JP4671794B2 - 洗浄作用を有する不織布シート - Google Patents

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Description

本発明は、洗浄作用を有する不織布シートに関し、さらに詳細には、洗浄剤として非界面活性剤である無機塩類を用いているので、人や地球環境に対して安全で、実用上十分な洗浄作用を有する不織布シートに関する。
従来、リビング、キッチン周り、風呂・トイレなどの床やフロア、さらにはシンク・レンジ・グリル・トイレ機器・換気扇などを掃除するには、固形洗剤や液体洗剤を、水を含ませた掃除シート(ぞうきん、スポンジ、など)に付けて清掃することが多い。しかしながら、このような従来の掃除シートを用いる場合、1回ごとに洗剤を付けなければならないという欠点があり、長期にわたって安定して使用できる洗浄用シートが求められていた。
例えば、特許文献1(特開平11−217354号公報)には、発泡成形可能な基材に発泡剤を添加・混合し、発泡成形することによって得られたスポンジ状成形体であって、成形体中に界面活性剤を含有した界面活性剤含有スポンジ状成形体が提案されている。
しかしながら、このような界面活性剤含有スポンジでは、洗浄剤に界面活性剤が使用されているため、人に優しくなく、また、地球環境上からも、問題点がある。また、このようなスポンジでは、食器などの洗浄には問題がないものの、ガスレンジや排気ファン周りなどの粘度の高い油や焦げ付き汚れなどのしつこい汚れには対処できないという欠点がある。
特開平11−217354号公報
本発明は、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプに、洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を組み合わせ、エアレイド法を用いることにより、粉体脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な洗浄作用を有する不織布シートを提供することを目的とする。
本発明は、(イ)繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)繊度が1〜4.4dtexの熱接着性繊維を20〜95重量%と、(b)セルロース系パルプを0〜50重量%と、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を5〜80重量%〔ただし、(a)+(b)+(c)=100重量%〕を主体とし、目付けが20〜1,000g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、さらに、必要に応じて、(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)上記(イ)ウェブ層と同様のウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、目付が40〜1,500g/mの、洗浄作用を有する不織布シートに関する。
ここで、(ロ)ウェブ層中には、さらに(d)フラッシュ法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプを、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末/(d)ポリオレフィン系合成パルプの重量比=1/0.2〜1/2となるように含有させてもよい。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、取り扱い性の向上や、強度補強の役割を果たすために、(ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化させることが好ましい。
上記(ニ)通気性シートとしては、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗が挙げられる。
本発明では、(b)セルロース系パルプ、もしくはこれと(d)ポリオレフィン系合成パルプと(c)アルカリ性無機塩類粉末、ならびに(a)熱接着性繊維を主体とする(ロ)ウェブ層を形成させるに際し、エアレイド法を採用しているので、気流中で(b)セルロース系パルプ、またはこれと(d)ポリオレフィン系合成パルプと(c)アルカリ性無機塩類の粉末とが絡み合って、(b)セルロース系パルプ、もしくはこれと(d)オレフィン系合成パルプ中に(c)アルカリ性無機塩類の粉末が絡合する。この結果、形成される(ロ)ウェブ層からの(c)アルカリ性無機塩類の粉末の脱落が少なくなる。また、(ロ)ウェブ層中に(b)セルロース系パルプや、さらにこれに加えて(d)ポリオレフィン系合成パルプを併用することにより、水の保持性が向上し、洗浄作用が向上する。
また、あらかじめエアレイド法により(イ)ウェブ層を形成させ、この上に上記(ロ)ウェブ層を積層させることにより、仮に(c)アルカリ性無機塩類粉末が生成した(ロ)ウェブ層から脱落しても、この(イ)ウェブ層に捕集されて、系外に脱落することもない。また、得られる不織布シートは、柔軟性に富み、洗浄作用に優れる。
また、上層として、さらに(ハ)ウェブ層を積層させた本発明の不織布シートは、表裏ともに、(c)アルカリ性無機塩類の粉末の脱落がない。
さらに、基材シートとなる(イ)ウェブ層や、上層となる(ハ)ウェブ層の繊度を選定することにより、例えば、粗で硬めの汚れが多い場合は太い繊維、微細な、あるいはヌメリ状の汚れが多い場合は細い繊維、を適宜選択することにより、用途別の洗浄用不織布シートを得ることができる。
さらに、〔(ハ)ウェブ層〕/(ロ)ウェブ層/(イ)ウェブ層からなる不織布シートの片面または両面に、(ニ)通気性シートを積層一体化することにより、得られる洗浄作用を有する不織布シートの取り扱い性が向上し、さらに強度も補強される。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、熱風処理あるいは熱ロールによるカレンダー加工などの熱処理により、一体化されているので、層間剥離やアルカリ性無機塩類の粉末の脱落を抑えることができる。
さらに、本発明では、洗浄剤として、洗浄作用を有し、非界面活性剤であるアルカリ性無機塩類を用いているので、人に優しく、地球環境に影響を与えることもない。
(イ)ウェブ層(基材シート):
本発明に用いられる(イ)ウェブ層は、繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付が10〜250g/mのエアレイド法による不織布から構成される。なお、この基材シートは、あらかじめ熱処理により繊維間結合されていてもよいが、通常、本発明の洗浄作用を有する不織布シート製造工程の最終段階で、上記(イ)ウェブ層と(ロ)ウェブ層とともに熱処理されて繊維間結合される。
基材シートである(イ)ウェブ層に用いられる熱接着性繊維としては、熱接着性複合繊維が好適である。例えば、低融点成分を鞘成分とし、高融点成分を芯成分とする芯鞘型、一方が低融点、他方が高融点成分であるサイドバイサイド型などが挙げられる。これらの複合繊維の両方の成分の組み合わせとしては、PP〔ポリプロピレン〕/PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE、PP/低融点共重合PP、PET/低融点共重合ポリエステルなどが挙げられる。ここで、上記低融点共重合ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを基本骨格として、イソフタル酸、5−金属スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族多価アルコールなどとの変性共重合などが挙げられる。
低融点成分である熱接着成分の融点は、通常、110〜160℃、好ましくは120〜155℃である。110℃未満の場合、不織布としての耐熱性が低いので、台所周り、特にレンジ、グリルなどの比較的高温度である場合の掃除に際して実用性に欠ける。一方、160℃を超えると、不織布製造工程における熱処理温度を高くする必要が生じ、生産性が落ち、実用的でないばかりか、後述するエアレイド繊維層との熱圧一体化における接着効果も期待できなくなる。
熱接着性繊維の繊度は、1.5〜50dtex、好ましくは1.7〜40dtexである。1.5dtex未満の場合は、エアレイド法でウェブを形成するにあたり、細い繊維どうしが絡まり易くなり、他の繊維との混合も難しくなって、地合いの不均一性や塊状欠点発生のリスクが大になるばかりか、ウェブ層からの無機塩類の溶出に時間が掛かり過ぎて、実用性に欠ける。太い繊維の場合、洗浄・汚れ掻取り作用が増す一方、50dtexを超えた太い繊維の場合は、同一混合率でも繊維本数がダウンする結果となるので、上記無機塩類粉末の脱落防止、強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。
なお、基材シートである(イ)ウェブ層の製法がエアレイド法であるので、熱接着性繊維は、繊維長が2〜15mmであることが好ましく、さらに好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm未満の場合は、強度アップなどの効果が十分で無く、一方、15mmを超えると、繊維どうしが絡まり易くなり、工程性や地合いの悪化につながりやすい。
熱接着性繊維は、各種の添加物を含有していても良い。例えば、着色剤、抗菌剤、消臭剤、防黴剤、親水化剤、などが挙げられる。
熱接着性繊維は捲縮していても、していなくてもよく、またストランドチョップであってもよい。捲縮している場合、ジグザグ型の二次元捲縮繊維およびスパイラル型やオーム型などの三次元(立体)捲縮繊維の何れも使用できる。
また、これらの熱接着性繊維以外の繊維として、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、合成パルプ(例えば、三井化学(株)製SWPのような、PEやPPを素材とする多分岐フィブリル状繊維)、木材パルプ、麻、レーヨン、ビスコース繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は30重量%未満に留めるのが好ましい。30重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
基材シートとなる(イ)ウェブ層の目付は、10〜250g/m、好ましくは20〜150g/mである。10g/m未満の場合は、(ロ)ウェブ層に存在する無機塩類粉末が(イ)ウェブ層で捕捉されずに脱落したり、不織布強力も低くなるので実使用で破壊などのトラブルを引き起こし易い。一方、250g/mを超えると、エアレイド法の基材として必要な十分な通気性を確保できなくなる傾向が生じるばかりか、(ロ)ウェブ層からの無機塩類の溶出に時間が掛かり過ぎて、実用性に欠ける。
なお、基材シートとなる(イ)ウェブ層の通気度は、2秒以下であることが好ましい。エアレイド法は、通気性材料の上部から繊維と空気の混合体を噴出させ、下部からサクションで空気を引きつつ、通気性材料上に繊維層を形成する方法なので、基材となる基材シートの通気度は重要な要件となる。2秒を超えた通気性の悪い場合は、エアレイド繊維層が不均一になり易く、且つ生産性も悪化する。通気度は、好ましくは0.5〜2秒である。
なお、基材シートとなる(イ)ウェブ層は、(ロ)ウェブ層との積層に際し、同時に作成してもよいが、例えば、あらかじめエアレイド法で作製、熱処理された(イ)ウェブ層(基材シート)を用いることにより、エアレイド法による製造工程を簡略化することもできる。
(ロ)ウェブ層の形成と積層一体化:
次に、上記基材シートとなる(イ)ウェブ層の上にエアレイド法で、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプと洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を含む(ロ)ウェブ層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプと無機塩類粉末、ならびに熱接着性繊維との混合物を噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上にウェブ層を形成するものである。このとき、ネットコンベア上には、基材シートとなる(イ)ウェブ層をあらかじめ載置しておけば、一挙に積層体が得られる。その後、積層体に熱風処理、および/または熱圧カレンダー処理を加えてエアレイド層の繊維間結合、および基材との熱接着を形成して不織布シートとして一体化させる。
この際、(ロ)ウェブ層には、熱接着性繊維を併せて混合してあるので、粉末の固定・脱落防止、層間剥離強力の向上、などの効果が期待できる。
(a)熱接着性繊維としては、上記した熱接着性複合繊維が特に好適である。(a)熱接着性繊維の繊度は、1〜4.4dtex、好ましくは1〜3.3dtexである。1dtex未満では、エアレイド法でウェブを形成するにあたり、細い繊維どうしが絡まり易くなり、他の繊維との混合も難しくなって、地合いの不均一性や塊状欠点発生のリスクが大になる。一方、4.4dtexを超えると、同一混合率でも繊維本数がダウンする結果となるので、無機塩類粉末の捕捉、脱落防止、強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。なお、(a)熱接着性繊維の繊維長は、(イ)ウェブ層に用いられる熱接着性繊維の繊維長と同様である。
(a)熱接着性繊維の(ロ)ウェブ層中における混合率は、20〜95重量%、好ましくは20〜90重量%である。20重量%未満では、無機塩類粉末の捕捉、固定、脱落防止の効果が確保できなくなる。一方、95重量%を超えると、熱処理後のシートの柔軟性が失われてくるばかりか、無機塩類粉末の周囲を多くの熱接着性繊維で覆う状態となり、洗浄効果に悪影響を及ぼす。
また、(ロ)ウェブ層に用いられる(b)セルロース系パルプは、(c)アルカリ性無機塩類の粉末を把持するとともに、洗浄時に水を保持する役割を担う。
(b)セルロース系パルプとしては、木材パルプ以外に、リンターパルプ、バガスなどの非木材系パルプなどを粉砕したものが挙げられる。
(b)セルロース系パルプの(ロ)ウェブ層中における混合率は、0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%である。50重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての引張り強力や層間剥離強力、特に湿潤時のこれらの強力が低下するので好ましくない。
さらに、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類としては、炭酸アルカリ金属塩、重炭酸アルカリ金属塩、ほう酸アルカリ金属塩、りん酸アルカリ金属塩、珪酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩などが挙げられる。特に、無水炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム・10水塩(洗濯ソーダ)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、セスキ炭酸ソーダ、ケイ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、消石灰などが好ましい。
これらの無機塩類は、好ましくは水溶性であり、さらに好ましくは水溶性炭酸塩であり、特に好ましくは、重炭酸ナトリウムである。特に、重曹には消臭、脱臭効果もあるので好適である。ここで、「水溶性」とは、常温における溶解度が、水100gあたり1g以上のものをいう。
アルカリ性無機塩類は、各種家庭用、工業用洗剤のアルカリ性助剤として実用化されているばかりか、それ自体の洗浄力を活用して使う場合もある。例えば、重曹、つまり炭酸水素ナトリウム、あるいは重炭酸ソーダは、昔から洗浄剤として用いられており、その作用効果としては、(1)水中の、あるいは汚れに由来するカルシウムイオンやマグネシウムイオンを封鎖したり、沈殿させて洗浄液を軟化する、(2)洗浄液をアルカリ性とし、油脂や脂肪酸のような汚れの成分を鹸化、加水分解する、(3)緩衝作用により、洗浄に好適なPHを維持する、(4)汚れ液中で界面活性的作用を示す、(5)粉末状のものは掻取り・研磨の作用を示す、などにより汚れの除去に寄与すると言われている。さらに、悪臭物質の包接作用、酸性物質の中和作用によって消臭効果も有する。
水中における洗浄原理は、弱アルカリ性の無機塩類による有機物の中和、加水分解、などによる効果と考えられる。
これらの(b)無機塩類の粉末の平均粒径は、通常、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1mmである。
(c)無機塩類の粉末の(ロ)ウェブ層中における混合率は、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。5重量%未満では、洗浄効果が乏しい。一方、80重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての強力を確保するのが困難となるばかりか、製造・保管・輸送時における粉末の脱落も多くなって実用性に欠ける。
なお、(c)無機塩類粉末とともに、さらに酵素類を組合わせても良い。酵素類としては、蛋白質汚れに有効なプロテアーゼ、脂質汚れに有効なリパーゼ、澱粉汚れに有効なアミラーゼなどの分解酵素が挙げられる。ただし、アルカリ性無機塩類のアルカリ度に応じて、耐アルカリ性の酵素を特に選択することもできる。
また、(c)無機塩類の粉末とともに、研磨剤としての無機粒子、例えばアルミナ、シリカ、グラファイト、ゼオライト、二酸化チタン、カオリン、クレイ、炭化珪素、珪藻土、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、酸化アルミニウムなどを混合して使用することもできる。ただし、研磨剤は、対象物を傷つけたりする可能性があるので、混入量は単位面積あたりの量を少量にとどめる必要がある。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、台所の調理用グリルの受け皿に水と共に入れて置くことによって、調理後の内部掃除が容易になり、かつ臭い軽減効果もあることが分かっている。これは、魚などからドリップした油、肉汁などの吸収効果のみならず、水に溶け出したアルカリ性無機塩類の中和作用によるものと考えられる。
本発明の(ロ)ウェブ層にはパルプとして、上記の(b)セルロース系パルプとともに、(d)ポリオレフィン系合成パルプを併用してもよい。
ここで、(d)ポリオレフィン系合成パルプは、例えば、高温、高圧状態にあるポリオレフィン、水の沸点よりも低い沸点を有する脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素から選ばれるポリマー用溶媒、および水よりなる分散液であって、減圧領域中に急速に放出したときに、実質的にすべての溶媒が蒸発し、かつ水の実質的蒸発を起こさない温度にある分散液を、ノズルを通して減圧領域中に放出して、ポリオレフィンを水中に分散した繊維状物質として回収し、この水中に分散した繊維状物質を、界面活性剤を混合した状態で叩解またはリファイニングすることによって得られる。このポリオレフィン系合成パルプの製造方法は、例えば、特公昭52−47049号公報の第1欄の特許請求の範囲、第3欄第5行〜第19欄第25行に詳述されているが、本発明の趣旨、すなわち吸湿性粉体の捕捉作用を有するフィブリル状繊維からなるポリオレフィン系合成パルプの製法であれば、必ずしもこれらにこだわるものでは無い。
ポリオレフィン系合成パルプは、平均繊維長が0.5〜3mm、平均繊維径が1〜100μmのものが好適に使用できる。
また、このポリオレフィン系合成パルプの市販品としては、三井化学(株)製のSWP E790,E400,EST−8,E620,UL410,NL490,AU690,Y600,ESS−5,ESS−2,E380,E780,E90,UL415などが挙げられる。
これらの(d)ポリオレフィン系合成パルプは、多分岐繊維構造(フィブリル化して、多分岐、高比表面積を有する)なので、(c)無機塩類粉末の捕捉性に優れる特徴を有する。また、エアレイド法により上記基材シートに吹き付けると、気流中で(d)ポリオレフィン系合成パルプと(c)無機塩類粉末とが一体となったウェブ層が、該シート上に均一に載置されることになる。
(ロ)ウェブ層を形成する(d)ポリオレフィン系合成パルプと(c)アルカリ性無機塩類粉末との混合比(重量比)は、1/0.2〜1/2、好ましくは1/0.25〜1/1.8である。(d)ポリオレフィン系合成パルプが少なすぎると、無機塩類粉末の捕捉機能が充分でなくなり、粉末が脱落しやすくなる。一方、無機塩類粉末が少なすぎると、得られる不織布シートの洗浄効果が乏しく、本発明の意図するものでなくなる。
またこれらの構成成分以外に、熱接着性繊維以外の繊維として、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、麻、レーヨン、ビスコース繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は30重量%未満に留めるのが好ましい。30重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
なお、エアレイド法で形成する(ロ)ウェブ層は、通常、目付が20〜1,000g/m、好ましくは40〜750g/mである。20g/m未満の場合、洗浄効果が乏しく、また不織布強力、ヒートシール強力が低くなり、実用に適さない。一方、750g/mを超えると、厚過ぎて柔軟性が乏しくなり、またエアレイド法で均一なウェブを形成するのが困難となり好ましくない。
本発明のウェブ層を作製するエアレイド法は、カード法などの既存の乾式不織布製造法に較べて、空気流によって容易に単繊維に解繊され易い、長さの短い繊維が使用できるので、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好な不織布が得られるという特徴を有するばかりか、粉体を混合しつつ一挙にウェブを形成することが可能であり、本発明に好適である。洗浄用シートの用途において、粉末漏れが少なく、かつ洗浄効果が大きいという性能に、均一性は重要な要件であり、既存のカード法不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布では得られ難い。また、本製造法によれば、タテ/ヨコの強力比率がほぼ1/1に近いというメリットも有する。
(ハ)ウェブ層(上層シート)
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、上記(ロ)ウェブ層に存在する(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末の脱落を一層防止し、また表面耐磨耗性などの機能を強化するために、この(ロ)ウェブ層の上に、さらに、(ハ)繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層することが好ましい。
この上層シートとなる(ハ)ウェブ層としては、上記基材シートとなる(イ)ウェブ層と同様のものを挙げることができる。
(ハ)ウェブ層には、表面の親水性を上げて掃除作用をスムースにするために、木材パルプ、リンターパルプ、レーヨンなどの親水性繊維を混合しておいても良い。混合率は50重量%未満に留めるのが好ましい。50重量%以上であると、親水性繊維の脱落、湿潤強度のダウンなどが大となり、実用性に欠ける。
以上の(イ)/(ロ)、あるいは(ハ)/(ロ)/(イ)からなる本発明の不織布シートの総目付けは、40〜1,500g/m、好ましくは60〜1000g/mである。40g/m未満では、洗浄効果に乏しく、また強力が低くて実用に耐えにくい。一方、1,500g/mを超えるような高目付けの場合、洗浄効果が比例的に増大することも少なくなり、かつ生産コストはアップするので商品性に欠ける。
(ニ)通気性シート
本発明の不織布シートは、本発明の意図を損なわない限り、他のシートと一体化してもよい。例えば、通気性シートと一体化するのであれば、本発明の不織布シートをエアレイド法で作るにあたり、通気性シートをネットコンベア上に置いておき、この上に繊維を堆積させていくことで、容易に複合シート化することができる。
また、一体化するシートとしては、一般に知られている乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド、メルトブロー、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、目の粗い織編み物、寒冷紗などが挙げられるが、熱接着性で、かつ耐水性のある材料で構成されているシートが好ましく、かつ通気性は大きい方が好ましい。
(ニ)通気性シートの目付けは、通常、10〜200g/m、好ましくは10〜100g/mである。
なお、(ニ)通気性シートが不織布の場合、この不織布を構成する繊維の繊度は、通常、1〜11dtex、好ましくは1.5〜6.6dtexである。
(ニ)通気性シートを本発明の不織布シートの片面または両面に積層することにより、取り扱い性が向上し、また、得られる不織布シートの強度を補強することができる。
熱処理:
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、以上のようにして得られる不織布積層体を熱処理することが好ましい。熱処理としては、熱風処理および/または熱圧処理が挙げられる。
このうち、繊維間結合を形成するための熱風処理としては、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易く、地合いの悪化を招いたり、はなはだしい場合は繊維の劣化を生じるので好ましくない。
熱風処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
また、熱風処理したのち熱圧処理、具体的には熱圧カレンダー処理を加えても良い。カレンダー処理に用いるローラーとしては、全体に均一な熱圧を加えるため、平滑表面の一対の金属ローラー、または金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせを用いることが好ましいが、多段ローラーであっても良い。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、凸凹表面のエンボスローラーであっても良い。
カレンダー処理の場合、単に厚さ調整のためであれば常温(非加熱)〜高温度の任意の温度で加圧すれば良い。圧力は希望する厚さになるよう適宜選択することができる。熱圧カレンダーにより繊維間の熱結合を補強し、強度、表面耐摩耗性、層間剥離防止などを向上するためであれば、ローラー表面の温度は、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易いばかりか、ローラー表面への粘着が発生し、工程性に欠ける。融点未満の場合は、当然のことながら繊維間結合の補強が充分でなくなる。
繊維間結合を補強する場合の熱処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
また、カレンダー処理の線圧は、幅方向で均一な接圧になるよう設定すれば、任意の圧力を選択することができる。高圧の場合は密度・不織布強力・層間強力がアップし、厚さがダウンする。低圧の場合は勿論これに反する影響が出る。不織布強力を重視するのであれば極力高圧のほうが好ましい。柔軟性を重視するのであれば低圧の方が好ましい。カレンダー処理の線圧は、通常、10〜100kgf/cmの範囲で任意に選択できる。又、一対のローラー間に任意の隙間を設けても良い。
なお、得られる本発明の洗浄作用を有する不織布シートの厚さは、通常、0.3〜30mm、好ましくは0.5〜20mmであるが、ウェブ層の目付け(40〜1,500g/m)に応じ、且つ用途に応じて設定することができる。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートの通気性シートを加えた総目付けは、通常、40〜1,800g/m、好ましくは50〜1,500g/mである。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)系複合繊維11dtex×5mmを20g/mとなるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを17.5g/m、木材パルプを17.5g/m、重曹を100g/mとなるよう混合し、合計135g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを25g/m、木材パルプを10g/mとなるよう混合し、合計35g/mをエアレイド法で形成した。全体190g/mのエアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ4mmの不織布を水に濡らして家庭用風呂の掃除に用いたところ、合成洗剤無しでも内部のヌメリ、汚れをきれいに掃除することができた。頑固な汚れには(イ)ウェブ層の太繊度の11dtexの面を用い、ヌメリなどの汚れには親水性繊維を含んでいる(ハ)ウェブ層の面を用い、風呂掃除用シートとして有用であった。なお、含有されている重曹の粉末は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。
実施例2
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP/PE系複合繊維20dtex×5mmを100g/mとなるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを75g/m、木材パルプを75g/m、合成パルプ(SWP)を40g/m、重曹を150g/mとなるよう混合し、合計340g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらにこの上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系複合繊維11dtex×5mmを80g/mとなるようエアレイド法で形成した。全体520g/mのエアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ6.3mmの不織布を水に濡らして調理レンジの掃除に用いたところ、汚れをきれいに掃除することができた。頑固な汚れには(イ)ウェブ層の太繊度の20dtexの面が特に有効であった。含有されている重曹の粉末は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落はほとんど無かった。
実施例3
PP/PE系複合繊維3.3dtex×51mmをカード法にてウェブ化し、136℃の熱風サクション加熱炉で加熱一体化して、目付15g/mのサーマルボンドタイプの乾式不織布を得た。この乾式不織布をネットコンベア上に載置し、この上に、(イ)ウェブ層(基材シート)としてPET/PE系複合繊維2.2dtex×5mmを10g/mとなるようエアレイド法で形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを30g/m、木材パルプを5g/m、重曹を30g/mとなるよう混合し、合計65g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらにこの上に、(ハ)ウェブ層としてPET/PE系複合繊維2.2dtex×5mmを10g/mとなるようエアレイド法で形成した。全体100g/mの複合エアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ2.5mmの不織布を水に濡らして調理レンジの魚焼きグリル内部の掃除に用いたところ、油汚れ、焦げなどの掃除に有用であった。特に、サーマルボンドタイプの乾式不織布が複合されて強度に優れているので、グリルの網に引掛かってもちぎれにくく、作業に支障は無かった。また、調理に際しては、通常、グリルの受け皿に水を入れておくが、本発明の不織布シートをあらかじめ水に浮かべて置くことにより、調理後の掃除がさらに容易になることが分かった。これは、魚などからドリップした油、肉汁などの吸収効果、および水に溶け出した重曹の中和作用によるものと考えられる。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0004671794
<注>
木材パルプ;Weyerhaeuser社・NB416
合成パルプ;三井化学(株)・SWP-E790
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、セルロース系パルプ、もしくはこれとポリオレフィン系合成パルプに、洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を組合わせて、エアレイド法を用いることにより製造されているので、該無機塩類粉末の脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な洗浄作用を有する不織布シートである。しかも合成界面活性剤を含有していないので、ヒトや地球環境にやさしい洗浄シートであると言える。このため、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、リビング、キッチン周り、風呂・トイレなどの床やフロア、さらにはシンク・レンジ・グリル・トイレ機器類などの家庭用器具類の洗浄用のほか、産業用、工業用など広い分野における洗浄用シートとして有用である。

Claims (5)

  1. (イ)繊度が1.5〜50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)繊度が1〜4.4dtexの熱接着性繊維を20〜95重量%と、(b)セルロース系パルプを0〜50重量%と、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末を5〜80重量%〔ただし、(a)+(b)+(c)=100重量%〕を主体とし、目付けが20〜1,000g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、目付が40〜1,500g/mの、洗浄作用を有する不織布シート。
  2. さらに、(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)上記(イ)ウェブ層と同様のウェブ層を積層してなる請求項1記載の洗浄作用を有する不織布シート。
  3. (ロ)ウェブ層中に、さらに(d)フラッシュ法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプを、(c)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末/(d)ポリオレフィン系合成パルプ(重量比)=1/0.2〜1/2となるように含有させた請求項1または2記載の洗浄作用を有する不織布シート。
  4. (ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化してなる、請求項1〜3いずれかに記載の洗浄作用を有する不織布シート。
  5. (ニ)通気性シートが、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗である請求項4記載の洗浄作用を有する不織布シート。
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