本発明は、正逆回転可能なステップモーターに関するものである。
その技術分野における従来の技術として正逆回転用ステップモーターが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。正逆回転用ステップモーターは、携帯機器、情報機器の駆動装置、出力装置としての用途に多く用いられ、小型、低消電、高トルク、高速応答性、高精度位置決め特性などが要求されている。また、以下に示すような正逆回転用ステップモーターも開示されている。
従来技術の正逆回転用ステップモーターは、図9に示すように2極に着磁された円筒形の回転体5が、磁性材料からなるヨーク7に設けられた回転体用穴15内部に回転自在に支持されている。また、回転体用穴15の周辺には第1の磁極9、中心磁極11、第2の磁極13を備えており、第1の磁極9と中心磁極11は第1の結合部21によって磁気的に接続され、中心磁極11と第2の磁極13は第2の結合部23によって磁気的に接続されている。
そして、第1の磁極9には第1のコイル17が巻き回されており、第2の磁極13には第2のコイル19が巻き回されている。第1のコイル17と第2のコイル19は同じ線径の線材が同じ巻き数N巻かれている。
第1、第2のコイル17、19の巻き線両端は、駆動回路25に接続されており、それぞれ独立に電圧パルスを印加することが可能である。
従来の正逆回転用ステップモーターの駆動方法としては、電圧一定を保ったままで、オン、オフいずれかの状態を繰り返してコイルに印加するパルス制御法という駆動方法が一般的に用いられており、パルス制御法はオフタイムでの電力ロスが無く、オンタイムでも制御用トランジスタが完全に飽和しているためここでの電力ロスも非常に少なく、また、パルスの幅を変化させることでモーターの回転速度の制御や消費電流値のコントロールが可能であるという特徴を持つため、ステップモーターの制御法として優れている。
ここで、従来の正逆回転用ステップモーターの回転体を反時計回りに360度回転させるための駆動パルスについて図10を用いて説明する。図10(a)は第1のコイルに印加される駆動パルスを示す図で、図10(b)は第2のコイルに印加される駆動パルスを示す図であり、横軸は時刻、縦軸は電圧を示す。そして、各駆動パルスは第1の電圧パルス135,第2の電圧パルス137、第3の電圧パルス139、第4の電圧パルス141、第5の電圧パルス143、第6の電圧パルス145の6つの電圧パルスから構成されている。
第1の電圧パルス135は、第1のコイルに+3v印加し、第2のコイルには電圧印加が無いものであり、回転体を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させることができる。第2の電圧パルス137は、第1のコイルに電圧印加が無く、第2のコイルに−3v印加されるものであり、回転体を第2の回転位置から第3の回転位置に回転させることができる。第3の電圧パルス139は、第1のコイル及び第2のコイルに同時に−3v印加するものであり、回転体を第3の回転位置から第4の回転位置に回転させることができる。ここまでのパルスを連続して与えると回転体は反時計回りに180度回転することができる。
次に第4の電圧パルス141は、第1のコイルに−3v、第2のコイルには電圧印加が無いものであり、回転体を第4の回転位置から第5の回転位置に回転することができる。第5の電圧パルス143は、第1のコイルに電圧印加が無く、第2のコイルには+3vの印加があるものであり、回転体を第5の回転位置から第6の回転位置に回転させることができる。そして、第6の電圧パルス145は、第1のコイル及び第2のコイルに同時に電圧パルス+3vが印加されるものであり、回転体を第6の回転位置から第1の回転位置に回転させることができる。このように第4の電圧パルス141から第6の電圧パルス145を連続して与えると回転体は180度から360度まで回転することができる。
なお、第1の回転位置とは、回転体5のN極がY軸負方向を向いている状態のことをいい、第2の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約60度回転した方向を向いている位置である。また、第3の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約120度回転した方向を向いている位置であり、第4の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約180度回転した方向を向いている位置、すなわち、N極がY軸正方向を向いている位置である。そして、第5の回転位置は回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約240度回転した方向を向いている位置であり、第6の回転位置は回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約300度回転した方向を向いている位置である。
次に、従来技術の正逆回転用ステップモーターが第1の状態にあるときの磁束の流れについて図11を用いて説明する。第1の状態とは、2極に着磁された回転体5が第1の回転位置にあり、第1のコイル及び第2のコイルには電圧パルスを印加していない状態のときである。
第1の状態において、回転体5のN極から出た磁束Φmは、中心磁極11に流れ込み、中心磁極11はS極となり、流れ込んだ磁束Φmは、第1の結合部21と第1の磁極9にΦm/2が流れ、第2の結合部23と第2の磁極13にも磁束Φm/2が流れる。
第1の磁極9を流れる磁束は空隙を通り回転体5のS極に流れて磁路を形成する。そのため第1の磁極9はN極となる。また、第2の磁極13を流れる磁束は空隙を通り回転体5のS極に流れて磁路を形成する。そのため第2の磁極13もN極になる。
この様に磁路を形成することによって、第1の磁極9と第2の磁極13のN極と回転体5のS極とが引き合い、中心磁極11のS極と、回転体5のN極とが引き合うために、回転体5を第1の回転位置に無通電保持することができる。
次に、第2の状態における磁束の流れについて図12を用いて説明する。第2の状態とは回転体5が第1の回転位置にあり、回転体5を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させるために、第1の磁極9をN極にして、中心磁極11と第2の磁極13をS極にした状態である。第2の状態においては、第1の電圧パルス135を印加、すなわち第1のコイル17のコイル端子に+3vの電圧パルスを印加し、第2のコイルには電圧印加を行わない。
これによって、第1のコイル17より第1の磁極にはΦc1の磁束が生じ、Φc1は中心磁極11、第2の磁極13に分かれて流れ、回転体5の磁束と重ねると、第1の磁極9にはΦc1+Φm/2の磁束が生じ、中心磁極11には−Φc1/2−Φmの磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc1/2+Φm/2の磁束が生じることになる。なお、ここでの符号はY軸正方向をプラス、Y軸負方向をマイナスで表している。
そして、第1の磁極に流れる磁束Φc1とΦm/2はプラス符号であるため、第1の磁極9はN極になり、中心磁極11に流れる磁束−Φc1/2−Φmはマイナス符号であるため、中心磁極11はS極になる。そして、第2の磁極13に流れる磁束−Φc1/2+Φm/2は、Φc1はマイナス符号、Φmはプラス符号なので、第2の磁極13をS極にするためには、不等式−Φc1/2+Φm/2<0を満たす必要があり、Φm<Φc1となるような磁束を発生させることが可能な第1の電圧パルスを第1のコイル17に印加すると良い。
具体例としては、回転体5による磁束はΦm=0.200×10-6Wbに対し、3vの電圧パルスを印加することでΦc1=0.488×10-6Wbの磁束Φcを生じさせることができる。このようにすることで、Φm<Φc1を満たし、第2の磁極13をS極にすることができ、回転体5のN極は、第1の磁極9のN極と反発し、第2の磁極13のS極と吸引し、かつ、回転体5のS極は第1の磁極9のN極と吸引し、第2の磁極13のS極により反発されるため、回転トルクを得、第2の回転位置から第3の回転位置へ回転することができる。
次に、第3の状態における磁束の流れについて図13を用いて説明する。第3の状態とは回転体5が第2の回転位置にあり、回転体5を第2の回転位置から第3の回転位置に回転させるために第2の電圧パルス137を印加した状態である。
このとき、第2の回転位置における回転体5による磁束Φmは、中心磁極11と第2の磁極13にそれぞれΦm/2に分かれて流れ、第1の磁極9では磁束Φmとなり、回転体5のS極に流れ込む。又、第2のコイルによる磁束Φc2は第2の磁極13に流れ、Φc2が第2の結合部23を通り、第1の磁極9、中心磁極11に磁束Φc2/2が生じる。そして、回転体5の磁束と重ねると、第1の磁極9にはΦc2/2+Φmの磁束が生じ、中心磁極11にはΦc2/2−Φm/2の磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc2−Φm/2の磁束が生じることになる。なお、ここでの符号は、Y軸正をプラス、Y軸負をマイナスで表している。
第1の磁極9に流れる磁束Φc2/2+Φmは、Φc2もΦmもプラス符号であるため、第1の磁極9はN極になる。又、中心磁極11に流れる磁束Φc2−Φm/2は、Φc2はプラス符号、Φmはマイナス符号であるため、中心磁極11をN極にするにはΦc2>Φm/2を満たす必要がある。そして、第2の磁極13に流れる磁束−Φc2−Φm/2は、Φc2、Φmはマイナス符号なので、第2の磁極13はS極になる。よって、中心磁極11をN極にするために、Φm/2<Φc2となるような磁束を発生させることが可能な第2の電圧パルス137を第2のコイル19に印加する必要がある。
具体例としては、回転体5による磁束はΦm=0.200×10-6Wbに対し、3vの電圧パルスを印加することでΦc2=0.489×10-6Wbの磁束Φc2を生じさせることができる。このようにすることで、Φm/2<Φc2を満たすため、中心磁極をN極にすることができ、回転体5のN極は、中心磁極11のN極と反発し、第2の磁極13のS極と吸引し、かつ、回転体5のS極は第1の磁極9のN極と中心磁極11のN極とで吸引され、第2の磁極13のS極と反発するため、回転体5は反時計方向に回転トルクを得、第2の回転位置から第3の回転位置へ回転することができる。
次に、第4の状態における磁束の流れについて図14を用いて説明する。第4の状態とは回転体5が第3の回転位置にあり、回転体5を第3の回転位置から第4の回転位置に回転させるために、第3の電圧パルス139を印加した状態である。まず、第3の回転位置における回転体5による磁束Φmは第2の磁極13に流れ込み、第2の結合部23を通り、中心磁極11にΦm/2が流れ、残りは第1の結合部21と第1磁極9を通り、回転体
5のS極に流れ込む。
このとき、第1のコイル17により生じる磁束をΦc1、第2のコイル19により生じる磁束をΦc2とすると、第1の磁極9にはY軸負方向にΦc1が発生し、また、第2の磁極13にはY軸負方向にΦc2が発生し、Φc1は第1の結合部21を,Φc2は第2の結合部23を通り、中心磁極11に流れ込みΦc1+Φc2となる。そして、回転体の磁束と重ねて、Y軸正方向の磁束にプラス符号、Y軸負方向の磁束にマイナス符号をつけて表すと、第1の磁極9には−Φc1+Φm/2の磁束が生じ、中心磁極11には+Φc1+Φc2+Φm/2の磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc2−Φmの磁束が生じることになる。
回転体5を第3の回転位置から第4の回転位置に回転させるためには、第1の磁極9をS極にして、中心磁極11をN極、第2の磁極13をS極にする必要があり、第1の磁極9に流れる磁束−Φc1+Φm/2は、Φc1はマイナス符号でΦm/2はプラス符号であるため、第1の磁極9をS極にするためには−Φc1+Φm/2<0すなわちΦm<2×Φc1を満たすように電圧パルスを印加する必要がある。又、中心磁極11に流れる磁束+Φc1+Φc2+Φm/2は、Φc1、Φc2、Φmはいずれもプラス符号であるため、中心磁極11はN極になる。そして、第2の磁極13に流れる磁束−Φc2−Φmは、Φc2、Φmはマイナス符号なので、第2の磁極13はS極になる。
具体例としては、回転体5による磁束はΦm=0.200×10-6Wbに対し、3vの電圧パルスを印加することでΦc1=0.489×10-6Wbの磁束を生じさせることができる。このようにすることで、Φm<2×Φc1を満たすことができ、第1の磁極をS極にすることができる。そして、回転体5のS極は、第1の磁極9のS極と反発し、中心磁極11のN極と吸引し、かつ、回転体5のN極は第1の磁極9のS極と、第2の磁極13のS極との中間位置に動き、回転体のS極と中心磁極11のN極と吸引するため、反時計方向に回転させる回転トルクを得、第3の回転位置から第4の回転位置へ回転することができる。
次に、従来技術の正逆回転用ステップモーターが第5の状態にあるときの磁束の流れについて図15を用いて説明する。第5の状態とは、2極に着磁された回転体5が第4の回転位置にあり、コイルには電圧パルスを印加していない状態のときである。
第5の状態において、回転体5のN極から出た磁束をΦmとすると、第1の磁極9にΦm/2が、第2の磁極13に残るΦm/2が流れ込み、第1の磁極9と第2の磁極13はS極となり、第1の磁極9に流れ込んだ磁束Φm/2は、第1の結合部21に流れ込み、そして第2の磁極13に流れ込んだ磁束Φm/2は、第2の結合部23に流れ込み、中心磁極11は磁束ΦmがY軸正方向の向きに流れる。
ここで、Y軸正方向の磁束にプラス符号をつけ、Y軸負方向の磁束にマイナス符号を付けると、第1の磁極9、第2の磁極13に流れる磁束は−Φm/2となる。中心磁極11を流れる磁束は+Φmとなる、従って第1の磁極9はS極となる。また、第2の磁極13もS極になっている。そして、中心磁極11はN極になる。
この様に磁路を形成することによって、第1の磁極9と第2の磁極13のS極と回転体5のN極とが引き合い、中心磁極11のN極と、回転体5のS極とが引き合うために、回転体5を第4の回転位置に無通電保持することができる。
しかしながら、従来の正逆回転用ステップモーターは、下記に記載の問題点を有する。
従来技術の正逆回転用ステップモーターは、回転体を第3の回転位置から第4の回転位置に回転させる際には、第1のコイル17と第2のコイル19を同時に電流を流して磁束を発生させるため、第1の磁極9及び第2の磁極13を通る磁束量の時間変化によってコイルに生じる逆起電圧e=−N×dΦ/dtの検出はできない。逆起電圧が検出できないと回転体5が第3の回転位置から第4の回転位置に回転しているかどうかの判断ができず、動作していない場合でも、再度同じパルスを与えて正常な動作に戻すことができないため1周期分の無駄なパルスを与えることになり、場合によっては一瞬逆向きに動作するなどステップ不良の原因となった。
このステップ不良に関して、図16を用いて説明する。まず、第3の回転位置における回転体5による磁束Φmは第2の磁極13に流れ込み、第2の結合部23を通り、中心磁極11にΦm/2が、第1の磁極9にΦm/2が分かれて進み、中心磁極11と第1の磁極9から回転体5のS極に流れ込む。正常な動作、すなわち回転体5を第3の回転位置から第4の回転位置に回転させるためには、第1の磁極9をS極にして、中心磁極11をN極、第2の磁極13をS極にする必要がある。
ところが、第3の電圧パルスで動作しなかった場合、次の第4の電圧パルス141、すなわち−3vが第1のコイル17には印加され、第1の磁極9にはY軸正方向にΦc1が発生し、磁束Φc1は中心磁極11と第2の磁極13にY軸負方向に−Φc1/2が流れる。従って、回転体の磁束と重ねて、Y軸正方向の磁束をプラス符号をつけ、Y軸負方向の磁束をマイナス符号で表すと、第1の磁極9にはΦc1+Φm/2の磁束が生じ、中心磁極11には−Φc1/2+Φm/2の磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc1/2−Φmの磁束が生じることになる。
そのため、第1の磁極9はN極、中心磁極11はS極、第2の磁極13はS極となり、回転体5のN極と第1の磁極のN極とは反発し、回転体5のS極と第1の磁極9のN極とは吸引し、中心磁極11のS極とは反発するため、本来回転させたい方向と逆方向である時計回りの回転トルクを受けることになり、ステップ不良となる。
また、ステップ不良以外の問題点としては、第3の回転位置から第4の回転位置に回転するときは、第3の回転位置において、すでに回転体が速度を持つため、短時間のパルスを与えれば十分次の回転位置に達すると考えられるが、逆起電圧の検出ができずに回転検出ができないために、印加する電圧パルスは十分回転すると考えられる時間幅で与える必要があり、電圧パルスの時間幅を制御するなどして消費電流値を少なくすることができない。更に、第1のコイル、第2のコイルを同時に電圧パルスを与えているため、得られる回転トルクが大きく、次の回転位置を行き過ぎることもあり、この場合、振動、騒音が生じる原因になると考えられる。
そこで本発明の目的は、パルス制御法を用いて駆動されるステップモーターにおいて、回転中の逆起電力を常に検出することができることでステップ不良を起こさず、低消費電力化、低振動、低騒音を達成することができる正逆回転用ステップモーターを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、基本的には、下記に記載されたような技術構成を採用するものである。
本発明における正逆回転用ステップモーターは、2極着磁された回転体と、中心磁極と、該中心磁極を対称軸として略対称な位置に前記回転体を介して対向配置された第1の磁極及び第2の磁極と、前記第1、第2の磁極のいずれか一方の磁極に磁気的に結合する第1のコイルと、前記中心磁極に磁気的に結合する第2のコイルとを備え、前記第1の磁極と前記中心磁極とは第1の結合部により磁気的に接続され、前記第2の磁極と前記中心磁極とは第2の結合部により磁気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の正逆回転用ステップモーターは、回転体5が駆動パルスに対して正常に動作をしていることを逆起電圧検出によって常に確認できるため、回転異常が検出できる。その対応として、再度同じ電圧パルスを入力するか、電圧パルス幅を長くとって与えるという方法をとることで、正常な動作に戻せ、ステップ不良は生じさせることなく回転可能である。
更に、正常に回転していることが逆起電圧検出によって確認できていれば、印加する電圧パルスの時間幅を必要最小限に最適化することが可能なので、消費電流値を少なくすることができる。また、パルス数に対して移動角度の過不足があった場合に、電圧パルスのパルス幅を調整することが可能であり、振動が少なく駆動音が静かで常に安定したステップを行うことができる。
以下、本発明の正逆回転用ステップモーターに関して図1の平面図を用いて説明する。
本発明の正逆回転用ステップモーターは、2極着磁された回転体5を有し、回転体5は磁性材料からなるヨーク7に設けられた回転体用穴15内部に回転自在に支持されており、ヨーク7は第1の磁極9、中心磁極11、第2の磁極13、第1の結合部21、第2の結合部23を有し、回転体用穴15周辺には、第1の磁極9、中心磁極11、第2の磁極13が配置され、第1の磁極9と中心磁極11とは第1の結合部21により磁気的に接続され、中心磁極11と第2の磁極13とは第2の結合部23により磁気的に接続され、又、第1のコイル17、第2のコイル19を備えたステップモーターであり、第1の磁極9と第2の磁極13とは、中心磁極11を対称軸として略対称な位置関係を持っている。
そして、第1の磁極9には第1のコイル17が巻き回されており、中心磁極11には第2のコイル19が巻き回されている。第1のコイル17と第2のコイル19には同じ線径の線材が同じ巻き数N巻かれている。
第1、第2のコイル17、19の巻き線両端は、駆動回路25に接続されており、それぞれ独立に電圧パルスを印加することが可能である。
なお、第1の回転位置とは、回転体5のN極がY軸負方向を向いている状態のことをいい、第2の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約60度回転した方向を向いている位置である。また、第3の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約120度回転した方向を向いている位置であり、第4の回転位置とは回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約180度回転した方向を向いている位置、すなわち、N極がY軸正方向を向いている位置である。
本発明の正逆回転用ステップモーターの駆動方法は、パルス制御法という駆動方法が一般的に用いられている。パルス制御法は電圧一定を保ったままで、オン、オフいずれかの状態を繰り返してコイルに駆動パルスを印加する方法であり、オフタイムでの電力ロスが無く、オンタイムでも制御用トランジスタが完全に飽和しているためここでの電力ロスも非常に少ない。また、パルスの幅を変化させることでモーターの回転速度の制御や消費電流値のコントロールが可能であるという特徴を持つため、ステップモーターの制御法に適している。
ここで、本発明の正逆回転用ステップモーターの駆動用電圧パルスについて図2を用いて説明する。図2(a)は第1のコイルに印加される駆動パルスを示す図で、図2(b)は第2のコイルに印加される駆動パルスを示す図であり、横軸は時刻、縦軸は電圧を示す。いずれも図1に示した回転体5を反時計回りに360度回転させるための駆動パルスである。そして、各駆動パルスは第1の電圧パルス27,第2の電圧パルス29、第3の電圧パルス31、第4の電圧パルス33、第5の電圧パルス35、第6の電圧パルス37の6つの電圧パルスから構成されている。
第1の電圧パルス27は、第1のコイルに+3v印加し第2のコイルには電圧印加が無い状態であり、回転体を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させることができる。第2の電圧パルス29は、第1のコイルは電圧印加が無く、第2のコイルには−3v印加されている状態であり、回転体を第2の回転位置から第4の回転に回転させることができる。第3の電圧パルス31は、第1のコイル及び第2のコイルともに電圧印加が無い状態である。ここまでのパルスを連続して与えると回転体は反時計回りに180度回転する。
次に第4の電圧パルス33は、第1のコイルに−3v、第2のコイルには電圧印加が無い状態であり、回転体は第4の回転位置から第5の回転位置に回転することができる。第5の電圧パルス35は、第1のコイルに電圧印加が無く、第2のコイルには+3vの印加される状態であり、回転体を第5の回転位置から第1の回転位置に回転することができる。第6の電圧パルス37においては、第1のコイル及び第2のコイルには電圧印加が無い状態である。ここまでの第4の電圧パルス33から第6の電圧パルス37を連続して与えると回転体は180度から360度まで回転することができる。
なお、第5の回転位置は回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約240度回転した方向を向いている位置であり、第6の回転位置は回転体5のN極がY軸負方向から反時計回りに約300度回転した方向を向いている位置である。
次に、本発明の正逆回転用ステップモーターが第1の状態にあるときの磁束の流れについて図3を用いて説明する。第1の状態とは、2極に着磁された回転体5が第1の回転位置にあり、第1のコイル、第2のコイルのいずれのコイルにも電圧パルスを印加していない状態のときである。
第1の状態において、回転体5のN極から出た磁束をΦmとすると、磁束Φmは中心磁極11に流れ込み、そのため中心磁極11はS極となり、磁束Φmの半分であるΦm/2が第1の結合部21に流れ、第1の磁極9にはΦm/2がY軸正方向の向きに流れる。また、第2の結合部23において同様に磁束Φm/2が流れ、その磁束は第2の磁極13にもY軸正方向の向きに流れる。
ここで、Y軸正方向の磁束にプラス符号をつけ、Y軸負方向の磁束にマイナス符号をつけて表すと、第1の磁極9、第2の磁極13に流れる磁束は+Φm/2となる。そして、第1の磁極9を流れる磁束は、空隙を通り回転体5のS極に流れて磁路を形成する。そのため第1の磁極9はN極となる。また、第2の磁極13を流れる磁束は、空隙を通り回転体5のS極に流れて磁路を形成する。そのため第2の磁極13もN極になる。
この様に磁路を形成することによって、第1の磁極9と第2の磁極13のN極と回転体
5のS極とが引き合い、中心磁極11のS極と、回転体5のN極とが引き合うために、回転体5を第1の回転位置に無通電保持することができる。
次に、第2の状態における磁束の流れについて図4を用いて説明する。第2の状態とは第1の回転位置にある回転体5を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させるために、第1の電圧パルス27を印加、すなわち第1のコイル17のコイル端子に+3v印加して、第1の磁極9をN極、中心磁極11と第2の磁極13をS極にした状態である。
このとき、第1の磁極9には磁束Φc1が生じ、磁束Φc1は第1の磁極9から中心磁極11と第2の磁極13とに分かれて進み、中心磁極11、第2の磁極13にはY軸負方向に磁束Φc1/2が流れることとなり、Y軸正方向の磁束にプラス符号を付け、Y軸負方向の磁束にマイナス符号をつけて表し、回転体5の磁束と重ねると、第1の磁極9にはΦc1+Φm/2の磁束が生じ、中心磁極11には−Φc1/2−Φmの磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc1/2+Φm/2の磁束が生じる。
第1の磁極9を流れる磁束Φc1、Φm/2は共にプラス符号を持ち、第1の磁極9はN極、中心磁極11を流れる磁束はΦc1/2、Φmは共にマイナス符号を持つため、中心磁極11はS極になる。そして、第2の磁極13をS極にするためには、第2の磁極13に生じている磁束−Φc1/2+Φm/2がY軸負方向を向き、不等式−Φc1/2+Φm/2<0、すなわちΦm<Φc1を満たす必要があり、そのような磁束を発生させることが可能な時間幅を持つ電圧パルスを第1のコイル17に印加すると良い。
具体例としては、回転体5による磁束はΦm=0.200×10-6Wbに対し、3vの電圧パルスを印加することでΦc1=0.488×10-6Wbの磁束Φcを生じさせることができる。このようにすることで、Φm<Φc1を満たすため、第2の磁極13をS極にすることができ、回転体5のN極は、第1の磁極9のN極と反発し、第2の磁極13のS極と吸引し、かつ、回転体5のS極は第1の磁極9のN極と吸引し、第2の磁極13のS極により反発されるため、回転トルクを得、第1の回転位置から第2の回転位置へ回転することができる。
回転体5が第1の回転位置から第2の回転位置に回転すると、中心磁極11を通る磁束の内、回転体5の磁束が変化し、第1の回転位置では−Φmであった回転体磁束が第2の回転位置では−Φm/2になる。従って、第1の電圧パルス印加によって、回転体5が回転移動することで、中心磁極11を通る磁束量に変化が生じ、中心磁極11には第2のコイル(図4には図示せず)が巻き回されているため、第2のコイルには磁束の変化に伴う逆起電圧e=−N×dΦ/dtが生じる。そのため、第1のコイル17に電圧パルス27を与えることによって回転体5が第1の回転位置から第2の回転位置に回転したかどうかが第2のコイルを用いた逆起電圧検出によって確認できる。
次に、第3の状態における磁束の流れについて図5を用いて説明する。第3の状態とは回転体5が第2の回転位置にあり、回転体5を第2の回転位置から第4の回転位置に回転させるために、第2のコイル19に第2の電圧パルス29を印加した状態である。
第2の回転位置における回転体5による磁束Φmは、中心磁極11と第2の磁極13にそれぞれΦm/2に分かれて流れ、第1の結合部21,第2の結合部23を通り、第1の磁極9では磁束Φmとなり、回転体5のS極に流れ込む。
回転体5を第2の回転位置から第4の回転位置に回転させるためには、第1の磁極9をS極にして、中心磁極11をN極、第2の磁極13をS極にする必要がある。そのためには第2のコイル19に第2の電圧パルス29を印加して、中心磁極11にはY軸正方向にΦc2を発生させる。そのため第1の磁極9、第2の磁極13には磁束Φc2/2がY軸
負方向に生じることとなり、Y軸正方向の磁束にプラス符号をつけ、Y軸負方向の磁束にマイナス符号をつけると、回転体5の磁束と重ねると、第1の磁極9には−Φc2/2+Φmの磁束が生じ、中心磁極11にはΦc2−Φm/2の磁束が生じ、第2の磁極13には−Φc2/2−Φm/2の磁束が生じることになる。
このとき、第2の磁極13を流れる磁束Φc2とΦmはマイナス符号のため、第2の磁極13はS極となる。そして、第1の磁極9に生じる磁束は−Φc2/2+Φmであり、第1の磁極9をS極にするには、Φm<Φc2/2を満たす必要があり、又、中心磁極11に生じる磁束はΦc2−Φm/2であり中心磁極11がN極になるためには2×Φc2>Φmを満たす必要があり、そのため第1の磁極9と中心磁極11とを両方満たすためにはΦm<Φc2/2を満たせばよいことがわかる。
具体例としては、回転体5による磁束Φm=0.200×10-6Wbに対し、3vの電圧パルスを印加することでΦc2=0.488×10-6Wbの磁束Φcを生じさせ、このようにすることで、Φm<Φc2/2を満たしており、第1の磁極と第2の磁極13をS極そして中心磁極をN極にすることができる。そして、回転体5のN極は、中心磁極11のN極と反発し、第2の磁極13のS極と吸引し、かつ、回転体5のS極は第1の磁極9のS極と、第2の磁極13のS極とにより反発され、中心磁極11のN極と吸引する。そのため、反時計回転方向に回転トルクを得、第2の回転位置から第4の回転位置へ回転することができる。
そして、回転体5が第2の回転位置から第4の回転位置に回転すると、第1のコイルが巻き回されている第1の磁極9を通る磁束の内の回転体5の磁束が変化し、第2の回転位置ではΦmあったのが第3の回転位置ではΦm/2と半分になる。従って、第2の電圧パルス29の印加によって、回転体5が回転移動することで、第1の磁極9を通る磁束量に変化が生じ、第1の磁極9には第1のコイル(図5に図示せず)が巻き回されているため、第1のコイル17には磁束の変化を伴う逆起電圧が生じる。そのため、第2のコイル19に第2の電圧パルス29を与えることによって回転体5が第2の回転位置から回転移動したかどうかが、第1のコイル17を用いた逆電圧検出によって確認できる。
そして、第3の電圧パルス31は、第1のコイルに0v、第2のコイルに0vであり、この間回転体5の磁束は、第1の磁極9と中心磁極11において変化し、第1のコイル17と第2のコイル19に電圧パルスを印加していない。そのため、この状態において、いずれのコイルにおいても逆起電圧の検出は可能であり、例えば第1のコイル17を通過する磁束は、第3の回転位置で−Φm/2から第4の回転位置で−Φmと変化するため磁束の変化に伴う逆起電圧が検出されるが、更に第4の回転位置を通過した後には正の逆起電圧が検出されるため、逆起電圧の符号変化を見ることで、第4の回転位置に達したかどうかの確認ができる。
また、第1の電圧パルス27、第2の電圧パルス29の印加によって、第1の回転位置から第4の回転位置に十分余裕をもって回転している場合、図8に示すように、第2の電圧パルス幅を狭くすることができる。十分余裕のある回転の判断は、先に説明した第3の回転位置から第4の回転位置までの磁束変化に伴う逆起電圧符号と、第4の回転位置を通過後の逆起電圧の符号とが異なることから検出可能で、そして、第4の回転位置を行き過ぎる角度が大きいと、逆起電圧が大となることから、この時の逆起電圧値が小さくなるように第2の電圧パルス幅を狭くすることができる。このようにすることは、回転体のステップ動作に伴う振動低減の効果もあり、パルス幅を調整して振動を低減することで低騒音を達成することができる。
なお、万一第2の電圧パルスを印加しても、回転体の回転に伴う逆起電圧が検出されなかった場合には、図7に示すように第2の電圧パルスの幅を広く、すなわち時間を長く取ることが可能であり、このようにすることでステップ異常に対応でき、ミスステップを防止することができる。
又、第2の電圧パルス29で180度回転可能なために、第3の電圧パルス31は第1のコイルに0v、第2のコイルに0vとすることができ、従来技術より電圧パルス数が少なく、低消電化ができる。
次に、本発明の正逆回転用ステップモーターが第4の状態にあるときの磁束の流れについて図6を用いて説明する。第4の状態とは、2極に着磁された回転体5が第4の回転位置にあり、コイルには電圧パルスを印加していない状態のときである。
第4の状態において、回転体5のN極から出た磁束をΦmとすると、磁束Φmは第1の磁極9にΦm/2が、第2の磁極13に残るΦm/2が流れ込み、第1の磁極9と第2の磁極13はS極となり、第1の磁極9に流れ込んだ磁束Φm/2は第1の結合部21に流れ込み、そして第2の磁極13に流れ込んだ磁束Φm/2は、第2の結合部23に流れ込む。
第1の結合部21に第1の磁極9から流れてきた磁束Φm/2と第2の結合部35に第2の磁極13から流れてきた磁束Φm/2とがともに中心磁極11に流れ込むため、中心磁極11は磁束ΦmがY軸正方向の向きに流れる。
ここで、Y軸正方向の磁束をプラス符号で表し、Y軸負方向の磁束をマイナス符号で表すと、第1の磁極9、第2の磁極13に流れる磁束は−Φm/2となる。そのため、第1の磁極9と第2の磁極13はS極となる。そして、第1の磁極9を流れる磁束は第1の結合部21を通り、また、第2の磁極13を流れる磁束は第2の結合部23を通り中心磁極11に流れ+Φmとなり、空隙を通り回転体5のS極に流れて磁路を形成する。そのため第2の磁極13もS極になっている。そして、中心磁極11はN極になる。
この様に磁路を形成することによって、第1の磁極9と第2の磁極13のS極と回転体5のN極とが引き合い、中心磁極11のN極と、回転体5のS極とが引き合うために、回転体5を第4の回転位置に無通電保持することができる。
以上、第1の状態、第2の状態、第3の状態、第4の状態を用いて、回転体のN極の向きが反時計回りに180度回転する動作を説明したが、Y軸正方向からX軸負方向を経由してY軸負方向に180度回転させることも回転体N極の向きとコイルへの電圧パルス印加を最適化させることで同様に行うことができ、更に、逆回転に関しても同様に行うことができる。
本発明の実施例における構造平面図である。
本発明の実施例における駆動パルスである。
本発明の実施例における第1の状態を説明するための平面図である。
本発明の実施例における第2の状態を説明するための平面図である。
本発明の実施例における第3の状態を説明するための平面図である。
本発明の実施例における第4の状態を説明するための平面図である。
本発明の実施例における駆動パルスである。
本発明の実施例における駆動パルスである。
従来技術における構造平面図である。
従来技術における駆動パルスである。
従来技術における第1の状態を説明する平面図である。
従来技術における第2の状態を説明する平面図である。
従来技術における第3の状態を説明する平面図である。
従来技術における第4の状態を説明する平面図である。
従来技術における第5の状態を説明する平面図である。
従来技術におけるステップ不良を説明する平面図である。
符号の説明
5 回転体
7 ヨーク
9 第1の磁極
11 中心磁極
13 第2の磁極
15 回転体用穴
17 第1のコイル
19 第2のコイル
21 第1の結合部
23 第2の結合部
25 駆動回路
27 第1の電圧パルス
29 第2の電圧パルス
31 第3の電圧パルス
33 第4の電圧パルス
35 第5の電圧パルス
37 第6の電圧パルス