JP4682411B2 - 電子部品の振動めっき装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばチップサーミスタ,チップコンデンサ等を構成する電子部品素子に電極膜を形成するようにした電子部品の振動めっき装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、チップサーミスタ,チップコンデンサ等のセラミック素子に電極を形成する方法として、図7に示すような振動めっき装置を用いる場合がある(例えば、特許第2745892号公報参照)。この振動めっき装置50は、偏心モータ51とバネ52とからなる振動発生源をバスケット53の支持部54に取り付けるとともに、該バスケット53の底壁53aにめっき用陰極55を配置した構造となっている。
【0003】
そして、上記バスケット53内に多数のセラミック素子60と通電媒介物としての金属球メディア61とを収容し、該バスケット53をめっき液槽57に浸漬する。この状態で上記振動発生源によりバケット53に振動を付与するとともに、陰極55に通電してセラミック素子60及びメディア61に電流を流し、これによりセラミック素子60に電極めっき膜を形成する。この場合、電極めっき膜の厚さ,あるいはセラミック素子の投入量に応じて上記めっき用陰極55への通電量が制御される。例えば、電極めっき膜を厚くしたり,セラミック素子のめっき処理量を増やしたりする場合には、上記陰極55への通電量を上げるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の振動めっき装置では、陰極への通電量を上げ過ぎると、陰極表面が酸化して黒くなるという電極焼けが生じる場合があり、場合によってはめっき処理ができなくなるおそれがある。
【0005】
このような電極焼けを回避するには、陰極への通電量を抑える必要があり、その結果めっき処理時間の増大を招いたり,膜厚のばらつきが生じたりするおそれがある。
【0006】
また上記従来の振動めっき装置において、バスケット内に流入しためっき液を排出する場合には、めっき液を汲み出すという手間のかかる作業となり、作業性及び生産性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、電極焼けを防止できるとともに、手間のかかるめっき液の汲み出し作業を不要にできる電子部品の振動めっき装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、被めっき物としての電子部品素子と通電媒介物とをめっき用陰極を備えた容器内に収容し、該容器をめっき液槽に浸漬して振動を付与するとともに、上記めっき用陰極に通電することにより、上記電子部品素子にめっき膜を被覆形成するようにした電子部品の振動めっき装置において、上記容器の底壁にめっき液抜き孔を形成するとともに上記めっき用陰極を配置し、5A以上8A以下の電流の通電時に、上記めっき用陰極の電極面積を上記容器の底壁面積の8〜94%としたことを特徴としている。
【0009】
ここで、上記めっき用陰極の電極面積を8〜94%としたのは、電極面積を8%以下にすると、電極焼けが生じ易くなるからであり、また94%以上にするとめっき液抜き孔の面積が小さくなり、液抜きに時間がかかるからである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、上記めっき液抜き孔の孔面積が、上記容器の底壁面積の6〜92%であることを特徴としている。
【0011】
上記めっき液抜き孔の面積を6〜92%としたのは、孔面積を6%以下にするとめっき液抜きに要する時間が長くなり、作業性の改善効果が得られなくなるからであり、また92%以上にするとめっき用陰極の必要な電極面積を確保できなくなるからである。
【0012】
また上記めっき液抜き孔を形成するにあたっては、電子部品素子が抜け落ちない程度の孔径とするか、もしくは電子部品素子より大きな孔径を形成し、この孔を電子部品素子が抜け落ちない網目を有する網で覆うこととなる。
【0013】
【発明の作用効果】
本発明にかかる電子部品の振動めっき装置によれば、容器の底壁にめっき液抜き孔を形成するとともに、めっき用陰極を配置し、5A以上8A以下の電流の通電時に、上記めっき用陰極の電極面積を底壁面積の8〜94%としたので、電極めっき膜,セラミック素子の投入量に応じた通電量に設定しても電極焼けが生じることはなく、安定しためっき処理を行なうことができる。これによりめっき処理時間の短縮が可能となり、生産性を向上でき、さらにはめっき膜のばらつきを防止でき、品質に対する信頼性を向上できる。
【0014】
また上記容器の底壁にめっき抜き孔を形成したので、容器をめっき液槽から引き上げることによりめっき液を容易に排出することができ、従来のめっき液を汲み出す場合に比べて作業性を向上でき、この点からも生産性を向上できる。
【0015】
請求項2の発明では、上記めっき液抜き孔の孔面積を底壁面積の6〜92%としたので、めっき用陰極の面積を確保しながら、めっき液抜きを短時間で行なうことができ、作業性を向上できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態による電子部品の振動めっき装置を説明するための図であり、図1,図2,図3はそれぞれ振動めっき装置の断面図,平面図,斜視図、図4は電子部品の製造工程を示すブロック工程図である。
【0018】
図において、10は振動めっき装置を示しており、これは上方に開口する投入口11aを有する桶状のバスケット11の底壁11b中心部に垂直上方に延びる支持部12を一体に接続形成し、該支持部12の上端部に振動発生源13を搭載して構成されている。
【0019】
上記振動発生源13は、外部ケース14内にモータ15と複数本のコイルバネ16,16とを収納してなるものであり、この外部ケース14内には上記支持部12の上端部が挿入されている。この支持部12の上端面には振動受け板17が固着されており、該振動受け板17の上面には複数本の支柱18aにより支持板18bを支持してなる支持枠部材18が固定されている。
【0020】
上記支持枠部材18の支持板18bに上記モータ15が取付けられており、このモータ15の回転軸15aには軸直角方向に延びる偏心荷重20が付加されている。また上記振動受け板17の下面と外部ケース14の底板との間には上記コイルバネ16が支持部12を囲むように架設されている。この外部ケース14を固定し、バスケット11をフリーにした状態でモータ15が回転すると、振動エネルギーが振動受け板17から支持部12を介してバスケット11に伝達される。この振動発生源13はバスケット11の振動周波数が20〜80Hzの範囲内となるように設定されている。
【0021】
上記バスケット11の側周壁11cの上縁部にはめっき液流入孔11dが周方向に間隔をあけて形成されている。バスケット11をめっき液に浸漬していくとき上記めっき液流入孔11dからめっき液がバスケット11内に徐々に流入するようになっている。即ち、上記めっき液流入孔11dがない場合には、めっき液が投入口11aから一気に流入し、内部に収容されたセラミック素子1等がバスケット11外に流出してしまうおそれがあるが、本実施形態ではこの問題を回避できる。
【0022】
上記バスケット11の底壁11bには挿通孔11eが周方向に所定間隔をあけて形成されており、各挿通孔11eには2つのめっき液抜き用メッシュキャップ22と1つのめっき用陰極23とが交互に位置するように配置されている。このめっき用陰極23は90度ごとに配設され、各挿通孔11eに挿入固定されており、残りの挿通孔11eが上記メッシュキャップ22により覆われている。上記各めっき用陰極23には給電線24が接続されており、この給電線24は上記支持部12内を通って不図示の外部電源に接続されている。
【0023】
上記バスケット11内には多数のチップ型セラミック素子1と通電媒介物としてのメディア25とが収容されている。このセラミック素子1の両端面にはAg等のペーストを焼き付けてなる電極膜が形成されている。また上記メディア25は導電性金属ボールからなるものであり、該メディア25はセラミック素子1の最大寸法に対してと略同一ないし2倍程度の大きさのものである。
【0024】
そして上記各めっき用陰極23の電極面積はバスケット11の底壁11bの面積の約8%に設定されており、各メッシュキャップ22が配設された挿通孔11eの孔面積は上記底壁11bの面積の約16%に設定されている。
【0025】
次に上記振動めっき装置10を用いたセラミック電子部品の一製造方法を図4のブロック工程図に沿って説明する。
【0026】
セラミックシートを高温焼成することによりセラミック素子を形成し(第1工程S1)、このセラミック素子にAgとガラスフリットからなるペーストを塗布し、これを焼き付けることにより第1電極膜を形成する(第2工程S2)。
【0027】
第1電極膜が形成されたセラミック素子1と、メディア25とをバスケット11内に投入する。次いで上記バスケット11をニッケルめっき液Aが充填されためっき液槽27内に浸漬する。この状態でバスケット11を20〜80Hzの振動周波数でもって振動させるとともに、バスケット11の各陰極23とめっき液槽27内に挿入された陽極26との間で通電する。するとバスケット11が水平方向に旋回しつつ垂直方向に揺動し、これに伴ってセラミック素子1,メディア25がバスケット11の中心部から周壁に向かって半径方向に流動しつつ攪拌される。これにより第1電極膜の外表面にニッケルめっきからなる第2電極膜が被覆形成される(第3工程S3)。この場合、セラミック素子1とメディア25の振動,攪拌によって互いが衝突し、第1,第2電極膜の凹凸が均され、平滑な電極膜が形成される。この後、バスケット11をめっき液槽27から引上げ、ニッケルめっき液を各メッシュキャップ22を通して挿通孔11eから排出する。次いでセラミック素子1,メディア25を水洗いする(第4工程S4)。この水洗いは複数回行なう場合もある。
【0028】
次に、上記バスケット11をすずめっき液が充填されためっき液槽(不図示)内に浸漬し、上記第3工程S3と同様に20〜80Hzの振動周波数でもって振動させるとともに陽極,陰極間に通電し、第2電極膜の外表面にはすずめっきからなる第3電極膜を被覆形成する(第5工程S5)。この場合、セラミック素子1とメディア25の振動,攪拌によって互いが衝突し、第2,第3電極膜の凹凸が均され、平滑な電極膜が形成される。この後、水洗いを行なう(第6工程S6)。
【0029】
上記バスケット11をセラミック素子1及びメディア25とともに水中に浸け、この状態でバスケット11に20Hz以上の振動周波数からなる振動を付与することにより、セラミック素子1を振動攪拌させる(第7工程S7)。これによりセラミック素子1とメディア25がぶつかり合って電極表面の凹凸がさらに均され、平滑で光沢のある第3電極膜が形成される。このようにして電子部品が形成される。
【0030】
このようにして形成された電子部品をメディア25とともにバスケット11から取り出し、乾燥炉にて乾燥させる(第8工程S8)。次に電子部品,メディア25を分離機により分離し、それぞれ別個に回収する(第9工程S9)。この後、電子部品をテーピング等により梱包することによって製品となる(第10工程S10)。
【0031】
本実施形態によれば、バスケット11の底壁11bに所定数の挿通孔11eを形成し、このうちの4つの挿通孔11eにめっき用陰極23を配設し、残りの挿通孔11eにめっき液を排出するメッシュキャップ23を配設し、上記各めっき用陰極23の電極面積を底壁11eの面積の約8%としたので、電極めっき膜の膜厚やセラミック素子の投入量に応じた通電量に設定しても電極焼けが生じることはなく、安定しためっき処理を行なうことができる。これによりめっき処理時間の短縮が可能となり、生産性を向上でき、さらにはめっき膜のばらつきを防止でき、品質に対する信頼性を向上できる。
【0032】
また上記バスケット11の底壁11bにめっき液抜き孔としての各挿通孔11eにメッシュキャップ23を配設するとともに、上記挿通孔11eの孔面積を底壁11eの面積の約16%としたので、めっき液槽27からバスケット11を引き上げることにより、めっき液を各メッシュキャップ23を通して短時間で排出することができ、めっき液の排出作業を容易に行なうことができ、作業性及び生産性を向上できる。
【0033】
なお、上記実施形態では、めっき用陰極23の面積を底壁11b面積の約8%とし、めっき液抜きの挿通孔11eの面積を底壁11b面積の約16%とした場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、要は通電量,めっき液排出時間等に応じて電極面積,めっき液抜き孔面積を適宜配分すればよい。
【0034】
例えば、図5に示すように、バスケット11の底壁全面をめっき用陰極30により形成し、該めっき用陰極30に4つのめっき液抜き孔30aを形成し、これにより陰極面積を約92%とし、めっき液抜き孔面積を約8%とすることも可能である。この場合には、陰極面積を大きくできる分だけ電流が流れ易くなることから、通電量を増やすことが可能となり、電極焼けを生じることなく大量のめっき処理が可能となる。
【0035】
また、図6に示すように、バスケット11の底壁全面をめっき液抜き孔31とし、該めっき液抜き孔31をメッシュキャップ32を装着することにより覆うとともに、該メッシュキャップ32に4つのめっき用陰極33を配置固定し、これにより陰極面積を約8%とし、めっき液抜き孔面積を92%とすることも可能である。このようにした場合には、電極焼けを防止しながら、めっき液を略瞬時に排出することが可能となり、排出時間を大幅に短縮できる。
【0036】
【実施例】
【0037】
【表1】
Figure 0004682411
【0038】
本実施例は、底壁面積に対してめっき用陰極面積が8%,液抜き孔面積が6%からなるバスケット(実施例1)と、底壁面積に対してめっき用陰極面積が10%,液抜き孔面積が10%からなるバスケット(実施例2)とを作成し、これにセラミック素子及びメディアを投入してニッケルめっき処理を行い、このときの電流値を5A,8A,10Aと変化させ、これによる電極焼けの有無を調べた。
【0039】
まためっき処理後にバスケットをめっき液槽から引上げ、バスケットからめっき液が完全に抜け出るまでの時間を測定した。
【0040】
なお、上記セラミック素子には外径寸法が1.0mm×0.5mm×0.5mmのチップ型サーミスタを採用し、メディアには直径1.0mmφの鉄球を採用し、それぞれ20万個投入した。さらに比較するために、陰極面積2%,液抜き孔面積2%のバスケット(比較例)についても同様の試験を行った。
【0041】
表1からも明らかなように、陰極面積2%,液抜き孔面積2%とした比較例の場合には、5Aの通電で電極焼けが生じており、めっき処理ができなくなっている。また液抜きに要する時間も10分と長くなっている。
【0042】
これに対して陰極面積8%,液抜き孔面積6%とした実施例1の場合は、5A,8Aでは電極焼けは生じておらず、10Aの通電で電極焼けが生じている。これは通常の量産時には8Aの通電量でめっき処理を行っており、特に問題が生じることはない。また液抜き時間は2分と比較例と比べて8分も短縮されており、量産に対応できる。上記陰極面積10%,液抜き孔面積10%とした実施例2の場合は、10Aの通電でも電極焼けは生じておらず、しかもめっき液抜き時間は1分と大幅に短縮されており、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電子部品の振動めっき装置の断面図である。
【図2】上記振動めっき装置のバスケットの平面図である。
【図3】上記振動めっき装置の斜視図である。
【図4】上記電子部品の製造工程を示すブロック工程図である。
【図5】上記実施形態の第1の変形例によるバスケット底面の平面図である。
【図6】上記実施形態の第2変形例によるバスケット底面の平面図である。
【図7】従来の一般的の振動めっき装置の断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック素子(電子部品素子)
10 振動めっき装置
11 バスケット(容器)
11b 底壁
11e,30a,31 挿通孔(めっき液抜き孔)
23,30,33 めっき用陰極
25 メディア(通電媒介物)
27 めっき液槽

Claims (2)

  1. 被めっき物としての電子部品素子と通電媒介物とをめっき用陰極を備えた容器内に収容し、該容器をめっき液槽に浸漬して振動を付与するとともに、上記めっき用陰極に通電することにより、上記電子部品素子にめっき膜を被覆形成するようにした電子部品の振動めっき装置において、上記容器の底壁にめっき液抜き孔を形成するとともに上記めっき用陰極を配置し、5A以上8A以下の電流の通電時に、上記めっき用陰極の電極面積を上記容器の底壁面積の8〜94%としたことを特徴とする電子部品の振動めっき装置。
  2. 請求項1において、上記めっき液抜き孔の孔面積が、上記容器の底壁面積の6〜92%であることを特徴とする電子部品の振動めっき装置。
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