JP4676048B2 - 脱髄性疾患処置剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多発性硬化症や急性散在性脳脊髄炎等の脱髄性疾患の処置剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
脱髄性疾患は、神経の軸索を取り巻き、軸索の絶縁体として興奮伝導を促進する機能を有する髄鞘が傷害される神経疾患であり、これに属するものとしては多発性硬化症や急性散在性脳脊髄炎等が挙げられる。これらの脱髄性疾患の処置のための薬剤としては、現在、副腎皮質ホルモン剤が広く用いられている。また、この副腎皮質ホルモンが治療に抵抗性を示す場合には、種々の免疫抑制剤(azathioprine、cyclophosphamide、ciclosporin A、FK506、mizoribine)が併用される。
【0003】
しかし、いずれの薬剤を用いた場合でも完治に到る治療効果が得られないという問題がある。さらに、重篤な副作用として、副腎皮質ホルモン剤を用いた場合には誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、消化性潰瘍、糖尿病等が現れることが、また、免疫抑制剤を用いた場合には骨髄抑制、出血傾向、誘発感染症等が現れることが治療上の大きな問題点になっている。
【0004】
また、欧米では、これらの処置薬剤の他に有効な薬剤として免疫修飾剤であるインターフェロンβが用いられている。しかしながら、この薬剤は、医療費が高価であるため長期的な使用において経済的な問題が生じることや、2〜3年にわたる投与によって患者体内に中和抗体が獲得されて治療効果が得られなくなることが知られている。このため、長期にわたって効果を示す新たな処置薬剤の開発が期待されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、多発性硬化症や急性散在性脳脊髄炎等の脱髄性疾患の予防や症状改善に有効であり、且つ安全性の高い脱髄性疾患処置剤を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは上記疾患の動物モデルとされる、ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE)を用いて鋭意検討したところ、ケラタン硫酸オリゴ糖が脱髄性疾患の処置に極めて有効であること、特に脱髄性疾患に伴う諸症状を顕著に改善する作用を有することを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)硫酸基を有するオリゴ糖を有効成分とする脱髄性疾患処置剤。
(2)硫酸基を有するオリゴ糖が、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする、(1)の脱髄性疾患処置剤。
【0008】
【化4】
(Hex-HexN)n ・・・(1)
(HexN-Hex)n ・・・(2)
(式中、Hexはヘキソース残基を、HexNはN−アセチル化又はN−硫酸化されていてもよいヘキソサミン残基を示す。HexとHexNの少なくとも1つのヒドロキシル基又はアミノ基は硫酸化されており、nは1〜5の整数を、−はグリコシド結合を示す。また非還元末端側にさらにシアル酸が結合していてもよい。)
【0009】
(3)ヘキソース残基が、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基又はフコース残基である、(2)の脱髄性疾患処置剤。
(4)ヘキソサミン残基が、N−アセチル化又はN−硫酸化されていてもよいグルコサミン残基、ガラクトサミン残基又はマンノサミン残基である、(2)又は(3)の脱髄性疾患治療剤。
(5)ヘキソサミン残基がN−アセチル化されている、(2)〜(4)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
(6)ヘキソース残基がガラクトース残基である、(2)〜(5)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
(7)ヘキソサミン残基がN−アセチルグルコサミン残基である、(2)〜(6)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
(8)ヘキソース残基及びヘキソサミン残基の両方について、それぞれ1以上のヒドロキシル基が硫酸化されている、(2)〜(7)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
(9)一般式(1)において−で表されるグリコシド結合がβ1,4グリコシド結合であり、一般式(2)において−で表されるグリコシド結合がβ1,3グリコシド結合である、(2)〜(8)のいずれかの脱髄性疾患治療剤。
(10)ヘキソース残基のC6位及びC4位並びにヘキソサミン残基のC3位及びC6位から選ばれるヒドロキシル基、またはアミノ基が硫酸化されている、(2)〜(9)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
(11)硫酸基を有するオリゴ糖が、少なくとも下記式で表される二糖を繰り返し構成単位として1単位以上含むことを特徴とする、(10)の脱髄性疾患処置剤。
【0010】
【化5】
Gal(6S)-GlcNAc(6S)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6−O−硫酸エステルを、-はグリコシド結合をそれぞれ表す)
(12)硫酸基を有するオリゴ糖が、下記式(3)および(4)で表されるものから選ばれることを特徴とする、(11)の脱髄性疾患処置剤。
【0011】
【化6】
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) ・・・(3)
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) ・・・(4)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6−O−硫酸エステルを、β1-4はβ1,4グリコシド結合を、β1-3はβ1,3グリコシド結合をそれぞれ表す)
【0012】
(13)予防剤または症状改善剤である、(1)〜(12)のいずれかの脱髄性疾患処置剤。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
〈硫酸基を有するオリゴ糖〉
本発明の処置剤に用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、硫酸基を有しているオリゴ糖である限りにおいて特に限定されない。例えば、天然物、天然物を分解して得られた物、化学的にあるいは酵素的に合成した物等のいずれでもよい。なお、硫酸基を有するオリゴ糖の調製方法の一例を後述の実施例に示す。
【0015】
硫酸基を有するオリゴ糖は、中でも下記一般式(1)又は(2)で示されるものであることが好ましい。
【0016】
【化7】
(Hex-HexN)n ・・・(1)
(HexN-Hex)n ・・・(2)
(式中、Hexはヘキソース残基を、HexNはN−アセチル化又はN−硫酸化されていてもよいヘキソサミン残基を表す。HexとHexNの少なくとも1つのヒドロキシル基又はアミノ基は硫酸化されており、nは1〜5の整数を、−はグリコシド結合を表す。また非還元末端側にさらにシアル酸が結合していてもよい)
【0017】
上記式(1)、(2)中のヘキソース残基は、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基又はフコース残基であることが好ましく、ガラクトース残基であることがより好ましい。
【0018】
また、上記式(1)、(2)中のヘキソサミン残基は、N−アセチル化又はN−硫酸化されていてもよいグルコサミン残基、ガラクトサミン残基又はマンノサミン残基であることが好ましい。
【0019】
上記ヘキソサミン残基はN−アセチル化されているものがより好ましい。最も好ましいヘキソサミン残基は、N−アセチルグルコサミン残基である。
また、上記ヘキソース残基及び上記ヘキソサミン残基の両方について、それぞれ1以上のヒドロキシル基が硫酸化されているものが好ましい。
【0020】
また、上記一般式(1)において−で示されるグリコシド結合がβ1,4グリコシド結合であり、上記一般式(2)において−で示されるグリコシド結合がβ1,3グリコシド結合であるものが好ましい。
【0021】
さらに、本発明における硫酸基を有するオリゴ糖は、上記一般式(1)または(2)において、ヘキソース残基のC6位及びC4位並びにヘキソサミン残基のC3位及びC6位から選ばれるヒドロキシル基、またはアミノ基が硫酸化されたものであることが好ましい。
【0022】
このような硫酸基を有するオリゴ糖としては、ケラタン硫酸の基本構造(ガラクトース残基またはガラクトース−6−O−硫酸残基と、N−アセチルグルコサミン−6−O−硫酸残基とが交互にグリコシド結合した構造)を少なくとも含む二糖以上のオリゴ糖であることが特に好ましい。本発明に好ましく用いられるオリゴ糖は、通常には、硫酸化されたN−アセチルグルコサミン残基を還元末端に有する二〜十糖のオリゴ糖であり、N−アセチルグルコサミン残基の6位のヒドロキシル基が硫酸化されているものが好ましく、ガラクトース残基の6位のヒドロキシル基およびN−アセチルグルコサミン残基の6位の両方が硫酸化されているものがより好ましい。また、本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、2〜4糖のオリゴ糖であることが特に好ましい。
【0023】
本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、シアル酸残基及び/又はフコース残基を含んでいてもよい。通常には、シアル酸残基は、α2,3又はα2,6グリコシド結合で、非還元末端のガラクトース残基に結合し、フコース残基は、α1,3グリコシド結合でN−アセチルグルコサミン−6−O−硫酸残基に結合する。
【0024】
また、本発明で用いられるオリゴ糖の糖鎖部分が保持されている限り、例えば、その還元末端に他の分子が結合していてもよい。他の分子としては、脂質分子、タンパク質分子等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、さらに好ましくは、少なくとも、Gal(6S)-GlcNAc(6S)(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6−O−硫酸エステルを、-はグリコシド結合をそれぞれ表す)で表される二糖を繰り返し構成単位として1単位以上含むケラタン硫酸オリゴ糖である。
【0026】
さらに、上記硫酸基を有するオリゴ糖として、下記式(3)で表される二硫酸化N−アセチルラクトサミン二糖(以下、「L4」ともいう)及び式(4)で表される四硫酸化N−アセチルラクトサミン四糖(以下、「L4L4」ともいう)が好適な例として挙げられる。
【0027】
【化8】
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) ・・・(3)
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) ・・・(4)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6−O−硫酸エステルを、β1-4はβ1,4グリコシド結合を、β1-3はβ1,3グリコシド結合をそれぞれ表す)
【0028】
硫酸基を有するオリゴ糖としては、下記式(5)〜(8)で表されるものも挙げられる。以下、(5)で表されるオリゴ糖をK4、(6)で表されるオリゴ糖をG4L4、(7)で表されるオリゴ糖をK2、(8)で表されるオリゴ糖をM4ともいう。
【0029】
【化9】
GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S) ・・・(5)
GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) ・・・(6)
GlcNAc(6S)β1-3Gal ・・・(7)
Gal(6S)β1-4ManNAc(6S) ・・・(8)
(式中、ManNAcはマンノサミン残基を表す。他の記号は前記と同義である。)
【0030】
また、本発明に用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、電離した状態のもの、プロトンが付加した構造のものをも包含する。また硫酸基を有するオリゴ糖の薬学的に許容される塩をも包含する。
【0031】
薬学的に許容される塩とは、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム)、アルカリ土類金属(カルシウム等)、アンモニウム等の無機塩基との間で形成された塩、またはジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との間で形成された塩のうち、薬学的に許容されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
なお、本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、上記した各オリゴ糖のうちの単一の種からなっていても、複数種の混合物であってもよい。すなわち、本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖は、例えば、上記式(3)で表されるものであっても、上記式(4)で表されるものであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
【0033】
本発明で用いられる硫酸基を有するオリゴ糖の由来や調製方法も特に限定されず、例えばケラタン硫酸を分解して得られる生成物であってもよく、また、例えばN−アセチルラクトサミンや、N−アセチルラクトサミンが2単位以上結合してなるオリゴ糖等を硫酸化して得られる生成物であってもよい。また、化学合成により得られる生成物であってもよい。
【0034】
このような硫酸基を有するオリゴ糖の中でも、ケラタン硫酸、好ましくは後述する高硫酸化ケラタン硫酸を分解して得られるオリゴ糖(ケラタン硫酸由来のオリゴ糖)が好ましい。このようなケラタン硫酸オリゴ糖は、例えばケラタン硫酸(好ましくは高硫酸化ケラタン硫酸)の緩衝溶液にエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解酵素、例えばバチルス属細菌由来のケラタナーゼII(特開平2−57182号公報)、またはバチルス・サーキュランスKsT202株由来のケラタン硫酸分解酵素(国際公開第WO96/16166号)を作用させて分解した後、得られた分解物を分画することにより得ることができる。得られたオリゴ糖は通常の分離精製方法、例えば、エタノール沈殿による分画、ゲル濾過および陰イオン交換クロマトグラフィーによる分離精製法により、目的のオリゴ糖を分離精製することができる。このような製造方法の例は、国際公開第WO96/16973号に記載されている。
【0035】
なお、原料となるケラタン硫酸は、主としてガラクトースまたはガラクトース−6−O−硫酸とN−アセチルグルコサミン−6−O−硫酸との二糖の繰り返し構造で構成され、動物種および器官などによって硫酸含量が異なっているが、通常はサメなどの軟骨魚類、クジラ、ウシなどの哺乳動物の軟骨、骨や角膜などの生原料から製造されるものを用いることができる。
【0036】
原料として使用されるケラタン硫酸は、通常入手できるものであればよく、特に限定されないが、構成糖であるガラクトース残基が硫酸化された高硫酸化ケラタン硫酸(構成二糖あたり1.5〜2分子の硫酸基を含む高硫酸化ケラタン硫酸をケラタンポリ硫酸ということもある)を用いることが好ましい。また、ガラクトース残基の硫酸基の位置として、6位が好ましい。このような高硫酸化ケラタン硫酸は、たとえば、サメなどの軟骨魚類のプロテオグリカンから取得できる。また、市販されているものを使用することもできる。
【0037】
本発明処置剤の有効成分である硫酸基を有するオリゴ糖は、医薬として使用できる程度に精製され、医薬として混入が許されない物質を含まないものであることが好ましい。
【0038】
〈脱髄性疾患処置剤〉
本発明の脱髄性疾患処置剤(以下、単に「処置剤」ということがある)は、脱髄性疾患の処置に対して有効であり、脱髄性疾患の処置に用いる限り、適用可能な疾患は限定されない。脱髄性疾患は、有髄神経線維に起こる疾患で、軸索が保たれるにも拘わらず髄鞘の崩壊が起こる状態である。典型的な病巣は中枢神経系の白質にみられ、髄鞘の消失、静脈周囲の細胞浸潤が認められる。代表的な脱髄疾患としては、自己免疫を原因とすると考えられている多発性硬化症(MS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ADEMの一亜型と考えられる脊髄神経根神経障害(myeloradiculoneuropathy)、急性播種性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー等の白質ジストロフィー等が挙げられる。これら疾患のいずれもに、本発明の処置剤を適用することができる。
【0039】
本発明の処置剤は、脱髄性疾患に対する処置である限り、あらゆる目的で有効に用いることができる。例えば、純然とした治療目的のみならず、疾患の予防、維持(悪化防止)、軽減(症状の改善)等を目的として適用することができる。これらの中でも、疾患の予防剤、症状の改善剤として適用することが好ましい。
【0040】
本発明においては、対象となる疾患の性質や進行状況、投与方法などに応じて、任意の剤形を適宜選択することができる。
すなわち、本発明の処置剤は注射(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内等)、経鼻、経口、経皮、吸入などにより投与することができ、これらの投与方法に応じて適宜製剤化することができる。選択し得る剤形も特に限定されず、例えば注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、リポ化剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、貼付剤、ゲル剤、坐剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤等から広く選択することができる。また、これらの製剤調製にあたり、慣用の賦形剤、安定化剤、結合剤、滑沢剤、乳化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、その他着色剤、崩壊剤等、通常医薬に用いられる成分を使用することができる。
【0041】
本発明の処置剤の有効成分である硫酸基を有するオリゴ糖の配合量ならびに本発明の処置剤の投与量は、その処置剤の投与方法、投与形態、使用目的、患者の具体的症状、患者の体重、年齢、性別等に応じて個別的に決定されるべき事項であり、特に限定されないが、硫酸基を有するオリゴ糖の臨床量としては成人1日1回あたり50〜5000mgが例示される。
【0042】
なお本発明の処置剤の有効成分である硫酸基を有するオリゴ糖の安全性については、L4、L4L4等のオリゴ糖について国際公開第WO96/16973号に示されており、さらに後述の実施例においても確認されている。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0044】
まず、本明細書中において用いるオリゴ糖の略号と、それに対応する構造を図1に示す。以下、硫酸基を有するオリゴ糖の製造例を示す。
【0045】
〈製造例1〉 O-(2-アセトアミド-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-(6-O-スルホ-β-D-ガラクトピラノース)二ナトリウム塩(K4のナトリウム塩)の合成
図2〜4に概略を示す手順によりO-(2-アセトアミド-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-(6-O-スルホ-β-D-ガラクトピラノース)二ナトリウム塩を合成した。なお、以下の実施例における各合成段階で共通して用いた方法は、以下の通りである。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、Kiesegel60(MERCK)を用いて行った。薄層クロマトグラフィーは HPTLC-Fertigplatten Kieselgel 60 F254 (MERCK)を使用した。1H-NMR スペクトルおよび13C-NMR スペクトルは、JNM-EX-400(日本電子株式会社製)を用いて測定した。測定溶媒 CDCl3, CD3ODにおいてはテトラメチルシランを、またD2Oにおいてはt-ブタノールを内部標準とした。
【0046】
(1)化合物2から化合物14の合成
ガラクトースシントン2−9は、ガラクトース(化合物1)から伊藤らの報告している合成経路(Agric. Biol. Chem., 50, 3227(1986))に従い合成を行った。化合物10〜14の合成は以下のようにして行った。
なお、以下、物質名の後の番号は、図2〜4における化合物の番号を示す。
【0047】
(a) ベンジル2,4-ジ-O-アセチル-3,6-ジ-O-アリル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl 2,4-di-O-acetyl-3,6-di-O-allyl-β-D-galactopyranoside)10
窒素ガス雰囲気下、事前に乾燥したモレキュラーシーブス4A(30.0 g)の入った反応容器にベンジルアルコール(18.4 ml, 178.8 mmol)および化合物9(2,4-ジ-O-アセチル-3,6-ジ-O-アリル-D-ガラクトピラノシルトリクロロアセトイミデート(2,4-di-O-acetyl-3,6-di-O-allyl-D-galactopyranosyl trichloroacetimidate);21.84 g, 44.67 mmol)を加えた後、氷冷下で15分間撹拌した。反応混合物に氷冷下でトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.7 ml, 8.93 mmol)を加えた後、同温で4時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、氷冷下、トリエチルアミンを加え中和後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、化合物10(18.6g, 96%)を得た。
【0048】
Rf: 0.51 (トルエン:酢酸エチル=3:1)
C23H30O8 MW: 434.47
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
2.037(s, 3H, OAc) 2.146(s, 3H, OAc) 4.445(d, 1H, J=7.8 Hz, H-1) 5.461(d, 1H, J=2.9 Hz, H-4) 5.715-5.914(m, 2H, CH2=CH x2) 7.200-7.400(m, 5H, aromatic)
【0049】
(b) ベンジル3,6-ジ-O-アリル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl 3,6-di-O-allyl-β-D-galactopyranoside)11
化合物10(10.84 g, 24.9 mmol)のメタノール溶液(30 ml)にナトリウムメトキシド(134 mg, 2.5 mmol)を加え窒素ガス雰囲気下室温で48時間撹拌した。反応混合物を酢酸にて中和後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、化合物11(6.8 g, 78%)を得た。
【0050】
Rf: 0.27 (トルエン:酢酸エチル=2:1)
C19H26O6 MW: 350.40
【0051】
(c) ベンジル3,6-ジ-O-アリル-2,4-ジ-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl 3,6-di-O-allyl-2,4-di-O-benzyl-β-D-galactopyranoside)12
窒素ガス雰囲気および氷冷下、60%水素化ナトリウム(3.8 g, 95.5 mmol)、化合物11(6.7 g, 19.1 mmol)およびDMF20 mlの混合物にベンジルブロミド(11.4 ml, 95.5 mmol)を加え18時間撹拌した。反応混合物に氷冷下でメタノールを加え1時間撹拌後、減圧下溶媒を留去した。残渣をジエチルエーテルにて希釈後、水、飽和食塩水にて順次洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜9:1)にて精製し、化合物12(9.1 g, 90%)を得た。
【0052】
Rf: 0.27 (トルエン:酢酸エチル=10:1)
C33H38O6 MW: 530.63
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
3.424(dd, 1H, J=2.9,9.8 Hz, H-3) 3.829(dd, 1H, J=7.8,9.8 Hz, H-2) 3.861(d, 1H, J=2.9 Hz, H-4) 4.453(d, 1H, J=7.8 Hz, H-1) 5.805-5.984(m, 2H, CH2=CH x2) 7.200-7.450(m, 15H, aromatic)
【0053】
(d) ベンジル2,4-ジ-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl 2,4-di-O-benzyl-β-D-galactopyranoside)13
水素ガス雰囲気下、活性化されたイリジウムコンプレックス[Ir(CoD)(PMePh2)2PF6(287 mg, 0.34 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(60 ml)に室温で化合物12(8.9 g, 16.7 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(80 ml)を加え7時間撹拌した。次いで、水(100 ml)およびヨウ素(8.5 g, 67.1 mmol)を加え15時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルにて希釈後、飽和チオ硫酸ナトリウム溶液、飽和重曹水、飽和食塩水にて順次洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣を再結晶(エタノール−ジクロロメタン−ジエチルエーテル)し、化合物13(7.4 g, 97%)を得た。
【0054】
Rf: 0.34 (n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
C27H30O6 MW: 450.51
【0055】
(e) ベンジル2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-ピバロイル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl 2,4-di-O-benzyl-6-O-pivaloyl-β-D-galactopyranoside)14
窒素ガス雰囲気下、0℃で、化合物13(7.3 g, 16.2 mmol)のピリジン溶液(50ml)にピバロイルクロリド(4.2 ml, 35.7 mmol)を加え70分間撹拌した。反応液にメタノールを加え40分間撹拌した後に減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、化合物14(7.81 g, 90%)を得た。
【0056】
Rf: 0.45 (トルエン:酢酸エチル=6:1)
C32H38O7 MW: 534.62
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
1.202(s, 9H, OPiv) 2.326(bs, 1H, OH) 3.628-3.708(m, 3H, H-2, H-3 and H-5)3.786(d, 1H, J=3.9 Hz, H-4) 4.142(dd, 1H, J=6.4,10.7 Hz, H-6) 4.352(dd,1H, J=6.8,11.2 Hz, H-6') 4.448(d, 1H, J=7.3 Hz, H-1) 6.650-7.150(m, 15H, aromatic)
【0057】
(2)化合物16から化合物24の合成
グルコサミンシントン16−20は、グルコサミン(化合物15)から仲野らの報告している合成経路(Tetrahedron Lett., 31, 1597(1990))に従い合成を行った。化合物21〜24の合成は以下のようにして行った。
【0058】
(f) p-メトキシフェニル3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-β-D-グルコピラノシド(p-methoxyphenyl 3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside)21
窒素ガス雰囲気下、事前に乾燥したモレキュラーシーブス4A(60.0 g)の入った反応容器にボラン-トリメチルアミンコンプレックス(75.0 g, 1028 mmol)、化合物20(21.0 g, 35.4 mmol)のジクロロメタン溶液(200 ml)、および、ジエチルエーテル(80 ml)を加え15分間撹拌した。反応容器を0℃に冷却し、無水塩化アルミニウム(20.0 g, 150 mmol)を少量ずつ1.5時間で加え、0℃で2.5時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を酢酸エチルで希釈後、1N硫酸水溶液、水、飽和重曹水、飽和食塩水にて順次洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、化合物21(14.5 g, 69%)を得た。
【0059】
Rf: 0.40 (トルエン:酢酸エチル=3:1)
C35H33N1O8 MW: 595.62
400 MHz 1H-NMR (CDCl3+CD3OD,TMS) δ:
3.620-3.662(m, 1H, H-5) 3.706(s, 3H, OMe) 3.783-3.849(m, 2H, H-4 and H-6) 3.939(dd, 1H, J=2.4,12.2 Hz, H-6') 4.351(dd, 1H, J=8.3,10.7 Hz, H-2) 4.435(dd, 1H, J=8.3,10.7 Hz, H-3) 5.693(d, 1H, J=8.3 Hz, H-1) 6.650-7.900(m, 18H, aromatic)
【0060】
(g) p-メトキシフェニル6-O-アセチル-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-β-D-グルコピラノシド(p-methoxyphenyl 6-O-acetyl-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside)22
窒素ガス雰囲気下、化合物21(10.5 g, 17.6 mmol)のピリジン溶液(200 ml)に無水酢酸(200 ml)およびDMAP(触媒量)を加え20時間撹拌した。反応液にエタノールを加え20分間撹拌した後に減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、化合物22(9.6 g,85%)を得た。
【0061】
Rf: 0.51 (トルエン:酢酸エチル=4:1)
C37H35N1O9 MW: 637.66
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
2.062(s, 3H, OAc) 3.680(s, 3H, OMe) 3.759-3.817(m, 2H, H-4 and H-5) 4.296(dd, 1H, J=4.4, 12.2 Hz, H-6) 5.631(d, 1H, J=7.8 Hz, H-1) 6.650-7.900(m, 18H, aromatic)
【0062】
(h) 6-O-アセチル-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-D-グルコピラノース(6-O-acetyl-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-D-glucopyranose)23
化合物22(9.0 g, 14.1 mmol)をアセトニトリル:水 (4:1; 400 ml)に溶解し、硝酸第二セリウムアンモニウム(20.1 g, 36.7 mmol)を加え室温下、40分間激しく撹拌した。反応混合物を酢酸エチルにて希釈し、水、飽和重曹水、飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥し減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2.5:1)にて精製し、化合物23(6.1 g, 81%)を得た。
【0063】
Rf: 0.23 (トルエン:酢酸エチル=2:1)
C30H29N1O8 MW: 531.54
400 MHz 1H-NMR (CDCl3+D2O,TMS) δ:
2.074(s, 3H, OAc) 3.680(t, 3H, J=9.3 Hz, H-4) 3.739-3.772(m, 1H, H-5) 4.100(dd, 1H, J=8.8,10.8 Hz, H-2) 4.240(dd, 1H, J=3.9,11.2 Hz, H-6) 5.386(d, 1H, J=8.3 Hz, H-1) 6.650-7.900(m, 14H, aromatic)
【0064】
(i) 6-O-アセチル-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-β-D-グルコピラノシルフルオライド(6-O-acetyl-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranosyl fluoride)24
窒素ガス雰囲気下、化合物23(5.95 g, 11.2 mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(50 ml)に氷冷下で、ジエチルアミノサルファートリフルオリド(5.8 ml, 43.9mmol)を加え2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルにて希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥し溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、化合物24(5.9 g, 99%)を得た。
【0065】
Rf: 0.68 (トルエン:酢酸エチル=2:1)
C30H28N1O7F1 MW: 533.53
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
2.097(s, 3H, OAc) 3.859(dd, 1H, J=8.3,9.8 Hz, H-4) 3.800-3.840(m, 1H, H-5) 5.810(d, 0.5H, J=7.8 Hz, H-1β) 5.943(d, 0.5H, J=7.8 Hz, H-1β) 6.800-7.800(m, 14H, aromatic)
【0066】
(3)化合物14および化合物24からの化合物28の合成
化合物25〜28の合成は以下のように行った。
【0067】
(j) ベンジルO-(6-O-アセチル-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-ピバロイル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl O-(6-O-acetyl-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-O-2,4-di-O-benzyl-6-O-pivaloyl-β-D-galactopyranoside)25
【0068】
窒素ガス雰囲気下、事前に乾燥したモレキュラーシーブス4A(20.0 g)の入った反応容器にシルバートリフレート(7.23 g, 28.2 mmol)、ハフノセンジクロリド(5.4 g, 14.1 mmol)および1,2−ジクロロエタン(20 ml)を加えた後、氷冷下20分間撹拌した。反応容器を-23℃に冷却し、化合物24(5.8 g, 10.8 mmol)および化合物14(5.4 g, 10.0 mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(45 ml)を加え、-23℃で1.5時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し氷冷下、トリエチルアミンを加え20分間撹拌した後にセライトで濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥し減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)にて精製後、再結晶を行い化合物25(9.3 g, 82%)を得た。
【0069】
Rf: 0.39 (トルエン:酢酸エチル=8:1)
C62H65N1O14 MW: 1048.15
400 MHz 1H-NMR (CDCl3,TMS) δ:
1.173(s, 9H, OPiv) 1.986(s, 3H, OAc) 3.859(bd, 1H, J=2.5 Hz, H-4) 4.063(dd, 1H, J=5.9,11.2 Hz) 5.454(d, 1H, J=8.3 Hz, H-1) 6.800-7.800(m, 24H, aromatic)
【0070】
(k) ベンジルO-(2-アセトアミド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-2,4-ジ-O-ベンジル-β-D-ガラクトピラノシド(benzyl O-(2-acetamido-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-O-2,4-di-O-benzyl-β-D-galactopyranoside)26
【0071】
化合物25(8.0 g, 7.6 mmol)の1-ブタノール溶液(200 ml)に、エチレンジアミン(170 ml)を加え98℃にて46時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去し、残渣にトルエンおよびメタノールを加え減圧下溶媒を留去した。残渣をピリジン(200 ml)に溶解しDMAP(触媒量)と無水酢酸(150 ml)を加え室温で2日間撹拌した。反応混合物の溶媒を留去し、トルエンおよびエタノールにて共沸を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、2成分の混合物(6.84 g)を得た。さらにこの混合物のメタノール溶液 (100 ml)にナトリウムメトキシド(769 mg, 14.3 mmol)を加え窒素ガス雰囲気下室温で60時間撹拌した。アンバーリスト15で中和し濾過後、濾液を減圧下溶媒留去した。得られた残渣を再結晶(ジクロロメタン−イソプロピルエーテル)し化合物26(6.0 g, 94%)を得た。
【0072】
Rf: 0.33 (トルエン:酢酸エチル=1:3)
C49H55N1O11 MW: 833.94
400 MHz 1H-NMR (CDCl3+CD3OD,TMS) δ:
1.557(s, 3H, NAc) 4.438(d, 1H, J=7.3 Hz, H-1) 4.784(d, 1H, J=8.3 Hz, H-1) 7.200-7.450(m, 20H, aromatic)
100 MHz 13C-NMR (CDCl3+CD3OD,TMS) δ:
22.92(Me-CO) 61.44,61.64(C-6 x2) 101.73(C-1),102.60(C-1) 170.29(Me-CO)
【0073】
(l) ベンジルO-(2-アセトアミド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-スルホ-β-D-ガラクトピラノシド二ナトリウム塩(benzyl O-(2-acetamido-3,4-di-O-benzyl-2-deoxy-6-O-sulfo-β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-O-2,4-di-O-benzyl-6-O-sulfo-β-D-galactopyranoside disodium salt)27
【0074】
窒素ガス雰囲気下、化合物26(212.5 mg, 0.255 mmol)とサルファートリオキシドトリエチルアミンコンプレックス(184.7 mg, 1.02 mmol)の混合物をDMF(1.0ml)に溶解し、50℃で1時間撹拌した。反応液をそのままセファデックス LH-20(クロロホルム:メタノール=1:1)にて精製し、糖画分を濃縮した。得られた残渣をメタノール(4 ml)に溶解後、Dowex 50(Na+, 4 g)を加え12時間撹拌し、対カチオンをナトリウムに変換した。更に得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)にて精製した後に、シリカゲルを除く目的でセファデックス LH-20(クロロホルム:メタノール=1:1)にて精製し、化合物27(252 mg, 95%)を得た。
【0075】
Rf: 0.53 (クロロホルム:メタノール=3:1)
C49H53N1O17S2Na2 MW: 1038.03
400 MHz 1H-NMR (CDCl3+CD3OD,TMS) δ:
1.621(s, 3H, NAc) 7.200-7.450(m, 20H, aromatic)
100 MHz 13C-NMR (CDCl3+CD3OD,TMS) δ:
22.14(Me-CO) 66.25,66.61(C-6 x2) 102.04(C-1 x2) 170.98(Me-CO)
【0076】
(m) O-(2-アセトアミド-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-(6-O-スルホ-β-D-ガラクトピラノース)二ナトリウム塩(O-(2-acetamido-2-deoxy-6-O-sulfo-β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-O-(6-O-sulfo-β-D-galactopyranose) disodium salt)28
【0077】
化合物27(236.8 mg,0.228 mmol)のメタノール−水 (2:1, 6 ml)溶液に、20%水酸化パラジウム炭素(268 mg)を加え、反応系内を水素で置換し室温で17時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、残渣を水にて洗浄後、濾液と洗浄液を併せて減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をセファデックスG−25(水)にて精製し、化合物28(131 mg, 98%)を得た。
【0078】
Rf: 0.28 (1-ブタノール:エタノール:水=2:2:1)
C14H23N1O17S2Na2 MW: 587.44
400 MHz 1H-NMR (D2O, t-BuOH, at 50℃) δ:
2.029(s, 3H, NAc) 4.580(d, 0.55H, J=8.3 Hz, H-1aβ) 4.727(d, 0.55H, J=8.3 Hz, H-1bβ) 4.742(d, 0.45H, J=8.3 Hz, H-1bα) 5.232(d, 0.45H, J=3.4 Hz, H-1aα)
100 MHz 13C-NMR (D2O, t-BuOH, at 50℃) δ:
25.04(Me-CO) 69.81(C-6 b) 70.70(C-6 aβ) 70.94(C-6 aα) 95.21(C-1aα) 99.21(C-1aβ) 105.39(C-1b) 177.74(Me-CO)
【0079】
〈製造例2〉 O-(2-アセトアミド-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシル)-(1→3)-O-(6-O-スルホ-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-O-2-アセトアミド-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノース三ナトリウム塩(G4L4のナトリウム塩)の製造
【0080】
NeuAc〜Galβ1-4GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸残基を、6Sは6-O-硫酸エステルをそれぞれ表す。また〜はα2,3結合又はα2,6結合を表す;WO96/16973参照)1gを0.1 M 硫酸 10 mlに溶解させ、50℃で22時間保温することによりN−アセチルノイラミン酸残基(シアル酸残基)を切断した。反応後の溶液に1 M NaOHを少量加えてpH5に調整した後、0.5 M 酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5を1ml、20%アジ化ナトリウムを25μl加えた。ラクターゼ(ケイアイ化成製) 5000 Uを加えて37℃で22時間保温することによりガラクトース残基を切断した。反応溶液を蒸留水で5倍希釈し、1 M NaClで平衡化したムロマックカラム(室町化学工業)(2.5×24 cm)にアプライした。1 M NaCl(500ml)から2.5 M NaCl(500ml)の塩濃度勾配をカラムに負荷し、溶出液を5mlずつ分取した。溶出画分をキャピラリー電気泳動で分析し、G4L4の溶出位置を確認した。G4L4を含む画分を集めてロータリーエバポレーターで約10 mlに濃縮した。濃縮溶液を蒸留水で平衡化したセルロファインGCL25sfカラム(生化学工業)(3×60 cm)にアプライし、蒸留水で溶出した。10 mlづつ分取した溶出画分をキャピラリー電気泳動で分析し、G4L4の溶出位置を確認した。G4L4を含む画分を集めてロータリーエバポレーターで約20 mlに濃縮した。分子量カット10000の限外ろ過膜でろ過してエンドトキシンを除去した後、凍結乾燥して最終サンプルとした。
【0081】
最終サンプルはキャピラリー電気泳動で単一ピークを示した。ヘキソース含量と硫酸含量の測定をおこなった結果、理論値1に対して各0.84、0.91の値を得た。
また、最終サンプルを下記条件で高速液体クロマトグラフィーにかけた結果、保持時間16.4分に単一ピークを示した。
【0082】
カラム:YMC-Pack PolyamineII (4.6×250 mm)((株)ワイエムシイ製)
カラム温度:35℃
溶出液:150 mMリン酸二水素ナトリウム
流速:1 ml/分
測定波長:210 nm
サンプル:10 mg/mlG4L4(最終サンプル)
【0083】
また、最終サンプルのNMR測定の結果を以下に示す。
400 MHz 1H-NMR(D2O, t-BuOH, at 22.9℃) δ:
2.024(s, 3H, NAc) 2.030(s, 3H, NAc) 4.526(d, 1H, J1,2=7.8 Hz, H-1b) 4.699(d, 1H, J1,2=8.8 Hz, H-1c) 4.729(d, 0.4H, J1,2=7.8 Hz, H-1aβ) 5.211(d,0.6H, J1,2=2.5 Hz, H-1aα)
100 MHz 13C-NMR(D2O, t-BuOH, at 26.0℃) δ:
24.74(NHCOCH3), 25.05(NHCOCH3), 69.62(C-6a or b or c), 69.77(C-6b or c or a), 70.57(C-6c or a or b), 93.31(C-1aα), 97.82(C-1aβ), 105.80(C-1b or c), 105.91(C-1c or b)
【0084】
〈製造例3〉 K2のナトリウム塩の製造
牛角膜由来のケラタン硫酸10gを120mlの0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)に溶解した。この液にシュードモナス(Pseudomonas sp.)由来ケラタナーゼ(生化学工業株式会社製)を1,000ユニット加えて37℃で50時間分解を行った。反応終了後、1.3倍量のエタノールを加えて攪拌し、室温で一晩放置した。翌日、遠心分離(10,000rpm、20分)により上清と沈殿を分離し、上清を減圧濃縮し、濃縮液を凍結乾燥して、乾燥物9gを得た。得られた凍結乾燥物を少量の蒸留水に溶解し、セルロファインGCL−90m(チッソ株式会社製)(4.5cmx125cm)を用い、食塩濃度0.2M液を溶出溶媒としてゲルクロマトグラフィーを行い、K2を含む画分を分取した。得られたK2画分を減圧濃縮し、セルロファインGCL−25m(チッソ株式会社製)(4.0cmx120cm)を用い蒸留水を溶出溶媒とし、ゲル濾過クロマトグラフィーにより脱塩し、凍結乾燥した。
【0085】
このK2を含む画分を少量の蒸留水に溶解し、予め蒸留水で平衡化したムロマック 1x4(200-400)(室町化学工業(株)製)(2.0cmx32cm)を用い、溶出溶媒に食塩を用い、食塩濃度を直線的に0から2Mに上昇させ、さらに精製したK2画分を分離溶出させた。得られたK2画分を減圧濃縮後、セルロファインGCL−25m(4.0cmx120cm)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより脱塩し、凍結乾燥し、K2の乾燥物を1.9gを得た。
【0086】
〈製造例4〉 Gal(6S)-ManNAc(6S)の調製法
L4(二ナトリウム塩)を国際公開第WO96/16973号に記載の方法により製造した。L4 200mgを20mLの蒸留水に溶解後、塩基性条件下で室温において1から3日間処理し、異性化体であるGal(6S)-ManNAc(6S)(式中、ManNAcはN-アセチルマンノサミン残基を表す)を生じさせた。処理後の溶液を1N塩酸で中性に戻し、減圧濃縮後、セルロファインGCL-25-mカラム(生化学工業)(2x40cm)で脱塩した。脱塩標品を2mL(約20mg)ずつ数回に分けて、60mM リン酸二水素ナトリウム溶液で平衡化した高速液体クロマトグラフィーYMC-Pack Polyamine-IIカラム(ワイエムシー)(1x25cm)にアプライし、60mM リン酸二水素ナトリウム溶液で溶出した。溶出画分をキャピラリー電気泳動を用いて分析し、Gal(6S)-ManNAc(6S)の溶出位置を確認した。Gal(6S)-ManNAc(6S)を含む画分を分取し、蒸留水で平衡化したムロマックカラム(室町化学工業)(3mL)にアプライした。0.5M食塩でリン酸イオンを溶出除去した後、2.5M食塩でGal(6S)-ManNAc(6S)を溶出した。溶出したGal(6S)-ManNAc(6S)標品を蒸留水で平衡化したセルロファインGCL-25-mカラム(2x40cm)により脱塩した。脱塩標品を減圧濃縮した後、凍結乾燥し、得られた16mg粉体を最終標品とした。
【0087】
以下、硫酸基を有するオリゴ糖の投与による脱髄性疾患の予防実験および症状改善実験の例を示す。
【0088】
〈実施例1〉 L4の投与による脱髄性疾患の予防実験1
(1)被験物質の調製
上記式(3)で表される硫酸基を有するオリゴ糖L4(二ナトリウム塩)を国際公開第WO96/16973号に記載の方法により製造した。このL4を生理食塩水に溶解したものを、被験物質として以下の投与に用いた。
【0089】
(2)動物モデルの作製
脱髄性疾患の動物モデルとして確立された、ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE、臨床免疫学イラストレイテッド、pp. 112-117, Brostoff, Scadding, Male, Roitt編、広瀬俊一、狩野庄吾、多田富雄 監訳、南江堂 1994)を用いた。
【0090】
EAEの作製は、疾患を誘発するための感作物質としてモルモットミエリン塩基性タンパク質(guinea pig myelin basic protein, GPMBP)と結核菌体(Mycobacterium tuberculosis, MTB)とを含むフロイントの完全アジュバントを用い、これを4週齢のLewisラットの足底に注射することにより行った。ラット1匹あたり、5μgのGPMBPと200μgのMTBとを含む上記アジュバントを注射した。
【0091】
(3)被験物質の動物モデルへの投与方法
上記アジュバントをラットに注射する直前に、被験物質として20mg/mlのL4を、ラットの体重100gあたり50μl投与(L4 mg/kg投与)した。またコントロールとして、体重100gあたり50μlの生理食塩水をラットに投与した。被験物質および生理食塩水の投与は、ラットの腹腔内に注射することにより行った。
【0092】
その後、上記ラットに上記と同量、同濃度のL4を毎日1回、16日間投与した。コントロールに関しても同様に、同量の生理食塩水を毎日1回、16日間投与した。
【0093】
(4)疾患症状の評価
疾患症状の評価は以下の方法により行った。感作物質の注射日を0日として毎日ラットの症状を観察し、無症状を0、尾先端部の緊張低下を0.5、尾全体の緊張低下を1、歩行失調を2、下肢の両足性麻痺を3、上肢の麻痺を4、死亡を5として症状を数値化し、これを臨床スコアとして記録した。
【0094】
上記L4を毎日1回、16日間投与した群(L4 10mg/kg投与群;7匹)と、生理食塩水を毎日1回、16日間投与した群(コントロール;6匹)について、臨床スコアを毎日記録した。感作物質の投与後7日目〜17日目における、各群の臨床スコアの平均値と標準誤差を図5に示す。
【0095】
この結果、L4投与群はコントロールに比べて明らかに臨床スコアが低下(症状が軽減)していた。また、L4投与による副作用も観察されなかった。
【0096】
〈実施例2〉 L4の投与による脱髄性疾患の予防実験2
実施例1の結果の再現性の確認、および種々の濃度のL4投与による効果を調べるため、上記実施例1と同様の方法を用いて、以下の実験を行った。
【0097】
すなわち、動物モデルへの被験物質の投与量を以下のように変化させた以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った。また、試験に使用したラットは各群とも5匹であった。
【0098】
▲1▼5mg/mlのL4をラットの体重100gあたり100μl投与
(L4 5.0mg/kg投与群)
▲2▼20mg/mlのL4をラットの体重100gあたり50μl投与
(L4 10mg/kg投与群)
▲3▼20mg/mlのL4をラットの体重100gあたり100μl投与
(L4 20mg/kg投与群)
▲4▼生理食塩水をラットの体重100gあたり50μl投与(コントロール)
【0099】
感作物質の投与後7日目〜17日目における、各群の臨床スコアの平均値と標準誤差を図6に示す。
【0100】
この結果、いずれのL4投与群もコントロールに比して明らかに臨床スコアが低下(症状が軽減)していた。また、L4投与による副作用も観察されなかった。
【0101】
〈実施例3〉 L4の投与による脱髄性疾患の予防実験3
上記実施例1および2の結果の再現性の再確認、およびより高濃度のL4投与による効果を調べるため、上記実施例1と同様の方法を用いて、以下の実験を行った。
【0102】
すなわち、動物モデルへの被験物質の投与量を以下のように変化させた以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った。また、試験に使用したラットは各群とも5匹であった。
【0103】
▲1▼20mg/mlのL4をラットの体重100gあたり150μl投与
(L4 30mg/kg投与群)
▲2▼20mg/mlのL4をラットの体重100gあたり250μl投与
(L4 50mg/kg投与群)
▲3▼生理食塩水をラットの体重100gあたり250μl投与(コントロール)
【0104】
感作物質の投与後7日目〜17日目における、各群の臨床スコアの平均値と標準誤差を図7に示す。
【0105】
この結果、いずれのL4投与群もコントロールに比して明らかに臨床スコアが低下(症状が軽減)していた。また、L4投与による副作用も観察されなかった。また、L4 30mg/kg投与群においては4匹、L4 50mg/kg投与群においては2匹の個体が疾患症状をほとんど呈しなかった。
【0106】
以上の結果から、L4を予め投与することにより、EAEの疾患症状の程度を低減でき、また、発症をほぼ完全に予防することも可能であることが確認された。
【0107】
〈実施例4〉 L4の投与による脱髄性疾患の症状改善実験
上記実施例1〜3は、いずれもEAEの発症前からL4を投与する実験(予防実験)であり、L4によるEAEの予防効果が確認された。そこで、EAEを既に発症したラットにL4を投与し、既に発症したEAEの症状を改善できるか否かを調べる実験(症状改善実験)を行った。
【0108】
被験物質の調製および動物モデルの作製は、上記実施例1と同様の方法により行った。上記感作物質の注射後10日目(EAEの発症直後)から、20mg/mlのL4を、ラットの体重100gあたり250μl(L4 50mg/kg投与)、毎日1回、感作後16日目まで投与した群(L4発症後投与群;5匹)、感作物質注射後7日目(EAEの発症の3日前)から、同濃度、同量のL4を同様に投与した群(L4発症前投与群;5匹)、および、感作物質注射後10日目から、生理食塩水をラットの体重100gあたり250μlの生理食塩水を同様に投与した群(コントロール;5匹)のそれぞれについて、実施例1と同様の方法により臨床スコアを毎日記録した。感作物質の投与後10日目〜16日目における、各群の臨床スコアの平均値と標準誤差を図8に示す。
【0109】
この結果、L4発症後投与群についても、コントロールに比して明らかに臨床スコアが低下(症状が軽減)していた。また、発症前投与群についても、臨床スコアが低下することが再確認された。さらに、L4投与による副作用も観察されなかった。
【0110】
以上の各実施例より、硫酸基を有するオリゴ糖が脱髄性疾患の処置に極めて有効であることが明らかである。特に、硫酸基を有するオリゴ糖を予め投与しておくことによって、その後の脱髄性疾患の症状の程度を顕著に低減でき、また、発症をほぼ完全に防ぐことも可能となることが分かった。また、脱髄性疾患の発症後に硫酸基を有するオリゴ糖を投与しても、脱髄性疾患の症状を顕著に改善できることが明らかとなった。
【0111】
【発明の効果】
本発明によれば、硫酸基を有するオリゴ糖を有効成分とする脱髄性疾患の症状改善や予防等のための処置剤を提供することができる。この処置剤は、元来生体内に存在する物質を素材としているため、その安全性も高く、極めて有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 硫酸基を有するオリゴ糖の構造を示す図
【図2】 硫酸基を有するオリゴ糖の製造における出発材料の製造方法の一例の概略を示す図
【図3】 硫酸基を有するオリゴ糖の製造における出発材料の製造方法の一例の概略を示す図
【図4】 硫酸基を有するオリゴ糖の製造方法の一例の概略を示す図
【図5】 実施例1(予防実験1)におけるL4投与後の臨床スコアを示すグラフ
【図6】 実施例2(予防実験2)におけるL4投与後の臨床スコアを示すグラフ
【図7】 実施例3(予防実験3)におけるL4投与後の臨床スコアを示すグラフ
【図8】 実施例4(症状改善実験)におけるL4投与後の臨床スコアを示すグラフ
Claims (2)
- 下記式(3)で表される硫酸基を有するオリゴ糖を有効成分とし、発症前に投与されることを特徴とする、脱髄性疾患処置剤。
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)・・・式(3)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6−O−硫酸エステルを、β1-4はβ1,4グリコシド結合をそれぞれ表す) - 予防剤である、請求項1に記載の脱髄性疾患処置剤。
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