JP4674385B2 - 波長変換方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長変換方法に関し、更に詳しくは、レーザー光源からのレーザー光を波長の異なる光に変換するのに、点群3mに属するβ−BaB2 O4 (以下、BBOと略称する)結晶等の非線形光学結晶の非線形光学効果を利用し、目的に合致した波長の光を得る波長変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光は今日、レーザー加工、微細加工、光記録再生、照明、表示、核融合など、多種多彩な産業分野で用いられており、目的用途に合致した波長の光を得るため、波長変換という操作が行われている。
従来から、光の波長変換にBBO結晶等の非線形光学結晶を利用することが頻繁に行われている。すなわち、第2高調波や和周波を発生させておおよそ260nm以上の波長を有する可視光や紫外光を得ること、紫外光、可視光、近赤外光を入射し可視光から赤外のパラメトリック過程や差周波の発生を利用して波長を大にすること、などが主なものである。
【0003】
これらの波長変換では、BBO結晶等の位相整合角はタイプ1の場合で20度から45度程度であることが多い。
【0004】
一方、最近になって、BBO結晶等を波長260nm付近からそれ以下への波長変換に利用することが多くなった。
【0005】
ところで、BBO結晶等による波長変換で重要な役割をもつのは、d22という2次の非線形光学定数である。これまで多用されてきた波長域では、位相整合角をθとすると、有効非線形光学定数は次の(3)式で与えられて、これで実用上充分であった。
eff =d22・cosθ (3)
ここで、点群C3v(3m)で表記されるBBO結晶など非線形光学結晶の結晶軸を慣例〔参考文献1:“Handbook of Nonlinear Optical Crystals”,ed.V.G.Dmitriev et al. ,Springer Verlag(1991),同2nd edition,(1996) 〕にならってa、b、cとし、θを極座標表示で結晶のc軸から測った入射光の波動ベクトルのなす角とする。また、入射光の波動ベクトルのab面への射影がa軸となす角度を、+c軸の側から見て反時計回りにφとすると、ウオークオフを無視した有効非線形光学定数は次の(4)式で与えられる。
eff =d31・sinθ−d22・cosθ・sin3φ (4)
ここで、x軸のとり方によりd22の代わりにd11を0でない成分として用いる表記法や、d31の代わりに、ほぼ等しいd15を用いる表記法もあるが、ここではd22とd31を用いて表記する。どの表記法を用いても、物理的な意味は等しい。入射光量や方向等が一定の場合を考えると、波長変換効率は、入射光の強度が小さい場合、deff の2乗に比例して増大する〔参考文献2:R.C.Eckardt et al.,IEEE J. Quantum Electron(JQE).,Vol.QE−26,No.5,p.922,(1990)] 。
また、波長変換効率がおおよそ10%に達する場合、波長変換効率はdeff の2乗には比例しないがそれと共に増加する。
【0006】
例外として、波長変換効率がコヒーレント長に比べて充分長い場合や入射光強度が極めて高くなる場合は、上記のような単純な議論はできないが、これらの場合は既に充分に波長変換効率が高くなっていることが多く、ここでは議論の対象とはしない。本発明が適用範囲としているのは、波長変換効率がdeff の2乗の増大に伴って上昇する所謂一般の場合である。
【0007】
まず、前記(4)式においてd22を生かすために、sin3φの絶対値が1に近くなるようにすることが一般に行われている。これは後記(1)式(請求項1にも記載)で与えられている。しかし、たとえばφ=90度としたとしても、θ>45度の領域になると、cosθが徐々に小さくなり、逆にsinθが増大するため、小さいとして無視していたd31の全体に占める割合が無視できなくなる。
【0008】
以下、点群3mに属する非線形光学結晶の代表例として、特にBBO結晶を挙げて詳しく説明する。
前記参考文献1によれば、BBO結晶において
31=−(0.07±50%)d22 (5)
又は、
22=±2.3pm/V (6)
【数1】
Figure 0004674385
となる。
そしてφ=90度の場合には、表1の結果が得られる。
Figure 0004674385
Figure 0004674385
注)位相整合角θ(+c軸と光線方向のなす角度)の絶対値と有効非線形定数及びその2乗の相対値。簡便のため後記(1)式が成立しているものとする。
(A)を含む左の3行は前記(4)式の2つの項が同符号の場合で、後記(2)式(請求項1にも記載)を満たす場合に相当する。(B)を含む右の3行はそうでない場合の比較である。ここで、位相整合角が変わると位相整合波長が変わり、dの分散によりdeff の値も変わるが、ここでは角度依存性のみをとらえて比較した。
【0009】
表1の結果は誤差を含むが、この表1は、分散によるd定数の変化を無視した限りでφ=90度のときの、いわゆる位相整合角θの絶対値が0度から90度まで変化した場合においてのdeff 及びdeff の2乗の相対値を示す。前述したようにdeff の2乗は変換効率が小さいときの波長変換効率に比例する量である。
表1を参照すると、(A)/(B)で示されるdeff 2 の比(相対値)は、θが45度以下で両者の差が30%程度かそれ以下であるが、θが約55度からおおよそ90度付近までの範囲においては、おおよそ50%以上の大きな差を生じる。
【0010】
従って、(4)式において第1項と第2項が同符号であることが、効率増大のために重要である。そのためには−d22・cosθ・sin(3φ)とd31・sinθが同符号であることが必要十分条件であるから、d22・d31・sinθ・cosθ・sin(3φ)<0、又はこれと実質上同じ範囲を指定するd22・d31・tanθ・sin(3φ)<0が必要十分条件になる。
【0011】
従来では、位相整合角70度程度までを利用したおおよそ波長190nmの光を得る報告もなされているが〔参考文献3:D.J.Berkeland,et al., Appl.Opt.,Vol.36,p.4159,(1997)] 、前記(2)式を利用したことを明記して、変換効率を安定して高くした報告例はなく、複数の結晶を利用すれば結果のバラツキは避けられないと考えられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、効率上昇を定常的に必要とする工業的見地からは、表1の差は無視できない量であり、ここで指摘した効果を考慮に入れて波長変換効率を常に高く保持すること、また、複数の結晶を利用しても変換効率にバラツキが生じないことが望まれている。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、BBO結晶等の非線形光学結晶における波長変換効率を高く維持し、複数のBBO結晶等の非線形光学結晶を利用しても波長変換効率のバラツキを小さくし、結果として装置の安定性を向上させることを可能にする波長変換方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の波長変換方法は、BBO結晶等の点群3mに属する非線形光学結晶を用いた波長変換方法であって、タイプ1の位相整合角が45度以上であり、位相整合する入射の波動ベクトルが+c軸(c軸の+極性の方向)となす角をθ、その波動ベクトルのab面への射影がa軸からなす角を+c方向から見て反時計回りにφとし、d22を非線形光学結晶の2次の非線形光学定数、d31をd22に対して一定の関係にある2次の非線形光学定数としたとき、おおよそ下記の(1)式及び(2)式
|sin(3φ)|=1 (1)
22・d31・tanθ・sin(3φ)<0 (2)
を満足するように位相整合時のθ及びφ設定ることを特徴とする。
【0015】
本発明に基づく波長変換装置は、BBO結晶等の点群3mに属する非線形光学結晶を有し、タイプ1の位相整合角が45度以上であり、位相整合する入射の波動ベクトルが+c軸(c軸の+極性の方向)となす角をθ、その波動ベクトルのab面への射影がa軸からなす角を+c方向から見て反時計回りにφとし、d22を非線形光学結晶の2次の非線形光学定数、d31をd22に対して一定の関係にある2次の非線形光学定数としたとき、おおよそ前記(1)式及び(2)式を満足するように位相整合時のθ及びφが設定されていることを特徴とする。
【0016】
このように、位相整合時のθ及びφが特定に設定されていると、BBO結晶等の前記非線形光学結晶における波長変換効率を高く維持でき、また複数のBBO結晶等を利用しても波長変換効率のバラツキを小さく抑えることができる。
【0017】
ただし、本発明を実施する際には、多くの好ましい条件というものがあり、以下にそれを列挙する。
(イ)前記非線形光学結晶への入射光またはそれからの出射光のすくなくとも1つ以上は、おおよそブルースター角(Brewster's angle:誘電体表面で反射する光について、電気ベクトルが入射面内にある光の反射率が零になる入射角のことを言い、当業者間ではブリュースター角と呼ばれることが多い)をもって、入射及び/又は出射すること。
(ロ)前記非線形光学結晶の表面と外気との間に、減反射膜、高反射膜、波長分離膜、偏光依存膜のいずれか1つ以上の膜が存在すること。
(ハ)圧電効果または焦電効果を利用して前記非線形光学結晶のa軸、b軸、c軸の1つ以上の軸の極性を測定することにより、前記非線形光学結晶が前記(1)式、(2)式を満足するように加工されていること。
(ニ)電気光学効果を利用して前記非線形光学結晶のa軸、b軸、c軸の1つ以上の軸の極性を測定することにより、前記非線形光学結晶が前記(1)式、(2)式を満足するように加工されていること。
(ホ)1つ以上の入射光は、ネオジミウムイオンを含む固体レーザー媒質から発せられるレーザ光又はそれを波長変換したレーザー光であること。
(ヘ)1つ以上の入射光は、Nd:YAG、Nd:YVO4 、Nd:YLF、Nd:Glassのいずれかの固体レーザー媒質から発せられるレーザー光、又はそれを波長変換したレーザー光であること。
(ト)1つ以上の入射光は、クロムイオン又はチタンイオンを含む固体レーザー媒質から発せられるレーザー光、又はそれを波長変換したレーザー光であること。
(チ)1つ以上の入射光は、半導体レーザー光又はそれを増幅したレーザー光、又はそれらを波長変換したレーザー光であること。
(リ)発生するレーザー光の波長が215nm以下であること。
(ヌ)和周波発生により発生するレーザー光の波長が200nm以下であること。
(ル)前記非線形光学結晶の位相整合角が60度以上であること。
(オ)前記非線形光学結晶は共振器内で使用されること。
(ワ)露点0℃以下の1種以上の乾燥気体、たとえば乾燥空気で満たされた容器中で、本発明の波長変換装置を使用又は保存すること。
(カ)前記非線形光学結晶は直接引上法で育成されたものであること。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基いて更に具体的に説明する。なお、本発明はそれに限定されない。
図1は本発明の波長変換方法に適用可能な波長変換素子に用いるBBO結晶を示すもので、前記(1)式及び(2)式を満足するように設計されている。これは、Nd:YAGレーザーの基本波(波長λ1=1064nm)と4倍波(波長λ4=266nm)とのタイプ1和周波(5倍波;波長λ5=213nm)を発生するために、カットされたものである。なお、このBBO結晶は公知の直接引上法によって育成されたものである。
【0019】
このBBO結晶を5次高調波の発生に利用した場合について説明すると、BBO結晶は一軸結晶で、その常光線や異常光線に対する屈折率分散(セルマイヤーの式)は、例えば参考文献4[ (K.Kato,IEEE JQE,Vol.QE-22,P.1013,(1986)]により与えられ、次のようになる。
ここで、nx はab面上の偏光成分の屈折率、nz はc軸に平行な偏光成分の屈折率であり、次式で与えられる。
【数2】
Figure 0004674385
5倍波発生の位相整合角θを求める式は、
【数3】
Figure 0004674385
ここで、no1、n04はそれぞれ基本波、4倍波における常光線屈折率、ne5(θ)は5倍波における異常光線屈折率を表し、
【数4】
Figure 0004674385
で与えられる。
【0020】
(8)〜(13)式を解くと、θ〜51度となる。このとき、簡便のため、ウオークオフ、d定数の分散を無視して(2)式の効果を考える。θ=51°で且つ前記(1)式が成立しているとき、例えばφ=−90°として前記(2)式が成立していると、deff = 1.57pm/vであるのに対し、前記(2)式が成立していないときは、deff = 1.32pm/vであり、各々2乗してみると、(2)式の方が他方よりも約40%も効率上昇の可能性があることがわかる。
【0021】
従って、あらかじめ、焦電効果、圧電効果、電気光学効果などにより結晶方向を求めておくか、あるいは実際に波長変換を行って変換効率の大きい方向を知ることによって、効率を高く設定することが可能である。
このとき、BBO結晶を大気中で使用する場合は、入射面に保護膜を兼ねた減反射コートが施されていることが、特に望ましい。この減反射コートは入射側で4倍波又は基本波の少なくとも一方に対して行うことが多い。出射側には、発生する5倍波における減反射コートが望ましいが、BBO結晶を共振器内で使用する場合は、むしろ共振する波長での減反射膜が必要であることが多い。コーテイングの有無にかかわらず、結晶方位を事前に把握してから、BBO結晶を加工することが好ましい。
【0022】
次に、図2は本発明の他の実施例におけるBBO結晶を示すもので、これも前記(1)式、(2)式を満足し、かつ入射及び出射において常光線がブルースター角で透過するように設計されている。707nm と266nm の和周波をとって193nm 光を発生するようにカットされており、前記参考文献4より位相整合角はおおよそ75度となる。紫外線による損傷を防ぎ、かつ707nm における損失を小さくするためにBBO結晶をカットした例である。このBBOも直接引上法によって育成されたものである。しかし、それ以外の育成法、たとえばBBO結晶がフラックス法によって育成されたものであっても、本発明は適用可能である。
【0023】
この場合、ブルースター面の入射面を位相整合方向とc軸とに略平行にすると、707nm と266nm 光の損失が少なくなる。 また、こうすることによって、BBO結晶の分散により、各波長の光を入出射面における屈折角の差から空間分離することも可能になる(参考文献3)。
【0024】
この場合、前記(2)式を満たすBBO結晶の置き方はいく通りかあるが、どの置き方にしても、作製時に(2)式を満たしていれば、その条件を満たすように配置できて、効率を高く設定することができる。逆に、(2)式を満たさない方位/形状に加工してしまうと、どの置き方も(2)式を満足しなくなるおそれがある。(2)式の条件を満たすか満たさないかで、約2倍の効率の差が生じる可能性がある。
【0025】
次に、図3は本発明の更に別の実施例を示すもので、図2で定義されたBBO結晶を波長変換装置に適用した例である。
まず、概略を説明すると、Nd:YAGレーザー装置(発振器)から出力される1064nmの赤外光を用いて2次高調波を発生させ、これを用いて更に4次高調波を発生させ、変換されない2次高調波をチタニウムサファイヤレーザー装置の励起に用いるとともに、4次高調波をチタニウムサファイヤレーザー装置の共振器内に配置したBBO結晶に入射せしめ、この共振器内強度を利用して効率のよい193nm付近の紫外光を発生させる。
【0026】
図中、1は1.06μmで発振する(Qスイッチ)Nd:YAGレーザー装置であり、その出射光2は波長変換部3のLBO(LiB3 5 )等の非線形光学結晶4により、532nmの2次高調波5に変換される。更にこの2次高調波5は必要に応じてダイクロイックミラー10aにより、基本波(1.06μm)が分離されたのち、波長変換部6に入り、そこで例えばBBO結晶7により266nmの4次高調波8に変換される。ただし、ここでは全部が4次高調波に変換されるのではなく、一部9は2次高調波のままである。これらは偏光子又はダイクロイックミラー10bにより分離されたのち、2次高調波9はチタニウムサファイヤレーザー装置11の励起に用いられ、4次高調波8の方は共振器内のBBO結晶15に入射される。12はチタニウムサファイヤ結晶であり、グレーティング、プリズム、エタロン、インジェクション、シーデイングなどの波長選択手段13を介して、共振器ミラー14a、14b、14cに囲まれた共振器により、およそ700nmで発振できるようになっている。BBO結晶15では和周波混合が行われ、その結果、193nm付近の紫外光16を効率良く得ることができる。なお、10c及び10dはミラー、18はレンズを示す。
【0027】
この場合、前記(8)式及び(9)式で表される屈折率分散の式から、
0(266 nm)=1.75737
0(703 nm)=1.66396
0(193 nm)=1.73191 (波長外挿)
が成立し、前述したように位相整合角はおおよそ75°となる。
【0028】
変換効率を上げるためには、近赤外光と深紫外光の強度を上げることが必要である。その手段の1つとして、前記実施例のようにチタニウムサファイヤレーザー装置の共振器内にBBO結晶を配置するのがよい。BBO結晶中では、266nmの光と約700nmの光の重なりを良くする(出来れば互いに近いコンフォーカルパラメータを用いて)ことが、効率向上に欠かせない。
【0029】
因みに、参考文献4でも同様な手法が利用されており、図2と同様にBBO結晶の端面をブルースターカットし、分散を利用することにより、チタニウムサファイヤレーザー装置の光路と266nm光の光路とをBBO結晶中で重ね合わせ、外部では分離するようになっている。
この方法によると、チタニウムサファイヤレーザー装置を発振させながら、266nmの光をBBO結晶に注入することにより、和周波の発生効率を高めることができるが、問題は、発生した193nm光に対してブルースター面の偏光がs偏光になるので、反射損が発生し、場合によっては損傷の原因になり易いことである。
【0030】
図4は、ブルースターカットしたBBO結晶について3波長の光線分離の状態を示す。屈折角の差は多少誇張されている。また、波長については、代表的な数値を記入したが、4次高調波の波長が短いときは、約700nmのレーザー光と記載されている部分は、800nm弱まで変化させることにより、所望の紫外光を効率良く得ることが可能である。
【0031】
以上、特に代表的なBBO結晶について実施例を挙げたが、本発明ではそれ以外にも、点群3mに属する非線形光学結晶なら、一般的にどの結晶も使用可能である。たとえばBBO結晶と並んで重要なものに、LiNbO3 (MgO:LiNbO3 を含む)結晶、LiTaO3 結晶などがあり、またこれら以外にもAg3 AsS3 結晶、Ag3 SbS3 結晶等々も使用できる。これら非線形光学結晶の育成方法としては、直接引上法が好ましいが、それに限定されない。入射するレーザーの種類も前記に限定されないし、結晶成長法の差による多少の位相整合角の差があっても、本発明の効果を奏することができる。また、図3の装置では発振器として一台のNd:YAGレーザー装置を用いているが、パルスの場合、立ち上がり時間の差等から2台用いた方が有利な場合がある。本発明では、Nd:YAGレーザー装置以外の発振器を用いてもよいし、また波長変換部によっては前記したごとくBBO結晶以外の点群3mに属する非線形光学結晶、例えばLiNbO3 (MgO:LiNbO3 を含む。)結晶、Ag3 AsS3 結晶、Ag3 SbS3 結晶、LiTaO3 結晶等も適用可能である。特に、BBO結晶、LiNbO3 結晶、LiTaO3 結晶が望ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明では、BBO結晶など特定の非線形光学結晶を用いて波長変換を行う際、前記(1)式及び(2)式を満足するように非線形光学結晶の位相整合時のθ及びφが設定されているので、言い換えれば、z軸から測定した位相整合角だけではなく、その極性を合わせることによって、複数の非線形光学定数における符号を合わせ、有効非線形光学定数を大にするので、波長変換効率を高めることができ、複数のBBO結晶等を利用しても波長変換効率のバラツキを小さくすることができる。その結果、波長変換素子及び波長変換装置の安定性を高め、価格を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の波長変換素子に用いられるBBO結晶の、5次高調波の発生状態を示す概略模式図である。
【図2】本発明の他の実施例の波長変換素子に用いられるBBO結晶の、結晶方向の選択例を示す概略模式図である。
【図3】本発明の他の実施例の波長変換装置を示す構成図である。
【図4】本発明の別の実施例に用いられるBBO結晶(ブルースターカットされている)の光線分離の概念図である。
【符号の説明】
1…Nd:YAGレーザー装置、2…出射光、3、6…波長変換部、
4、7…波長変換結晶、5、9…2次高調波、8…4次高調波、
10a、10b…ダイクロイックミラー、10c、10d…ミラー、
11…チタニウムサファイヤレーザー装置、12…チタニウムサファイヤ結晶、
13…波長選択手段、14a、14b、14c…共振器ミラー 、
15…BBO結晶(点群3mの非線形光学結晶)、16…紫外光(出力光)

Claims (12)

  1. 点群3mに属する非線形光学結晶を用い波長変換するに際して、タイプ1の位相整合角が45度以上であり、位相整合する入射光の波動ベクトルが+c軸(c軸の+極性の方向)となす角をθ、その波動ベクトルのab面への射影がa軸からなす角を+c方向から見て反時計回りにφとし、d22を非線形光学結晶の2次の非線形光学定数、d31をd22に対して一定の関係にある2次の非線形光学定数としたとき、下記の(1)式及び(2)式
    |sin(3φ)|=1 (1)
    22・d31・tanθ・sin(3φ)<0 (2)
    を満足するように位相整合時のθ及びφを設定
    第1レーザー光を発生する第1レーザー発振器と;この第1レーザー光を波長変換し てそれより波長の短い第2レーザー光を発生する波長変換部と;この第2レーザー光を 波長変換してそれより波長の短い第3レーザー光を発生する波長変換部と;この波長変 換部から出射されるレーザー光のうち波長変換されなかった前記第2レーザー光と前記 第3レーザー光とを分離する分離手段と;前記の波長変換されなかった第2レーザー光 を500nm以上、550nm以下の波長を有するレーザー光として入射させて、前記 第1レーザー光より短く且つ前記第2レーザー光より長い波長の第4レーザー光で発振 する第2レーザー発振器と;前記第3レーザー光と前記第4レーザー光とを前記第2レ ーザー発振器内で和周波混合して、前記第3レーザー光より波長の短い第5レーザー光 を発生する波長変換部と;を具備する波長変換装置において、前記第5レーザー光を発 生する波長変換に、前記(1)式及び(2)式を満足する前記非線形光学結晶を用いる
    波長変換方法
  2. 前記非線形光学結晶はβ−BaB24結晶である、請求項1に記載の波長変換方法。
  3. 前記非線形光学結晶への入射光またはそれからの出射光のなくとも1つが、ブルースター角をもって、入射及び/又は出射する、請求項1に記載の波長変換方法。
  4. 前記非線形光学結晶の表面と外気との間に、減反射膜、高反射膜、波長分離膜、偏光依存膜のいずれか1つ以上の膜を有する、請求項1に記載の波長変換方法。
  5. 1つ以上の入射光が、ネオジミウムイオンを含む固体レーザー媒質から発せられるレーザー光又はそれを波長変換したレーザー光である、請求項1に記載の波長変換方法。
  6. 1つ以上の入射光が、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:Glassのいずれかを含む固体レーザー媒質から発せられるレーザー光、又はそれを波長変換したレーザー光である、請求項1に記載の波長変換方法。
  7. 1つ以上の入射光が、クロムイオン又はチタンイオンを含む固体レーザー媒質から発せられるレーザー光、又はそれを波長変換したレーザー光である、請求項1に記載の波長変換方法。
  8. 1つ以上の入射光が、半導体レーザー光又はそれを増幅したレーザー光、又はそれらを波長変換したレーザー光である、請求項1に記載の波長変換方法。
  9. 発生する前記第5レーザー光の波長が215nm以下である、請求項1に記載の波長変換方法。
  10. 前記和周波混合により発生する前記第5レーザー光の波長が200nm以下である、請求項1に記載の波長変換方法。
  11. 前記非線形光学結晶の位相整合角が60度以上である、請求項1に記載の波長変換方法。
  12. 前記非線形光学結晶は、直接引上法又はフラックス法で育成されたものである、請求項1に記載の波長変換方法。
JP30085898A 1998-10-22 1998-10-22 波長変換方法 Expired - Lifetime JP4674385B2 (ja)

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