JP4662246B2 - 膨張機 - Google Patents

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本発明は、ガスを膨張させる膨張機に関する。
現在、冷凍装置の冷媒として二酸化炭素を用いることが検討されているが、エネルギー効率の面から、膨張装置として膨張機を用いることが検討されている。
膨張機と圧縮機とは、構造的には共通するため、従来圧縮機として用いられてきた構造を膨張機として利用することができる。
ところで、ベーン式圧縮機を膨張機として用いる場合には、以下のような問題が発生する。以下に図面を用いて説明する。
図6は、ベーン枚数を変更した場合の供給ポート角度と膨張比との関係を示す特性図、図7は、図6の特性図に用いた膨張機の基本構成を示す説明図である。
図7に示すように、シリンダ半径RCを40.0mm、ロータ半径RRを32.0mm、ベーン傾き角度DWAAを36.4度、シリンダ厚Hを36.0mm、ベーン厚TDを5.0mmとして計算を行った。計算においては、流入ポート角度DWBを10〜45度、ベーン枚数を4、5、6、及び8枚で行った。
上記条件で行った結果が図6である。
図6に示すように、膨張比を大きくとって、不足膨張による損失を低減するためには、ベーン枚数を増やして流入ポート角度を小さくすることが有効である。
次に、供給部における供給隙間と圧力損失との関係を図8と図9を用いて説明する。
図8は、供給隙間δと圧力損失との関係を示す特性図、図9は、図8の特性図における供給隙間δを示す説明図である。
図8に示すように、供給隙間δが0.1mm以下では急激に圧力損失が大きくなってしまうことが分かる。
図10から図12は、P−V特性図を示し、図10は回転数Nが1550rpmの場合のP−V特性図、図11は回転数Nが1960rpmの場合のP−V特性図、図12は回転数Nが2500rpmの場合のP−V特性図である。
図12に矢印で示す箇所が供給圧力損失を示している。図10から図12に示すように回転数が上昇するに従って、供給過程における圧力降下が大きくなる。
そこで本発明は、ベーン枚数を増やして流入ポート角度を小さく構成しても供給圧力損失が少ない膨張機を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明の膨張機は、内部に空間を形成するシリンダと、前記シリンダ内部の前記空間で回転する円筒状のロータと、前記ロータに有するベーン溝内を摺動するベーンと、前記ロータの端面と前記シリンダの端面とを封鎖する端板と、前記シリンダと前記ロータとの間に形成される膨張空間にガスを供給する供給ポートと、前記膨張空間から前記ガスを排出する吐出ポートとを備え、前記ベーンによって前記膨張空間を複数の膨張室に区分し、前記供給ポートから供給したガスを前記膨張室にて膨張させて前記吐出ポートから排出する膨張機であって、前記ロータには前記膨張空間に開口する所定長さのロータ側連通路を形成し、前記端板には前記供給ポートに導かれる前記ガスの通路と連通する端板側連通路を形成し、前記膨張室が前記供給ポートに連通して供給行程にあるときには、前記ロータ側連通路と前記端板側連通路が連通して、当該端板側連通路と前記ロータ側連通路を介し前記供給ポートとともに当該供給ポートと連通している前記膨張室にガスを供給する構成とし、前記膨張室が膨張行程にあるときには、前記ロータ側連通路と前記端板側連通路とは連通しない構成としたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の膨張機において、前記ロータ側連通路は、前記ロータの端面に形成された溝によって形成し、前記端板側連通路は、前記溝が形成された側の前記ロータの端面を封鎖する側の前記端板の端面に形成したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の膨張機において、前記ベーンを等間隔に複数個配置し、前記ロータ側連通路をそれぞれの隣り合う前記ベーン間に配置したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の膨張機において、前記ベーン溝の長さよりも前記ロータ側連通路の長さを短く形成したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の膨張機において、前記ロータ側連通路と前記端板側連通路との連通を、前記供給行程の開始からの所定時間又は前記供給行程の終了前の所定時間において行う構成としたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項3に記載の膨張機において、前記ベーン溝と前記ロータ側連通路とを、前記ロータの中心に対して放射状に配置したことを特徴とする。
本発明によれば、供給圧力損失が少なく、高速回転時にも高効率で運転を行うことができる。
本発明の第1の実施の形態による膨張機は、ロータには膨張空間に開口する所定長さのロータ側連通路を形成し、端板には供給ポートに導かれるガスの通路と連通する端板側連通路を形成し、膨張室が供給ポートに連通して供給行程にあるときには、ロータ側連通路と端板側連通路が連通して、当該端板側連通路とロータ側連通路を介し供給ポートとともに当該供給ポートと連通している膨張室にガスを供給する構成とし、膨張室が膨張行程にあるときには、ロータ側連通路と端板側連通路とは連通しない構成としたものである。本実施の形態によれば、供給行程において、供給ポート以外にロータ側連通路からもガスを導入することができるため、供給圧力損失が少なく、特に高速回転時にも高効率で運転を行うことができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による膨張機において、ロータ側連通路は、ロータの端面に形成された溝によって形成し、端板側連通路は、溝が形成された側のロータの端面を封鎖する側の端板の端面に形成したものである。本実施の形態によれば、ロータ側連通路をロータの端面に、端板側連通路を端板の端面に形成するために、加工を容易に行うことができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による膨張機において、ベーンを等間隔に複数個配置し、ロータ側連通路をそれぞれの隣り合うベーン間に配置したものである。本実施の形態によれば、ベーン枚数を増やしてもロータ側連通路の形成を容易に行うことができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による膨張機において、ベーン溝の長さよりもロータ側連通路の長さを短く形成したものである。本実施の形態によれば、ベーンに背圧を付与するための背圧供給路と干渉しない位置に、シリンダ側連通路を形成することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による膨張機において、ロータ側連通路と端板側連通路との連通を、供給行程の開始からの所定時間又は供給行程の終了前の所定時間において行う構成としたものである。本実施の形態によれば、特に供給行程の初期又は後期における圧力損失を低減することができる。
本発明の第6の実施の形態は、第3の実施の形態による膨張機において、ベーン溝とロータ側連通路とを、ロータの中心に対して放射状に配置したものである。本実施の形態によれば、ベーン溝とロータ側連通路とを容易に加工することができる。
以下本発明の一実施例による膨張機について説明する。
図1から図4は本実施例による膨張機の要部平面図であり、図1は一つの膨張室の供給完了状態を示す平面図、図2は次の膨張室が供給行程にあることを示す平面図、図3は同膨張室の供給行程終了直前の状態を示す平面図、図4は同膨張室の供給完了状態を示す平面図である。図5は同膨張機の側断面図である。
まず本実施例による膨張機の構成について説明する。
図1から図4に示すように本実施例による膨張機は、内部に空間を形成するシリンダ10と、シリンダ10の内部の空間で回転運動する円筒状のロータ20とを備えている。シリンダ10とロータ20との間には膨張空間11を形成している。ロータ20には、放射状に形成された複数のベーン溝21を有している。そしてこれらのベーン溝21には、ベーン溝21内を摺動する複数のベーン22が配置されている。
これらのベーン22は、膨張空間11を複数の膨張室11A、11Bに区分している。図においては、10個のベーン22によって10個の膨張室11A、11B・・に区分している。シリンダ10には、これらの膨張室11A、11Bにガスを供給する供給ポート12が設けられている。
それぞれの隣り合うベーン22間には、ロータ側連通路23が配置されている。このロータ側連通路23は、ロータ20の一方の端面に形成した所定長さの溝によって形成され、ベーン溝21とともに、ロータ20の中心に対して放射状に配置している。ロータ側連通路23の長さは、ベーン溝21の長さよりも短く形成している。
図1から図4に示す吐出ポート31と端板側連通路32とは、図5に示す端板30に設けられている。吐出ポート31は膨張空間11からガスを排出する空間である。端板側連通路32は、所定長さの円弧状の溝によって形成されている。
図5に示すように、ロータ20の両端面とシリンダ10の両端面とは、一対の端板30によって封鎖されている。端板側連通路32は端板30の端面に形成され、供給ポート12に導かれるガスが連通する通路34が端板30内に形成されている。端板側連通路32と通路34とは連通している。端板側連通路32が形成された端板30の端面は、ロータ側連通路23が形成されたロータ20の端面と対向している。
一方の端板30には、環状溝33が形成され、この環状溝33は、図1から図4に示すベーン溝21の中心側端部と連通している。この環状溝33には、高圧ガスや高圧潤滑油が供給され、ベーン22に対して背圧を付与する。なお、本実施例による膨張機は、シリンダ10内の空間が楕円形状をしており、供給ポート12と吐出ポート31とが、対称な位置に設けられている。
次に、本実施例による膨張機の動作について説明する。
本実施例による膨張機は、供給ポート12から供給したガスを膨張室11A、11Bにて膨張させて吐出ポート31から排出する。供給ポート12から供給されるガスが高圧ガスの場合には、このガスの膨張作用によってロータ20が回転し、供給ポート12から供給されるガスを膨張させる場合にはロータ20を回転させる。
図1では、膨張室11Aの供給行程が完了した状態を示している。膨張室11Aの後端側はベーン22Aによって供給ポート12から隔離されている。このタイミングでロータ側連通路23Aは、端板側連通路32とは連通しない位置に移動している。
一方、図1において、膨張室11Aの次の膨張室11Bは、供給ポート12と連通された状態となっている。また、このタイミングでロータ側連通路23Bは、端板側連通路32と連通される位置に移動している。この状態では、供給ポート12からは、供給隙間寸法が十分な間隔を持たないため、供給ポート12からのガスの導入を十分に行えないが、ロータ側連通路23Bが膨張室11Bに開口することにより、端板側連通路32からガスが供給される。
図2では、膨張室11Bの供給行程中の状態を示している。膨張室11Bには、供給ポート12からガスが供給されるとともに、端板側連通路32と連通しているロータ側連通路23Bからもガスが供給される。
図3では、膨張室11Bでの供給行程終了直前の状態を示している。この状態では、ベーン22Bによって供給ポート12の膨張室11Bに対する開口面積は狭められてしまい、供給ポート12と膨張室11Bとの間の供給隙間寸法が十分な間隔を持たないため、供給ポート12からのガスの導入を十分に行えないが、ロータ側連通路23Bは端板側連通路32と連通状態にあるため、ロータ側連通路23Bから膨張室11Bにガスが供給される。
図4では、膨張室11Bの供給完了状態を示している。膨張室11Bの後端側はベーン22Bによって供給ポート12から隔離されている。このタイミングでロータ側連通路23Bも、端板側連通路32とは連通しない位置に移動している。
以上のように、それぞれの膨張室11は、供給行程において、供給ポート12以外に、ロータ側連通路23からガスが供給されるため、供給ポート12と膨張室11との間の供給隙間寸法が十分な間隔を持たないタイミングでも十分なガスが供給される。特に供給行程の開始からの所定時間、及び供給行程の終了前における所定時間の内の少なくとも一方の所定時間、ロータ側連通路23からガスが供給されるように構成してもよい。
なお、上記実施例では、ベーン溝21とロータ側連通路23とを、ロータ20の中心に対して放射状に設けた場合で説明したが、所定の傾き角度を持たせてもよい。また、上記実施例では、シリンダ10内の空間を、断面が楕円形状のものを用い、供給ポート12と吐出ポート31とを対称な位置に設けたもので説明したが、シリンダ10内の空間を、断面が円形状のものを用い、供給ポート12と吐出ポート31とをそれぞれ一つ設けたものでもよい。
本実施例による膨張機は、圧縮機、放熱器、凝縮器とともに冷凍サイクルを構成し、放熱器で放熱された高圧冷媒ガスを供給ポート12から供給し、吐出ポート31から吐出される低圧冷媒ガスを凝縮器に導くことで、ロータ20が回転し、回転軸40から動力を出力することができる。
本実施例の膨張機は、二酸化炭素を冷媒として用いた冷凍サイクルを構成する膨張弁の代わりに用いる膨張機として特に有用である。
本発明の一実施例の膨張機における一つの膨張室の供給完了状態を示す平面図 同膨張機における次の膨張室が供給行程にあることを示す平面図 同膨張機における同膨張室の供給行程終了直前の状態を示す平面図 同膨張機における同膨張室の供給完了状態を示す平面図 同膨張機の側断面図 ベーン枚数を変更した場合の供給ポート角度と膨張比との関係を示す特性図 図6の特性図に用いた膨張機の基本構成を示す説明図 供給隙間δと圧力損失との関係を示す特性図 図8の特性図における供給隙間δを示す説明図 回転数Nが1550rpmの場合のP−V特性図 回転数Nが1960rpmの場合のP−V特性図 回転数Nが2500rpmの場合のP−V特性図
10 シリンダ
11 膨張空間
20 ロータ
21 ベーン溝
22 ベーン
23 ロータ側連通路
30 端板
31 吐出ポート
32 端板側連通路

Claims (6)

  1. 内部に空間を形成するシリンダと、前記シリンダ内部の前記空間で回転する円筒状のロータと、前記ロータに有するベーン溝内を摺動するベーンと、前記ロータの端面と前記シリンダの端面とを封鎖する端板と、前記シリンダと前記ロータとの間に形成される膨張空間にガスを供給する供給ポートと、前記膨張空間から前記ガスを排出する吐出ポートとを備え、前記ベーンによって前記膨張空間を複数の膨張室に区分し、前記供給ポートから供給したガスを前記膨張室にて膨張させて前記吐出ポートから排出する膨張機であって、前記ロータには前記膨張空間に開口する所定長さのロータ側連通路を形成し、前記端板には前記供給ポートに導かれる前記ガスの通路と連通する端板側連通路を形成し、前記膨張室が前記供給ポートに連通して供給行程にあるときには、前記ロータ側連通路と前記端板側連通路が連通して、当該端板側連通路と前記ロータ側連通路を介し前記供給ポートとともに当該供給ポートと連通している前記膨張室にガスを供給する構成とし、前記膨張室が膨張行程にあるときには、前記ロータ側連通路と前記端板側連通路とは連通しない構成としたことを特徴とする膨張機。
  2. 前記ロータ側連通路は、前記ロータの端面に形成された溝によって形成し、前記端板側連通路は、前記溝が形成された側の前記ロータの端面を封鎖する側の前記端板の端面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の膨張機。
  3. 前記ベーンを等間隔に複数個配置し、前記ロータ側連通路をそれぞれの隣り合う前記ベーン間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の膨張機。
  4. 前記ベーン溝の長さよりも前記ロータ側連通路の長さを短く形成したことを特徴とする請求項1に記載の膨張機。
  5. 前記ロータ側連通路と前記端板側連通路との連通を、前記供給行程の開始からの所定時間又は前記供給行程の終了前の所定時間において行う構成としたことを特徴とする請求項1に記載の膨張機。
  6. 前記ベーン溝と前記ロータ側連通路とを、前記ロータの中心に対して放射状に配置したことを特徴とする請求項3に記載の膨張機。
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