JP4665749B2 - 電子ビームによる円周溶接位置の補正方法 - Google Patents
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Description
溶接は真空チャンバ内で行い、陰極部から発生する電子ビームを、陽極部で加速し、電子レンズ部で電子ビームを収束させ、被加工物に局所的に電子ビームを当てることで、溶接部を溶かし、溶接可能とする。
被加工物は、真空チャンバ内に備えられた可動テーブルに乗せられているので、電子ビームの位置を固定で、被加工物を移動させることで、溶接を行う。
そして、電子ビーム溶接を行うことにより、精度の高い溶接が実現でき、かつ、溶け込み幅が狭いことで、外観が美しく、溶け込み深さが深いことで、溶接強度の高い加工が可能となる。
しかしながら、このように溶接ビードの溶け込み幅が狭いので、電子ビームが被加工物の溶接部分にきちんと当たらなかった場合に、溶け込みが不十分となり必要な溶接強度が出ないなどの溶接不良を発生しやすいという問題点を抱えている。
図7に特許文献1の、三次元倣いセンシング方法を適用した溶接形鋼管の電子ビーム溶接の場合のセンシング目合わせ要領を示す斜視図を示す。
三角錐タブ板101は溶接形鋼管102の両端面4箇所に取り付けられており、溶接形鋼管102は移動台車109上のターニングローラ108により支持回転できるようにしている。
三角錐タブ板101の長手方向で開先線103の延長方向にケガキ線104を引き、その途中にセンシング用微小ポンチ穴105a、105bを2個設けている。そのセンシング用微小ポンチ穴105a、105bを一定加工距離離れた電子ビームガン106より弱ビーム107を照射し、電子ビームガン106の照射位置を合わせることにより溶接開先倣い、電子ビームガンの姿勢制御を行う。
開先線103の延長線上にあるセンシング用微小ポンチ穴105aに、弱ビーム107のスポットが合うように電子ビームガン106の姿勢制御を行い、その後センシング用微小ポンチ穴105bに、弱ビーム107のスポットが合うように電子ビームガン106の姿勢制御を行うので、開先線103の中心に電子ビーム軸が一致する。従って、溶接形鋼管102の中心と合致して目外れの無い溶接ができるようになる。
このようなロボットを使ったアーク溶接の溶接位置補正方法に関しては、その他にも幾つか文献があるが、ここでは特許文献3について説明を行う。
図8は、特許文献3の、アーク溶接の溶接位置の補正方法に関する動作図である。
特許文献3の方法では、被加工物をロボットでアーク溶接する際に、実際の被加工物の位置を検出して、ロボットに教示された位置を補正して溶接する方法である。
被加工物である円筒部材116と平板部材117は、円弧状作業線118で溶接される。溶接作業はロボットで行い、ロボットには、円弧状作業線118上にあるセンシング位置SP3、SP8、SP13を含む、点SP1〜SP17が教示され記憶されている。なお、SP18以降は円弧状作業線118が教示されている。
さらに、ロボットは、退避位置SP9〜SP11を経由して、3点目のセンシング開始位置SP12に移動して、SP3、SP7と同様に位置情報(点SP13’)を検出位置情報メモリに、教示時の検出点位置情報(SP13)も教示位置情報メモリに記憶する。
そして、教示円弧補完位置情報の再生前に、以上のようにして検出され位置情報メモリに記憶されたSP3’、SP8’、SP13’の検出位置情報に基づいて、検出円弧中心演算回路により、これら3点SP3’、SP8’,SP13’の検出位置を通る検出円弧の中心位置座標(XD、YD)を算出する。
算出された円弧座標中心(XD、YD)と、(XT、YT)の差をとり、その差情報を以降の教示位置情報の補正値(XM、YM)とする。
以上のように、教示位置情報は、円弧センシング補正値(XM、YM)に基づき、補正手段によって補正されて、ロボットの円弧状作業線118に対する再生動作が行われる。
このように、ロボットの教示位置と、実際にセンシングによって得られる被加工物の位置にズレがあったとしても、溶接位置を補正して正確な溶接が行えるようになる。
また、前述したように、電子ビームの溶接工程では、例えば3交代制のラインにおいて、作業者が交代するたびに、溶接の終わった被加工物を切断し、その断面を見て直接溶接位置ズレを確認するような手間のかかる検査を行っている。しかし、このような検査作業は作業者に負担を強いるし、ワークの設置精度によるワークの芯ズレによる溶接位置ズレや、ワークの公差範囲内での精度のバラつきによる溶接位置ズレなどにより発生する、溶け込み不足などの溶接不良を防ぐためには、ワーク毎に溶接位置補正を行いたい。即ち、溶接位置補正を短時間で行わなければならない。
特に、車両の部品のように大量生産が必要なものの場合、製品の歩留まりが悪かったり、検査に時間がかかり加工時間を短縮できなかったりすると、完成品1個あたりの製造コストが高くなってしまう。低価格化が進む現在においては、このような事態は好ましくない。
従って、電子ビームを用いた円周溶接の溶接位置補正は、高精度かつ短時間で行う必要がある。
従って、通常直径が数mm程度の太さを持つロボットハンドの先端に備えられた溶接棒を用い、その溶接棒を被加工物に接触させて検出を行う為、溶接棒と被加工物との接触位置を常に同じにすることはできず、検出位置と実際に溶接が必要な位置との誤差が大きくなる。
例えば、円筒部材116の筒側面に、溶接棒を接触させる場合には、円筒部材116の傾きや固定位置が常に一定とは限らないので、溶接棒を同じ角度で近接させたとしても、円筒部材116との接触位置が異なれば、接触角度は異なる可能性がある。それによって、検出精度が悪化してしまうと考えられる。また、溶接棒の接触部の形状も、検出精度に影響するであろう。
さらに、ロボットの速度とセンサの感度に依存し、ワークにロボットハンドに備えられた溶接棒を高速で接触させてしまうと、どちらかを破損する恐れがあるので、低速で移動させて接触させる必要があり、位置の検出には時間がかかる。
従って、特許文献2及び特許文献3に開示されるアーク溶接における円周溶接位置の補正方法を電子ビーム溶接の溶接位置補正に適用できたとしても、溶接位置補正を高精度かつ短時間に行えないという問題がある。
接触式センサで精度よく検出しようとする場合、例えば、機械式の表面粗さ試験機のような方法が考えられる。
機械式の表面粗さ試験をするような場合には先端の細くなった針状のプローブで、ワーク表面に接触させてスクラッチすることで検査を行うが、接触式で検査する場合には精度を高める必要があればあるほど、プローブの先端は細く、検査速度を落として検査を行う必要がある。従って接触センサを用いることは、検出時間がかかり、かつワーク表面に傷をつけてしまう可能性もあるため、現実的ではない。
一方、被接触式センサを用いた場合は、レーザー等を用いればある程度の検出精度は期待できる。検出速度もデータを処理するコンピュータの能力に左右されるが、接触式センサのような制限は無いため、比較的早く処理することが期待できる。
これは、電子ビーム溶接のズレは、ワーク側のズレと、電子レンズ側のズレが考えられるからである。
前述のように、電子ビームは電子レンズ部で収束、偏向を行っているが、この電子レンズ部分でズレが生じると、電子ビームの照射位置やスポット径にもズレが生じる。たとえ、特許文献3の方法でワークの位置を正確に検出できたとしても、それによって、電子レンズ側のズレの補正は行えない。
従って、せっかくワークの位置を検出できても、電子レンズ側にズレがあると、正確な位置に溶接をすることはできない。つまり、円周溶接の溶接位置補正を高精度に行うことが出来ないという問題は解決されない。
そもそも、特許文献3の方法は、溶接する溶接棒自身でワークの位置を検査する方法であり、その方法で位置検査を行うことで、溶接棒とワークとの相対的なズレを補正しうる。つまり、電子ビーム溶接においても、溶接を行う電子ビーム自身で検査する必要がある。
図12は、特許文献4の荷電粒子ビーム走査式自動検査装置の概略図が示されている。
この荷電粒子ビーム走査式自動検査装置は、荷電粒子ビーム121を被検査物122に照射し、そのとき発生する2次電子及び反射電子を被検査物の情報として情報処理手段123に取り込み、前記情報を、パターン比較を行う処理をして、欠陥の有無及び分析などの検査を行う。
そして、検査台制御手段127によって制御される検査台128を移動することで、被検査物122上をビーム走査し、被検査物122の全面の検査を行い、被検査物122の欠陥を検出することが出来る。
このように、特許文献1の電子ビーム溶接に、特許文献4の方法で、溶接位置を検出し、検出した位置に電子ビームを当てて溶接することができれば、非常に高精度の溶接を行うことが期待できる。
ただし、ワークの表面全てを走査するために時間がかかり、溶接位置を特定するためワークの表面データ全てを処理しなければならないので、高精度の溶接をしようとした場合には、非常に多くのデータを処理しなければならなくなる。結果、多くのデータを短時間で処理できる高価な機械を用意する必要があり、かつ、検査精度を高めるためには時間がかかるため、検査時間も長くなってしまい、溶接位置補正を短時間に行うことができないという問題がある。
(1)円周部を持つ固定されたワークに、制御装置に記憶された円周溶接位置の入力位置データに基づいて電子ビーム溶接する際の、電子ビームによる円周溶接位置の補正方法において、前記入力位置データに基づいて、前記電子ビームを前記ワークの前記円周部を横断して第1〜4走査位置の4箇所を90度ピッチでセンシングするように放射し、前記ワークの表面に前記電子ビームが当たることで、反射される電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つを、検出装置にて検出し、前記検出装置にて検出した前記電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つの検出量の変化から、前記制御装置が前記円周部上の点である現位置データを取得し、前記制御装置が、前記現位置データから前記入力位置データを補正した補正位置データである溶接中心座標と溶接半径とを算出し、前記補正位置データに基づいて、前記ワークを電子ビーム溶接することを特徴とする。
また、ここでいう入力位置データとは、制御装置に予め入力され記憶された、円周部の円周溶接位置のデータを指す。このデータは、円周部の円周溶接位置を溶接しうるデータであれば良いので、どのような形態であっても構わない。
また、ここでいう現位置データとは、実際にワーク上の溶接位置上の点のデータである。たとえば、円周溶接位置上の3箇所を走査して得られる、3点の座標データである。
また、ここでいう補正位置データとは、現位置データから得られた座標から求まる円周部のデータであり、例えば切れ目の無い円からなる円周溶接位置データであれば、3点の現位置データを得ることで、溶接すべき円のデータを計算しうる。この円のデータに基づいた溶接を行うことができるように加工されたデータのことを言う。
(1)円周部を持つ固定されたワークに、制御装置に記憶された円周溶接位置の入力位置データに基づいて電子ビーム溶接する際の、電子ビームによる円周溶接位置の補正方法において、前記入力位置データに基づいて、前記電子ビームを前記ワークの前記円周部を横断して第1〜4走査位置の4箇所を90度ピッチでセンシングするように放射し、前記ワークの表面に前記電子ビームが当たることで、反射される電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つを、検出装置にて検出し、前記検出装置にて検出した前記電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つの検出量の変化から、前記制御装置が前記円周部上の点である現位置データを取得し、前記制御装置が、前記現位置データから前記入力位置データを補正した補正位置データである溶接中心座標と溶接半径とを算出し、前記補正位置データに基づいて、前記ワークを電子ビーム溶接することを特徴とするので、溶接位置補正を高精度かつ短時間に行うことが可能であり、精度よく最適な位置を溶接可能になるという優れた効果を奏する。
これによって、ワークの位置精度によるワークの芯ズレが原因となる溶接位置ズレや、ワークの公差範囲内での精度のバラつきによる溶接位置ズレなどにより発生する溶け込み不足などの溶接不良を解消することが可能になる。
走査する3箇所は、入力位置データに基づいて行うので、適切な位置を走査でき、かつワーク全面を走査する必要が無いので、短時間で円周溶接位置を検出可能である。
なお、本発明では4箇所をセンシングしているが、センシングの箇所が増えるほど、溶接位置の誤差が少なくなる。
しかし、本発明に係る方法では、ワークは固定して、電子ビームを偏向させて、現位置データを取得するので、このような機械的な誤差を含まない精度の良いデータが得られる。
電子ビームを照射することでワークを加熱する際に、ワークの熱伝達によって熱が逃げるので、極小スポットで電子ビームを当てるよりも、一定の面積に電子ビームを照射したほうが、必要な部分を溶接するには効率が良いのである。
一方、電子ビームでセンシングをする場合には、ワークを溶かす必要は無く、逆に溶かしてしまうと正確な測定が行えないため、極小スポットで弱いエネルギーの電子ビームを当て、センシングを行うことで精度の良いデータを得ることができる。
例えば、面取りをしたワークをつき合わせて、或いは溶接用の開先が設けられたワークをつき合わせて電子ビーム溶接する場合に、電子ビームを照射する必要のある場所は、ワーク同士を付き合わせた界面となる。
従って、この位置に検出時スポット径に絞った電子ビームでセンシングをするので、精度の良い現位置データが得られ、また、検出された現位置データと実際の界面の位置とに、多少の誤差があったとしても、電子ビームの溶接時スポット径の範囲内に収まるため、現位置データによって位置補正が行われることにより、溶接に必要な精度は十分確保できることとなる。
最初に本実施例の構成について説明する。図1には、電子ビーム溶接装置の模式図を示している。
電子銃として、電子ビーム10を発生する陰極14と、電子ビーム10を加速する陽極15と、電子ビーム10を収束させる集束レンズ13と、電子ビーム10を偏向させる第1偏向レンズ18a、第2偏向レンズ18bが備えられ、真空チャンバ16内には、反射電子を検出するための反射電子コレクタ20と、ワーク25、及びワーク固定台27等が備えられている。
電子ビーム10を偏向するための偏向レンズ18が第1偏向レンズ18aと、第2偏向レンズ19bの2つ設けられているが、これは偏向角度を広くする目的である。本発明の電子ビーム溶接装置では、ワーク25は固定したままであるので、走査範囲を広くするためにこのような工夫がなされている。ただし、偏向レンズ18の偏向角度が、ワーク25の要求する加工範囲を十分満たすことが出来れば、偏向レンズ18は1つでもよい。
また、集束レンズ13は、第1集束レンズ、第2集束レンズ4極子レンズなどを含むが、本実施例の説明には無関係であるので、省略して記載してある。
なお、真空チャンバ16外部に、これらを制御する制御装置12と、陰極14及び陽極15等に電流を供給する電源11が備えられて、電子ビーム溶接装置の制御を行っている。
本実施例では、その円周溶接部26を溶接していくものとする。ワーク25の材質は、鉄系部品であり、シャフト側は浸炭させ、硬くなっている。ただし、これらは実施例に過ぎないので、大きさや材質は、電子ビーム溶接を行う一般的な大きさ、材質であれば問題ない。電子ビーム溶接では一般的に行われるように、異種材料の溶接であっても可能である。
ワーク25上にある円周溶接部26は、シャフトとボスを組み合わせる際にできる溝である。
シャフトとボスを組み合わせる際には必ず両方の部品は面取りされているので、シャフトの面とボスの面が付き合わされる部分は、溝の底の部分となる。
従って円周溶接部26は、溝の底の部分に当たる部品の突合せ面となり、電子ビーム10を照射して溶接する場合には、前述のように溶接ビードの幅は狭くなるので、許容される溶接時に電子ビーム10を当てる幅は狭いものとなる。
本実施例においては、溶接位置検出を行った後にワーク25が動いてしまうような自体を避けるため、偏向レンズ18の偏向範囲を広くして、ワーク25全域のどのポイントでも溶接できるようにカバーし、そのかわりにワーク固定台27には駆動機構などは設けず、ワーク25を位置決めできる機構のみを備えている。
ワーク25の固定については、高度な位置決め精度を必要としないため、ワーク固定台27は複雑な固定機構よりも、容易にワーク25が取り付け、取り外しできるような機能が求められる。例えば、ワーク25のシャフトの部分を穴に差し込むような位置決め方法でも、ワーク毎に位置補正を行うことが可能であるので、質の高い溶接が可能となる。
ただし、反射電子のほうが直進性は高いので、溶接位置のピークを検出するには、反射電子を用いるのが望ましいと考えられる。
溶接開始すると、S1にて作業者が真空チャンバ16にワーク25を投入し、ワーク固定台27に固定する。S2では、真空チャンバ16内の真空引きを行い、真空チャンバ16内を電子ビーム溶接に必要な真空度にする。
S3で、位置検査をするために、制御装置12に予め入力されている溶接位置を入力位置データに基づき、弱い電子ビームにてワーク25表面を走査する。走査に用いる弱い電子ビームは、3〜5A程度としている。
S4で、実際のワークの溶接位置である現位置データを検出したかどうかを判断し、現位置データが検出されなければ(S4:No)、S7で検出エラーとしてフローを終了する。現位置データが検出され取得できれば(S4:Yes)、S5で現位置データに基づいて、補正位置データを算出する。走査して計算処理にかかる時間は4箇所で3〜4秒程度となる。
そして、S6にて、補正位置データに基づいて溶接を行う。
図3はセンシング方法を示した模式図であり、図4はセンシングの制御について説明した模式図である。
図3の円周溶接部26は、実際のワーク25が溶接を必要とする、円周溶接位置であり、制御装置12が備える記憶装置に記憶されている入力位置データ26aから、走査させる位置を決定して、センシングを行う。
本実施例では、円周溶接位置は円形であり、第1走査位置31、第2走査位置32、第3走査位置33、第4走査位置34の4箇所を90度ピッチでセンシングしている。
なお、本実施例では4箇所をセンシングしているが、円を求めるには、最低3箇所のセンシングが必要であり、センシングの箇所が増えるほど、溶接位置の誤差が少なくなる。
図4は、図3の1箇所について、模式的に見ており、第4走査位置34を横から見た図である。
例えば、ワーク固定台27のワーク25固定方法が、単純にワーク25のシャフト部分を差し込むだけの穴であり、ボス部分を面で受けるような構造であれば、ワーク固定台27の穴とワーク25のシャフトの差込み代とワークの精度公差を考慮してやれば良いので、±1mm程度の走査する幅を持っていれば、十分であろう。
電子ビーム10をワーク25に当てると、反射電子、2次電子、X線等の情報を、反射電子コレクタ20によって、検出する。具体的には後述するが、反射電子コレクタ20を通過したときに発生する電力のピークを検出し、34aの位置を現位置データとする。位置データはシーケンサに渡され、法線制御によってデータが加工されて、偏向レンズ18に対して偏向制御を行う。これにより電子ビーム10は必要なだけ偏向されて、正確な溶接位置を溶接できるように調整される。
電子ビーム10をワーク25表面に照射すると、ワーク25の表面に当たった一部の電子がエネルギーをあまり失わずに反射される。この反射する電子には指向性があり、面に対して直角に電子ビーム10を照射した場合は、大部分が面に反射されて入射した方向に反射する。
従って、ポイントaに電子ビーム10があたった場合、図5に示すように大部分が入射した方向に反射するが、ワーク25の面取り部分にあたるポイントbに電子ビーム10が入射すれば、入射角に対しワーク25の面は直角でないので、電子は斜めの方向に多く反射される。本実施例ではワーク25の円周溶接部26部分は、ボスとシャフトが組み合わされた部分であるので、組み立てるために面取りがなされており、組み立てられた状態で円周溶接部26に図5に示すような凹みが必ず出来る。もちろん、これは段差であったり、異種材料であったりしても構わない。
なお、検出するものが、反射電子であっても、2次電子であっても、あるいはX線であっても、検出方法については大きな変化が無いので、これらの素子を検出対象とした検出方法を採用することを妨げない。
これによれば、円周溶接部26の幅cの間は反射電子コレクタ20に検出される電圧が低下し、平面部よりもdVだけ検出電圧が低下し、最も検出電圧が低くなるのが円周溶接部26の最も高さの低い部分、つまりワーク25のボスとシャフトがつき合わされている場所である。この位置を検出して現位置とし、座標データを保存する。
このようにして、反射電子コレクタ20でピークを検出し、制御装置12に伝えられるので、ピークの位置を座標データとし、第1走査位置31であれば、第1ポイント31aの座標(X1,Y1)、第2走査位置32であれば、第2ポイント32aの座標(X2、Y2)、第3走査位置33であれば、第3ポイント33aの座標(X3,Y3)、第4走査位置34であれば、第4ポイント34aの座標(X4、Y4)として、現位置の座標データが格納される。
これらによって求められた溶接中心P1である座標(X、Y)と溶接半径Rによって、補正溶接位置が決定される。
この位置は、検出装置の検出精度によって溶接精度が左右されるが、前述の反射電子センシング法等の方法であれば、かなり高精度に位置の検出が可能である。
このように、個々のワーク25対してセンシングを行い、溶接中心P1である座標(X、Y)及び溶接半径Rを求めることが出来るので、個々のワーク25に対して正確に溶接を行うことが可能となる。
図6に、本実施例の溶接位置補正方法を用いて、溶接をする際の模式図を示す。
位置検査の際、円周溶接部26より第1走査位置31、第2走査位置32、第3走査位置33、第4走査位置34に電子ビーム10を走査することで、円周溶接部26上の第1ポイント31a、第2ポイント32a、第3ポイント33a、第4ポイント34aを得ることができる。
そして、第1ポイント31a、第2ポイント32a、第3ポイント33a、第4ポイント34aより、上述の式から溶接中心P1と溶接半径Rを求め、円周溶接部26を短時間かつ高精度に特定することができる。
このようにして特定した円周溶接部26上に電子ビーム10を照射することで、精度よい溶接を実現することができる。
従って、本実施例の方法を用いて毎回位置検出し、毎回溶接位置補正を行うことは、製品の溶接品質を向上させ、歩留まりを少なくすることに繋がる。
実際に電子ビーム溶接で許容される芯ズレ量は、ワーク25をワーク固定台27にどのように固定するか、あるいは、ワーク25の製作精度そのもの等によっても異なるが、電子ビーム溶接を必要とするワーク25であれば、数mm程度の芯ズレ量であろう。
本実施例に係る補正方法では、電子ビーム溶接の際に用いられる電子ビームのスポット径に対し、電子ビームのセンシングに用いられる電子ビームのスポット径は小さく、溶接の際の1/5程度以下の電子ビームのスポット径でセンシングを行っている。
さらに、円の半径を補正することも必要となる。ワーク25は、嵌め合い精度で加工されたシャフトをボスと組み合わせ、円周溶接部26はシャフトとボスの突合せ面となることから、精度公差内での溶接半径Rのバラつきが発生する。ただし、嵌め合い精度公差内でのズレであるので、電子ビーム溶接時にこのバラつきのみが影響することは少ない。むしろ、ワーク25の芯ズレと合わせて溶接半径Rのバラつきがあると、ズレが大きくなってしまい、結局溶接に影響する。
従って、溶接半径Rと溶接中心P1の位置を補正することで、必要な円周溶接位置を求めることが可能となる。
短時間で円周溶接位置の溶接中心P1及び溶接半径Rを把握が出来ることで、ワーク25を全数検査して、個々のワーク25の設置精度によるワーク25の芯ズレが原因で起こる溶接位置ズレや、ワーク25の公差範囲内での精度のバラつきによる溶接位置ズレなどに対応して、最適な溶接位置に電子ビーム溶接を行うことが可能となる。
また、電子ビーム溶接の特徴である溶け込み深さが深く溶接強度の強い溶接が行え、ワーク25の溶接品質が向上し、ひいては溶接部品の歩留まり向上が期待できるからである。
さらに、走査する対象が少なくて済むことで、第1ポイント31a、第2ポイント32a、第3ポイント33a、第4ポイント34aの4点だけという少ないデータでの溶接位置の補正が可能であるので、大容量データを高速に処理できるような高価な制御装置を必要とせず、安価にシステムの構築が出来る。
したがって、生産コストを削減し、かつ短時間に電子ビームによる円周溶接位置の補正が可能となる。
したがって、安価に、高精度な電子ビームによる円周溶接位置の補正が可能となる。
このように、本発明に係る電子ビームを用いた円周溶接位置の補正方法によって、短時間で円周溶接の溶接位置補正が可能となるので、ワーク25の全数に対して溶接位置の補正ができ、安価にシステム構築が可能で、かつ精度の良いデータが得られるので、高精度な円周溶接の溶接位置補正が可能となり、ワークの溶接品質の向上とコストダウンを図ることができる。すなわち、電子ビームを用いた円周溶接の溶接位置補正を、高精度かつ短時間で行うことが出来るので、製品の生産コストの削減が見込める。
これは切削加工等によって作成されるシャフト側を固定する方法であっても、治具との間に隙間を持たせなければならないため、ボスを把持する場合よりも精度は良いが、ズレが生じることは避けられない。もちろん、三つ爪チャック等、中心を出して固定する方法もあるが、精度の良いものは固定に時間がかかる等の問題がある上、精度公差を吸収することは出来ないので、どうしてもズレは避けられない。
従って、溶接位置を短時間かつ高精度に補正して溶接が行えれば、このようなワーク25であっても、ある程度ラフにワーク25の固定を行ったとしても、溶接位置を最適な場所に補正して、溶接することが可能となる。
また、ワークを位置決めするためには、例えば鋳造やプレス品に溶接を行う場合、寸法のばらつきを無くすために、位置決め用に機械切削部分を設けたりする場合もあったが、高精度に溶接位置を検出できるようになることでこのような手間をかける必要も無くなる。
(1)円周部を持つ固定されたワーク25に、制御装置12に記憶された円周溶接位置の入力位置データ26aに基づいて電子ビーム溶接する際の、電子ビーム10による円周溶接位置の補正方法において、入力位置データ26aに基づいて、電子ビーム10をワーク25の円周部を横断するように少なくとも3箇所、本実施例においては4箇所に放射し、ワーク25の表面に電子ビーム10が当たることで、反射される電子線、又は放出される二次電子、又はX線のうち少なくとも1つを、反射電子コレクタ20にて検出し、反射電子コレクタ20にて検出した電子線、又は二次電子、又はX線のうち少なくとも1つの検出量の変化から、制御装置12が円周部上の点である現位置データの第1ポイント31a、第2ポイント32a、第3ポイント33a、及び第4ポイント34aを取得し、制御装置12が、現位置データから入力位置データ26aを補正した補正位置データである溶接中心P1及び溶接半径Rを算出し、補正位置データに基づいて、ワーク25を電子ビーム溶接することを特徴とする。従って、溶接位置補正を高精度かつ短時間に行うことが可能であり、精度よく最適な位置を溶接可能になるという優れた効果を奏する。
これによって、ワーク25の設置精度によるワーク25の芯ズレによる溶接位置ズレや、ワーク25の公差範囲内での精度のバラつきによる溶接位置ズレなどにより発生する、溶け込み不足などの溶接不良を解消することが可能になる。
次に高精度に円周溶接位置を補正するという点について、ワーク25をワーク固定台27に固定して、電子ビーム10を偏向させて、第1ポイント31a、第2ポイント32a、第3ポイント33a、第4ポイント34aの4点の現位置データを、反射電子法を用いて取得するので、機械的な誤差を含まない精度の良いデータが得られる。
例えば、面取りをしたワーク25をつき合わせて、或いは溶接用の開先が設けられたワーク25をつき合わせて電子ビーム溶接する場合に、電子ビーム10を照射する必要のある場所は、ワーク同士を付き合わせた界面となる。
従って、この位置に検出時スポット径に絞った電子ビームでセンシングをするので、精度の良い現位置データが得られ、また、検出された現位置データと実際の界面の位置とに、多少の誤差があったとしても、電子ビーム10の溶接時スポット径の範囲内に収まるため、現位置データによって位置補正が行われることにより、溶接に必要な精度は十分確保できることとなる。
例えば、円周溶接部26は連続的に溶接するのではなく、円周上を不連続にステップ溶接しても良いし、一部が欠けた円であっても、センシングするポイントを増やすことでその形状が確定できるならば、適用することを妨げない。例えば、半円状の形状であったとしても、直線部分に2箇所、円弧部分に3箇所センシングすれば、その形状、傾き等が特定される。このように、形状が複数点のセンシングによって確定できれば、本発明は適用しうる。
11 電源
12 制御装置
13 集束レンズ
14 陰極
15 陽極
16 真空チャンバ
18 偏向レンズ
20 反射電子コレクタ
25 ワーク
26 円周溶接部
26a 入力位置データ
27 ワーク固定台
31 第1走査位置
31a 第1ポイント
32 第2走査位置
32a 第2ポイント
33 第3走査位置
33a 第3ポイント
34 第4走査位置
34a 第4ポイント
P1 溶接中心
R 溶接半径
Claims (2)
- 円周部を持つ固定されたワークに、制御装置に記憶された円周溶接位置の入力位置データに基づいて電子ビーム溶接する際の、電子ビームによる円周溶接位置の補正方法において、
前記入力位置データに基づいて、前記電子ビームを前記ワークの前記円周部を横断して第1〜4走査位置の4箇所を90度ピッチでセンシングするように放射し、
前記ワークの表面に前記電子ビームが当たることで、反射される電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つを、検出装置にて検出し、
前記検出装置にて検出した前記電子線、二次電子、X線のうち少なくとも1つの検出量の変化から、前記制御装置が前記円周部上の点である現位置データを取得し、
前記制御装置が、前記現位置データから前記入力位置データを補正した補正位置データである溶接中心座標と溶接半径とを算出し、
前記補正位置データに基づいて、前記ワークを電子ビーム溶接することを特徴とする電子ビームによる円周溶接位置の補正方法。 - 請求項1に記載の電子ビームによる円周溶接位置の補正方法において、
前記検出に用いる電子ビームの検出時スポット径が、前記電子ビーム溶接に用いる電子ビームの溶接時スポット径よりも小径であることを特徴とする電子ビームによる円周溶接位置の補正方法。
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-
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