JP4656754B2 - 管パラメーター推定方法、管材質の状態評価方法及び管の検査方法並びにこれらに用いられる管パラメーター推定装置 - Google Patents

管パラメーター推定方法、管材質の状態評価方法及び管の検査方法並びにこれらに用いられる管パラメーター推定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管パラメーター推定方法、管材質の状態評価方法及び管の検査方法並びにこれらに用いられる管パラメーター推定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、管やチューブ等の超音波非破壊計測では、これらを伝播するGuided wave(円筒波)を用いた計測が行われている。例えば、鋼管の広範囲欠陥検出や、熱交換器・ボイラー配管の欠陥計測が円筒波を利用して行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、管を伝播する円筒波と管との新たな相関を求めることにより、管パラメーター推定方法、管材質の状態評価方法及び管の検査方法並びにこれらに用いられる管パラメーター推定装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
円筒波の位相速度の解は、管の内外表面を自由境界とする波動方程式の境界値問題に帰着される。円筒波の解は、主に面外変位を有するLongitudinal(L−)modeとFlexural(F−)mode、及びねじり変位を主体とし面外変位の少ないTorsional(T−)modeに大別される。
L−mode、F−mode、及びT−modeはそれぞれ2つのモードパラメ―タnとmを用いて、L(0,m)、F(n,m)、T(n,m)(n、m=1、2、3、・・・、T−modeではn=0、1、2、3・・・)で記述される。特にL−modeは変位が円周方向で同一の軸対称モードである。図6に管肉厚tと管外径dとの肉厚外径比(t/d)が1/5のアルミニウム管(cl(自由固体中の縦波音速)=6400m/s、ct(自由固体中の横波音速)=3040m/s)を伝播する円筒波の位相速度分散曲線を示す。横軸は肉厚と周波数の積で正規化している。図6にはLamb波のA0、S0、A1も示すが、類似性が読み取れる。
【0005】
ここではt/dが変化した時の円筒波の特徴を示す。アルミニウム管で、t/dが1/2、1/3、1/5、1/10、1/16の場合のL(0、1)とL(0,2)の位相速度分散を図7(a)に、群速度分散を同図(b)に示す。t/d=1/2は中実丸棒を示す。また図7中には、大実線でLamb波のA0を、太点線でLamb波のS0の速度分散曲線を示した。位相・群速度ともにt/dが小さくなる程Lamb波に暫近する。
【0006】
t/d>1/5では、初動波はL(0、1)のDC成分となり、その群速度は中実丸棒における Bar velocity;vbar = ct((3cl 2 −4ct 2 )/(cl 2 −ct 2 ))1/2 に一致する。一方、t/d<1/5では、初動波群速度はL(0,2)に依存し、その値はt/dの関数で示される。つまりt/d<1/5のとき初動波の群速度を測定できれば、肉厚が推定可能であることが判明した。t/dが無限小では、群速度の最大値は Lamb波のS。のSheet velocity;vsheet =2ct(1−(ct 2 /cl 2 ))1/2に一致する。
【0007】
そして、発明者らの実験によれば、管の径及び管の肉厚の比(d/t)と管材における円筒波の初期到達速度(伝播速度)との間に図4に示すような相関の存在することが判明した。すなわち、ある条件に基づいて相関を求めれば、管の径dや肉厚tが異なっても、これら管の径、肉厚、伝播速度を求めることが可能となる。
【0008】
また、換言すれば、管の径及び管の肉厚の比(d/t)が大きくなるほど、伝播速度は速くなる。したがって、減肉箇所が存在すれば上記比は大きくなり、健全部のみの管よりも伝播速度が速くなるので、減肉欠陥を認識することが可能となる。
【0009】
上述の相関を利用して上記目的を達成するため、本発明に係る管パラメーター推定方法の特徴は、管の管径及び管の肉厚の比と円筒波の入射部から受信部に至る検査対象部分の管長を前記円筒波の送受信時間差で除して得られる管材における円筒波の初期到達速度(以下、「伝播速度」という)との間の相関をあらかじめ求め、前記管の肉厚、管径及び管材の伝播速度よりなる3つの管パラメーターのうち2種を測定し、前記相関により残りの管パラメーターを求めることにある。
【0010】
具体的には、前記入射部は前記管の一端側であり、前記受信部は前記一端側又は前記管の他端側であり、前記一端側から前記円筒波を入射し、同一端側又は前記他端側で前記円筒波を受信することにより前記伝播速度の測定を行う一方、上記管パラメーター推定方法を利用する管材質の状態評価方法の特徴は、あらかじめ前記管径及び前記肉厚の比について異なる状態毎に伝播速度を推定して前記管の劣化度と前記伝播速度との相関を求め、当該相関と上記方法による推定値とを比較して検査対象管における管材質の状態を評価することにある。
【0011】
また、本発明に係る管の検査方法の特徴は、管の一端側から円筒波を入射し、同一端側又はこの管の他端側で円筒波を受信することにより前記管の管材の伝播速度測定を行い、当該伝播速度を当該管における健全部の管径及び肉厚の比から求められる伝播速度と比較することにより、当該管の減肉程度を推定することにある。
【0012】
そして、上記方法のいずれかに用いられ、管の肉厚、管径及び管材の伝播速度よりなる管パラメーターを推定する管パラメーター推定装置の特徴構成は、管の管径、肉厚及び管材の伝播速度よりなる管パラメーターを推定する管パラメーター推定装置であって、前記管径及び前記肉厚の比と管材の伝播速度との間の相関を記憶する相関記憶手段と、前記3種の管パラメーターのうち2種を入力するパラメーター入力手段と、入力された前記2種の管パラメーター及び前記相関を比較することで残りの管パラメーターを求めるパラメーター決定手段とを備えていることにある。
【0013】
【発明の効果】
このように、上記本発明に係る管パラメーター推定方法、管材質の状態評価方法及び管の検査方法方法並びにこれらに用いられる管パラメーター推定装置の特徴によれば、ある寸法の管を利用してあらかじめ相関を求めることにより、同寸法または異なる寸法の管の寸法や伝播速度を求めることが可能となった。また、これにより、管材質の評価や管の欠陥を検出することも可能となった。さらに、配管プラント等の構築予定物を縮小したモデルを作成し、この縮小モデルを利用した実験に基づいて構築予定物の状態を予測したり、管の寸法変更等の設計を行うことも可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1、2に示すように、本発明に係る円筒波を励起・検出するための管パラメーター推定/測定装置1は、大略、パルスレーザー照射装置2,音響センサ3、パーソナルコンピューター5を備えてなる。パーソナルコンピューター5は照射トリガ11,時間差検出部12,相関記憶手段13,パラメーター決定手段14及び寸法入力部15を備え、各種マニュアル入力用のキーボード6及び厚み・長さ測定用のデジタルノギス7が接続されている。パーソナルコンピューター5による処理結果は、ディスプレイ8及びプリンタ9により表示される。
【0015】
パルスレーザー照射装置2は、Nd:YAGパルスレーザ―を管Sの端面に照射することにより円筒波を励起するものである。パルスレーザー照射装置2のパルスレーザーは照射トリガ11からの信号により管Sの端面に向かって発せられる。管Sを伝播する円筒波は音響センサ3により受信され、A/Dコンバーター4を介してデジタル変換されて時間差検出部12に取り込まれる。照射トリガ11による照射開始時刻と音響センサ3による受信時刻との時間差が時間差検出部12により検出され、Time of Flight法により、管Sの全長Zを前記時間差で除することで管材の伝播速度(初動波群速度)Vが求められる。
【0016】
本発明における管パラメーターとは、管Sの肉厚t、管径d及び管材の伝播速度Vの3つよりなる。伝播速度Vは上述の如く算出されパラメーター決定手段14に入力される。また、肉厚t及び管径dはデジタルノギス7により計測されて寸法入力部15を介しパラメーター決定手段14に入力される。各パラメーターはパルスレーザー照射装置2,音響センサ3,デジタルノギス7により自動入力される他、キーボード6を介してマニュアル入力しても構わない。すなわち、本発明では、パルスレーザー照射装置2,音響センサ3,デジタルノギス7やキーボード6がパラメーター決定手段14に管パラメーターを入力するパラメーター入力手段である。
【0017】
本実施例では、中心周波数500kHzの音響センサ3を管Sの他端面に取り付けている。そして、あらかじめ管径d及び肉厚tの比(d/t)と管材における円筒波の伝播速度Vとの関係を求めるにあたり、外径が6.0mmで、肉厚が1.0、0.5、0.25mm、長さ150mmの「外径一定」グループのAl製管Sを用いた。また、外径が4.0、5.0、8.0、12.0mmで、肉厚が1.0mm、長さ1000mmの「肉厚一定」グループのAl製管Sを用いた。
【0018】
図3に音響センサ3により受信される波形を示す。先の比の逆数である肉厚t及び管径dの比(肉厚外径比t/d)は、1/5のものと1/12のものとを用いた。初動波群速度Vは、肉厚外形比の小さい1/12のものの方が大きい(速い)ことが伺える。
【0019】
図4に上述の如き初動波群速度Vと管径d及び肉厚tの比(d/t)との相関を求めるための計測結果を示す。横軸はd/t、実線は理論解である。図中、丸印は「外径一定」を、四角印は「肉厚一定」グル―プの結果をそれぞれ示す。理論値と実験値の平均誤差は、「外径一定」と「肉厚一定」グループでそれぞれ0.45%、0.36%であった。「肉厚一定」グループでは、伝播距離Zが1000mmと長く、比較的測定誤差が小さかったが、両グループともに理論とよく一致し、管の径及び管の肉厚の比(d/t)と管材における円筒波の伝播速度Vとの間に相関の存在することが明らかとなった。
【0020】
上述のパーソナルコンピューター5における相関記憶手段13には、このような管の径及び管の肉厚の比(d/t)と伝播速度Vとの間の相関を記憶させてある。管パラメーター推定/測定装置1の使用に際しては、管の外径d、管の肉厚t及び管材の伝播速度Vよりなる3種の管パラメーターのうち2種を上述のパラメーター入力手段により入力する。すると、パラメーター決定手段14は入力された2種のパラメーター及び前記相関を比較することで残りの管パラメーターを求め、その結果がディスプレイ8又はプリンタ9により表示される。
【0021】
具体的には、伝播速度V及び管径dを入力すれば、管肉厚tが求まる。また、伝播速度V及び管肉厚tを入力すれば、管径dが求まる。さらに、管径d及び管肉厚tを入力すれば、伝播速度Vが求まる。
【0022】
ところで、伝播速度Vは管材質の劣化度によって異なるので、管径d及び管肉厚tを入力して求めた伝播速度Vの推定値と実際の測定値とを比較することで、材料の劣化度を評価することも可能である。また、管の材質の種類によって伝播速度Vは異なるので、管径d及び管肉厚tを入力し、管材質毎に求めた上述の相関と比較することで、管の材質を求めることも可能となる。
【0023】
最後に、本発明の他の実施形態を列挙する。なお、上記実施形態と同様の部材には同様の符号を付してある。
上記実施形態では、外径dが一律な管Sについて試験を行った。本発明は、図5(b)に示すように、管Sの一部に減肉部Aを有する場合について試験を行い、減肉部Aの程度を推定するに際しても適用可能である。上記パルスレーザー照射装置2の代わりに送信子2aを用い、さらに小径の管Sを対象としている。本検査方法によれば、図5(a)に比較して、図5(b)に示す管Sの方が減肉部Aを有する分だけ透過波の音速が速くなる。したがって、これら両者の比較により、減肉部Aの程度を減肉部A部分の直径dxと減肉部A部分の長さzxとの複合値として把握することが可能である。
【0024】
上記実施形態では、管径dとして管の外径を採用した。しかし、管径は管の内径を採用しても構わない。
上記実施形態では管の一端側から円筒波を入射し、この管の他端側で円筒波を受信した。しかし、円筒波の受信はこの円筒波を入射した同じ一端側から反射波として受信しても構わない。また、円筒波の入射・受信部は管の端面のみならず、管の側面であっても構わない。すなわち、請求項における円筒波を入射させ又は受信する管の「一端側」又は管の「他端側」とは、「管の端面」のみならず、例えば長尺管の中間部における「管の側面」であっても構わない。
【0025】
上述の管材の伝播速度(V)は円筒波の入射部から受信部に至る検査対象部分の管長を円筒波の送受信時間差で除して得られるものである。したがって、請求項における「管材の伝播速度(V)」は、管の材質が一定とみなせる場合、「検査対象部分の管長」として把握することも可能である。
【0026】
なお、特許請求の範囲の項に記入した符号は、あくまでも図面との対照を便利にするためのものにすぎず、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる管パラメーター推定方法を実施する装置の概略を示すブロック図である。
【図2】 本発明にかかる管パラメーター推定方法を実施するための管及び音響センサの関係を示す斜視図である。
【図3】 管を伝播し音響センサにより受信された円筒波の受信波形を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は受信強度を表すものである。
【図4】 管の径及び管の肉厚の比と管材における円筒波の伝播速度(初期到達速度)との関係を示すグラフであって、横軸は上記比、縦軸は初期到達速度をそれぞれ示す。
【図5】 図2の改変例を示し、(a)は健全管を使用した場合、(b)は減肉部を有する管を使用した場合をそれぞれ示す。
【図6】 周波数及び管肉厚の積(横軸)と位相速度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図7】 肉厚外径比(t/d)を変化させた場合の位相速度及び群速度の変化を示し、(a)は周波数(横軸)と位相速度(縦軸)との関係を示すグラフ、(b)は周波数(横軸)と群速度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:管パラメーター推定/測定装置,2:パルスレーザー照射装置、2a:送信子、3:音響センサ、4:A/Dコンバーター、5:パーソナルコンピューター、6:キーボード、7:デジタルノギス、8:ディスプレイ、9:プリンタ、11:照射トリガ、12:時間差検出部、13:相関記憶手段、14:パラメーター決定手段、15:寸法入力部、S:管、A:減肉部

Claims (5)

  1. 管の管径及び管の肉厚の比と円筒波の入射部から受信部に至る検査対象部分の管長を前記円筒波の送受信時間差で除して得られる管材における円筒波の初期到達速度(以下、「伝播速度」という)との間の相関をあらかじめ求め、前記管の肉厚、管径及び管材の伝播速度よりなる3つの管パラメーターのうち2種を測定し、前記相関により残りの管パラメーターを求める管パラメーター推定方法。
  2. 前記入射部は前記管の一端側であり、前記受信部は前記一端側又は前記管の他端側であり、前記一端側から前記円筒波を入射し、同一端側又は前記他端側で前記円筒波を受信することにより前記伝播速度の測定を行う請求項1記載の管パラメーター推定方法。
  3. 請求項1又は2記載の管パラメーター推定方法を利用する管材質の状態評価方法であって、あらかじめ前記管径及び前記肉厚の比について異なる状態毎に伝播速度を推定して前記管の劣化度と前記伝播速度との相関を求め、当該相関と請求項1又は2記載の方法による推定値とを比較して検査対象管における管材質の状態を評価する管材質の状態評価方法。
  4. 管の一端側から円筒波を入射し、同一端側又はこの管の他端側で円筒波を受信することにより前記管の管材の伝播速度測定を行い、当該伝播速度を当該管における健全部の管径及び肉厚の比から求められる伝播速度と比較することにより、当該管の減肉程度を推定する管の検査方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法に用いられ、管の管径、肉厚及び管材の伝播速度よりなる管パラメーターを推定する管パラメーター推定装置であって、前記管径及び前記肉厚の比と管材の伝播速度との間の相関を記憶する相関記憶手段と、前記3種の管パラメーターのうち2種を入力するパラメーター入力手段と、入力された前記2種の管パラメーター及び前記相関を比較することで残りの管パラメーターを求めるパラメーター決定手段とを備えている管パラメーター推定装置。
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