JP4667495B2 - ローラ加工方法、およびローラ加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ローラ加工方法、およびローラ加工装置に関する。より詳しくは、例えば表面に所定形状の突起を形成するように電池用集電体の素材である金属箔の表面に所定形状の突起を形成するためのローラを加工する方法および装置に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の普及に伴い、その電源としての電池の需要が増大している。上記のような用途に用いられる電池には高いエネルギ密度と優れたサイクル特性が要求される。
このような要求に対応するために、正極および負極のそれぞれに関して、高容量の活物質を得るための技術が新たに開発されている。例えば、負極の活物質については高い容量が得られるケイ素またはスズを含む合金や酸化物を用いることにより上記要求に対応しようとしている。ここで問題となるのは、負極における極板の変形である。つまり、充放電時にはリチウムイオンが挿入および脱離を繰り返すことで、活物質が大きく膨張および収縮を繰り返す。このため、極板が大きく歪み、極板にうねりが生じる。その結果、極板とセパレータとの間に空間が生じ、充放電反応が不均一化し、充放電サイクル特性が低下する。
このような問題に関して、例えば特許文献1には、集電体の変形を抑えるための技術が提案されている。ここでは、集電体の表面に凹凸を形成するとともに、活物質からなる薄膜を、集電体の表面の各突起の上に活物質を堆積するようにして形成する。このとき、各突起の上に堆積された活物質の塊同士の間に、集電体の表面に向かうにつれて幅が広くなる空隙を形成するものとしている。
発明者等は、上述の提案を踏まえて鋭意検討を重ね、その結果、集電体の表面に理想的には、頂点が菱形の微細な多数の突起を等間隔に配置すれば、上記特許文献1に示されるような活物質からなる薄膜を形成できるとの結論に達した。集電体の表面にそのような突起を形成するためには、上記突起と対応する形状の凹部をローラ等の加圧具の表面に等間隔に形成し、これにより集電体を加圧する方法が考えられる。そして、このような凹部をローラの表面に形成するには、レーザ加工によるのが加工速度などの点で好ましい。
以上の点に関連した従来技術として、特許文献2記載の平板印刷版用支持体の製造方法がある。ここでは、図10Aおよび図10Bに示すように、アルミニウム板を用いる平板印刷版用支持体をプレスする転写ローラの表面にレーザを照射して、凹部61を形成している。そして、このときに発生する溶解成分の盛り上がりを利用して、凸部62を形成している。
また、下記特許文献3には、充放電に伴う集電体の皺の発生を防止して、体積変化を低減させるための技術が提案されている。具体的には、リチウムと合金化しない金属から形成された集電体と、集電体の表面に形成され、リチウムと合金化する元素を含む薄膜とを備えた薄膜電極において、上記集電体に凹凸を備えさせるとともに、集電体の実効厚みを、15μm〜300μmとしている。
また、特許文献4には、図11に示すように、セラミック或いは金属炭化物からなる液体転写用シリンダ状物品の表面に複数の離間したレーザ彫刻セル63を形成する場合に、2つ以上のあい続く離間したパルス群を用いて1つのセルを形成する方法が示されている。
また、特許文献5には、セラミック材料からなる液体転写アーティクルの表面に、2つに分離したレーザービームのそれぞれを順次照射するようにして、セルを形成する方法が示されている。
また、特許文献6には、ローラ表面にパルスレーザを照射してローラ表面の照射スポットを溶融又は蒸散させることにより、そのローラの表面に凸凹パターンを形成する方法が示されている。ここでは、照射スポットをポリゴンミラーで走査させて凸凹パターンを形成している。
また、特許文献7には、表面が感光性樹脂硬化物で覆われている円筒状の樹脂製印刷基材の表面に、平均出力が0.01〜5W、1パルスあたりのエネルギ量が10〜50J、ビーム径が0.4〜15μmのレーザを照射することにより、幅が0.4〜20μm、深さが1〜100μmの微細な凹パターンを形成する方法が示されている。
特開2002−313319号公報 特許第3010403号公報(特開平6−171261号公報) 特開2005−38797号公報 特許第2727264号公報(特開平4−231186号公報) 特開2001−191185号公報 特開2004−351443号公報 特開2006−248191号公報
ここで、上記ローラは、金属部材を加圧して表面に突起を形成するものであるために、材質は、極めて硬い金属とする必要がある。ところが、このような材質のローラの表面に、レーザ加工により凹部を形成する場合には、レーザ光の照射による熱膨張等を原因として、形成される凹部の平面視形状が底に向かうほどに所望形状(例えば、菱形)から遠ざかるといった問題がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、レーザ光の照射による熱の影響を可能な限り排除して、所望形状の微細な凹部をローラ表面に形成することができるローラ加工方法、およびローラ加工装置を提供することを第1の目的としている。
また、上記課題を解決するためには、レーザ加工により凹部を形成するときの温度上昇を抑える必要がある。このためには、所望の深さの凹部を得るのに必要とされるレーザ光の照射を、複数回に分けて、所定の間隔をおいて実行することが有効である。本発明はその技術思想を実用化するための方法および装置に向けられている。
ところが、例えば電池用集電体の素材である金属箔に上述したような突起を形成するために、その加工具であるローラの表面に凹部を形成する場合には、μmオーダーの凹部をそのオーダーのピッチで配置する必要がある。そして、そのような加工を比較的短時間のうちに完了するためには、ローラを回転させながら、その表面にレーザ光を上記ピッチに対応するタイミングで断続的に照射するようにして、ローラの表面の同一箇所に、ローラが一回転する毎にレーザ光を照射することを複数回繰り返す必要がある。
ところが、ローラを回転させながら、その表面の同一箇所にμmオーダーの精度でレーザ光を照射する場合には以下に説明するような技術的な困難性が存在する。
すなわち、ローラの回転位置を検出するためには通常ロータリエンコーダが用いられる。ローラの表面に所定ピッチで凹部を形成するためには、ロータリエンコーダの出力信号を計数し、計数された信号数が上記ピッチに相当する信号数に達する毎にレーザ光をローラ表面に照射する手順が繰り返される。
ところが、上記ピッチに相当する信号数が、ローラが一回転する間にロータリエンコーダから出力される信号数を割り切れる数ではない場合には、ローラを一回転させたときにローラの表面の同一箇所にレーザ光を照射することはできなくなる。以下にその理由を説明する。
図12に示すように、ローラ50表面の周方向に所定ピッチLPでn個の凹部H(1)〜H(n)を形成する場合を考える。この場合に、ローラ50の一回転に相当するロータリエンコーダの出力信号数が、ピッチLPに相当する信号数により割り切れなければ、割り切れない余りの数に対応する信号数の分だけ、ローラが1回転する毎にレーザ光の照射位置にずれ(E1)が生じる。したがって、前回のレーザ光の照射により形成された窪み(凹部H(1))に重ねてレーザ光53を照射しようとしても、長さE1ずれた位置に窪み(凹部H(n+1))が形成されてしまう。これを複数回繰り返すと、繰り返す毎にレーザ光の照射位置がずれていく。したがって、上記ずれ(E1)がある程度以上大きい場合には、ローラを回転させながら、その表面の同一箇所にレーザ光を複数回に分けて照射して、所望形状の凹部を形成することはできなくなる。
つまり、上述の方法では、ローラ50の表面に凹部を形成することができるピッチLPは、ロータリエンコーダの一回転の出力信号数により制限されることになる。したがって、様々なピッチでローラの表面に凹部を形成する場合には、一回転の出力信号数が異なる複数のロータリエンコーダを用意し、所望ピッチに応じてロータリエンコーダの取り換え作業を行って、ローラのレーザ加工を行う必要がある。しかしながら、精密な加工を要する装置において、特にエンコーダ等の測定機器の取り換えには調整のために多大の時間を要し、現実的には、上述したような対応は不可能であるといえる。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、回転されるローラの表面の同一箇所に、ローラが一回転する毎にレーザ光を照射することを複数回繰り返して、凹部を所定ピッチで形成する場合に、凹部が形成されるピッチをきめ細かく調節することが可能なローラ加工方法、およびローラ加工装置を提供することを第2の目的としている。
上記目的を達成するための本発明は、鍛鋼からなるローラの表面に有底の複数の凹部を形成するためのローラ加工方法であって、
前記ローラを回転させる工程a、
前記回転されるローラの位置を検出する工程b、
前記ローラの回転位置の検出信号に基づいて、前記ローラが所定角度回転する毎にパルス信号を発生する工程c、
前記発生されたパルス信号に基づいて前記ローラの表面にレーザ光を照射する工程d、
前記ローラの径、および前記ローラの表面に前記凹部を形成しようとするピッチの範囲に応じて、前記パルス信号を発生する周期の設定候補を、あらかじめ複数個選定し、記憶手段に記憶させる工程e、並びに
前記選定された複数個の設定候補の中から1つの設定候補を、前記ローラの表面に前記凹部を形成する実際のピッチに基づいて選択する工程f、を含み、
前記凹部の開口部の形状が、長い方の対角線に対する短い方の対角線の比が0.8以下、前記長い方の対角線が6〜40μm、且つ前記短い方の対角線が3〜20μmの略菱形であり、かつ
前記レーザ光の1回あたりの照射時間が、10ps〜200nsであり、
前記ローラの周方向に並ぶ一列分の複数個の前記凹部を形成するように、前記回転されるローラの表面に前記実際のピッチでレーザ光を照射し、前記ローラが一回転する間にレーザ光の照射箇所を自然冷却または強制冷却により冷却しながら、前記ローラの表面の同一箇所に前記レーザ光を照射することを複数回繰り返すローラ加工方法である。
本発明の好ましい形態においては、前記レーザ光を前記ローラの表面に照射してから次に前記レーザ光を同一箇所に照射するまでの間に、当該箇所に冷却用の媒体を吹き付ける。
本発明の別の好ましい形態においては、前記工程bにおいて、アブソリュート式ロータリエンコーダを使用して、前記回転されるローラの位置を検出する。
本発明の別の好ましい形態においては、前記アブソリュート式ロータリエンコーダは、少なくとも17ビットの分解能を有する。
本発明の別の好ましい形態においては、前記工程cにおいて、前記パルス信号として、位相が互いに異なる2相のパルス信号を発生する。
本発明の別の好ましい形態においては、前記工程fは前記複数個の設定候補のそれぞれについて、前記パルス信号を4逓倍してその個数をカウントしたときの前記ローラの一周分のカウント値と、前記ローラの周方向に並ぶ一列分の前記凹部の個数とを比較して、前記カウント値と前記凹部の個数とが最も近くなる設定候補を選択することを含む。
発明の別の好ましい形態においては、前記凹部を、5〜50μmの深さに形成する
発明の別の好ましい形態は、前記凹部の形状と相似する形状に前記レーザ光の輪郭を整形する工程g、並びに
前記輪郭が整形されたレーザ光を前記ローラの表面に縮小結像させる工程hを含む。
本発明の他の好ましい形態においては、前記レーザ光の波長が266nm〜600nmである。
本発明によれば、金属材料からなる部材を加圧してその部材の表面に微細な突起を形成するための加工具である、極めて硬い金属材料からなるローラの表面に、上記突起と対応する所望形状の微細な凹部を形成することが可能となる。
また、本発明によれば、回転されるローラの表面の同一箇所に、ローラが一回転する毎にレーザ光を照射することを複数回繰り返して所望形状の凹部を形成する場合に、凹部が形成されるピッチをきめ細かく調節することができる。
本発明は、金属材料からなるローラの表面に複数の凹部を形成するためのローラ加工方法に関する。本方法は、ローラを周方向に回転させる工程a、ローラの回転位置を検出する工程b、並びにローラが一回転する毎にレーザ光をローラの表面の同一箇所に照射することを複数回繰り返して、ローラの表面に凹部を形成する工程cを含む。
また、本発明は、金属材料からなるローラの表面に複数の凹部を形成するためのローラ加工装置に関する。本装置は、レーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ発振器により出力されたレーザ光をローラの表面の所定位置に照射させるようにレーザ光を集光する機能を有する加工ヘッドと、ローラを回転させるローラ回転手段と、回転されるローラの位置に応じた信号を出力する回転位置検出手段と、ローラが一回転する毎に、回転されるローラの表面の同一箇所にレーザ光を照射することを複数回繰り返して、凹部を形成するように、回転位置検出手段の出力信号に基づいて、レーザ発振器を制御する制御手段と、を具備している。
上記構成を有する本発明は、レーザ光の連続した一回の照射により凹部を形成するのではなく、ローラが一回転する毎に同一箇所にレーザ光を照射することを複数回繰り返して凹部が形成される。このため、レーザ光の一回の照射エネルギが小さくなるとともに、レーザ光がローラの表面に照射されてから次に同一箇所にレーザ光が照射されるまでの間に当該箇所が冷却される。したがって、レーザ光の熱の影響を緩和して、形状が所望形状である微細な凹部をローラ表面に形成することが可能となる。
この結果、上記ローラが、例えば集電体などの金属材料からなる部材の表面を加圧して、その部材の表面に多数の突起を形成するためのローラであり、その材質が、超硬合金、粉末ハイス鋼、又は鍛鋼のような極めて硬い金属である場合にも、そのようなローラの表面に上記突起と対応する所望形状の凹部を形成することが可能となる。例えば、深さが5〜50μmであり、且つ開口部および底面が略菱形の微細な凹部を形成することが可能となる。
また、これらの材質のローラの表面にDLCコーティング(DLC:Diamond Like Carbon)、あるいはTiNやTiCN等のチタンコーティングからなるPVDコーティング(PVD:Physical Vapor Deposition)が施されている場合にも所望形状の凹部を形成することが可能となる。
詳しく説明するならば、超硬合金、粉末ハイス鋼および鍛鋼といった非常に硬い金属は、融点と沸点との温度差が大きく、レーザ光が照射されても昇華せずに、溶融した状態のままで凹部の中に多くの量が残留する。これに熱膨張の影響が加わると、形成される凹部の形状がレーザ光の輪郭通りの形状とはならず、所望形状の凹部を形成することはできなくなるからである。
また本発明の上記方法においては、検出されたローラの位置に基づいて、ローラが所定角度回転する毎にパルス信号を発生する工程d、並びにローラの表面に凹部を形成するピッチに応じて、ローラが一回転する間に発生されるパルス信号の数を設定する工程e、をさらに含む。このような本発明においては、上記工程cにおいて、発生されるパルス信号を計数して、その数が上記ピッチに相当する数に達する毎にローラの表面にレーザ光が照射される。
また、本発明の上記装置は、検出されたローラの位置に基づいて、ローラが所定角度回転する毎にパルス信号を発生するパルス信号発生手段と、ローラの表面に凹部を形成するピッチに応じて、ローラが一回転する間に発生される上記パルス信号の数を設定するパルス数設定手段と、をさらに備えている。ここで、制御手段は、上記パルス数を計数して、その数が上記ピッチに相当する数に達する毎にローラの表面にレーザ光を照射するようにレーザ発振器を制御する。
このとき、上記工程eにおいて設定されるパルス信号の数は、上記ピッチに相当するパルス信号の数により割り切れる数、または割ったときの余りが所定値以下となる数とされるのがよい。
以上の構成により、回転されるローラの表面の同一箇所に、ローラが一回転する毎にレーザ光を照射することを複数回繰り返して、所定ピッチで凹部が形成される。このとき、回転されるローラの位置が検出され、検出されたローラの位置に基づいて、ローラが所定角度回転する毎にパルス信号が発生される。
そして、ローラの表面に凹部を形成するピッチに応じてローラが一回転する間に発生されるパルス信号の数が設定され、発生されたパルス信号の数が上記ピッチに相当する数に達する毎にローラの表面にレーザ光が照射される。これにより、ローラが上記ピッチに対応する角度だけ回転する毎にローラの表面にレーザ光が照射されて、ローラが一回転する毎に同一箇所に複数回に亘ってレーザ光を照射するようにして所定ピッチで凹部が形成される。
ここで、ローラが一回転する間に発生されるパルス信号の数は、ローラの表面に凹部を形成するピッチに応じて設定されるので、様々なピッチで微小な凹部をローラの表面に形成することが可能となる。
より具体的には、ローラの一回転に相当するパルス信号の数を、上記ピッチに相当するパルス信号の数により割り切れる数か、一回転毎の照射位置のずれが許容範囲を超えないように、余りが所定値以下となる数に設定する。これにより、ローラの表面の所定箇所にレーザ光を照射してからローラが一回転した後、同一箇所にレーザ光を照射するときに、照射位置が許容範囲を超えてずれるのを防止することができる。したがって、回転されるローラの表面の同一箇所に、ローラが一回転する毎に正確にレーザ光を照射することが可能となる。
また、本発明の上記方法においては、上記工程eにおいて設定されるパルス信号の数の候補を、ローラの径に対応してあらかじめ選定して、記憶させる工程fを含むのがよい。
これにより、記憶されたパルス数を呼び出して設定するだけで、径が同じであるローラの表面に様々なピッチで凹部を形成することができる。
また、本発明の好ましい形態においては、上記工程cは、凹部の形状と相似する形状にレーザ光の輪郭を整形する工程g、並びに輪郭が整形されたレーザ光をローラの表面に縮小結像させる工程hを含む。
これにより、輪郭が凹部の形状と相似する形状とされたレーザ光が縮小結像されてローラの表面に照射されるので、形状がより所望形状に近い微細な凹部を形成することができる。すなわち、上記構成によれば、レーザ光の輪郭を整形するときに比較的大きな形状のままで整形が行われるために、回折等によるレーザ光の拡散を抑えることができるからである。
このようにして輪郭が整形されたレーザ光は、収差を抑えて高精度に集光することが可能であり、ローラの表面に所望形状で結像される。これにより、凹部の形状をより精密に所望形状とすることが可能となる。
以上の結果、円形の凹部は勿論のこと、開口部の長軸径が6〜40μmであり、短軸径が3〜20μmであり、且つ深さが5〜50μmであるような所望形状(例えば菱形)の凹部を上記ローラの表面に形成することができる。
《実施の形態1》
以下、図1〜図4を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るローラ加工装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、同装置のマスク部の機能を示す、マスク部、集光レンズおよびローラの斜視図である。図3は、ローラの表面に形成される凹部の平面図である。図4は、レーザ光の光路におけるビーム径の調整の一例を示すグラフである。
図1のローラ加工装置1は、金属材料からなる図示しない電池用集電体を加圧して、その表面に所定形状の微細な多数の突起を形成するために使用されるローラ2に、上記突起と対応する形状の凹部41(図3参照)をその表面に形成するための装置である。
より具体的には、ローラ加工装置1は、レーザ光21を出力するレーザ発振器3と、レーザ光21を集光してローラ2の表面に照射する加工ヘッド4とを備えている。また、ローラ加工装置1は、ローラ2を回転可能に支持しつつローラ2を周方向に回転駆動するローラ回転装置5を備えている。
レーザ発振器3および加工ヘッド4は2軸アクチュエータ26により水平面と平行に移動自在に支持されている。2軸アクチュエータ26およびローラ回転装置5は、石定盤20の上に載置されている。
また、ローラ加工装置1は、レーザ発振器3がレーザ光21を出力(以下、出射ともいう)するタイミング等を制御する制御部24を備えている。
ローラ2は、例えば金属材料からなる電池用集電体の表面に突起を形成するために使用されるものであり、超硬合金、粉末ハイス鋼、または鍛鋼等の非常に硬い金属から作製される(後の実施例参照)。レーザ発振器3は、例えば、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)結晶またはYVO4(イットリウム・バナデート)結晶にネオジムイオンを混入してなるレーザ媒体を使用した固体レーザ発振器(Nd:YAGレーザまたはNd:YVO4レーザ)から構成されている。
ローラ回転装置5は、ローラ2を周方向に回転自在に支持するための心押し台5a、ローラ2を回転駆動するためのモータ5b、並びにローラ2の回転位置に応じた信号を出力するエンコーダ5cを備えている。エンコーダ5cの出力信号は、制御部24に入力される。
また、レーザ発振器3から加工ヘッド4までのレーザ光21の光路22には、レーザ光21を加工ヘッド4まで導くための複数の反射ミラー8〜14、アッテネータ7、レーザ光21のビーム径を調整するビーム径調整器15、並びにレーザ光の輪郭を所望形状に整形するためのマスク部6が配設されている。光路22に配設されたこれらの部材は、レーザ発振器3および加工ヘッド4とともに、2軸アクチュエータ26により水平面と平行に自由に移動される。
アッテネータ7は、レーザ光21の偏光方向を調整し、特定の偏光方向の成分のみを透過または反射させることで、レーザ光21の出力(エネルギ)を制御ないしは調節するものである。
次に、図2を参照してマスク部6を説明する。マスク部6は、ローラ2の表面に形成すべき凹部の形状と相似する形状(例えば菱形)のレーザ光通過孔6aを備えている。レーザ光通過孔6aを通過したレーザ光21は、輪郭が上記形状に整形され、加工ヘッド4の集光レンズ4aによりローラ2の表面に縮小結像される。
これにより、図3に示すように、平面形状が円形ではなく、例えば長軸径L1に対する短軸径L2の比が0.8以下であるような、所望形状の凹部41をローラ2の表面に形成することができる。ここで、長軸の長さL1は例えば6〜40μmであり、短軸の長さL2は例えば3〜20μmである。
このとき、加工ヘッド4によりローラ2の表面に照射されるレーザ光21のエネルギの90%以上が上記短軸の長さL2よりも小さな径L3の領域内に照射されるようにするのがよい。これによって、熱膨張の影響を緩和して、より所望形状に近い凹部41を形成することが可能となる。
次に、ビーム径調整器15を説明する。ビーム径調整器15は、マスク部6のレーザ孔通過孔6aと対応する領域においてエネルギが高くなるようにレーザ光21のエネルギ分布およびビームの拡がり角を調節するものであり、少なくとも1つのレンズを含んでいる。これにより、エネルギ効率の向上、マスク部6の保護、並びに加工ヘッド4において発生する収差の低減を図ることができる。なお、図1においては、視認性を考慮して、ビーム径調整器15は1つのみを図示している。しかしながら、実際には、ビーム径調整器15は光路22の複数箇所に配置してもよい。
以下、図4を参照しながらビーム径調整器15等を使用したレーザ光21のビーム径の調整例を説明する。図示例においては、レーザ光21は、光路22においてレーザ発振器3からの距離が約700mmであるポイントP1に配された図示しないシリンドリカルレンズからなるビーム径調整器15によりb軸方向(鉛直方向)のビーム径が拡大されている。次に、上記距離が約900mmであるポイントP2に配された図示しないシリンドリカルレンズからなるビーム径調整器15によりb軸方向のビーム径の拡大が停止されている。
次に、上記距離が約1000mmであるポイントP3に配された図示しないシリンドリカルレンズからなるビーム径調整器15によりa軸方向(水平方向)のビーム径が縮小され、上記距離が約1200mmであるポイントP4に配された図示しないシリンドリカルレンズからなるビーム径調整器15によりa軸方向のビーム径の縮小が停止されている。
更に、上記距離が約2000mmであるポイントP5に配された図示しない丸レンズからなるビーム径調整器15によりb軸方向のビーム径が縮小されている。これにより、レーザ光21を、上記距離が約2100mmであるポイントP6に配されたマスク部6のレーザ光通過孔6aに集光することができる。マスク部6のレーザ光通過孔6aを通過したレーザ光21は、輪郭が例えば菱形に整形される。その後、レーザ光21は、ポイントP7に配された加工ヘッド4の集光レンズ4aにより集光される。これにより、マスク部6により例えば菱形に輪郭が整形されたレーザ光21が縮小結像されてローラ2の表面に照射される。
なお、ビーム径調整器15は、レンズに限らず、DOE(Diffractive Optical Elements:回折光学素子)、スリット、またはフィルタを使用して構成することが可能である。
次に、制御部24の制御によりローラ2の表面に凹部41を形成するときのローラ加工装置1の動作を説明する。
ローラ回転装置5により回転駆動されるローラ2の表面には、一端部(例えば、心押し台5a側の端部)から一列ずつ、周方向に所定のピッチで並ぶ凹部41が形成される。このとき、制御部24は、2軸アクチュエータ26を制御して、凹部41を形成しようとする列に対応する位置に加工ヘッド4を移動させる。そして、ロータリエンコーダ5cの出力信号に基づいて、上記ピッチに対応する角度だけローラ2が回転する毎にレーザ光21をローラ2の表面に照射するようにレーザ発振器3を制御する。このとき、ローラ2の表面に照射されるレーザ光21のエネルギは、所望の凹部41を形成するのに必要なエネルギの何分の一かとなっている。
そのようにしてローラ2が一回転すると、制御部24は、前回にレーザ光21が照射された箇所と同一の箇所にレーザ光21を照射するように制御を行う。これを所定回数(例えば、5〜8回)繰り返すことにより、一列の凹部41が形成される。一列の凹部41の形成が終了すると、次の列の凹部41を形成するように、制御部24は2軸アクチュエータ26を制御して、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に所定距離だけ移動させる。
ここで、レーザ光21は、一回当たり10ps〜200nsの間、ローラ2の表面に照射される。これは、照射時間が10ps以下であれば熱伝導がほとんど発生せず、一回の照射で原子1層から0.1μmの厚みまでしか取り除くことができないからである。一方、200ns以上であれば、ローラ2の回転によりレーザ光がローラ表面をスイープしてしまい、ミクロンオーダーの凹部の加工において十分な位置精度を達成し得なくなるからである。例えば、ローラ2の直径が130mmであり、回転速度が60rpmである場合に、照射時間が200ns以下とすれば、ローラ2の表面のスイープ量は0.08μm以下に抑えることが可能となる。
また、レーザ発振器3から出射されるレーザ光21の波長は、100〜600nmとするのが好ましく、加工ヘッド4の焦点距離は20〜200mmとするのが好ましく、結像倍率は5〜40倍とするのが好ましい。より好ましくは、焦点距離は約40mmである。これは、焦点距離が短すぎるとローラ2から発生する加工粉塵が加工ヘッド4の集光レンズ4aに付着するからである。また、焦点距離が長すぎると集光レンズ4aのNA(開口数)が低下することから結像ができなくなるからである。また、結像倍率は、16倍程度とするのがよい。
また、より好ましくは、レーザ光21の波長は、266〜600nmである。これは、レーザ光21の波長が、600nmを超えると回折が大きくなり精度が悪化するからである。また、レーザ光21の波長が266nm未満の場合はパワーが不足するからである。この場合、Nd:YAGレーザであれば、非線形光学結晶を用いて高調波を発生させるタイプのものをレーザ発振器3として適用し、波長が532nmの緑色の光、または波長が355nmの紫外線を出力させるようにすればよい。
また、上記加工ヘッド4の集光レンズ4aのNA、およびレーザ光21の波長にもよるが、マスク部6のレーザ通過孔6aは、レーザ光21の回折による拡散を避けるために、曲率半径が10μm未満の角部を有しない形状とするのがよい。これは、レーザ光21の波長が200nm程度の場合である。しかしながら、例えば加工ヘッド4の集光レンズのNAが0.3であり、レーザ光21の波長が500nmであれば、回折限界は2.0μmとなる。ここで、一次回折光まで使用するならばビーム最小直径は約3μmとなり、倍率16倍では曲率半径は24μm以上とする必要がある。
以下に、上記実施の形態1に係る本発明の実施例および比較例を示す。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
凹部41を形成するローラ2として、冨士ダイス(株)製のW-Co超硬合金ローラを用いた。そのローラ2の幅は100mm、直径は50mmであった。このローラ2をローラ加工装置1のローラ回転装置5に設置し、回転数11rpmで回転させた。
凹部の目的とする形状は短軸径11μm、長軸径22μmの菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aとして短軸径150μm、長軸径300μmの菱形の開口を放電加工により形成した、金メッキをステンレス鋼板に施したものとし、結像比が16:1となる光路上の位置に配した。
レーザ発振器3として、スペクトラ・フィジックス(株)製Nd:YAG第2高調波のレーザ(波長532nm、パルス幅約50ns)を用い、ローラ表面におけるピッチが29.1μmとなるタイミングでレーザ発振器3がレーザ光を出射するように制御した。
ビーム径調整器15によりレーザ光21を直径1.0mmに整形し、マスク部6のレーザ光通過孔6aを通過させて、加工ヘッド4によりローラ2の表面に照射した。加工点でのレーザ出力は25μJとし、同一箇所に8回照射を繰り返すことにより凹部41を形成した。また、一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に22μmだけ移動させて、前列におけると同様にしてローラ2の表面に凹部41を形成した。このようにして、ローラ2の表面に90mmの幅だけ凹部41を形成した。このとき、形成される凹部41のローラ2の周方向における位置が、隣り合う列の間で互いに周方向にずれるように、レーザ光21の出射タイミングを調節した。これにより、ローラ2の表面に、斜め格子状ないしは千鳥配置となるように凹部41を形成した。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径11μm、長軸径22μmの菱形で、深さが10μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
《実施例2》
凹部41を形成するローラ2として、日立金属(株)製の粉末ハイスローラを用いた。このローラ2をローラ加工装置1のローラ回転装置5に設置し、回転数22rpmで回転させた。凹部41の目的とする形状は短軸径が7μm、長軸径が24μmである菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aを短軸径が150μm、長軸径が400μmの菱形とした。
加工点でのレーザ出力は18μJとし、同一箇所に5回照射を繰り返すことにより凹部41を形成した。一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に25μmだけ移動させた。以上記載したこと以外は実施例1と同じ条件で、実施例1と同様にしてローラ2の表面に凹部41を形成した。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径が7μm、長軸径が24μmの菱形で、深さが12μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
《実施例3》
凹部41を形成するローラ2として、大同マシナリー(株)製の鍛鋼ローラを用いた。このローラ2をローラ加工装置1のローラ回転装置5に設置し、回転数22rpmで回転させた。凹部の目的とする形状は短軸径が7μm、長軸径が25μmである菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aを短軸径が100μm、長軸径が400μmである菱形とした。
加工点でのレーザ出力は18Jとし、同一箇所に5回照射を繰り返すことにより凹部41を形成した。一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に25μmだけ移動させた。以上記載したこと以外は実施例1と同じ条件で、実施例1と同様にしてローラ2の表面に凹部41を形成した。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径10μm、長軸径25μmの菱形で、深さが12μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
《比較例1》
凹部41を形成するローラ2として、大同マシナリー(株)製の鍛鋼ローラを用いた。このローラ2をローラ加工装置1のローラ回転装置5に設置した。凹部の目的とする形状は短軸径が7μm、長軸径が25μmである菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aを短軸径が100μm、長軸径が400μmである菱形とした。
レーザ発振器3として、スペクトラ・フィジックス(株)製Nd:YAG第2高調波のレーザ(波長532nm、パルス幅約50ns)を用い、ローラ2を停止させて2kHzで5回同じ位置にレーザ光21の重ね打ちを行ったあとに、ローラ2を回転させ、レーザ光の照射点が29μm移動した箇所で再度ローラを停止させ、2kHzで5回同じ位置にレーザ光の重ね打ちを行う、という手順を繰り返して、29μmピッチで凹部を形成した。加工点でのレーザ出力は18μJとした。また、一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に25μmだけ移動させて、前列におけると同様にしてローラ2の表面に凹部41を形成した。以上記載したこと以外は実施例1と同じ条件で、ローラ2の表面に凹部41を形成した。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径14μm、長軸径22μmの菱形であり、深さは11μmであった。この結果は、上記目的とした7×25μmの菱形形状に対して、短軸径が約7μm大きくなっており、上記目的とした形状とは大きく異なっていた。
《実施の形態2》
次に、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態2は実施の形態1を改変したものであり、以下、その異なる部分を主に説明する。
図5に、実施の形態2に係るローラ加工装置の概略構成を示す。
ローラ加工装置1Aは、実施の形態1のローラ加工装置1に、パルス変換器25を付加したものである。また、エンコーダ5cは、ローラ2の絶対位置に応じた信号を出力するアブソリュート形ロータリエンコーダを使用して構成されている。このエンコーダ5cの出力信号は、パルス変換器25を介して制御部24に入力される。
次に、図6および図7を参照して、エンコーダ5c及びパルス変換器25を詳細に説明する。アブソリュート形ロータリエンコーダとしてのエンコーダ5cは、ローラ2の回転の絶対位置に応じた所定ビット(図示例では17ビット)の信号(例えばグレイコード)を出力するものである。これにより基準位置からの信号数をカウントすることなしにローラ2の回転の絶対位置を検出することが可能である。
パルス変換器25は、パルス信号生成部25aとパルス数設定部25bとを含んでいる。パルス信号生成部25aは、エンコーダ5cの出力信号から同一の周期及びパルス幅を有し且つ位相の異なる2つのパルス信号(A相信号およびB相信号、図9Aおよび図9B参照)を生成する。パルス数設定部25bは、ローラ2の一回転に相当する上記2つのパルス信号のそれぞれの数を、ローラ2の表面に凹部を形成するピッチに応じて設定する。なお、図6では、パルス信号生成部25aとパルス数設定部25bとは分離して配置されているが、パルス信号生成部25aおよびパルス数設定部25bは、1つの基板上にパルス信号生成部25aとして機能するチップとパルス数設定部25bとして機能するチップとを設けるようにして構成してもよい。
以下、本発明の理解を容易とするために、具体的な数値を例示して、実施の形態2における制御の手順を説明する。ここでは、径が125mmであるローラ2の表面に凹部41を形成するものとしている。なお、これらの数値は説明の便宜のために定めた単なる例にすぎない。
(1)パルス変換器25がエンコーダ5cの出力信号から生成するA相信号及びB相信号のローラ2の一回転あたりのパルス数を予め設定する。例えばエンコーダ5cの出力信号が17ビットである場合、ローラ2が一回転する間のパルス数は131072である。オペレータ(操作者)は、ローラ2の径(125mm)を考慮して、この131072パルスの信号から、ローラ2の一回転あたりのパルス数が例えば2400、2500、…、3900の100毎の16通りのパルス数のA相信号及びB相信号がそれぞれ生成されように、パルス変換器25に予め設定を行う。パルス変換器25は、これら予め設定された16通りのパルス数の信号の中で、さらにオペレータにより指定されたパルス数のA相信号及びB相信号をそれぞれ生成して出力する。
(2)設定されたパルス数のA相信号及びB相信号を4逓倍したときのパルス数を計算する。これにより、9600(=2400×4)、10000(=2500×4)、…、15600(=3900×4)の400毎の16通りの4逓倍されたパルス数が導かれる。
(3)凹部41を所望ピッチで形成するときのローラ2の一回転あたりの孔数を計算する。例えば直径125mmのローラ2の表面に、28μm、29μm、30μm、31μmの各ピッチで凹部41を形成する場合、一回転あたりの孔数はそれぞれ14025(≒125×π÷0.028)、13541(≒125×π÷0.029)、13090(≒125×π÷0.030)、12668(≒125×π÷0.031)となる。
(4)上記手順3の計算結果に最も近いパルス数のものを、上記手順2の4逓倍されたパルス数の中から選択する。例えば28μmピッチであれば14000(=3500×4)パルスが選択され、29μmピッチであれば13600(=3400×4)パルスが選択され、30μmピッチであれば13200(=3300×4)パルスが選択され、31μmピッチであれば12800(=3200×4)パルスが選択される。
(5)上記手順1で設定されたパルス数の中から、上記手順4で選択された4逓倍のパルス数に対応するA相信号およびB相信号のパルス数を指定する。例えば28μmピッチであれば3500(=14000÷4)パルスが指定され、29μmピッチであれば3400(=13600÷4)パルスが指定され、30μmピッチであれば3300(=13200÷4)パルスが指定され、31μmピッチであれば3200(=12800÷4)パルスが指定される。このとき、ローラ2の径が125mmであれば、実際のピッチはそれぞれ28.05(≒125×π÷14000)μm(誤差0.05μm)、28.87(≒125×π÷13600)μm(誤差0.13μm)、29.75(≒125×π÷13200)μm(誤差0.25μm)、30.70(≒125×π÷12800)μm(誤差0.30μm)となる。
以上のように、径が125mmであるローラ2に対して、ローラ2が一回転する間にパルス変換器25aがエンコーダ5cの出力信号に基づき発生する信号のパルス数を、2400〜3900の100毎の16通りに設定すれば、小さな誤差で、24〜39μmピッチの1μm毎の16通りのピッチで凹部41をローラ2の表面に形成することができる。上記例で、ローラ2の径が変われば設定パルス数の設定の間隔(上記例では100毎)を調整して対応することができる。また、上記範囲以外のピッチ(例えば20μmピッチや42μmピッチ)で凹部を形成する必要がある場合には、設定パルス数の範囲(上記例では2400〜3900)を変えればよい。
以下、参考のために、従来技術によりローラ2の表面に所定のピッチで凹部41を形成する場合を説明する。図8に示すエンコーダ(ここでは、インクリメンタル形ロータリエンコーダ)51は、カップリング52を介してローラ50と接続されている。
このエンコーダ51は、ローラ50の回転により図9Aおよび図9Bに示すようなパルス信号からなるA相信号及びB相信号を出力する。ここで、ローラ50が一回転する間のA相信号及びB相信号のパルス数がそれぞれ81000であるものとすれば、図9Cに示すように、A相信号及びB相信号を4逓倍したときの信号数は324000となる。
図9Dに示すように、上記4逓倍した信号を60個カウントする毎にオン・オフを繰り返す信号を生成し、信号がオン・オフする毎にレーザ光21を照射するものとすれば、直径50mmのローラ50であれば5400(=324000÷60)個の凹部41が約29.1(≒50000(50mm)×π÷5400)μmピッチでローラ50の表面に形成される。
この方法により例えば28μmピッチで凹部を形成する場合、4逓倍した信号を58個カウントする毎にオン・オフを繰り返す信号を生成し、信号がオン・オフする毎にレーザ光21を照射するものとすればよい。ところが、上記ローラ50の一回転あたりの信号数である324000を58で割ると約5586.2(割り算の余りは12)となる。このように、割り切れずに「12」の余りが生じるために、この例ではローラ50の一回転あたり12カウント分である約6μmもの大きなずれが生じてしまう。したがって、ローラ2が一回転する毎にローラ2の表面の同一箇所にレーザ光を照射することはできなくなる。
したがって、上記ローラ50の一回転あたりの信号数(324000)を割り切れるか、もしくは割り切れなくとも余りの小さいカウント数に対応するピッチでのみしか凹部を形成することはできない。この例でいえば、26μm、29μm、32μmといった3μm毎のピッチでのみ凹部41を形成することが可能である。したがって、27μmピッチや28μmピッチで凹部を形成するためには、一回転あたりの出力信号数が異なる別のロータリエンコーダを使用する必要がある。
この点、本発明によれば、1つのロータリエンコーダにより自由にピッチを選定して、ローラ2の表面に凹部を形成することができる。
以下に、実施の形態2に係る本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
《実施例4》
凹部41を形成するローラ2として、冨士ダイス(株)製のW-Co超硬合金ローラを用いた。そのローラ2の幅は100mm、直径は50mmであった。このローラ2をローラ加工装置1Aのローラ回転装置5に設置し、回転数11rpmで回転させた。
エンコーダ5cとして、光学式アブソリュート形ロータリエンコーダを用いた。このエンコーダ5cは、回転の絶対位置に応じた17ビットの信号(例えばグレイコード)を出力するもので、最大回転数は2000回転/分である。また、データの送信は差動ラインドライバを使用するものである。
パルス変換器25として、エンコーダ5cから出力される17ビット信号を差動ラインレシーバで受け、位相の異なる2つのパルス信号(A相信号、B相信号)と、特定の角度位置であることを示すパルス信号(原点信号)を出力するものを用いた。このパルス変換器は、パルス数選択信号をバイナリー式に入力することにより設定パルス数のA相信号およびB相信号を出力するものである。ここでは、パルス変換器25に、ローラ一回転に相当するパルス数としてあらかじめ2400から3900の16通りの100毎のパルスカウントを設定した。
凹部41の目的とする形状は短軸径が11μm、長軸径が22μmである菱形とした。マスク部6は、金メッキを施したステンレス鋼板にレーザ光通過孔6aとして短軸径150μm、長軸径300μmの菱形の開口を放電加工により形成したものとし、結像比が16:1となる光路上の位置に配した。
レーザ発振器3として、スペクトラ・フィジックス(株)製Nd:YAG第2高調波のレーザ(波長532nm、パルス幅約50ns)を用い、ローラ表面におけるピッチが29μmとなるタイミングでレーザ発振器3がレーザ光を出射するように制御した。
ビーム径調整器15によりレーザ光21を直径1.0mmに整形し、マスク部6のレーザ光通過孔6aを通過させて、加工ヘッド4によりローラ2の表面に照射した。加工点でのレーザ出力は25μJとし、同一箇所に8回照射を繰り返すことにより凹部41を形成した。また、一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に22μmだけ移動させて、前列におけると同様にしてローラ2の表面に凹部41を形成した。このようにして、ローラ2の表面に90mmの幅だけ凹部41を形成した。このとき、形成される凹部41のローラ2の周方向における位置が、隣り合う列の間で互いに周方向にずれるように、レーザ光21の射出タイミングを調節した。これにより、ローラ2の表面に、斜め格子状ないしは千鳥配置となるように凹部41を形成した。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径11μm、長軸径21μmの菱形で、深さが10μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
《実施例5》
凹部を形成するローラ2として、日立金属(株)製の粉末ハイスローラを用いた。このローラ2をローラ加工装置1Aのローラ回転装置5に設置し、回転数22rpmで回転させた。凹部41の目的とする形状は短軸径が7μm、長軸径が24μmである菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aを短軸径が100μm、長軸径が400μmである菱形とした。
加工点でのレーザ出力は18μJとし、同一箇所に5回照射を繰り返すことにより凹部41を形成した。一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に25μmだけ移動させた。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径10μm、長軸径21μmの菱形で、深さが12μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
《実施例6》
凹部41を形成するローラ2として、大同マシナリー(株)製の鍛鋼ローラを用いた。このローラ2をローラ加工装置1Aのローラ回転装置5に設置し、回転数22rpmで回転させた。凹部41の目的とする形状は短軸径が7μm、長軸径が25μmである菱形とした。マスク部6は、レーザ光通過孔6aを短軸径が100μm、長軸径が400μmである菱形とした。加工点でのレーザ出力は18μJとし、同一箇所に5回照射を繰り返した。一列分の凹部41の形成が終了すると、加工ヘッド4をローラ2の軸方向に25μmだけ移動させた。
上記条件で加工したローラ2の表面を顕微鏡で観察した結果、開口部は短軸径10μm、長軸径24μmの菱形で、深さが11μmであった。このように、本発明によれば、後に示す従来技術による比較例よりも所望形状により近い形状の凹部を形成できることが確認された。
以上、本発明を実施形態及び実施例により説明したが、本発明はこれに限らず種々改変が可能である。例えば、レーザ光の照射を繰り返す回数は、5〜8回に限らず加工速度と加工精度がバランスする範囲で適宜増減してもよい。
また、気体または液体をローラ2の表面に吹き付けるブロー装置をローラ2の周囲に配設し、レーザ光21をローラ2表面に照射してから、次に同一箇所にレーザ光21を照射するまでの間に当該箇所に上記気体または液体を吹き付けるようにしてもよい。これにより、ローラ2表面のレーザ光21の照射箇所から塵を取り除くことができる。また、ローラ2の表面を冷却することができ、更に精度の良い所望形状の凹部を形成することが可能となる。
ローラ2の表面に吹き付ける気体としては、例えば圧縮空気などであっても徐塵、冷却の効果があるが、好ましくは窒素、アルゴンなど不活性の気体を用いると、加工時の酸化反応を抑え、酸化熱による加工形状の悪化を低減させることができる。
また、液体としては、液体窒素など、常温で瞬時に揮発する液体をレーザ照射箇所の周辺に吹き付けることが好ましい。これにより、冷却効果を高めながらも加工面を乾燥状態に保つことができ、レーザ光の結像が阻害されない。
本発明によるローラ加工装置、及びローラ加工方法によれば、金属部材を加圧してその表面に突起を形成するために使用するローラの表面に、所望形状の微細な凹部を形成できる。したがって、主に電池の集電体を製造するために使用されるローラの加工に有用である。
本発明の実施の形態1に係るローラ加工装置の概略構成を示す斜視図である。 同装置のマスク部の機能を示す、マスク部、集光レンズおよびローラの斜視図である。 ローラの表面に形成される凹部の平面図である。 レーザ光のビーム径の調整の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態2に係るローラ加工装置の概略構成を示す斜視図である。 図5の装置のエンコーダおよびパルス変換器の斜視図である。 エンコーダの出力信号を示すグラフである。 一般的なインクリメンタル形ロータリエンコーダをローラに接続した状態を示す斜視図である。 インクリメンタル形ロータリエンコーダの出力信号のA送信号を示すグラフである。 インクリメンタル形ロータリエンコーダの出力信号のB送信号を示すグラフである。 インクリメンタル形ロータリエンコーダの出力信号を4逓倍した信号を示すグラフである。 上記4逓倍した信号を60カウントするごとにオン・オフする信号を示すグラフである。 従来のローラ加工方法により形成された凹部の平面図である。 同凹部の斜視図である。 従来の別のローラ加工方法により形成された凹部の斜視図である。 従来のローラ加工方法により凹部を形成する場合の問題点を説明するために参照する、ローラの斜視図である。
符号の説明
1 ローラ加工装置
2 ローラ
3 レーザ発振器
4 加工ヘッド
5 ローラ回転装置
5c エンコーダ
6 マスク部
6a レーザ通過孔
15 ビーム径調整器
21 レーザ光
24 制御部
25 パルス変換器
25a パルス生成部
25b パルス数設定部
41 凹部

Claims (9)

  1. 鍛鋼からなるローラの表面に有底の複数の凹部を形成するためのローラ加工方法であって、
    前記ローラを回転させる工程a、
    前記回転されるローラの位置を検出する工程b、
    前記ローラの回転位置の検出信号に基づいて、前記ローラが所定角度回転する毎にパルス信号を発生する工程c、
    前記発生されたパルス信号に基づいて前記ローラの表面にレーザ光を照射する工程d、
    前記ローラの径、および前記ローラの表面に前記凹部を形成しようとするピッチの範囲に応じて、前記パルス信号を発生する周期の設定候補を、あらかじめ複数個選定し、記憶手段に記憶させる工程e、並びに
    前記選定された複数個の設定候補の中から1つの設定候補を、前記ローラの表面に前記凹部を形成する実際のピッチに基づいて選択する工程f、を含み、
    前記凹部の開口部の形状が、長い方の対角線に対する短い方の対角線の比が0.8以下、前記長い方の対角線が6〜40μm、且つ前記短い方の対角線が3〜20μmの略菱形であり、かつ
    前記レーザ光の1回あたりの照射時間が、10ps〜200nsであり、
    前記ローラの周方向に並ぶ一列分の複数個の前記凹部を形成するように、前記回転されるローラの表面に前記実際のピッチでレーザ光を照射し、前記ローラが一回転する間にレーザ光の照射箇所を自然冷却または強制冷却により冷却しながら、前記ローラの表面の同一箇所に前記レーザ光を照射することを複数回繰り返すローラ加工方法。
  2. 前記強制冷却は、前記レーザ光を前記ローラの表面に照射してから次に前記レーザ光を同一箇所に照射するまでの間に、当該箇所に冷却用の媒体を吹き付けて行う請求項1記載のローラ加工方法。
  3. 前記工程bにおいて、アブソリュート式ロータリエンコーダを使用して、前記回転されるローラの位置を検出する請求項1または2記載のローラ加工方法。
  4. 前記アブソリュート式ロータリエンコーダは、少なくとも17ビットの分解能を有する請求項3記載のローラ加工方法。
  5. 前記工程cにおいて、前記パルス信号として、位相が互いに異なる2相のパルス信号を発生する請求項1〜4のいずれかに記載のローラ加工方法。
  6. 前記工程fは、前記複数個の設定候補のそれぞれについて、前記パルス信号を4逓倍してその個数をカウントしたときの前記ローラの一周分のカウント値と、前記ローラの周方向に並ぶ一列分の前記凹部の個数とを比較して、前記カウント値と前記凹部の個数とが最も近くなる設定候補を選択することを含む請求項5記載のローラ加工方法。
  7. 前記凹部を、5〜50μmの深さに形成する請求項1〜6のいずれかに記載のローラ加工方法。
  8. 前記凹部の形状と相似する形状に前記レーザ光の輪郭を整形する工程g、並びに
    前記輪郭が整形されたレーザ光を前記ローラの表面に縮小結像させる工程hを含む請求項1〜7のいずれかに記載のローラ加工方法。
  9. 前記レーザ光の波長が266nm〜600nmである請求項1〜8のいずれかに記載のローラ加工方法。
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