JP4659376B2 - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、電池の高性能化のためには、高分子電解質膜のイオン伝導度を向上させる必要がある。そのためには、供給ガスを相対湿度100%に近い湿度、または相対湿度100%以上となるように加湿して供給することが好ましい。また、高分子電解質膜の耐久性の観点からも、供給ガスを高加湿で供給するのが好ましい。
ここで、前記導電性セパレータは、その主面が重力方向と平行になるように設置されている。
前記入口側マニホールドに接続される前記ガス供給管の接続位置が、前記マニホールドの中央より下方に位置することが好ましい。
前記導電性セパレータの少なくとも一方のガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分、および前記出口側マニホールドとガス排出管との接合部分が、前記出口側マニホールド内の下方に位置することが好ましい。
また、前記穴同士の間隔を、前記ガス供給管と前記供給マニホールドとの接続部分から遠くなるにしたがって狭くするのが好ましい。
従来の燃料電池において、セパレータが重力方向と平行で、ガス供給のための入口側マニホールドをセパレータの重力方向上位とした場合、マニホールドは一般的に横長に設計され、マニホールドの底にガス流路が接続されている。そのため、ガスを相対湿度100%近くに加湿して供給すると、セルスタックの上流で結露したミストがガス供給管側のセルに集中して供給され、フラッディング現象を招き、電池性能が低下する。
マニホールドの断面形状を縦長形状とした場合、長時間の運転において、供給ガスが燃料電池スタックに供給される上流側において、部分的に結露した水が入口側マニホールドの下部に停滞するおそれがある。そうすると、マニホールドの有効断面積の減少により、全体のガス経路の圧力損失を増加させ、ガス供給のための仕事量の増大を招く。その結果、燃料電池スタックを用いたシステム全体の効率を低下させる。また、その停滞水の脈動により、ガス供給が不安定になりかねない。そこで、マニホールドに接続するガス供給管をマニホールド中央より下方に位置させることにより、供給ガスの動圧を利用して結露水を停滞させないようにする。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1は、縦220mm、横220mm、厚さ3mmの等方性黒鉛板に、機械加工によってガス流路およびマニホールド孔を設けることによって作製する。セパレータ1は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21および出口側マニホールド孔23、燃料ガスの入口側マニホールド孔22および出口側マニホールド孔24、並びに冷却水の入口側マニホールド孔25および出口側マニホールド孔26を有する。セパレータ1は、さらにカソード側にマニホールド孔21と23を連絡する2本の並行する溝からなるガス流路27を有し、アノード側にはマニホールド孔22と24を連絡するガス流路を有する。
このガス流路の溝の寸法は、幅2mm、深さ2mmとする。点線28で囲まれた部分が電極に接する領域であり、この領域は縦150mm、横150mmとした。酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21は縦80mm、横15mmの長方形とし、四隅にR部を設ける。このマニホールド孔の底部をセパレータの中央線と重ね、その中央線より上側にマニホールドを配置する。また、このマニホールド孔の面積は、50セルスタック積層時の全セパレータの酸化剤ガス流路の総断面積の2倍以上となるように設計する。
冷却部を設けるには、上記のカソード側セパレータとアノード側セパレータを兼ねる単一のセパレータの代わりに、背面に冷却水の流路を設けたカソード側セパレータと背面に冷却水の流路を設けたアノード側セパレータとを冷却水の流路が向き合うように組み合わせた複合セパレータを用いる。
図3は本参考形態におけるセパレータのカソード側の正面図である。この例では、酸化剤ガス供給管11の端板への接続位置をマニホールド孔21の下部から約1/10の位置にした他は参考形態1と同様である。図1と同じ要素には同じ番号を付し、説明を省略する。以下の図においても同様とする。
図4は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Aは、酸化剤ガスの流路27Aの直線部が左右方向にされている。入口側マニホールド孔21Aおよび出口側マニホールド孔23Aは、縦長形状に設けられている。そして、ガス供給管11Aは、マニホールド孔21A内の下方に配置され、ガス排出管13Aは、ガス流路を構成する2本の溝のうち最下部に位置する溝の出口と同じ高さに位置するように、端板に接続した。また、ガス流路27Aの入口は、管11Aより上位にある。
図5は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Bは、酸化剤ガスのガス流路27Bの直線部が上下方向にされている。そして、ガス供給管11Bおよび排出管13Bは、マニホールド孔21Bおよび23B内の下方に配置され、ガス流路27Bの入口および出口はいずれも管11Bおよび13Bより上位にある。
図6は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Cは、L字状の入口側マニホールド孔21Cおよび出口側マニホールド孔23Cを有し、ガス供給管11Cおよびガス排出管13Cはそれぞれマニホールド孔21Cおよび23C内の下方に配置されている。両マニホールド孔を連絡するガス流路27Cの入口および出口はいずれも管より上位にある。
図7は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。このセパレータにおいては、すべてのマニホールド孔の形状が三角形である。セパレータ1Dは、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21Dおよび出口側マニホールド孔23D、両マニホールド孔を連絡するガス流路27D、燃料ガスの入口側マニホールド孔22Dおよび出口側マニホールド孔24D、冷却水の入口側マニホールド孔25Dおよび出口側マニホールド孔26Dを有する。酸化剤ガスの供給管11Dはマニホールド孔21D内の下方に、また酸化剤ガスの排出管13Dはマニホールド孔23D内の下方にあり、ガス流路27Dの入口は管11Dより上位にある。
図11は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21、出口側マニホールド孔23、両マニホールド孔を連絡するガス流路27、燃料ガスの入口側マニホールド孔22、出口側マニホールド孔24、冷却水の入口側マニホールド孔25および出口側マニホールド孔26を有する。入口側マニホールド孔21および22は、その断面形状においてガス供給管とガス流路との間に括れ部29を有する。
図12は本実施の形態に係る燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。セパレータの酸化剤ガスの入口側マニホールド内部が示されている。ガス供給管11が入口側マニホールド21’内に位置するような長さを有しており、入口側マニホールド21’内にガス供給管11の延長部分(配管)を配置し、その延長部分の上面にガス供給のためのφ5mmの穴30を10mm間隔で複数個設けた。なお、1は導電性セパレータ、2はMEA、3は集電板、4は絶縁板、5は端板である。
図13は本実施の形態に係る燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。セパレータの燃料ガスの入口側マニホールド21’内部が示されている。ガス供給管11が入口側マニホールド21’内に位置するような長さを有しており、入口側マニホールド21’内にガス供給管11の延長部分(配管)を配置し、その延長部分の上面にガス供給のためのφ5mmの穴31を複数個設けた。この際、入口側マニホールド21’とガス供給管11との接続部11aから、入口側マニホールド21’の奥に行くにしたがって、穴同士の間隔を狭くしていった。なお、1は導電性セパレータ、2はMEA、3は集電板、4は絶縁板、5は端板である。
《参考例1》
アセチレンブラック系カーボン粉末に、平均粒径約30Åの白金粒子を25重量%担持した。これをカソードの触媒とした。また、アセチレンブラック系カ−ボン粉末に、平均粒径約30Åの白金−ルテニウム合金粒子を25重量%担持した。これをアノードの触媒とした。これらの触媒粉末をイソプロパノールに分散させ、パーフルオロカーボンスルホン酸粉末のエチルアルコール分散液と混合してペースト状にした。これらのペーストを原料とし、スクリーン印刷法をもちいてそれぞれ厚み250μmのカーボン不織布の一方の面に塗工して触媒層を形成した。得られた各々の電極の触媒層に含まれる触媒金属量は0.3mg/cm2、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2とした。
導電性セパレータとMEAを交互に積層した。このときMEAを2セル積層する毎に冷却水を流す冷却部を設けた。MEAを50セル積層した後、表面に金メッキした銅板からなる集電板とポリフェニレンサルファイド製の絶縁板を介して、ステンレス鋼製の端板で挟み、両端板を締結ロッドで締結した。このとき、締結圧は電極の面積当たり10kgf/cm2とした。
比較例の電池の導電性セパレータを図8に示す。このセパレータ30は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔41および出口側マニホールド孔43、燃料ガスの入口側マニホールド孔42および出口側マニホールド孔44、並びに冷却水の入口側マニホールド孔45および出口側マニホールド孔46を有する。セパレータ30は、さらにカソード側にマニホールド孔41と43を連絡する2本の並行する溝からなるガス流路47を有し、アノード側にはマニホールド孔42と44を連絡するガス流路を有する。図8に示すように、酸化剤ガス供給管31からセパレータ30の上部の入口側マニホールド41に供給される酸化剤ガスは、重力方向下向きに流れ、出口側マニホールド孔43からガス排出管33に排出される。燃料ガスについても、同様に、入口側マニホールド孔42からガス流路に流れ、出口側マニホールド孔44から排出管に排出される。
本参考例では、参考形態2、すなわち図3のカソード側セパレータのように、入口側マニホールドに接続するガス供給管の位置をマニホールドの下端からマニホールドの縦長さの10分の1の位置に設定した電池を作製した。それ以外の構成は参考例1と同じとした。本参考例と参考例1の電池を定格運転条件で連続運転した結果を図10に示す。
本参考例では、ガスが重力方向下向きに流れ、縦長形状のマニホールドについて試みたが、図4のように重力方向上向きのガス流れがあるセパレータ、あるいは図5や図6のように、マニホールド形状が異形のセパレータにおいても安定した電池性能が得られることが確認された。
本参考例では、参考形態6のセパレータ、すなわち図7のセパレータを用いた電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例2の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例2の電池では、ガス流路の出口側が出口側マニホールドの上部につながっているため、連続運転によってマニホールド下部に結露水や生成水が一時的に滞留し、スタック内での反応ガス圧力が脈動することによって電池性能が不安定になったのである。一方、本参考例の電池では、ガス流路の出口側とガス排出管のマニホールドへの接続位置をマニホールド内の下部に設けたので、未反応ガスの動圧を利用して結露水や生成水の滞留を常時防ぎ、ガスや水の安定した排出が可能となっている。
本参考例では、参考形態7のセパレータ、すなわち図11のセパレータを用いて電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例2の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例2の電池では、入口側マニホールド孔21からガス流路内へのガス分配が完全に均一でなく、各セルでのガス利用率にばらつきが生じたためである。一方、本参考例の電池では、入口側マニホールドにおいて、ガス供給管と、前記ガス流路が入口側マニホールドに連絡する部分の最下部との括れ部を設けたので、入口側マニホールド内のガス圧力を均一に保つことができ、入口側マニホールド内における動圧を静圧に回復させることによって、各セルへの均一なガス供給を実現することができる。
本実施例では、図12に示すように酸化剤ガスの入口側マニホールド内にガス供給管を伸ばして延長部分(配管)を設け、その上面にガス供給のためのφ5mmの穴30を10mm間隔で設けた以外は、参考例1と同様にして電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例1の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例1の電池では、入口側マニホールド孔21からガス流路内へのガス分配が完全に均一でなく、各セルでのガス利用率にばらつきが生じたためである。一方、本実施例の電池では、入口側マニホールドにおいて、ガス供給管をマニホールド内に延長させ、その延長部分の重力方向上側に穴を設けたので、入口側マニホールド内のガス圧力を均一に保つことができ、入口側マニホールド内における動圧を静圧に回復させることによって、各セルへの均一なガス供給を実現することができる。
本実施例では、図13に示すように燃料ガスの入口側マニホールド内にガス供給管を伸ばして延長部分(配管)を設け、その上面にガス供給のためのφ5mmの穴31を20個個設けた。この際、入口側マニホールド孔21’とガス供給管11との接続部11aから、入口側マニホールド孔21’の奥に行くにしたがって、穴31の間隔を狭くしていった。具体的には、1番目から6番目までの間隔をそれぞれ10mm、6番目から11番目までの間隔をそれぞれ8mmとし、11番目から16番目までの間隔をそれぞれ6mm、16番目から20番目までの間隔をそれぞれ4mmと狭くしていった。これ以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。この電池を定格運転した結果、実施例1の電池に比べて、さらに長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、実施例2の電池でも、入口側マニホールド孔21’からガス流路内へのガス分配が均一となったが、穴の間隔を狭くしていくことによって、入口側マニホールドの奥においても供給ガスの圧力損失を防ぐことができたためである。
2 MEA
3 集電板
4 絶縁板
5 端板
6 締結ロッド
11 酸化剤ガス供給管
12 燃料ガス供給管
15 冷却水供給管
13 酸化剤ガス排出管
14 燃料ガス排出管
16 冷却水排出管
21 酸化剤ガスの入口側マニホールド孔
22 燃料ガスの入口側マニホールド孔
25 冷却水の入口側マニホールド孔
23 酸化剤ガスの出口側マニホールド孔
24 燃料ガスの出口側マニホールド孔
26 冷却水の出口側マニホールド孔
27 酸化剤ガスの流路
28 電極領域
29 括れ部
Claims (7)
- 水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の電極、および前記一方の電極に燃料ガスを供給・排出するガス流路を有し、他方の電極に酸化剤ガスを供給・排出するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなるセルスタックを具備する固体高分子型燃料電池であって、
前記導電性セパレータの燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス流路の入口側マニホールドに連絡する部分の最下部が、前記マニホールドに接続されるガス供給管の位置より重力方向において上位にあり、
前記ガス供給管が、前記入口側マニホールド内に先端が位置するような長さを有し、かつ、前記ガス供給管の前記入口側マニホールド内の部分の重力方向上側に、ガス供給のための複数の穴が設けられている、高分子電解質型燃料電池。 - 前記導電性セパレータの主面が重力方向と平行になるように設置されている請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記入口側マニホールドが縦長断面形状を有する請求項2記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記入口側マニホールドに接続される前記ガス供給管の接続部分が前記マニホールドの中央より下方に位置する請求項2または3記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記導電性セパレータの少なくとも一方のガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分、および前記出口側マニホールドとガス排出管との接続部分が、前記出口側マニホールド内の下方に位置する請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記ガス供給管と前記最下部との間に、前記入口側マニホールドがその断面形状において括れ部を有する請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記穴同士の間隔が、前記入口側マニホールドの開口部から遠くなるにしたがって狭くなる請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
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