JP4664929B2 - 高強度マルテンサイト鋼 - Google Patents
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Description
マルテンサイト鋼の強度を確保するためには0.1%以上のCが必要である。鋼材はC含有率の増加に伴い高強度が得られるが、C含有量が多くなるに従い焼割れが生じ易くなるので、工業的には1.2%以下が望ましい。
焼入れた場合、焼入れままの組織はマルテンサイト,ベイナイトまたは残留オーステナイト等を含むが、マルテンサイト以外の組織の比率が大きくなれば強度は低下する。高強度ばねや高強度ボルト用鋼として適用する場合、金属組織の少なくとも80%以上がマルテンサイトであれば、要求される強度(例えば、ボルト用鋼では1200N/mm2級の強度)が確保できる。
V,Nb,Ti及びHfは任意の添加元素であり、微量の添加で析出物を形成して析出強化をもたらす。析出物は水素トラップサイトとしても作用し、さらにDHを低下させ、耐遅れ破壊特性を向上させる効果がある。但し、過度に添加すると析出物数が増加し、靭性を損なうため、夫々の元素の上限を0.2質量%とした。
Cr及び/又はMoも任意の添加元素であり、添加により焼入れ性を向上させ、また炭化物や窒化物を形成し析出強化をもたらす。但し、過度の添加は靭性を低下させるため、夫々上限を1.0質量%とした。
引張強度1400N/mm2を超える高強度鋼を実用化する上では、粒度の均整化に加えて、水素拡散係数を制御することが重要である。鋼中での水素の拡散が遅いほど、耐応力腐食割れ及び耐遅れ破壊特性に優れる。水素の拡散は、水素トラップサイトの導入により遅延化され、有効なトラップサイトとして炭化物,転位,粒界などが挙げられる。V,Nbなどの添加元素を用いずに水素をトラップするには、転位密度を高めることが非常に有効である。後記臨界冷却速度を調整することにより従来以上に転位密度を高めた組織を得ることができ、その結果DHが1.0×10-5cm2/s以下となって著しい靭性向上効果を得ることができる。
オーステナイト化処理前、500℃以下で少なくとも真ひずみを0.20以上、望ましくは0.35以上の加工を施す。従来は、線材であれば線径を整える(整寸)目的の低加工度伸線が普通で(わずかに特開平3−6981号公報に「引き抜きしたのち、10secを超えない時間内に所定の焼入れ温度900〜1050℃に急速加熱の上、…」との開示があるのみであり)、積極的に加工を施すものではない。本発明では、オーステナイト化処理前に積極的に強加工を施し、オーステナイト化処理時のオーステナイトの核生成サイトとなる欠陥を組織中に大量に導入しておくことで、オーステナイトの核生成が均一で微細に分散化されるようにするものである。即ち、結晶核が均一微細分散して生成することで、最終的な結晶粒度のばらつき低減を促進する効果がある。加工温度が500℃を超えると回復により組織中の欠陥密度が低下し、オーステナイト化時の核生成サイトが減少して、均一な核生成が得られなくなるため、加工温度の上限は500℃とした。なお、加工方法は圧延,伸線,その他の方法でも構わない。
オーステナイト化時、オーステナイトの核生成を均一微細分散させることを目的として加工により導入した高密度の欠陥を加熱温度まで維持するために、昇温速度は50℃/sec以上であることが必要である。昇温速度が50℃/sec未満では、昇温中に回復が進行し、加熱温度に達する前に欠陥密度が低下して、オーステナイト化時に均一な核生成が得られない。この様に、加熱温度まで高欠陥密度を維持するという意味で、昇温速度は大きい方がよく、100℃/sec以上であれば望ましい。
オーステナイト平均粒径が微細なほど靭性は向上するため、オーステナイト平均粒径を粗大化させないように、総加熱時間は、鋼材全体にわたりオーステナイト化が完了する必要最小限にすることが一般的である。但し、鋼材全体にわたりオーステナイト化が完了する程度の総加熱時間では、組織内部の加熱時間にばらつきがあり、整粒化されたオーステナイト結晶粒が得られない。オーステナイト結晶粒度の最頻値から3.0以上異なる結晶粒度を有するオーステナイト結晶粒の面積率を10%以下にするには、総加熱時間を20秒間以上とすることが必要であり、それによりオーステナイト結晶粒度が均整化される。また、40秒間以上になると結晶粒が成長し、平均のオーステナイト結晶粒度番号が7未満となり、靭性が低下するため、保持時間の上限は40sec未満に設定した。
冷却は通常の焼入れと同様に、臨界冷却速度CRcri以上で急冷し、マルテンサイト変態を起こさせればよいが、引張強度1200N/mm2級の強度レベルにおいて期待される靭性を確保するためには、臨界冷却速度CRcriの1.5倍以上の冷却速度で冷却することが必要である。更に、引張強度1400N/mm2級の強度レベルまで高強度化された鋼材において、期待される靭性を確保するためには、水素拡散係数DHを1.0×10-5cm2/s以下にする必要がある。DHを1.0×10-5cm2/s以下にするためには、マルテンサイトの転位密度を確保することが必要であるが、冷却速度がCRcriの2.0倍未満の場合、冷却中に自己焼戻しが生じ、転位密度が減少して、焼戻しで析出する炭化物が微細分散化されず、DHが1.0×10-5cm2/sより大きくなる。冷却速度をCRcriの2.0倍以上にすれば、高転位密度が確保され、DHを1.0×10-5cm2/s以下に制御でき、引張強度1400N/mm2級の高強度鋼においても期待される靭性が得られる。より優れた効果を発揮させるにはCRcriの3.0倍以上が望ましい。ただし、焼割れ防止を考慮すると、CRcriの4.0倍未満が望ましい。
2 試験片
Claims (4)
- 0.1質量%以上1.2質量%以下のCを含み、且つSiを0.55質量%以上1.75質量%以下及びMnを0.25質量%以上0.70質量%以下の範囲で、並びにCrを1.0質量%以下(0質量%を含まない)及び/又はMoを1.0質量%以下(0質量%を含まない)の範囲で含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、金属組織の80%以上がマルテンサイトであるマルテンサイト鋼であって、旧オーステナイト結晶粒度番号の平均値が7以上で、且つ最大頻度を有する粒度番号から3.0以上異なった粒度番号の旧オーステナイト粒が占める面積率が10%以下であり、且つ、
水素拡散係数D H が1.0×10 -5 cm 2 /s以下である
ことを特徴とする高強度マルテンサイト鋼。 - V≦0.2質量%,Nb≦0.2質量%,Ti≦0.2質量%及びHf≦0.2質量%よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項1に記載の高強度マルテンサイト鋼。
- Niを0.52質量%以下(0質量%を含まない)の範囲で含有する請求項1または2に記載の高強度マルテンサイト鋼。
- Bを0.0022質量%以下(0質量%を含まない)の範囲で含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度マルテンサイト鋼。
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