JP4456698B2 - エンドトキシンショック抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンドトキシンショック抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンドトキシンショックは、敗血症などの重篤な細菌感染症などが原因となって感染菌によって産生されるエンドトキシン(リポ多糖;以下、LPSともいう)の作用によって引き起こされるショックである。
【0003】
エンドトキシンショックの治療剤としては、副腎皮質ステロイド剤、抗生物質、抗凝固剤、スルファチドナトリウムなどが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エンドトキシンショックを効果的に抑制できるエンドトキシン抑制剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ケラタン硫酸オリゴ糖およびその誘導体にエンドトキシンショックを抑制する作用があることを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、ケラタン硫酸オリゴ糖またはその誘導体を有効成分とする、エンドトキシンショック抑制剤(以下、本発明抑制剤ともいう)を提供する。
【0007】
本発明抑制剤においては、ケラタン硫酸オリゴ糖は、好ましくは、少なくとも下記式で表される二糖を繰返し構成単位として1単位以上含む。
Gal(6S)-GlcNAc(6S)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6位のヒドロキシル基が6-O-硫酸エステルとなっていることを、-はグリコシド結合をそれぞれ表す)
【0008】
さらに好ましくは、ケラタン硫酸オリゴ糖は、下記式(1)および(2)で表されるものから選ばれるものである。
【化3】
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) 式(1)
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) 式(2)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6位のヒドロキシル基が6-O-硫酸エステルとなっていることを、β1-4はβ1,4グリコシド結合を、β1-3はβ1,3グリコシド結合をそれぞれ表す)
【0009】
本発明抑制剤において、ケラタン硫酸オリゴ糖の誘導体は、好ましくは、式(3)で示されるものである。
【化4】
(式中、X1〜X5は、それぞれ独立して、水素原子またはアシル基であり、X1〜X5の少なくとも一つはアシル基であり、Mは、それぞれ独立して、水素原子、又は電離していてもよい1もしくは2価の金属もしくは1価の塩基であり、波線で示した結合はα−グリコシド配位またはβ−グリコシド配位を示す。)
【0010】
一般式(3)において、好ましくは、X1〜X5がいずれも炭素数1〜10のアシル基であり、Mがアルカリ金属である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明抑制剤において用いる「ケラタン硫酸オリゴ糖」は、ケラタン硫酸の基本構造(ガラクトース残基またはガラクトース−6−O−硫酸残基と、N−アセチルグルコサミン−6−O−硫酸残基とが交互にグリコシド結合した構造)を少なくとも含む二糖以上のオリゴ糖である限りにおいて特に限定されない。ケラタン硫酸オリゴ糖は、例えばケラタン硫酸を分解して得られる生成物であってもよく、また例えばN−アセチルラクトサミン等を硫酸化して得られる生成物であってもよい。
【0012】
このようなケラタン硫酸オリゴ糖の中でも、ケラタン硫酸を分解して得られるオリゴ糖(ケラタン硫酸由来のオリゴ糖)が好ましく、ケラタン硫酸をエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解酵素で分解して得られる分解生成物がより好ましい。
【0013】
なお、このケラタン硫酸オリゴ糖は、シアル酸残基及び/又はフコース残基を含んでいてもよい。通常には、シアル酸残基は、α2,3又はα2,6グリコシド結合でガラクトース残基に結合し、フコース残基は、α1,3グリコシド結合でN−アセチルグルコサミン残基に結合する。
【0014】
通常には、ケラタン硫酸オリゴ糖は、硫酸化されたN−アセチルグルコサミン残基を還元末端に有する二〜十糖のオリゴ糖であり、N−アセチルグルコサミン残基の6位のヒドロキシル基が硫酸化されているものが好ましく、ガラクトース残基の6位のヒドロキシル基およびN−アセチルグルコサミン残基の6位の両方が硫酸化されているものがより好ましい。
【0015】
さらに好ましくは、ケラタン硫酸オリゴ糖は、少なくとも、Gal(6S)-GlcNAc(6S)(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6位のヒドロキシル基が6-O-硫酸エステルとなっていることを、-はグリコシド結合をそれぞれ表す)で表される二糖を繰返し構成単位として1単位以上含むケラタン硫酸オリゴ糖である。
【0016】
さらに好ましくは、前記ケラタン硫酸オリゴ糖は、式(1)で表されるオリゴ糖(以下、L4L4ともいう)及び式(2)で表されるオリゴ糖(以下、L4ともいう)から選ばれる。
【化5】
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S)β1-3Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) 式(1)
Gal(6S)β1-4GlcNAc(6S) 式(2)
(式中、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6Sは6位のヒドロキシル基が6-O-硫酸エステルとなっていることを、β1-4はβ1,4グリコシド結合を、β1-3はβ1,3グリコシド結合をそれぞれ表す)
【0017】
本発明に用いられるケラタン硫酸オリゴ糖は、電離した状態のもの、プロトンが付加した構造のものを包含する。またケラタン硫酸オリゴ糖の薬学的に許容される塩も包含する。
【0018】
本明細書において、ケラタン硫酸オリゴ糖の「誘導体」とは、ケラタン硫酸オリゴ糖のヒドロキシル基の水素原子の少なくとも一つ(好ましくは10%以上)がO−アシル基により置換されたもの(部分または完全O−アシル化誘導体)を意味し、その薬学的に許容される塩も包含される。
【0019】
薬学的に許容される塩とは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、またはジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩のうち、薬学的に許容されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ケラタン硫酸オリゴ糖のヒドロキシル基の水素原子を置換するアシル基は、好ましくは炭素数1〜10のアシル基、より好ましくは炭素数1〜10の脂肪族又は芳香族のアシル基、すなわちヘテロ原子を含むこともあるアルカノイル基又はアロイル基であり、その例としては、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、プロピオニル、n−ブチリル、(E)−2−メチルブテノイル、イソブチリル、ペンタノイル、ベンゾイル、o−(ジブロモメチル)ベンゾイル、o−(メトキシカルボニル)ベンゾイル、2,4,6−トリメチルベンゾイル、p−トルオイル、p−アニソイル、p−クロロベンゾイル、p−ニトロベンゾイルなどの基が挙げられる。ケラタン硫酸オリゴ糖が複数のアシル基を有する場合には、それらのアシル基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0021】
ケラタン硫酸オリゴ糖の還元末端糖の1位のヒドロキシル基の水素原子がアシル基により置換されている場合、そのO−アシル基の配位は、α−グリコシド配位またはβ−グリコシド配位のいずれでもよいが、α−グリコシド配位であることが好ましい。
【0022】
アシル化されたケラタン硫酸オリゴ糖は、有機溶媒、脂質に対する溶解性の向上、生体膜透過性の増大、経口投与した場合の消化管吸収量の増大等の利点を有する。
【0023】
本発明抑制剤において、ケラタン硫酸オリゴ糖の誘導体は、好ましくは、上記式(3)で示されるものである。なお、上記式(3)においてMは、それぞれ独立して、水素原子、又は電離していてもよい1もしくは2価の金属もしくは1価の塩基であり、電離している場合は、スルホン酸基はマイナスイオンの状態になる。さらに好ましくは、X1〜X5のすべてがアセチル基である。特に好ましいものは、下記式(4)で示される誘導体である。
【化6】
(式中、Acはアセチル基、波線で示した結合は、α−グリコシド配位またはβ−グリコシド配位を示す。)
【0024】
本発明抑制剤中に含有されるケラタン硫酸オリゴ糖またはその誘導体は、単一の種からなっていても、混合物であってもよい。例えば上記式(4)中の波線で示した部分がα−グリコシド配位である物質の精製品であってもよく、β−グリコシド配位である物質の精製品であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0025】
本発明に使用されるケラタン硫酸オリゴ糖は、例えばケラタン硫酸、好ましくは高硫酸化ケラタン硫酸の緩衝溶液にエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解酵素、例えばバチルス属細菌由来のケラタナーゼ(II)(特開平2−57182号公報)、またはバチルス・サーキュランスKsT202株由来のケラタン硫酸分解酵素(国際公開第WO96/16166号)を作用させて分解した後、得られた分解物を分画することにより得ることができる。得られたオリゴ糖は通常の分離精製方法、例えば、エタノール沈殿による濃縮、ゲル濾過および陰イオン交換クロマトグラフィーによる分離精製法により、目的のオリゴ糖を分離精製することができる。このような製造方法の例は、国際公開第WO96/16973号に記載されている。なお、原料となるケラタン硫酸は、主としてガラクトースまたはガラクトース−6−O−硫酸とN−アセチルグルコサミン−6−O−硫酸との二糖の繰り返し構造で構成され、動物種および器官などによって硫酸含量が異なっているが、通常はサメなどの軟骨魚類、クジラ、ウシなどの哺乳動物の軟骨、骨や角膜などの生原料から製造されるものを用いることができる。
【0026】
原料として使用されるケラタン硫酸は、通常入手できるものであればよく、特に限定されないが、構成糖であるガラクトース残基が硫酸化された高硫酸化ケラタン硫酸(構成二糖あたり1.5〜2分子の硫酸基を含む高硫酸化ケラタン硫酸をケラタンポリ硫酸ということもある)を用いることが好ましい。また、ガラクトース残基の硫酸基の位置として、6位が好ましい。このような高硫酸化ケラタン硫酸は、たとえば、サメなどの軟骨魚類のプロテオグリカンから取得できる。また、市販されているものを使用することもできる。
【0027】
ケラタン硫酸オリゴ糖のヒドロキシル基の水素原子のアシル基による置換は、糖のヒドロキシル基の保護のために通常に行われるアシル化方法に従って行うことができる。例えば、導入すべきアシル基の反応性誘導体(アシル基に対応するカルボン酸の無水物(例えば、アセチル基を導入する場合は、無水酢酸、プロパノイル基を導入する場合は、無水プロピオン酸)、ハロゲン化物など)と、適当な反応溶媒(ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、水、およびこれらの混合物など)中でケラタン硫酸オリゴ糖を常法によって反応させることによってアシル基を導入することができる。必要に応じて、ピリジン等の塩基触媒の存在下で反応させることもできる。
【0028】
必要により、アシル化の程度を調整してもよく、この調整は、上記のアシル化方法において部分的にアシル化を行うか、または、アシル化されたケラタン硫酸オリゴ糖からアシル基を部分的に除去することによって行うことができる。
【0029】
アシル基の除去は、メタノール性アンモニア、濃アンモニア水、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いて加水分解することによって行うことができる。得られた誘導体は、逆相高速液体クロマトグラフィー等で精製することができる。
【0030】
本発明抑制剤の有効成分であるケラタン硫酸オリゴ糖またはその誘導体は、医薬として使用できる程度に精製され、医薬として混入が許されない物質を含まないものであることが好ましい。
【0031】
本発明抑制剤は、エンドトキシンショックを抑制するのに有効である。エンドトキシンショックには、敗血症(例えばグラム陰性菌感染症)に伴うエンドトキシンショックが包含される。
【0032】
本発明抑制剤は、エンドトキシンショックの種々の症状を抑制するのに有効であり、特に致死を抑制するのに有効である。
【0033】
また、本発明抑制剤は、エンドトキシンショックによる致死の主たる要因である播種性血管内凝固症候群(DIC)の抑制に有効である。従って、本発明は、ケラタン硫酸オリゴ糖またはその誘導体を有効成分とする、DIC抑制剤も包含する。
【0034】
本発明抑制剤は、純然とした治療目的のみならず、疾患の予防、維持(悪化防止)、軽減(症状の改善)等を目的として適用することができる。
【0035】
本発明においては、対象となる疾患の性質や進行状況、投与方法などに応じて、任意の剤形を適宜選択することができる。
【0036】
すなわち、本発明抑制剤は注射(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内等)、経鼻、経口、経皮、吸入などにより投与することができ、これらの投与方法に応じて適宜製剤化することができる。選択し得る剤形も特に限定されず、例えば注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、リポ化剤、軟膏剤、ゲル剤、坐剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤等から広く選択することができる。また、これらの製剤調製にあたり、慣用の賦形剤、安定化剤、結合剤、滑沢剤、乳化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、その他着色剤、崩壊剤等、通常医薬に用いられる成分を使用することができる。
【0037】
本発明抑制剤中の有効成分であるケラタン硫酸オリゴ糖またはその誘導体の配合量ならびに本発明抑制剤の投与量は、その製剤の投与方法、投与形態、使用目的、患者の具体的症状、患者の体重、年齢、性別等に応じて個別的に決定されるべき事項であり、特に限定されないが、ケラタン硫酸オリゴ糖の臨床量としては成人1日1回あたり50〜5000mgが例示される。
【0038】
なお本発明抑制剤の有効成分であるケラタン硫酸オリゴ糖の安全性については、国際公開第WO96/16973号において示されている。
【0039】
【実施例】
以下に本発明を、実施例により具体的に説明する。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
【0040】
【実施例1】
L4のアセチル化物の合成
L4の二ナトリウム塩(WO96/16973に記載の方法で製造したもの)を脱イオン水に溶解し、カチオン交換樹脂(Dowex 50W-X4、H+-form;ダウケミカル製)カラムに通して酸遊離型とし、直ちに氷冷した。これに対して、引き続き氷冷下におき、10倍脱イオン水希釈した水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムを1.1倍L4-硫酸基当量滴下した。約1時間攪拌後、反応系を低温下にて減圧濃縮し、Sephadex-LH20カラム(ファルマシア社)に通して粗精製後、水溶液から凍結乾燥し、L4−テトラブチルアンモニウム塩を得た。
【0041】
乾燥したL4−テトラブチルアンモニウム塩を100mg/mlの濃度でピリジンに溶解し、室温にて攪拌しながら無水酢酸(L4-総ヒドロキシル基量に対して1.5倍当量)を滴下して添加した。室温にて24時間攪拌後、溶媒を低温下で減圧留去し、メタノール/ジエチルエーテル溶媒系にて再沈殿して粗L4アセチル化物−テトラブチルアンモニウム塩を得た。これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(LiChroprep NH2;メルク社製)にてナトリウム塩に交換し、引き続きゲル濾過クロマトグラフィー(Cellulofine GCL-25;生化学工業株式会社販売)にて精製後凍結乾燥して、L4のアセチル化物(以下、AcL4ともいう)を、α−グリコシド配位体とβ−グリコシド配位体の混合物として得た。またα-グリコシド配位体とβ-グリコシド配位体の分離は陰イオン交換クロマトグラフィー(LiChroprep RP-18;メルク社製)で行い、α−グリコシド配位体を取得した。AcL4(α−グリコシド配位体)の1H-NMRスペクトルおよび13C-NMR(DEPT)スペクトルを以下に示す。
【0042】
1H-NMRスペクトル
1H-NMR(400MHz、D2O、TSP(δH=0.00ppm))
δH=1.97ppm(s,3H,COCH 3 )、2.02(s,3H,COCH 3 )、2.17(s,3H,COCH 3 )、2.18(s,3H,COCH 3 )、2.217(s,3H,COCH 3 )、2.220(s,3H,COCH 3 )、4.07-4.17(m,4H,H-4A,H-5A,H-6B,H-6'B)、4.22-4.28(m,3H,H-5B,H-6A,H-6'A)、4.40-4.44(dd,1H,H-2A)、4.91-4.93(d,1H,H-1B)、5.00-5.04(dd,1H,H-2B)、5.20-5.23(dd,1H,H-3B)、5.26-5.31(dd,1H,H-3A)、5.485-5.493(d,1H,H-4B)、6.09-6.10(d,1H,H-1A)
【0043】
13C-NMR(DEPT)スペクトル
13C-NMR(100MHz、D2O、TSP(δC=0.00ppm))
δC=22.86ppm(2C,OCOCH3)、23.04(OCOCH3)、23.08(OCOCH3)、23.43(OCOCH3)、24.47(NHCOCH3)、53.09(C-2A)、67.98(C-6B)、68.36(C-6A)、70.61(C-4B)、72.62(C-2B)、73.34(C-5B)、73.56(2C,C-3A,C-5A)、74.27(C-3B)、77.80(C-4A)、93.38(C-1A)、102.96(C-1B)
【0044】
【実施例2】
LPS惹起エンドトキシンショックの抑制
マウスエンドトキシンショックに対するL4およびL4L4(いずれも国際公開第WO96/16973号に記載の方法で製造したもの)の効果を検討した。
【0045】
(1)試験方法
1.惹起物質
LPS(Lipopolysaccharide, Salmonella abortus equi由来; SIGMA社)を1.5 mg/mlの濃度にてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、滅菌濾過後に使用した。
【0046】
2.検体
1)被検物質
L4(二ナトリウム塩)粉末およびL4L4(四ナトリウム塩)粉末をそれぞれ6.0%の濃度となるよう注射用蒸留水(大塚製薬)に溶解後、生理食塩液(大塚製薬)にて所定濃度に希釈して使用した。
2)対照物質
LPSに対する陰性対照物質(惹起陰性対照物質)として、PBSを滅菌濾過して使用した。また、被検物質に対する陰性対照物質として、生理食塩液を使用した。
【0047】
3.使用動物
8週齢の雌性C57BL/6系マウス(日本エス・エル・シー)を購入し、その2日後に、体重が各群ほぼ均等になるように群分けした。
【0048】
4.検体の投与
以下に示す群構成に従い、所定用量の各検体をマウスに皮下(s.c.)投与した。検体はエンドトキシンショック惹起日まで1日1回、計4日間皮下投与した。
【0049】
5.群構成
表1に示す計7群を設定した。
【0050】
【表1】
【0051】
6.エンドトキシンショックの惹起
エンドトキシンショック惹起用のLPSは、検体4回目投与直後に、0.2 ml/匹(300μg/匹)の用量で腹腔内投与した。非惹起群については、PBSを0.2ml/匹の用量にて腹腔内投与した。
【0052】
7.死亡数の確認
LPS投与から24、48、72時間後に、各群における累積死亡数を確認した。
【0053】
8.統計処理
生理食塩液群と各L4投与群並びに各L4L4投与群間をノンパラメトリックなDunnetの多重比較検定にて評価した。
【0054】
(2)試験結果
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
生理食塩液群では、LPS投与後72時間までに93.3%が死亡した。これに対し、L4またはL4L4を投与した群ではいずれも死亡率が低下した。特にL4L4高用量群での死亡率の低下が顕著であった。
非惹起群については、惹起陰性対照物質の投与後に死亡例は見られなかった。
【0057】
これらのデータから、ケラタン硫酸オリゴ糖または誘導体によりエンドトキシンショックによる致死を抑制できることが明らかである。また、予め投与しておくことで、その後のエンドトキシンショックによる致死を抑制できること(予防効果があること)が示唆された。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、特にエンドトキシンショックによる致死を抑制できるエンドトキシンショック抑制剤が提供される。本発明のエンドトキシンショック抑制剤は、天然物由来の物質を素材としており、その安全性も高い。
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