図1に、この発明のシリンダ錠の第1実施形態を示す。このシリンダ錠は、鍵穴1を有する内筒2と、この内筒2を回転自在に支持する外筒3とを備えており、内筒2の鍵穴1に鍵を差し込み、内筒2を外筒3に対して回転させて施開錠する。
図6(a)に示すように、内筒2の外周には内ピン穴4−1が形成されており、この内ピン穴4−1に内ピン5−1が挿入されている。また、外筒3の内周には、内筒2の内ピン穴4−1と互いに向き合う外ピン穴6−1が形成されており、この外ピン穴6−1に外ピン7−1が挿入され、外ピン7−1は、ばね8−1で内向きに付勢されている。
また、外ピン7−1と内ピン5−1との間には球状の補助タンブラ9−1が組み込まれている。したがって、鍵を鍵穴1に差し込んで内ピン5−1を押し動かし、この内ピン5−1によって補助タンブラ9−1の外端を内筒2の外周に揃わせるか、または内ピン5−1の外端を内筒2の外周に揃わせないと、外筒3に対する内筒2の回転が許容されない。
同様に、内ピン10−1と外ピン11−1とが、それぞれ内筒2と外筒3とに設けられており、鍵を鍵穴1に差し込んで内ピン10−1の外端を内筒2の外周に揃わせないと外筒3に対する内筒2の回転が許容されないようになっている。
また、内筒2の外周には、内ピン穴4−1に対して周方向に間隔をおいて内収納穴12−1が形成されている。この内収納穴12−1は、内筒2を回転させることにより外ピン穴6−1と向き合い、外ピン穴6−1内にある補助タンブラ9−1を収納可能となっている。また、内収納穴12−1には内コントロールピン13−1が挿入されており、鍵穴1に差し込んだ鍵で内コントロールピン13−1を外向きに押し動かして、内収納穴12−1内の補助タンブラ9−1を押し出せるようになっている。
同様にして、このシリンダ錠は、内ピン穴4−2…4−6、内ピン5−2…5−6、外ピン穴6−2…6−6、外ピン7−2…7−6、ばね8−2…8−6、補助タンブラ9−2…9−6、内ピン10−2…10−6、外ピン11−2…11−6、内収納穴12−2…12−6、内コントロールピン13−2…13−6を備える。
以下、このシリンダ錠の使用例を説明する。
図1に示すように、すべての補助タンブラ9−1…9−6が外ピン7−1…7−6と内ピン5−1…5−6との間に介在する初期状態において、鍵穴1に第1の通常キーK1を差し込む。通常キーは、外ピンとの間に補助タンブラを組み込んだ内ピン5−1…5−6のうちの一部の内ピンの外端を内筒2の外周に揃え、他の内ピンに対応する補助タンブラの外端を内筒2の外周に揃えて施開錠する鍵である。
鍵穴1に差し込んだ通常キーK1は、図2に示すように、一部の補助タンブラ9−1…9−3を外ピン穴内に押し出し、その補助タンブラ9−1…9−3に対応する内ピン5−1…5−3の外端を内筒2の外周に揃える(図6(b)参照)。他の内ピン5−4…5−6も鍵穴1に差し込んだ通常キーK1で押し動かされて、対応する補助タンブラ9−4…9−6の外端を内筒2の外周に揃える(図7(a)参照)。また、内ピン10−1…10−6の外端も内筒2の外周に揃い、内筒2の回転が可能な状態となる。
つぎに、図3に示すように、鍵穴1に差し込んだ通常キーK1を回して内筒2を回転させる。内収納穴12−1…12−6が外ピン穴6−1…6−6と向き合う位置まで内筒2を回転させたとき、ばね8−1…8−3で内向きに付勢された外ピン7−1…7−3が、外ピン穴6−1…6−3内にある補助タンブラ9−1…9−3を内収納穴12−1…12−3内に押し出す(図6(c)参照)。一方、内ピン穴4−4…4−6内の補助タンブラ9−4…9−6は、内ピン穴4−4…4−6内に保持されたまま内筒2と共に回転する(図7(b)参照)。
つづいて、図4に示すように、内筒2を鍵差込位置に戻す。このとき、補助タンブラ9−1…9−3は内収納穴12−1…12−3内に保持されたまま内筒2と共に回転する(図6(d)参照)。一方、内ピン穴に保持されていた補助タンブラ9−4…9−6は外ピン7−4…7−6と内ピン5−4…5−6との間に戻る(図7(c)参照)。鍵差込位置に戻った内筒2の鍵穴1から通常キーK1を引き抜くと、図5に示すように、初期状態に外ピンと内ピンとの間に介在していた補助タンブラ9−1…9−6のうちの一部の補助タンブラ9−1…9−3が内収納穴12−1…12−3に移動した一部移動状態となる(図6(e)、図7(d)参照)。
一部移動状態となったこのシリンダ錠は、通常キーK1で再び施開錠できる。しかし、内収納穴内に収納された補助タンブラ9−1…9−3に対応する内ピン5−1…5−3の外端をすべて内筒2の外周に揃える通常キー以外の通常キーでは、初期状態のシリンダ錠を施開錠することはできても、上記の一部移動状態のシリンダ錠を施開錠することはできない。
たとえば、内ピン5−2、5−3、5−4の外端を内筒2の外周に揃え、他の内ピン5−1、5−5、5−6に対応する補助タンブラ9−1、9−5、9−6の外端を内筒2の外周に揃える第2の通常キーK2では、初期状態のシリンダ錠を施開錠することはできるが、上記の一部移動状態のシリンダ錠を施開錠しようとしても外ピン7−1が内ピン穴4−1に落ち込むので内筒2の回転が許容されず、施開錠できない。一方、内ピン5−1、5−2、5−3、5−4の外端を内筒2の外周に揃え、他の内ピン5−5、5−6に対応する補助タンブラ9−5、9−6の外端を内筒2の外周に揃える第3の通常キーK3では、上記の一部移動状態のシリンダ錠を施開錠できる。ただし、通常キーK3を使用すると、補助タンブラ9−4が内収納穴12−4に収納されて新たな一部移動状態に変化するので、上記の通常キーK1で施開錠することができなくなる。
このようにして、シリンダ錠を初期状態から一部移動状態に変化させることにより、初期状態で使用可能であった通常キーのうち、特定の種類の通常キーの使用を禁止することができる。また、シリンダ錠を一部移動状態から新たな一部移動状態に変化させることにより、変化前に使用可能であった通常キーのうち、特定の種類の通常キーの使用を禁止することができる。
一部移動状態のシリンダ錠は、以下のようにして初期状態に戻すことができる。
まず、図8に示すように、一部移動状態のシリンダ錠の鍵穴1にニュートラルキーNを差し込んで、内ピン穴4−4…4−6内にある補助タンブラ9−4…9−6を外ピン穴6−4…6−6内に押し出す。このニュートラルキーNは、内ピン5−1…5−6および内ピン10−1…10−6を内筒2の回転を許容する位置に保持しつつ引抜方向に移動可能な鍵であり、図では、各々の内ピンに対応する長溝16を形成して鍵を引抜方向に移動可能としている。また、図9に示すように、ニュートラルキーNには、内コントロールピン13−1…13−6の内端と当接する部分から前方に向かって次第に隆起する押圧部17が形成されている。
つぎに、図9に示すように、鍵穴1に差し込んだニュートラルキーNを回して内筒2を回転させる。内収納穴12−1…12−6が外ピン穴6−1…6−6と向き合う位置まで内筒2を回転させたとき、外ピン穴6−4…6−6内にある補助タンブラ9−4…9−6が内収納穴12−4…12−6に収納される。他の収納穴12−1…12−3には元より補助タンブラ9−1…9−3が収納されているので、結局、補助タンブラ9−1…9−6の全てが内収納穴12−1…12−6に収納された状態となる。
つづいて、図10に示すように、ニュートラルキーNを引抜方向に移動させる。これにより、ニュートラルキーNの押圧部17が内コントロールピン13−1…13−6を半径方向外方に押し動かし、内収納穴12−1…12−6内の補助タンブラ9−1…9−6を外ピン穴6−1…6−6内に押し出す。
この状態で、図11に示すようにニュートラルキーNを回して内筒2を鍵差込位置に戻し、さらにニュートラルキーNを鍵穴1から引き抜くと、各々の補助タンブラ9−1…9−6が、それぞれ外ピン7−1…7−6と内ピン5−1…5−6の間に復帰し、シリンダ錠は初期状態に戻る。
このように、このシリンダ錠は、一部移動状態から初期状態に戻すことができるので、ニュートラルキーNと数種類の通常キーK1…KNを用いて、使用する鍵の種類を何度でも変更することができる。また、間違えた通常キーを使用して本来移動させる予定でない補助タンブラを移動させた場合でも、ニュートラルキーNで初期状態に戻すことができるので、シリンダ錠を交換する必要がない。さらに、使用する通常キーKXを新たな通常キーKYに変更する場合、内収納穴に収納する補助タンブラの総数を変えずに、内収納穴に収納する補助タンブラの組み合わせを変更して変更前の通常キーKXの使用を禁止できるので、このシリンダ錠は、使用する通常キーの変更に際して作り出せる鍵違い数が多く、安全性が高い。
また、このシリンダ錠は、内ピン5−1…5−6の外端を全て内筒2の外周に揃えるキーを使用し、補助タンブラ9−1…9−6を全て内収納穴12−1…12−6に収納させて、いずれの通常キーK1…KNについても使用を禁止することができる。さらに、全部移動状態となったシリンダ錠は、ニュートラルキーNを用いて初期状態に戻すことができる。
なお、図では、内ピン5−1…5−6の長さを互いに同一としているが、内ピン5−1…5−6は、内ピン10−1…10−6と同様に数種類の長さのものを組み合わせると、鍵違い数が増えて安全性がより高くなる。
内収納穴12−1…12−6は、その外端を外ピン7−1…7−6の内端よりも小さくして、外ピン7−1…7−6が内収納穴12−1…12−6に落ち込まないようにすると好ましい。このようにすれば、鍵穴1に差し込んだ鍵が、補助タンブラを収納していない内収納穴12−4…12−6に対応する内コントロールピン13−4…13−6の外端を内筒2の外周に揃えなくても、内収納穴12−1…12−6が外ピン穴6−1…6−6と向き合う位置まで内筒2を回転させたときに、外ピン7−4…7−6が内収納穴12−4…12−6に落ち込まない。そのため、上記の一部移動状態のシリンダ錠の鍵穴1に、内コントロールピン13−4…13−6の外端を内筒2の外周に揃えない形状とした通常キーを差し込んで内筒2を回転させたときに、内筒2が鍵差込位置に戻らなくなる事態を防止でき、そのような形状の通常キーを使用することが可能となる。この通常キーは、いずれの一部移動状態に対応した通常キーであるかを鍵の形状から読み取るのが困難なので、鍵の偽造がより難しく、安全性が高い。
また、外筒3に、鍵差込位置で内収納穴12−1…12−6と向き合う外収納穴14−1…14−6を形成し、この外収納穴14−1…14−6に外コントロールピン15−1…15−6を内向きに付勢して挿入するとより好ましい。このようにすれば、鍵を鍵穴1に差し込む際に、内収納穴12−1…12−3内に収納されている補助タンブラ9−1…9−3が外収納穴14−1…14−3内に逃げるので、鍵の差込みが円滑となる。
このとき、外コントロールピン15−1…15−6の内端は、内収納穴12−1…12−6の外端よりも大きくして、外コントロールピン15−1…15−6が内収納穴12−1…12−6に落ち込まないようにすると好ましい。このようにすれば、鍵穴1に差し込んだ鍵が、内コントロールピン13−4…13−6の外端を内筒2の外周に揃えなくても、外コントロールピン15−4…15−6が内収納穴12−4…12−6に落ち込まないので、内コントロールピン13−4…13−6の外端を内筒2の外周に揃えない形状の通常キーでも上記の一部移動状態のシリンダ錠の施開錠が可能となる。そのような形状の通常キーは、いずれの一部移動状態に対応した通常キーであるかを鍵の形状からは読み取りにくく、安全性が高い。
ニュートラルキーNは、図8に示すように、鍵穴1に差し込んだ際に内ピン5−1…5−6の外端を内筒2の外周に揃える形状とすると、シリンダ錠がいずれの一部移動状態であっても、また全部移動状態であっても初期状態に戻すことができるが、内収納穴内に収納されている補助タンブラ9−1…9−3に対応する内ピン5−1…5−3の外端を内筒2の外周に揃え、他の補助タンブラ9−4…9−6の外端を内筒2の外周に揃える形状として、限られた一部移動状態のみを初期状態に戻せるようにしてもよい。このようにすれば、そのニュートラルキーで施開錠できる一部移動状態の種類が制限されるので、万一ニュートラルキーが紛失・盗難に遭っても、シリンダ錠を新たな一部移動状態に更に変化させてそのニュートラルキーの使用を禁止することができ、安全性が高い。
補助タンブラ9−1…9−6は、球状とするとその動作が円滑となるので好ましいが、たとえば円柱状など他の形状でもよい。
また、図12に示すように、内ピン5−1…5−6の外端と内コントロールピン13−1…13−6の外端とを全て内筒2の外周に揃える形状のマスターキーMを用いれば、初期状態、一部移動状態、全部移動状態のいずれの状態においても、シリンダ錠を施開錠することができ、しかも、各々の補助タンブラ9−1…9−6の位置がマスターキーMの使用前後で変化しない。
また、図13に示すように、補助タンブラ9−1…9−6の外端を全て内筒2の外周に揃える工事用キーCを用いれば、初期状態においてはこの工事用キーCでシリンダ錠を施開錠することができるが、その補助タンブラを一部移動状態または全部移動状態に変化させると施開錠できなくなる。
ニュートラルキーNは、上記のように鍵の引抜方向に移動可能となすと、シリンダ錠の奥行きを大きくする必要がなく好ましいが、鍵の差込方向に移動可能となして、差込方向に移動させるニュートラルキーが内コントロールピン13−1…13−6を押し動かすようにしてもよい。
また、ニュートラルキーNの押圧部17は、たとえば、内コントロールピン13−1…13−6の内端と対向する部分の前方部分に磁石を埋め込んで構成し、さらに内コントロールピン13−1…13−6の内端にも磁石を埋め込んで、ニュートラルキーNを引抜方向に移動させたときに磁石同士の反発力で内コントロールピン13−1…13−6を半径方向外方に押し動かすようにしてもよく、ニュートラルキーNを前後方向に動かす作動により内コントロールピン13−1…13−6を半径方向外方に押し動かせればよい。
図では、内収納穴12−1…12−6を、内筒2を時計回りに90度回転させたときに外ピン穴6−1…6−6と向き合うように配置したが、反時計回りに90度回転させたときに外ピン穴6−1…6−6と向き合うように配置してもよく、また、他の回転角度で外ピン穴6−1…6−6と向き合うように配置してもよい。
外ピン7−1…7−6および外コントロールピン15−1…15−6の付勢は、ばねを用いて行なうとピン動作の信頼性が高くなって好ましいが、たとえば磁石同士の反発力を用いて付勢してもよい。
この発明は、平板状の鍵で施開錠するシリンダ錠以外のシリンダ錠に適用してもよく、たとえば、内ピン5−1…5−6がはまり込むディンプルを表面に形成した円柱状の鍵や角柱状の鍵など他の形状の鍵で施開錠するシリンダ錠に適用してもよい。
図14に、この発明のシリンダ錠の第2実施形態を示す。このシリンダ錠は、第1実施形態と同様に、鍵穴21を有する内筒22と、この内筒22を回転自在に支持する外筒23とを有し、外筒23に対して内筒22を回転させて施開錠する。
鍵穴21は、図21に示すように内筒22の外周に開放して形成されており、鍵穴21に差し込んだ鍵の端面が外筒23の内周と対向するようになっている。
内筒22には、外周から鍵穴21に至る内ピン穴24−1が形成されており、内ピン穴24−1には、内ピン25−1が挿入されている。一方、外筒23の内周には内ピン穴24−1に対応する位置に外ピン穴26−1が形成されており、この外ピン穴26−1に外ピン27−1が挿入されている。外ピン27−1は、外ピン穴26−1に挿入されたばね28−1で半径方向内方に付勢されており、外ピン27−1と内ピン25−1の間に補助タンブラ29−1が組み込まれている。そのため、内ピン25−1を半径方向外方に押し動かして補助タンブラ29−1の外端を内筒22の外周に揃えるか、内ピン25−1の外端を内筒22の外周に揃えないと、内筒22を回転させることができない。
また、内ピン穴24−1、外ピン穴26−1と同様の内ピン穴30−1、外ピン穴32−1が、内ピン穴24−1、外ピン穴26−1に対して周方向に間隔をおいて形成されており、この内ピン穴30−1、外ピン穴32−1に内ピン31−1、外ピン33−1がそれぞれ挿入されている。外ピン33−1は、外ピン穴32−1に挿入されたばね34−1で半径方向内方に付勢されており、内ピン31−1と外ピン33−1の間に補助タンブラ35−1が組み込まれている。そのため、内ピン31−1を半径方向外方に押し動かして補助タンブラ35−1の外端を内筒22の外周に揃えるか、内ピン31−1の外端を内筒22の外周に揃えないと、内筒22を回転させることができない。
また内筒22には、内ピン穴24−1、30−1の両方に対して周方向に間隔をおいた位置に外周から鍵穴21に至る内収納穴36−1が形成されている。この内収納穴36−1は、外ピン穴26−1に一致する位置まで内筒22を回転させた状態で外ピン穴26−1と連通し、外ピン穴26−1内の補助タンブラ29−1を収納できるようになっている。また、外ピン穴32−1に一致する位置まで内筒22を回転させた状態で外ピン穴32−1と連通し、外ピン穴32−1内の補助タンブラ35−1を収納できるようになっている。
内収納穴36−1には内コントロールピン37−1が挿入されており、この内コントロールピン37−1は、鍵穴21に鍵を差し込んで押し動かせるようになっている。
外筒23の内周には、内筒22の内収納穴36−1に対応する位置に外収納穴38−1が形成されており、外収納穴内38−1には、ばね39−1で半径方向内方に付勢された外コントロールピン40−1が挿入されている。外コントロールピン40−1は、ばね39−1の弾性力によって内収納穴36−1に落ち込んで内コントロールピン37−1を押圧している。
内収納穴36−1の縁には、内筒22を回転させたときに外コントロールピン40−1を半径方向外方に案内するガイド面41が形成されている。
以上に述べた内ピン穴24−1、内ピン25−1、外ピン穴26−1、外ピン27−1、ばね28−1、補助タンブラ29−1、内ピン穴30−1、内ピン31−1、外ピン穴32−1、外ピン33−1、ばね34−1、補助タンブラ35−1、内収納穴36−1、内コントロールピン37−1、外収納穴38−1、ばね39−1、外コントロールピン40−1と同様の内ピン穴24−2…24−4、内ピン25−2…25−4、外ピン穴26−2…26−4、外ピン27−2…27−4、ばね28−2…28−4、補助タンブラ29−2…29−4、内ピン穴30−2…30−4、内ピン31−2…31−4、外ピン穴32−2…32−4、外ピン33−2…33−4、ばね34−2…34−4、補助タンブラ35−2…35−4、内収納穴36−2…36−4、内コントロールピン37−2…37−4、外収納穴38−2…38−4、ばね39−2…39−4、外コントロールピン40−2…40−4が、それぞれ軸方向に間隔をおいて設けられている。ガイド面41は、軸方向に連続して形成されており、内収納穴36−1の位置から内収納穴36−4の位置まで至っている。
このシリンダ錠は、たとえば以下に説明するように、回収キーG1を用いて補助タンブラ29−1、35−2を回収することができる。また、回収キーG1で回収されない補助タンブラ29−2…29−4、35−1、35−3、35−4のうち、補助タンブラ29−3、35−1を通常キーCK1を用いてそれぞれ内収納穴36−3、36−1に収納させることができる。内収納穴36−3、36−1に収納された補助タンブラ29−3、35−1は、ニュートラルキーNR、NLを用いて内ピンと外ピンの間に復帰させることができる。図14〜図30は、回収キーG1による補助タンブラ29−1、35−2の回収操作の一例を、図31〜図44は、通常キーCK1による補助タンブラ29−3、35−1の収納操作の一例を、図47〜図67は、ニュートラルキーNR、NLによる補助タンブラ29−3、35−1の復帰操作の一例をそれぞれ示す。
まず、回収キーG1による補助タンブラ29−1、35−2の回収操作を説明する。回収キーG1には、図22、図27に示すように鍵穴21の内筒22の外周への開放位置に対応する位置に回収凹部42−1、42−2が形成されている。
補助タンブラ29−1…29−4が内ピン25−1…25−4と外ピン27−1…27−4の間にあり、さらに補助タンブラ35−1…35−4も内ピン31−1…31−4と外ピン33−1…33−4の間にある状態で(図14、図21、図26参照)、鍵穴21に回収キーG1を差し込む(図15、図22、図27参照)。鍵穴21に差し込まれた回収キーG1は、内ピン25−1、31−2を押し動かしてその外端を内筒22の外周に揃える。このとき内ピン25−1、31−2は、補助タンブラ29−1、35−2をそれぞれ外ピン穴26−1、32−2内に押し出す。
その状態で内筒22を時計回りに回転させて外ピン穴32−2の位置と鍵の回収凹部42−2の位置を一致させる(図16、図28参照)。外ピン穴32−2の位置と回収凹部42−2の位置が一致すると、外ピン穴32−2内の補助タンブラ35−2が外ピン33−2により押し動かされて回収凹部42−2に回収される。
ついで、内ピン31−1…31−4と外ピン33−1…33−4が対向する位置に内筒22を戻す(図17、図29参照)。このとき補助タンブラ35−2は、回収凹部42−2内に保持されているので(図29参照)、内ピン31−2と外ピン33−2の間にない。
つづいて、内筒22を反時計回りに回転させて、外ピン穴26−1の位置と鍵の回収凹部42−1の位置を一致させる(図18、図23参照)。外ピン穴26−1の位置と回収凹部42−1の位置が一致すると、外ピン穴26−1内の補助タンブラ29−1が外ピン27−1により押し動かされて回収凹部42−1に回収される。
さらに、内ピン25−1…25−4と外ピン27−1…27−4が対向する位置に内筒22を戻す(図19、図24参照)。このとき補助タンブラ29−1は、回収凹部42−1内に保持されているので、内ピン25−1と外ピン27−1の間にない(図24参照)。
その後、鍵穴21から回収キーG1を引き抜くと(図20、図25、図30参照)、回収キーG1の回収凹部42−1、42−2内にある補助タンブラ29−1、35−2が、回収キーG1と共に鍵穴21から抜き出される。これによりシリンダ錠は、内ピン25−1と外ピン27−1の間から補助タンブラ29−1がなくなり、さらに内ピン31−2と外ピン33−2の間から補助タンブラ35−2がなくなった状態となる。
補助タンブラ29−1、35−2が回収されたシリンダ錠は、その補助タンブラ29−1、35−2に対応する内ピン25−1、31−2の外端をそれぞれ内筒22の外周に揃えないと内筒22を回転させることができない。そのため、内ピン25−1、31−2を押し動かして補助タンブラ29−1、35−2の外端を内筒22の外周に揃える鍵では施開錠することができなくなる。
つぎに、通常キーCK1による補助タンブラ29−3、35−1の収納操作を説明する。
回収キーG1により補助タンブラ29−1、35−2が回収された状態で(図20参照)、鍵穴21に通常キーCK1を差し込む(図31、図37、図41参照)。鍵穴21に差し込まれた通常キーCK1は、内ピン25−3、31−1を押し動かしてその外端を内筒22の外周に揃える。このとき内ピン25−3、31−1は、補助タンブラ29−3、35−1をそれぞれ外ピン穴26−3、32−1内に押し出す。また、補助タンブラ29−3、35−1に対応する内コントロールピン37−3、37−1を押し動かして、その内コントロールピン37−3、37−1に対応する内収納穴36−3、36−1を補助タンブラの収納が可能な状態にする(図37、図41参照)。
その状態で内筒22を時計回りに回転させて外ピン穴26−1…26−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置を一致させる(図32、図42参照)。このとき、外コントロールピン40−1は、ガイド面41に案内されて内収納穴36−1から抜け出るので内筒22の回転を妨げない(図41参照)。外ピン穴26−1…26−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置が一致すると、外ピン穴26−3内の補助タンブラ29−3が外ピン27−3により押し動かされて内収納穴36−3に収納される。
ついで、内ピン25−1…25−4と外ピン27−1…27−4が対向する位置に内筒22を戻す(図33、図43参照)。このとき補助タンブラ29−3は、内収納穴36−3に収納されているので(図43参照)、内ピン25−3と外ピン27−3の間にない。
つづいて、内筒22を反時計回りに回転させて、外ピン穴32−1…32−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置を一致させる(図34、図38参照)。外ピン穴32−1…32−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置が一致すると、外ピン穴32−1内の補助タンブラ35−1が外ピン33−1により押し動かされて内収納穴36−1に収納される(図38参照)。
さらに、内ピン31−1…31−4と外ピン33−1…33−4が対向する位置に内筒22を戻す(図35、図39参照)。このとき補助タンブラ35−1は、内収納穴36−1に収納されているので(図39参照)、内ピン31−1と外ピン33−1の間にない。
その後、鍵穴21から通常キーCK1を引き抜くと(図36、図40、図44参照)、シリンダ錠は、内ピン25−3と外ピン27−3の間の補助タンブラ29−3が内収納穴36−3に収納され、さらに内ピン31−1と外ピン33−1の間の補助タンブラ35−1が内収納穴36−1に収納された状態となる。
補助タンブラ29−3、35−1が内収納穴36−3、36−1に収納されたシリンダ錠は、その補助タンブラ29−3、35−1に対応する内ピン25−3、31−1の外端をそれぞれ内筒22の外周に揃えないと内筒22を回転させることができない。そのため、内ピン25−3、31−1を押し動かして補助タンブラ29−3、35−1の外端を内筒22の外周に揃える鍵では施開錠することができなくなる。
たとえば、図45に示す通常キーCK2は、補助タンブラ29−3、35−1を内収納穴36−3、36−1に収納させる前の状態のシリンダ錠を、補助タンブラ29−3の外端を内筒22の外周に揃えて施開錠することができる。しかし、通常キーCK1を用いて補助タンブラ29−3、35−1を内収納穴36−3、36−1に収納させた状態のシリンダ錠は、通常キーCK2で施開錠しようとしても、図46に示すように外ピン27−3が内ピン穴24−3に落ち込むので施開錠することができない。
つぎに、ニュートラルキーNR、NLによる補助タンブラ29−3、35−1の復帰操作を説明する。ニュートラルキーNRは、内収納穴36−3内の補助タンブラ29−3を内ピン25−3と外ピン27−3の間に復帰させる鍵であり、ニュートラルキーNLは、内収納穴36−1内の補助タンブラ35−1を内ピン31−1と外ピン33−1の間に復帰させる鍵である。
補助タンブラ29−3、35−1が内収納穴36−3、36−1に収納された状態で(図36参照)、鍵穴21にニュートラルキーNRを差し込む(図47、図57参照)。鍵穴21に差し込まれたニュートラルキーNRは、内ピン25−1…25−4を押し動かしてその外端をそれぞれ内筒22の外周に揃える。このとき内ピン25−2、25−4は、補助タンブラ29−2、29−4をそれぞれ外ピン穴26−2、26−4内に押し出す。
その状態で内筒22を時計回りに回転させて、外ピン穴26−1…26−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置を一致させる(図48、図58参照)。外ピン穴26−1…26−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置が一致すると、外ピン穴26−2、26−4内の補助タンブラ29−2、29−4が外ピン27−2、27−4により押し動かされて内収納穴36−2、36−4に収納される。これによりシリンダ錠は、補助タンブラ29−2…29−4が内収納穴36−2…36−4にそれぞれ収納され、補助タンブラ35−1が内収納穴36−1に収納された状態となる。
ついで、ニュートラルキーNRを引抜方向に移動させる(図49、図59参照)。このニュートラルキーNRには、それぞれの内ピン25−1…25−4、31−1…31−4に対応する長溝43が形成されている。そのためニュートラルキーNRは、内筒22の回転を許容する位置に内ピン25−1…25−4、31−1…31−4を保持しつつ引抜方向に移動させることができる。
また、ニュートラルキーNRには、図48に示すように内コントロールピン37−2…37−4の内端と当接する部分から次第に隆起する押圧部44が形成されている。そのため、引抜方向に移動するニュートラルキーNRは、その押圧部44で内コントロールピン37−2…37−4を半径方向外方に押し動かして、内収納穴36−2…36−4内の補助タンブラ29−2…29−4を、それぞれ外ピン穴26−2…26−4内に押し出す。一方、回収キーG1で回収された補助タンブラ29−1に対応する内コントロールピン37−1の内端と当接する部分45は、ニュートラルキーNRを引抜方向に移動させたときに内コントロールピン37−1の位置を維持するように形成されている。そのため、内収納穴36−1内の補助タンブラ35−1は外ピン穴26−1内に押し出されない。
つづいて、内ピン25−1…25−4と外ピン27−1…27−4が対向する位置に内筒22を戻す(図50、図60参照)。このとき、補助タンブラ29−2…29−4は、それぞれ外ピン穴26−2…26−4内に保持されるので内ピン25−2…25−4と外ピン27−2…27−4の間に戻る。一方、補助タンブラ35−1は、内収納穴36−1に収納されているので(図62参照)、内ピン25−1と外ピン27−1の間にない。
さらに、鍵穴21からニュートラルキーNRを引き抜くと(図51、図61参照)、シリンダ錠は、補助タンブラ29−3を内ピン25−3と外ピン27−3の間に復帰させた状態となる。
その後、ニュートラルキーNLを鍵穴21に差し込む(図52、図63参照)。鍵穴21に差し込まれたニュートラルキーNLは、内ピン31−1…31−4を押し動かしてその外端をそれぞれ内筒22の外周に揃える。このとき内ピン31−3、31−4は、補助タンブラ35−3、35−4をそれぞれ外ピン穴32−3、32−4に押し出す。
その状態で内筒22を反時計回りに回転させて、外ピン穴32−1…32−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置を一致させる(図53、図64参照)。外ピン穴32−1…32−4の位置と内収納穴36−1…36−4の位置が一致すると、外ピン穴32−3、32−4内の補助タンブラ35−3、35−4が外ピン33−3、33−4により押し動かされて内収納穴36−3、36−4に収納される。これによりシリンダ錠は、補助タンブラ35−1、35−3、35−4がそれぞれ内収納穴36−1、36−3、36−4に収納された状態となる。
ついで、ニュートラルキーNLを引抜方向に移動させる(図54、図65参照)。このニュートラルキーNLも、ニュートラルキーNRと同様に、それぞれの内ピン25−1…25−4、31−1…31−4に対応する長溝43が形成されており、これにより、内筒22の回転を許容する位置に内ピン25−1…25−4、31−1…31−4を保持しつつ引抜方向に移動させることができるようになっている。
また、このニュートラルキーNLには、図53に示すように内コントロールピン37−1、37−3、37−4の内端と当接する部分から次第に隆起する押圧部46が形成されている。そのため、引抜方向に移動するニュートラルキーNLは、その押圧部46が内コントロールピン37−1、37−3、37−4を半径方向外方に押し動かして、内収納穴36−1、36−3、36−4内の補助タンブラ35−1、35−3、35−4を、それぞれ外ピン穴32−1、32−3、32−4内に押し出す。
つづいて、内ピン31−1…31−4と外ピン33−1…33−4が対向する位置に内筒22を戻す(図55、図66参照)。このとき、補助タンブラ35−1、35−3、35−4は、それぞれ外ピン穴32−1、32−3、32−4内に保持されるので内ピン31−1、31−3、31−4と外ピン33−1、33−3、33−4の間に戻る。
さらに、鍵穴21からニュートラルキーNLを引き抜くと(図56、図67参照)、シリンダ錠は、補助タンブラ35−1を内ピン31−1と外ピン33−1の間に復帰させた状態となる。
補助タンブラ29−3、35−1を復帰させたシリンダ錠は、通常キーCK1で補助タンブラ29−3、35−1を内収納穴36−3、36−1に収納させる前の状態に戻るので、内ピン25−3を押し動かして補助タンブラ29−3の外端を内筒22の外周に揃える鍵(たとえば通常キーCK2)や、内ピン31−1を押し動かして補助タンブラ35−1の外端を内筒22の外周に揃える鍵で施開錠することができるようになる。
このシリンダ錠は、内ピンと外ピンの間にそれぞれ補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4を組み込んで、その補助タンブラの内外2箇所で内筒22の回転を許容するようにしたので、複数種類の通常キーで施開錠することができる。また、この補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4を内収納穴36−1…36−4に選択的に収納させることにより、特定の通常キーでのみ施開錠可能な状態とすることができる。さらに、ニュートラルキーNR、NLを用いて内収納穴36−1…36−4内の補助タンブラを内ピンと外ピンの間に復帰させた後、他の通常キーを用いて補助タンブラを内収納穴に収納させることによって、錠の交換なしに、使用する鍵の種類を何度でも変更することができる。
また、このシリンダ錠は、図21に示すように内収納穴36−1内に補助タンブラがない状態では、ばね39−1で付勢された外コントロールピン40−1が内コントロールピン37−1を半径方向内方に押圧する。また、図40に示すように内収納穴36−1内に補助タンブラ35−1がある状態でも、外コントロールピン40−1に押圧された補助タンブラ35−1が内コントロールピン37−1を半径方向内方に押圧する。そのため、内コントロールピン37−1は、ばね39−1の付勢力に勝る力を加えないと動かず、内収納穴36−1内に補助タンブラがなくても内コントロールピン37−1ががたつかない。そのため、鍵穴21から内コントロールピン37−1に触れてみても、シリンダ錠が内収納穴36−1に補助タンブラを収納させた状態にあるか否かを読み取ることは困難である。他の内収納穴36−2…36−4についても同様である。よって、いずれの内収納穴36−1…36−4に補助タンブラが収納されているかが読み取られにくく、他の通常キーに対応する状態のシリンダ錠を施開錠可能な鍵(たとえば通常キーCK2や、内ピン25−1…25−4、31−1…31−4の外端をすべて内筒22の外周に揃えるマスターキー)が偽造されにくい。
また、このシリンダ錠は、内収納穴36−1に収納させることができる補助タンブラが2つあるので、万一、シリンダ錠が内収納穴36−1に補助タンブラを収納させている状態にあることを通常キーCK1の形状に基づいて読み取られた場合でも、その補助タンブラが補助タンブラ29−1、35−1のいずれであるかは分からない。他の内収納穴36−2…36−4についても同様である。そのため、いずれの補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4が収納されているかを読み取られにくく、他の通常キーに対応する状態のシリンダ錠を施開錠可能な鍵が偽造されにくい。よって、防犯上の安全性が高い。
また、このシリンダ錠は、回収キーを用いて補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4を回収することができるので、万一、シリンダ錠が内収納穴36−2、36−4に補助タンブラを収納させていない状態にあることを通常キーCK1の形状に基づいて読み取られた場合でも、その内収納穴36−2、36−4に対応する補助タンブラ29−2、29−4、35−2、35−4が回収キーにより回収されずに残っているか否かは分からない。また、シリンダ錠が内収納穴36−1、36−3に補助タンブラ35−1、29−3を収納させた状態にあることを通常キーCK1の形状に基づいて読み取られた場合でも、その内収納穴36−1、36−3に対応する残りの補助タンブラ29−1、35−3が回収されずに残っているか否かは分からない。そのため、いずれの補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4が内ピンと外ピンの間にあるかを読み取られにくく、防犯上の安全性が高い。
裏表を反対にして鍵穴21に差し込んでも施開錠可能な通常キーを使用する場合、図68に示すようにニュートラルキーNRに対応する押圧部44とニュートラルキーNLに対応する押圧部46の両方を1つの鍵に形成してなるニュートラルキーNRLを使用することができる。このニュートラルキーNRLは、上述のニュートラルキーNRとして使用して内収納穴36−3内の補助タンブラ29−3を復帰させ、その後、鍵の裏表を反対にして鍵穴21に差し込んで上述のニュートラルキーNLとして使用して内収納穴36−1内の補助タンブラ35−1を復帰させることができる。このようなニュートラルキーNRLを使用すると、ニュートラルキーの管理が容易となるのでより好ましい。
この実施形態のシリンダ錠を用いると、たとえば次のように1種類のシリンダ錠で多数の鍵違いを作り出すことができる。
まず、図69に示すように、補助タンブラ29−1…29−4、35−1…35−4をグループA(図では、黒色の補助タンブラ29−1、35−2、35−3、29−4)と、グループB(図では、白色の補助タンブラ35−1、29−2、29−3、35−4)に分ける。このときグループAは、各内収納穴36−1…36−4に対応する補助タンブラを1つずつ選択したグループとし、グループBは、その残りの補助タンブラのグループとすると、作り出せる鍵違い数がより多くなるので好ましい。
つぎに、図70に示すように、グループAから選択した補助タンブラを回収する複数種類の回収キーG1、G2、G3…GMを用意する。ここで回収キーG1、G2、G3…GMは、回収する補助タンブラの総数を同一とし、回収する補助タンブラの組み合わせが互いに異なる形状にする。
つづいて、回収キーG1で回収される補助タンブラ29−1、35−2に対応する内ピン25−1、31−2の外端を内筒22の外周に揃えるとともに、グループAの補助タンブラのうち回収キーG1で回収されない補助タンブラ35−3、29−4に対応する内ピン31−3、25−4を押し動かしてその補助タンブラ35−3、29−4の外端を内筒22の外周に揃える通常キーCK1、CK2、CK3…CKNを用意する。このとき通常キーCK1、CK2、CK3…CKNは、グループBから選択した補助タンブラを内収納穴に収納させるようにする。また通常キーCK1、CK2、CK3…CKNは、内収納穴に収納させる補助タンブラの総数を同一とし、収納させる補助タンブラの組み合わせが互いに異なる形状にする。
回収キーG2についても同様に通常キーCK(N+1)…CK2Nを用意し、残りの回収キーG3…GMについてもそれぞれ同様に通常キーを用意する。
このような回収キーと通常キーからなるキーシステムを用いると、回収キーG1、G2、G3…GMのいずれかでシリンダ錠から補助タンブラを回収した後に、その回収キーに対応する通常キーのいずれかを用いて補助タンブラを内収納穴に収納させることにより、その通常キー以外の通常キーによる施開錠を禁止することができる。
たとえば、回収キーG1で補助タンブラ29−1、35−2を回収した後に、通常キーCK1で補助タンブラ29−3、35−1を内収納穴に収納させると、回収キーG1以外の回収キーG2、G3…GMに対応する通常キーは、グループAの補助タンブラ29−1、35−2、35−3、29−4に対応する内ピン25−1、31−2、31−3、25−4と当接する部分の形状が通常キーCK1と異なるので施開錠することができず、回収キーG1に対応する通常キーCK1以外の通常キーCK2、CK3…CKNも、グループBの補助タンブラ35−1、29−2、29−3、35−4に対応する内ピン31−1、25−2、25−3、31−4と当接する部分の形状が通常キーCK1と異なるので施開錠することができない。
このようにして鍵違いを生じさせたシリンダ錠は、ニュートラルキーで補助タンブラを復帰させた後に、別の通常キーで補助タンブラを内収納穴に収納させることにより、施開錠可能な通常キーを別の通常キーに変更することができる。そのため、通常キーが紛失・盗難に遭っても、シリンダ錠を交換することなく安全を確保することができる。
たとえば、通常キーCK1が盗難に遭った場合、ニュートラルキーNR、NLを用いて補助タンブラ29−3、35−1を復帰させ、その後、図45に示す通常キーCK2を用いて補助タンブラ35−1、35−4を内収納穴36−1、36−4に収納させ、内ピン30−4と外ピン33−4の間に補助タンブラ35−4がない状態にすると(図71参照)、通常キーCK1を鍵穴に差し込んだときに外ピン33−4が内ピン穴30−4に落ち込むので施開錠することができなくなる(図72参照)。
ニュートラルキーNR、NLは、上記実施形態で示したように鍵穴21に差し込んだときに内ピン25−1…25−4、31−1…31−4を押し動かしてその外端をそれぞれ内筒22の外周に揃える形状とすると、他の通常キーを用いて補助タンブラ29−3、35−1以外の補助タンブラを内収納穴に収納させたときでも、その補助タンブラを復帰させることができるので便利であり好ましいが、補助タンブラ29−3、35−1以外の補助タンブラの外端を内筒22の外周に揃える形状としてもよい。復帰させる補助タンブラ29−3、35−1以外の補助タンブラの外端を内筒22の外周に揃えるニュートラルキーNR、NLを用いると、ニュートラルキーNR、NLが紛失・盗難に遭っても、補助タンブラ29−3、35−1以外の補助タンブラを内収納穴に収納させることで、そのニュートラルキーNR、NLによる施開錠を禁止することができる。そのため防犯上の安全性が高い。
また、ニュートラルキーNRは、復帰させようとする補助タンブラ29−3以外の補助タンブラ29−1、29−2、29−4に対応する内コントロールピン37−1、37−2、37−4の外端を内筒22の外周に揃えるとともに、内コントロールピン37−3を押し動かして内収納穴36−3内の補助タンブラ29−3の外端を内筒22の外周に揃える形状としてもよい。このようにすると、ニュートラルキーNRに押し動かされた内コントロールピン37−1、37−2、37−4が内収納穴36−1、36−2、36−4への補助タンブラの収納を阻止するとともに、内収納穴36−3内の補助タンブラ29−3が内収納穴36−3への補助タンブラの収納を阻止する。そのため、誤ってニュートラルキーNRを反時計回りに回転させたとしても、内収納穴36−1…36−4への補助タンブラの収納が生じず、通常キーCK1で施開錠できなくなるのを防止することができる。ニュートラルキーNLについても同様に、復帰させようとする補助タンブラ35−1以外の補助タンブラ35−2…35−4に対応する内コントロールピン37−2…37−4の外端を内筒22の外周に揃えるとともに、内コントロールピン37−1を押し動かして内収納穴36−1内の補助タンブラ35−1の外端を内筒22の外周に揃える形状としてもよい。
第2実施形態では、回収キーG1による回収操作の後に、通常キーCK1による収納操作を行なう例を示したが、この操作の順序は反対でもよい。また、回収キーG1による補助タンブラの回収は行なわずに、通常キーCK1による収納操作のみを行なうようにしてもよい。
第2実施形態の外コントロールピン40−1…40−4は、第1実施形態と同様、内端が内収納穴36−1…36−4の外端よりも大きくなるように形成して、外コントロールピン40−1…40−4が内収納穴36−1…36−4に落ち込まないようにしてもよい。このとき、外コントロールピン40−1…40−4を案内するガイド面41は不要である。また、図73に示すように、外収納穴38−1と外コントロールピン40−1に互いに係合する段部47−1、48−1をそれぞれ形成し、その段部の係合により外コントロールピン40−1が内収納穴36−1に落ち込まないようにしてもよい。他の外収納穴38−2…38−4と外コントロールピン40−2…40−4についても同様である。
回収キーによる補助タンブラの回収は、第1実施形態のシリンダ錠について行なってもよい。このようにすると、シリンダ錠が内収納穴12−4…12−6に補助タンブラ9−4…9−6を収納させていない状態にあることを通常キーK1の形状に基づいて読み取られた場合でも、その補助タンブラ9−4…9−6が回収キーにより回収されずに残っているか否かは分からない。そのため、いずれの補助タンブラ9−1…9−6が内ピン5−1…5−6と外ピン7−1…7−6の間にあるかを読み取られにくく、防犯上の安全性が高い。
図では、内ピン25−1…25−4、31−1…31−4の長さを全て同一としているが、第1実施形態の内ピン10−1…10−6と同様に数種類の長さのものを組み合わせると、鍵違い数が増えて安全性がより高くなる。
このシリンダ錠は、内筒22の回転によりドア等の開閉を禁止し、またその解除を行なう錠前機構に組み込むことができ、たとえば内筒22の回転によりドアの戸先側の端面からラッチボルトを出入りさせ、そのラッチボルトとドア枠の係合によりドアの開閉を禁止する機構に組み込むことができる。