JP4660061B2 - 難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な難燃性および良好な物性を有する難燃性ポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物および窒素含有化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性ポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略する)をはじめとする熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂は優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性等を有するため、電気・電子分野、機械構成部品分野、自動車分野などの用途の成形品として広く使用されている。
【0003】
これらの中でも、難燃性が要求される用途は非常に多く、従来は主にハロゲン含有化合物およびアンチモン化合物をそれぞれ難燃剤および難燃助剤とし、難燃性を付与した樹脂が提供されている。
【0004】
しかしながら、ハロゲン含有難燃剤は分解生成物が電気製品中の金属を腐食する場合があり、さらに近年、一部のハロゲン含有難燃剤は環境への影響が問題となっており、樹脂成形品は欧州を中心として非ハロゲン化の動きが盛んになってきた。そのため難燃剤においても非ハロゲンの需要が高まり、各樹脂に対する非ハロゲンの難燃剤の開発が盛んになった。ポリエステル樹脂に関しても種々の非ハロゲンによる難燃化技術が報告されているが、種々の問題から、実用化には至っていない。
【0005】
非ハロゲン難燃剤としては、リン含有化合物が一般に用いられることが多く、本分野では赤リンやトリフェニルホスフェート(以下TPPと略する)等のリン酸エステルがよく用いられている。しかしながら、PBTなどのポリエステル樹脂は比較的加工温度が高く赤リンでは毒性の高いホスフィンガスの発生が指摘され、また、赤リンを用いた場合には組成物が赤リン特有の褐色になり、その使用範囲が限定されるという問題もある。一方、低分子量のTPPではブリードアウトの問題があり、さらに、TPPに代表される芳香族リン酸エステルは一般に可塑効果を有するため、組成物の耐熱性が著しく低下する問題があった。
【0006】
次にリン含有化合物を難燃剤として使用した難燃性樹脂組成物の改良技術について知られた文献を紹介する。例えば特許文献1にはポリエステル樹脂、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物並びにフェノール樹脂および/またはエポキシ基と反応しうる官能基を有するリン、窒素、ホウ素系化合物とを溶融反応してなる、ポリエステル樹脂用の非ハロゲン難燃剤が開示されている。特許文献2には上記非ハロゲン難燃剤5〜50重量部をポリエステル樹脂100重量部に添加した難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、かかる樹脂組成物は難燃性が未だ不十分であるだけでなく、流動性に劣り、さらにコスト的にも不利であるという問題がある。
【0007】
特許文献3にはポリスチレンやポリエステルの如き熱可塑性樹脂にリン酸エステルや亜リン酸エステルの如きリン含有化合物(具体的にはトリフェニルホスフェート)とオルト位もしくはパラ位が置換されたフェノール樹脂類を併用添加することにより得られる難燃性樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物はブリードアウトや耐熱性低下の問題のみならず、充分な難燃性が得られないという欠点がある。
【0008】
また、特許文献4にはポリエチレンテレフタレートの如き150℃以上の軟化点を有する熱可塑性ポリエステル樹脂99〜34重量部、熱硬化性樹脂により被覆された赤リン1〜25重量部、および強化充填剤10〜55重量部からなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この樹脂組成物は先にも述べたように着色に関する問題、成形時におけるホスフィンガス発生の問題がある。
【0009】
さらに、特許文献5には繊維形成性線状ポリエステル、アリールスピロホスフェート、および少なくとも40%の塩素原子または臭素原子を含有するハロゲン含有難燃剤からなる難燃性ポリエステル繊維組成物が開示されている。この公報は、具体的にはポリエチレンテレフタレートにアリールスピロホスフェートおよびハロゲン含有化合物を難燃成分として併用し配合した繊維の難燃性が示されている。
【0010】
また、特許文献6にはポリエステル繊維に特定の有機リン含有化合物を配合することによって、難燃性が発現することが開示されている。具体的にはポリエチレンテレフタレートと特定の有機リン化合物を混合して繊維を得て、この繊維から織物とし、その難燃性(例えば酸素指数)が僅かに向上する例が記載されている。この公報に記載された技術は、ポリエチレンテレフタレート繊維の難燃化に関し教示しているに過ぎない。
【0011】
また、特許文献7では、特定のポリエステル樹脂とハロゲン含有スピロジホスフェートからなる難燃性繊維組成物が開示されている。この公報は、具体的にはポリエチレンナフタレート樹脂にハロゲン元素を含有するスピロジホスフェートを配合し、得られた繊維の難燃性が示されている。しかしながら、この米国特許は繊維に関するものであり、ポリエステル繊維の難燃性の向上が見られるけれども、ハロゲン含有難燃剤を使用しており、前述したように環境への影響が問題となる。
【0012】
また、特許文献8ではポリエステル樹脂とメラミンピロホスフェートと有機環状リン化合物からなる難燃性樹脂組成物が開示されている。この特許文献8では、上記2種の難燃剤を併用することにより高い難燃効果が得られている。この難燃効果はメラミンピロホスフェートによるものが大きいが、このメラミンピロホスフェートを用いた場合には、成形品の外観不良が起こるため、実用化が困難であるという問題がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平07−126498号公報
【特許文献2】
特開平07−278267号公報
【特許文献3】
特開平08−208884号公報
【特許文献4】
特公平02−037370号公報
【特許文献5】
特開昭50−058319号公報
【特許文献6】
特開昭52−012329号公報
【特許文献7】
米国特許第3866405号明細書
【特許文献8】
米国特許第4257931号明細書
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、高度な難燃性を有し、且つ工業的に有用な耐熱性および機械的特性等のバランスを兼ね備えたポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、実質的にハロゲンを含有しないで、UL94規格のV−2レベル以上、好適条件下ではV−0レベル以上の高度な難燃性を達成することができるポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0016】
本発明の第3の目的は、家電製品部品、電気・電子部品、機械構成部品、自動車部品などに有利に利用できる難燃性のポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、
(A)芳香族ポリエステル樹脂を少なくとも60重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、(B)下記一般式(1)で表される酸価が0.7mgKOH/g以下である有機リン化合物(B成分)1〜100重量部、(C)メラミンシアヌレート(C成分)0.1〜100重量部、(D)難燃性改良樹脂(D成分)0〜50重量部および(E)充填剤(E成分)0〜200重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
【0018】
【化11】
【0019】
(式中、X1、X2は同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【0020】
【化12】
【0021】
(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
本発明によれば、優れた機械的特性を有し、かつ難燃レベルが少なくともV−2、好適条件下ではV−0を達成する難燃性ポリエステル樹脂組成物が得られる。
【0022】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明において樹脂成分は芳香族ポリエステル樹脂が構成樹脂成分(A成分)中主たる成分を占めればよく、好ましくは芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)が少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%であればよい。A成分中40重量%未満、好ましくは30重量%未満、特に好ましくは20重量%未満は他の樹脂(A−2成分)であってもよい。この他の樹脂については後で詳しく説明する。
【0024】
本発明の構成樹脂成分(A成分)中の芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)は芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。好ましくはジカルボン酸成分の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分からなる。一方、グリコール成分は好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が炭素数2〜10の脂肪族ジオール成分からなる。
【0025】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種または2種以上を用いることができる。芳香族ジカルボン酸以外の従たるジカルボン酸としては例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0026】
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外のグリコールとしては例えばp,p’−ジヒドロキシエトキシビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール等を挙げることができる。
【0027】
芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)の好ましい例としては、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、主たるジオール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、およびテトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のジオールからなるエステル単位を有するポリエステルである。
【0028】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0029】
特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。とりわけポリブチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0030】
また、本発明の芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)として、上記繰り返し単位をハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーを用いることもできる。
【0031】
テトラメチレンテレフタレートまたはテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをハードセグメントの主たる繰り返し単位とするポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしては、例えばジカルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなり、ジオール成分が炭素数5〜10の長鎖ジオールおよびH(OCH2CH2)iOH(i=2〜5)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールからなり、さらに融点が100℃以下または非晶性であるポリエステルまたはポリカプロラクトンからなるものを用いることができる。
【0032】
なお、主たる成分とは、全ジカルボン酸成分または全グリコール成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の成分であり、主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上の繰り返し単位である。
【0033】
本発明における芳香族ポリエステル樹脂の分子量は、通常成形品として使用しうる固有粘度を有していればよく、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が好ましくは0.5〜1.6dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gである。
【0034】
また芳香族ポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基(−COOH)量が1〜60当量/T(ポリマー1トン)であるのが有利である。この末端カルボキシル基量は、例えばm−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定法により求めることができる。
【0035】
本発明の構成樹脂(A成分)は、前記芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)の他に他の熱可塑性樹脂(A−2成分)を含有していてもよい。前述したように他の樹脂(A−2成分)はA成分に基づいて40重量%未満であり、好ましくは30重量%未満である。
【0036】
このA−2成分としての熱可塑性樹脂としてはポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)およびポリエーテルイミド樹脂(PEI)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらA−2成分のうち、好ましいのはポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリオレフィン樹脂(PO)およびスチレン系樹脂である。
【0037】
次のこのA−2成分としての熱可塑性樹脂について具体的に説明する。
【0038】
A−2成分としてのポリフェニレンエーテル樹脂としては、通常PPE樹脂として知られたものが使用できる。かかるPPEの具体例としては、(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル等の単独重合体および/または共重合体が挙げられ、特に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが挙げられる。また、これらのPPEにスチレン化合物がグラフト重合した共重合体であってもよい。かかるPPEの製造法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号記載の方法による第一銅塩とアミン類の錯体を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。
【0039】
PPE樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は、0.2〜0.7dl/gであり、好ましくは0.3〜0.6dl/gである。還元粘度がこの範囲のPPE樹脂は成形加工性、機械物性のバランスがよく、PPE製造時の触媒量等を調整する事により、容易に還元粘度を調整することが可能である。
【0040】
A−2成分としてのポリカーボネート系樹脂(PC)とは、塩化メチレン等の溶媒を用いて種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重合反応によって得られるもの、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応により得られるものが挙げられる。代表的なものとしては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンの反応で得られるポリカーボネートである。
【0041】
ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどがある。これらのジヒドロキシアリール化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
好ましいジヒドロキシアリール化合物には、耐熱性の高い芳香族ポリカーボネートを形成するビスフェノール類、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルケトンなどである。特に好ましいジヒドロキシアリール化合物には、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを形成する2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0043】
なお、耐熱性、機械的強度などを損なわない範囲であれば、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネートを製造する際、ビスフェノールAの一部を、他のジヒドロキシアリール化合物で置換してもよい。
【0044】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限する必要はないが、あまりに低いと強度が十分でなく、あまりに高いと溶融粘度が高くなり成形し難くなるので、粘度平均分子量で表して通常10,000〜50,000、好ましくは、15,000〜30,000である。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10-4M0.83
(但し[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度で0.7)
【0045】
ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いる界面重合法(溶液重合法)では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。尚結果として得られた分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0046】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融重合法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノールを炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。かかる反応の初期段階で二価フェノール等と同時にまたは反応の途中段階で末端停止剤を添加させる。また反応を促進するために現在公知のエステル交換反応に用いられる触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0047】
A−2成分としてのポリアミド樹脂(PA)としては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミドおよびポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。本発明に使用できるポリアミドとしては特に限定されるものではない。
【0048】
このようなポリアミド樹脂の分子量としては特に限定されるものではないが、98%硫酸中、濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.7〜4.5を使用することができ、好ましくは、2.0〜4.0、特に好ましくは2.0〜3.5である。
【0049】
A−2成分としてのポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単重合体もしくは共重合体、あるいはこれらのオレフィン類と共重合可能な単量体成分との共重合体である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂の分子量に関しては特に限定されるものではないが、高分子量のものほど難燃性が良好となる。
【0050】
A−2成分としてのスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。耐衝撃性の観点からは、ゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、ゴム変性スチレン系樹脂はビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0051】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0052】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
【0053】
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
ゴム変性スチレン樹脂におけるゴム状重合体は、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜50重量%、好ましくは98〜60重量%である。
【0055】
A−2成分としてのポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)は下記式で表される繰返し単位を有する。
【0056】
【化13】
【0057】
式中、nは1以上の整数であり、50〜500の整数が好ましく100〜400の整数がより好ましく、直鎖状、架橋状いずれであってもよい。
【0058】
ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法の例としてはジクロロベンゼンと二硫化ナトリウムとを反応させる方法が挙げられる。架橋状のものは低重合度のポリマーを重合ののち、空気の存在下で加熱し、部分架橋を行い高分子量化する方法で製造することができ、直鎖状のものは重合時に高分子量化する方法で製造することができる。
【0059】
A−2成分としてのポリエーテルイミド樹脂(PEI)は、下記式で表される繰返し単位を有する。
【0060】
【化14】
【0061】
式中のAr1は芳香族ジヒドロキシ化合物残基を示し、Ar2は芳香族ジアミン残基を示す。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前述したポリカーボネート樹脂の説明で示した芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、特にビスフェノールAが好ましい。芳香族ジアミンとしてはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0062】
前記式中のnは5〜1,000の整数を示し、10〜500の整数が好ましい。
【0063】
また、ポリエーテルイミド樹脂の製造方法の例は、米国特許第3,847,867号、米国特許第3,847,869号、米国特許第3,850,885号、米国特許第3,852,242号および米国特許第3,855,178号などに記載されている。
【0064】
前述した種々のA−2成分のうち、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)またはスチレン系樹脂が好ましい。
【0065】
本発明において、下記一般式(1)で表される有機リン化合物(B成分)が難燃剤として使用される。
【0066】
【化15】
【0067】
(式中、X1、X2は同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【0068】
【化16】
【0069】
(式中、ALは炭素数1〜5、好ましくは1または2の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数、好ましくは1または2を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0070】
前記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)は、当該樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来当該樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、リン化合物単独の使用でV−0レベルを達成しかつ実用的な機械物性を達成することは困難であり、実用上多くの問題点があった。リン化合物を使用してV−0レベルを達成するためには多量のリン化合物を使用する必要があった。更に従来のリン化合物は低沸点化合物であり、比較的高温で押出および成形を行う当該樹脂において、押出時のガス発生や成形時の金型汚染等の問題が発生した。
【0071】
本発明によれば、前記有機リン化合物(B成分)は驚くべきことに後述する窒素含有化合物(C成分)と併用することで、少量の使用により当該樹脂のV−0レベルの難燃化が容易に達成され、機械物性等の低下が見られない。本発明により得られた樹脂組成物は、実用上大きな欠点がなく、ベース樹脂本来の高い機械物性を保持することを特徴とする。
【0072】
なお、本発明においては、B成分の他に、B成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤は、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。これらの他の配合成分については後に具体的に説明する。
【0073】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(B成分)は、前記一般式(1)で表されるが、下記一般式(3)または下記一般式(4)で表される有機リン化合物が好ましく使用される。下記一般式(3)で表される有機リン化合物と下記一般式(4)で表される有機リン化合物は一種でもまたは二種以上でも使用することができる。
有機リン化合物(I)
【0074】
【化17】
【0075】
(式中、R2、R5は同一または異なっていてもよく、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。R1、R3、R4、R6は同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。但し、R1およびR3が共に脂肪族炭化水素基の場合、R1およびR3の炭素数の合計は4以下である。また、R4およびR6が共に脂肪族炭化水素基の場合、R4およびR6の炭素数の合計は4以下である。)
有機リン化合物(II)
【0076】
【化18】
【0077】
(式中、Ar1およびAr2は、同一又は異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R7、R8、R9およびR10は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。AL1およびAL2は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。Ar3およびAr4は、同一又は異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、Ar3およびAr4はそれぞれAL1およびAL2の任意の炭素原子に結合することができる。但し、R7またはR8が脂肪族炭化水素基の場合、R7、R8およびAL1の脂肪族炭化水素基の炭素数の合計は4以下である。また、R9またはR10が脂肪族炭化水素基の場合、R9、R10およびAL2の脂肪族炭化水素基の炭素数の合計は4以下である。)
前記式(3)の有機リン化合物(I)は、化学構造により3つの種類{有機リン化合物(I−1)〜(I−3)}に分けて以下詳述する。
【0078】
有機リン化合物(I−1)は、前記式(3)中のR1、R3、R4およびR6が水素原子であり、R2およびR5が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基、好ましくはフェニル基である。置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0079】
R2およびR5の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0080】
有機リン化合物(I−1)において、好ましい代表的化合物は下記式(1−a)で示される化合物である。
【0081】
【化19】
【0082】
有機リン化合物(I−2)は、前記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、特に好ましくは水素原子である。R3およびR6が同一もしくは異なり、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、好ましくはメチル基またはエチル基である。R2およびR5が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基、好ましくはフェニル基である。置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0083】
R2およびR5の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0084】
有機リン化合物(I−2)において、好ましい代表的化合物は下記式(1−b)で示される化合物である。
【0085】
【化20】
【0086】
有機リン化合物(I−3)は、前記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基またはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基またはフェニル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0087】
R2、R3、R5およびR6が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、好ましくはフェニル基である。置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。R2、R3、R5およびR6の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0088】
有機リン化合物(I−3)において、好ましい代表的化合物は下記式(1−c)で示される化合物である。
【0089】
【化21】
【0090】
また、前記式(4)の有機リン化合物(II)は、上記式(4)において、Ar1およびAr2は、同一または異なっていてもよく、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、好ましくはフェニル基である。かかるフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。Ar1およびAr2の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0091】
上記一般式(4)において、R7、R8、R9およびR10は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基である。炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル(異性体を含む)基が挙げられる。フェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としては上述したAr1およびAr2の説明で示した置換基が挙げられる。R1、R2、R3およびR4は水素原子またはメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0092】
上記一般式(4)において、AL1およびAL2は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、炭素数1〜3の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。AL1およびAL2の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基およびエチリデン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0093】
上記一般式(4)において、Ar3およびAr4は、同一又は異なっていてもよく、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、好ましくはフェニル基である。かかるフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としては上述したAr1およびAr2の説明で示した置換基が挙げられる。また、pおよびqは0〜3の整数を示し、Ar3およびAr4はそれぞれAL1およびAL2の任意の炭素原子に結合することができる。pおよびqは0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、特に0が好ましい。
【0094】
有機リン化合物(II)において、好ましい代表的化合物は下記式(1−d)で示される化合物である。
【0095】
【化22】
【0096】
上述したように、本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(B成分)は、前記一般式(1)で表されるが、最も好ましい代表的化合物は前記式(1−a)、(1−b)、(1−c)および(1−d)で示される化合物である。これらの化合物は一種または二種以上併用して使用することができる。
【0097】
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
【0098】
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0099】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0100】
B成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(I)B成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(II)B成分中の前記(1−b)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)B成分中の前記(1−c)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0101】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
(IV)B成分中の前記(1−d)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
【0102】
前述したB成分は、その酸価が好ましくは0.7mgKOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0103】
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0104】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0105】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0106】
前記B成分は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは2〜90重量部、より好ましくは2〜70重量部の範囲で配合される。特に5〜50重量部の範囲が好ましい。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
【0107】
本発明において、メラミンシアヌレート(C成分)がポリエステル樹脂の難燃性をさらに向上させる目的で使用される。
【0113】
前記C成分の配合割合としては、A成分100重量部に対して0.1〜100重量部であり、好ましくは0.5〜70重量部であり、より好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは2〜20重量部であり、特に好ましくは2〜10重量部である。配合割合が0.1重量部より少ない場合は、良好な難燃相乗効果が得られず、100重量部より多い場合は樹脂組成物の物性低下の原因となり、さらにコスト的にも不利である。
【0114】
前記樹脂成分(A成分)に対する前記有機リン化合物(B成分)と前記メラミンシアヌレート(C成分)との配合割合は重量比で10:1〜1:1の範囲が好ましく、8:1〜1.5:1の範囲がより好ましく、5:1〜2:1の範囲が特に好ましい。
【0115】
また、前記メラミンシアヌレート(C成分)は、前記一般式(1)で表される酸価が0.7mgKOH/g以下の有機リン化合物(B成分)と混合し芳香族ポリエステル樹脂用の難燃剤組成物として高度な難燃性を与える。かかる難燃剤組成物において、B成分とC成分との割合は重量比で10:1〜1:1の範囲であり、8:1〜1.5:1の範囲が好ましく、5:1〜2:1の範囲が特に好ましい。
【0116】
次に本発明の難燃性樹脂組成物に配合することができる難燃性改良樹脂(D成分)について説明する。D成分の配合により難燃性を向上することができる。難燃性改良樹脂としてはフェノール樹脂(D−i成分)、エポキシ樹脂(D−ii成分)またはスチレン系樹脂(D−iii)成分が好適である。以下これらD−i成分〜D−iii成分について具体的に説明する。
【0117】
D−i成分として使用されるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0118】
フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。
【0119】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。
【0120】
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0121】
フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
【0122】
D−ii成分として使用されるエポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0123】
難燃性改良樹脂としてのD−iii成分と使用されるスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体の単独重合体またはこれらの共重合体の他に、これら単量体とビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。D−iii成分としてのスチレン系樹脂は、前記芳香族ビニル単量体成分の含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上のものが好適である。
【0124】
かかるD−iii成分としてのスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0125】
前記難燃性改良樹脂(D成分)を配合する場合、その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜45重量部、好ましくは0.1〜40重量部、特に好ましくは0.5〜35重量部である。D成分がD−iii成分である場合、その配合割合がA成分100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の少量であっても、難燃性が著しく改良される。
【0126】
本発明の難燃性樹脂組成物には、充填剤(E成分)を配合することができる。充填剤は成形品の物性、殊に機械的特性を改良する目的で配合されるものであればよく、無機あるいは有機の充填剤いずれであってもよい。好ましくは繊維状の充填剤である。
【0127】
充填剤(E成分)としては、例えばガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスロービングストランド、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末等のガラス系充填剤;カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、カーボンロービングストランド、カーボンフレーク等のカーボン系充填剤;タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、ゾノトライト、クレー、シリカ等の無機充填剤;アラミドファイバー等の有機充填剤;酸化チタン等の無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、これらのなかから選択するか、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、樹脂組成物を補強する目的では、繊維状の充填剤を配合することが好ましく、ガラス繊維、または炭素繊維、もしくはこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0128】
これらの無機充填剤は必要に応じて収束剤または表面処理剤を用いることができる。収束剤または表面処理剤の種類としては特に限定はされないが、一般に官能性化合物、例えばエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられ、樹脂に適したものを選択することが好ましい。好ましくはエポキシ系化合物、より好ましくはビスフェノールA型または/およびノボラック型エポキシ樹脂である。
【0129】
前記充填剤(E成分)を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。200重量部より多く配合すると樹脂組成物の難燃性および物性低下の原因となり、また操作性、成形性についても困難となる場合がある。
【0130】
本発明の難燃性樹脂組成物にはフッ素含有樹脂(F成分)を配合することができる。F成分の配合により成形品の難燃性が改良される。殊に成形品の燃焼テストにおける滴下が抑制される。
【0131】
F成分として使用するフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
【0132】
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。
【0133】
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1〜1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10〜500μmのものを用いることができる。
【0134】
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン6Jおよびテフロン30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA−500、ポリフロンF−201LおよびポリフロンD−1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
【0135】
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70〜95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において1万〜100万、より好ましく1万〜80万である。
【0136】
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
【0137】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
【0138】
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0139】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0140】
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0141】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1〜80重量%、特に1〜60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0142】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0143】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0144】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
【0145】
F成分を配合する場合その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以上では十分な溶融滴下防止性能が得られ易く、10重量部以下では外観不良や分散不良を起こし難くなり、さらに経済的にも有利となるため好ましい。
【0146】
前記した本発明の難燃性樹脂組成物は、高度な機械物性と高度な難燃性をバランスよく有しており、さらにハロゲンを実質的に含有しない組成物であり、V−2レベル以上は当然のこと、大部分の実施態様ではV−0レベルの難燃性が達成される。本発明の樹脂組成物は、具体的には厚さ1.6mmの成形品においてUL−94規格の難燃レベルV−0を達成することができ、また好適条件では、厚さ0.8mmの成形品においてもV−0を達成することができる。
【0147】
本発明の難燃性樹脂組成物において、これら組成物を構成するA成分、B成分、C成分、D成分、E成分およびF成分については既に説明したが、これら成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り、使用することができる。以下添加することができる他の成分について説明する。
【0148】
(1)リンまたはリン化合物(G成分);
本発明の難燃性樹脂組成物において、有機リン化合物(B成分)以外に、難燃剤としてそれ自体公知のリンまたはリン化合物(G成分)を使用することができる。B成分にG成分を併用することにより、難燃効果、物理的強度または耐熱性を改良することもでき、さらにコストを低減できる効果がある。
【0149】
G成分としては下記(G−1)〜(G−5)を例示することができる。
(G−1);赤リン
(G−2);下記一般式(G−2)で表されるトリアリールホスフェート
【0150】
【化23】
【0151】
(G−3);下記一般式(G−3)で表される縮合リン酸エステル
【0152】
【化24】
【0153】
(G−4);下記一般式(G−4)で表される縮合リン酸エステル
【0154】
【化25】
【0155】
(G−5);下記一般式(G−5)で表される有機リン化合物
【0156】
【化26】
【0157】
前記式(G−2)〜(G−4)中Q1〜Q4は、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar6−W1−式で表される基(ここでW1は−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Ar6は炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
【0158】
式(G−3)および(G−4)において、Ar4およびAr5は、両者が存在する場合(G−4の場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q5−W2−式で示される基(ここでW2は−O−または−S−を示し、Q5は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0159】
式(G−3)および(G−4)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
【0160】
式(G−4)においてZはAr4およびAr5を結合する単結合もしくは基であり、−Ar4−Z−Ar5−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO2−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
【0161】
前記(G−1)〜(G−5)のリンまたはリン化合物以外のリン化合物であってもB成分と併用することができる。
【0162】
前記(G−1)〜(G−5)のリンもしくはリン化合物(G成分)を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(B成分)100重量部当たり、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは10〜60重量部の範囲が適当である。前記(G−1)〜(G−5)のリンもしくはリン化合物の内、好ましくは(G−2)〜(G−5)のリン化合物である。
【0163】
(2)ビスクミル化合物;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに下記式で示されるビスクミル化合物を配合することができる。
【0164】
【化27】
【0165】
このビスクミル化合物を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲が好ましく、0.02〜2重量部の範囲がより好ましく、0.03〜1重量部の範囲が特に好ましい。
【0166】
(3)難燃助剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに知られた難燃助剤を配合することができる。難燃助剤としては、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。かかるシリコーンオイルとしては、ポリジオルガノシロキサンを骨格とし、好ましくはポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、あるいはそれらの任意の共重合体または混合物であり、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。その粘度は好ましくは0.8〜5,000センチポイズ(25℃)、より好ましくは10〜1,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは50〜500センチポイズ(25℃)であり、かかる粘度の範囲のものは難燃性に優れ好ましい。かかるシリコーンオイルの配合量は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0167】
(4)相溶化剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、相溶化剤を添加してもよい。本相溶化剤の種類に関しては特に限定されるものではなく、A成分中のA−1成分とA−2成分、またはA成分およびD成分を2種以上の混合物として使用する際に、重合体同士、A成分および/またはD成分の樹脂成分とその他の添加剤を相溶化できるものが好ましい。相溶化剤を添加することによって、本発明の難燃性樹脂組成物の機械物性等を向上させるのみならず、難燃性についても向上させることが可能である。相溶化剤の添加量に関しては、特に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0168】
(5)添加剤;
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤(顔料)などを添加してもよい。さらに、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物である無機塩などを添加してもよい。前記無機塩を添加することにより、耐加水分解性が向上される。
【0169】
前記添加剤の使用量は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類および目的に応じて適当に選択できる。
【0170】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、樹脂成分(A成分)、有機リン化合物(B成分)、メラミンシアヌレート(C成分)および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を220〜280℃、好ましくは230〜270℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0171】
本発明の難燃性樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、テレビ、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【0172】
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
【0173】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)および1/32インチ(0.8mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。どの試験片も炎を取り去った後の燃焼が10秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、燃焼が30秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2であり、この評価基準以下のものをnotVとした。
(2)難燃性(酸素指数)
JIS−K−7201に準拠して行った。数値が高いほど難燃性に優れる。
(3)酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
【0174】
調製例1
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、1HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0175】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にてベンジルブロマイド2037.79g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1863.5g(4.56モル)を得た。得られた結晶は31P、1HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。収率は76%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.06mgKOH/gであった。
【0176】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ23.1(S)、融点:255−256℃、元素分析 計算値:C,55.89;H,5.43、測定値:C,56.24;H,5.35
【0177】
調製例2
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
【0178】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃
【0179】
調製例3
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、1HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0180】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて1−フェニルエチルブロマイド2204.06g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。得られた固体は31PNMR、1HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0181】
1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.0−4.2(m,4H),3.4−3.8(m,4H),3.3(qd,4H),1.6(ddd,6H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ28.7(S)、融点:190−210℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,57.83;H,5.96
【0182】
調製例4
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−4)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、1HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0183】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて(2−ブロモエチル)ベンゼン2183.8g(11.8モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の粉末1924.4g(4.41モル)を得た。得られた固体は31PNMR、1HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0184】
1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,58.00;H,6.07
【0185】
調製例5
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−5)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジ(2−フェニルエトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン436.4g(1.0mol)および2−フェニルエチルブロマイド370.1g(2.0mol)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、オイルバス温度180℃で10時間保持した。その後オイルバスを取り除き室温まで冷却した。得られた白色固体状の反応物にメタノール2000mlを加えて攪拌洗浄後、グラスフィルターを用いて白色粉末を濾別した。次いで濾別した白色粉末をとメタノール4000mlをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2000mLで洗浄した。得られた白色粉末を100Pa、120℃で8時間乾燥させて、2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド362.3gを得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビス2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドであることを確認した。収率83%、HPLC純度99.3%、酸価0.41KOHmg/gであった。
【0186】
1H−NMR(CDCl3,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃
【0187】
調製例6
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−6)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×102Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0188】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0189】
調製例7
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−7)の調製
3口フラスコに攪拌機、温度計、およびコンデンサーを取り付け、窒素気流下、このフラスコに3,9−ビス(ジフェニルメトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン40.4g(0.072モル)、ジフェニルメチルブロマイド35.5g(0.14モル)、キシレン48.0g(0.45モル)を入れ、還流温度(約130℃)で3時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン30mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン30mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール100mLをナス型フラスコにいれ、コンデンサーを取り付け、約1時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール50mLで2回洗浄した後、120℃にて減圧乾燥した。得られた固体は31P−NMR、1H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。得られた固体は白色の粉末であり、収量は36.8g、収率は91%であった。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.07mgKOH/gであった。
【0190】
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.2−7.6(m,20H),6.23(d,J=9Hz、2H),3.89−4.36(m,6H),3.38−3.46(m,2H)、31P−NMR(CDCl3,120MHz):δ20.9(S)、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0191】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(I)ポリエステル樹脂(A−1成分)
▲1▼ポリブチレンテレフタレート(帝人(株)製TRB−H)を用いた(以下PBT−1と称する)。230℃、3.8kg荷重で測定したMVR値は、9.5cm3/10minであった。
【0192】
▲2▼ポリブチレンテレフタレート(帝人(株)製TRB−J)を用いた(以下PBT−2と称する)。230℃、3.8kg荷重で測定したMVR値は、12.5cm3/10minであった。
(II)有機リン化合物(B成分)
▲1▼調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−1と称する)}
▲2▼調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)で示されるリン系化合物(以下FR−2と称する)}
▲3▼調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−b)で示されるリン系化合物(以下FR−3と称する)}
▲4▼調製例4で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−d)で示されるリン系化合物(以下FR−4と称する)}
▲5▼調製例5で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−d)で示されるリン系化合物(以下FR−5と称する)}
▲6▼調製例6で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−c)で示されるリン系化合物(以下FR−6と称する)}
▲7▼調製例7で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−c)で示されるリン系化合物(以下FR−7と称する)}
(III)その他の有機リン化合物
▲1▼トリフェニルホスフェート{大八化学工業(株)製TPP(以下TPPと称する)}
▲2▼1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]{前記一般式(G−3)でAr4がフェニレン基、Q1、Q2、Q3およびQ4が2,6−ジメチルフェニル基である有機リン酸エステル化合物、旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500(以下FP−500と称する)}
(IV)窒素含有化合物(C成分)
▲1▼メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製MC−610)を用いた(以下MC−1と称する)。
▲2▼メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製MC−640)を用いた(以下MC−2と称する)。
【0193】
[実施例1〜65および比較例1〜18]
表1〜7記載の各成分を表1〜7記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを130℃の熱風乾燥機にて4時間乾燥を行った。乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75Si)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1〜7に示した。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
【表4】
【0198】
【表5】
【0199】
【表6】
【0200】
【表7】
【0201】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の難燃性ポリエステル樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(i)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有するポリエステル樹脂組成物が得られる。
(ii)難燃剤としての有機リン化合物は、特定の窒素含有化合物と組合せることにより、有機リン化合物の比較的少ない配合により容易にV−0レベルのポリエステル組成物が得られる。
(iii)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、ポリエステル樹脂の成形時または成形品の使用時に、ポリエステル樹脂の熱劣化をほとんど起さず、熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および熱安定性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
(iv)難燃剤としての有機リン化合物は、無色でありポリエステル樹脂に対して相溶性であるから、透明性に優れた成形品を得ることができる。
Claims (26)
- (A)芳香族ポリエステル樹脂を少なくとも60重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、(B)下記一般式(1)で表される酸価が0.7mgKOH/g以下である有機リン化合物(B成分)1〜100重量部、(C)メラミンシアヌレート(C成分)0.1〜100重量部、(D)難燃性改良樹脂(D成分)0〜50重量部および(E)充填剤(E成分)0〜200重量部からなる難燃性樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- A成分は、芳香族ポリエステル樹脂(A−1成分)60〜100重量部およびポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびポリエーテルイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(A−2成分)40〜0重量部よりなる請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(3)中のR1、R3、R4およびR6が水素原子であり、R2およびR5が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R3およびR6が同一もしくは異なり、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R2およびR5が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子、メチル基またはエチル基であり、R3およびR6が同一もしくは異なり、メチル基またはエチル基であり、R2およびR5が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基である請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはその芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、R2、R3、R5およびR6が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(3)中のR1およびR4が同一もしくは異なり、水素原子、メチル基、エチル基またはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基であり、R2、R3、R5およびR6が同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有してもよいフェニル基である請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、下記一般式(4)で表される有機リン化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、上記式(4)中のAr1、Ar2、Ar3およびAr4が同一もしくは異なり、置換基を有してもよいフェニル基であり、pおよびqが0であり、R7、R8、R9およびR10が同一もしくは異なり、水素原子またはメチル基であり、AL1およびAL2がメチレン基である請求項14記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、酸価が0.5mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- B成分の有機リン化合物は、HPLC純度が少なくとも90%である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- A成分100重量部に対して、B成分が2〜70重量部の割合で含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (D)難燃性改良樹脂(D成分)は、フェノール樹脂(D−i成分)、エポキシ樹脂(D−ii成分)およびスチレン系樹脂(D−iii成分)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、A成分100重量部に対して0.01〜45重量部である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (E)充填剤(E成分)が、A成分100重量部当り1〜200重量部配合されている請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 実質的にハロゲンを含有しない請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 厚さ1.6mmの成形品において、UL−94規格の難燃レベルV−0を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 厚さ0.8mmの成形品において、UL−94規格の難燃レベルV−0を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
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