[実施例1]図1を用いて、本発明の電気車の駆動システムの一実施形態における制御情報の流れを説明する。本実施例では、運転装置の運転指令で決まるトルク指令値1ttrを受けて加速度を得る編成列車1trにおいて、車両間の相対速度rv23を、振動補償器Actを介してフィードバックし、振動補償器Actの出力である補正トルク1ctrを所望の加速度を得るためのトルク1otrに加えてトルク指令値1ttrを生成することで、編成列車1trの振動を抑えるという制御を行う。本実施例における発明の特徴は、制御の安定化と性能向上を目的として、振動モード演算部Afが車両の重量に関する情報である応荷重信号1wに基づき編成列車1trの車両の前後振動モードを計算し、算出された前後振動モードを用いて補償器更新演算部Arnwが振動補償器Actを適切に再構成することである。
図2を用いて、図1の制御系を実現する本実施例の装置構成を説明する。この実施例では、編成列車1trは、付随車両At1および電動車両Am1、Am2の3両で成る。付随車両At1は、運転装置Adと、統括制御装置An1と、応荷重検出器Aw1を有している。統括制御装置An1は、相対速度演算部Arvと、振動モード演算部Afと、補償器更新演算部Arnwを備えている。電動車両Am1は、振動補償器Act1を有する端末装置An2と速度検出器Av2を有するインバータAi1と、応荷重検出器Aw2を有している。同様に、電動車両Am2は、振動補償器Act2を有する端末装置An3と速度検出器Av3を有するインバータAi2と、応荷重検出器Aw3を有している。
付随車両At1と電動車両Am1は、緩衝器Ac1で連結され、電動車両Am1と電動車両Am2は緩衝器Ac2で連結される。なおここでは3両編成の列車を挙げるが、これは本発明を適用可能な編成の両数を限定するものではない。
付随車両At1は、駆動手段を持たない車両であり、付随台車Atr11、Atr12を有している。電動車両Am1は、駆動手段を持つ車両であり、インバータAi1と電動台車Atr21、Atr22を有している。電動車両Am2は、駆動手段を持つ車両であり、インバータAi2と電動台車Atr31、Atr32を有している。
車両At1、Am1、Am2は、通信ネットワークAn4により接続される。付随車両At1が有する統括制御装置An1および電動車両Am1が有する端末装置An2ならびに電動車両Am2が有する端末装置An3は、通信ネットワークAn4上での情報伝送を制御する。以下で説明する本実施例において、通信ネットワークAn4を介して伝送する情報は、高々車両の速度や積載重量に関する情報程度である。したがって、例えば通信ネットワークAn4が数Mbpsの伝送速度を持てば、本実施例は実施可能である。
付随車両At1にある運転装置Adからの運転指令は、通信ネットワークAn4を介して端末装置An2に伝送され、信号線Acn2を介してインバータAi1に伝送される。同様に運転装置Adからの運転指令は、通信ネットワークAn4を介して端末装置An3に伝送され、信号線Acn3を介してインバータAi2に伝送される。インバータAi1は、電動台車Atr21、Atr22が備える図示していない電動機のトルクを運転指令に応じて制御する。インバータAi2は電動台車Atr31、Atr32が備える図示していない電動機のトルクを運転指令に応じて制御する。運転者は運転装置Adで所望の列車加速度に応じた運転指令を定めることにより、編成の走行を制御する。
以下、本実施例では編成列車1trの力行時について考えるが、制動時についても電動機の力行トルクを電動機の回生トルクに置き代えて考えれば同様である。また、電動機以外のブレーキ装置の制動力に置き代えて考えても同様である。代表的な電動機以外のブレーキ装置として、例えば空気ブレーキが挙げられる。空気ブレーキは通常、電動機を持たない付随車両にも備えられる。よって本実施例を空気ブレーキの制動力で考えた場合、電動車両Am1、Am2の制動力だけでなく、付随車両At1の制動力を制御できるため、電動機による制動を考える場合に比べ、調整できる制動力の数の点で優れる。これに対して電磁気力により駆動する電動機による力行や制動を考えた場合、空気圧の増減で制御される制輪子を車輪に押しつけ制動力を得る空気ブレーキの制動力を考える場合に比べ、車輪を駆動するための指令を与えてから車輪に力を及ぼすまでの応答の点で優れる。
電動車両Am1は、電動台車Atr21、Atr22が有する複数の電動機の回転数を平均した値を車両速度として検出する速度検出器Av2を有する。電動車両Am2は、電動台車Atr31、Atr32が有する複数の電動機の回転数を平均した値を車両速度として検出する速度検出器Av3を有する。現行の電気車は、このような電動機の回転数から速度を算出する装置を備えているものが多く、速度検出のための特別な装置の追加は要しない。
速度検出器Av2の速度情報は、信号線Acn2を介して端末装置An2に伝送され、通信ネットワークAn4を介して統括制御装置An1へ伝送される。速度検出器Av3の速度情報は、信号線Acn3を介して端末装置An3に伝送され、通信ネットワークAn4を介して統括制御装置An1へ伝送される。
統括制御装置An1が有する相対速度演算部Arvは、図3の構成で成る。相対速度演算部Arvは、速度検出器Av2による車両Am1の速度v2から速度検出器Av3による車両Am2の速度v3を差し引いた値を電動車両Am1と電動車両Am2の相対速度rv23とする。端末装置An2が有する振動(安定化)補償器Act1、端末装置An3が有する振動補償器Act2、統括制御装置An1が有する振動モード演算部Afおよび補償器更新演算部Arnwについては後に説明する。
まず、編成列車1trの前後振動について説明する。いま、付随車両At1と電動車両Am1、Am2を質点とみなす。また、緩衝器Ac1、Ac2は、ばねと減衰で成るとする。このとき各車両の前後方向の運動は、3つのモード(0次モード、1次モード、2次モード)により記述できる。
図4を用いて、編成列車1trの3つの振動モードに対応する運動を模式的に説明する。
0次モードは、付随車両At1、電動車両Am1、Am2がお互いの相対変位、速度を保ちながら前後方向に移動する運動である。すなわち列車の並進運動であり、振動制御の対象とはしない。
1次モードは、電動車両Am1が運動の節となり、電動車両Am1に対して付随車両At1と電動車両Am2の相対位置が周期的に拡張、収縮する運動である。
2次モードは、付随車両At1と電動車両Am2が運動の節となり、これらの間で電動車両Am1が周期的に前後する運動である。
1次モード、2次モードにおける車両の運動の振動数(固有振動数)は、車両の質量と緩衝器のばね定数によって決まる。
なお、本実施例の列車は3両編成であり、図4に示す3つの振動モードがあるが、一般には編成の車両数が増すほどより多くの振動モードが発生する。このときも同様の議論が成り立つ。
固有振動数の計算方法を、列車の運動を定式化して説明する。定式化のための車両変数を定める。付随車両At1の重量をm1、変位をx1とする。電動車両Am1の重量をm2、変位をx2、トルク指令値をu1とする。電動車両Am2の重量をm3、変位をx3、トルク指令値をu2とする。緩衝器Ac1は、長さに比例した線形特性を持つばね定数k1のばね要素と、速度に比例した線形特性を持つダンパ係数c1のダンパで成るとする。緩衝器Ac2は、長さに比例した線形特性を持つばね定数k2のばね要素と、速度に比例した線形特性を持つダンパ係数c2のダンパで成るとする。
このときの列車の運動方程式を図5に示す。行列Aの固有値をλ1…λ6とする。図5の運動方程式の解x(t)は、入力u1=0、u2=0のとき、exp(λj)、j=1…6の線形結合で記述できる。λ1…λ6は、編成車両の並進運動(0次モード)に対応する固有値0を2つ含み、残りの4つは2組の共役な複素数である。固有値の虚部に由来する関数exp(Im(λj))はIm(λj)を角周波数とする正弦波である(Im(z)は複素数zの虚部)。したがって、編成車両の運動は、並進運動と、2組の共役な複素固有値の虚部を2πで除算した値を振動数とする2つの振動の重ね合わせである。これら振動数が1次モード、2次モードに対応する固有振動数である。例えば、m1=m2=m3=30×103(kg)、k1=k2=2.7×106(N/m)、c1=c2=(0.15×k1)/(2×2π)(Ns/m)とすると、1次モードの固有振動数1.5Hzと2次モードの固有振動数2.6Hzが得られる。
次に振動のモード成分を抑えるためのトルク調整値を算出する方法について説明する。トルク調整値は、端末装置An2が有する振動補償器Act1と端末装置An3が有する振動補償器Act2が演算する。振動補償器Act1および振動補償器Act2は、図1の振動補償器Actに対応する。
本実施例の振動補償器Act1、Act2は、車両間の相対速度の振動モード成分が大きくなればそれを小さくする方向にトルクを調整し、逆に相対速度の振動モード成分が小さくなればそれを大きくする方向にトルクを調整するようにトルク調整値を定めることで、車両間の相対速度を0に近づけるようにして、車両の前後振動を抑える。
図6を用いて、振動補償器Act1および振動補償器Act2の構成を説明する。振動補償器Act1は、フィルタfbp1と、比例ゲインKp1、積分器int1、積分ゲインKi1と、加算器と、−1乗算器から成る。振動補償器Act2は、フィルタfbp2と比例ゲインKp2、積分器int2、積分ゲインKi2と、加算器から成る。比例ゲインKp1、Kp2の値をそれぞれKP1、KP2とする。積分ゲインKi1、Ki2の値をそれぞれKI1、KI2とする。フィルタfbp1とフィルタfbp2は更新情報rnwにより更新されるが、更新手順については後に説明する。まずは、フィルタの更新を考えずに振動補償器Act1、Act2を説明する。
フィルタfbp1は入力信号の特定の周波数帯域を通過させる特性を持つバンドパスフィルタである。これは、通信ネットワークAn4を介して受信した相対速度rv23を入力信号とし、振動モードに相当する成分を取り出して制御に用いることで、効果的に振動モードを抑えられるように設けた。本実施例ではフィルタfbp1を演算装置上にディジタル実装する。これは後に説明する補償器の更新手順において、フィルタfbp1の入出力特性の変更を容易にするためである。ただしディジタルフィルタfbp1の設計は、まず所望の入出力特性を持つ連続時間系を考え、得られた連続時間系を離散化するという設計手法に従う。この設計手法は、制御対象が連続時間系で補償器が離散時間系の場合のように、連続時間系と離散時間系が混在する系の設計の際、一度制御系全体を連続時間系として設計できるため設計が容易であるという利点があり、多く用いられている。離散化の方法は後に述べる。まずはフィルタfbp1を連続時間系として以下の説明を進める。
フィルタfbp1を、伝達関数が下記(1)式となるように実装する。ここでsはラプラス作用素、T1、T2は定数である。
伝達関数が(1)式である系の周波数特性を図7の曲線bpfに示す。図7の横軸は入力信号の周波数(Hz)、縦軸は応答の大きさ(dB)である。曲線bpfは理想的なバンドパスフィルタbpfiとは特性が異なるものの、特定の周波数で応答が最大となり、その値から離れた周波数成分ほど減衰させるというバンドパス型の周波数特性を示す。図4より、電動車両Am1は前後振動の2次モードで振幅が最大の腹にあたるが、振動の1次モードでは振幅0の節にあたる。これを考慮し、車両Am1では複数の振動モードの中でも2次モードを抑えるように電動機のトルクを調整する。いま、T1=1/(2π×2.4)、T2=1/(2π×2.8)とする。このときフィルタfbp1は、入力である相対速度rv23から2次モードの固有振動数にあたる2.6Hzを中心としてその前後±0.2Hz程度の成分を最もよく通過させる。
フィルタfbp2も、フィルタfbp1と同様に、通信ネットワークAn4を介して受信した相対速度rv23から振動モードに相当する成分を取り出すことを目的とし、伝達関数が下記(2)式となるように実装する。
図4より、電動車両Am2は、前後振動の1次モードで振幅が最大の腹にあたるが、振動の2次モードでは振幅0の節にあたるため、車両Am2では複数の振動モードの中でも1次モードを抑えるように電動機のトルクを調整する。いまT3=1/(2π×1.3)、T2=1/(2π×1.7)とする。このときフィルタfbp2は、相対速度rv23から1次モードの固有振動数にあたる1.5Hzを中心としてその前後±0.2Hz程度の成分を最もよく通過させる。
なお、フィルタfbp1、fbp2の特性は(1)式、(2)式に基づくものに限らず、入力の特定の周波数成分を取り出す周波数特性を持つものであればよい。
振動補償器Act1によるトルク調整値は、相対速度rv23の2.6Hz付近の周波数成分に対し、比例ゲインKp1の値KP1を乗算した値と、積分値に積分ゲインKi1の値KI1を乗算した値との和を、電動車両Am1のトルクから減算するように構成され、信号線Acn2を介してインバータAi1に伝送される。
振動補償器Act2によるトルク調整値は、相対速度rv23の1.5Hz付近の周波数成分に対し、比例ゲインKp2の値KP2を乗算した値と、積分値に積分ゲインKi2の値KI2を乗算した値との和を、電動車両Am2のトルクに加算するように構成され、信号線Acn3を介してインバータAi2に伝送される。
ただし、振動補償器Act1、Act2の制御則は、編成車両の相対速度を0に近づけるようにトルク調整値を定める制御則であればよく、編成車両の相対速度の振動モード成分に比例する値と振動モード成分の積分値に比例する値の和で構成される制御則(PI制御則)に限らない。
インバータAi1は、運転指令で決まる所望のトルクに振動補償器Act1の出力であるトルク調整値を加えた値を用い、電動台車Atr21、Atr22が有する図示していない電動機へのトルク指令値を算出する。
インバータAi2は、運転指令で決まる所望のトルク値に振動補償器Act2の出力であるトルク調整値を加えた値を用い、電動台車Atr31、Atr32が有する図示していない電動機へのトルク指令値を算出する。
図8は、付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量が全て30トンの場合において、電動車両Am1の所望のトルクを入力とし、電動車両Am1の加速度を出力とするときの、入力の周波数成分に対する出力の応答の大きさを示す図である。横軸は入力の振動数(Hz)、縦軸は出力の応答の大きさ(dB)である。曲線magは前後振動を制御しない場合(ゲインKP1=KI1=KP2=KI2=0)の応答であり、2次モードの固有振動数である2.6Hz付近で応答が大きい。すなわち車両Am1で加減速時に2.6Hz程度の加速度振動が発生しやすいことを示している。これに対して曲線magcは適当なゲインで制御を行った場合の応答であるが、この場合曲線magに比べ2.6Hz付近の応答が小さくなっている。すなわち制御の効果により加減速時に2.6Hz付近の加速度振動が発生しにくくなることを示している。
次に、編成の重量の分布が異なる場合について考える。図9は、車両重量が異なる2とおりの場合について、電動車両Am1の所望のトルクを入力とし、電動車両Am1の加速度を出力とするときの、入力の周波数成分に対する出力の応答の大きさを示す図である。横軸は入力の振動数(Hz)、縦軸は出力の応答の大きさ(dB)である。曲線magは図8で示したものと同様であり、付随車両At1、電動車両Am1、Am2の全てが重量30トンの場合である。曲線mag2は付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量がそれぞれ50トン、40トン、30トンの場合である。2つの場合で応答特性が異なることが分かる。2次モードに対する固有振動数(応答のピークに対する振動数)が曲線magで2.6Hzであるのに対して曲線mag2で2.3Hzと変化している。前述のとおり、T1=1/(2π×2.4)、T2=1/(2π×2.8)のときフィルタfbp1は入力信号の2.6±0.2Hzの周波数帯域bp1をよく通過させる。しかし帯域bp1は曲線mag2が示す固有振動数2.3Hzを含まないため、付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量が全て30トンの場合を想定して設計されたフィルタfbp1では付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量がそれぞれ50トン、40トン、30トンの場合に入力の2次モードにあたる周波数成分を減衰させ、制御に十分に活用できないことが分かる。
乗客が満車のときなどに車両あたりの重量が20トン程度増加することはしばしば起こる。このため図9に示したような振動モードの変化は実用上避け難い現象である。
そこで、本発明の特徴である、振動モード演算部Afが計算した振動モードを用いて補償器更新演算部Arnwが振動補償器Act1、Act2に補償器の再構成を指令するしくみが有用である。これにより振動モードの変化に適応した制御が可能となる。
振動モードの変化を知るため、本実施例では車両の荷重を計る装置を利用する。応荷重検出器Aw1、Aw2、Aw3はそれぞれ付随車両At1、電動車両Am1、Am2内の荷重を検知する装置であり、乗客や荷物の重さを検知できる。応荷重を検出する装置は、車両重量によらず一定の加速度を発揮するための応荷重制御などの目的で、現行の多くの列車に搭載されており、例えば、空気ばねの内圧の変化で荷重を検知すれば実現できる。
応荷重検出器Aw1の出力である付随車両At1の荷重を表す応荷重信号は、図示していない伝送線により統括制御装置An1に伝送される。応荷重検出器Aw2の出力である電動車両Am1の荷重を表す応荷重信号は、図示していない伝送線により端末装置An2に伝送され、通信ネットワークAn4を介して統括制御装置An1に伝送される。応荷重検出器Aw3の出力である電動車両Am2の荷重を表す応荷重信号は、図示していない伝送線により端末装置An3に伝送され、通信ネットワークAn4を介して統括制御装置An1に伝送される。
振動モード演算部Afは、統括制御装置An1が受信した各車両の応荷重信号を用い、前後振動の固有振動数を計算する。振動モード演算部Afの構成を図10を用いて説明する。記憶装置matは図5の行列Aを、車両重量m1、m2、m3をパラメータとする形式で保持する。図5のばね定数k1、k2、ダンパ定数c1、c2は、緩衝器Ac1、Ac2の特性を表す定数であり、一定値として記憶装置matに保持される。よって、応荷重信号w1、w2、w3を(必要ならば適切な単位への変換を含み)車両重量m1、m2、m3に代入することで行列Aが1つ決まる。固有値演算部eigAは記憶装置matから読み出した行列Aの固有値を計算し、前述のとおり固有値の虚部から固有振動数を求める。
図11を用いて、補償器更新演算部Arnwが振動モード演算部Afの出力である固有振動数を用い、振動補償器Act1、Act2の有するバンドパスフィルタfbp1、fbp2の通過周波数帯域を決めるという手順に関する情報の流れを模式的に説明する。補償器更新演算部Arnwの出力である更新情報rnwはバンドパスフィルタfbp1、fbp2の通過周波数帯域を変化させるための情報である。更新情報rnwの具体的な構成については後述するが、これはフィルタfbp1の伝達関数である前記(1)式の定数T1、T2を決める量に相当する。
補償器更新演算部Arnwは、フィルタfbp1が2次モードの固有振動数±0.2Hzの帯域を特に通過させるように、(1)式のT1、T2がT1=1/(2×π×(2次モードの固有振動数−0.2))、T2=1/(2×π×(2次モードの固有振動数+0.2))となるよう更新情報rnwを定める。付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量がそれぞれ50トン、40トン、30トンのときの2次モードの固有振動数は2.3Hzであるので、補償器更新演算部ArnwはこのときT1=1/(2π×2.1)、T2=1/(2π×2.5)となるように更新情報rnwを算出する。
バンドパスフィルタfbp2に対しても同様であり、フィルタfbp2が1次モードの固有振動数±0.2Hzの帯域を特に通過させるように、前記(2)式のT3、T4がT3=1/(2×π×(1次モードの固有振動数−0.2))、T4=1/(2×π×(1次モードの固有振動数+0.2))となるよう更新情報rnwを定める。付随車両At1、電動車両Am1、Am2の重量がそれぞれ50トン、40トン、30トンのときの1次モードの固有振動数は1.3Hzであるので、補償器更新演算部ArnwはこのときT3=1/(2π×1.1)、T4=1/(2π×1.5)となるように更新情報rnwを算出する。
補償器更新演算部Arnwの出力である更新情報rnwは、通信ネットワークAn4を介して振動補償器Act1、Act2へ伝送される。
以下では、補償器更新演算部Arnwの出力である更新情報rnwによりフィルタfpb1、fbp2を更新する手順を具体的に示すため、ここまで連続時間系として説明してきたフィルタfbp1、fbp2のディジタル実装を考慮し、前記(1)式および(2)式を離散化してディジタルフィルタfbp1、fbp2の伝達関数を得る方法、得られた伝達関数を実装する方法、実装されたディジタルフィルタfbp1、fbp2を更新するための更新情報rnwの構成を示す。
ディジタルフィルタfbp1の伝達関数を、設計に用いた連続時間系の伝達関数である(1)式を離散化することで得る。離散化にはよく知られた離散化手法の一つであるインパルス不変法(標準z変換)を用いる。この方法により得られる離散時間伝達関数は、変換適用前の連続時間系の伝達関数とよく似た周波数特性を持つ。式(1)にインパルス不変法(標準z変換)を適用すると、下記(1de)式形式の伝達関数を得る(zは1サンプルの進み要素)。
ただし係数a0、a1、a2、b1、b2は、定数T1、T2とフィルタfbp1の演算周期hで成る値で、α:=T1/(T2−T1)とすると、それぞれ下記(1dec)式である。
図12を用いて、(1de)式の伝達関数を持つフィルタfbp1を無限インパルス応答(Infinite Impulse Response:IIR)フィルタでディジタル実装した例を説明する。係数の組iiraは、前記(1de)式の係数a0、a1、a2、係数の組iirbは前記(1de)式の係数b1、b2に相当する。遅れ要素の組zinvの各要素は、入力を1サンプル遅らせる。図12を演算装置上に実装する。このとき係数a0、a1、a2、b1、b2は演算装置上の記憶領域に格納され、記憶領域の内容を変更することで容易に更新できる。ここでは、フィルタfbp1を実装した演算装置の演算周期は20msとする。信号のサンプル周期がHのとき、周波数0.5×1/Hの成分まで復元できるため(サンプリング定理)、フィルタfbp1の演算周期が20msのとき、フィルタfbp1は入力信号の25Hzの成分まで検出できる。編成車両の固有振動数は高々5Hz程度であるため、フィルタfbp1の演算周期20msは入力の振動モード成分を扱うのに十分である。
補償器更新装置Arnwは、前述のとおり振動モード演算部Afから得た固有振動数を用いて前記(1)式、(2)式の定数T1、T2を算出し、これを(1dec)式に代入して得た係数a0、a1、a2、b1、b2を更新情報rnwとし、通信ネットワークAn4を介して振動補償器Act1に伝送する。
振動補償器Act1は、更新情報rnwが表す係数a0、a1、a2、b1、b2で、図12の係数の組iira、iirbを格納した記憶領域を上書きする。以上により振動補償器Act1は,フィルタfbp1を更新する。
振動補償器Act2のフィルタfbp2についても同様である。すなわちフィルタfbp1の実装と更新手順に関する以上の説明で、前記(1)式をフィルタfbp2の連続時間伝達関数である(2)式に置き代え、定数T1、T2を(2)式の定数T3、T4に置き代えたものとする。
なお、フィルタfbp1、fbp2の実装はIIRフィルタに限らず、特定の周波数帯域を通過させる特性を持つフィルタを実装できるものであればよい。例えば、有限インパルス応答(Finit Impulse Response:FIR)フィルタでもよい。FIRフィルタでバンドパスフィルタを実装する方法はよく知られている。
以上に示した、振動モード演算部Afによる応荷重信号を用いた固有振動数の算出、補償器更新演算部Arnwによる更新情報rnwの演算と振動補償器Act1、Act2への伝送、振動補償器Act1、Act2の再構成という一連の手順は、車両重量が変化したときに一回行われればよい。車両重量が変化するのは乗客や貨物が昇降するとき、すなわち駅停車時を考えれば十分である。駅で乗客や貨物を搭載し終えてから発車までに一連の手順を実施するのは、走行中に時々刻々と変化する量を計測してフィードバックすることに比べ、実施の上で計算時間に関する困難は小さい。
なお、本実施例の速度検出器Av2、Av3は電動機の回転数をもとにそれぞれ電動車両Am1、Am2の速度を得るが、車輪が空転を起こしたとき、電動機の回転数は真の車両速度と大幅にずれる。また、通常は同時に車輪を再粘着させるためのトルク制御が行われる。このとき速度誤差により制御の安定性を損ねたり、車輪の再粘着のためのトルク制御に前後振動制御が干渉して再粘着を妨げる場合が考えられる。この問題に対し、電動車両Am1、Am2のいずれにおいても図示していない空転検知装置により車輪の空転を検知したとき、当該車両での振動制御は停止するなどの対策が考えられる。また、空転時でも速度検出器Av2、Av3がそれぞれ電動車両Am1、Am2の複数ある電動機の回転数のうち最小のものを選択することで、車両の全軸が空転した時以外は空転による速度検知の誤差を回避できる。この場合、振動制御の停止は車両の全軸空転を検知したときに行う。また振動制御の停止は、空転中の車輪を有する車両単体に限らず、全電動車両にあたるAm1、Am2の両車両で振動制御を停止することが考えられる。また車両の前後振動が特に大きくなるのは起動時をはじめ運転指令の変化にともなう変速時であるため、前後振動制御を変速時から少なくとも所望の加速度に到達するまでの時間(例えば5秒程度)に限定するなど、制御区間を制限し、制御中の空転の発生をできるだけ回避する方法も考えられる。
以上で説明した手順により、図2の装置構成による電気車の駆動システムは、電動車両の相対速度の前後振動モード成分をバンドパスフィルタにより抜き出し、これを用いたPI制御により電動車両の電動機のトルクを調整し、編成車両の前後振動を抑える機能を有する。また車両の応荷重を用いて編成車両の前後振動の固有振動数を随時計算し、これを用いてバンドパスフィルタの通過帯域を適応的に更新し、車両重量の変化によらず制振効果を発揮する機能を有する。
なお、本実施例では電動車両の速度情報を用いて編成車両の振動を制御したが、速度情報の代わりに加速度情報を用いてもよい。なぜなら、速度は前述のとおり複数の振動モード成分の和で記述されるが、このとき速度の微分である加速度もまた速度と同じ固有振動数を持つ振動モード成分の和となり、同じ手法が適用できるためである。加速度を得る手段は、例えば、別途加速度センサを設ければよい。これには、多種ある加速度センサのうち適当なものを用いればよいが、一例として、慣性力を受けると電荷を生じる材料を用いた圧電型加速度センサが挙げられる。電動機の回転数に依存しない加速度センサを用いると、前述した空転により速度情報に誤差が発生する現象を回避できる。
[実施例2]図2と同じ構成の電気車の駆動システムにおいて、振動補償器Act1、Act2が図6に示すようなPI制御型ではなく、車両At1と車両Am1の相対変位と相対速度、車両Am1とAm2の相対変位と相対速度を全状態量としてフィードバックする全状態フィードバック型である場合を、第2の実施例として挙げる。
補償器更新演算部Arnwの出力は、実施例1のように振動補償器Act1、Act2のフィルタfbp1、fbp2を更新するための情報に限らない。制御の安定化と性能の向上を可能とする量であればよい。本実施例は、補償器更新演算部Arnwの出力が、振動補償器Act1、Act2の有するフィードバックゲインである場合を示す。
実施例1では、電動車両Am1、Am2の相対速度が0に近づく方向に電動機を制御したのに対し、本実施例の全状態フィードバック型の制御では、電動車両Am1、Am2の相対速度に加え、これらの相対変位、また付随車両At1と電動車両Am1の相対速度、相対変位の全てを0に近づける方向に電動機を制御する。具体的には、状態量の二乗和の時間積分と、電動機のトルク調整量の二乗和の時間積分を用いて作成した評価関数が最小となるように電動機を制御する(積分区間は時間0〜∞)。評価関数≧0であるため、評価関数が有限の値となるためには状態量とトルク調整量が0に漸近することが必要である。これは結果として状態量を0に近づける方向に電動機のトルクを調整することに他ならない。したがって、全状態フィードバック型の制御により、編成車両の振動を抑えることができる。
図13を用いて、全状態フィードバック型の振動補償器Act1、Act2の構成を説明する。補償器更新演算部Arnwは、評価関数演算部ev1と、解法部so1を備えている。振動補償器Act1は、状態観測機obs1と、フィードバックゲインrgg1を備えている。振動補償器Act2は、状態観測機obs2と、フィードバックゲインrgg2を備えている。図13では、応荷重信号w1、w2、w3が振動補償器Act1、Act2へ入力される。実施例1の振動補償器Act1、Act2の構成を示す図6ではこの入力はないが、統括制御装置An1が収集した応荷重信号w1、w2、w3を通信ネットワークAn4を介して振動補償器Act1、Act2へ伝送することで、図2の装置構成を変更することなくこの入力を実現できる。
振動補償器Act1の状態観測器obs1は編成列車1trのモデル(応荷重信号w1、w2、w3より算出する車両の重量を含む)を有し、このモデルと入力である車両Am1とAm2の相対速度rv23を用い、付随車両At1と電動車両Am1の相対変位と相対速度、電動車両Am1と電動車両Am2の相対変位を推定し、これらを全状態ベクトルとして出力する。状態観測器obs1が必要な理由は、本実施例で検出できる状態量が、電動機の回転数を利用して得た電動車両Am1、Am2の相対速度情報のみであるため、他の状態量を推定する手段が必要だからである。電動車両Am1の電動機のトルク調整値は状態観測器obs1の出力である全状態ベクトルとフィードバックゲインrgg1のゲインベクトルKR1の積で決まる。
振動補償器Act2の状態観測器obs2は、編成列車1trのモデル(応荷重信号w1、w2、w3より算出する車両の重量を含む)を有し、このモデルと入力である電動車両Am1と電動車両Am2の相対速度rv23を用い、付随車両At1と電動車両Am1の相対変位と相対速度、電動車両Am1と電動車両Am2の相対変位を推定し、これらを全状態ベクトルとして出力する。電動車両Am2の電動機のトルク調整値は状態観測器obs2の出力である全状態ベクトルとフィードバックゲインrgg2のゲインベクトルKR2の積で決まる。
なお全状態量の定義から、状態観測器obs1と状態観測器obs2の出力は同じ値である。図13の構成では振動補償器Act1、Act2の構成を同じくするためそれぞれが状態観測器obs1、obs2を備えるが、例えば状態観測器obs1の出力を、通信ネットワークAn4を介して振動補償器Act2へ伝送すれば、振動補償器Act2の状態観測器obs2は不要で演算が減る。図13のように複数の独立した状態観測器を有する構成は、例えば、状態観測器obs1の出力と状態観測器obs2の出力を通信ネットワークAn4を介して統括制御装置An1へ伝送し、これらが一致しないとき振動制御を停止する(統括制御装置An4が振動補償器Act1、Act2の出力であるトルク補正値を0にする指令を発する)など、異常時の対策に利用できる。
フィードバックゲインrgg1、rgg2のゲインベクトルKR1、KR2を補償器更新演算部Arnwの出力である更新情報rnwを用いて更新する手順を説明する。
補償器更新演算部Arnwの機能は、最適レギュレータの導出方法として知られる演算を実施する機能に他ならない。すなわち評価関数演算部evlで決まる評価関数を最小化するためのフィードバックゲインベクトルKR1、KR2を解法部solにより求め、更新情報rnwとして出力する。
本実施例の特徴は、この機能が列車に搭載され、振動モードの変化に応じて随時フィードバックゲインベクトルを更新することである。
評価関数を、状態観測器obs1、obs2の出力と同様に定義される状態量と、振動補償器Act1、Act2の出力であるトルク調整値に適当な重みを適用した二乗和の時間積分で定義する。適当な変換により、評価関数を周波数領域で記述し、周波数領域で重みを選択することで周波数応答を整形する方法が知られている。本実施例はこの方法に従う。評価関数演算部evlは振動モード演算部Afの出力である固有振動数を受け、振動モード成分が評価関数に特に寄与するように重みを選択する。これは固有振動数にあたる振動成分を抑えるためである。
解法部solは、評価関数演算部evlにより固有振動数に応じて重み付けされた評価関数を最小化するためのフィードバックゲインを、重量を含む編成の運動特性を用いて算出する。この演算のための数値計算手法はPotterの方法などいくつか知られており、実施に難くない。
補償器更新演算部Arnwは、以上により算出したフィードバックゲインを更新情報rnwとして通信ネットワークAn4を介して振動補償器Act1、Act2に伝送する。
振動補償器Act1、Act2はフィードバックゲインrgg1、rgg2のゲインベクトルKR1、KR2を補償器を構成する演算装置上の記憶領域に保持しており、伝送された更新情報rnwの値を当該記憶領域に上書きすることで、フィードバックゲインrgg1、rgg2を更新する。
最適なフィードバックゲインベクトルKR1、KR2は、重量を含む編成の運動特性と前記評価関数が決まれば一つ決まる。このため車両重量が変化したとき振動補償器Act1、Act2を再構成する以上の手順は、車両重量の変化に適応した制御を実現する。
[実施例3]図14を用いて、本発明の電気車の駆動システムの一実施形態における制御情報の流れを説明する。編成列車1trが、所望の加速度を得るためのトルク1otrと前後振動を抑えるための補正トルク1ctrで生成されるトルク指令値1ttrにより走行する構成と、補償器更新演算部Arnwが振動補償器Actを再構成する構成は実施例1と同様である。本実施例では振動モードを求める振動モード演算部Afに代えて、モード推定部Bfeが応荷重信号の代わりに電動車両Am1、Am2の速度v2、v3を用いる点が実施例1と異なる。
図15を用いて、図14の制御系を実現する本実施例の装置構成を説明する。編成列車1trの付随車両At1、電動車両Am1、Am2、台車Atr11、Atr12、Atr21、Atr22、Atr31、Atr32、インバータAi1、Ai2、運転装置Ad、速度検出器Av1、Av2、Av3、応荷重検出器Aw1、Aw2、Aw3、通信ネットワークAn4とその構成装置An1、An2、An3、振動補償器Act1、Act2、相対速度演算部Arv、補償器更新演算部Arnwは実施例1と同様である。この実施例では、統括制御装置An1が、編成車両の前後振動モードを求める演算として、実施例1の装置構成を示す図2の振動モード演算部Afとは構成が異なるモード推定演算Bfeを有する点が、実施例1と異なる。
図16を用いて、モード推定演算Bfeの構成を説明する。モード推定演算Bfeは、統括制御装置An1が受信した電動車両Am1の速度情報v2のフーリエスペクトルを演算する機能を有するスペクトル演算部FT1、および電動車両Am2の速度情報v3のフーリエスペクトルを演算する機能を有するスペクトル演算部FT2を有する。スペクトル演算部FT1、FT2は、フーリエスペクトルを演算するために、例えば離散フーリエ変換(DFT)を実施する演算機能を備えていればよい。
ピーク検出演算部pkは、フーリエスペクトルから固有振動数を検出する演算部である。この検出方法について説明する。図17は電動車両Am1、電動車両Am2の速度情報のフーリエスペクトルの模式図である。横軸は周波数、縦軸はその周波数に対応する信号のパワーの大きさを示している。曲線PS1はスペクトル演算FT1による車両Am1の速度情報v2のフーリエスペクトル、曲線PS2はスペクトル演算FT2による車両Am2の速度情報v3のフーリエスペクトルである。ピーク検出演算部pkは固有振動数の検出に、固有振動数でパワーが山型の頂点となることを利用する。本実施例では2.6Hz、1.5Hzがそれぞれ2次モード、1次モードに対応する固有振動数である。ピーク検出演算部pkは、パワーの頂点を見付けるために、ある周波数帯域を限定し、その中でのパワーの最大値と最小値の差がある閾値以上であればその最大値を頂点とみなして記憶するという演算を、周波数帯域を次々移動させながら実施する(例えば2.0Hzの帯域幅で0〜2.0Hz、2.0〜4.0Hzの2帯域について演算する)。なお曲線PS1、PS2からパワーの頂点に対応する振動数を検出できる方法であれば、ピーク検出演算部pkの構成はこれに限らない。ピーク検出演算部pkは曲線PS1、PS2でそれぞれ検出した固有振動数を合わせて、モード推定演算Bfeの出力とする。本実施例ではモード推定演算Bfeの出力は固有振動数である1.5Hzおよび2.6Hzである。
モード推定演算Bfeの出力である固有振動数は、実施例1と同様に補償器更新演算部Arnwに伝送され、振動補償器Act1、Act2の更新に利用される。
なお、本実施例では振動モードの算出に速度情報を用いたが、速度情報の代わりに加速度情報を用いてもよい。理由およびこの場合の実施方法は実施例1で述べたとおりである。
本実施例では、走行中に実測した車両速度を振動モードの算出に用いる点が実施例1と異なる。実施例1では、列車の前後運動をばね・ダンパ系に単純化して振動モードを算出したが、実際の車両の運動は台車の特性や線路の形状など多くの要素の影響を受けるため、ばね・ダンパ系の運動のように単純ではない。これに対して走行中に実測した車両速度は、これらの多くの要素の影響を含む結果であり、単純なモデルでは得られない運動特性(例えば、編成車両の運動を単純化したばね・ダンパ系と実際の系の間の振動モードのずれなど)を得られる。
本実施例に示す単車両の速度v2,v3の変化から振動モードを得る手法は、振動補償器Act1,Act2の構成には依らず、例えば振動補償器Act1,Act2が実施例1,2のいずれにおける構成と同様であっても、適用可能である。
1tr…編成列車、1otr…所望のトルク、1ctr…トルク補正値、1ttr…トルク指令値、1w…応荷重信号、Af…振動モード演算部、Arnw…補償器更新演算部、Act…振動補償器、At1…付随車両、Am1,Am2…電動車両、Atr11,Atr12…付随台車、Atr21,Atr22,Atr31,Atr32…電動台車、Ad…運転装置、Ai1,Ai2…インバータ、An1…統括制御装置、An2,An3…端末装置、An4…通信ネットワーク、Act1,Act2…振動補償器、Av2,Av3…速度検出器、Aw1,Aw2,Aw3…応荷重検出器、Arv…相対速度演算、Acn2,Acn3…信号線、v2,v3…車両速度、rv23…車両相対速度、fbp1,fbp2…バンドパスフィルタ、int1,int2…積分器、Kp1,Kp2…比例ゲイン、Ki1,Ki2…積分ゲイン、bpf…バンドパスフィルタの周波数応答、bpfi…理想的バンドパスフィルタの周波数応答、mag,magc,mag2…電動機のトルクを入力とする車両加速度の周波数応答、bp1…バンドパスフィルタの通過周波数帯域、w1,w2,w3…応荷重信号、mat…記憶装置、eigA…固有値演算、rnw…更新情報、iira,iirb…IIRフィルタの係数の組、zinv…遅れ要素の組、obs1,obs2…状態観測器、rgg1,rgg2…フィードバックゲイン、evl…評価関数演算、sol…最適なフィードバックゲインを導出する演算部、Bfe…モード推定演算部、FT1,FT2…スペクトル演算部、pk…ピーク検出演算部、PS1,PS2…パワースペクトル、m1,m2,m3…車両重量、k1,k2…緩衝器のばね定数、c1、c2…緩衝器の減衰定数、T1、T2、T3、T4…フィルタの時定数、s…ラプラス作用素、KP1,KP2…比例ゲインの値、KI1,KI2…積分ゲインの値、z…1サンプル進み要素、h…ディジタルフィルタの演算周期、a0,a1,a2,b1,b2…フィルタ係数、KR1,KR2…ゲインベクトル