JP4674433B2 - 磁気抵抗効果素子及び磁気メモリ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果素子及び磁気抵抗効果素子を備えて成る磁気メモリ装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
情報通信機器、特に携帯端末などの個人用小型機器の飛躍的な普及に伴い、これを構成するメモリやロジックなどの素子には、高集積化、高速化、低電力化など、一層の高性能化が要請されている。特に不揮発性メモリの高密度・大容量化は、可動部分の存在により本質的に小型化が不可能なハードディスクや光ディスクを置き換える技術として、ますます重要になってきている。
【0003】
不揮発性メモリとしては、半導体を用いたフラッシュメモリや、強誘電体を用いたFRAM(Ferro electric Random Access Memory )等が挙げられる。
しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いという欠点がある。一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が少ないという問題が指摘されている。
【0004】
これらの欠点がない不揮発性メモリとして注目されているのが、例えば「Wang et al.,IEEE Trans. Magn. 33(1997),4498 」に記載されているような、MRAM(Magnetic Random Access Memory )と呼ばれる磁気メモリである。このMRAMは、構造が単純であるため高集積化が容易であり、また磁気モーメントの回転により記録を行うために書き換え可能回数が大である。またアクセス時間についても非常に高速であることが予想され、既にナノ秒台で動作可能であることが確認されている。
【0005】
このMRAMに用いられる、磁気抵抗効果素子、特にトンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magnetoresistance:TMR)素子は、基本的に強磁性層/トンネルバリア層/強磁性層の積層構造で構成される。この素子では、強磁性層間に一定の電流を流した状態で強磁性層間に外部磁場を印加した場合、両磁性層の磁化の相対角度に応じて磁気抵抗効果が現れる。双方の強磁性層の磁化の向きが反平行の場合は抵抗値が最大となり、平行の場合は抵抗値が最小となる。メモリ素子としての機能は外部磁場により反平行と平行の状態を作り出すことによってもたらされる。
【0006】
特にスピンバルブ型のTMR素子においては、一方の強磁性層が隣接する反強磁性層と反強磁性的に結合することによって磁化の向きが常に一定とされた磁化固定層とされる。他方の強磁性層は、外部磁場等によって容易に磁化反転する磁化自由層とされる。そして、この磁化自由層が磁気メモリにおける情報記録層となる。
【0007】
スピンバルブ型のTMR素子において、その抵抗値の変化率は、それぞれの強磁性層のスピン分極率をP1,P2とすると、下記の式(1)で表される。
2P1P2/(1−P1P2) (1)
このように、それぞれのスピン分極率が大きい程、抵抗変化率が大きくなる。
【0008】
ところで、MRAMの基本的な構成は、例えば特開平10−116490号公報に開示されているように、複数のビット書き込み線(いわゆるビット線)と、これら複数のビット書き込み線に直交する複数のワード書き込み線(いわゆるワード線)とを設け、これらビット書き込み線とワード書き込み線との交点に磁気メモリ素子としてTMR素子が配されて成る。そして、このようなMRAMで記録を行う際には、アステロイド特性を利用してTMR素子に対して選択書き込みを行う。
【0009】
ここで、TMR素子を用いたMRAMの動作原理を簡単に説明する。
MRAMは、磁性体からなる微小な記憶担体(磁性記憶担体)を規則的に配置し、その各々にアクセスできるような配線を施した構造を有する。TMR素子を用いる場合には、TMR素子の磁化自由層が磁性記憶担体となり、TMR素子によりメモリセルが構成される。
【0010】
情報の書き込みは、上述のワード書き込み線とビット読み出し線の両方に電流を流すことにより発生する合成電流磁界を用いて、各メモリセルを構成するTMR素子の磁化自由層の磁化を制御することにより行う。
【0011】
一般的には、磁化の向きに応じて“0”情報と“1”情報とを記憶させる。
具体的には、例えば磁化自由層の磁化の向きと磁化固定層の磁化の向きが反平行であり抵抗値が高い場合を例えば“1”、その逆に各々の磁化の向きが平行である場合を“0”とする。また、逆に反平行である場合を“0”とすることも可能である。
【0012】
情報の読み出しは、トランジスタ等の素子を用いて、メモリセルの選択を行い、磁気抵抗効果により磁化の向きを電圧信号として取り出す。
【0013】
メモリセルを構成するTMR素子は、強磁性体/絶縁体/強磁性体の3層の積層構造即ち強磁性トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction;MTJ)を含む構造であり、一方の強磁性体層が磁化固定層、他方の強磁性体層が磁化自由層となる。そして、磁化固定層を固定参照層(ピンド/リファレンス層)として用い、磁化自由層(フリー層)を情報記録層として用いることにより、トンネル磁気抵抗効果によって、磁化自由層(情報記録層)の磁化の向きと電圧信号とを対応させる。
【0014】
次に、書き込み時のセル選択方法について説明する。
一般に、強磁性体の磁化容易軸方向に、磁化と反対の向きに磁界を印加すると、ある磁界値±Hc即ち反転磁界において、磁化が磁界の方向に反転する。この反転磁界の値は、理論的にはエネルギ最小の条件から求めることができる。
さらに、磁化容易軸方向だけでなく磁化困難軸方向にも磁界を印加した場合には、この反転磁界Hcの絶対値が減少することが知られている。これもやはりエネルギ最小条件から求めることができ、磁化困難軸方向に印加した磁界をHxとすると、このときの反転磁界Hyとの間には、
Figure 0004674433
の関係がある。この曲線は、Hx−Hy平面上でアステロイドを形成するため、アステロイド曲線と呼ばれる。
書き込み時のセル選択方法は、このアステロイド曲線を用いて説明することができる。
【0015】
ワード書き込み線から発生する磁界が磁化容易軸方向とほぼ一致している構成のMRAMにおいては、ワード書き込み線から発生する磁界により、磁化自由層(情報記録層)の磁化を反転させて記録を行う。
しかしながら、ワード書き込み線から等距離に位置するメモリセルが複数個存在するため、ワード書き込み線に反転磁界以上の磁界を発生する量の電流を流してしまうと、これら等価な複数のメモリセルに同時に記録を行ってしまうことになる。
そこで、選択したいメモリセルに懸かるビット書き込み線に電流を流して磁化困難軸方向の磁界を発生させる。これにより、選択セルの反転磁界を小さくすることができる。このときの反転磁界をHc(h)、ビット書き込み線による磁界が0の場合の反転磁界をHc(0)とすると、ワード書き込み線による磁界HをHc(h)<H<Hc(0)となるように設定することにより、選択的にメモリセルに記録することができる。
このようにして、記録時にセルを選択することができる。
【0016】
このMRAMは、構造が単純であるため高集積化が容易であり、かつ磁気モーメントの回転により記録を行うために書き換え可能回数が大である。
また、アクセス時間についても、非常に高速であることが予想され、既にナノ秒台で動作可能であることが確認されている。
【0017】
従って、MRAMは特にランダムアクセス、書き換え可能回数大、高速動作の3点においてフラッシュメモリよりも優れ、またプロセス整合性の点でFeRAMより優れている。さらに、DRAM並みの高集積度とSRAM並みの高速性を両立できると期待されるため、システムLSI用混載メモリをすべて置き換える可能性も有している。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MRAMは、DRAMで用いられているようなMOSスイッチ等による選択記録ではなく、直交磁場による選択記録という特徴的な書き込み方法を採用していることにより、固有の課題を有している。
【0019】
特に、メモリセルを構成するTMR素子の磁気特性が素子毎にばらつくことや、同一素子を繰り返し使用した場合のばらつきが存在すると、アステロイド特性を使用した選択書き込みが困難になるという問題点がある。
従って、TMR素子には、理想的なアステロイド曲線を描かせるための磁気特性も求められる。
【0020】
ここで、TMR素子を備えたMRAMにおける、理想的なアステロイド曲線を、図8Aに示す。曲線に歪やばらつきがなく、きれいな曲線となっている。
【0021】
これに対して、現実の磁気メモリ装置を測定して得られるアステロイド曲線は、図8Bのようになる。
この図8Bより、反転磁界にばらつきが存在していることがわかる。これは、メモリ装置を構成する多数のトンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)において、各素子の反転磁界にばらつきがあるために、アステロイド曲線がばらついているからである。
【0022】
図8Bのようなアステロイド曲線を有する磁気メモリ装置において、選択記録可能な領域は同図に示した通りである。W0は、“0”を選択記録することが可能な領域を示し、W1は“1”を選択記録することが可能な領域を示している。
アステロイド曲線にばらつきがあるため、W1の領域に比較してW0の領域が狭くなっていることがわかる。
実際にMRAMとして動作させるためには、“0”と“1”を共に選択記録できるようにする必要がある。
従って、選択記録のマージンを充分確保できるように、W0の領域とW1の領域とが、いずれも充分広い範囲を有することが求められる。
【0023】
そして、図8Bより明らかなように、選択記録のマージンを広く確保するためには、アステロイド曲線のばらつき、即ち各メモリセルを構成するTMR素子の反転磁界のばらつきを抑制することが重要である。
【0024】
反転磁界のばらつきには種々の起源があり、例えば材料の不均一性やプロセス精度に起因するものもあるが、より本質的には磁化反転そのものが必ずしも同じエネルギー状態を経由して起こるものではないという事実がある。これはMRAMを構成する一つ一つのビットの反転磁界を繰り返し測定した場合に、必ずしもその値が一定とならず、ある分散(繰り返しばらつきと呼ぶ)を有することにより示される。
従って、反転磁界ばらつきの抑制をするために、この繰り返しばらつきを抑制することが求められる。
【0025】
上述した問題の解決のために、本発明においては、磁化自由層の反転磁界の繰り返しばらつきを抑制することにより、良好な磁気特性を有する磁気抵抗効果素子、並びにこの磁気抵抗効果素子を備えて選択記録のマージンを広く確保することができる磁気メモリ装置を提供するものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気抵抗効果素子は、対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成であって、対の強磁性層の一方が磁化固定層であり、もう一方が磁化自由層であり、磁化固定層が積層フェリ構造を有し、磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、磁化自由層の膜厚が1.5nm〜6nmであり、磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式A/(t・Ms)>W/50を満たし、中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子であるものである。
【0027】
本発明の磁気メモリ装置は、対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子を厚み方向に挟むワード線及びビット線とを備え、対の強磁性層のうち一方が磁化固定層であり、他方が磁化自由層であり、磁化固定層が積層フェリ構造を有し、磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、磁化自由層の膜厚が1.5nm〜6nmであり、磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式A/(t・Ms)>W/50を満たし、中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子であるものである。
【0028】
ここで、上記式に用いられる交換スティフネス定数Aは、以下に説明されるように定義されるものである(裳華房刊「強磁性体の物理(下)」(近角聡信著)を参照)。
【0029】
スピンSi とスピンSj とが角度をなす場合に、これらのスピンの交換エネルギーwijは、交換積分をJとして、
Figure 0004674433
で表される。
i とSj のなす角度φが小さく、Si とSj の大きさが等しいときには、スピンの大きさをSとして、式(3)は、
Figure 0004674433
と書くことができる。これはφが小さいときに
Figure 0004674433
となるからである。式(4)から交換エネルギーが角度φの2乗に比例して増すことがわかり、バネ等の弾性体の弾性エネルギーが変形の2乗に比例して増すことと類似している。
【0030】
そして、磁性体内のスピン分布が与えられたとき、そこに貯えられる交換エネルギーは、そのスピン分布によって記述することができる。ある格子点にあるスピンSi の向きに平行な単位ベクトルをa、単位胞に属する原子の数をnとしたとき、強磁性体内のスピンの単位体積当たりの交換エネルギーEexは、
Figure 0004674433
と表される。
他方(a・a)=1であるから、この両辺をxで2回微分することにより、次式(7)の関係を得る。yとzについても同様である。
Figure 0004674433
これを用いると、式(6)は、
Figure 0004674433
と変形される。
このうちAはA=nJS2 /aで定義されるものであり、aのx、y、zによる偏微分は弾性体の歪に相当する量となっていることから、式(8)の交換エネルギーの式は、弾性エネルギーが歪テンソルの2次形式で与えられるのと類似している。
このことから、弾性体の変形による弾性エネルギーの式における「スティフネス定数」にならって、磁性体におけるこのAを交換スティフネス定数(exchange stiffness constant )と称している。
【0031】
上述の本発明の磁気抵抗効果素子の構成によれば、磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式A/(t・Ms2 )>W/50を満たす構成となっていることにより、反転磁界の繰り返しばらつきを抑制することが可能になる。
【0032】
上述の本発明の磁気メモリ装置の構成によれば、上述した本発明の磁気抵抗効果素子を備えていることにより、磁化自由層の反転磁界の繰り返しばらつきが低減されているため、選択記録を行うことを可能にする磁界の範囲(磁化容易軸方向の磁界及び磁化困難軸方向の磁界)を広くすることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明は、対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子であって、対の強磁性層の一方が磁化固定層であり、もう一方が磁化自由層であり、磁化固定層が積層フェリ構造を有し、磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、磁化自由層の膜厚が1.5nm〜6nmであり、磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式A/(t・Ms)>W/50を満たし、中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子である磁気抵抗効果素子である。
【0037】
本発明は、対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子を厚み方向に挟むワード線及びビット線とを備え、対の強磁性層のうち一方が磁化固定層であり、他方が磁化自由層であり、磁化固定層が積層フェリ構造を有し、磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、磁化自由層の膜厚が1.5nm〜6nmであり、磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式A/(t・Ms)>W/50を満たし、中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子である磁気メモリ装置である。
【0041】
本発明の磁気抵抗効果素子の一実施の形態の概略構成図を図1に示す。この図1に示す実施の形態は、本発明をトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子と称する。)に適用した場合を示している。
【0042】
このTMR素子1は、シリコン等からなる基板2上に、下地層3と、反強磁性層4と、強磁性層である磁化固定層5と、トンネルバリア層6と、強磁性層である磁化自由層7と、トップコート層8とがこの順に積層されて構成されている。
即ち、強磁性層の一方が磁化固定層5とされ、他方が磁化自由層7とされた、いわゆるスピンバルブ型のTMR素子を構成しており、一対の強磁性層である磁化固定層5と磁化自由層7とでトンネルバリア層6を挟み込むことにより、強磁性トンネル接合を形成している。
そして、磁気メモリ素子等にこのTMR素子1を適用した場合には、磁化自由層7が情報記録層となり、そこに情報が記録される。
【0043】
反強磁性層4は、強磁性層の一方である磁化固定層5と反強磁性的に結合することにより、書き込みのための電流磁界によっても磁化固定層5の磁化を反転させず、磁化固定層5の磁化の向きを常に一定とするための層である。即ち、図1に示すTMR素子1においては、他方の強磁性層である磁化自由層7だけを外部磁場等によって磁化反転させる。磁化自由層7は、TMR素子1を例えば磁気メモリ装置等に適用した場合に情報が記録される層となるため、情報記録層とも称される。
反強磁性層4を構成する材料としては、Fe、Ni、Pt、Ir、Rh等を含むMn合金、Co酸化物、Ni酸化物等を使用することができる。
【0044】
図1に示すスピンバルブ型のTMR素子1においては、磁化固定層5は、反強磁性層4と反強磁性的に結合することによって磁化の向きを一定とされる。このため、書き込みの際の電流磁界によっても磁化固定層5の磁化は反転しない。
【0045】
トンネルバリア層6は、磁化固定層5と磁化自由層7とを磁気的に分離するとともに、トンネル電流を流すための層である。
トンネルバリア層6を構成する材料としては、例えばAl、Mg、Si 、Li、Ca等の酸化物、窒化物、ハロゲン化物等の絶縁材料を使用することができる。
【0046】
このようなトンネルバリア層6は、スパッタリング法や蒸着法等によって成膜された金属膜を、酸化又は窒化することにより得ることができる。
また、有機金属と、酸素、オゾン、窒素、ハロゲン、ハロゲン化ガス等とを用いるCVD法によっても得ることができる。
【0047】
本実施の形態においては、特に、TMR素子1を、TMR素子1の素子幅W[nm]と、磁化自由層7に用いられる強磁性材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]が、次式(10)を満たす構成とする。
A/(t・Ms2 )>W/50 (10)
【0048】
このように式(10)を満たす強磁性材料としては、例えばCoFeBを挙げることができる。
このCoFeBは、組成によって他の特性を大きく損なうことなく飽和磁化Ms及び交換スティフネス定数Aを制御できるという観点で、好ましい材料である。
磁化自由層7にCoFeBを用いた場合には、後述する範囲の組成とすることにより、TMR素子1が式(10)を満たすようにすることが可能になる。
【0049】
また、その他の材料系の強磁性材料でも、TMR素子1が式(10)を満たすように構成することが可能な材料であれば、磁化自由層7に使用することが可能である。
この場合でも、組成によって飽和磁化Msや交換スティフネス定数Aを制御することが容易な材料系、例えばCoFeやCoFeに種々の添加物(C,Si,P,Ga,Ge,Zr,Hf,Y,Ti,Nb,Mn,Cr,Ni,V,希土類等)を添加したもの、NiFe,CoNiもしくはNiFe,CoNiを主体としてB乃至上記添加物を加えたものを使用することが望ましい。
【0050】
上述の実施の形態のTMR素子1によれば、TMR素子1が式(10)を満たすことにより、反転磁界(磁化自由層7の磁化が反転する磁界)の繰り返しばらつきを低減することが可能となる。
【0051】
これにより、例えば多数のTMR素子を有して成る磁気メモリ装置にTMR素子1を適用した場合に、多数のTMR素子1について反転磁界のばらつきを抑制することにつながり、選択記録のマージンを広くすることができる。
また、TMR素子を有して成る磁気ヘッドや磁気センサに適用した場合には、反転磁界の設計値からのずれを抑制して、製造歩留まりを向上することや動作不良を防止することが可能になる。
【0052】
尚、本発明においては、図1に示すような磁化固定層5及び磁化自由層7のそれぞれが単層から構成されたTMR素子1に限定されない。
例えば図2に示すように、磁化固定層5が、第1の磁化固定層5aと第2の磁化固定層5bとで非磁性導電体層5cを挟み込んでなる積層フェリ構造とされる場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0053】
図2に示すTMR素子10では、第1の磁化固定層5aが反強磁性層4と接しており、これらの層間に働く交換相互作用によって、第1の磁化固定層5aは強い一方向の磁気異方性を持つ。また、第2の磁化固定層5bは、トンネルバリア層6を介して磁化自由層7と対向し、スピンの向きが磁化自由層7と比較され直接MR比に関わる強磁性層となるため、参照層とも称される。
【0054】
積層フェリ構造の非磁性導電体層5cに用いられる材料としては、例えばRu、Cu、Cr、Au、Ag等が挙げられる。図2のTMR素子10において、その他の層は図1に示したTMR素子1とほぼ同様の構成であるため、図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
この積層フェリ構造を有するTMR素子10においても、式(10)を満たす構成とすることにより、図1に示したTMR素子1と同様に、反転磁界(磁化自由層7の磁化が反転する磁界)の繰り返しばらつきを低減することが可能となる。
【0056】
尚、上述の実施の形態では、磁気抵抗効果素子としてTMR素子(トンネル磁気抵抗効果素子)1,10を用いたが、本発明は、一対の強磁性層が中間層を介して対向され、膜面に対して垂直に電流を流して磁気抵抗変化を得る構成を有するその他の磁気抵抗効果素子にも適用することができる。
例えば中間層としてCu等の非磁性導電層を用いた巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)で、膜面に対して垂直に電流を流して磁気抵抗効果を得る構成、即ちいわゆるCPP型のGMR素子にも本発明を適用することができる。
【0057】
さらに、磁化固定層や反強磁性体の材料、磁化固定層側における積層フェリ構造の有無等は、本発明の本質を損なわない限り種々の変形が可能である。
【0058】
上述のようなTMR素子1,10等の磁気抵抗効果素子は、例えばMRAM等の磁気メモリ装置に用いられて好適である。以下、本発明のTMR素子を用いたMRAMについて、図を参照しながら説明する。
【0059】
本発明のTMR素子を有するクロスポイント型のMRAMアレイを、図3に示す。このMRAMアレイは、複数のワード線WLと、これらワード線WLと直交する複数のビット線BLとを有し、ワード線WLとビット線BLとの交点に本発明のTMR素子が配置されて成るメモリセル11とを有する。即ち、このMRAMアレイでは、3×3のメモリセル11がマトリクス状に配置される。
【0060】
尚、MRAMアレイに用いられるTMR素子としては、図1に示したTMR素子1に限定されず、積層フェリ構造を有する図2に示すTMR素子10等、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子において式(10)を満たす構成であればいかなる構成であっても構わない。
【0061】
また、メモリ素子に多数あるメモリセルから1つのメモリセルを取り出して、断面構造を図4に示す。
各メモリセル11は、図4に示すように、例えばシリコン基板12上に、ゲート電極13、ソース領域14及びドレイン領域15からなるトランジスタ16を有する。ゲート電極13は、読み出し用のワード線WL1を構成している。ゲート電極13上には、絶縁層を介して書き込み用のワード線(前述したワード書き込み線に相当する)WL2が形成されている。トランジスタ16のドレイン領域15にはコンタクトメタル17が接続され、さらにコンタクトメタル17には下地層18が接続されている。この下地層18上の書き込み用のワード線WL2の上方に対応する位置に、本発明のTMR素子1が形成されている。このTMR素子1上に、ワード線WL1及びWL2と直交するビット線(前述したビット書き込み線に相当する)BLが形成されている。
また、各ワード線WL1,WL2とTMR素子1とを絶縁するための層間絶縁膜19及び絶縁膜20と、全体を保護するパッシベーション膜(図示せず)等を有して成る。
【0062】
このMRAMは、式(10)を満たす構成のTMR素子1を用いているので、各メモリセル11の反転磁界の繰り返しばらつきを低減することができる。
これにより、選択記録を行うための反転磁界のマージンを充分に確保することができる。
【0063】
(実施例)
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
図2に示した、磁化固定層5に積層フェリ構造5a,5b,5cを有するTMR素子10について、磁気特性を変化させるために磁化自由層7を種々の組成に変更したサンプルを作製した。具体的には、磁化自由層7の組成を(FexCo1−x)1−yByとして、x及びyの値(原子%)を表1に示すように変化させた。また、各サンプルのTMR素子10を有する図3及び図4に示した構成の磁気メモリ装置を作製した。
【0064】
<サンプル1>
まず、内部が超高真空領域まで排気されたマグネトロンスパッタ装置内で、基板上に、Ta膜を膜厚3nm、PtMn膜(反強磁性層4)を膜厚30nm、CoFe膜(第1の磁化固定層5a)を膜厚1.5nm、Ru膜(非磁性導電体層5c)を膜厚0.8nm、CoFe膜(第2の磁化固定層5b)を膜厚2nm、Al膜を例えば膜厚1nm、というように順次成膜した。
尚、第1の磁化固定層5a及び第2の磁化固定層(参照層)5bのCoFe膜は、ターゲット組成をCo75Fe25(原子%)として成膜した。
【0065】
次に、Al膜を純酸素中でプラズマ酸化させて、均一なAl酸化膜を得て、TMR素子のトンネルバリア層6を形成した。
【0066】
続いて、マグネトロンスパッタ装置内で、磁化自由層7を膜厚1.5〜6nm、Ta膜を膜厚5nm、それぞれ成膜した。
尚、磁化自由層7の組成は、x=0,y=5即ちCo95B5(原子%)とした。
【0067】
次に、反強磁性層4のPtMn膜を規則合金化するため、磁場中熱処理を行った。この磁場中熱処理の条件は、10kOeの磁界中、280℃で1時間とした。
さらに、フォトリソグラフィとイオンミリングの組み合わせにより微細加工し、0.1μm×0.2μm〜0.6μm×1.2μmの楕円形のTMR素子10を得た。
【0068】
<サンプル2>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=5即ち(Fe10Co90)95B5(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0069】
<サンプル3>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=5即ち(Fe25Co75)95B5(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0070】
<サンプル4>
磁化自由層7の組成を、x=50,y=5即ち(Fe50Co50)95B5(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0071】
<サンプル5>
磁化自由層7の組成を、x=0,y=10即ちCo90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0072】
<サンプル6>
磁化自由層7の組成を、x=5,y=10即ち(Fe5Co95)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0073】
<サンプル7>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=10即ち(Fe10Co90)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0074】
<サンプル8>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=10即ち(Fe25Co75)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0075】
<サンプル9>
磁化自由層7の組成を、x=30,y=10即ち(Fe30Co70)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0076】
<サンプル10>
磁化自由層7の組成を、x=35,y=10即ち(Fe35Co65)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0077】
<サンプル11>
磁化自由層7の組成を、x=45,y=10即ち(Fe45Co55)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0078】
<サンプル12>
磁化自由層7の組成を、x=50,y=10即ち(Fe50Co50)90B10(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0079】
<サンプル13>
磁化自由層7の組成を、x=0,y=20即ちCo80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0080】
<サンプル14>
磁化自由層7の組成を、x=5,y=20即ち(Fe5Co95)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0081】
<サンプル15>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=20即ち(Fe10Co90)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0082】
<サンプル16>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=20即ち(Fe25Co75)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0083】
<サンプル17>
磁化自由層7の組成を、x=30,y=20即ち(Fe30Co70)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0084】
<サンプル18>
磁化自由層7の組成を、x=35,y=20即ち(Fe35Co65)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0085】
<サンプル19>
磁化自由層7の組成を、x=45,y=20即ち(Fe45Co55)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0086】
<サンプル20>
磁化自由層7の組成を、x=50,y=20即ち(Fe50Co50)80B20(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0087】
<サンプル21>
磁化自由層7の組成を、x=0,y=30即ちCo70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0088】
<サンプル22>
磁化自由層7の組成を、x=5,y=30即ち(Fe5Co95)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0089】
<サンプル23>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=30即ち(Fe10Co90)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0090】
<サンプル24>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=30即ち(Fe25Co75)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0091】
<サンプル25>
磁化自由層7の組成を、x=30,y=30即ち(Fe30Co70)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0092】
<サンプル26>
磁化自由層7の組成を、x=35,y=30即ち(Fe35Co65)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0093】
<サンプル27>
磁化自由層7の組成を、x=40,y=30即ち(Fe40Co60)70B30(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0094】
<サンプル28>
磁化自由層7の組成を、x=0,y=40即ちCo60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0095】
<サンプル29>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=40即ち(Fe10Co90)60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0096】
<サンプル30>
磁化自由層7の組成を、x=20,y=40即ち(Fe20Co80)60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0097】
<サンプル31>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=40即ち(Fe25Co75)60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0098】
<サンプル32>
磁化自由層7の組成を、x=30,y=40即ち(Fe30Co70)60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0099】
<サンプル33>
磁化自由層7の組成を、x=35,y=40即ち(Fe35Co65)60B40(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0100】
<サンプル34>
磁化自由層7の組成を、x=0,y=45即ちCo55B45(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0101】
<サンプル35>
磁化自由層7の組成を、x=5,y=45即ち(Fe5Co95)55B45(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0102】
<サンプル36>
磁化自由層7の組成を、x=10,y=45即ち(Fe10Co90)55B45(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0103】
<サンプル37>
磁化自由層7の組成を、x=25,y=45即ち(Fe25Co75)55B45(原子%)とした以外はサンプル1と同様にしてTMR素子10を得た。
【0104】
また、各サンプル1〜サンプル37のTMR素子10から、それぞれTMR素子10を1kbit(キロビット)有する、図3及び図4に示した構成のMRAM(磁気メモリ装置)を作製した。
【0105】
上述した反転磁界の繰り返しばらつきの抑制効果は、磁化自由層材料の交換スティフネス定数A及び飽和磁化Ms、膜厚t、並びにTMR素子のサイズ、具体的にはTMR素子の素子幅Wとの間に、前述した式(10)の関係が成立する場合に起こる。
【0106】
まず、CoFeBの組成を変えたサンプル1〜サンプル37において、Feの含有量(原子%)と、Bの含有量(原子%)と、磁化自由層の膜厚を1.5nm(タイプI)としたときのA/Ms2 の値と、タイプIの構成のTMR素子を有するメモリ装置の反転磁界の繰り返しばらつきSFD(標準偏差σ/平均値ave.)の値とを、それぞれ表1に示す。
交換スティフネス定数Aはスピン波共鳴により、飽和磁化Msは振動試料型磁力計により、それぞれ得た値である。
【0107】
【表1】
Figure 0004674433
【0108】
表1の結果から、上述した反転磁界の繰り返しばらつきと、磁化自由層7のA/Ms2 とがよく対応していることがわかる。
即ち磁化自由層7のA/Ms2 が小さいサンプルは、SFD即ち反転磁界の繰り返しばらつきも大きくなっている。
【0109】
表1の測定結果に基づき、A/Ms2 の値と反転磁界の繰り返しばらつき(SFD)の関係を図5に示す。
図5から、磁化自由層7のA/Ms2 が小さいと、SFD即ち反転磁界の繰り返しばらつきも大きくなっていることがわかる。
【0110】
一般のMRAMにおいて、ビット線やワード線から発生する磁界のばらつきまでも考慮に入れると、反転磁界のばらつきは、標準偏差/平均値で5%以下に抑える必要がある。さらに微細加工プロセス等のばらつきを考慮すると、単一のTMR素子では反転磁界の繰り返しばらつきを2%以下に抑えなくてはならない。
このように反転磁界の繰り返しばらつきを2%以下にするためには、図5から、A/Ms2 の値は3×10-14 cm2 以上でなければならないことがわかる。
【0111】
また、図6は、同じく表1に示した測定結果に基づき、反転磁界の繰り返しばらつきを2%以下にすることができるCoFeBの組成範囲を、状態図内に斜線を付して示したものである。尚、図中の●印は各サンプル1〜37の組成を示している。
【0112】
さらに、より一般的な関係を求めるために、磁化自由層の膜厚を、1.5nm、3nm、6nmと変えて、また素子の短軸長さ(素子幅Wに相当する)を0.1μm、0.25μm、0.4μm、0.5μm、0.6μmと変えてTMR素子10を作製し、同様に交換スティフネス定数Aと飽和磁化Ms、反転磁界の繰り返しばらつきの測定を行った。
【0113】
その結果、磁化自由層の膜厚が1.5nmで、TMR素子10の短軸長さが0.1μmの場合にはA/Ms2 の臨界値が3×10-14 cm2 であったのが、TMR素子10の短軸長さ及び磁化自由層の膜厚に依存してA/Ms2 の臨界値が変化することがわかった。
この関係を図7に示す。図中△印は磁化自由層の膜厚が1.5nmの場合、●印は磁化自由層の膜厚が3nmの場合、○印は磁化自由層の膜厚が6nmの場合を示している。
【0114】
図7より、TMR素子10の短軸長さが長くなる即ちTMR素子10が大きくなり、磁化自由層7が厚くなるに従って、臨界値が大きくなり、ほぼ直線的に変化することがわかる。
そして、図7から、TMR素子の短軸長さWと磁化自由層の膜厚t、及びA/Ms2 の臨界値との間には次式の関係が成立することがわかる。
C・A/Ms2 の臨界値=W・t(Cは定数) (11)
この比例定数Cを計算すると、表2のようになり、およそ50となることがわかる。
従って、反転磁界の繰り返しばらつきを抑制するための条件は、
50A/Ms2 >Wt (12)
となり、この式(12)から前述した式(10)即ち
A/(t・Ms2 )>W/50 (10)
が導かれる。
【0115】
【表2】
Figure 0004674433
【0116】
尚、本発明の磁気抵抗効果素子(TMR素子等)は、前述した磁気メモリ装置のみならず、磁気ヘッド及びこの磁気ヘッドを搭載したハードディスクドライブや磁気センサ、集積回路チップ、さらにはパソコン、携帯端末、携帯電話を始めとする各種電子機器、電子機器等に適用することができる。
【0117】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【0118】
【発明の効果】
上述の本発明の磁気抵抗効果素子によれば、磁化自由層の反転磁界の繰り返しばらつきが充分に抑えられる。
これにより、例えば磁気抵抗効果素子を有して成る磁気メモリ装置に適用した場合において、磁気メモリ装置全体においてメモリセルを構成する磁気抵抗効果素子の磁化自由層の半端磁界のばらつきを抑制することが可能となり、メモリセルの選択記録のマージンを拡大することができる。
また、例えば磁気抵抗効果素子を有して成る磁気ヘッドや磁気センサに適用した場合において、反転磁界の設計値からのずれを抑制して、製造歩留まりを向上することや動作不良を防止することが可能になる。
【0119】
また、本発明の磁気メモリ装置によれば、本発明の磁気抵抗効果素子を備えて構成されていることにより、磁気抵抗効果素子の反転磁界の繰り返しばらつきが抑制されているため、メモリセルの選択記録のマージンを広く確保することができ、安定して記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のTMR素子の概略構成図である。
【図2】積層フェリ構造を有するTMR素子の概略構成図である。
【図3】本発明のTMR素子をメモリセルとして有する、クロスポイント型MRAMアレイの要部を示す概略構成図である。
【図4】図3に示すメモリセルの拡大断面図である。
【図5】A/Ms2 と反転磁界の繰り返しばらつきとの関係を示す図である。
【図6】CoFeB系における好ましい組成範囲を示す図である。
【図7】磁化自由層の膜厚及びTMR素子の短軸長さとA/Ms2 の臨界値との関係を示す図である。
【図8】A 単一TMR素子の理想的なアステロイド曲線を示した図である。
B 多数のTMR素子のアステロイド曲線を重ねて示した図である。
【符号の説明】
1,10 トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)、2 基板、3 下地層、4 反強磁性層、5 磁化固定層、5a 第1の磁化固定層、5b 第2の磁化固定層(参照層)、5c 非磁性導電体層、6 トンネルバリア層、7 磁化自由層、11 メモリセル、WL,WL1,WL2 ワード線、BL ビット線

Claims (2)

  1. 対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子であって、
    上記対の強磁性層の一方が磁化固定層であり、もう一方が磁化自由層であり、
    上記磁化固定層が積層フェリ構造を有し、
    上記磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、
    上記磁化自由層の膜厚が、1.5nm〜6nmであり、
    上記磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、
    上記磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式
    A/(t・Ms)>W/50
    満たし、
    上記中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子である
    磁気抵抗効果素子。
  2. 対の強磁性層が中間層を介して対向されてなり、膜面に対して垂直に電流を流すことによって磁気抵抗変化を得る構成の磁気抵抗効果素子と、
    上記磁気抵抗効果素子を厚み方向に挟むワード線及びビット線とを備え、
    上記対の強磁性層のうち一方が磁化固定層であり、他方が磁化自由層であり、
    上記磁化固定層が積層フェリ構造を有し、
    上記磁化自由層の組成が(FexCo1−x)1−yBy(x,yは原子%)であって、25≦x≦35、10≦y≦30であり、
    上記磁化自由層の膜厚が、1.5nm〜6nmであり、
    上記磁気抵抗効果素子の幅が0.1μm〜0.6μmであり、
    上記磁化自由層に用いられる材料の交換スティフネス定数A[erg/cm]、飽和磁化Ms[emu/cc]、膜厚t[nm]、並びに磁気抵抗効果素子の幅W[nm]が、式
    A/(t・Ms)>W/50
    満たし、
    上記中間層がAl酸化膜から成るトンネルバリア層を用いたトンネル磁気抵抗効果素子である
    磁気メモリ装置。
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