝突に起因する運転者のステアリング操作部材への二次衝突に対処するための機構、例えば、ステアリング操作部材の車両前方への退避機構,衝撃エネルギ吸収機構(いわゆるEA機構である)等を容易に具備させることができる。なお、本項の態様においては、詳しく言えば、本項の技術的特徴を採用する各種の態様においては、ロアシャフトの一端部と回転比変更ユニットの入力軸とが連結されることとなり、また、コラムユニットと回転比変更ユニットとを一体化させる場合には、ロアチューブと回転比変更ユニットのケーシングとが結合されることとなる。
(10)前記ステアリングシャフトと前記回転比変更ユニットの入力軸とが、それらを相互に弾性的に支持する弾性カップリングを介して連結された(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
(11)前記ステアリングシャフトの前記他端部と前記入力軸とが、それらの一方が他方に挿入された状態で連結され、前記弾性カップリングが、ブシュ型のカップリングとされた(10)項に記載の車両用ステアリング装置。
(12)前記弾性カップリングが、前記ステアリングシャフトと前記入力軸との一方の外周部に嵌められる内筒と、それらの他方の内周部に嵌められる外筒と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間に介装された弾性体とを含んで構成された(11)項に記載の車両用ステアリング装置。
(13)当該車両用ステアリング装置が、前記ステアリングシャフトと前記入力軸との相対回転量が設定回転量を超える場合に、それらの相対回転を禁止する相対回転禁止機構を備えた(10)項ないし(12)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
上記4つの項に記載の態様は、「弾性カップリング」、つまり、弾性を有する部材を主体とする連結具を介して、ステアリングシャフトと回転比変更ユニットの入力軸とが連結された各種態様である。ステアリングシャフトと回転比変更ユニットの入力軸とを弾性的に連結すれば、車輪側からステアリング操作部材に伝達される振動を効果的に吸収することが可能であり、運手者の操作フィーリングを良好な状態に維持することが可能となる。上記ブシュ型のカップリングを用いる場合、そのカップリングを、ステアリングシャフトおよび入力軸のそれぞれと圧入等によって嵌め合わせればよく、ステアリングシャフトと入力軸とが連結されて構成される連結部を単純ですっきりとした構造とすることができることから、ブシュ型カップリングを用いる態様は、特に、コラムユニットと回転比変更ユニットとが一体化された態様に対して好適である。なお、「弾性カップリング」は、そのの構造が特に限定されるものではなく、上述の内筒,外筒,弾性体を含んで構成されたものを始め、既に公知の構造を広く採用することが可能である。また、「相対回転禁止機構」を採用する態様では、過大な操作力(操作トルク)が負荷される場合において、弾性体の過度の変形を防止することができ、また、その場合における操作力の転舵装置への伝達が担保されることとなる。相対回転禁止機構は、それの具体的な構造が特に限定されるものではないが、例えば、ステアリングシャフトと入力軸との相対回転量が設定相対回転量となった場合に、ステアリングシャフトあるいはそれと一体的に動作する部材と、入力軸あるいはそれと一体的に動作する部材との一方に設けられた係止部が、それらの他方に設けられた被係止部を係止する構造、平たく言えば、いわゆるストッパを有するような構造とすることが可能である。
(21)前記回転比変更ユニットが、前記入力軸および前記出力軸が共に概して筒状に形成され、それらが前記ウェーブジェネレータの前記コラムユニット側に配設されるともに前記出力軸が前記入力軸に挿入された構造をなし、
前記外部出力シャフトが、前記ウェーブジェネレータおよび前記出力軸を貫通して端面がその出力軸の端面のコラムユニット側に存在する空間に臨む状態でその出力軸に連結された(1)項ないし(13)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、ステアリングシャフトと回転比変更ユニットとの連結部に加え、外部出力シャフトと回転比変更ユニットとの連結部も、そのユニットのコラムユニット側に存在する態様である。ステアリング装置の構成によっては、2つの連結部がコラムユニット側にあることに依拠して、当該ステアリング装置の組立作業,車体の一部への取付作業等の簡便化を図ることが可能である。具体的には、例えば、外部出力シャフトが既に外部出力ユニットに組み込まれてユニット化されている場合において、そのユニットと回転比変更ユニットとを組み合わせるべく、外部出力シャフトと回転比変更ユニットの出力軸とを連結するような場合に好適である。本項の態様によれば、外部出力シャフトのコラムユニット側の少なくとも端面が、コラムユニット側から視認可能であり、例えば、それらの連結の作業の確実性を向上させることができる。また、後に説明する連結強化手段を採用する場合において、その手段の施行あるいはその手段を機能させることをコラムユニット側から行うことができることから、その施行を容易化することが可能となる。
(22)前記外部出力シャフトの一端部と前記出力軸とが緩やかに嵌り合う構造とされるとともに、当該車両用ステアリング装置が、前記外部出力シャフトの一端部と前記出力軸とが嵌り合う状態においてそれらの連結を強化する連結強化手段を有する(21)項に記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、外部出力シャフトと回転比変更ユニットの出力軸との連結に関する限定を加えた一態様である。平たく言えば、それらの連結部が、外部出力シャフトと出力軸とを緩やかに嵌合した後に、何らかの作業等が施されてその連結が強固された構造を有する態様である。本項の態様によれば、外部出力シャフトの出力軸への嵌入作業の際、回転比変更ユニットに対して、詳しく言えば、それのハーモニックギヤ機構等に対して過大な力を作用させずに済むことから、連結時における回転比変更ユニットの変形,破損等の発生する可能性を小さくすることが可能である。その意味において、本項の態様によれば、信頼性の高いステアリング装置が実現することとなる。また、先に説明したように、連結部に対する連結強化手段の施行、平たく言えば、連結を強化するための作業を、外部出力シャフトの端面が視認可能なコラムユニット側から行うことができるため、本項の態様によれば、その作業は容易に実施可能である。なお、「連結強化手段」は、例えば、外部出力シャフトと出力軸との相対回転に対する抗力を実質的に発揮させるあるいは向上させる手段,両者の相対回転におけるガタツキ等を解消する手段等であればよく、それの具体的な構成が特に限定されるものではない。後に説明する嵌め合いを緊密化する手段を始めロックピン,キー等の打ち込み,カシメ,ねじ機構による締結等、既に公知の種々の手段を採用することが可能である。
(23)前記連結強化手段が、前記外部出力シャフトの一端部と前記出力軸との嵌め合いを緊密化するものである(22)項に記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様には、例えば、外部出力シャフトの外法寸法(例えば、外径)を拡大させ、あるいは、出力軸の内法寸法(例えば、内径)を縮小させることによって、両者の嵌め合いが緊密化されたような態様が含まれる。本項の態様によれば、外部出力シャフトと出力軸との連結を容易に強化することが可能である。なお、本項の態様では、外部出力シャフトの外周面と出力軸の内周面との間に作用する摩擦力の増加に依拠して両者の連結を強化するものであってもよく、また、外部出力シャフトと出力軸とを緩やかなセレーション嵌合させた状態において、そのクリアランスを小さくすることによって両者の相対回転に対するガタツキを解消して両者の連結を強化するものであってもよい。
(24)前記外部出力シャフトの一端部が、それの端面に開口するとともに雌ねじが形成されたテーパ状のねじ孔を有し、
当該車両ステアリング装置が、前記雌ねじと螺合する雄ねじが形成されて前記ねじ孔に捩じ込まれたテーパ状の雄ねじ体を有する(21)項ないし(23)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、テーパねじの楔の効果を利用したものであり、上述した、連結強化手段、緊密化手段の一態様と考えることもできる。本項の態様によれば、簡単な作業により、コラムユニット側から外部出力シャフトと回転比変更ユニットの出力軸との連結を強化することが可能である。なお、本項の態様における「ねじ孔」は、例えば、管用ねじが形成されたねじ孔とすることができ、また、「雄ねじ体」には、例えば、配管に採用されるプラグに類似するような部品とすることが可能であり、ねじ孔,雄ねじ体は容易に形成,製造することが可能である。
(25)前記入力軸が、前記出力軸の端面より前記コラムユニット側に延び出す延出部を有し、その延出部において前記ステアリングシャフトと連結されるとともに、その延出部の内法寸法が前記出力軸の端面の外法寸法より大きくされた(21)項ないし(24)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、回転比変更ユニットの入力軸とステアリングシャフトとの連結部と、回転比変更ユニットの出力軸と外部出力シャフトとの連結部とを、互いに、近傍となる位置に配置可能な態様である。本項の態様における入力軸の「延出部」は、例えば、出力軸の端面より筒状をなして突出するような形態のものが含まれ、その外径が、出力軸の外径より大きくされた形態のものが含まれる。なお、本項の態様によれば、入力軸が出力軸より延び出すものであっても、確実に、外部出力シャフトの端面を、出力軸のコラムユニット側の端面に存在する空間に臨ませることができる。
(26)前記ステアリングシャフトの一端部が前記延出部に挿入された状態で、前記入力軸とそのステアリングシャフトとが連結された(25)項に記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様では、上述したように回転比変更ユニットの入力軸の延出部は、比較的内法寸法が大きくされている。本項の態様は、そのことを利用して、その入力軸とステアリングシャフトとの連結部を、ステアリングシャフトが入力軸に挿入するように構成した態様と考えることができる。本項の態様によれば、入力軸をステアリングシャフトに挿入する態様に比較して、その連結部の外法寸法(例えば、外径)を比較的小さくすることが可能である。
(31)前記ステアリングシャフトが、前記ステアリング操作部材を保持するアッパシャフトと、そのアッパシャフトと相対回転不能かつ軸線方向に相対移動可能とされるとともに前記回転比変更ユニットの入力軸と連結されるロアシャフトとを含んで構成され、かつ、前記コラムチューブが、前記アッパシャフトを回転可能に保持するアッパチューブと、そのアッパチューブの一端部が挿入されるとともにそのアッパチューブと相対回転不能かつ軸線方向に相対移動可能とされたロアチューブとを含んで構成されることで、前記コラムユニットが収縮可能とされ、
前記ステアリングシャフトと前記回転比変更ユニットの入力軸とが連結され、前記コラムチューブと前記ケーシングとが互いに結合されたことで前記コラムユニットと前記回転比変更ユニットとが一体化され、
前記入力軸が前記ケーシングより前記コラムユニット側に突出する突出部を有し、その突出部と前記ロアシャフトとがそれらの一方が他方に挿入された状態で連結されて前記入力軸と前記ステアリングシャフトとの連結部が構成され、その連結部の外法寸法が前記アッパチューブの内法寸法より小さくされた(1)項ないし(26)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、コラムユニットを収縮可能に構成し、そのコラムユニットと回転比変更ユニットとを一体化させた態様において、上述の回転比変更ユニットの入力軸の突出部とステアリングシャフトを構成するロアシャフトとの連結部を、その突出部において連結されるように構成した態様である。本項の態様では、コラムユニットが収縮する場合、ロアチューブに挿入されたアッパチューブが回転比変更ユニット側に移動することになるが、その際、アッパチューブの回転比変更ユニット側の端部が、ロアチューブの内周面と上記連結部の外周面とによって区画される筒状の空間内に収まるように移動する。そのため、本項の態様によれば、アッパチューブの移動距離、つまり、コラムユニットの収縮ストロークを比較的長くすることが可能となるのである。このことは、例えば、当該ステアリング装置が、二次衝突の衝撃を吸収する機構、つまり、EA機構を採用する場合、その衝撃吸収のためのストローク(いわゆるEAストローク)を長くすることができることから、衝撃吸収という観点において有利なステアリング装置を構築することが可能となる。また、車両衝突の際にステアリング操作部材を車両前方側に退避させる機構を備える場合にも、退避させる距離を長くとれることから、その点において有利なステアリング装置を構築することが可能となる。
(32)前記ロアシャフトが前記入力軸の前記突出部に挿入された状態で連結され、その突出部の外法寸法が前記アッパチューブの内法寸法より小さくされた(32)項に記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、上記ロアシャフトと突出部とが、突出部にロアシャフトを挿入させた状態で連結されるように構成した態様である。本項の態様によれば、先に説明したように、連結部の外法寸法(例えば、外径)を比較的小さくすることができることから、コラムユニットの外法寸法を比較的小さくでき、その結果として、ステアリング装置のコンパクト化が十分に図れることとなる。
(41)前記ステアリングシャフトと前記回転比変更ユニットの入力軸が、前記ステアリングシャフトの他端部がその入力軸に挿入された状態で連結され、その入力軸のその他端部が挿入される部分の外周部に、そのステアリングシャフト側に向かう軸線方向の力を受けることが可能な受力部が設けられた(1)項ないし(32)項のいずれかに記載の車両用ステアリング装置。
本項に記載の態様は、ステアリングシャフトと回転比変更ユニットの入力軸とを、入力軸にステアリングシャフトを挿入させた状態で連結させる構造の態様において、その連結の作業の確実化を図ることのできる態様である。ステアリングシャフトを入力軸に挿入する際、その連結をしっかりとしたものするため、一般的には、両者の間にクリアランスを殆ど設けず、それら両者に対して圧入という作業が行われる。この場合、回転比変更ユニットにステアリングシャフトに向かう方向の圧入力が作用した場合には、回転比変更ユニットに対して、詳しく言えば、それのハーモニックギヤ機構等に対して過大な力が作用する。このことは、連結作業が、回転比変更ユニットが変形,破損するといった危険性を孕むことを意味する。ところが、本項の態様によれば、入力軸が上記受力部を有しているため、その受力部を利用すれば、ステアリングシャフトの入力軸への挿入の際、回転比変更ユニットに対して入力軸のみに力が作用する状態で挿入作業を行うことができるため、回転比変更ユニットの変形等を回避することが可能である。したがって、本項の態様によれば、信頼性の高いステアリング装置が実現するのである。なお、本項における入力軸へのステアリングシャフトの挿入は、何も介さない状態での挿入であってもよく、また、先に説明したブシュ型カップリング等の何らかの部品,部材等を介した状態での挿入であってもよい。つまり、本項の態様を実現するための組み立て作業は、既にステアリングシャフトにカップリング等が装着され、そのカップリング等が装着されたステアリングシャフトを入力軸に挿入するような作業であってもよく、逆に、既に入力軸にカップリングが装着され、そのカップリングが装着された入力軸にステアリングシャフトを挿入するような作業であってもよいのである。
(42)前記受力部が、前記入力軸の外周に形成された1以上の段差部である(41)項に記載の車両用ステアリング装置。
(43)前記受力部が、前記入力部の外周に形成された環状の溝である(41)項または(42)項に記載の車両用ステアリング装置。
上記2つの項に記載の態様は、受力部の構造に関する限定を加えた態様である。受力部を段差として構成すれば、例えば、その段差に掛かるような治具を用いることで、容易に、入力軸に対して軸線方向の力を付与することが可能である。また、段差部は、入力軸の外周面に容易に形成することが可能である。環状の溝は、段差部の一態様と考えることができ、受力部を環状の溝として構成すれば、それに掛かるような治具を用いることで、容易に、入力軸に対して軸線方向の力を付与することが可能である。また、環状の溝は、入力軸の外周面に容易に加工形成することが可能であり、入力軸の外法寸法をあまり大きくしなくても済むという利点を有する。
(51)ステアリング操作部材を一端部に保持するステアリングシャフトと、そのステアリングシャフトを回転可能に保持するコラムチューブとを備えたコラムユニットと、
ケーシングと、そのケーシングに回転可能に保持されるとともに前記ステアリングシャフトの他端部と連結される入力軸と、その入力軸と同軸的に配設されるとともに前記ケーシングに回転可能に保持された出力軸と、前記ケーシングに回転可能に保持されたウェーブジェネレータを有してそのウェーブジェネレータの回転によって前記入力軸と前記出力軸とが相対回転するように構成されたハーモニックギヤ機構と、前記ケーシングに保持されて前記ウェーブジェネレータを回転駆動する駆動源とを備え、前記入力軸と前記出力軸との回転比を変更する回転比変更ユニットと、
一端部が前記回転比変更ユニットの前記出力軸と連結される外部出力シャフトと
を備えた車両用ステアリング装置の組立方法であって、
前記入力軸および前記出力軸が共に概して筒状に形成されるとともに、それらが前記ウェーブジェネレータの前記コラムユニットが設けられる側において前記入力軸に前記出力軸が挿入して配設され、その出力軸および前記ウェーブジェネレータが、前記外部出力シャフトが貫通可能な構造をなす前記回転比変更ユニットを準備する回転比変更ユニット準備工程と、
一端部が前記出力軸と緩やかに嵌り合うように構成された前記外部出力シャフトを準備する外部出力シャフト準備工程と、
前記外部出力シャフトを、前記ウェーブジェネレータの側からそれを貫通させ、さらに、前記出力軸を貫通して端面がその出力軸の端面の前記コラムユニットが設けられる側の空間に臨む状態でそれに緩やかに嵌入させる外部出力シャフト嵌入工程と、
前記外部シャフトと前記出力軸とが嵌め合わされた状態において、それらに対して前記コラムユニットが設けられる側から作業してそれらの連結を強化する連結強化工程と
を含んでなる車両用ステアリング装置の組立方法。
本項に記載の態様は、先に説明したように、外部出力シャフトと回転比変更ユニットの出力軸との嵌め合いを緩やかなものとした上で、外部出力シャフトを出力軸に嵌入し、それらが互いに嵌め合わされた後に、コラムユニットが設けられる側から作業して上述した連結強化手段を施行する若しくは機能させるようにして、それらを連結するように構成された態様である。本項の態様の利点は、先の説明と同様であるため、詳しい説明は省略するが、本項の態様によれば、組付作業の簡便化が実現され、そのことによって組立コストの低減を図ることが可能となり、また、信頼性の高いステアリング装置が実現させることが可能である。
(52)前記外部出力シャフト準備工程が、前記外部出力シャフトを、それがハウジングによって回転可能に保持された外部出力ユニットの形態で準備する工程を含み、
前記シャフト嵌入工程が、その外部出力ユニットとされた状態での前記外部出力シャフトを嵌入させる工程とされた(51)項に記載の車両用ステアリング装置の組立方法。
本項に記載の態様は、既にユニット化された外部出力シャフトに対して上記組立方法を適用する態様である。先に説明したように、外部出力シャフトを出力軸に対してきつく嵌入させる場合には、外部出力ユニットと回転比変更ユニットとを組み合わせる作業において、回転比変更ユニットに対して過大な力が作用しやすい。本項に記載の態様は、そのようなデメリットを解消し得る態様である。なお、本項および先の項に記載の組立方法に関する態様に対して、任意に、上記ステアリング装置に関する各項に記載された技術的特徴による限定を加えることも可能である。
(61)ステアリング操作部材を一端部に保持するステアリングシャフトと、そのステアリングシャフトを回転可能に保持するコラムチューブとを備えたコラムユニットと、
ケーシングと、そのケーシングに回転可能に保持されるとともに前記ステアリングシャフトの他端部と連結される入力軸と、その入力軸と同軸的に配設されるとともに前記ケーシングに回転可能に保持された出力軸と、前記ケーシングに回転可能に保持されたウェーブジェネレータを有してそのウェーブジェネレータの回転によって前記入力軸と前記出力軸とが相対回転するように構成されたハーモニックギヤ機構と、前記ケーシングに保持されて前記ウェーブジェネレータを回転駆動する駆動源とを備え、前記入力軸と前記出力軸と回転比を変更する回転比変更ユニットと、
一端部が前記回転比変更ユニットの前記出力軸と連結される外部出力シャフトと
を備えた車両用ステアリング装置の組立方法であって、
前記入力軸が、前記ステアリングシャフトの前記他端部を挿入可能に、かつ、それが挿入される部分の外周部にそのステアリングシャフト側に向かう軸線方向の力を受けることが可能な受力部を有するように構成された前記回転比変更ユニットを準備する回転比変更ユニット準備工程と、
前記他端部が前記入力軸に挿入可能な前記ステアリングシャフトを準備するステアリングシャフト準備工程と、
前記入力軸の受力部を利用してその入力軸と前記ステアリングシャフトとに軸線方向の力を付与し、その入力軸にそのステアリングシャフトを挿入することでそれらを連結する入力軸シャフト連結工程と
を含んでなる車両用ステアリング装置の組立方法。
本項に記載の態様は、先に説明したように、ステアリングシャフトと回転比変更ユニットを入力軸に挿入して連結するように構成し、入力軸の外周部にステアリングシャフトに向かう側の力を受けるための受力部を設けた上で、ステアリングシャフトの入力軸への挿入作業を、その受力部を利用してそれらに対して軸線方向の力を付与して行うように構成された態様である。本項の態様の利点は、先の説明と同様であるため、詳しい説明は省略するが、本項の態様によれば、ステアリングシャフトと回転比変更ユニットとの連結において、そのユニットの入力軸にステアリングシャフトを挿入する際に、そのユニットに過大な負荷を与えることのない挿入作業を、簡便に行うことが可能となり、信頼性の高いステアリング装置の組立を低コストで行えることとなる。
(62)前記車両用ステアリング装置が、前記ステアリングシャフトと前記回転比変更ユニットの入力軸とがそれらを相互に弾性的に支持するブシュ型の弾性カップリングを介して連結される構造とされ、
前記ステアリングシャフト準備工程が、前記ステアリングシャフトの前記他端部に前記弾性カップリングを嵌着する工程を含み、
前記入力軸シャフト連結工程が、前記入力軸に、前記弾性カップリングが嵌着された前記ステアリングシャフトを嵌入させることで、それらを連結する工程とされた(61)項に記載の車両用ステアリング装置の組立方法。
本項に記載の態様は、先に説明したブシュ型の弾性カップリングを介した連結構造に対して上記組付方法を適用する態様である。本項の態様によれば、弾性カップリングを介在させた連結構造に対しても、信頼性の高いステアリング装置の組立を低コストで行えることとなる。なお、本項および先の項に記載の組立方法に関する態様に対して、任意に、上記ステアリング装置に関する各項に記載された技術的特徴による限定を加えることも可能である。
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<ステアリング装置の構成>
図1に、本実施例のステアリング装置の全体構成を示す。本ステアリング装置10は、インパネリインフォースメント12に設けられたステアリングサポート14(以下、「サポート14」と略す場合がある)において、車体の一部に固定支持される。ステアリング装置10は、支持された状態では、図に示すように、車両前方側が下方に位置するように傾斜した姿勢で配置されることになる。ステアリング装置10には、それの前方部に前方ブラケット16が設けられ、その前方ブラケット16より車両後方側に後方ブラケット18が設けられており、それら前方ブラケット16と後方ブラケット18との各々が、サポート14に取り付けられることで、ステアリング装置10は、2箇所において支持される。
支持されたステアリング装置10は、後方に位置する部分がインパネ20から車両後方側に突出する状態とされる。その突出する後端部には、ステアリング操作部材であるステアリングホイール22が取り付けられており、ステアリング装置10はステアリングホイール22を操作可能に保持するものとなっている。ステアリング装置10のインパネ20から突出する部分は、コラムカバー24によって覆われ、また、下部は、インパネロアカバー26によってカバーされる。ステアリング装置10の前端部は、図示を省略するインタミディエイトシャフトを介し、車室外に存在する転舵装置に接続される。
図2に、ステアリング装置10の側面断面図を示す。ステアリング装置10は、大きくは、ステアリングホイール22を保持するコラムユニット30と、電動式パワーステアリング機能を実現する主体となるEPSユニット32と、VGRSアクチュエータとして機能するVGRSユニット34とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されており、それら3つのユニット30,32,34が一体化されたものとなっている。以下、それら各ユニットについて、順に説明する。
図3に、コラムユニット30の側面断面図を示す。コラムユニット30は、ステアリングホイール22を車両後方側の端部において保持するステアリングシャフト40と、そのステアリングシャフト40を挿通させた状態で回転可能に保持するシャフトハウジングとしてのコラムチューブ42とを含んで構成されている。ステアリングシャフト40は、車両後方側つまり上方側に位置させられるアッパシャフト50と、車両前方側つまり下方側に位置させられるロアシャフト52とを含んで構成されている。アッパシャフト50はパイプ状に、ロアシャフト52はロッド状に形成され、アッパシャフト50の前方部にロアシャフト52の後方部が挿入されている。アッパシャフト50の前部内周面,ロアシャフト52の後部外周面には、それぞれ互いに噛合するスプラインが形成され、アッパシャフト50とロアシャフト52とは、軸方向に相対移動が可能かつ相対回転が不能な状態で接続されている。なお、ロアシャフト52は、それの前方部において、後に説明するVGRSユニット34に接続される。
コラムチューブ42は、車両後方側(上方)に位置させられるアッパチューブ54と、車両前方側(下方)に位置させられるロアチューブ56とを含んで構成されている。アッパアチューブ54およびロアチューブ56は、ともにパイプ状のものであり、ロアチューブ56の後方部にアッパチューブ54の前方部が挿入されている。アッパチューブ54の前方部外周面には、図示を省略するライナが付設されており、このライナを介することによって、ロアチューブ56はアッパチューブ54にがたつきなく挿入されるとともに、アッパチューブ54とロアチューブ56との軸方向の相対移動を容易ならしめている。ちなみに、ステアリング装置10は、電動式のテレスコピック機構58(図1参照)を有しており、そのテレスコピック機構58は、それの軸線が、コラムチューブ42の軸線と平行に設けられるとともに、後方側端部,前方側端部が、それぞれアッパチューブ54とロアチューブ56との各々に固定されることで、アッパチューブ54とロアチューブ56との相対回転が不能な状態とされている。なお、ロアチューブ56は、それの前端部において、後に説明するVGRSユニット34に接続される。また、アッパチューブ54の後端部および前方部には、ラジアルベアリング60,62が設けられ、アッパチューブ54は、それらベアリング60,62を介して、アッパシャフト50を回転可能に保持している。このような構造とされていることで、コラムユニット30は、伸縮可能とされているのである。
図4に、EPSユニット32の側面断面図を示す。EPSユニット32は、ステアリングホイール22に加えられた操作力を転舵装置に対して出力するための外部出力シャフト70と、動力源としてのEPSモータ72(電動モータである)を有してそのEPSモータ72によって外部出力シャフト70の回転出力を助勢する回転助勢装置74と、外部出力シャフト70を回転可能に保持するとともに回転助勢装置74を収容するハウジング76とを含んで構成されるものであり、外部出力ユニットとして機能するものである。外部出力シャフト70は、出力側シャフト80,入力側シャフト82,トーションバー84の3つが一体化されたものとして構成されている。出力側シャフト80は、ハウジング76の車両前方側から延出しており、その延出する部分において、転舵装置に繋がるインタミディエイトシャフトに接続され、転舵装置へ回転を出力する。出力側シャフト80は、中空構造とされており、車両後方側の部分に入力側シャフト82を挿入させている。出力側シャフト80の内周面と入力側シャフト82の外周面との間には、軸受86が介在させられており、出力側シャフト80と入力側シャフト82とは相対回転可能とされている。入力側シャフト82は、車両前方側の端面に開口して軸方向に延びる有底穴が形成されている。トーションバー84の一端部は、その有低穴の底部にピン88によって固定されており、また、トーションバー84のもう一方の端部は、出力側シャフト80を軸方向に貫通する貫通穴にピン90によって固定されている。このような構成により、外部出力シャフト70は、トーションバー84の捩りを許容し、その分だけ自身も捩じられるものとされているのである。出力側シャフト80は、その外周において2つの軸受92を介してハウジング76に回転可能に保持され、また、入力側シャフト82が、その外周において軸受94を介してハウジング76に回転可能に保持されている。上述のような構造とされていることで、出力側シャフト80および入力側シャフト82は、同軸的に配設されている。ちなみに、入力側シャフト82は、ハウジング76の車両後方側から延出しており、その延出する部分において、後に説明するVGRSユニット34に接続される。
回転助勢装置74は、上記EPSモータ72と、そのEPSモータ72のモータ軸に連結されたウォーム100と、そのウォーム100に噛合させられるウォームホイール102とを含んで構成されている。そのウォームホイール102は、外部出力シャフト70の出力側シャフト80に固定されて相対回転不能とされている。このような構造により、EPSモータ72によってウォーム100に回転力が付与され、ウォームホイール102に回転力が付与される。つまり、EPSモータ72によって、外部出力シャフト70の回転出力が助勢される構造とされているのである。
また、EPSユニット32は、2つのレゾルバ104,106を備えている。レゾルバ104は、トーションバー84の車両前方部が固定される出力側シャフト80と、ハウジング76の内面との間に設けられており、出力側シャフト80の回転角度位置を検出するためのデバイスとされている。また、レゾルバ106は、トーションバー84の車両後方部が固定される入力側シャフト82と、ハウジング76の内面との間に設けられており、入力側シャフト82の回転角度位置を検出するためのデバイスとされている。2つのレゾルバ104,106の検出信号から、出力側シャフト80と入力側シャフト82との相対回転変位量を検出して、その相対回転変位量に基づいて操舵トルクを推定することが可能であり、その操舵トルクの大きさに応じた助勢力を発揮するようにEPSモータ72にエネルギが与えられる。
図5に、VGRSユニット34の側面断面図を示す。VGRSユニット34は、ケーシング110と、そのケーシング110に回転可能に保持された入力軸112,出力軸114と、入力軸112の回転を回転比が変更可能な状態で出力軸114に伝達するハーモニックギヤ機構116と、そのハーモニックギヤ機構116の駆動源としてのVGRSモータ118とを含んで構成されている。
入力軸112は、概して段付の筒状に形成されたものであり、外径の小さい部分が軸部120とされ、その軸部120の車両前方側に、軸部120と一体的に形成された軸部120より大きな径を有する円環部122が設けられている。軸部120の車両後方側は、ケーシング110より車両後方側に突出しており、その突出する部分が突出部124とされている。一方、出力軸114は、概して鍔付の筒状に形成されたものであり、車両前方側がフランジ部126とされている。そのフランジ部126は、円環部122に内包される状態とされている。出力軸114の車両後方側の部分は、入力軸112の軸部120に、詳しくは、それの内径の小さくされている部分に挿入されており、入力軸112は、出力軸114の車両後方側の端面より車両後方側に延び出すようにされた延出部を有するものとなっている。入力軸112の円環部122と軸部120とを繋ぐ部分の車両前方側の面と、出力軸114のフランジ部126の車両後方側の面との間には、スラストベアリング128が介在させられており、入力軸112と出力軸114とが相対回転可能とされている。入力軸82は、その外周において軸受130を介してケーシング110に回転可能に保持されている。上述のような構造とされていることで、入力軸82および出力軸90は、同軸的に配置されるとともに互いに相対回転可能とされ、両者がそれぞれ、ケーシング110に対して回転可能とされているのである。
VGRSモータ118は、中空とされたモータ軸140を有しており、そのモータ軸140は、軸受142,144によってケーシング110に回転可能に保持されている。モータ軸140の外周部には、周方向に複数の永久磁石146が固定されて配設されており、それらは、VGRSモータ118のロータを構成している。永久磁石146に対向するように、複数の極体148(コアにコイルが巻回されたもの)が、ケーシング110の内面に固定されて配設され、それらの極体148の各々がステータ極とされることで、それらはステータを構成している。このような構造とされることで、VGRSモータ118は、いわゆるDCブラシレスモータとされているのである。なお、モータ軸140の回転位置(回転角度,回転位相と呼ぶこともできる)、つまり、ロータの回転角度位置は、モータ軸140の外周面とケーシング110の内面との間に設けられたレゾルバ150によって検出されるようになっており、図示を省略するモータ制御回路によって、ロータの回転角度位置に応じて極体148への通電を切替えるように制御される。また、VGRSモータ118の回転速度の制御等も、このレゾルバ150の検出信号を利用して行われる。
ハーモニックギヤ機構116は、第1リングギヤとしてのステータギヤ160と、第2リングギヤとしてのドリブンギヤ162と、それらに噛合するフレキシブルギヤ164と、フレキシブルギヤ164を周回可能に支持するウェーブジェネレータ166とを含んで構成されている。ステータギヤ160は、内歯が形成されたリングギヤであり、入力軸112の円環部122の内周面の車両前方側端部に固定されて設けられ、入力軸112と相対回転不能とされている。ドリブンギヤ162は、内歯(ステータギヤの歯数よりやや少ない歯数、例えば2つ少ない歯数)が形成されたリングギヤであり、出力軸114のフランジ部118の外周部に固定されて設けられ、出力軸114と相対回転不能とされている。フレキシブルギヤ164は、外歯(ドリブンギヤ162と同じ歯数)が形成されたリングギヤであり、比較的薄いものとされることで、可撓性を有するものとされている。ウェーブジェネレータ166は、楕円カム板168と、楕円カム板168の外周に嵌められたベアリング170とを含んで構成されるものであり、先に述べた入力軸112,出力軸114の車両前方側に配設されている。楕円カム板168は、自身の中心に軸穴が設けられており、その軸穴にモータ軸140の車両後方部を嵌入させた状態で、モータ軸140に相対回転不能に接続されている。ベアリング170の外周には、フレキシブルギヤ164が装着されている。そのフレキシブルギヤ164は、ウェーブジェネレータ166によって楕円状に変形させられており、楕円の長軸部分における2箇所で、ステータギヤ160,ドリブンギヤ162と噛合し、短軸部分においてはそれらと完全に離れた状態とされている。ウェーブジェネレータ166が1回転(360度)すると、つまり、VGRSモータ118のモータ軸140が1回転すると、ステータギヤ160とドリブンギヤ162とが、それらの歯数の差分だけ相対回転させられる。ハーモニックギヤ機構はその構成が公知のものであることから、詳細な図示は省略し、説明はこの程度の簡単なものに留める。
上述したような構造から、VGRSユニット34は、VGRSモータ118の回転方向および回転速度を変更することによって、ウェーブジェネレータ166の回転方向および回転速度を変更し、ステータギヤ160に対するドリブンギヤ162の回転比を任意に変更することが可能である。つまり、VGRSユニット34は、入力軸112と出力軸114との回転比を変更する回転比変更ユニットとして機能するものとされている。
以上のような構造とされた3つのユニット30,32,34は、図2に示すように接続されている。まず、コラムユニット30とVGRSユニット34とは、コラムユニット30の車両前方側とVGRSユニット34の車両後方側とが互いに接続される。詳しくは、コラムユニット30のコラムチューブ42(詳しくは、ロアチューブ56)とVGRSユニット34のケーシング110とがボルト178によって締結されるとともに、コラムユニット30のステアリングシャフト40(詳しくは、ロアシャフト52)とVGRSユニット34の入力軸112とが連結される。このような構造とされることで、コラムユニット30とVGRSユニット34とは一体化されているのである。
ステアリングシャフト40と入力軸112との連結について、図2,3,5に加えて、図6をも参照しつつ、さらに詳しく説明する。図6は、ステアリングシャフト40と入力軸112との連結部を車両前方側から見た図である。ステアリングシャフト40のロアシャフト52と入力軸112の突出部124とは、ロアシャフト52が突出部124に挿入された状態で、ブシュ型の弾性カップリング180を介して連結されている。その弾性カップリング180は、入力軸112の突出部124の内周部に嵌め入れられた外筒182と、ロアシャフト52の外周部に嵌められた内筒184と、それら外筒182と内筒184との間に介装された弾性体としての防振ゴム186とを含んで構成されており、転舵装置側からのステアリングホイール22への振動を効果的に吸収することが可能とされている。また、外筒182には、それの前端部に、前端面に開口する1対の凹部188が設けられ、内筒184には、それの前端部に、径方向に延びる1対の立設部190が設けられており、それら凹部188と立設部190とが合わされて設けられることで、外筒182と内筒184との相対回転可能な量が、凹部188と立設部190との間の遊び分のみとされる。このような構造により、本ステアリング装置10は、ステアリングシャフト40と入力軸112との相対回転量が設定回転量を超える場合にそれらの相対回転を禁止する相対回転禁止機構を備えるものとされており、大きな操舵力によってステアリングホイール22が操作された場合等において、防振ゴム186の過度の変形を防止することが可能とされている。
なお、上記弾性カップリング180に代えて、図7に示す弾性カップリング192を採用することも可能である。図に示す弾性カップリング192は、ロアシャフト52に嵌められた外筒194の内周が概ね楕円状に形成されるとともに、入力軸112に嵌められた内筒196の外周が概ね楕円状に形成され、外筒194の内周面と内筒196の内周面との間に略一定のクリアランスを有して、その間に防振ゴム198が介装された構造とされている。そのような構造とされることで、ステアリングシャフト40と入力軸112との相対回転量が設定回転量を超える場合に、外筒194と内筒196との相対回転が禁止される。このような機能により、この弾性カップリング192を有するステアリング装置も、相対回転禁止機構を備えるものとなる。
コラムユニット30とVGRSユニット34とが一体化された状態では、ステアリングシャフト40と入力軸112との連結部は、ロアチューブ56内に収容された状態となる。その状態において、連結部の外径、詳しくは、入力軸112の突出部124の外径は、アッパチューブ54の内径より小さくされている。つまり、コラムユニット30が収縮する場合には、アッパチューブ54の車両前方側の端部が、ロアチューブ56の内周面と突出部124の外周面とによって区画される筒状の空間S内に収まるようになっている。
また、VGRSユニット34とEPSユニット32とは、VGRSユニット34の車両前方側とEPSユニット32の車両後方側とが互いに接続されている。詳しくは、VGRSユニット34のケーシング110とEPSユニット32のハウジング76とがボルト200にっよって締結されるとともに、VGRSユニット34の出力軸114とEPSユニット32の外部出力シャフト70(詳しくは、入力側シャフト82)とが連結されている。このような構造とされることで、VGRSユニット34とEPSユニット32とは一体化されているのである。出力軸114と外部出力シャフト70との連結について、さらに詳しく説明すれば、外部出力シャフト70は、その車両後方部が、VGRSユニット34の有するVGRSモータ118のモータ軸140およびウェーブジェネレータ166等を挿通し、入力側シャフト82の後端部がVGRSユニットの出力軸114に嵌め合わされて連結されているのである。なお、入力側シャフト82の後端部の外周面にはセレーション外歯202(図5参照)が、出力軸114の内周面にはセレーション内歯204(図4参照)が、それぞれ形成されており、それら入力側シャフト82と出力軸114とはセレーション嵌合させられている。
なお、入力側シャフト82の後端面には、その後端面に開口するとともに雌ねじが形成されたテーパ状のねじ孔210が設けられており、そのねじ孔210に、雄ねじが形成されたテーパ状の雄ねじ体212が捩じ込まれている。これにより、入力側シャフト82の外径が拡大させられ、入力側シャフト82と出力軸114との嵌め合いが緊密化されることで、それらの連結が強化されることになる。つまり、本ステアリング装置10は、テーパねじの楔の効果を利用して、外部出力シャフト70と出力軸114との連結を強化する連結強化手段を有するものとされている。
ちなみに、断線等が原因でVGRSモータ118の機能が失陥した場合は、モータ軸152の比較的自由な回転が許容されることになる。その場合、上記ハーモニックギヤ機構116においては、ウェーブジェネレータ166の自由な回転が許容されるため、ステータギヤ160とドリブンギヤ162との間の適切な回転伝達が行われなくなる。このことに考慮し、VGRSユニット34のケーシング110とEPSユニット32のハウジング76との締結によって内部に形成される空間には、VGRSモータ118のモータ軸140の回転を禁止可能なモータ軸回転ロック機構220(以下、単に「ロック機構220」と略す場合がある)が設けられている。そのロック機構220は、詳細な図示は省略するが、モータ軸140の外周に固定して設けられた環状をなすロックホルダと、ケーシング110およびハウジング76に設けられて係止爪が形成されたロックレバーとを有し、そのロックレバーの係止爪をロックホルダに設けられた凹部に係合させることによってモータ軸140の回転を禁止するようなストッパ機構とされている。このロック機構220によってモータ軸152の回転が禁止されれば、VGRSユニット34の入力軸112と出力軸114とは、ステータギヤ160とドリブンギヤ162とのギヤ比で定まる固定的な回転比で相対回転させられる。
このように、本ステアリング装置10は、コラムユニット30,VGRSユニット34,EPSユニット32の3つのユニットが一体化されており、コンパクトな装置となっているのである。また、3つのユニット30,32,34が一体化されていることから、車体の一部への取付作業も簡便なものとなっている。以下に、ステアリング装置10の取付構造について、簡単に説明する(図1,2参照)。
ステアリング装置10は、EPSユニット32の前方端部と、コラムユニット30のロアチューブ56とにおいて、車体の一部に取り付けられる。EPSユニット32のハウジング76には、先に説明した前方ブラケット16が固定的に設けられており、この前方ブラケット16には、軸挿通穴230が設けられている。サポート14には、軸穴232が穿設された軸受部材234が固定されており、前方ブラケット16の軸挿通穴230とそれら軸受部材234の軸穴232とに、支持軸236が挿通されることで、ステアリング装置10は、その支持軸236を中心に揺動可能に支持される。一方、コラムユニット30は、後方ブラケット18に保持され、その後方ブラケット18が1対のサポート14に取り付けられて支持される。詳しく言えば、ロアチューブ56には、被保持部材238が固定的に設けられており、この被保持部材208が、後方ブラケット18の構成部材であるチャンネル形状(コの字形状)をなす保持部材240によって保持されるとともに、後方ブラケット18のもう1つの構成部材である被支持プレート242がサポート14に組み付けられることで、コラムユニット30のロアチューブ56が支持される。
このような取付構造とされていることから、コラムユニット30のロアシャフト52,ロアチューブ56を含んで構成される車両前方側に位置する部分に対して、コラムユニット30のアッパシャフト50,アッパチューブ54を含んで構成される車両後方側に位置する部分が、ステアリング装置10の軸線方向に移動可能とされており、先に述べたテレスコピック機構58によって、コラムユニット30の車両前方部分を軸線方向に移動させること、つまり、テレスコピック動作を行うことが可能である。また、本ステアリング装置10は、運転者のステアリングホイール22への衝突である二次衝突の衝撃をコラムユニット30の車両後方側の部分の移動に伴って吸収するEA機構を、上記テレスコピック機構において有している(図示省略)。そのコラムユニット30の車両後方側の部分の移動の際には、先に述べたように、アッパチューブ54の車両前方側の端部が、ロアチューブ56の内周面と突出部124の外周面とによって区画される筒状の空間S内に収まるようになっているため、本ステアリング装置10においては、長いEAストロークが確保されているのである。ちなみに、本ステアリング装置は、電動式のチルト機構250も有しており、詳しくは、前方ブラケット16および後方ブラケット18によってステアリング装置10を保持する構造が、チルト機構250を構成するものとされている。後方ブラケット18の保持部材240に設けられた長穴252によって、被保持部材238に設けられた軸部材254がガイドされるようにされており、ステアリング装置10は、図示を省略する電動モータに駆動されてその長穴252の分だけ前記支持軸236を中心として揺動可能とされている。
<ステアリング装置の組立方法>
本ステアリング装置10は、上述したように3つのユニット30,32,34が一体化された構造となっている。以下、そのステアリング装置10の組立方法について説明する。本ステアリング装置10の組立作業では、まず、VGRSユニット34とEPSユニット32とが組み付けられる。図8に、それらを組み付ける前の状態を示し、図9に、それらの組付が完了した状態を示す。図8に示すように、VGRSユニット34は、先に述べたような、入力軸112および出力軸114が共に概して筒状に形成されるとともに、ウェーブジェネレータ166のコラムユニット30が設けられる側(車両後方側)において出力軸114が入力軸112に挿入して配設され、その出力軸114およびウェーブジェネレータ166が、外部出力シャフト70が貫通可能な構造のものが準備される。また、外部出力シャフト70は、入力側シャフト82が、それの後端部外周面に出力軸114のセレーション内歯202に緩やかに嵌り合うようなセレーション外歯204が形成されたものとされ、図9に示すように、前記回転助勢装置74等が組み付けられるとともにハウジング76に回転可能に保持されたEPSユニット32として準備される。上記のような構造をなすVGRSユニット34を準備する工程が前述の回転比変更ユニット準備工程に相当し、上記のような構成の外部出力シャフト70を有するEPSユニット32を準備する工程が前述の外部出力シャフト準備工程に相当する。
次に、外部出力シャフト嵌入工程が行われる。この工程では、上記のように準備されたEPSユニット32の外部出力シャフト70を、車両前方側からVGRSモータ118のモータ軸140の内部を挿通させることでウェーブジェネレータ166を貫通させ、入力側シャフト82を出力軸114に緩やかに嵌入させる。その入力側シャフト82が出力軸114に嵌入させられた状態においては、入力側シャフト82の後端面と出力軸114の後端面とが、略同一平面上に合わされており、入力軸112の突出部124の内径が、出力軸114の外径より大きくされていることから、入力側シャフト82の後端面が車両後方側から視認可能な状態となっている。
次いで、外部出力シャフト70と出力軸114との連結を強化する連結強化工程が行われる。外部出力シャフト70の入力側シャフト82の後端面には、先にも述べたようにテーパ状のねじ孔210が設けられ、一方、ねじ孔210の雌ねじと噛合する雄ねじが形成された雄ねじ体212が準備されている。この工程では、上記外部出力シャフト嵌入工程が終了して入力側シャフト82が出力軸114に緩やかに嵌入された状態において、雄ねじ体212をねじ孔210に捩じ込むことで、入力側シャフト82と出力軸114との嵌め合いを緊密化する。
以上のような工程を経て、VGRSユニット34とEPSユニット32とが組み付けられるが、上記組立方法では、入力側シャフト82の後端面が車両後方側から視認可能な状態となっているため、連結強化のための作業を、コラムユニット30が設けられる側から行うことができ、その作業を容易に実施することが可能である。また、入力側シャフト82と出力軸114との連結は、入力側シャフト82と出力軸114とを緩やかに嵌め合わせた後、その嵌め合いを緊密化するように行われるため、その嵌入作業の際、VGRSユニット34のハーモニックギヤ機構116,EPSユニット32の回転助勢装置74等に対して、過大な力を作用させずに済む。このことから、連結時においてVGRSユニット34等の変形,破損等が発生する可能性を小さくすることが可能である。
次いで、本ステアリング装置10の組立では、VGRSユニット34とEPSユニット32とが組み付けられたものに、コラムユニット30を組み付ける作業が行われる。まず、回転比変更ユニット準備工程として、上記EPSユニット32が既に組み付けられたVGRSユニット34を準備する工程が行われる。なお、VGRSユニット34は、入力軸112の突出部124の外周面に段差部としての環状の溝260が形成されている。その環状溝260は、後に詳しく説明するように、コラムユニット30側に向かう軸線方向の力を受ける受力部として機能するものである。本ステアリング装置10の組立では、このような受力部を有するような構成のVGRSユニット34が準備される。
次に、ステアリングシャフト準備工程として、図10に示すように、弾性カップリング180にコラムユニット30を構成するロアシャフト52を嵌め込む工程が実施される。その後、VGRSユニット34の入力軸入力軸112と弾性カップリング180が嵌められたロアシャフト52とを連結する入力軸シャフト連結工程が行われる。図11は、それらを連結する前の状態を示し、図12は、それらの連結が完了した状態を示している。この工程での作業は、突出部124に、弾性カップリング180の外筒182を圧入させる作業であるが、その圧入作業は、突出部124に形成された上記環状溝260に掛かるような治具270を用い、この環状溝260に軸線方向の力を作用させて行われる。この圧入作業によれば、VGRSユニット34に対して入力軸112のみに力が作用する状態で、両者の連結を行うことができるため、VGRSユニット34の変形,破損等の発生を回避することが可能である。
次に、図12に示すように組み付けられたものに、詳しくは、VGRSユニット34のケーシング110に、ロアチューブ56を、ボルト178によって締結し、その後に、ロアシャフト52とロアチューブ56とを含んで構成されるコラムユニット30の車両前方部に、アッパシャフト50とアッパチューブ54とを含んで構成されるコラムユニット30の車両後方部を挿入して組み付ける。このようにして、図2に示すステアリング装置10が組み上がる。
本発明の実施例である車両用ステアリング装置の全体構成を示す図である。
本発明の実施例である車両用ステアリング装置を構成するステアリングコラムの側面断面図である。
図2に示すステアリングコラムを構成するコラムユニットの側面断面図である。
図2に示すステアリングコラムを構成するEPSユニットの側面断面図である。
図2に示すステアリングコラムを構成するVGRSユニットの側面断面図である。
コラムユニットを構成するステアリングシャフトとVGRSユニットとを構成する入力軸との連結部を車両前方側からの視点で示す図である。
図7の連結部において採用可能な別の構造を車両前方側からの視点で示す図である。
EPSユニットとVGRSユニットとを組み付ける前の状態を示す図である。
EPSユニットとVGRSユニットとの組付が完了した状態を示す図である。
ステアリングシャフトを構成するロアシャフトと弾性カップリングとを嵌め合わせる前の状態を示す図である。
VGRSユニットとステアリングシャフトを構成するロアシャフトとを組み付ける前の状態を示す図である。
VGRSユニットとステアリングシャフトを構成するロアシャフトとの組付が完了した状態を示す図である。
符号の説明
10:ステアリング装置 22:ステアリングホイール(ステアリング操作部材) 30:コラムユニット 32:EPSユニット(外部出力ユニット) 34:VGRSユニット(回転比変更ユニット) 40:ステアリングシャフト 42:コラムチューブ 50:アッパシャフト 52:ロアシャフト 54:アッパチューブ 56:ロアチューブ 70:外部出力シャフト 72:EPSモータ(動力源) 74:回転助勢装置 76:ハウジング 80:出力側シャフト 82:入力側シャフト 84:トーションバー 100:ウォーム 102:ウォームホイール 110:ケーシング 112:入力軸 114:出力軸 116:ハーモニックギヤ機構 118:VGRSモータ(駆動源) 124:突出部(延出部) 160:ステータギヤ(第1リングギヤ) 162:ドリブンギヤ(第2リングギヤ) 164:フレキシブルギヤ 166:ウェーブジェネレータ 168:楕円カム板 180:弾性カップリング 182:外筒 184:内筒 186:防振ゴム(弾性体) S:空間 210:ねじ孔 212:雄ねじ体 260:環状溝(受力部,段差部) 270:治具