JP4682370B2 - 異方導電性シート - Google Patents

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Description

本発明は、表面に配線パターン(電気的接続部)が設けられた少なくとも2枚の基板を互いの配線パターンが対面するように熱圧着する際に、この2枚の基板に介装され、熱圧着によりこの2枚の基板の配線パターンを加圧方向にのみ電気的に導通させるための異方導電性シートに関する。
従来、フレキシブルプリント基板(FPC)とITO端子が形成された液晶パネルのガラス基板との組み合わせなど、表面に配線パターンが形成された2枚の配線基板を、互いの配線パターンが対面した状態で接着し、同一基板内の配線パターン間を絶縁するとともに、対面する配線パターン間では電気導通性を確保するための接着剤、すなわち、基板平面方向には絶縁性を確保し、厚さ方向にのみ導通性を確保するための接着剤として、異方導電性接着剤が知られている。異方導電性接着剤は、通常、熱接着性及び電気絶縁性を有する接着性成分(絶縁性接着剤;バインダー樹脂)中に導電性粒子が分散されているシートとして提供される。
2枚の配線基板を異方導電的に接着するには、このような異方導電性接着シートを2枚の配線基板間に挟み、この2枚の配線基板を熱圧着することにより行われる。異方導電性シートを挟んだ配線基板を熱圧着すると、配線パターンが形成された部分の接着剤成分は配線パターンが形成されていない部分に移動し、2枚の基板の対面する配線パターン間は、導電性粒子により加圧方向に電気的に接続され、2枚の基板間での電気的接続を確保することができる。
従来、異方導電性シートとしては、エポキシ樹脂をバインダー樹脂とする異方導電性接着剤からなるシートが使用されてきた。しかしながら、エポキシ樹脂からなる異方導電性接着剤は硬化温度が高く、FPCの接着のような低温、短時間での接合には不向きであった。このため、低温、短時間での接合が可能な異方導電性シートの開発が求められてきた。
特許文献1には、ラジカル重合性樹脂、有機過酸化物、エポキシ樹脂、硬化剤および熱可塑性エラストマーからなる絶縁性樹脂を用いた低温加熱硬化型異方導電性接着剤が開示されている。また、特許文献2には、(メタ)アクリル系ポリマー、有機過酸化物、アクリロキシ基含有化合物およびエポキシ基含有化合物からなる接着剤を用いた異方導電性フィルムが開示されている。これらの異方導電性フィルムは、エポキシ基を有する樹脂または化合物とアクリロキシ基などのラジカル重合性基を有する樹脂または化合物とを併用することにより、接着強度を向上させ、接着信頼性を高めている。
しかしながら、特許文献1の異方導電性接着剤のようにラジカル重合性樹脂とエポキシ樹脂とを併用すると、低温、短時間での接合が可能となるが、この場合、ラジカル重合性樹脂が選択的に架橋し、エポキシ樹脂の架橋度は上昇しにくい。その結果、接着剤層に硬化収縮の集中による架橋度分布、すなわち内部応力が発生し、接着強度の低下の原因となっていた。
また、特許文献2の実施例においてラジカル重合性化合物として用いられている多官能アクリレート化合物は、分子量が小さいため反応性が高く、低分子量の多官能アクリレート化合物を含む異方導電性フィルムを50μm以下のFPCの接着に使用すると、樹脂がFPCの凹部に十分流動する前に硬化し、高い接着強度と優れた接続信頼性を両立することが困難であった。さらに、特許文献2の実施例で使用されているアクリル系共重合体は反応性がなく、加熱後も接着剤層にゾル分として存在する。このため、接着剤層の耐熱性、耐溶剤性を向上させる、すなわち、接着剤層の架橋度を上げるためにはラジカル重合性化合物の架橋度を上げる必要があるが、この場合にも接着剤層に架橋度分布が発生し、接着強度の低下の原因となっていた。
特開平10−168412号公報 特開平10−338844号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、150℃程度の低温でも流動性および反応性を有し、かつ高い接着強度と接続信頼性を有する異方導電性シートを提供することを課題としている。
本発明者は、上記問題点を解決すべく誠意研究し、ラジカル反応性基を有し、低分子量かつ高ガラス転移温度のアクリル系樹脂を使用することによって、異方導電性シート中の接着成分が低温で優れた流動性を示し、かつ得られる異方導電性シートが高い接着強度および接続信頼性を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る異方導電性シートは、(A)重量平均分子量1〜30万、ガラス転移温度が0〜70℃であって、ラジカル反応性基を有するアクリル系バインダー樹脂、(B)平均粒子径が1〜50μmである導電性フィラー、(C)シランカップリング剤、(D)熱重合開始剤、および、(E)平均粒子径が0.01〜5μmである絶縁性粒子を含有することを特徴とする異方導電性シートであり、
該バインダー樹脂(A)がグリシジル基、カルボキシル基、アミノ基から選ばれる官能基を有するアクリル系樹脂と、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基と反応可能な官能基とラジカル反応性基を有する1つの化合物との反応物であり、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、上記導電性フィラー(B)を1.0〜50重量部、上記シランカップリング剤(C)を0.01〜10重量部、上記熱重合開始剤(D)を0.1〜10重量部の範囲内の量で含有することを特徴としている。
本発明に係る異方導電性シートは、150℃程度の低温でもその接着剤成分が優れた流動性および反応性を有し、かつ高い接着強度および接続信頼性で配線基板を異方導電接着することができ、ファインピッチに適応した接着が可能となる。
本発明に係る異方導電性シートは、重量平均分子量1〜30万、ガラス転移温度が0〜70℃であって、ラジカル反応性基を有するアクリル系バインダー樹脂(A)、導電性フィラー(B)、シランカップリング剤(C)、熱重合開始剤(D)、および絶縁性粒子(E)を含有する。以下各成分について詳細に説明する。
(A)ラジカル反応性基含有アクリル系バインダー樹脂
ラジカル反応性基含有アクリル系バインダー樹脂(A)(以下「バインダー樹脂(A)」という)は、分子中にラジカル反応性基を含有する。ラジカル反応性基が分子中に存在することによって、バインダー樹脂(A)は低温・短時間熱硬化、高耐久性、高接着性、耐湿耐熱性という効果を有する。ラジカル反応性基としては、(メタ)アクリロイル基などの炭素ー炭素間不飽和二重結合を有する基が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
バインダー樹脂(A)は、重量平均分子量が1〜30万、好ましくは5〜20万であり、ガラス転移温度が0〜70℃、好ましくは10〜50℃である。重量平均分子量およびガラス転移温度が上記範囲内にあると、バインダー樹脂(A)は熱圧着時に優れた流動性を示し、かつ基板の端部から接着剤成分がはみ出すことがなく、基板を接着することができる。
このようなバインダー樹脂(A)としては、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を有するアクリル系樹脂と、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基などと反応可能な官能基とラジカル反応性基を有する化合物とを反応することにより得ることができる。すなわち、例えばアミノ基と反応させる前記化合物は、アミノ基1モルに対して、アミノ基と反応可能な官能基換算で0.1〜1モルの量で反応させる。
このようなバインダー樹脂(A)としては、アクリル系樹脂が挙げられ、このアクリル系樹脂に使用できるモノマーは(メタ)アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸モノマー、スチレン系モノマーおよびビニル系モノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、およびジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸およびウンゲリカ酸などの付加重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸およびジヒドロムコン酸などの付加重合性不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレンなどのアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレンおよびヨードスチレンなどのハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレンなどが挙げられる。
ビニル系モノマーとしては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニルおよびアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンなどの共役ジエンモノマー;塩化ビニルおよび臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデンが挙げられる。
これらのモノマーは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
官能基含有アクリル樹脂が共重合体の場合、原料モノマー合計100重量部に対して官能基を有する(メタ)アクリレートを通常10〜60重量部、これ以外のモノマーを40〜90重量部の量で共重合させて製造される。
このような官能基含有アクリル樹脂は、通常の方法により製造することができる。たとえば上記モノマーを有機溶剤に溶解または分散させ、この溶液または分散液を窒素ガスなどの不活性ガスで置換された反応器中で反応させることにより製造することができる。ここで使用される有機溶媒としては、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、n−プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類を挙げることができる。上記反応において有機溶媒は原料モノマー合計100重量部に対して通常50〜300重量部の量で使用される。
上記反応は、重合開始剤の存在下で加熱することにより行われる。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジーtert−ブチルパーオキサイドおよびクメンハイドロパーオキサイドなどを挙げることができる。この重合開始剤は、原料モノマー合計100重量部に対して通常0.01〜10重量部の量で使用される。
上記のような有機溶媒中において、反応温度は通常50〜90℃、反応時間は通常2〜20時間、好ましくは4〜12時間である。このようにして製造された官能基含有アクリル樹脂は、反応溶剤から分離して使用することもできるが、生成した樹脂を有機溶剤に溶解または分散させた状態で使用することが好ましい。
このようにして得られた官能基含有アクリル樹脂に、このアクリル樹脂の官能基と反応可能な官能基とラジカル反応性基を有する化合物を反応させて、ラジカル反応性基を有するアクリル樹脂(バインダー樹脂)を得る。アクリル樹脂の官能基とラジカル反応性基を有する化合物の官能基の組み合わせとしては、グリシジル基とカルボキシル基、グリシジル基とアミノ基などが挙げられる。
この反応は、上記官能基含有アクリル樹脂の製造に引き続いて、有機溶剤中において、反応温度が通常40〜100℃、反応時間が通常1〜10時間、好ましくは1〜5時間の条件で行うのが好ましい。
バインダー樹脂(A)の重量平均分子量およびガラス転移温度は、モノマー配合、上記重合条件たとえば有機溶剤や重合開始剤の種類および使用量、反応温度、反応時間を適宜調整することにより、制御することができる。
なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法、カラム:HXL−H、G7000HXL、GMHXL−L、G2500HXL(以上、商品名、東ソー(株)製)、検出器:示差屈折計)により測定された標準ポリスチレン換算の分子量である。また、バインダー樹脂(A)のガラス転移温度は、下記式で表されるFox式により求めることができる。
1/Tg=w/Tg+w/Tg+・・・+w/Tg
式中、Tgはバインダー樹脂(A)のガラス転移温度(K)であり、Tg、Tg、・・・、Tgは各モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、w、w、・・・、wは各モノマー成分の質量分率を表し、w+w+・・・+w=1である。
(B)導電性フィラー
本発明に係る異方導電性シートでは、上記バインダー樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が分散されている。導線性フィラー(B)としては、異方導電性接着剤に用いられる導電性フィラーであれば特に限定されないが、たとえば、導電性金属粒子、導電性無機粒子、樹脂粒子の表面を導電性材料で被覆した複合粒子を挙げることができる。上記導電性金属粒子、導電性無機粒子および導電性材料は、通常10Ω以下、好ましくは10ー1Ω以下の電気抵抗値を示す、導電性金属およびこれらの金属を含有する合金、導電性金属酸化物またはその他の導電性材料である。
導電性金属としては、ハンダ、Zn、Al、Sb、U、Cd、Ga、Ca、Au、Ag、Co、Se、Fe、Cu、Th、Pb、Ni、Pd、Be、MgおよびMnなどを挙げることができる。これら金属は単独で用いても2種以上を用いてもよく、さらに、他の元素、化合物などを添加してもよい。また上記以外の導電性フィラーとしてはカーボンおよびグラファイトのような炭素粒子、ならびにITOを挙げることができる。
導電性金属粒子および導電性無機粒子は、平均粒子径が通常1〜50μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは5〜10μmの範囲内にある。
また、上記複合粒子は、ガラスおよびアルミナなどの無機芯材または樹脂芯材の表面を上記導電性金属粒子や導電性無機材料などの導電性材料で被覆した粒子である。樹脂芯材は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれから形成されていてもよい。このような樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂(たとえば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニルオキシド樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、エチルセルロースおよび酢酸セルロースを挙げることができる。
無機芯材および樹脂芯材は、平均粒子径が通常1〜48μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは、5〜10μmの範囲内にある。導電性材料からなる被覆層は、厚さが0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、さらに好ましくは0.2〜1μmの範囲内にある。
このような複合粒子は、従来公知の方法、たとえば特開平8−3529号公報に記載の方法により製造することができる。
これらの導電性フィラーは1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
導電性フィラー(B)は、異方導電性シート中に、バインダー樹脂(A)の固形分100重量部に対して通常1〜50重量部、好ましくは2〜20重量部の量で含有される。導電性フィラー(B)を上記量で含有することによって、異方導電性シートは、接着強度の低下を伴うことなく、加圧方向の導電性および基板方向の絶縁性に優れ、接続信頼性の高い異方導電性シートとなる。
(C)シランカップリング剤
シランカップリング剤(C)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの重合性不飽和基含有有機ケイ素化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ構造を有するケイ素化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N(2−アミノエチル)3−アミノプロピルジメトキシシランなどのアミノ基含有ケイ素化合物;3−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤(C)は、異方導電性シート中に、バインダー樹脂(A)の固形分100重量部に対して通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の量で含有される。シランカップリング剤(C)を上記量で含有させることにより、異方導電性シートの接着信頼性を向上させることができる。
(D)熱重合開始剤
熱重合開始剤(D)としては、有機過酸化物、無機過酸化物およびアゾ系熱重合開始剤などを挙げることができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイドおよび3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドを挙げることができる。また無機過酸化物としては、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムを挙げることができる。さらに、アゾ系熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル吉草酸ニトリル)および4,4−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドを挙げることができる。
これらの熱重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、熱圧着時の加熱温度に依存して適宜選定することにより、短時間硬化が可能になる。
熱重合開始剤(D)は、異方導電性シート中に、バインダー樹脂(A)の固形分100重量部に対して通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部の量で含有される。熱重合開始剤(D)を上記量で含有させることにより、異方導電性シート中の接着剤成分が熱圧着時に適度な流動性を保ちながら反応するため、異方導電性シートはプリント基板の端部からはみ出すことなく、優れた接着力で基板を接着できる。ここで「適度な流動性」とは、熱圧着時において基板の接合面の隅々にまで接着剤成分が十分に広がるが、基板の端から接着剤成分がはみ出さない程度の流動性をいう。
(E)絶縁性粒子
絶縁性粒子(E)は、絶縁性無機粒子および絶縁性樹脂粒子を挙げることができる。絶縁性無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび三酸化アンチモン等を挙げることができる。また、絶縁性樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。この絶縁性粒子は、平均粒子径が通常0.01〜5μmである。この絶縁性粒子は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
この絶縁性粒子(E)は、異方導電性シート中のバインダー樹脂(A)100重量部に対して、通常1.0〜50.0重量部の量で使用される。絶縁性粒子を上記の量で配合することにより、接着剤成分の流動性をさらに適度に調整することができ、接着後に加熱しても接着剤成分が逆流して導通性を阻害することが少なくなる。また、接着の際にプリント基板の端部から接着剤成分のはみ出しを防止することができる。
〔異方導電性シートの製造方法〕
本発明に係る異方導電性シートは、上記成分(A)〜(E)を混合し、この混合物を支持フィルムに塗工して乾燥することにより製造される。通常、形成された異方導電性シートの上にさらに支持フィルムを貼り合わせて保存される。このようにして形成された異方導電性シートは、膜厚が通常10〜60μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
上記2枚の支持フィルムはともに、異方導電性シートを使用する際に、容易に剥離できるものであれば特に限定されないが、たとえば、ポリエステル製剥離フィルムが挙げられる。なお、この支持フィルムは異方導電性シートを使用する際には剥離フィルムとなる。また、上記塗工物はナイフコーター、リバースロールコーターまたはグラビアコーターなどを使用して支持フィルムに塗工される。得られた塗膜は、通常100℃以下、好ましくは40〜100℃、より好ましくは60〜80℃の温度で乾燥させる。
〔異方導電性シートの使用方法〕
上記方法により製造された異方導電性シートは、フレキシブルプリント基板(FPC)と液晶ディスプレイ(LCD)のITO基板などの導通性を必要とする接合に使用される。
まず、上記方法により製造された、剥離フィルム/異方導電性シート/剥離フィルムからなるシートを所望の大きさに裁断する。次いで、一方の剥離フィルムを剥がして基板の配線パターン形成面に貼付け、基板と異方導電性シートを仮接合する。この接合時の熱圧着温度は、通常10〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、圧力は、通常0.1〜5MPa、好ましくは0.1〜3MPa、より好ましくは0.1〜1MPaであり、時間は通常10秒未満である。
その後、残りの剥離フィルムを剥がして別の基板の配線パターン形成面に貼付け、熱圧着して接合する。この接合時の熱圧着温度は、通常180℃以下、好ましくは120〜140℃であり、圧力は、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下であり、時間は通常20秒以下、好ましくは5〜10秒である。、
である。
このようにして、2枚の基板はそれらの間に異方導電性シートを介装して、基板の配線パターンが互いに対面するように接合される。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例において、「部」および「%」は特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を示す。
〔合成例1〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート50部、イソブチルメタクリレート40部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10部、およびトルエン70部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。この溶液に、開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1部をトルエン5部に溶解した溶液を5分間かけて滴下した。この滴下開始時を反応開始時間とし、反応開始から300分の時点で反応を終了させた。このようにして得た反応溶液にグリシジルメタクリレートを2部投入し、85℃で12時間加熱し、ラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このラジカル反応性基含有バインダー樹脂は、GPC法により測定された重量平均分子量は90,000、Tgは27℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
上記ラジカル反応性基含有バインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対し0.2部の熱重合開始剤V−65(2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業(株)製、商品名)を混合した。この混合物をポリエステル製剥離フィルムMRX38(商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製:以下「MRX38」と省略)上に塗布して乾燥し、膜厚15μmのバインダー樹脂塗膜を形成した。その後この塗膜の表面にポリエステル製剥離フィルムMRF25(商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製:以下「MRF25」と省略)を貼付け、MRF25/バインダー樹脂膜/MRX38の3層からなる試験片を得た。この試験片を温度130℃、圧力0.2MPaで5秒間加熱し、バインダー樹脂を硬化させた。
硬化後の試験片から2枚の剥離フィルムを剥がしてバインダー樹脂硬化物0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30cmを加えて24時間振とうした。次いでこのサンプル瓶の内容物を目開き74μmのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定した。次式によりバインダー樹脂膜のゲル分率を求めたところ、80%であった。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/硬化物採取重量)×100
〔合成例2〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート50部、イソブチルメタクリレート40部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10部、トルエン55部、および酢酸エチル15部を仕込み、合成例1と同様にしてラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このバインダー樹脂のGPC法により測定された重量平均分子量は250,000、Tgは27℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
合成例1と同様にしてゲル分率を求めたところ、90%であった。
〔比較合成例1〕
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート80部、イソブチルメタクリレート20部、トルエン35部、および酢酸エチル35部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。この溶液に、開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5部をトルエン5部に溶解した溶液を5分間かけて滴下した。この滴下開始時を反応開始時間とした。反応開始から300分の時点で反応を終了させラジカル反応性基のないバインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このバインダー樹脂のGPC法により測定された重量平均分子量は300,000、Tgは18℃であった。
〔比較合成例2〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート50部、イソブチルメタクリレート40部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10部、トルエン40部、および酢酸エチル30部を仕込み、合成例1と同様にしてラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このラジカル反応性基含有バインダー樹脂のGPC法により測定された重量平均分子量は350,000、Tgは27℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
合成例1と同様の手順でゲル分率を求めたところ、95%であった。
〔比較合成例3〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート50部、イソブチルメタクリレート40部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10部、およびトルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。この溶液に、開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2部をトルエン5部に溶解した溶液を5分間かけて滴下した。この滴下開始時を反応開始時間とし、反応開始から300分の時点で反応を終了させた。このようにして得た反応溶液にグリシジルメタクリレートを2部投入し、85℃で12時間加熱し、ラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このラジカル反応性基含有バインダー樹脂は、GPC法により測定された重量平均分子量は8,000、Tgは27℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
合成例1と同様の手順でゲル分率を求めたところ、95%であった。
〔比較合成例4〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート15部、メチルメタクリレート75部、ジメチルアミノエチルメタクリレート3部、およびトルエン70部を仕込み、合成例1と同様にしてラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このラジカル反応性基含有バインダー樹脂は、GPC法により測定された重量平均分子量は80,000、Tgは77℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
合成例1と同様の手順でゲル分率を求めたところ、78%であった。
〔比較合成例5〕
(1)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の合成
窒素置換可能な四つ口フラスコに、メチルアクリレート60部、ブチルアクリレート30部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10部、およびトルエン70部を仕込み、合成例1と同様にしてラジカル反応性基含有バインダー樹脂のトルエン溶液を得た。このラジカル反応性基含有バインダー樹脂は、GPC法により測定された重量平均分子量は80,000、Tgは−12℃であった。
(2)ラジカル反応性基含有バインダー樹脂の反応性確認
合成例1と同様の手順でゲル分率を求めたところ、75%であった。
[実施例1]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
合成例1で得たラジカル反応性基含有バインダー樹脂溶液に、固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株)製、商品名)0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物をMRX38(商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製:以下「MRX38」と省略)上に塗布して乾燥し、膜厚15μmの異方導電性シート(A)を形成した。その後、ポリエステル製剥離フィルムMRF25(商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製:以下「MRX25」と省略)を貼付け、MRF25/異方導電性シート(A)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを1.5mm×30mmの大きさに裁断し、MRF25を剥がし、ITO蒸着ガラスの蒸着面に貼付け、温度80℃、圧力0.1MPaで2秒間加熱して異方導電性シート(A)とITO蒸着ガラスの蒸着面とを仮接合した。次いで、MRF38を剥がし、異方導電性シート(A)と70μmピッチのフレキシブルプリント基板(FPC)とを貼り合わせ、温度130℃、圧力0.2MPaで5秒間加熱し、異方導電性シート(A)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(A1)を得た。この導電性試験片(A1)を用いて異方導電性シート(A)の導電性および接着性を評価した。
一方、上記と同様にして異方導電性シート(A)とITO蒸着ガラスの非蒸着面とを仮接合した後、MRX38を剥離して、異方導電性シート(A)とFPCとを貼り合わせ、温度130℃、圧力0.2MPaで5秒間加熱し、異方導電性シート(A)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(A2)を得た。この導電リーク試験片(A2)を用いて、異方導電性シート(A)の導電性リークを評価した。
導電性試験片(A1)および導電リーク試験片(A2)の電極間抵抗値は4Ωおよび絶縁抵抗値であった。導電性試験片(A1)および導電リーク試験片(A2)を80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持した後、電極間抵抗値を測定したところ、それぞれ6Ωおよび絶縁抵抗値であった。
また、導電性試験片(A1)からFPCを剥離し、異方導電性シート(A)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度を長手方向の90度剥離試験(引張速度50mm/分)により測定したところ、670N/mであった。
[実施例2]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
合成例2で得たラジカル反応性基含有バインダー樹脂溶液に、固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(B)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(B)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(B1)と、異方導電性シート(B)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(B2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(B1)および導電リーク試験片(B2)の電極間抵抗値は、それぞれ3Ωおよび絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(B1)および導電リーク試験片(B2)の電極間抵抗値はそれぞれ6Ωおよび絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(B)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は650N/mであった。
[比較例1]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
比較合成例1で得たバインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対して、多官能反応性オリゴマーTMP−A(トリメチロールプロパントリアクリレート:共栄社化学(株)社製、商品名)20部、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(a)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(a)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(a1)と、異方導電性シート(a)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(a2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(a1)および導電リーク試験片(a2)の電極間抵抗値は10Ωおよび絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(a1)および導電リーク試験片(a2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(a)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は200N/mであった。
[比較例2]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
比較合成例2で得たバインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(b)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(b)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(b1)と、異方導電性シート(b)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(b2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(b1)および導電リーク試験片(b2)の電極間抵抗値は10Ωおよび絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(b1)および導電リーク試験片(b2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(b)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は200N/mであった。
[比較例3]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
比較合成例3で得たバインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(c)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(c)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(c1)と、異方導電性シート(c)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(c2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(c1)および導電リーク試験片(c2)の電極間抵抗値は8Ωおよび絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(c1)および導電リーク試験片(c2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(c)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は230N/mであった。
[比較例4]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
比較合成例4で得たバインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(d)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(d)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(d1)と、異方導電性シート(d)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(d2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(d1)および導電リーク試験片(d2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(d1)および導電リーク試験片(d2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(d)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は150N/mであった。
[比較例5]
(1)異方導電性シートの作製とその評価
比較合成例5で得たバインダー樹脂溶液に、樹脂固形分100部に対して、熱重合開始剤V−65を0.2部、シランカップリング剤KBM403(信越化学工業(株)製、商品名)0.2部、導電性フィラー(日本化学工業(株)製、ブライトGNRシリーズ、粒径5μm)10部、およびシリコーン樹脂粒子(トスパール120、粒径2μm、東芝シリコーン(株)製)40部を混合した。この混合物を使用した以外は、実施例1と同様にしてMRF25/異方導電性シート(e)/MRX38からなるシートを得た。
このシートを用いて実施例1と同様にして、異方導電性シート(e)を介してITO蒸着ガラスの蒸着面とFPCとを接合した導電性試験片(e1)と、異方導電性シート(e)を介してITO蒸着ガラスの非蒸着面とFPCとを接合した導電リーク試験片(e2)を作製し、電極間抵抗値および接着強度を測定した。導電性試験片(e1)および導電リーク試験片(e2)の電極間抵抗値はそれぞれ8Ωおよび絶縁抵抗値であった。80℃、90%RHの雰囲気下で1000時間保持後の導電性試験片(e1)および導電リーク試験片(e2)の電極間抵抗値はともに絶縁抵抗値であった。FPC剥離により測定した異方導電性シート(e)とITO蒸着ガラスの蒸着面との接着強度は230N/mであった。
これらの結果を表1に示す。
(表1)
Figure 0004682370
本発明によると、低温かつ短時間で配線パターンを有する2枚の基板を高い接着力で接着でき、得られた接続材料の接続信頼性も高い。本発明に係る異方導電性シートは、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)とFPCとの接続、LCDパネルと半導体チップとの接続に使用することができる。

Claims (2)

  1. (A)重量平均分子量1〜30万、ガラス転移温度が0〜70℃であって、ラジカル反応性基を有するアクリル系バインダー樹脂、
    (B)平均粒子径が1〜50μmである導電性フィラー、
    (C)シランカップリング剤、
    (D)熱重合開始剤、および、
    (E)平均粒子径が0.01〜5μmである絶縁性粒子
    を含有することを特徴とする異方導電性シートであり、
    該バインダー樹脂(A)がグリシジル基、カルボキシル基、アミノ基から選ばれる官能基を有するアクリル系樹脂と、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基と反応可能な官能基とラジカル反応性基を有する1つの化合物との反応物であり、
    バインダー樹脂(A)100重量部に対して、上記導電性フィラー(B)を1.0〜50重量部、
    上記シランカップリング剤(C)を0.01〜10重量部、
    上記熱重合開始剤(D)を0.1〜10重量部の範囲内の量で含有することを特徴とする異方導電性シート。
  2. 前記ラジカル反応性基が、(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性シート。


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