以下、エッチングやめっきに用いられる処理液等の液体をスリット状の開口部から吐出する液体吐出装置に具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2に示すように、この液体吐出装置は、内部に液体の貯留部20が設けられた本体としての第1本体10及び第2本体40と、貯留部20内からスリット状の開口部41へ向かう液体の流れを変化させる変流部材としての弁体部50と、貯留部20の内壁としての下壁43と弁体部50とを相対移動させる駆動部70とを備えている。なお、液体吐出装置は、固定されて用いられるものであっても、移動させて用いられるものであってもよい。
上記本体は、第1本体10と第2本体40とが連結されて構成されている。これらの本体10,40の内部に液体の貯留部20を構成する空洞が設けられている。この貯留部20は、第1本体10に凹部を設けるとともに、その凹部を覆うように第2本体40を第1本体10に組み付けることにより構成されている。第1本体10と第2本体40との間にはシール部材21が設けられており、貯留部20内の処理液がこれらの間から漏れないようにシールされている。なお、貯留部20に貯留されてスリット状の開口部41から吐出される液体として、エッチングやめっきに用いられる処理液に限らず、半導体の製造工程に用いられるレジスト等の他の液体を採用することもできる。
図3を併せて参照して、貯留部20について説明する。図3に破線で示すように、貯留部20は略直方体状に形成されている。貯留部20の容積は、液体吐出装置が1回の処理で吐出する処理液を貯留することのできる大きさに設定されている。すなわち、貯留部20の容積は、1回の処理で吐出される処理液の体積と貯留部20内に収納される弁体部50等の部材の体積との合計に等しく、又はそれよりも若干大きく設定されている。そして、液体吐出装置において1回の処理に用いられる量の処理液が貯留部20に貯留され、貯留部20に貯留された全ての処理液が1回の処理で吐出される。具体的には、貯留部20の容積は数百mlに設定されている。
貯留部20は、第1本体10に設けられた供給ポート11及び通気ポート12を介して第1本体10の外部と連通している。供給ポート11には、液体としての処理液を貯留部20に供給する供給通路が接続される。通気ポート12には、貯留部20に気体としての空気を流入出させる通気通路が接続される。このため、供給ポート11を通じて貯留部20内に処理液が供給される際には、通気ポート12を通じて貯留部20から空気が流出する。また、スリット状の開口部41から貯留部20内の処理液が吐出される際には、通気ポート12を通じて貯留部20へ空気が流入する。したがって、貯留部20への処理液の供給と、貯留部20からの処理液の排出とを円滑に行うことができる。なお、通気通路を省略して通気ポート12を大気に開放した状態にしてもよい。
弁体部50を省略した図4を併せて参照して、第2本体40に設けられた接続通路42について説明する。接続通路42は、スリット状の断面を有しており、貯留部20とスリット状の開口部41とを接続している(図1参照)。接続通路42は、貯留部20の下部に接続されており、貯留部20の内壁としての下壁43に開口している。すなわち、接続通路42の上端部が、接続通路42の貯留部20への開口部44となっている。このため、貯留部20に貯留された処理液は、重力の作用により、貯留部20の下部に開口する接続通路42へと流入する。ここで、貯留部20の下壁43の表面は平坦に形成されており、この下壁43の表面が水平に配置されている。このため、貯留部20に貯留された処理液は、貯留部20内に留まることなく、略全て接続通路42へと流入する。
接続通路42は、第2本体40を貫通するように形成されており、スリット状の開口部41と同形状かつ同寸法の断面を有している。換言すれば、接続通路42の端部がスリット状の開口部41、すなわち液体の吐出口を構成している。接続通路42の流路断面およびスリット状の開口部41は、短辺の長さ(スリット幅)が一定に形成されている。具体的には、接続通路42の流路断面およびスリット状の開口部41の短辺の長さ(スリット幅)は数mmに設定されている。
スリット状の開口部41の開口面が水平に配置されており、開口部41は鉛直下方に開口している。そして、貯留部20及び開口部41にそれぞれ接続された接続通路42は、鉛直方向に延びるように配置されている。具体的には、接続通路42の内壁面は鉛直方向に延びるように設けられている。このため、貯留部20に貯留された処理液は、自重により生じる圧力によって接続通路42を下方へ流通し、スリット状の開口部41から吐出される。特に、接続通路42の流路断面の短辺の長さ(スリット幅)が、数mmというように比較的大きく設定されている。このため、液体としてレジスト等の相対的に粘度の高いものが用いられたとしても、液体の自重により生じる圧力によって、接続通路42を通じてスリット状の開口部41から液体を吐出させることができる。
図1及び図3に示すように、貯留部20内には、接続通路42の流路断面を覆うとともに、貯留部20の内壁(下壁43)とで隙間22を形成してその隙間22から処理液を接続通路42へ流入させる変流部材(弁体部50)が収納されている。弁体部50は、貯留部20内において接続通路42の流路断面、すなわち貯留部20に開口する接続通路42の開口部44を覆っている。このため、貯留部20内の処理液が接続通路42へ向かう流れは弁体部50によって遮られ、処理液が接続通路42へ直接的に流入することが抑制される。したがって、貯留部20に貯留された処理液は、貯留部20の内壁としての下壁43と弁体部50との隙間22から接続通路42へと流入する。隙間22は、開口部44を囲むように設けられるとともに、水平に配置されている。このため、貯留部20に貯留された処理液の自重により生じる圧力は、開口部44を囲むように設けられた隙間22において均一となる。
貯留部20の下壁43と弁体部50とは相対移動可能に設けられており、この相対移動に基づいて下壁43と弁体部50との間がシールされる。すなわち、貯留部20の下壁43と弁体部50との相対移動に基づいて隙間22の幅が調節されることにより、この隙間22から接続通路42に流入する処理液の流量が調節される。そして、この隙間22の幅が0にされた場合に、下壁43と弁体部50との間がシールされる。このとき、開口部44を囲むように設けられた隙間22の幅が0になるように、下壁43と弁体部50との間は環状にシールされる。なお、図1は、隙間22から接続通路42へ処理液が流入する状態、すなわち弁体部50が接続通路42を開いた状態を示している。
弁体部50は、駆動部70による駆動に基づいて、貯留部20の下壁43と弁体部50との間をシールした状態から、隙間22から接続通路42へ処理液が流入する状態まで制御される。具体的には、弁体部50は、連結部としての摺動部71及び支持部72を介して、可動部としてのピストンに連結されている。摺動部71は、第1本体10に設けられた貫通孔74に摺動可能に挿入されている。摺動部71及び弁体部50は、接続通路42の延長上、すなわち接続通路42の開口部44の上方に設けられている。このため、弁体部50は、接続通路42の開口部44に対して垂直に近接および離間される。ここで、摺動部71は互いに離間して2箇所に設けられているため、摺動部71を中心とした弁体部50の回転を抑制することができる。なお、摺動部71と貫通孔74との間はシール部材73によってシールされている。このため、貯留部20内の処理液が貫通孔74を通じて第1本体10の外部に流出することが抑制されている。
ピストンは、シリンダ76内に往復動可能に収納されており、操作ポート75を通じて給排されるエアによる操作圧に基づいて往復駆動される。具体的には、操作ポート75の一方にエアを供給することにより、ピストンは支持部72及び摺動部71を介して弁体部50を接続通路42の開口部44に近付ける方向へ移動させる。また、操作ポート75の他方にエアを供給することにより、ピストンは支持部72及び摺動部71を介して弁体部50を接続通路42の開口部44から離間させる方向へ移動させる。このため、接続通路42の開口部44に対する弁体部50の近接および離間を共にエアによる操作圧に基づいて比較的大きな力で且つ迅速に行うことができる。
弁体部50が接続通路42を開いた状態における貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22の幅を調節する調節ねじ78が設けられている(図1参照)。調節ねじ78は、弁体部50に連結された支持部72に当接することにより、弁体部50が接続通路42を開いた状態における弁体部50の位置、すなわち接続通路42を閉じた状態から開いた状態までの弁体部50の移動幅を調節する。具体的には、第1本体10に基台79が連結されており、基台79はシリンダ76,支持部72,摺動部71,弁体部50等を支持している。この基台79に調節ねじ78が進退可能に取り付けられている。そして、調節ねじ78のねじ込み量を調節することにより、支持部72の端面72aに当接する調節ねじ78の端部78aの位置、換言すれば調節ねじ78の端部78aから貯留部20の下壁43までの距離を調節することができる。
次に、図5〜7を参照して、貯留部20の下壁43の表面と接続通路42の内壁面とを滑らかに接続する貯留部20側へ凸の第1曲面部44aと、弁体部50に設けられて第1曲面部44aと同じ側に凸であり第1曲面部44aに対向する第2曲面部51aとについて説明する。なお、図5(a)は貯留部20の下壁43及び接続通路42の開口部44を示す斜視図であり、図5(b)は第1曲面部44aを拡大して示す斜視図である。図6(a)は貯留部20および弁体部50を示す斜視図であり、(b)は第2曲面部51aを拡大して示す斜視図である。図7は図1のA部分を拡大して示す断面図である。
図5(a),(b)に示すように、接続通路42の開口部44は、スリット状に形成されており、その両端部が半円形状とされている。このため、開口部44の周縁は、一対の直線部が両端で円弧により接続された形状となっている。そして、接続通路42の開口部44には、全周にわたって第1曲面部44aが設けられている。第1曲面部44aは、貯留部20の下壁43の表面と接続通路42の内壁面とを滑らかに接続する曲面部であり、貯留部20側に凸の曲面部として構成されている。すなわち、貯留部20の下壁43の表面と接続通路42の内壁面とは垂直に設けられており、第1曲面部44aはこれらの面を連続的に傾きが変化する曲面によって接続している。第1曲面部44aは、接続通路42の開口部44の両端においても連続的に形成されている。
図6(a),(b)に示すように、弁体部50には、接続通路42の方向へ突出する筋状の突部51が設けられており、この突部51の表面によって第2曲面部51aが構成されている。突部51は、弁体部50の延びる方向、すなわちスリット状に形成された接続通路42の開口部44の延びる方向に沿って延びている。弁体部50には、突部51を囲むようにシール部材56が設けられている。シール部材56はOリングにより構成されている。そして、弁体部50が接続通路42を閉じた状態において、突部51の一部は接続通路42内に収容される。このとき、シール部材56は、接続通路42の開口部44を囲んだ状態となり、貯留部20の下壁43と弁体部50との間を環状にシールする。
図7に図1のA部分を拡大して示すように、弁体部50が接続通路42の開口部44、すなわち第1曲面部44aから離間する方向へ駆動された状態において、シール部材56は下壁43から離間している。この状態において、第1曲面部44aと第2曲面部51aとは対向して設けられている。第2曲面部51aは、貯留部20側に凸の第1曲面部44aと同じ側に凸であり、第1曲面部44aに沿うように延びている。ここで、第2曲面部51aの曲率半径は、第1曲面部44aの曲率半径よりも大きく設定されている。例えば、第1曲面部44aの曲率半径が0.8mm、第2曲面部51aの曲率半径が1.9mmというように、第2曲面部51aの曲率半径が第1曲面部44aの曲率半径の略2倍に設定されている。
そして、第1曲面部44aおよび第2曲面部51aの最上流側の部分は互いに平行に、具体的には共に水平に配置されている。このため、第1曲面部44aと第2曲面部51aとの間隔は、処理液の流れの下流側ほど広くなっている。また、この状態において、弁体部50の突部51の端部、すなわち第2曲面部51aの下流側の端部は、貯留部20の内壁としての下壁43の表面よりも接続通路42側へ入り込んだ状態とされている。このため、貯留部20の下壁43の表面に沿って流れた処理液は、接続通路42へ流入する際に第2曲面部51aに当たることとなる。
さらに、処理液の流れ方向において、第2曲面部51aの長さは第1曲面部44aの長さよりも長く設定されている。より具体的には、処理液の流れ方向において、第2曲面部51aは、第1曲面部44aよりも下流側まで設けられている。このため、隙間22から接続通路42へ流入する処理液は、第2曲面部51aによって下流側までより広い範囲にわたって、接続通路42の内壁面42aの方向へ導かれる。
接続通路42への処理液の流入を止める場合には、弁体部50が接続通路42の開口部44、すなわち第1曲面部44aに近接するように駆動される。そして、貯留部20の下壁43にシール部材56が当接して、下壁43と弁体部50との間がシールされる。ここで、シール部材56は、第1曲面部44aから等距離の位置に環状に設けられている。このため、弁体部50は、貯留部20の下壁43と弁体部50との間を、第1曲面部44aから等距離の位置において環状にシールする。
なお、シール部材56は、開口側よりも奥側が広がっているいわゆる蟻溝に形成された溝部57に挿入されている。このため、弁体部50が駆動されて貯留部20の下壁43にシール部材56が繰り返し当接しても、溝部57からシール部材56が外れにくくなるとともに、下壁43と弁体部50との間のシール性を向上させることができる。さらに、駆動部70は、エアによる操作圧に基づいて比較的大きな力で且つ迅速に弁体部50を往復駆動する。このため、弁体部50が接続通路42を閉じた状態から、弁体部50を迅速に駆動して、接続通路42を開いて処理液を吐出した後に再び接続通路42を閉じることにより、シール部材56が下壁43に当接して変形した形状のまま維持され易くなる。したがって、下壁43に当接する際のシール部材56の変形に起因した処理液の圧力変動を抑制することができ、処理液中に気泡が発生することを抑制することができる。
こうした構成を備える液体吐出装置の作用について、図8を参照して説明する。なお、図8は、貯留部20から接続通路42へ処理液が流入する状態において、接続通路42を側方から見た拡大断面図である。
まず、液体吐出装置が処理液の吐出を行う前の状態においては、貯留部20に1回の処理で用いられる量の処理液が貯留されており、貯留部20の下壁43と弁体部50との間がシール部材56によってシールされている。ここで、隙間22は水平に配置されているため、シール部材56により環状にシールされる位置では、処理液の自重により生じる圧力は均一となる。さらに、処理液は、第1曲面部44aから等距離の位置において、シール部材56によってシールされている。この状態から、弁体部50が接続通路42の開口部44、すなわち第1曲面部44aから離間する方向へ駆動される。そして、弁体部50に連結された上記支持部72の端面72aが上記調節ねじ78の端部78aに当接すると、弁体部50が停止した状態となり、図8に示すように、貯留部20の下壁43と弁体部50との間に隙間22が形成された状態となる。
このとき、隙間22以外から接続通路42へ向かう処理液の流れは弁体部50によって遮られるため、処理液は隙間22を通過して接続通路42の方向へ流れる。そして、この処理液は、重力の作用によって、すなわち処理液の自重により生じる圧力によって、開口部44の全周にわたって設けられた第1曲面部44aに沿って接続通路42へ流入する。さらに、隙間22を流れる処理液は、弁体部50に設けられた第2曲面部51aに当たって、第2曲面部51aに沿う方向へと導かれる。このため、処理液は、第1曲面部44aと第2曲面部51aとの隙間を、これらの第1曲面部44a及び第2曲面部51aに沿うように流れる。したがって、処理液の流れは接続通路42の内壁面42aの方向へ導かれる。
また、第2曲面部51aの曲率半径は、第1曲面部44aの曲率半径よりも大きく設定されているため、第1曲面部44aと第2曲面部51aとの間隔は処理液の下流側ほど大きくなる。このため、処理液は下流側ほど接続通路42の中心方向に広がることとなり、接続通路42の開口部44において平行に設けられた両側の第1曲面部44aから接続通路42に流入する処理液が合流する。したがって、処理液は接続通路42の流路断面の全体を流れることとなり、接続通路42内の気体としての空気は処理液によって上記スリット状の開口部41の方向へ押し出される。これにより、処理液の吐出前に接続通路42内に存在する空気が処理液内に混入することが抑制される。
そして、貯留部20に貯留された処理液が全て吐出されると、弁体部50が接続通路42の開口部44、すなわち第1曲面部44aへ近接する方向へ駆動される。そして、弁体部50に設けられたシール部材56が貯留部20の下壁43に当接すると、弁体部50が停止した状態となり、貯留部20の下壁43と弁体部50との間がシールされた状態となる。その後、貯留部20に処理液が供給されて上記の工程が繰り返される。
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
貯留部20に貯留された処理液が接続通路42を通じてスリット状の開口部41から吐出される。ここで、貯留部20内において接続通路42の流路断面を覆う弁体部50によって、貯留部20内の処理液が接続通路42へ向かう流れが遮られ、処理液は貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22から接続通路42へ流入する。この接続通路42へ流入する処理液は、貯留部20の下壁43の表面と接続通路42の内壁面42aとを滑らかに接続する貯留部20側に凸の第1曲面部44aと、弁体部50に設けられて第1曲面部44aと同じ側に凸であり同第1曲面部44aに対向する第2曲面部51aとの隙間を、これらの第1曲面部44a及び第2曲面部51aに沿うように流れる。このため、処理液の流れは接続通路42の内壁面42aの方向へ導かれることとなり、処理液の流れが接続通路42の内壁面42aから離間することが抑制される。したがって、貯留部20から接続通路42へ処理液が流入する際に、処理液の流れと接続通路42の内壁面42aとに挟まれた空気が処理液中に巻き込まれることを抑制することができる。その結果、処理液を予め吐出して気泡を抜く処理を行わない場合であっても、スリット状の開口部41から吐出される処理液中に気泡が混入することを抑制することができる。
第2曲面部51aの曲率半径は、第1曲面部44aの曲率半径よりも大きく設定されているため、第2曲面部51aは処理液の下流側ほど第1曲面部44aから離間することとなる。したがって、第2曲面部51aに沿って流れる処理液は、接続通路42の内壁面42aの方向へ導かれつつ、下流側は次第に接続通路42の内壁面42aから離間する方向、すなわち接続通路42の中心の方向へ広がるようになる。その結果、接続通路42の流路断面内において処理液の流量に偏りが生じることを抑制することができ、スリット状の開口部41から処理液をより均一に吐出することができる。
処理液の流れ方向において、第2曲面部51aの長さは、第1曲面部44aの長さよりも長く設定されているため、より広い範囲にわたって、第2曲面部51aにより処理液の流れを接続通路42の内壁面42aの方向へ導くことができる。
処理液の流れ方向において、第2曲面部51aは、第1曲面部44aよりも下流側まで設けられているため、第1曲面部44aに沿って流れた処理液を第2曲面部51aによって更に下流まで、接続通路42の内壁面42aの方向へ導くことができる。
貯留部20の下壁43と弁体部50とが相対移動可能であり、この相対移動に基づいて同貯留部20の下壁43と同弁体部50との隙間22をシール可能であるため、処理液を接続通路42に流入させる圧力が生じている場合であっても、処理液の吐出を止めておくことができる。
貯留部20に貯留された処理液を加圧して吐出する場合には、処理液の圧力に分布が生じることにより、スリット状の開口部41から処理液が偏って吐出されるおそれがある。
この点、貯留部20の下部に接続通路42が接続されるとともに、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22が水平に配置されているため、貯留部20に貯留された処理液の自重により生じる圧力は、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22において均一となる。したがって、処理液の自重により生じる圧力によってスリット状の開口部41から同処理液が吐出されるに際して、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22から接続通路42へ処理液を均一の圧力で送ることができる。その結果、スリット状の開口部41から処理液をより均一に吐出することができる。
特に、貯留部20に貯留された処理液をスリット状の開口部41から全て吐出するため、処理液の吐出終了まで、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22から接続通路42へ処理液を均一の圧力で送ることができるとともに、処理液の吐出を途中で止めることによる処理液の圧力変動に起因した気泡の発生を避けることができる。
上述したように、貯留部20に貯留された処理液の自重により生じる圧力は、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22において均一となり、この隙間22から接続通路42へ処理液を均一の圧力で送ることができる。ここで、第1曲面部44aはスリット状の断面を有する接続通路42の内壁面42aに沿って環状に設けられており、この第1曲面部44aから等距離の位置において貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間が環状にシールされる。このため、貯留部20の下壁43と弁体部50との相対移動により、この隙間がシールされた状態から処理液の吐出を開始する場合には、環状の隙間22から第1曲面部44aへと均等に処理液が送られることとなる。したがって、接続通路42の内壁面42aに沿って処理液が均等に流入するため、スリット状の開口部41から処理液をより均一に吐出することができる。
上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
上記実施形態では、接続通路42が開口する下壁43の表面を平坦に形成して水平に配置したが、図9(a),(b)に示すように、貯留部20の下壁143の表面が接続通路42に近付くほど低くなるように傾斜していてもよい。この場合には、処理液の自重により生じる圧力によってスリット状の開口部41から同処理液を吐出する構成において、貯留部20に貯留された処理液が重力により接続通路42へ集まるようになる。その結果、貯留部20に貯留された処理液を残すことなく吐出することが可能となる。なお、貯留部20の下壁143の表面を傾斜させたことに対応して、下壁143の表面に対向する弁体部50の表面を傾斜させることが望ましい。
上記実施形態では、シール部材56は、第1曲面部44aから等距離の位置に環状に設けられており、弁体部50は、貯留部20の下壁43と弁体部50との間を、第1曲面部44aから等距離の位置において環状にシールするようにした。しかしながら、弁体部50は、貯留部20の下壁43と弁体部50との間を、第1曲面部44aから必ずしも等距離の位置においてシールしなくてもよい。
上記実施形態では、液体吐出装置において1回の処理に用いられる量の処理液が貯留部20に貯留され、1回の処理において貯留部20に貯留された全ての処理液が吐出されるようにした。これに対して、貯留部20の容積を拡大して1回の処理に用いられる量よりも多い処理液を貯留部20に貯留するとともに、1回の処理においては貯留部20に貯留された処理液の一部が吐出されるようにしてもよい。この場合には、貯留部20に処理液が残った状態で処理液を補充することができるため、処理液の吐出後に貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間等に空気が入り込むことを抑制することができる。このため、スリット状の開口部41から吐出される処理液中に気泡が混入することを抑制することができる。
上記実施形態では、処理液の自重により生じる圧力によってスリット状の開口部41から同処理液が吐出されるようにしたが、それに加えて処理液をエア等で加圧することもできる。
上記実施形態では、貯留部20の下壁43と弁体部50との隙間22が水平に配置されるようにしたが、この隙間22が若干傾斜していてもよい。また、上記実施形態では、接続通路42が鉛直方向に延びるように配置したが、接続通路42が鉛直方向から若干傾斜して延びるように配置してもよい。
上記実施形態では、弁体部50が駆動部70によって駆動されるようにしたが、貯留部20の下壁43が駆動されることによって、貯留部20の下壁43と弁体部50とが相対移動する構成を採用することもできる。また、貯留部20の内壁としての下壁43と変流部材としての弁体部50との隙間をシールする構成に限らず、貯留部20に処理液を供給する供給通路等に設けられた遮断弁等によって処理液の吐出を止める構成を採用することもできる。この場合であっても、第1曲面部44a及び第2曲面部51aに沿うように処理液が流れることにより、処理液の流れが接続通路42の内壁面42aから離間することを抑制することができるといった作用効果は奏することができる。
上記実施形態では、処理液の流れ方向において、第2曲面部51aの長さは、第1曲面部44aの長さよりも長く設定されるとともに、第2曲面部51aは、第1曲面部44aよりも下流側まで設けられるようにしたが、これらの一方の構成のみを採用することもできる。また、その場合において、第2曲面部51aの曲率半径は、第1曲面部44aの曲率半径よりも大きく設定されているといった構成を採用しないようにすることもできる。すなわち、これらの構成の少なくとも1つを採用して任意に組み合わせることができる。
上記実施形態では、スリット状の開口部41と接続通路42の断面とを同形状かつ同寸法にしたが、スリット状の開口部41に近付くほど接続通路42の流路断面積が徐々に小さくなる構成や、非平行に設けられた接続通路42の開口部44とスリット状の開口部41とを緩やかに曲がる接続通路42が接続する構成等、スリット状の断面を有するその他の接続通路を備える構成を採用することもできる。
上記実施形態では、スリット状の開口部41の短辺の長さ(スリット幅)が一定の構成を採用したが、短辺の長さ(スリット幅)が部分的に異なる構成を採用することもできる。また、スリット状の開口部41の短辺の長さ(スリット幅)を数mmに設定したが、短辺の長さ(スリット幅)は任意に変更することができる。具体的には、スリット状の開口部41の短辺の長さ(スリット幅)を数百μmに設定することもできる。
上記実施形態では、接続通路42の開口部44の全周にわたって第1曲面部44aを設けるとともに、この第1曲面部44aに対向するように、すなわち弁体部50に設けられた突部51の全周にわたって、第2曲面部51aを設けるようにしたが、これらの第1曲面部44a及び第2曲面部51aの一部を省略することもできる。その場合であっても、第1曲面部44a及び第2曲面部51aが設けられた部分においては、処理液の流れが接続通路42の内壁面42aの方向へ導かれることとなり、処理液の流れと接続通路42の内壁面42aとに挟まれた気体が処理液中に巻き込まれることを抑制することができる。