JP4674993B2 - 樹脂被覆フランジの締結構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方が樹脂被覆フランジである二つの部材をボルト、ナットを用いて締結する締結構造に関し、特に、内外面樹脂被覆管の配管に当たって、管端の樹脂被覆フランジ同志を相互に接合するために用いるのに好適な締結構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、配管材料として、防食性、防錆性、耐薬品性等を向上させるため、管内面にポリエチレン等の樹脂被覆を施した樹脂被覆鋼管が広く使用されている。そして、最近、一層防食性を向上させるため、管内面のみならず、管外面、フランジ表面等を含めた配管材料の全面に樹脂被覆を施した内外面樹脂被覆鋼管が開発されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような内外面樹脂被覆鋼管では、配管に当たってフランジ同志を接合する際に問題の生じることが判明した。すなわち、図3(a)に示すように、管体2の内外面に樹脂被覆層3を形成し、且つ管端に接合したフランジ4の表面全体にも樹脂被覆層5を形成した構造の内外面樹脂被覆管1、1を接続するために、フランジ4、4をパッキン6をはさんで突き合わせ、ボルト頭7aを有するボルト7、平座金8、8、ナット9を図示のように取り付け、ボルト7、ナット9をトルクレンチによって所定の締付けトルク(金属製フランジの締め込みの際に採用している締付けトルク)で締め込んだところ、締付けトルクが高い場合に平座金8、8に接触している部分の樹脂被覆層5が弾性領域を越えて圧縮変形してしまい、しかも、締付け後、ボルトやナットがゆるみ方向に回転していないにも係わらず、きわめて短時間で緩んだ状態となり、このため4〜5回の増し締めを行う必要が生じることがあった。しかも、複数回の増し締めを行って所定の締付けトルクとしたにも係わらず、十分な密封効果が得られず、このため締付けトルクを増大させなねばならなかった。ここで、ナット締付け後、短時間で緩んだ状態となる理由は、樹脂被覆層5の平座金8を支持している部分の樹脂が圧縮力を受けて周囲に流れクリープのような変形を生じてしまうためであると思われる。実際、ボルト7、ナット9の締め込み部分を観察したところ、図3(b)に示すように、平座金8、8が樹脂被覆層3内にかなりめり込んだ状態となっており、具体的には、樹脂被覆層3の厚さの半分以上の座金痕(めり込み)が生じることもあり、この部分の樹脂が周囲に流れて盛り上がった状態となっていた。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、樹脂被覆フランジ同志を締結する場合のように、少なくとも一方が樹脂被覆フランジである二つの部材をボルト、ナットを用いて締結する場合において、締結に用いる部材が樹脂被覆層にめり込むことを極力抑制し、二つの部材を良好に締結することを可能とする樹脂被覆フランジの締結構造を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、樹脂被覆フランジの締結に当たって樹脂被覆層に座金やボルト頭、ナット等がめり込むことを抑制しうる構造を鋭意検討の結果、単に皿ばね座金を、その凹面側が樹脂被覆材の樹脂面に直接接触するように配置することで、その皿ばね座金の樹脂被覆層に対するめり込みを小さく抑制して良好な締め込みを行うことができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、少なくとも一方が樹脂被覆フランジである二つの部材をボルト、ナットを用いて締結する締結構造において、前記樹脂被覆フランジとそれに締付け力を作用させるボルト頭又はナットの間に、皿ばね座金を、その凹面側が前記樹脂被覆材の樹脂被覆層に直接接触するように配置し、前記皿ばね座金の凹面側のほぼ全面が前記樹脂被覆フランジの樹脂被覆層に接触するように前記ボルト、ナットを締め込んでいることを特徴とする。ここで、皿ばね座金の使用により樹脂被覆層へのめり込みが減少し、良好な締結ができる理由は次のように考えられる。すなわち、皿ばね座金の凹面側を樹脂被覆層に直接押し当てて締結を行うと、皿ばね座金のほぼ全面が樹脂被覆層に押し付けられることとなるが、その際、皿ばね座金の外周部分が樹脂被覆層に最も強く押し付けられることとなる。そして、その内側の樹脂被覆層が皿ばね座金で押されて周囲に流れようとした時に、皿ばね座金の外周部分で強く押圧されている環状の部分が樹脂の流れを阻止しようとする。このため、樹脂被覆層の皿ばね座金を支持する部分の見かけ上の剛性が高くなり、皿ばね座金のめり込みが小さくなり、良好な締結が確保される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の対象とする締結構造は、少なくとも一方が樹脂被覆フランジである二つの部材をボルト、ナットを用いて締結するものであればよく、従って、二つの部材は共に樹脂被覆フランジであってもよいし、一方が樹脂被覆フランジ、他方が樹脂被覆のない材料、例えば鋼材のみであってもよい。また、本発明の対象となる樹脂被覆フランジは、全面に樹脂被覆層を備えたものに限らず、ボルト頭、ナット、座金等の締結用の部材に面する側に樹脂面が存在するものも含まれる。本発明の締結構造を適用する代表例としては、フランジ全面に樹脂被覆層を形成した樹脂被覆フランジを挙げることができる。
【0007】
締結構造に用いるボルト、ナットの形態は、締結すべき二つの部材の片側から、ボルト頭付のボルトを貫通させ、反対側でナットを締め込むものが一般的であるが、これに限らず、締結すべき二つの部材の一方にボルトを固定し、そのボルトを他方の部材に貫通させ、ナットで固定する形態等、適宜変更可能である。
【0008】
【実施例】
以下、図面に示す実施例を説明する。図1は、内外面樹脂被覆管の樹脂被覆フランジ同志を締結する場合に適用した本発明の実施例に係る締結構造の概略断面図であり、1、1は互いに接続すべき樹脂被覆管である。この樹脂被覆管1は、鋼管等の金属製管体2の内外面に樹脂被覆層3を形成し、且つ管端に接合した鋼材等の金属製フランジ4の表面全体にも樹脂被覆層5を形成した構造のものである。このフランジ4、4を接合する締結構造は、ボルト頭7aを有するボルト7、平座金8、8、ナット9に加えて、皿ばね座金11、11を備えている。
【0009】
この皿ばね座金11、11は、ボルト、ナット等のゆるみ止めとして従来より使用されているものであるが、従来、ボルト頭又はナットと平座金の間に配置していたのとは異なり、本実施例では、図2(a)に拡大して示すように、一方のフランジ4とボルト頭7aの間、並びに他方のフランジ4とナット9の間に、凹面11a側が樹脂被覆層3に直接接触するように配置している。この状態でボルト7に対してナット9を所定のトルクで締め込むことで、図2(b)に示すように、二つのフランジ4、4が締結される。締結状態において、皿ばね座金11、11はボルト頭7aと樹脂被覆層5、及びナット9と樹脂被覆層5で挟まれて皿ばね座金の凹面側のほぼ全面が樹脂被覆フランジの樹脂被覆層に押し付けられるようにほぼ平坦な状態に弾性変形した状態となり、ボルト7、ナット9とフランジ4、4との間にばね力を作用させ、常時、フランジ4、4間に所望の押圧力を付与する。この際、皿ばね座金11、11は樹脂被覆層5に強く押し付けられた状態となるので、樹脂被覆層5の皿ばね座金11に接する部分には大きい圧縮力が作用し、その部分の樹脂が周囲に流れようとするが、皿ばね座金11の外周部分が樹脂面に強く押し付けられ、その内側にある樹脂が周囲に流れるのを防止する。これにより、樹脂被覆層5の皿ばね座金を支持する部分の見かけ上の剛性が高くなり、皿ばね座金のめり込みが小さくなる。かくして、ナット9を所定のトルクで締め込んだ後でのナットのゆるみ量が小さくなり、増し締めをあまり行う必要がなくなると共にフランジ4、4間の密封性能を高めることができる。
【0010】
次に、実際にフランジ締付作業を行って水圧テストを行った結果を示す。
[実施例1]
配管口径:700Aの内外面ポリエチレン粉体塗装フランジ付鋼管(樹脂被覆層厚1.5mm)を用意し、そのフランジ同志を、円周方向に等間隔な24個所で図1、図2に示すように、ボルト7、平座金8、ナット9、皿ばね座金11を用いて締結した。ここで用いたボルト7、ナット9は、呼び径M30、材質SUS304、平座金8は、呼び径M30、外径50mm、内径31mm、厚さ4mm、材質SUS304、皿ばね座金11は、呼び径M30、外径56mm、内径31mm、厚さ5mm、高さ(軸線方向の高さ)6.6mm、材質SUS304である。
ボルト7、ナット9の締め込みに当たっては、トルクレンチによって初期締付けトルク:36.4kgfmとなるように締め込み、全数(24個)締め込み終了後、ナットのゆるみ量を測定した。その結果、ゆるみ量は最大7kgfm、最小2kgfm、平均3.3kgfmであった。次いで、増し締めを行って、再び締付けトルクが36.4kgfmとなるように締め込んだ。
その後、水圧試験を行ったところ、管内水圧を1.0MPaとしてもフランジ間に漏れは見られず、良好な密封を確保できた。
水圧試験終了後、ボルト、ナットを取り外し、樹脂被覆層の状況を観察したところ、座金痕の深さは0.3mm程度と、小さいものであった。
【0011】
[比較例1]
比較のため、皿ばね座金を用いないこと以外は上記の実施例1と同一条件でフランジ締結作業を行った。この際、トルクレンチによって初期締付けトルク:36.4kgfmとなるように締め込み、全数(24個)締め込み終了後、ナットのゆるみ量を測定したところ、ゆるみ量は最大20kgfm、最小12kgfm、平均16.4kgfmもあった。その後、増し締めを行って再び締付けトルクが36.4kgfmとなるように締め込んだが、再びかなりのゆるみ量が見られたので、更に2回増し締めを行い、結局、全部で4回の増し締めを行った。
その後、水圧試験を行ったところ、管内水圧を0.9MPaを越えた時点でフランジ間に漏れが生じ、従って、実施例1に比べて密封性が劣っていた。
水圧試験終了後、ボルト、ナットを取り外し、樹脂被覆層の状況を観察したところ、深さ1.2mm程度もの座金痕が見られた。
なお、実施例1と同様に管内水圧1.0MPaに耐えることができるための締付けトルクを測定したところ、42.0kgfmであった。
【0012】
以上の実施例1、比較例1より明らかなように、皿ばね座金を用いない比較例では、ボルト、ナットの締め込み時に平座金が、それに面する樹脂被覆層を周囲に押し出しながら樹脂被覆層内にめり込んで行くため、複数回の増し締めを必要とし、しかも増し締めを行っても、フランジ間の十分な密封性を得ることができなかったが、実施例1では、皿ばね座金がそれに面する樹脂被覆層の周囲への流れを阻止し、換言すれば、樹脂被覆層の皿ばね座金に面する部分が皿ばね座金を良好に支持し、これによって増し締めをあまり必要とすることなく、ボルト、ナットの締め込み作業を行うことができ、フランジ間の良好な密封性を得ることができる。
【0013】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の締結構造は、樹脂被覆フランジの締結に当たって、単に皿ばね座金を、その凹面側が樹脂被覆フランジの樹脂面に直接接触するように配置するという簡単な構造を採ることにより、圧縮剛性の小さい樹脂被覆層で皿ばね座金を良好に支持し、所望の締結強度を確保でき、簡単な構造で樹脂被覆フランジを締結できるという効果を有している。そして、本発明を、内外面樹脂被覆管の樹脂被覆フランジ同志の接合に適用することで、樹脂被覆フランジ同志を良好に締結でき、内外面樹脂被覆管の配管を容易に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る締結構造の概略断面図
【図2】(a)図1の締結構造を、ナットを締め込む前の状態で示す概略断面図
(b)図1の締結構造を、ナットを締め込んだ後の状態で示す概略断面図
【図3】(a)樹脂被覆フランジ同志を締結する通常の締結構造を、ナットを締め込む前の状態で示す概略断面図
(b)(a)に示す締結構造を、ナットを締め込んだ後の状態で示す概略断面図
【符号の説明】
1 内外面樹脂被覆管
2 管体
3 樹脂被覆層
4 フランジ
5 樹脂被覆層
6 パッキン
7 ボルト
7a ボルト頭
8 平座金
9 ナット
11 皿ばね座金
11a 凹面

Claims (1)

  1. 少なくとも一方が樹脂被覆フランジである二つの部材をボルト、ナットを用いて締結する締結構造において、前記樹脂被覆フランジとそれに締付け力を作用させるボルト頭又はナットの間に、皿ばね座金を、その凹面側が前記樹脂被覆フランジの樹脂被覆層に直接接触するように配置し、前記皿ばね座金の凹面側のほぼ全面が前記樹脂被覆フランジの樹脂被覆層に接触するように前記ボルト、ナットを締め込んでいることを特徴とする樹脂被覆フランジの締結構造。
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