JP4678082B2 - マグネットポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達手段としてマグネットの磁気結合力を利用し、液体を送出させるマグネットポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にマグネットポンプは、給湯暖房用の循環ポンプとして幅広く使用されている。特に長時間運転を必要とする暖房用ポンプとしては、メカニカルシール方式と異なり、ライフエンドとなっても水漏れの発生がないことから必要不可欠のポンプとなっている。
【0003】
図7は従来のマグネットポンプの横断面図で、従来、マグネットポンプの構成は図7のようになっている。すなわち、電動機1は、巻線2aを有するステータ2、シャフト3を中心に回転するロータ4、また、シャフト3を支持し、かつ、自在に回転可能にするポンプ側ベアリング5a、反ポンプ側ベアリング5b、およびステータ2を介してポンプ側ベアリング5aと反ポンプ側ベアリング5bを保持する外郭部品であるポンプ側モータカバー6a、反ポンプ側モータカバー6bで構成されている。シャフト3の先端部には、運転に伴って回転するハウジング7がスペーサ8を介して固定されており、ハウジング7の内側には駆動用マグネット7aが固定されている。スペーサ8は、ハウジング7を深絞りすることで不要な部品となるが、回転体であるハウジング7に、深絞りによる歪みが発生しないようにするため必要な部品となる。
【0004】
ハウジング7を覆っているブラケット9には、ポンプケーシング10と分離板11とがOリング12で密閉された状態で取り付けられている。ポンプケーシング10は、循環水を吸込む吸込側継手10aと循環水を吐出す吐出側継手10bを有している。軸13には、ハウジング7の回転に追従して回転する羽根車14が軸受15を介して取り付けている。羽根車14の中心に固定された軸受15は、軸13を中心に回転摺動する。また、羽根車14の内部には、従動用マグネット14aが固定されており、この従動用マグネット14aは分離板11を介し駆動用マグネット7aと対をなし、両者は磁気結合状態となっている。図中の7bはハウジング7の平面部を切り起こして形成した羽根よりなる冷却ファンである。
【0005】
次に、前記構成のマグネットポンプの動作について説明する。
【0006】
電動機1のシャフト3の回転に伴ない、ハウジング7を介して駆動側マグネット7aが回転する。これに伴い、駆動側マグネット7aと磁気結合状態にある従動用マグネット14aを固定した羽根車14が、軸13を中心に回転する。これにより、ポンプ室内に満たされた循環水は圧力差を生じ、循環水は吸込側継手10aより矢印Aの方向に吸込まれる。そして吸込まれた循環水は、羽根車の回転に伴い水通路Bを通ってポンプケーシング10内周に向かってかき出され、吐出側継手10bより矢印C方向へ吐出されることによって、ポンプ作用が生じる。
【0007】
ポンプの運転に伴い巻線2aは発熱、温度上昇し、ポンプ側ベアリング5a、反ポンプ側ベアリング5bの温度も上昇する。連続運転することで、巻線2aはある一定の温度に飽和し、これに伴い各ベアリングの温度も飽和する。この温度上昇をいかに低減するかで、電動機1の信頼性が決まる。巻線2aは法規的にある一定の温度以下にする必要があり、また、高温が継続すると絶縁劣化等も発生する。ポンプ側ベアリング5a、反ポンプ側ベアリング5bは高い温度が継続すると、内部のグリスが早期劣化を起こし、異常音や、ポンプロック等の不具合を発生する。
【0008】
前記の温度上昇を低減するためには、ポンプ部の効率を改善したり、巻線仕様を改善することで消費電力を低減する方法、あるいは通風効果により強制的に巻線やベアリングを冷却する方法がある。
【0009】
しかし、ポンプ部の効率改善には限界があり、また巻線仕様を改善すると、銅の量が増加する傾向となるため、巻線加工時の不良率アップとなったり、コストアップとなるため好ましくない。したがって、いかに通風効果を改善して、巻線やベアリングを強制冷却するかにかかってくる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところでハウジング7は、駆動用マグネット7aを保持回転させる働きと、駆動用マグネット7aの磁束の漏れを防ぐためのバックヨークの働きを要するため、材質は磁性体である鉄板、あるいはフェライト系等のステンレスを使用し、プレスによる成形を行う。
【0011】
巻線2aや、特にポンプ側ベアリング5aの冷却を行うためには、ハウジング7に冷却ファン7b設けると非常に効果がある。ハウジング7の平面部を切り起こして羽根を形成すれば、冷却ファン7bを一体で作ることは可能であるが、切り起こしを設けるとハウジング7の歪が大きくなり、振れ等の精度が低下し、回転体であるハウジング7のアンバランスが大きくなり、結果としてポンプの振動が大きくなるという悪影響が発生するため、ハウジング7に切り起こしを設けることは好ましくない。
【0012】
本発明は前記従来の問題に留意し、ハウジングに切り起こしによる羽根を設けることなく構成した冷却ファンをもつマグネットポンプを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明は、ハウジングと電動機の間に介在するスペーサに冷却ファンを構成したマグネットポンプとする。
【0014】
本発明によれば、ハウジングに切り起こし等を設ける必要がないため、アンバランス量を増大させることなく、大きな冷却効果を得ることができるため、巻線、およびベアリングを効果的に冷却でき、長期信頼性を確保でき、かつ低振動のマグネットポンプを実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の発明は、外郭部品であるモータカバーと、該モータカバーのポンプ側の端部に保持されるポンプ側ベアリングと、前記ポンプ側ベアリングに回転可能に支持される電動機シャフトと、で構成される電動機と、前記電動機シャフトの先端部に固定されるハウジングと、前記ハウジングに固定される駆動用マグネットと、前記ハウジングを覆うと共に底部が前記モータカバーと前記ハウジングの間に位置する有底筒状のブラケットと、前記ブラケットに分離板を介して取り付けられるポンプケーシングと、前記ポンプケーシングと前記分離板とで形成されたポンプ室内に設けられる固定軸と、前記固定軸に回転自在に支承される羽根車と、前記羽根車に固定されると共に前記駆動用マグネットと対をなして磁気結合状態となる従動用マグネットと、で構成されるポンプ部と、を備えたマグネットポンプであって、前記ハウジングと前記電動機の間の前記電動機シャフトに設けたスペーサに、羽根を設けて冷却ファンを構成し、前記ブラケットの底部外周部に風穴を設け、前記ブラケットの底部中央部に、前記冷却ファンが回転自在に配置される開口部を設け、前記ブラケットの底部と前記モータカバーとの間に間隙を設けたマグネットポンプであり、ハウジングに切り起こし等を設ける必要がないため、ハウジングの歪みを最小限に抑え、大きな冷却効果を得ることができるため、巻線およびベアリングの温度上昇を効果的に低減できるとともに、回転体であるハウジングのアンバランスを抑えることができるマグネットポンプを実現することができるという作用を有する。
【0016】
また、特にポンプ側ベアリング付近の通風効果を改善できるという作用を有する。
【0017】
また、ポンプを搭載する機器に共振しやすい周波数域に発生する騒音のピークを低減するという作用を有する。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のマグネットポンプの横断面図、図2は同マグネットポンプにおける冷却ファンのF−F'矢視図、図3は同マグネットポンプにおけるブラケットの風穴のG−G'矢視図、図4は同冷却ファンの羽根出口角β2と騒音値および巻線温度との関係を示す図、図5は同ブラケットの風穴有無と、巻線およびポンプ側ベアリング温度との関係を示す図、図6は同ブラケットの間隙用の脚有無と騒音周波数分析の関係を示す図である。
【0020】
本発明の実施の形態1のマグネットポンプは、図1に示すように構成され、すなわち、電動機1部とポンプ部とを結合させるブラケット9と、ポンプ側モータカバー6aと、ハウジング7と電動機1の間に介在するスペーサ8と、冷却ファン16を除く他の構成は、前記図7に示す従来のマグネットポンプと同様に構成されており、前記の他の構成については、その説明を省略する。
【0021】
本実施の形態1のマグネットポンプは、ハウジング7と電動機1の間に介在するスペーサ8に羽根を設けて冷却ファン16を構成している。
【0022】
この構成によれば、プレス部品であるハウジング7に切り起こしによる羽根を設けずして冷却ファンを構成するので、巻線やベアリングを効果的に冷却することができ、ポンプの長期信頼性を確保できる。また、ハウジング7の歪みを最小限に抑えてアンバランス量を小さくし、低振動なポンプを実現できる。さらに強制冷却した分、巻線の銅量を削減できるためコストダウンできる。
【0023】
マグネットポンプにおいては、図2のように冷却ファン16を形成する羽根の出口角β2は、冷却効果による巻線温度と騒音に影響する。図4に示すように、出口角β2が30°以上になると冷却効果は増加する反面、風切り音が増加しはじめ、羽根の枚数と回転数に起因する周波数にピークが発生する。この周波数は羽根枚数によるが、一般的には600Hz前後となるため、ポンプを搭載する機器本体に一番共振しやすい。
【0024】
また、出口角β2が10°より小さくなると、逆に冷却効果が小さくなる。したがって、ファン羽根の出口角β2は、10°〜30°に設定するのが望ましい。また、ファンの羽根枚数はポンプ室内の羽根枚数との最小公倍数ができるだけ大きくなるように設定することで、機器に共振しにくい、少なくとも1000Hz以上にピーク値を設定すべきである。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態1のマグネットポンプは、ブラケット9とポンプ側モータカバー6a間に脚9cにより間隙9aを設けている。
【0026】
前記の間隙9aがないと、風が内部に滞留し冷却効果が悪化する。図5に示すように、特にポンプ側ベアリング5aで著しい温度上昇となる。前記のように間隙9aを増加させることで、ポンプ側ベアリング5aの温度上昇は低減できるが、間隙9aが2mm以上になると効果に差がなくなり、またポンプ全長にも影響するため、間隙9aは2mm程度が望ましい。
【0027】
また、本実施の形態1のマグネットポンプは、図1に示すようにブラケット9の底部9bの一部に風穴9dを形成している。
【0028】
図6にブラケット9に風穴9dがある場合とない場合における騒音の周波数分析結果を示す。風穴9dがないと、Aレンジでは大きな差として現れないが、周波数分析で確認すると、ファン16の羽根枚数に起因する周波数域である600Hz前後でブラケット9に共鳴し、大きなピークを生じてしまう。
【0029】
一方、ポンプを搭載する機器は、800Hz以下で非常に共振しやすい構造になっている。このため、ポンプ騒音に600Hz前後で大きなピークがあると、機器に共振し、機器全体の騒音値が悪化してしまう結果となる。風穴9dを設けると、600Hz前後のピーク値が低減されるため、機器全体の騒音も低減可能となる。
【0030】
図3に示すように、風穴9dの幅9eは指の侵入ができない幅6mm程度以下が適当で、ブラケット9を成形する際、別工程で側面に風穴を設けずに済むよう、ブラケット9の底部9bにR10程度の曲面を設け、上部から打ち抜くことによって、低コストにて風穴9dを設けることができる。または、風穴9dの変形が重要視されないならば、風穴9dを打ち抜いた後、深絞りすることも可能である。
【0031】
風穴9dは被水時に電動機1内に水が侵入しないよう、中心より下方に設けるべきであり、また、間隙9aを設けるための脚9cにかからないような位置に、片側1〜2個設けるのが望ましい。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明のマグネットポンプは、プレス部品であるハウジングに切り起こしによる羽根を設けずに、スペーサに羽根を設けることで、巻線やベアリングを効果的に冷却することができるため、ポンプの長期信頼性を確保できるとともに、ハウジングの歪みを最小限に抑えることでアンバランス量が小さくなり、低振動なポンプを実現できるという効果を有する。さらに強制冷却した分、巻線の銅量を削減できるため、コストダウンの効果も有する。
【0033】
また、モータカバーとブラケット間に間隙を設けることで、風の流れを改善し、特にポンプ側ベアリングの温度上昇を効果的に低減できる効果を有する。
【0034】
さらに、ブラケットの一部に風穴を設けることで、機器に共振しやすい騒音のピーク値を低減できるため、ポンプを搭載する機器全体の騒音を低減できるという効果を有する。また、ブラケットをプレスする際、別工程にて風穴を設けなくて済むようにすることで、コストを抑えることができるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のマグネットポンプの横断面図
【図2】同マグネットポンプにおける冷却ファンのF−F'矢視図
【図3】同マグネットポンプにおけるブラケットの風穴のG−G'矢視図
【図4】同冷却ファンの羽根出口角β2と騒音値および巻線温度との関係を示す図
【図5】同ブラケットの風穴有無と、巻線およびポンプ側ベアリング温度との関係を示す図
【図6】同ブラケットの間隙用の脚有無と騒音周波数分析の関係を示す図
【図7】従来のマグネットポンプの横断面図
【符号の説明】
1 電動機
2 ステータ
3 シャフト
4 ロータ
5a ポンプ側ベアリング
5b 反ポンプ側ベアリング
6a ポンプ側モータカバー
6b 反ポンプ側モータカバー
7 ハウジング
7a 駆動用マグネット
8 スペーサ
9 ブラケット
9a 間隙
9b 底部
9c 脚
9d 風穴
10 ポンプケーシング
10a 吸込側継手
10b 吐出側継手
11 分離板
12 Oリング
13 軸
14 羽根車
14a 従動用マグネット
15 軸受
16 冷却ファン
Claims (1)
- 外郭部品であるモータカバーと、該モータカバーのポンプ側の端部に保持されるポンプ側ベアリングと、前記ポンプ側ベアリングに回転可能に支持される電動機シャフトと、で構成される電動機と、
前記電動機シャフトの先端部に固定されるハウジングと、前記ハウジングに固定される駆動用マグネットと、前記ハウジングを覆うと共に底部が前記モータカバーと前記ハウジングの間に位置する有底筒状のブラケットと、前記ブラケットに分離板を介して取り付けられるポンプケーシングと、前記ポンプケーシングと前記分離板とで形成されたポンプ室内に設けられる固定軸と、前記固定軸に回転自在に支承される羽根車と、前記羽根車に固定されると共に前記駆動用マグネットと対をなして磁気結合状態となる従動用マグネットと、で構成されるポンプ部と、
を備えたマグネットポンプであって、
前記ハウジングと前記電動機の間の前記電動機シャフトに設けたスペーサに、羽根を設けて冷却ファンを構成し、
前記ブラケットの底部外周部に風穴を設け、前記ブラケットの底部中央部に、前記冷却ファンが回転自在に配置される開口部を設け、
前記ブラケットの底部と前記モータカバーとの間に間隙を設けたことを特徴とするマグネットポンプ。
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