JP4663968B2 - Eg−vegf/プロキネチシン2−受容体アンタゴニスト - Google Patents
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Description
本発明は、EG-VEGF-/プロキネチシン2-受容体アンタゴニスト、及び子宮内膜疾患、例えば子宮内膜症、子宮内膜癌及び機能不全性出血を治療するための薬剤として、前記EG-VEGF-/プロキネチシン2-受容体アンタゴニストを使用することに関する。
【0002】
子宮内膜症は、生殖年齢の全ての女性のうちのほぼ2〜10%が罹患する、最も一般的な婦人科系疾患の1つである(Gazvani及びTempleton 2002, Reproduction 123, 217-226; Smith 2001, Trends Endocrinol. Metab. 12,147-151)。その原因は、主に腹腔内での子宮内膜組織の異所性埋没である。痛みやその他の多数の症状に加えて、多くの子宮内膜症患者は不妊である。不妊の理由はほとんど判っていない(Ryan 及び Taylor 1997, Obstet. Gynecol. Surv. 52, 365-371; Haney 1997, Reprod. Med. Rev. 6, 145-161)。
【0003】
現時点では子宮内膜症の治療に利用可能な原因療法はない。子宮内膜症の治療は、エストロゲン退縮のコンセプトに基づいて行われる。腹腔鏡検査又は開腹中に子宮内膜症病巣を除去又は破壊する侵襲的介入後、薬物療法が通常続いて行われる。この薬物療法はエストロゲン性減退を引き起こすことにより、残存してはいるがしかし検出不能な子宮内膜症病巣の増殖を少なくとも部分的に阻害する(Sillem 1998, Programmed(登録商標)23, 増補版1,1-28)。使用される医薬品は、部分的にはこれらの男性ホルモン性により、多くの副作用を有し、突発的な出血、更年期障害、骨欠乏を引き起こす。薬物療法は子宮内膜症の初期治療に効果的であることが証明されてはいるものの、今までのところ、高い再発率の減少にまでは達していない。
【0004】
子宮内膜癌は、西洋諸国において第4番目に一般的な形の癌である。診断段階を基準にして、5年後の生存率は27%〜88%である。主な原因はエストロゲンレベルの上昇であると見られる(Akhmedkhanov他、2001, Ann. N. Y. Acad. Sci. 943, 296-315)。エストロゲンレベルが上昇する結果、子宮内膜の細胞の増殖が増大し、このことはDNA複製のエラーと体細胞変異とを引き起こすおそれがあり、最終的には悪性腫瘍をもたらすおそれがある。他の腫瘍と同様に、脈管形成が、子宮内膜癌の臨床像において主要な役割を演じる。いくつかの研究において、脈管化の増大及び血管内皮成長因子VEGF(vascular endothelial growth factor)及びその受容体の過剰発現が注目されている(Abulafia他, 1999, Gynecol. Oncol. 72, 220-231)。
【0005】
現在、子宮内膜癌を治療するのには、いくつかの療法がある。抗エストロゲンは良好な結果を示すが、しかし、細胞成長防止剤又は放射線を伴う付加的な治療もしばしば実施しなければならない。
【0006】
女性の約10%は、子宮内膜の血管の変化に起因する、月経中の多量出血に定期的に苦しむ。このような女性の子宮内膜中には、内皮細胞の増殖率の上昇が検出された(Kooy 1996, Hum. Reprod. 11, 1067-1072)。さらに、血管の構造的な相違、例えば、平滑筋細胞層の不完全な形成が観察された(Abberton他, 1999, Hum. Reprod. 14, 1072-1079)。月経中の血液損失は血管の収縮によって部分的に制御されるので、このことは、平滑筋の欠陥が出血に有意に関与することを示唆する。
【0007】
手術介入(子宮切除)に加えて、薬物療法を行うこともできる。この場合、ステロイドホルモンも使用される。これに加えて、非ステロイド系抗炎症性物質が使用される。前記物質はきわめて効果的であるが、しかし多くの副作用を有するので、これらの物質は比較的短時間にわたってしか使用することができない(Irvine及びCameron 2000, Baillieres Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol. 13, 189-202)。
子宮内膜の疾患を特異的に治療可能にする新しい治療法及び物質を見出すことが急務である。本発明は、新しい薬物療法の標的物質としてEG-VEGF、プロキネチシン2及び対応受容体を使用する新しい治療法により、問題を解決する。
【0008】
プロキネチシン1とも呼ばれるEG-VEGF{endocrine gland derived vascular endothelial growth factor(内分泌線由来の血管内皮成長因子)}は、副腎のアドレナリン様皮質に由来する、内皮細胞に対して特異的な成長因子として既に記載されている。このEG-VEGFの発現は、卵巣、精巣、胎盤及び副腎において検出された(LeCouter他, 2001, Nature 412, 877-884)。さらに、消化管の平滑筋に対する収縮効果が検出された(Li他, 2001, Mol. Pharmacol. 59, 692-698)。
【0009】
国際公開第02/00711号パンフレット(Genentech, Inc)において、EG-VEGFポリペプチドの核酸配列及び対応アミノ酸配列が開示されており、また、ホルモン産出組織(例えば卵巣)と関連する疾患の治療にこれらの配列を使用することが開示されている。EG-VEGF及びプロキネチシン2(Bv8とも呼ばれる)は、同じ群に属する:これらは60%の同一性を有し、75%だけ類似している。両蛋白質は、10個のシステインラジカルを含む保存領域を有している (Wechselberger他,1999, FEBS Lett. 462, 177-181)。
【0010】
プロキネチシン2の発現は、ほとんど専ら精巣内及び脳内で検出された(Wechselberger他,1999, FEBS Lett. 462, 177-181; LeCouter他, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 2685-2690)。プロキネチシン2は、精巣内で脈管形成 (LeCouter他、2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 2685-2690)、消化管の平滑筋の収縮を促進し(Li他, 2001, Mol. Pharmacol. 59, 692-698)、脳のキアスマ上核の日/夜サイクルを媒介する(Cheng他, 2002, Nature 417, 405-410)。子宮内膜におけるEG-VEGF又はプロキネチシン2の意味は、詳細には考察されていない。子宮内膜疾患のEG-VEGF又はプロキネチシン2の役割は、これまで知られていなかった。
【0011】
本発明において、EG-VEGFが子宮内膜において発現させられ、サイクルのいわゆる着床ウィンドウ(implantation window)において増加することを示すことができた(図5及び6)。半定量及び定量により、ヒトの子宮内膜に由来するmRNAが3つの臨床研究グループに関して比較された。これらの研究結果は、健康な女性において、グループb(着床ウィンドウ開放時)のEG-VEGFのmRNAが、グループa(着床ウィンドウが開かれる前)の対照グループと比較して上昇する(upregulate)ことを示した。グループc(子宮内膜症患者)においても、EG-VEGFのmRNA量が上昇することが判った。
【0012】
G-蛋白質にカップリングされた2つの関連受容体(GPR73a及びGPR73b)にEG-VEGF又はプロキネチシン2を結合すると、受容体が活性化される。EG-VEGFポリペプチド及びプロキネチシン2ポリペプチドのこれらの生理的な結合相手は、最近になってようやく同定され、特徴づけされた(Lin他, 2002, J. Biol. Chem. 277, 19276-19280)。受容体により媒介される効果は、EG-VEGF及びプロキネチシン2の生物学的効果にとって重要である、EG-VEGF及びプロキネチシン2の生物学的効果は、病理学的な子宮内膜疾患にとって重要である。
【0013】
本発明において、種々の子宮内膜症患者に由来する障害におけるEG-VEGF、プロキネチシン2及びEG-VEGF受容体GPR73aの発現が、健康な組織におけるよりも有意に高いことを示すことができた(図7)。
さらに、GPR73aの新しいヒト・スプライス変異型を同定することができた(図4)。この変異型のRNAは付加的なエキソンを含有する。しかしこのエキソンはストップコドンを含有し、ひいては、短縮された蛋白質をもたらす。短縮された受容体は、第3の膜貫通ドメインまでしか進まず、したがって、信号伝達を媒介できないはずである。この受容体は、リガンドを除去する(scavenge)か、又はヘテロ二量体に結合する、GPR73a又はGPR73bの支配的-ネガティブな阻害物質であると云える。
【0014】
一方では、成長因子EG-VEGF又はプロキネチシン2とEG-VEGF受容体との結合を阻害し、又は、EG-VEGFポリペプチド又はプロキネチシン2ポリペプチドを直接的に阻害することにより、EG-VEGF又はプロキネチシン2の生物学的機能が抑制される。このような阻害作用により、上述の疾患を特異的に治療することが可能になる。本発明は、このような特異的治療のための薬剤を提供する。
【0015】
したがって本発明は、薬剤組成物の使用であって、該薬剤組成物が、子宮内膜の疾患、特に子宮内膜症、子宮内膜癌又は機能不全性出血を治療又は予防する医薬品を製造するために、有効成分として、EG-VEGF核酸又はプロキネチシン2核酸と、EG-VEGFポリペプチド又はプロキネチシン2ポリペプチドと、EG-VEGFに対する抗体又はプロキネチシン2に対する抗体と、EG-VEGF-アンチセンス核酸又はプロキネチシン2-アンチセンス核酸と、EG-VEGF/プロキネチシン2受容体と、EG-VEGF/プロキネチシン2受容体-アンチセンス核酸と、EG-VEGF/プロキネチシン2受容体に対する抗体とから成る群から選択された物質を含有している、薬剤組成物の使用に関する。
【0016】
EG-VEGF核酸は、DNA、cDNA及びRNA、又はこれらの部分を含んでいる。DNA配列及び蛋白質配列を図1に示す。EG-VEGF核酸は好ましくはDNAである。
プロキネチシン2核酸は、DNA、cDNA及びRNA、又はこれらの部分を含んでいる。DNA配列及び蛋白質配列は、寄託番号NM_021935で遺伝子バンクのデータベースに記載されている。プロキネチシン2核酸は好ましくはDNAである。
EG-VEGF/プロキネチシン2-受容体-核酸は、DNA、cDNA及びRNA、又はこれらの部分を含んでいる。DNA配列及び蛋白質配列を図2及び3に示す。新しいスプライス変異型のDNA配列及び蛋白質配列を図4に示す。EG-VEGF/プロキネチシン2-受容体-核酸は好ましくはDNAである。
【0017】
EG-VEGFポリペプチドは、配列全体として、またこれらの部分として定義づけされる。
プロキネチシン2ポリペプチドは、配列全体として、またこれらの部分として定義づけされる。
EG-VEGF-アンチセンス核酸は、EG-VEGFのmRNAに対して相補的なDNA及び/又はRNAである。EG-VEGF-アンチセンス核酸は、相補配列全体又は部分配列を含むことができる。
【0018】
プロキネチシン2-アンチセンス核酸は、プロキネチシン2のmRNAに対して相補的なDNA及び/又はRNAである。プロキネチシン2-アンチセンス核酸は、相補配列全体又は部分配列を含むことができる。
EG-VEGF/プロキネチシン2-受容体-アンチセンス核酸は、EG-VEGF/プロキネチシン2-受容体のmRNAに対して相補的なDNA及び/又はRNAである。EG-VEGF/プロキネチシン2-受容体-アンチセンス核酸は、相補配列全体又は部分配列を含むことができる。
【0019】
EG-VEGF、プロキネチシン2又はEG-VEGF/プロキネチシン2-受容体に対する抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよい。この抗体は、EG-VEGF、プロキネチシン2又はEG-VEGF/プロキネチシン2-受容体、又はこれらのフラグメントに対する抗体であってよい。このような抗体は、実験動物の免疫化による標準的な方法に従って得ることができる。
【0020】
本発明の薬剤組成物は、一般的に使用される固形又は液状のビヒクル又は希釈剤、及び、一般的に使用される製薬的かつ技術的なアジュバントを用いて、当業者に良く知られている方法で、好適な容量と共に所望の投与タイプに応じて製造される。錠剤は例えば、有効成分を周知のアジュバント、例えば不活性希釈剤(例えばデキストロース、糖、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルピロリドン)、分散剤(explosives)(例えばコーンスターチ又はアルギン酸)、バインダ(例えば澱粉又はゼラチン)、滑剤(例えばカルボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート又はポリビニルアセテート)と混合することにより得ることができる。有効成分を含有するカプセルは、例えば有効成分を不活性ビヒクル(例えばラクトース又はソルビトール)と混合し、ゼラチンカプセル内に封入することにより、製造することができる。
【0021】
本発明による薬剤組成物は、好適な溶液、例えば一般的な生理食塩水中で使用することもできる。
非経口投与の場合、特に油性溶液、例えばごま油、ひまし油及び綿実油の溶液が好適である。溶解性を増大するために、可溶化剤、例えばベンジルベンゾエート又はベンジルアルコールを添加することができる。
本発明による薬剤組成物は、子宮内膜症及び子宮内膜癌を診断するのに使用することもできる。この場合、例えば、ELISA試験又は蛋白質チップによって、EG-VEGF又はプロキネチシン2の量が見極められる。EG-VEGF又はプロキネチシン2の発現量の上昇は、子宮内膜症又は子宮内膜癌の存在を示す。
【0022】
さらに、本発明は、遺伝子治療剤として薬剤組成物を使用することにより採用することができる。このことと関連して、EG-VEGF又はプロキネチシン2の効果は、遺伝子治療の利用によってブロックされる。この場合、EG-VEGF-アンチセンス配列又はプロキネチシン2-アンチセンス配列、又はEG-VEGF/プロキネチシン2-受容体-アンチセンス配列を含有するベクターが構成され、適用される。その一例は、アデノウィルス、アデノウィルス関連ウィルス、単純ヘルペスウィルス又はSV40に由来するベクターである。
【0023】
遺伝子治療は、既に記載されているように実施することができる(Gomez-Navarro他, 1999, Eur. J. Cancer, 35, 867-885)。投与は局所的、すなわち直接的に子宮内に行うか、又は全身的に、すなわち血液循環を介して行うことができる。その結果として、子宮内膜におけるEG-VEGF、プロキネチシン2又はEG-VEGF/プロキネチシン2の受容体の発現がブロックされることになる。その結果、EG-VEGF又はプロキネチシン2の生物学的機能が阻害される。
【0024】
遺伝子治療における別の用途は、GPR73a-スプライス変異型の配列を含有するベクターが構成され適用されることにある。その一例は、アデノウィルス、アデノウィルス関連ウィルス、単純ヘルペスウィルス又はSV40に由来するベクターである。遺伝子治療は、既に記載されているように実施することができる(Gomez-Navarro他, 1999, Eur. J. Cancer, 35, 867-885)。投与は局所的、すなわち直接的に子宮内に行うか、又は全身的に、すなわち血液循環を介して行うことができる。その結果として、子宮内膜におけるEG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73a及び/又はGPR73bの発現がブロックされることになる。その結果EG-VEGF又はプロキネチシン2によって誘発される信号伝達が早期に停止されることになる。
【0025】
本発明はまた、子宮受容性の検出のために、本発明による薬剤組成物を使用することに関する。子宮受容性は、胚盤胞の着床の成功のための要件である。このような沈着は短時間、つまりいわゆる着床ウィンドウの期間にのみ実施され得る。この着床ウィンドウはヒトの場合、中間分泌期、従って排卵から7〜9日後に開かれる。本発明は、EG-VEGF発現量が着床ウィンドウ開放時に上昇する(upregulate)ことを示すので、体外受精によって受精された卵細胞の導入に適した時機を、EG-VEGF mRNA又はEG-VEGFポリペプチドの量を測定することにより見極めることができる。この測定は、ノーザンブロット、PCR又はチップ・ハイブリダイゼーション、又は免疫試験によって行われる。
【0026】
さらに本発明は、子宮受容性を検出する方法であって、EG-VEGFポリペプチドの量及び/又はEG-VEGF核酸の量を、本発明による薬剤組成物を用いて見極める、子宮受容性を検出する方法に関する。先ず、女性から血液又は子宮内膜試料を採取し、次いで、EG-VEGF mRNA又はEG-VEGFポリペプチドの量を見極める。
【0027】
本発明は、EG-VEGF又はプロキネチシン2の効果に影響を与える物質を同定するために、本発明による薬剤組成物を使用することに関する。エフェクタは、EG-VEGFポリペプチド又はプロキネチシン2ポリペプチドに結合することにより、又は、生理学的結合相手との結合に関してEG-VEGFポリペプチド又はプロキネチシン2ポリペプチドと競合することにより、EG-VEGFポリペプチド又はプロキネチシン2ポリペプチドの生物学的活性に影響を与える物質である。エフェクタは、好ましくは受容体スプライス変異型に結合し、ひいてはGPR73a又はGPR73bの機能を調節又は阻害する物質であってもよい。
【0028】
エフェクタは低分子物質であるか、又はペプチド又は蛋白質、例えば抗体であってよい。別のエフェクタとしては、空間的な構造に基づいて標的分子と特異的に結合可能であり、ひいてはリガンドとその受容体との相互作用を阻止可能なスピーゲルマー又はアプタマーのような核酸も可能である。このようなエフェクタを同定するために、EG-VEGF/プロキネチシン2受容体を発現させる細胞が、EG-VEGF又はプロキネチシン2で処理される。その結果、細胞内のカルシウムレベルが変化し、このカルシウムレベルが測定される。アンタゴニストは、カルシウム流入を阻止することができる物質である。
【0029】
さらに、ヘテロ二量体化を選択的に引き起こし、ひいてはEG-VEGF又はプロキネチシン2によって誘発される信号をブロックする物質を求めるために、受容体スプライス変異型をGPR73a又はGPR73bと一緒に共発現させることができる。EG-VEGF/プロキネチシン2アンタゴニストのスクリーニングのためのその他の検出システムを利用することもできる。
【0030】
【実施例】
例 1.半定量 RT-PCR 分析による、子宮内膜試料中の EG-VEGF-RNA 量の測定
1. グループa(LHプラス2〜4日):排卵が黄体化ホルモン(LH)の放出によって誘発されてから2〜4日後、子宮内膜は胚に対してまだ受容性を有していない。このグループは、卵管閉塞のため、又は男性の不妊のためにIVFプログラムに参加していて、正常な子宮内膜を有している女性患者から成る。
【0031】
2. グループb(LHプラス7〜9日):この時点で、「着床ウィンドウ」が開き、子宮内膜は、胚盤胞の沈着に対して受容性を有する。「着床ウィンドウ」が開くことにより、胚の着床に本質的な役割を果たす蛋白質産物を有する遺伝子の発現又は阻害が予期される。
3. グループc(LHプラス7〜9日プラス子宮内膜症):この時点で、健康な女性の場合には着床ウィンドウが開かれる。しかしこのグループの患者は未知の理由から不妊であり、子宮内膜症であった。
【0032】
2つのグループ、LH+2-4/妊娠可能(a)及びLH+7-9/妊娠可能(b)に属する患者から、子宮内膜を取り出し、液体窒素中で急速凍結した。ここからRNeasy Kit(Qiagen)を用いて、総RNAを分離した。次いでDNアーゼ-I-消化(invitrogen)を行った。5.7μgの総RNAで始めて、次いで第1鎖合成をstratageneのProSTAR First-Strand RT-PCRキットで実施した。EG-VEGF量の半定量に際して、0.5μlの第1鎖DNA及び特異的プライマをEG-VEGFに対して使用した(5'-TCAATCATGCTCCTCCTAGTAACTGTG-3'及び5'-AAGTCCATGGAGCAGCGGTAC-3')。
【0033】
PCR条件は、2分間、94℃;20秒間、94℃;20秒間、65℃;40秒間、72℃(40サイクル);10分間、72℃であった。内部対照として、S9-RNAを増幅した(プライマ:5'-AGGACCCACGGCGTCTGTTCG-3'及び5'-ATCCAGCAGCCCAGGAGGGAC-3')。PCR条件は、2分間、94℃;20秒間、94℃;20秒間、60℃;40秒間、72℃(24サイクル);10分間、72℃であった。反応後、増幅産物を2%アガロースゲル上に分離し、臭化エチジウムで染色した。バンド強度をGelDoc装置で測定した(図5)。
【0034】
例 2.リアルタイム定量 RT-PCR 分析による、子宮内膜試料中の EG-VEGF-RNA 量の測定
3つのグループ、LH+2-4/妊娠可能(a)、LH+7-9/妊娠可能(b)及びLH+7-9/子宮内膜症(c)に属する患者から、子宮内膜を取り出し、液体窒素中で急速凍結した。液体窒素下で「乳鉢(mortars)」によって粉砕された組織から、TRIZOL(invitrogen)によって、総RNAを分離した。5μgの総RNAから始めて、先ずDNアーゼI-消化(invitrogen)を、次いで第1鎖合成を、RT-PCRのためのSUPER-SCRIPT II第1鎖合成システム(invitrogen)を用いて実施した。
【0035】
相対定量化のために転写物を増幅するのに際して、0.125μlの第1鎖DNAを使用した。特異的プライマ対(EG-VEGF:5'-CTTCTTCAGGAAACGCAAGCA-3'及び5'-CGGGAACCTGGAGCACAG-3';カルシトニン:5'-CAACTTTGTGCCCACCAATGT-3'及び5'-GAGTCATTCAGCTGCTCAGGC-3';白血病抑制因子(LIF):5'-CTAGTTCCCCACCTCAATCCC-3'及び5'-AAGGCCATGTGCTTTTCAGTG-3')及びSYBR Green PCR Master Mix (PE Biosystems)を使用することにより、下記のPCR条件下で増幅を行った:10分間、95℃;15秒間、95℃;1分間、60℃ (40サイクル)。
【0036】
内部対照として、サイトクロムオキシダーゼのサブユニット1Aに関してRNAを増幅した(プライマ:5'-CGTCACAGCCCATGCATTTG-3'及び5'-GGTTAGGTCTACGGAGGCTC-3')。ABI Prism 7700配列検出器(PE Biosystems)によってオンラインで、増幅産物の増大に関して、蛍光発光を尺度として測定を行った。増幅産物の純度を融解曲線をプロットすることにより検査した(図6)。
【0037】
例 3.女性患者の傷害における、 EG-VEGF 、プロキネチシン 2 及び EG-VEGF 受容体 (GPR73a) の RNA 量の測定
組織を取り出したあと、この組織を液体窒素中で急速凍結した。液体窒素下で「乳鉢(mortars)」によって粉砕された組織から、TRIZOL(invitrogen)によって、総RNAを分離した。オリゴ-dTセルロース(Pharmacia)を使用することにより、バッチ法において、ポリA+-RNAを濃縮した。100-400ngのポリA+-RNAから始めて、第1鎖合成を、RT-PCRのためのSUPER-SCRIPT II第1鎖合成システム(invitrogen)を用いて実施した。
【0038】
相対定量化のために転写物を増幅するのに際して、0.25μlの第1鎖DNAを使用した。特異的プライマ対(EG-VEGF:5'-CTTCTTCAGGAAACGCAAGCA-3'及び5'-CGGGAACCTGGAGCACAG-3';EG-VEGF受容体GPR73a:5'-ATTGACAGGTATCTGGCTATTGTCC-3'及び5'-CCAAGGCAATCAGGCCAGT-3');対応するTaqMan試料(EG-VEGF:5'-TET-ACACCTGTCCTTGCTTGCCCAACC-TAMRA-3');EG-VEGF受容体GPR73a:5'-FAM-CTGAGACCACGGATGAAGTGCCAAACA-TAMRA-3')及びTaqMan PCR Master Mix (PE Biosystems)を使用することにより、下記のPCR条件下でマルチプレックスPCRとして増幅を行った:2分間、50℃;10分間、95℃;15秒間、95℃;1分間、62℃(40サイクル)。
【0039】
内部対照として、シクロフィリンに関してRNAを増幅した(プライマ:5'-GAAGTTGGCCGCATGAAGA-3'及び5'-GCCTAAAGTTCTCGGCCGT-3';試料:5'-VIC-CGAGCTCTTTGCAGACGTTGTGCCT-TAMRA-3')。ABI Prism 7700配列検出器(PE Biosystems)によってオンラインで、増幅産物の増大に関して、蛍光発光を尺度として測定を行った。
【0040】
プロキネチシン2-RNAの相対定量化のために、ポリA+-RNAから始めて、0.5μlの第1鎖DNAを使用した。特異的プライマ対(5'-CTCCTGTCATGGCACGGAA-3'及び5'-AGCCCAACAGCAGAGCTGAA-3')及びSYBR Green PCR Master Mix(Eurogentec)を使用することにより、下記のPCR条件下で増幅を行った:2分間、50℃;10分間、95℃;15秒間、95℃;1分間、60℃(40サイクル)。内部対照として、RNAをシクロフィリンに関して増幅した(図7)。
【0041】
例 4.EG-VEGF/ プロキネチシン 2 受容体の受容体アンタゴニストをトレースする試験システム
EG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73a、GPR73b又はGPR73aのスプライス変異型を一時的又は安定的に発現させる細胞系(例えばCHO又はHEK)を確立する。リガンドを付加した後、物質データベースをチェックして、リガンド結合を置換する物質を見出す(結合アッセイ)。あるいは、機能アッセイを実施する。例えばエクオリンに基づくルミネセンス・アッセイにより、リガンドによって引き起こされるカルシウム放出量を測定する。この場合、細胞中でエクオリンに対応する発現プラスミドが同時貫通(co-transfix)される。エクオリンは、放出されたカルシウムによって結合され、その結果、発光を増大させる。受容体アンタゴニストによるこのような活性の阻害作用は、試験のための測定変数として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ヒトEG-VEGFのDNA及び蛋白質の配列を示す。
【図2】図2は、ヒトEG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73a(2a)のDNA及び蛋白質の配列を示す。
【図3】図3は、ヒトEG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73b(2b)のDNA及び蛋白質の配列を示す。
【図4】図4は、ヒトEG-VEGF/プロキネチシン2受容体の新しいスプライス変異型GPR73a(2c)のDNA及び蛋白質の配列を示す。
【図5】図5は、RT-PCR法によって検出される、子宮内膜中のEG-VEGFからのRNAの発現を示す。グループa(LH+2-4)と比較して、グループb(LH+7-9/妊娠可能)におけるヒトEG-VEGF遺伝子が増加する(upregulate)ことが明らかである。EG-VEGFに対して特異的な「プライマ」を使用した。内部対照として、アンチセンスS9を増幅した。PCR増幅後、産物をアガロースゲル上に分離し、臭化エチジウムで染色した。バンド強度を量化した。グループaは、着床ウィンドウ開放前のグループであり、グループbは、健康な女性における、着床ウィンドウ開放時のグループであり、LHは黄体形成ホルモンであり、2〜4又は7〜9は期間(日)である。
【図6】図6は、TaqMan法により検出される、子宮内膜中のEG-VEGFからのRNAの発現量を示す。グループa(LH+2-4)と比較して、グループb(LH+7-9/妊娠可能)及びグループc(LH+7-9/子宮内膜症)におけるヒトEG-VEGF遺伝子が増加する(upregulate)ことが明らかである。EG-VEGFに対して特異的な「プライマ」を使用した。さらに、着床ウィンドウ開放時点で周知のように増加する(upregulate)2種の遺伝子、LIF及びカルシトニンmRNAの量を測定した。PCR産物の量をSyberGreenで染色することにより測定した。mRNAの全量をアクチンmRNAの量に合わせた。グループaは、着床ウィンドウ開放前のグループであり、グループbは、健康な女性における、着床ウィンドウ開放時のグループであり、グループcは、子宮内膜症患者における、着床ウィンドウ開放時のグループであり、LHは黄体形成ホルモンであり、2〜4又は7〜9は期間(日)である。
【図7】図7は、子宮内膜症に罹った患者に由来し、TaqMan法により検出された障害におけるEG-VEGF及びEG-VEGF受容体GPR73a(ここではEG-VEGF R1と呼ぶ)のRNAの発現量を示す。相対的なmRNA発現量をシクロフィリン-mRNAの量に合わせた。女性患者#DF31h1, DF33h1及びDF26h1において、組織は健康な対照患者の正常位置発生組織 (白いバー)であり、子宮内膜症患者AV103, AV104, FC108及びDF51の試料は、子宮内膜(正常位置、h1;グレイのバー)又は異所性の障害(e1又はe3;黒のバー)に由来する。健康な組織と比較して、種々異なる障害においてGPR73a(EG-VEGF R1)に対応するヒト遺伝子が増大する(upregulate)ことが明らかである。GPR73a(EG-VEGF R1)に対して特異的な「プライマ」を使用した。対照として、精巣及び子宮内膜におけるGPR73a (EG-VEGF R1)-RNAの量を測定した。PCR産物の量をSyberGreenで染色することにより測定した。
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- 子宮受容性を検出するための薬剤組成物であって、該薬剤組成物が、有効成分として、EG-VEGEポリペプチドに対する抗体、又はEG-VEGF-アンチセンス核酸を含有していることを特徴とする、薬剤組成物。
- 子宮内膜症の診断のための薬剤組成物であって、該薬剤組成物が、有効成分として、EG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73aのアンチセンス核酸、又はEG-VEGF/プロキネチシン2受容体GPR73aに対する抗体を含有していることを特徴とする、薬剤組成物。
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