JP4678967B2 - ゲル化性有機化合物及びそれを用いるゲル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水、有機溶媒及びイオン性液体に対してゲル化性を有する新規な有機化合物及びそのゲル化性有機化合物を用いたゲルに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より実用に供されてきたゲルは、主として高分子ハイドロゲル、すなわち高分子(ポリマー)からなるゲル化剤が溶媒として水を含んでゲル化したものである。これに対して、最近比較的低分子の有機化合物をゲル化剤原料として非水性有機溶媒をゲル化する有機ゲルについても研究が行われるようになり、台所廃油や流出原油等をゲル化により固めて除去するのに実用化の例が見られる他、クロマトグラフィー分離剤の担体、化学センサー等における機能性物質の支持体、生体触媒固定化ゲル等への展開が期待されている。例えば特開2000-229992号は、有機溶媒のゲル化剤として、糖を基本骨格とし、分子中にアミド基を有する有機化合物を提案している。
【0003】
しかし水及び有機溶媒の両方に対してゲル化性を有する化合物は見出されていない。水及び有機溶媒の両方でゲル状態を保持することができれば、例えばハイドロゲル中に酵素たんぱく質を固定化しておき、有機溶媒中で該酵素たんぱく質を働かせる酵素固定化担体としての利用が可能となる。
【0004】
また近年、環境調和型の反応溶媒として注目されているイオン性液体は導電性を有するため、これをゲル化したイオノゲルは固体電解質として電池分野への用途が期待できる他、酵素たんぱく質を固定化して電気化学的に制御する用途、ゲル状態の中で有機合成反応を行う用途、ハイドロゲル中では溶解してしまう酵素たんぱく質を固定する用途等様々な分野への応用が期待できる。しかしこれまでにイオン性液体に対してゲル化性を有する低分子化合物は見出されていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、水及び有機溶媒の両方に対してゲル化性を有し、更にイオン性液体に対してもゲル化性を有するゲル化性有機化合物、及びそのゲル化性有機化合物を用いたゲルを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、糖アミド、アミノ酸アミド及びエーテル基を基本骨格とする新規な有機化合物が水、有機溶媒及びイオン性液体の全てに対してゲル化性を有することを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち本発明のゲル化性有機化合物は、一般式(I):
【化4】
(ただし、R1及びR2は同一又は別異の炭素数2以上のアルキル基を示し、R3及びR4は同一又は別異の炭素数2〜20のアルキレン基を示し、R5は下記式(1)〜(9):
【化5】
からなる群から選ばれる糖アミド基を示す。またnは1又は2の整数を示す。)により表されることを特徴とする。
【0008】
一般式(I)により表される化合物に属するゲル化性有機化合物としては、下記式(II):
【化6】
により表されるものが好ましい。
【0009】
また本発明は一般式(I)の化合物からなる水、有機溶媒及びイオン性液体のゲル化剤を提供するとともに、一般式(I)の化合物により構成され、加熱・冷却にともない可逆的にゲル-ゾル相転移する有機ゲル、ハイドロゲル及びイオノゲル(イオン性液体のゲル)を提供する。本発明のハイドロゲルはシート状、円弧状、ロープ状又はリボン状のナノ構造体(超構造)を含む。
【0010】
本発明のゲル化性有機化合物は、それぞれエーテル基を含む二本の長い疎水性鎖(アルキル鎖)を有することにより分子が並びやすくなっているとともに、分子中にアミド基を3つ及び水酸基を5つ以上有するため、アミド基間及び水酸基間の水素結合を介して分子が互いに相互作用して網目構造を形成しやすい化学構造を有している。そのため水、有機溶媒及びイオン性液体の全てに対してゲル化性を有するものと解される。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1] ゲル化性有機化合物
一般式(I)により表される本発明のゲル化性有機化合物は、多くの有機溶媒、水及びイオン性液体に対してゲル化性を有することが見出されている。これは一般式(I)の化合物が二本の長い疎水性鎖(アルキル鎖)を含むエーテル鎖を有することにより分子が並びやすくなっているとともに、アミド基間及び水酸基間の水素結合を介して分子が互いに相互作用して網目構造を形成しやすい化学構造を有しているためと解される。エーテル鎖により水中での分散性が向上し、エーテル鎖中のアルキル鎖により有機溶媒中での分散性が向上する。これにより水及び有機溶媒の両方をゲル化することができる。また分子中に電荷を有しないため電荷による静電反発がなく、このためイオン性液体中でも分散性がよく、イオン性液体をゲル化することができる。一般式(I)の化合物を水、有機溶媒及びイオン性液体中に静置して得られたゲルを走査型電子顕微鏡(SEM)、暗視野光学顕微鏡等により観察すると、繊維状に絡み合った典型的なゲル構造が認められる。
【0012】
以上のような特性を発揮するために、一般式(I)におけるR1及びR2は炭素数2以上のアルキル基である必要がある。すなわちR1又はR2をCH3−(CH2)a−として表すと1≦aである。但しアルキル基が長すぎると水、有機溶媒又はイオン性液体をゲル化せず溶解あるいは沈殿析出するので、該アルキル基の長さは炭素数30以下であるのが好ましい。R1及びR2は同一又は別異のいずれでもよいが、同一の長さのアルキル基であるのが好ましい。
【0013】
また一般式(I)におけるR3及びR4が炭素数2〜20のアルキレン基である必要がある。すなわちR3又はR4を−(CH2)b−として表すと、2≦b≦20である。R3及びR4は同一又は別異のいずれでもよいが、一般的には同一の長さのアルキレン基であるのが好ましい。またR1とR3の合計炭素数及びR2とR4の合計炭素数は40以下であるのが好ましい。40を超えると水、有機溶媒又はイオン性液体をゲル化せず溶解あるいは沈殿析出する恐れがある。
【0014】
また一般式(I)におけるR5は、上記式(1)〜(9)のいずれかにより表される糖アミド基である必要がある。すなわちR5はグルコンアミド基、ガラクトンアミド基、マンノンアミド基、タロンアミド基、グロンアミド基、アルトロンアミド基、アロンアミド基、イドンアミド基、マルトンアミド基のうちいずれかの単糖又は多糖アミド基である。
【0015】
一般式(I)により表されるゲル化性有機化合物の更なる構造的特徴は、基本骨格としてアミノ酸アミドを含むことである。アミノ酸アミド骨格は、グルタミン酸アミド又はアスパラギン酸アミドからなる必要がある。
【0016】
このように基本骨格として糖アミド及びアミノ酸アミドを含むことにより、分子中にアミド基を3つ及び水酸基を5つ以上有する。このためアミド基間及び水酸基間の水素結合を介して分子が互いに相互作用して分子間会合を促進し、その結果網目構造を形成しやすい。
【0017】
一般式(I)により表される本発明のゲル化性有機化合物は、各種の合成法を利用することによって調製することができる。略述すれば、一般式(I)におけるR1〜R4に対応するエーテル基を有する第一アミンとアミノ基を保護されたアミノ酸の二つのカルボキシル基とを反応させて二組のアミド結合を形成し、得られた化合物の保護基を除去した後、これにグルコノラクトンを反応させて糖アミド部分を形成する。その結果アミド基を3つ及び水酸基を5つ以上有する化合物が得られる。例えば上述の式(II)により表される化合物は図1のスキームに沿って合成することができる。
【0018】
[2] ゲルの形成
一般式(I)のゲル化性有機化合物は各種の有機溶媒、水及びイオン性液体をゲル化することができる。ゲル化に適用される有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族有機溶媒、クロロホルム、クロロシクロヘキサン、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒、酢酸エチル等のエステル等を挙げることができる。ゲル化に適用されるイオン性液体としては、下記式(III):
【化7】
に示すN-メチル-N'-メトキシメチルイミダゾリウムブロミド、下記式(IV):
【化8】
に示すN-メチル-N'-メトキシエチルイミダゾリウムブロミド等が挙げられる。これらのイオン性液体は例えば特願2000-184298号に開示した方法に従って合成することができる。
【0019】
ゲル化性有機化合物を分散又は溶解した液体(分散液又は溶液)におけるゲル化性有機化合物の濃度は、水溶液の場合5〜100mMが好ましく、20〜50mMがより好ましく、有機溶媒の場合5〜100mMが好ましく、20〜50mMがより好ましく、またイオン性液体の場合5〜100mMが好ましく、20〜50mMがより好ましい。
【0020】
かくして得られる本発明の有機ゲル、ハイドロゲル及びイオノゲルは加熱・冷却にともない可逆的なゲル-ゾル転移を示す。可逆的ゲル-ゾル転移温度は、有機ゲルの場合30〜70℃であり、ハイドロゲルの場合40〜50℃であり、イオノゲルの場合40〜55℃である。
【0021】
特にハイドロゲルはシート状、円弧状、ロープ状、リボン状等のナノ構造体(超構造)を有するので、そのナノ構造や物性を構成分子の化学構造や、分子組織体の特性(相転移現象等)を通して精密に制御することにより、ドラッグデリバリーシステム、酵素たんぱく質の固定化担体、人工筋肉、分離膜等への応用の可能性を有している。特にイオノゲルは固体電解質として電池分野への応用が期待できる。
【0022】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
図1に示す反応スキームに従って、上述の式(II)により表されるゲル化性有機化合物を調製した。
【0024】
(1) 化合物(A)の合成
200 mlナス型フラスコに3-ラウリルオキシプロピル-1-アミン(アクロス(株)製、Mw:243.43)4.3 g(17.8 mmol)、t−ブチルオキシカルボニル-L-グルタミン酸(Boc-L-Glu-OH、国産化学(株)製、Mw:247.11)2.0 g(8.1 mmol)、及びトリエチルアミン(キシダ化学(株)製、 Mw:101.6)1.8 g(17.8 mmol)を投入し、乾燥テトラヒドロフラン(THF)150 mlに溶解した。氷冷下攪拌しながらシアノリン酸ジエチル(DEPC、Aldrich製、 Mw:163.11)2.9 g(17.8 mmol)を加えた。室温で2日間攪拌後、THFを減圧留去し、油状の残滓にクロロホルムを加え、さらに5%炭酸ナトリウム水溶液を加えて2回振とうした。クロロホルム相を分取し、無水硫酸ナトリウムを用いて余分な水分を取り除いた。溶媒のクロロホルムを減圧留去し、残滓にアセトンを加えて再結晶を行い、無色粉末を得た(化合物(A)、収量=3.71g、収率=65 %)。
【0025】
(2) 化合物(B)の合成
上記化合物(A)(Mw:698.07) 3.7g(5.3 mmol)を乾燥ジクロロメタン100 mlに溶解し、攪拌しながらトリフルオロ酢酸(TFA、キシダ化学(株)製、Mw:114.02)を全体の20 重量%になるように加え、室温にて3時間攪拌した。その後、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンを減圧留去し、油状の残滓にアセトンを加えて溶解し、氷冷下35 重量%塩酸水溶液を1 ml加え、生じた沈殿を濾別した。これを酢酸エチルにより再結晶化し、無色粉末を得た(化合物(B)、収量 = 2.56 g、収率 = 76 %)。
【0026】
(3) ゲル化性有機化合物(II)の合成
上記化合物(B)(Mw:634.42) 2.56g(4.0 mmol)とトリエチルアミン(キシダ化学(株) Mw:101.6) 0.61g(6.0 mmol)をクロロホルムに溶解し、さらにイオン交換水を加えて振とうした。クロロホルム相を分取し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。クロロホルムを減圧留去し、残滓にエタノールを加えて溶解し、さらにグルコノ-δ-ラクトン(キシダ化学(株) Mw:178.14) 0.56 g(3.1 mmol)を加えた後、環流攪拌した。2日後薄層クロマトグラフィー(TLC-FID、CHCl3:CH3OH=10:1)で分析したところ、原料(化合物(B))のピークが残っていたので、さらにグルコノ-δ-ラクトン0.5 gを加えて2日間環流攪拌を行った。環流停止後、氷冷して生じた沈殿を濾別し、エタノールにより再結晶化し、無色粉末を得た(収量 = 1.4 g、収率 = 45 %)。得られた生成物を同定するため1H-NMR測定を行った。その結果を図2及び表1に示す。またその帰属を明らかにするための式を下記式(V)として示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【化9】
【0029】
さらに得られた生成物の元素分析を行った。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
以上により上述の式(II)で表されるゲル化性有機化合物(II)が合成されたと判断した。
【0032】
実施例2
実施例1で調製したゲル化性有機化合物(II)をクロロホルムに添加し(濃度:20mM)、加熱分散して2時間静置した。得られたゲルのゲル−ゾル相転移温度(Tgel)を測定したところ、38℃であった。なおゲル−ゾル相転移温度はDSC(昇温速度0.5℃/分、以下同様)及び目視(得られたゲルを密封ガラスビンに密封し、ホットプレート上で揺すりながら3〜5℃/分で昇温してゲルが流動性を有した時の温度をTgelとした。以下同様)により測定した。得られた有機ゲルをスライドガラス上に置いてカバーガラスで覆い、暗視野光学顕微鏡により観察したところ、直径400〜1000nmの繊維が絡み合った網目構造が認められた(図3参照)。このような網目構造がクロロホルムを含んで膨潤し、有機ゲルを与えたことが判る。この網目構造はゲル化性有機化合物(II)からなる二分子膜がファイバー構造に成長したものと解される。
【0033】
実施例3
有機溶媒としてクロロシクロヘキサンを用いた他は実施例1と同様に有機ゲルを得た。そのゲル−ゾル相転移温度は60℃であった。
【0034】
実施例4
有機溶媒としてメチルシクロヘキサンを用いた他は実施例1と同様に有機ゲルを得た。そのゲル−ゾル相転移温度は60℃であった。得られた有機ゲルを実施例2と同様に暗視野光学顕微鏡により観察したところ、直径200〜300nmの繊維が絡み合った網目構造が認められた(図4参照)。
【0035】
実施例5
有機溶媒としてトルエンを用いた他は実施例1と同様に有機ゲルを得た。そのゲル−ゾル相転移温度は55℃であった。
【0036】
実施例6
実施例1で調製したゲル化性有機化合物(II)を水に添加し(濃度:10mM)、加熱分散して6時間静置した。得られたハイドロゲルのゲル−ゾル相転移温度(Tgel)を実施例1と同様に測定したところ、46.5℃であった(ΔH:18.1kJmol-1)。得られたハイドロゲルを凍結乾燥したキセロゲルについてSEMにより観察したところ、直径50〜200nmの繊維が絡み合った網目構造が認められた(図5参照)。このような網目構造が水を含んで膨潤し、ハイドロゲルを与えたことが判る。この網目構造はゲル化性有機化合物(II)からなる二分子膜がファイバー構造に成長したものと解される。
【0037】
得られたハイドロゲルを0.5mMに希釈した水溶液をSEM観察用の炭素蒸着したグリッドに滴下し、乾燥した試料をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察したところ、シート状、円弧状、ロープ状及びリボン状のナノ構造体(超構造)が観察され、ハイドロゲルがより巨視的なネットワーク構造を有していることが認められた(図6〜9参照)。シート状のハイドロゲルは幅150〜500nm及び長さ1〜3μmのナノ構造体であり(図6参照)、円弧状のハイドロゲルは直径0.5〜2μmのロープ状の会合体が円弧状に成長したナノ構造体であり(図7参照)、ロープ状のハイドロゲルは幅50〜80nm及び長さ4μm以上のナノ構造体であり(図8参照)、リボン状のハイドロゲルは幅50〜100nm、厚み7〜20nm及び長さ2μm以上のナノ構造体であることが(図9参照)それぞれ観察された。ゲル化性有機化合物(II)はアミド基を3つ及び水酸基を5つ有するため、そのハイドロゲルにおいては発達した水素結合系が構築されている。さらにグルコンアミド骨格及びグルタミン酸アミド骨格部位に多数のキラリティが存在し、そのキラル間の相互作用による水素結合系も存在するので、これらのようなナノレベルの構造多形をとるものと解される。
【0038】
実施例7
実施例1で調製したゲル化性有機化合物(II)をN-メチル-N'-メトキシメチルイミダゾリウムブロミドに添加し(濃度:10mM)、加熱分散させて6時間静置した。得られたイオノゲルのゲル−ゾル相転移温度(Tgel)を実施例1と同様に測定したところ、51℃であった(ΔH:17.5kJmol-1)。また電気伝導度を誘電緩和法により測定したところ0.1〜10 mScm-1であった。
【0039】
このイオノゲルをスライドガラス上に置いてカバーガラスで覆い、暗視野光学顕微鏡観察したところ、直径500〜1000nmの繊維が絡み合った網目構造が認められた(図10参照)。このような網目構造がN-メチル-N'-メトキシメチルイミダゾリウムブロミドを含んで膨潤し、イオノゲルを与えたことが判る。この網目構造はゲル化性有機化合物(II)からなる二分子膜がファイバー構造に成長したものと解される。
【0040】
実施例8
イオン性液体としてN-メチル-N'-メトキシエチルイミダゾリウムブロミドを用いた他は実施例7と同様にイオノゲルを得た。そのゲル−ゾル相転移温度は40℃であった(ΔH:18.7kJmol-1)。このイオノゲルを実施例7と同様に暗視野光学顕微鏡観察したところ、直径500〜1000nmの繊維が絡み合った網目構造が認められた(図11参照)。
【0041】
このように本発明のゲル化性有機化合物は水、有機溶媒及びイオン性液体の全てに対してゲル化性を有するので、これらのゲルは多様な分野へ利用展開できる可能性を有している。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のゲル化性有機化合物は水及び有機溶媒の両方に対してゲル化性を有し、更にイオン性液体に対してもゲル化性を有する。また本発明のハイドロゲル、有機ゲル及びイオノゲルは加熱・冷却にともない可逆的なゲル-ゾル転移を示すので、そのナノ構造や物性を構成分子の化学構造や、分子組織体の特性(相転移現象等)を通して精密に制御することにより、ドラッグデリバリーシステム、酵素たんぱく質の固定化担体、人工筋肉、分離膜等への応用の可能性が期待できる。特にイオノゲルは固体電解質として電池分野への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ゲル化性有機化合物(II)の合成スキームを示すフローチャートである。
【図2】 ゲル化性有機化合物(II)の1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
【図3】 ゲル化性有機化合物(II)にクロロホルムを添加し(濃度:20mM)、作製したクロロホルムゲルの暗視野光学顕微鏡写真である。
【図4】 ゲル化性有機化合物(II)にメチルシクロヘキサンを添加し(濃度:20mM)、作製したメチルシクロヘキサンゲルの暗視野光学顕微鏡写真である。
【図5】 ゲル化性有機化合物(II)に水を添加し(濃度:10mM)、作製したハイドロゲルを凍結乾燥したサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】 実施例6のハイドロゲルを0.5mMに希釈した水溶液を乾燥したサンプルのシート状ナノ構造体を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】 実施例6のハイドロゲルを0.5mMに希釈した水溶液を乾燥したサンプルの円弧状ナノ構造体を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】 実施例6のハイドロゲルを0.5mMに希釈した水溶液を乾燥したサンプルのロープ状ナノ構造体を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図9】 実施例6のハイドロゲルを0.5mMに希釈した水溶液を乾燥したサンプルのリボン状ナノ構造体を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図10】 ゲル化性有機化合物(II)にN-メチル-N'-メトキシメチルイミダゾリウムブロミドを添加し(濃度:10mM)、作製したイオノゲルの暗視野光学顕微鏡写真である。
【図11】 ゲル化性有機化合物(II)にN-メチル-N'-メトキシエチルイミダゾリウムブロミドを添加し(濃度:10mM)、作製したイオノゲルの暗視野光学顕微鏡写真である。
Claims (8)
- 請求項1又は2に記載のゲル化性有機化合物において、水、有機溶媒及びイオン性液体をゲル化し得ることを特徴とするゲル化性有機化合物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のゲル化性有機化合物により構成され、可逆的にゲル-ゾル相転移することを特徴とするゲル。
- 請求項4に記載のゲルにおいて、可逆的にゲル-ゾル相転移するハイドロゲルであることを特徴とするゲル。
- 請求項5に記載のハイドロゲルにおいて、シート状、円弧状、ロープ状又はリボン状のナノ構造体を有することを特徴とするハイドロゲル。
- 請求項4に記載のゲルにおいて、前記ゲル化性有機化合物と有機溶媒からなり、可逆的にゲル-ゾル相転移する有機ゲルであることを特徴とするゲル。
- 請求項4に記載のゲルにおいて、前記ゲル化性有機化合物とイオン性液体からなり、可逆的にゲル-ゾル相転移するイオノゲルであることを特徴とするゲル。
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