JP4659376B2 - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ポータブル電源、電気自動車用電源、家庭内コージェネレーションシステム等に使用される固体高分子電解質を用いた燃料電池に関する。
固体高分子電解質を用いた燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。基本的には、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜、および前記高分子電解質膜を挟む一対の電極からなる。電極は、白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層、および触媒層の外面に形成された、通気性と電子導電性を併せ持つガス拡散層からなる。
供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスが外にリークしたり、二種類のガスが互いに混合したりしないように、電極の周囲には高分子電解質膜を挟んでガスシール材やガスケットが配置される。このシール材やガスケットは、電極及び高分子電解質膜と一体化してあらかじめ組み立てられる。これを、MEA(電解質膜電極接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接するMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性のセパレータが配置される。セパレータのMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、生成水や余剰ガスを運び去るためのガス流路が形成される。ガス流路はセパレータと別に設けることもできるが、セパレータの表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。
この溝に反応ガスを供給するためには、ガスを供給する配管を使用するセパレータの枚数に分岐し、その分岐先を直接セパレータの溝につなぎ込む配管治具が必要となる。この治具をマニホールドと呼び、上記のような反応ガスの供給配管から直接つなぎ込むタイプを外部マニホールドと呼ぶ。このマニホールドには、構造をより簡単にした内部マニホールドと呼ぶ形式のものがある。内部マニホールドとは、ガス流路を形成したセパレータに、貫通した孔を設け、ガス流路の入口をこの孔まで通し、この孔から直接反応ガスを供給するものである。
この孔の面積は、全セパレータのガス流路の総断面積より大きくする必要がある。これは、この孔の面積が小さいとガス供給の際のマニホールドにおける圧力損失が大きくなり、ブロアなどによるガス供給に必要な仕事量が増大し、結果的にシステム全体の効率低下を招いてしまうからである。そして、このような問題を回避し、マニホールドでの不必要な圧力損失を生じさせないために、前記孔の面積を増大させる必要がある。
燃料電池は運転中に発熱するので、電池を良好な温度状態に維持するために、冷却する必要がある。通常、1〜3セル毎に冷却媒体を流す冷却部がセパレータとセパレータとの間に挿入される。セパレータの背面に冷却媒体の流路を設けて冷却部とする場合が多い。これらのMEAとセパレータおよび冷却部を交互に重ねていき、10〜200セル積層した後、集電板と絶縁板を介して、端板でこれを挟み、締結ロッドで両端から固定するのが一般的な積層電池の構造である。
ここで、従来の燃料電池としては、ガス供給管またはガス排出管の内壁の下端の高さを、セパレータ内を貫通するマニホールド下端の高さと同じ位置、またはそれより低い位置に設定したものがある(特許文献1)。また、出口側(排出)マニホールドが、ガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分より下方にまで延長して形成され、ガス排出管もガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分より下方に設けられているものもある(特許文献2)。
特開2002−343400号公報 特開2003−223922号公報
この種の燃料電池の高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系の材料が使われている。この高分子電解質膜は、水分を含んだ状態でイオン伝導性を発現するため、通常は燃料ガスや酸化剤ガスを加湿して供給する必要がある。また、カソード側では反応によって水が生成するため、電池の動作温度より高い露点を有するようにガスを加湿して供給すると、電池内部のガス流路や電極内部で結露が発生し、水詰まりなどの現象によって電池性能が安定しない、または性能が低下する問題があった。通常、このような濡れすぎによる電池性能の低下や動作不安定が発現する現象をフラッディング現象と呼ぶ。この現象がアノード側で発生すると、燃料ガスの欠乏を招き、電池にとって致命傷となってしまう。これは燃料ガスが不足している状態で、負荷電流を強制的に取り出すと、電子とプロトンを生成しようとして、アノード側の触媒を担持しているカーボンが雰囲気中の水と反応してしまう。その結果、触媒層のカーボンの溶出により、アノード側の触媒層が破壊される。そのため、アノード側のフラッディングについては最善の注意を払わなくてはならない。
また、燃料電池を発電システムとする場合には、供給ガスの加湿などを含めたシステム化が必要である。システムの簡素化、システム効率の向上のためには、供給ガスの加湿露点を少しでも低減して供給することが好ましい。以上のように、フラッディング現象の防止、システム効率の向上、システムの簡素化などの観点から、供給ガスは、電池温度に対して少し低めの露点で加湿し供給することが通常であった。
しかしながら、電池の高性能化のためには、高分子電解質膜のイオン伝導度を向上させる必要がある。そのためには、供給ガスを相対湿度100%に近い湿度、または相対湿度100%以上となるように加湿して供給することが好ましい。また、高分子電解質膜の耐久性の観点からも、供給ガスを高加湿で供給するのが好ましい。
供給ガスを相対湿度100%に近い湿度となるように加湿して供給しようとすると、供給ガスが燃料電池スタックの上流側で結露する可能性が高くなり、結露水がミストとなって、スタックに供給されることがあった。セパレータの面が重力方向と平行で、ガス供給のための入口側マニホールドをセパレータ面の重力方向上部に設けた場合、重力の影響によってそのミストがガス供給管に近いセルへ集中して流れ込む。その結果、それらのセルはフラッディングにより性能が低下することとなる。さらに、入口側マニホールドが重力方向上部に位置しない場合は、入口側マニホールド内にミストが滞留し、ガス供給が不安定になる現象を引き起こす。これと同様に、セルによってガス供給量が微妙に異なってしまう。
また、特許文献1記載の燃料電池においては、マニホールドの投影面からガス供給管またはガス排出管がはみ出してしまうことになり、セパレータ面内で発電に寄与しない無駄な領域が生じてしまう可能性がある。さらに、特許文献2記載の発明においては、出口側マニホールドのみについて限定しており、入口側マニホールドに起因する燃料電池への不安定現象を招いてしまう可能性がある。
本発明は、以上の課題を解決し、積層スタックの全セルへの均一なガス供給を実現できる燃料電池を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、マニホールド内部に結露水が滞留することなく、ガスを均一に安定供給することができ、従って、電池性能の低下あるいは不安定化がなく、信頼性の高いコンパクトな高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の高分子電解質型燃料電池は、水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の電極、および前記一方の電極に燃料ガスを供給・排出するガス流路を有し、他方の電極に酸化剤ガスを供給・排出するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなるセルスタックを具備する高分子電解質型燃料電池であって、前記導電性セパレータの燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス流路の入口側マニホールドに連絡する部分の最下部が、前記マニホールドに接続されるガス供給管の位置より重力方向において上位にあり、前記ガス供給管が、前記入口側マニホールド内に先端が位置するような長さを有し、かつ、前記ガス供給管の前記入口側マニホールド内の部分の重力方向上側に、ガス供給のための複数の穴が設けられていることを特徴とする。ガス流路が複数ある場合は、最も下のガス流路の最下部が、前記マニホールドに接続されるガス供給管の位置より重力方向において上位にあればよい。
ここで、前記導電性セパレータは、その主面が重力方向と平行になるように設置されている。
前記入口側マニホールドは、縦長形状を有することが好ましい。
前記入口側マニホールドに接続される前記ガス供給管の接続位置が、前記マニホールドの中央より下方に位置することが好ましい。
前記導電性セパレータの少なくとも一方のガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分、および前記出口側マニホールドとガス排出管との接合部分が、前記出口側マニホールド内の下方に位置することが好ましい。
また、前記供給マニホールドが、前記ガス供給管と前記最下部との間で、その断面形状において括れ部を有するのが好ましい
また、前記穴同士の間隔を、前記ガス供給管と前記供給マニホールドとの接続部分から遠くなるにしたがって狭くするのが好ましい。
本発明によれば、積層スタックの全セルへの均一なガス供給を実現し、マニホールド内部に結露水が滞留することなく、ガスの安定供給で電池性能の低下あるいは不安定化を防止することができるため、燃料電池の信頼性を向上することができる。
本発明のポイントは、導電性セパレータの燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス流路の入口側マニホールドに連絡する部分を、前記マニホールドに接続されるガス供給管の位置より重力方向の上位にしたことである。これによって、安定なガス供給とマニホールド内での結露水の滞留を防止し、電池性能の低下あるいは不安定現象を回避することができる。
従来の燃料電池において、セパレータが重力方向と平行で、ガス供給のための入口側マニホールドをセパレータの重力方向上位とした場合、マニホールドは一般的に横長に設計され、マニホールドの底にガス流路が接続されている。そのため、ガスを相対湿度100%近くに加湿して供給すると、セルスタックの上流で結露したミストがガス供給管側のセルに集中して供給され、フラッディング現象を招き、電池性能が低下する。
本発明は、セパレータのガス流路の入口側マニホールドに連絡する部分を、前記入口側マニホールドに接続されるガス供給管の位置より上位に設置することで、各セルへの安定したガス供給を実現するものである。つまり、セパレータが重力方向と平行で、マニホールドの断面形状を縦長あるいは縦長形状の部分を有する形状とし、入口側マニホールド内で重力方向に対して上方にガス流路の入り口を設定することにより、ガス供給管入口側セルへのミストの集中供給を回避し、安定なガス供給を行うのである。
マニホールドの断面形状を縦長形状とした場合、長時間の運転において、供給ガスが燃料電池スタックに供給される上流側において、部分的に結露した水が入口側マニホールドの下部に停滞するおそれがある。そうすると、マニホールドの有効断面積の減少により、全体のガス経路の圧力損失を増加させ、ガス供給のための仕事量の増大を招く。その結果、燃料電池スタックを用いたシステム全体の効率を低下させる。また、その停滞水の脈動により、ガス供給が不安定になりかねない。そこで、マニホールドに接続するガス供給管をマニホールド中央より下方に位置させることにより、供給ガスの動圧を利用して結露水を停滞させないようにする。
また、ガス分配を均一に行わないと各セルでガス利用率が変化する。その結果、各セルの電池性能にばらつきが生じかねない。そこで、入口側マニホールドにおいて、ガス供給管と、前記ガス流路が入口側マニホールドに連絡する部分の最下部との括れ部を設けることによって、入口側マニホールド内のガス圧力を均一に保つ。すなわち、入口側マニホールド内における動圧を静圧に回復させることによって、各セルへの均一なガス供給を実現することができる。この理論により、ガス供給管をマニホールド内に延長させ、その延長部分の重力方向上側に孔を設けることによっても、同様に均一なガス供給を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
参考形態1》
図1は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1は、縦220mm、横220mm、厚さ3mmの等方性黒鉛板に、機械加工によってガス流路およびマニホールド孔を設けることによって作製する。セパレータ1は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21および出口側マニホールド孔23、燃料ガスの入口側マニホールド孔22および出口側マニホールド孔24、並びに冷却水の入口側マニホールド孔25および出口側マニホールド孔26を有する。セパレータ1は、さらにカソード側にマニホールド孔21と23を連絡する2本の並行する溝からなるガス流路27を有し、アノード側にはマニホールド孔22と24を連絡するガス流路を有する。
このガス流路の溝の寸法は、幅2mm、深さ2mmとする。点線28で囲まれた部分が電極に接する領域であり、この領域は縦150mm、横150mmとした。酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21は縦80mm、横15mmの長方形とし、四隅にR部を設ける。このマニホールド孔の底部をセパレータの中央線と重ね、その中央線より上側にマニホールドを配置する。また、このマニホールド孔の面積は、50セルスタック積層時の全セパレータの酸化剤ガス流路の総断面積の2倍以上となるように設計する。
冷却部を設けるには、上記のカソード側セパレータとアノード側セパレータを兼ねる単一のセパレータの代わりに、背面に冷却水の流路を設けたカソード側セパレータと背面に冷却水の流路を設けたアノード側セパレータとを冷却水の流路が向き合うように組み合わせた複合セパレータを用いる。
図2は上記のようなセパレータ1とMEA2を交互に積層したセルスタックを用いた燃料電池を示す。セルスタックは、集電板3および絶縁板4を介して端板5で挟み、締結ロッド6およびナット7により締結されている。この燃料電池においては、MEA、集電板、絶縁板および端板に、前記セパレータの各マニホールド孔に連通するマニホールド孔が形成され、それらマニホールド孔がそれぞれガスおよび冷却水の入口側マニホールドおよび出口側マニホールドを構成する。一方の端板には、酸化剤ガスの入口側マニホールドに連通する酸化剤ガス供給管11、燃料ガスのマニホールドに連通する燃料ガス供給管12および冷却水のマニホールドに連通する冷却水供給管15が取り付けられている。他方の端板には、それぞれの出口側マニホールドに連通する酸化剤ガス排出管13、燃料ガス排出管14および冷却水排出管16が取り付けられている。
この燃料電池は、セパレータ1のカソード側およびアノード側の面が地面に対して垂直となり、冷却水の入口側マニホールド孔25が上位となるように設置される。そして、酸化剤ガスの供給管11は、図1に示すように、縦長に形成されたマニホールド孔21内において、上部から約1/3の位置と対応するように端板に接続されている。そして、セパレータのガス流路27の入口側は、ガス供給管11の位置より上位となるように設計されている。また、ガス流路は重力方向下側において出口側マニホールド孔23に接続され、この出口側マニホールド孔23には酸化剤ガス排出管13が接続される。図示しないが、燃料に関するガス供給管とセパレータのガス流路の入口側との位置関係および排出管とセパレータのガス流路の出口側との関係は、酸化剤ガスのそれらと同じとする。
参考形態2》
図3は本参考形態におけるセパレータのカソード側の正面図である。この例では、酸化剤ガス供給管11の端板への接続位置をマニホールド孔21の下部から約1/10の位置にした他は参考形態1と同様である。図1と同じ要素には同じ番号を付し、説明を省略する。以下の図においても同様とする。
参考形態3》
図4は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Aは、酸化剤ガスの流路27Aの直線部が左右方向にされている。入口側マニホールド孔21Aおよび出口側マニホールド孔23Aは、縦長形状に設けられている。そして、ガス供給管11Aは、マニホールド孔21A内の下方に配置され、ガス排出管13Aは、ガス流路を構成する2本の溝のうち最下部に位置する溝の出口と同じ高さに位置するように、端板に接続した。また、ガス流路27Aの入口は、管11Aより上位にある。
参考形態4》
図5は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Bは、酸化剤ガスのガス流路27Bの直線部が上下方向にされている。そして、ガス供給管11Bおよび排出管13Bは、マニホールド孔21Bおよび23B内の下方に配置され、ガス流路27Bの入口および出口はいずれも管11Bおよび13Bより上位にある。
参考形態5》
図6は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1Cは、L字状の入口側マニホールド孔21Cおよび出口側マニホールド孔23Cを有し、ガス供給管11Cおよびガス排出管13Cはそれぞれマニホールド孔21Cおよび23C内の下方に配置されている。両マニホールド孔を連絡するガス流路27Cの入口および出口はいずれも管より上位にある。
参考形態6》
図7は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。このセパレータにおいては、べてのマニホールド孔の形状が三角形である。セパレータ1Dは、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21Dおよび出口側マニホールド孔23D、両マニホールド孔を連絡するガス流路27D、燃料ガスの入口側マニホールド孔22Dおよび出口側マニホールド孔24D、冷却水の入口側マニホールド孔25Dおよび出口側マニホールド孔26Dを有する。酸化剤ガスの供給管11Dはマニホールド孔21D内の下方に、また酸化剤ガスの排出管13Dはマニホールド孔23D内の下方にあり、ガス流路27Dの入口は管11Dより上位にある。
参考形態7》
図11は本参考形態のセパレータのカソード側の正面図である。セパレータ1は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔21、出口側マニホールド孔23、両マニホールド孔を連絡するガス流路27、燃料ガスの入口側マニホールド孔22、出口側マニホールド孔24、冷却水の入口側マニホールド孔25および出口側マニホールド孔26を有する。入口側マニホールド孔21および22は、その断面形状においてガス供給管とガス流路との間に括れ部29を有する。
《実施の形態
図12は本実施の形態に係る燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。セパレータの酸化剤ガスの入口側マニホールド内部が示されている。ガス供給管11が入口側マニホールド21’内に位置するような長さを有しており、入口側マニホールド21’内にガス供給管11の延長部分(配管)を配置し、その延長部分の上面にガス供給のためのφ5mmの穴30を10mm間隔で複数個設けた。なお、1は導電性セパレータ、2はMEA、3は集電板、4は絶縁板、5は端板である。
《実施の形態
図13は本実施の形態に係る燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。セパレータの燃料ガスの入口側マニホールド21’内部が示されている。ガス供給管11が入口側マニホールド21’内に位置するような長さを有しており、入口側マニホールド21’内にガス供給管11の延長部分(配管)を配置し、その延長部分の上面にガス供給のためのφ5mmの穴31を複数個設けた。この際、入口側マニホールド21’とガス供給管11との接続部11aから、入口側マニホールド21’の奥に行くにしたがって、穴同士の間隔を狭くしていった。なお、1は導電性セパレータ、2はMEA、3は集電板、4は絶縁板、5は端板である。
以下、本発明の実施例を説明する。
参考例1》
アセチレンブラック系カーボン粉末に、平均粒径約30Åの白金粒子を25重量%担持した。これをカソードの触媒とした。また、アセチレンブラック系カ−ボン粉末に、平均粒径約30Åの白金−ルテニウム合金粒子を25重量%担持した。これをアノードの触媒とした。これらの触媒粉末をイソプロパノールに分散させ、パーフルオロカーボンスルホン酸粉末のエチルアルコール分散液と混合してペースト状にした。これらのペーストを原料とし、スクリーン印刷法をもちいてそれぞれ厚み250μmのカーボン不織布の一方の面に塗工して触媒層を形成した。得られた各々の電極の触媒層に含まれる触媒金属量は0.3mg/cm2、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2とした。
これらの電極は、触媒材料以外はカソード・アノード共に同一構成である。これらの電極を、それより一回り大きい面積を有する水素イオン伝導性高分子電解質膜の中心部の両面に、印刷した触媒層が電解質膜側に接するようにホットプレスによって接合した。さらに、厚さ250μmのフッ素系ゴムシートを所定の大きさに切り抜き、前述の電極外周部に露出している電解質膜を挟んで両側に配置し、ホットプレスによって接合一体化させ、MEAを作製した。ここでは、水素イオン伝導性高分子電解質膜として、パーフルオロカーボンスルホン酸を30μmの厚みに薄膜化したものを用いた。
参考例では、参考形態1で説明した構造の導電性セパレータを用いた。ここに用いた導電性セパレータは、その板面が地面に垂直となり、冷却水の入口側マニホールド孔25が上位となるように電池が設置される。反応ガスは、水平方向の直線部とターン部からなるサーペンタイン型ガス流路を重力方向下向きに流れる。
導電性セパレータとMEAを交互に積層した。このときMEAを2セル積層する毎に冷却水を流す冷却部を設けた。MEAを50セル積層した後、表面に金メッキした銅板からなる集電板とポリフェニレンサルファイド製の絶縁板を介して、ステンレス鋼製の端板で挟み、両端板を締結ロッドで締結した。このとき、締結圧は電極の面積当たり10kgf/cm2とした。
この燃料電池スタックの一方の端板には、図2のように、反応ガスおよび冷却水を燃料電池スタック内の各マニホールドに供給する供給管が接続され、他方の端板には排出管が接続されている。しかし、燃料電池スタック内をUターンして同じ端板から供給・排出する構造としてもよい。
《比較例1》
比較例の電池の導電性セパレータを図8に示す。このセパレータ30は、酸化剤ガスの入口側マニホールド孔41および出口側マニホールド孔43、燃料ガスの入口側マニホールド孔42および出口側マニホールド孔44、並びに冷却水の入口側マニホールド孔45および出口側マニホールド孔46を有する。セパレータ30は、さらにカソード側にマニホールド孔41と43を連絡する2本の並行する溝からなるガス流路47を有し、アノード側にはマニホールド孔42と44を連絡するガス流路を有する。図8に示すように、酸化剤ガス供給管31からセパレータ30の上部の入口側マニホールド41に供給される酸化剤ガスは、重力方向下向きに流れ、出口側マニホールド孔43からガス排出管33に排出される。燃料ガスについても、同様に、入口側マニホールド孔42からガス流路に流れ、出口側マニホールド孔44から排出管に排出される。
参考例1および比較例1の高分子電解質型燃料電池を75℃に保持し、75℃の露点となるよう加湿・加温した燃料(80%水素ガス/20%二酸化炭素/10ppm一酸化炭素)をアノードに、75℃の露点となるように加湿・加温した空気をカソードにそれぞれ供給し、定格運転を行った。電池の定格運転条件は、燃料利用率75%、酸素利用率40%、電流密度0.3A/cm2である。この運転での各電池のセル電圧の比較を図9に示す。図9の横軸には、ガスの入口側からのセル番号を示す。
比較例1の電池では、入口のガス供給管に近い若い番号のセルの性能が不規則に低下している。この比較例1の電池は、入口側マニホールドの下部からセパレータのガス流路にガスが供給される構成である。そのため、高加湿で供給されるガスは、スタックの上流側で一部が結露し、その結露水がガス供給管に近い若い番号のセルのガス流路に流れ込み、フラッディングを起こして性能が低下した。一方、参考例1の電池では、セパレータの反応ガスの入口側マニホールド孔に接続するガス供給管の位置よりマニホールド孔へのガス流路の接続位置を重力方向に対して上方に設置することによって、マニホールド孔内でミストを一時的にトラップし、集中したミスト供給を回避した。以上より本参考例の有効性が確認された。
参考例2》
参考例では、参考形態2、すなわち図3のカソード側セパレータのように、入口側マニホールドに接続するガス供給管の位置をマニホールドの下端からマニホールドの縦長さの10分の1の位置に設定した電池を作製した。それ以外の構成は参考例1と同じとした。本参考例と参考例1の電池を定格運転条件で連続運転した結果を図10に示す。
参考例1の電池は、電池性能が脈動しており、時折瞬間的に電池電圧が低下する現象を示した。それに対して、本参考例の電池は、安定した性能を示した。これは、参考例1の電池では、ガス供給管の位置がマニホールドの上部から3分の1の位置にあるため、ガス供給管の途中で結露した水がマニホールドの下部に滞留し、その滞留水によって供給ガス圧が脈動したり、その滞留水が不規則にガス流路に供給されてセルのガス流路が一時的に閉塞したりして、電池電圧が低下したのである。さらに、参考例1の電池における燃料電池スタック全体のガス流通経路の圧力損失は、マニホールドに結露水等が滞留したことによって、実際は設計値に対して30%も大きくなり、燃料電池システム全体の効率を低下させた。それに対して、本参考例の電池では、圧力損失は設計通りの値を示しており、マニホールド内での水滞留の問題を発生させることなく運転できることが確認された。
また、マニホールドに接続するガス供給管の位置は、マニホールド中央から下方の位置であればどの位置でも、水の滞留による不安定現象が発生しない結果が得られた。
参考例では、ガスが重力方向下向きに流れ、縦長形状のマニホールドについて試みたが、図4のように重力方向上向きのガス流れがあるセパレータ、あるいは図5や図6のように、マニホールド形状が異形のセパレータにおいても安定した電池性能が得られることが確認された。
参考例3》
参考例では、参考形態6のセパレータ、すなわち図7のセパレータを用いた電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例2の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例2の電池では、ガス流路の出口側が出口側マニホールドの上部につながっているため、連続運転によってマニホールド下部に結露水や生成水が一時的に滞留し、スタック内での反応ガス圧力が脈動することによって電池性能が不安定になったのである。一方、本参考例の電池では、ガス流路の出口側とガス排出管のマニホールドへの接続位置をマニホールド内の下部に設けたので、未反応ガスの動圧を利用して結露水や生成水の滞留を常時防ぎ、ガスや水の安定した排出が可能となっている。
また、図7のセパレータを用いたセルスタックにおいて、出口側マニホールドからスタック外部に未反応ガスを排出するためのガス排出管の位置を、マニホールド中央に変更すると、明らかにマニホールド下部に結露水や生成水が滞留し、電池性能が不安定になった。本参考例の電池では、ガス排出管がマニホールド内の下部に設置されているため、水の滞留が発生せず、安定した電池性能が確保される。
参考例4》
参考例では、参考形態7のセパレータ、すなわち図11のセパレータを用いて電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例2の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例2の電池では、入口側マニホールド孔21からガス流路内へのガス分配が完全に均一でなく、各セルでのガス利用率にばらつきが生じたためである。一方、本参考例の電池では、入口側マニホールドにおいて、ガス供給管と、前記ガス流路が入口側マニホールドに連絡する部分の最下部との括れ部を設けたので、入口側マニホールド内のガス圧力を均一に保つことができ、入口側マニホールド内における動圧を静圧に回復させることによって、各セルへの均一なガス供給を実現することができる。
《実施例
本実施例では、図12に示すように酸化剤ガスの入口側マニホールド内にガス供給管を伸ばして延長部分(配管)を設け、その上面にガス供給のためのφ5mmの穴30を10mm間隔で設けた以外は、参考例1と同様にして電池を作製した。この電池を定格運転した結果、参考例1の電池に比べて、より長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、参考例1の電池では、入口側マニホールド孔21からガス流路内へのガス分配が完全に均一でなく、各セルでのガス利用率にばらつきが生じたためである。一方、本実施例の電池では、入口側マニホールドにおいて、ガス供給管をマニホールド内に延長させ、その延長部分の重力方向上側に穴を設けたので、入口側マニホールド内のガス圧力を均一に保つことができ、入口側マニホールド内における動圧を静圧に回復させることによって、各セルへの均一なガス供給を実現することができる。
《実施例
本実施例では、図13に示すように燃料ガスの入口側マニホールド内にガス供給管を伸ばして延長部分(配管)を設け、その上面にガス供給のためのφ5mmの穴31を20個個設けた。この際、入口側マニホールド孔21’とガス供給管11との接続部11aから、入口側マニホールド孔21’の奥に行くにしたがって、穴31の間隔を狭くしていった。具体的には、1番目から6番目までの間隔をそれぞれ10mm、6番目から11番目までの間隔をそれぞれ8mmとし、11番目から16番目までの間隔をそれぞれ6mm、16番目から20番目までの間隔をそれぞれ4mmと狭くしていった。これ以外は、実施例と同様にして電池を作製した。この電池を定格運転した結果、実施例の電池に比べて、さらに長時間での安定した電池性能を確保できることが確認された。これは、実施例の電池でも、入口側マニホールド孔21’からガス流路内へのガス分配が均一となったが、穴の間隔を狭くしていくことによって、入口側マニホールドの奥においても供給ガスの圧力損失を防ぐことができたためである。
以上の実施例および参考例では、カソード側およびアノード側において、ガスの供給管およびセパレータのガス流路の入口側とマニホールドとの位置関係を規定し、さらにはガスの排出管およびセパレータのガス流路の出口側とマニホールドとの位置関係を規定した。しかし、カソード側またはアノード側においてのみ前記のような位置関係を規定してもそれなりの効果を得ることができる。また、実施例および参考例では、内部マニホールド形式の電池について説明したが、外部マニホールド形式の電池にも同様に適用することができる。
以上のように本発明によれば、積層スタックの全セルへの均一なガス供給を実現し、マニホールド内部に結露水が滞留することなく、ガスの安定供給で電池性能の低下あるいは不安定化を防止することができるため、燃料電池の信頼性を向上することができる。したがって、この燃料電池は家庭用コージェネレーションシステムや自動車用燃料電池への応用が好適であると考えられる。
参考形態1の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考形態1の燃料電池の側面図である。 参考形態2の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考形態3の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考形態4の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考形態5の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考形態6の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 比較例の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 参考例1および比較例1の燃料電池の各セルの電圧の比較を示す図である。 参考例1、参考例2および比較例1の燃料電池の連続運転時の電圧の変化を示す図である。 参考形態7の燃料電池に用いた導電性セパレータのカソード側の正面図である。 本発明の実施の形態の燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。 本発明の実施の形態の燃料電池の一部を切り欠いた正面図である。
符号の説明
1 導電性セパレータ
2 MEA
3 集電板
4 絶縁板
5 端板
6 締結ロッド
11 酸化剤ガス供給管
12 燃料ガス供給管
15 冷却水供給管
13 酸化剤ガス排出管
14 燃料ガス排出管
16 冷却水排出管
21 酸化剤ガスの入口側マニホールド孔
22 燃料ガスの入口側マニホールド孔
25 冷却水の入口側マニホールド孔
23 酸化剤ガスの出口側マニホールド孔
24 燃料ガスの出口側マニホールド孔
26 冷却水の出口側マニホールド孔
27 酸化剤ガスの流路
28 電極領域
29 括れ部

Claims (7)

  1. 水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の電極、および前記一方の電極に燃料ガスを供給・排出するガス流路を有し、他方の電極に酸化剤ガスを供給・排出するガス流路を有する一対の導電性セパレータからなるセルスタックを具備する固体高分子型燃料電池であって、
    前記導電性セパレータの燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス流路の入口側マニホールドに連絡する部分の最下部が、前記マニホールドに接続されるガス供給管の位置より重力方向において上位にあり、
    前記ガス供給管が、前記入口側マニホールド内に先端が位置するような長さを有し、かつ、前記ガス供給管の前記入口側マニホールド内の部分の重力方向上側に、ガス供給のための複数の穴が設けられている、高分子電解質型燃料電池。
  2. 前記導電性セパレータの主面が重力方向と平行になるように設置されている請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
  3. 前記入口側マニホールドが縦長断面形状を有する請求項2記載の高分子電解質型燃料電池。
  4. 前記入口側マニホールドに接続される前記ガス供給管の接続部分が前記マニホールドの中央より下方に位置する請求項2または3記載の高分子電解質型燃料電池。
  5. 前記導電性セパレータの少なくとも一方のガス流路の出口側マニホールドに連絡する部分、および前記出口側マニホールドとガス排出管との接続部分が、前記出口側マニホールド内の下方に位置する請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
  6. 前記ガス供給管と前記最下部との間に、前記入口側マニホールドがその断面形状において括れ部を有する請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
  7. 前記穴同士の間隔が、前記入口側マニホールドの開口部から遠くなるにしたがって狭くなる請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
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