JP4677933B2 - ポンプ及び流体システム - Google Patents

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Description

本発明は、ピストンあるいはダイアフラム等により、ポンプ室内の容積を変更して動作流体の移動を行うポンプに関し、特に、小形高出力のポンプに関する。
従来、出口流路の逆止弁に代えてイナータンス値の大きい流路構造とすることで、流体の慣性効果を利用し、高負荷圧力に対応し吐出流量の多い高出力で信頼性の高いポンプが、本発明の発明者らにより開発されている。(非特許文献1参照)
また、遠心ポンプ等、液体を動作流体とし気体がポンプ内部に滞留するとポンプ性能が悪化するポンプを流体駆動源とした流体システムには、流路内に旋回流を発生せしめ、動作流体中の気泡を排除する装置が設けられることが多い。(例えば特許文献1参照)
また、ポンプ内部で血液の滞留に起因する血液の凝固を防止するために、ポンプ内部に旋回流を発生させる血液ポンプユニットが知られている。(特許文献2参照)
「流体の慣性効果を用いた高出力マイクロポンプ」 日本機械学会誌 2003.10 VOL.106 No.1019 (第823頁、図1〜図5) 特開平11−333207号公報(第4頁、図1) 特許第2975105号公報(第6頁、第12図〜第13図)
非特許文献1の構成は、ポンプ内部に気泡が入った場合には、ポンプ容積が変化しても気泡の影響でポンプ室内の圧力が十分に上がらず、性能が劣化し、さらに一定以上の気泡がポンプ内部に入った場合には、液体の吐出が不可能になるという課題があった。
特許文献1のような気泡除去装置は、冷却システムのような閉鎖電子機器の循環式液冷装置内の流路に設置され、動作流体の気泡除去を行うことが可能であり、ポンプ室内への気泡の流入を減じることはできるが、一旦、ポンプ室内部に入ってしまった気泡に対しては効果が無かった。
特許文献2のポンプは、滞留による血液の凝固を防止する目的であり、気泡排除のための十分な旋回流を発生するものではなかった。
そこで本発明は、高負荷圧力に対応し、吐出流量が多く、ポンプ室内部に気泡が入っても吐出性能の回復が可能なポンプの提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のポンプは、容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室内において前記流体の旋回流を発生させ、かつ、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された逆止弁と、前記ポンプ室から前記旋回流の回転中央部にある流体を流出させる出口流路と、を備えることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明のポンプは、略回転体形状で容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ動作流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された入口側流体抵抗要素と、前記ポンプ室から動作流体を流出させる出口流路と、前記出口流路内に形成された管路要素と、を備え、前記入口流路の合成イナータンス値が前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいポンプにおいて、旋回流発生構造は、前記ポンプ室内に備えられるとともに、前記出口流路は、前記ポンプ室の略回転体形状の回転軸に配設されていることを特徴とする。
上記構成によれば、出口流路に蓄えられた運動エネルギーにより生じる流体慣性力を利用できるので、高負荷圧力に対応し吐出流量の多い高出力なポンプとなる。さらに、ポンプ室内に旋回流が生成されるため、遠心力によりポンプ室内に流入した気泡は略円形形状のポンプ室の中心付近に集まり、ポンプ室の概中心にあるある出口流路から速やかに排出される。その結果、ポンプ室内の気泡が増加することは無くポンプの性能劣化を防ぐことができる。
なお、本発明は、必ずしも入口流路の合成イナータンス値が出口流路の合成イナータンス値よりも小さいポンプに限られるものではない。例えば、入口流路の合成イナータンス値が出口流路の合成イナータンス値よりも大きく、出口流路にも流体抵抗要素を備えるポンプに適用することもできる。
また、本発明においては、必ずしも旋回流発生構造がポンプ室内に備えられている必要はない。
また、本発明においては、必ずしもポンプ室が略回転体形状で、出口流路がポンプ室の略回転体形状の回転軸と重ねて配設されている必要はない。出口流路は、旋回流発生構造によって発生される、動作流体の旋回流の回転中央部に隣接して配設されていれば良い。
すなわち、本発明は、容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ動作流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された入口側流体抵抗要素と、前記ポンプ室から動作流体を流出させる出口流路と、前記出口流路内に形成された管路要素と、を備えるポンプにおいて、前記ポンプ室内において前記動作流体の旋回流を発生させる旋回流発生構造を備え、前記出口流路は、前記旋回流の回転中央部に隣接して配設されているポンプであれば良い。
このような構成を有する本発明のポンプによれば、旋回流発生手段によって、ポンプ室内に動作流体の旋回流が生成されるため、遠心力によりポンプ室内に流入した気泡はポンプ室の中心付近(回転中央部)に集まり、旋回流の回転中央部に隣接して配設される出口流路から速やかに排出される。その結果、ポンプ室内の気泡が増加することは無くポンプの性能劣化を防ぐことができる。
また、本発明は、前記旋回流発生構造は前記入口側流体抵抗要素であることを特徴とする。
上記構成によれば、動作流体が入口側流体抵抗要素を通過することにより旋回流を発生させることができる。従って、出口流路に蓄えられた運動エネルギーにより生じる流体慣性力により、ポンプ室内に動作流体が流入している時間のほうが、流入が停止している時間に比して長い本発明のポンプにおいては、より効率的に高速の旋回流を発生させることが可能となる。
また、本発明は、入口側流体抵抗要素を複数個有することを特徴とする。
上記構成によれば、より滑らかに旋回流を発生するとともに、吸入抵抗を減少させて流量を増加することが可能になる。
また、本発明は、前記ポンプ室が略回転体形状を有し、入口側流体抵抗要素を、ポンプ室の略回転体形状の一方の周方向に開口する逆止弁であることを特徴とする。
上記構成により、簡単な構造で旋回流を発生することが可能となる。
また、本発明は、複数の逆止弁は単一部材から形成されていることを特徴とする。
上記構成により、複数の逆止弁を安価に製造することができ、組立性も向上する。
また、本発明は、前記逆止弁あるいは該逆止弁が当接するポンプ室の一部に、前記動作流体の流れ方向を規制する流れ規制手段が設けられていることを特徴とする。
上記構成により、動作流体の流れ方向を旋回流方向に規制することができるため、動作流体の旋回流を容易かつ強く形成することが可能となる。
また、本発明は、前記流れ規制手段は前記逆止弁に形成された折曲部であり、前記逆止弁が当接するポンプ室の一部には前記折曲部を収納する収納溝が形成されていることを特徴とする。
上記構成により、簡単な構造で動作流体の流れ方向を規定することができるとともに、収納溝に折曲部を収納可能であるため逆止弁を確実に機能させることができる。
さらに、本発明は、旋回流発生構造を、入口側抵抗要素からポンプ室への流路が前記ポンプ室の略円形形状の周方向へ傾いた傾斜流路としたものである。こうすることで、旋回流発生構造が流体抵抗要素によらなくなるため、様々な動作流体に最適な構造の流体抵抗要素を使用することが可能になる。
また、本発明において、前記旋回流発生構造は、前記入口側流体抵抗要素から前記ポンプ室への流路を、前記ポンプ室の略回転体形状の周方向へ傾斜させた傾斜流路であることを特徴とする。
また、本発明は、前記傾斜流路を複数有することを特徴とする。
上記構成によれば、より滑らかに旋回流を発生させることができるとともに、吸入抵抗を減少させて流量を増加することが可能になる。
なお、本発明においては、旋回流発生構造として用いられる流路が必ずしも傾いた傾斜流路として構成されている必要はない。例えば、流路は水平であっても構わない。
すなわち、前記旋回流発生構造は、前記ポンプ室の略回転体形状の周方向へ向く流路であれば良い。
このような構成によれば、動作流体が略回転形状の周方向へ向いて流入されるため、動作流体の旋回流を発生させることが可能となる。
また、本発明においては、前記流路は、前記ポンプ室の側壁に接続されて配設されることを特徴とする。
上記構成によれば、動作流体がポンプ室の側壁に沿って流入される。このため、最も気泡が滞留しやすいポンプ室の側壁近傍に速い流れの旋回流を発生することが可能となり、より確実に気泡を排出することが可能となる。
さらに、本発明は、前記ポンプ室内における前記動作流体の流速を速める流速増加手段を備えることを特徴とする
上記構成によれば、流速増加手段によって、ポンプ室内における動作流体の流速が速められる。このため、ポンプ室内により強い旋回流を発生させることができ、より確実に気泡を排出することが可能となる。
さらに、本発明は、略回転体形状で容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ動作流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された入口側流体抵抗要素と、前記ポンプ室から動作流体を流出させる出口流路と、前記出口流路内に形成された管路要素と、を備え、前記入口流路の合成イナータンス値が前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいポンプにおいて、流体のイナータンスを減ずるバッファ室が前記出口流路の周囲に環状に形成されていることを特徴とする。
上記構成により、入口側流体抵抗要素の近傍にバッファ室を形成できるため、入口流路の合成イナータンスが小さくなり、慣性効果を効果的発生できるため更なる高出力化が可能になる。
さらに、本発明は、略回転体形状で容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ動作流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された入口側流体抵抗要素と、前記ポンプ室から動作流体を流出させる出口流路と、前記出口流路内に形成された管路要素と、を備え、前記入口流路の合成イナータンス値が前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいポンプにおいて、前記ポンプ室の側壁は環状部材で形成されていることを特徴とする。
上記構成により、様々な仕様に合わせたポンプ室の体積等の変更を容易に行うことができる。
以下、本発明に係る複数の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係わるポンプ構造について図1で説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係わるポンプの縦断面を示している。図2は、図1に示すポンプ上面に取付けられているフィルム保護カバー401および環状樹脂フィルム412をポンプより取り外した状態の上面図であり、図1のA−A線断面図である。円筒形状のケース301の底部に底板321が固着され、さらに底板321の上面には積層型圧電素子311が固着されている。積層型圧電素子311の上面には補強板312が固着され、その補強板312の上面とケース301の縁部の双方に、ダイアフラム313が固着されている。
ダイアフラム313の上部には、環状部材331及び弁板201を挟むように、流路部材101が、ケース301との間で図示しないネジで固定されている。環状部材331の内周が側壁となり、ダイアフラム313を下面とし、弁板201及び流路部材101を上面とした各部材によって、円筒形状となるポンプ室125が形成される。ポンプ室125の形状は、簡単な構造の環状部材331によって自由に変更できるため、容易かつ低コストで、動作流体の特性やポンプの要求仕様等にあわせた変更ができる。
流路部材101には出口接続管112の一端が接続され、出口接続管112の幅手方向の中心に管路要素124が穿たれており、ポンプ室125に開口している。出口接続管112の幅手方向の中心は、ポンプ室の回転体形状の軸中心と一致している。
環状流体室122には入口接続管111の一端が接続され、入口接続管111の幅手方向の中心に流入流路121が穿たれており、環状流体室122に開口している。環状流体室122の底部には、複数の弁穴123がポンプ室に向けて開口し、弁穴123の上部は、流体抵抗を減ずるためにテーパー加工がなされている。入口接続管111及び出口接続管112の他端は、それぞれ適切な樹脂製チューブ等(図示せず)で外部の流体システムに接続される。
ここで、図3を用いて弁板201の構造を詳しく説明する。図3に示すように弁板201は、1枚の金属薄板である弁基部213の内周に流体抵抗要素として複数の弁部211が一方向の周方向に開口するように一体形成されている。弁部211は弁穴123より大きく構成されている。さらに、図5(a)に示すように弁基部213と弁部211の間は、金属薄板がエッチングされた弁屈曲部212が構成されている。
以上のように、複数の弁が単一部材から形成される構造であることから、弁部211と弁穴123の位置決めが容易となる。
また、弁板201と弁穴123で逆止弁が構成される。先に述べたとおり、複数の弁が単一部材から形成される構造であることから、弁部211と弁穴123の位置決めが容易となることから、流体の逆流防止を確実に行うことができる。
以上のように、複数の弁が単一部材から形成される構造であることから、逆止弁を安価に製造することができる。
次に、流路のイナータンス値Lを定義を行う。流路の断面積をS、流路の長さをl、動作流体の密度をρとした場合に、L=ρ×l/Sで与えられる。流路の差圧をΔP、流路を流れる流量をQとした場合に、イナータンス値Lを用いて流路内流体の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
つまりイナータンス値Lとは、単位圧力が流量の時間変化に与える影響度合を示しており、イナータンス値Lが大きいほど流量の時間変化が小さく、イナータンス値Lが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンス値は、個々の流路のイナータンス値を、電気回路におけるインダクタンスの並列接続、直列接続と同様に合成して算出すれば良い。具体的には、複数の流路を並列接続した場合の合成イナータンス値は、電気回路におけるインダクタンスの並列接続と同様に合成して求められる。また、複数の形状が異なる流路の直列接続した場合の合成イナータンス値は、電気回路におけるインダクタンスの直列接続と同様に合成して求められる。
次に、入口流路及び出口流路について定義する。
ポンプ室125へ流体が流入する流路において、ポンプ室125への開口部から脈動吸収手段との接続部までの流路のことを入口流路と言う。ここで、脈動吸収手段とは流路内の圧力変動を十分に減衰させる手段であり、シリコンゴム等のゴム、その他の樹脂、薄い金属等、内部の圧力によって変形しやすい材質でできた流路や、流路に接続されたアキュムレータ、さらに、複数の異なる位相の圧力変動を合成する集合流路等が、脈動吸収手段に相当する。
本実施形態では図1に示すように、環状流体室122の上部は脈動吸収手段としてフィルム保護カバー401で構成されたバッファ室411が形成され、環状流体室122とは柔軟な環状樹脂フィルム412で動作流体が封止されている。フィルム保護カバー401には図示しない穴があけられているため、バッファ室411の容積は自由に変化する構成となっている。よって、ポンプ室125への弁穴123の開口部から環状樹脂フィルム412までの流路のことを、入口流路と言う。
また、本実施形態においては、バッファ室が構成上、出口流路の周囲に環状に形成されているが、その結果、入口側流体抵抗要素の近傍にバッファ室を形成でき、入口流路の合成イナータンスが小さくなるとともに、複数の弁穴までのイナータンスを等しくできるという効果がある。
出口流路の定義も入口流路と同様であり、ポンプ室125から流体が流出する流路において、出口接続管112には、図示しない柔軟な樹脂製チューブが接続されるため、ポンプ室125への管路要素124の開口部から出口接続管112の端面までが出口流路となる。すなわち、本実施形態では管路要素124自体を出口流路と言う。
次に、図1に示した構造のポンプ動作について図4を用いて説明する。図4は積層型圧電素子311への駆動電圧および、絶対圧表示によるポンプ室125の内部の圧力波形を示したグラフである。なお、動作流体は水であり、ポンプに負荷圧力(=ポンプ室125より下流の動作流体の圧力)を約3気圧加えている。
駆動電圧が増加すると積層型圧電素子311は図1の上方向に伸長するため、ダイアフラム313はポンプ室125の体積を圧縮する。駆動電圧の谷部過ぎからポンプ室125の圧縮による圧力上昇が開始し、駆動電圧の上昇勾配が最も大きい点を通過後、ポンプ室125の内圧は急激に下降し、ポンプ室内絶対圧が0気圧に近づいたところで、動作流体中に溶けていた成分がガス化して気泡となるエアレーションやキャビテーンヨンが起こり、ポンプ室内絶対圧0気圧付近で平坦になる。
ここで、図4における主ポンプ室内圧の平坦部の状況を説明する。まず、弁部211によって弁穴123が閉鎖されている状態で、ポンプ室125が圧縮されると出口流路の大きなイナータンスにより、ポンプ室125内の圧力は大きく上昇する。この圧力上昇により出口流路の動作流体は加速され、慣性効果を発生する運動エネルギーが蓄えられる。
積層型圧電素子311の伸縮速度の勾配が小さくなると、それまでに出口流路内の動作流体に蓄えられた運動エネルギーによる慣性効果で動作流体は流れ続けようとするため、ポンプ室125内の圧力は急激に降下し、やがて入口流路内の圧力より小さくなる。この時点で圧力差により弁部211が開き、入口流路からポンプ室125へ動作流体が流入する。
このとき、入口流路の合成イナータンス値が出口流路の合成イナータンス値よりも小さいため、入口流路における流入流量の増加率が大きい。そのため、出口流路からの流出が継続していると同時に、多くの動作流体がポンプ室125内へ流入する。そして、このポンプ室125からの流出と流入が同時に生じている状態は、積層型圧電素子311が収縮して再び伸長に転じるときまで継続する。
つまり、本構造のポンプは吐出と吸入が同時に生じている状況が存在し、この状況はポンプの動作時間中の約2/3以上に達するため、大きな流量を流すことができる。
ところで、ポンプ室内が極めて高圧になるため、高い負荷圧力に対応することができるが、入口流路の合成イナータンス値を出口流路の合成イナータンス値よりも大きくした場合は、ポンプ室125への流入流量が少なく、出口流路にて逆流が生じるため、ポンプの吐出流量が減少し、性能が低下する。
また、図4において、ポンプ室125内の圧力が最大で絶対圧約3MPaまで上昇しているように、本構造のポンプは、ポンプ室内に高い圧力を生じさせて高出力を得ている。そのため、特にポンプ室125の内部に気泡が滞留した場合には、積層型圧電素子311が最も縮んだ状態から最も伸びた状態となるまでの間にダイアフラム313の変形によって生じるポンプ室体積の変化量(以降、排除体積と呼ぶ)は、気泡を圧縮するのに使われ、ポンプ室内の圧力上昇に寄与しなくなり、ポンプ動作が不能になる。そのため、滞留した気泡は速やかに排除することが重要である。
ここで、本実施形態のポンプにおけるこの気泡の排出について、図5及び図6を用いて説明する。図5は弁動作を示す側断面図、図6はポンプをB−B線で切断し、下方向から見たときのポンプ室125への流体流入時の流体の流れを示す断面図を示している。図5(a)は弁閉鎖時、(b)は弁開放時の状態を示している。図中、矢印は動作流体の流れである。
弁穴123側より、ポンプ室125側の圧力が高い場合は、その圧力差によって図5(a)に示すように弁部211は流路部材101の下面に密着する。よって、弁部211より小さい弁穴123は弁部211によって閉鎖され、動作流体の逆流は防止される。
逆に、弁穴123側より、ポンプ室125側の圧力が低い場合は、その圧力差によって弁部211が下側に押される。よって、図5(b)に示すように逆止弁が開放する。このとき、エッチングされた弁屈曲部212が、弁基部213や弁部211より大きな曲率で曲がるため、図5(b)に示すように、弁穴123に対して弁部211は傾斜することになる。この傾斜した弁部211によって、図6に示すように弁穴123から流入してきた動作流体は流路部材101に沿った流れとなる。すなわち、旋回流発生構造の一例である。
この動作流体の流れを図6で説明すると、弁部211によってポンプ室125の一方向の周方向に向きを変えた動作流体は、略回転体形状のポンプ室125に沿って旋回流となる。この旋回流の遠心力の効果によって、動作流体中の気泡は旋回流の中心に集められ、ポンプ室125に開口した管路要素124から排出される。
本発明のポンプにおいて、旋回流はポンプ室へ動作流体が吸入されているときに加速される。この吸入期間は前述したようの、ポンプ動作時間中の2/3以上に達するため、高速の旋回流を発生することが可能となり、大きな遠心力により高い気泡排除効果を得ることができる。
また、本発明のポンプにおいては、より強い旋回流が発生するように動作流体の流れを規制しても良い。このように動作流体の流れを規制する構成について図7を用いて説明する。
図7は図5と同様に(a)が弁閉鎖時、(b)が弁開放時の状態を示している。なお、図7(a)は図5(a)と直交する平面による断面図である。これらの図に示すように、動作流体の流れに沿う弁部211の側部211aがプレス加工等によって直角に折り曲げられている。この側部211aは、動作流体の流れに沿って形成されているため、図7(b)に示すように弁開放時の状態では、流れ出る動作流体の流れ方向を、折り曲げがない弁に比べより強く、旋回流方向に規制することができる。このため、ポンプ室125の一方の周方向により強い流れを形成することができ、これによってより強い旋回流を発生させることが可能となる。このようなより強い旋回流が発生することによって、より高い気泡除去効果を得ることができる。
なお、図7(a)に示すように、ポンプ室125側の流路部材101には、弁部211の側部211aが収納可能となるように、側部211aの高さ以上の深さを有する収納溝101aが形成されている。このため、図7(a)に示すように、弁閉鎖時の状態において、側部211aによって弁部211の閉鎖が妨げられることはなく、確実に弁部211によって弁穴123を閉鎖することが可能となっている。
また、図7(b)に示すように、収納溝101aを形成するのと同時に、弁屈曲部212に当接する流路部材101の一部に溝部101bを形成しても良い。このような溝部101bを形成することによって、弁屈曲部212と流路部材101との間に異物が入り込んだ場合であっても異物が溝部101bに取り込まれるため、異物によって弁屈曲部212の動きが妨げられることはない。
なお、動作流体の流れを規制する構成としては、図7に示す構成に限られるものではなく、例えば、流路部材101側に動作流体の流れを規制する壁部を設けても良い。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係わるポンプの構造(図1参照)は、上記第1の実施の形態のポンプ構造と多くの構造が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
ポンプの構造においては、旋回流発生構造及び流体抵抗要素である逆止弁の構造が異なる。
図8は、弁動作を示す側断面図である。第1の実施形態と同様に流路部材101の下側にポンプ室が形成される。傾斜流路223が流路部材101の下面に対して傾斜して穿たれ、傾斜流路223内部には、弁座221とボール222で構成された逆止弁ユニットが圧入固定されている。
弁座221は、流路上流(弁穴123側)側はボール222より小さな穴を有し、流路下流(ポンプ室125側)側は格子状のボール222脱落防止板という構造である。
図8(a)に示すように、ボール222が上流に側に移動した場合には、流路を閉鎖し流体抵抗が大きくなる。従って図8(b)に示すように、ボール222が下流側に移動した場合には流路が閉鎖されることはない。
図8(b)において、動作流体の上流側の圧力が下流側より大きくなると、ボール222は下流側に移動して、動作流体は図中の矢印で示すように、傾斜流路223からポンプ室に対して傾斜して噴出する。この結果、実施形態1と同様にポンプ室内に旋回流を発生することができ、遠心力による気泡の排除を可能にするのである。
すなわち本実施形態では、旋回流発生構造は傾斜流路223のポンプ室に対しての傾斜となっている。その結果、部品点数は第1の実施形態に比して増加する一方、流体抵抗要素と旋回流発生構造が独立しているため、各々最適な構造とすることができるという利点がある。
また、本実施形態では傾斜流路223の内径は一定としたが、流路下流(ポンプ室125側)側の内径を小さくすることでポンプ室125内部への動作流体の噴出速度を上げ、より強い旋回流を発生させることも可能である。
さらに、傾斜流路223を途中で曲げることで、ポンプ室125に対する傾斜角度を大きくし、より効率的に旋回流を発生させることも可能である。
また逆に、図9に示すように、傾斜流路223の替わりに水平な流路(水平流路231)を設けても良い。このような水平流路231は、流路部材101に切欠き232を形成し、当該切欠き232とダイアフラム313とによって構成することができる。
このような水平流路231であっても、ポンプ室125の周方向に向けて接続されることによって動作流体をポンプ室125の周方向に流入することができるため、旋回流を発生させることができる。
また、このように水平流路231のみによって旋回流が発生可能であるため、逆止弁の形態に制約が生じず、逆止弁の選択性が高まる。このため、例えば、図9に示すように、フロート弁233を用いることもできる。なお、フロート弁233を用いる場合には、弁穴234を丸孔とせず複数の長孔にすることによって、ポンプ室125に流入させる動作流体の流量を多くすることができる。これによって、より強い旋回流を容易に発生させることが可能となる。
また、図10に示すように、水平流路241を環状部材331の内部に作りこみ、水平流路241をポンプ室125の側壁と接続させても良い。このように、水平流路241をポンプ室125の側壁と接続させることによって、最も気泡が滞留しやすいポンプ室125の側壁近傍に速い流れの旋回流を発生することが可能となり、より確実に気泡を排出することが可能となる。
なお、水平流路をポンプ室125の側壁と接続させる場合には、水平流路を側壁に対して傾斜させ図9と同様に、水平流路内に逆止弁を設けても良いが、図11に示すように、水平流路の接続箇所と当接する位置に逆止弁242が形成されたリング状の板材243を環状部材331に嵌合させることによって、逆止弁を設置しても良い。この場合は、水平流路がポンプ室側壁に直交していても、逆止弁の作用で旋回流が発生できる。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態に係わるポンプの構造(図1参照)も、上記第1の実施の形態のポンプ構造と多くの構造が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第3の実施形態に係わるポンプは、ポンプ室125内における動作流体の流速を速める強制流動部(流速増加手段)を備える点において上記第1の実施形態に係わるポンプと相違する。
図12は、本第3の実施形態に係わるポンプの縦断面を示している。また、図13は、図12のC−C線断面図である。
図13に示すように、本第3の実施形態に係わるポンプは、上記第1の実施形態に係わるポンプが備える環状部材331の替わりに、ポンプ室125を囲う外室342を有する環状部材341を備えている。ポンプ室125と外室342との間には、中間壁343が形成されている。この中間壁343には、ポンプ室125の一方の周方向に向けて形成される流路344が複数形成されている。
図12に示すように、底板321のさらに下側に第2のポンプ室352を備える強制流動部351が設置されている。ポンプ室352の内部には、ダイアフラム353と該ダイアフラム353を駆動する圧電素子354が収納されている。なお、圧電素子354には、不図示の配線が接続されており、この配線を介して圧電素子354に電流が印加される。
そして、このような強制流動部351の第2のポンプ室352と、上述の外室342とが、ケース301及び底板321を貫通して形成される接続流路355を介して接続されている。
このような構成を有する本第3の実施形態に係わるポンプによれば、圧電素子354に電流が印加され、これによってダイアフラム353が往復運動される。そして、ダイアフラム353の往復運動によって第2のポンプ室352内の動作流体が流動される。
より詳細には、ダイアフラム353が紙面下方に移動した場合には、第2のポンプ室352に動作流体が流れ込み、ダイアフラム353が紙面上方に移動した場合には、第2のポンプ室352から動作流体が排出される。そして、第2のポンプ室352に動作流体が流れ込む場合にはポンプ室125内の動作流体が中間壁343に形成された流路344を介して外室342側に排出される。また、第2のポンプ室352から動作流体が流れ込む場合には中間壁343に形成された流路344を介してポンプ室125内に動作流体が流れ込む。
すなわち、本第3の実施形態に係わるポンプにおいては、強制流動部351のダイアフラム353が駆動されることによって、中間壁343に形成された流路344を介して動作流体がポンプ室125に出入りする。
流体を吐き出した場合には吐き出された環境に流体の流れが強く形成されるのに対して、流体を吸引した場合には吸引された環境に流体の流れが形成されにくい。つまり、ポンプ室125に動作流体が流入する場合には、流路344を介して動作流体が流れ込むことによって、ポンプ室125内の旋回流を強める流れが形成される。一方、ポンプ室125から動作流体が排出される場合には、ポンプ室125内の旋回流に大きな影響を与えることなく動作流体が排出される。
したがって、強制流動部351のダイアフラム353を繰り返し駆動することによって、ポンプ室125内における動作流体の旋回流を速めることが可能となる。そして、このように動作流体の旋回流が速められることによって、ポンプ室125内の気泡がよりポンプ室125の中央部に集められやすくなる。よって、より確実に気泡を排出することが可能となる。
なお、本第3の実施形態に係わるポンプにおいては、強制流動部351が別体とされているため、第2のポンプ室352の容量に制約がない。このため、ダイアフラム353の変位量を十分に確保することが容易となっている。その結果、より多くの流量の動作流体を流すことが可能となり、ポンプ室125内により強い旋回流を発生させることが可能となる。
また、本第3の実施形態に係わるポンプにおいては、強制流動部351を底板321の下側に強制流動部351を設置することによって、ポンプが横方向に大きくなることを防止している。しかしながら、ポンプの大きさに制約がない場合には、必ずしも強制流動部351を底板321の下側に設置する必要はない。
また、例えば、積層型圧電素子311を停止中に圧電素子354を駆動する構成にすることによって、積層型圧電素子311の駆動回路と圧電素子354の駆動回路とを兼用することが可能となる。
以上説明した構成の他の例として、略回転体形状の周囲の壁に傾斜流路223を設けても良い。例えば環状部材に渦巻状に溝を形成し、その溝からポンプ室125内に動作流体を流入させることも可能である。
また、旋回流発生構造を、略回転体形状のポンプ室125の回転軸と交差する少なくとも一方の壁に渦巻状の溝をつけた旋回流発生構造を用いても良い。
また、上記実施形態においては、入口流路の合成イナータンス値が出口流路の合成イナータンス値よりも小さいポンプを挙げて説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、入口流路の合成イナータンス値が出口流路の合成イナータンス値よりも大きく、出口流路にも流体抵抗要素を備えるポンプに適用することもできる。
本発明は、小形高出力のポンプを使用する各種産業で利用できる。
本発明に係わるポンプの第1の実施形態の縦断面である。 図1のポンプをA−A線で切断し、上方から見た断面図である。 本発明に係わるポンプの第1の実施形態の弁板の断面図である。 本発明に係わるポンプの積層型圧電素子の駆動電圧および、絶対圧表示によるポンプ室の内部の圧力波形を示したグラフである。 本発明に係わる弁動作を示す側断面図。 図1のポンプをB−B線で切断し、下方から見たときのポンプ室125への流体流入時の流体の流れを示す断面図である。 本発明に係わるポンプの第1の実施形態の変形例を示す断面図である。 本発明に係わるポンプの第2の実施形態の側断面図である。 本発明に係わるポンプの第2の実施形態の変形例を示す断面図である。 本発明に係わるポンプの第2の実施形態の変形例を示す断面図である。 本発明に係わるポンプの第2の実施形態の変形例が備える板材の斜視図である。 本発明に係わるポンプの第3の実施形態の側断面図である。 図12のポンプをC−C線で切断し、上方から見た断面図である。
符号の説明
101……流路部材、101a……収納溝、111……入口接続管、112……出口接続管、121……流入流路、122……環状流体室、123……弁穴、124……管路要素、125……ポンプ室、201……弁板、211……弁部、211a……側部(流れ規制手段)、212……屈曲部、221……弁座、222……ボール、223……傾斜流路、231,241……水平流路、242……逆止弁、313……ダイアフラム、331,341……環状部材、351……強制流動部(流速増加手段)


Claims (10)

  1. 容積が変更可能なポンプ室と、
    前記ポンプ室へ流体を流入させる入口流路と、
    前記ポンプ室内において前記流体の旋回流を発生させ、かつ、前記ポンプ室と前記入口流路との間に配設された逆止弁と、
    前記ポンプ室から前記旋回流の回転中央部にある流体を流出させる出口流路と、
    を備えるポンプ。
  2. 請求項1に記載のポンプにおいて、
    前記入口流路の合成イナータンス値が前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいことを特徴とするポンプ。
  3. 請求項1に記載のポンプにおいて、
    前記入口流路の合成イナータンス値が前記出口流路の合成イナータンス値よりも大きいことを特徴とするポンプ。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポンプにおいて、
    前記逆止弁を複数個有することを特徴とするポンプ。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポンプにおいて、
    前記ポンプ室が略回転体形状を有し、
    前記逆止弁は、前記ポンプ室の略回転体形状の一方の周方向に開口することを特徴とするポンプ。
  6. 請求項4または請求項5に記載のポンプにおいて、
    前記複数の逆止弁は単一部材から形成されていることを特徴とするポンプ。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポンプにおいて、
    前記逆止弁あるいは前記ポンプ室の一部に、前記流体の流れ方向を規制する流れ規制手段が設けられていることを特徴とするポンプ。
  8. 請求項7に記載のポンプにおいて、
    前記流れ規制手段は前記逆止弁に形成された折曲部であり、前記逆止弁が当接するポンプ室の一部には前記折曲部を収納する収納溝が形成されていることを特徴とするポンプ。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載のポンプにおいて、
    前記入口流路から前記逆止弁に流入するときの前記流体の流速より、前記逆止弁から前記ポンプ室に流入するときの前記流体の流速を速める流速増加手段を備えることを特徴とするポンプ。
  10. 請求項1〜 請求項9のいずれかに記載のポンプを用いた流体システム。
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