JP4671794B2 - 洗浄作用を有する不織布シート - Google Patents
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Description
しかしながら、このような界面活性剤含有スポンジでは、洗浄剤に界面活性剤が使用されているため、人に優しくなく、また、地球環境上からも、問題点がある。また、このようなスポンジでは、食器などの洗浄には問題がないものの、ガスレンジや排気ファン周りなどの粘度の高い油や焦げ付き汚れなどのしつこい汚れには対処できないという欠点がある。
ここで、(ロ)ウェブ層中には、さらに(d)フラッシュ法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプを、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末/(d)ポリオレフィン系合成パルプの重量比=1/0.2〜1/2となるように含有させてもよい。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、取り扱い性の向上や、強度補強の役割を果たすために、(ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化させることが好ましい。
上記(ニ)通気性シートとしては、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗が挙げられる。
また、あらかじめエアレイド法により(イ)ウェブ層を形成させ、この上に上記(ロ)ウェブ層を積層させることにより、仮に(c)アルカリ性無機塩類粉末が生成した(ロ)ウェブ層から脱落しても、この(イ)ウェブ層に捕集されて、系外に脱落することもない。また、得られる不織布シートは、柔軟性に富み、洗浄作用に優れる。
また、上層として、さらに(ハ)ウェブ層を積層させた本発明の不織布シートは、表裏ともに、(c)アルカリ性無機塩類の粉末の脱落がない。
さらに、基材シートとなる(イ)ウェブ層や、上層となる(ハ)ウェブ層の繊度を選定することにより、例えば、粗で硬めの汚れが多い場合は太い繊維、微細な、あるいはヌメリ状の汚れが多い場合は細い繊維、を適宜選択することにより、用途別の洗浄用不織布シートを得ることができる。
さらに、〔(ハ)ウェブ層〕/(ロ)ウェブ層/(イ)ウェブ層からなる不織布シートの片面または両面に、(ニ)通気性シートを積層一体化することにより、得られる洗浄作用を有する不織布シートの取り扱い性が向上し、さらに強度も補強される。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、熱風処理あるいは熱ロールによるカレンダー加工などの熱処理により、一体化されているので、層間剥離やアルカリ性無機塩類の粉末の脱落を抑えることができる。
さらに、本発明では、洗浄剤として、洗浄作用を有し、非界面活性剤であるアルカリ性無機塩類を用いているので、人に優しく、地球環境に影響を与えることもない。
本発明に用いられる(イ)ウェブ層は、繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付が10〜250g/m2のエアレイド法による不織布から構成される。なお、この基材シートは、あらかじめ熱処理により繊維間結合されていてもよいが、通常、本発明の洗浄作用を有する不織布シート製造工程の最終段階で、上記(イ)ウェブ層と(ロ)ウェブ層とともに熱処理されて繊維間結合される。
なお、基材シートである(イ)ウェブ層の製法がエアレイド法であるので、熱接着性繊維は、繊維長が2〜15mmであることが好ましく、さらに好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm未満の場合は、強度アップなどの効果が十分で無く、一方、15mmを超えると、繊維どうしが絡まり易くなり、工程性や地合いの悪化につながりやすい。
なお、基材シートとなる(イ)ウェブ層の通気度は、2秒以下であることが好ましい。エアレイド法は、通気性材料の上部から繊維と空気の混合体を噴出させ、下部からサクションで空気を引きつつ、通気性材料上に繊維層を形成する方法なので、基材となる基材シートの通気度は重要な要件となる。2秒を超えた通気性の悪い場合は、エアレイド繊維層が不均一になり易く、且つ生産性も悪化する。通気度は、好ましくは0.5〜2秒である。
次に、上記基材シートとなる(イ)ウェブ層の上にエアレイド法で、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプと洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を含む(ロ)ウェブ層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプと無機塩類粉末、ならびに熱接着性繊維との混合物を噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上にウェブ層を形成するものである。このとき、ネットコンベア上には、基材シートとなる(イ)ウェブ層をあらかじめ載置しておけば、一挙に積層体が得られる。その後、積層体に熱風処理、および/または熱圧カレンダー処理を加えてエアレイド層の繊維間結合、および基材との熱接着を形成して不織布シートとして一体化させる。
この際、(ロ)ウェブ層には、熱接着性繊維を併せて混合してあるので、粉末の固定・脱落防止、層間剥離強力の向上、などの効果が期待できる。
(a)熱接着性繊維の(ロ)ウェブ層中における混合率は、20〜95重量%、好ましくは20〜90重量%である。20重量%未満では、無機塩類粉末の捕捉、固定、脱落防止の効果が確保できなくなる。一方、95重量%を超えると、熱処理後のシートの柔軟性が失われてくるばかりか、無機塩類粉末の周囲を多くの熱接着性繊維で覆う状態となり、洗浄効果に悪影響を及ぼす。
(b)セルロース系パルプとしては、木材パルプ以外に、リンターパルプ、バガスなどの非木材系パルプなどを粉砕したものが挙げられる。
(b)セルロース系パルプの(ロ)ウェブ層中における混合率は、0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%である。50重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての引張り強力や層間剥離強力、特に湿潤時のこれらの強力が低下するので好ましくない。
これらの無機塩類は、好ましくは水溶性であり、さらに好ましくは水溶性炭酸塩であり、特に好ましくは、重炭酸ナトリウムである。特に、重曹には消臭、脱臭効果もあるので好適である。ここで、「水溶性」とは、常温における溶解度が、水100gあたり1g以上のものをいう。
水中における洗浄原理は、弱アルカリ性の無機塩類による有機物の中和、加水分解、などによる効果と考えられる。
(c)無機塩類の粉末の(ロ)ウェブ層中における混合率は、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。5重量%未満では、洗浄効果が乏しい。一方、80重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての強力を確保するのが困難となるばかりか、製造・保管・輸送時における粉末の脱落も多くなって実用性に欠ける。
また、(c)無機塩類の粉末とともに、研磨剤としての無機粒子、例えばアルミナ、シリカ、グラファイト、ゼオライト、二酸化チタン、カオリン、クレイ、炭化珪素、珪藻土、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、酸化アルミニウムなどを混合して使用することもできる。ただし、研磨剤は、対象物を傷つけたりする可能性があるので、混入量は単位面積あたりの量を少量にとどめる必要がある。
ここで、(d)ポリオレフィン系合成パルプは、例えば、高温、高圧状態にあるポリオレフィン、水の沸点よりも低い沸点を有する脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素から選ばれるポリマー用溶媒、および水よりなる分散液であって、減圧領域中に急速に放出したときに、実質的にすべての溶媒が蒸発し、かつ水の実質的蒸発を起こさない温度にある分散液を、ノズルを通して減圧領域中に放出して、ポリオレフィンを水中に分散した繊維状物質として回収し、この水中に分散した繊維状物質を、界面活性剤を混合した状態で叩解またはリファイニングすることによって得られる。このポリオレフィン系合成パルプの製造方法は、例えば、特公昭52−47049号公報の第1欄の特許請求の範囲、第3欄第5行〜第19欄第25行に詳述されているが、本発明の趣旨、すなわち吸湿性粉体の捕捉作用を有するフィブリル状繊維からなるポリオレフィン系合成パルプの製法であれば、必ずしもこれらにこだわるものでは無い。
ポリオレフィン系合成パルプは、平均繊維長が0.5〜3mm、平均繊維径が1〜100μmのものが好適に使用できる。
また、このポリオレフィン系合成パルプの市販品としては、三井化学(株)製のSWP E790,E400,EST−8,E620,UL410,NL490,AU690,Y600,ESS−5,ESS−2,E380,E780,E90,UL415などが挙げられる。
本発明のウェブ層を作製するエアレイド法は、カード法などの既存の乾式不織布製造法に較べて、空気流によって容易に単繊維に解繊され易い、長さの短い繊維が使用できるので、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好な不織布が得られるという特徴を有するばかりか、粉体を混合しつつ一挙にウェブを形成することが可能であり、本発明に好適である。洗浄用シートの用途において、粉末漏れが少なく、かつ洗浄効果が大きいという性能に、均一性は重要な要件であり、既存のカード法不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布では得られ難い。また、本製造法によれば、タテ/ヨコの強力比率がほぼ1/1に近いというメリットも有する。
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、上記(ロ)ウェブ層に存在する(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末の脱落を一層防止し、また表面耐磨耗性などの機能を強化するために、この(ロ)ウェブ層の上に、さらに、(ハ)繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10〜250g/m2のエアレイド法によるウェブ層を積層することが好ましい。
この上層シートとなる(ハ)ウェブ層としては、上記基材シートとなる(イ)ウェブ層と同様のものを挙げることができる。
(ハ)ウェブ層には、表面の親水性を上げて掃除作用をスムースにするために、木材パルプ、リンターパルプ、レーヨンなどの親水性繊維を混合しておいても良い。混合率は50重量%未満に留めるのが好ましい。50重量%以上であると、親水性繊維の脱落、湿潤強度のダウンなどが大となり、実用性に欠ける。
本発明の不織布シートは、本発明の意図を損なわない限り、他のシートと一体化してもよい。例えば、通気性シートと一体化するのであれば、本発明の不織布シートをエアレイド法で作るにあたり、通気性シートをネットコンベア上に置いておき、この上に繊維を堆積させていくことで、容易に複合シート化することができる。
また、一体化するシートとしては、一般に知られている乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド、メルトブロー、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、目の粗い織編み物、寒冷紗などが挙げられるが、熱接着性で、かつ耐水性のある材料で構成されているシートが好ましく、かつ通気性は大きい方が好ましい。
(ニ)通気性シートの目付けは、通常、10〜200g/m2、好ましくは10〜100g/m2である。
なお、(ニ)通気性シートが不織布の場合、この不織布を構成する繊維の繊度は、通常、1〜11dtex、好ましくは1.5〜6.6dtexである。
(ニ)通気性シートを本発明の不織布シートの片面または両面に積層することにより、取り扱い性が向上し、また、得られる不織布シートの強度を補強することができる。
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、以上のようにして得られる不織布積層体を熱処理することが好ましい。熱処理としては、熱風処理および/または熱圧処理が挙げられる。
このうち、繊維間結合を形成するための熱風処理としては、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易く、地合いの悪化を招いたり、はなはだしい場合は繊維の劣化を生じるので好ましくない。
熱風処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
繊維間結合を補強する場合の熱処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートの通気性シートを加えた総目付けは、通常、40〜1,800g/m2、好ましくは50〜1,500g/m2である。
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)系複合繊維11dtex×5mmを20g/m2となるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを17.5g/m2、木材パルプを17.5g/m2、重曹を100g/m2となるよう混合し、合計135g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを25g/m2、木材パルプを10g/m2となるよう混合し、合計35g/m2をエアレイド法で形成した。全体190g/m2のエアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ4mmの不織布を水に濡らして家庭用風呂の掃除に用いたところ、合成洗剤無しでも内部のヌメリ、汚れをきれいに掃除することができた。頑固な汚れには(イ)ウェブ層の太繊度の11dtexの面を用い、ヌメリなどの汚れには親水性繊維を含んでいる(ハ)ウェブ層の面を用い、風呂掃除用シートとして有用であった。なお、含有されている重曹の粉末は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP/PE系複合繊維20dtex×5mmを100g/m2となるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを75g/m2、木材パルプを75g/m2、合成パルプ(SWP)を40g/m2、重曹を150g/m2となるよう混合し、合計340g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらにこの上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系複合繊維11dtex×5mmを80g/m2となるようエアレイド法で形成した。全体520g/m2のエアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ6.3mmの不織布を水に濡らして調理レンジの掃除に用いたところ、汚れをきれいに掃除することができた。頑固な汚れには(イ)ウェブ層の太繊度の20dtexの面が特に有効であった。含有されている重曹の粉末は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落はほとんど無かった。
PP/PE系複合繊維3.3dtex×51mmをカード法にてウェブ化し、136℃の熱風サクション加熱炉で加熱一体化して、目付15g/m2のサーマルボンドタイプの乾式不織布を得た。この乾式不織布をネットコンベア上に載置し、この上に、(イ)ウェブ層(基材シート)としてPET/PE系複合繊維2.2dtex×5mmを10g/m2となるようエアレイド法で形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを30g/m2、木材パルプを5g/m2、重曹を30g/m2となるよう混合し、合計65g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらにこの上に、(ハ)ウェブ層としてPET/PE系複合繊維2.2dtex×5mmを10g/m2となるようエアレイド法で形成した。全体100g/m2の複合エアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ2.5mmの不織布を水に濡らして調理レンジの魚焼きグリル内部の掃除に用いたところ、油汚れ、焦げなどの掃除に有用であった。特に、サーマルボンドタイプの乾式不織布が複合されて強度に優れているので、グリルの網に引掛かってもちぎれにくく、作業に支障は無かった。また、調理に際しては、通常、グリルの受け皿に水を入れておくが、本発明の不織布シートをあらかじめ水に浮かべて置くことにより、調理後の掃除がさらに容易になることが分かった。これは、魚などからドリップした油、肉汁などの吸収効果、および水に溶け出した重曹の中和作用によるものと考えられる。
以上の結果を表1に示す。
木材パルプ;Weyerhaeuser社・NB416
合成パルプ;三井化学(株)・SWP-E790
Claims (5)
- (イ)繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付け10〜250g/m2のエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)繊度が1〜4.4dtexの熱接着性繊維を20〜95重量%と、(b)セルロース系パルプを0〜50重量%と、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を5〜80重量%〔ただし、(a)+(b)+(c)=100重量%〕を主体とし、目付けが20〜1,000g/m2のエアレイド法によるウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、目付が40〜1,500g/m2の、洗浄作用を有する不織布シート。
- さらに、(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)上記(イ)ウェブ層と同様のウェブ層を積層してなる請求項1記載の洗浄作用を有する不織布シート。
- (ロ)ウェブ層中に、さらに(d)フラッシュ法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプを、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末/(d)ポリオレフィン系合成パルプ(重量比)=1/0.2〜1/2となるように含有させた請求項1または2記載の洗浄作用を有する不織布シート。
- (ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化してなる、請求項1〜3いずれかに記載の洗浄作用を有する不織布シート。
- (ニ)通気性シートが、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗である請求項4記載の洗浄作用を有する不織布シート。
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