JP4653039B2 - 高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(a)Cr:0.5%以下(0%を含まない)
(b)Mo:0.2%以下(0%を含まない)
(c)V,Nb,Zr,HfおよびTaよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない)
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、特に、フェライトと残留γを生成させるために含有する。しかしC量が0.02%未満では、フェライトが多く生成して所定量の残留γが生成しないため、均一伸びを高めることができない。従ってCは0.02%以上、好ましくは0.03%以上である。一方、C量が0.20%を超えると、フェライトの生成が少なくなり、均一伸びが低下する。また、フェライト分率が低くなり、母材の靭性が劣化する。従ってCは0.20%以下であり、好ましくは0.17%以下、より好ましくは0.15%以下、更に好ましくは0.12%以下である。
Siは、500〜300℃の温度域で保持したときに、γからセメンタイトへの分解を抑制し、所定量の残留γと残留γ中のC量を確保するのに重要な元素である。またSiは、固溶強化により母材の引張強度を高める元素である。しかしSi量が0.2%未満では、γの分解を充分に抑制することができず、均一伸びを高めるのに有用な残留γを充分に生成させることができない。従ってSiは0.2%以上であり、好ましくは0.25%以上、より好ましくは0.30%以上である。一方、Siが0.5%を超えても残留γは生成するが、Siを過剰に含有すると、生成した残留γ中のC量が多くなり過ぎるため、均一伸びが低下する。また、フェライトが脆化して母材靭性が劣化する。従ってSiは0.5%以下である。
Mnは、500〜300℃の温度域で保持したときに、残留γの分解を抑制すると共に、残留γ中のCの濃化作用を有する元素である。またMnは、焼入れ性を高める元素であり、強度を確保するためにも重要な元素である。しかしMn量が1%未満では、強度不足になると共に、残留γ中に濃化するC量が少なくなり、均一伸びを充分に高めることができない。従ってMnは1%以上であり、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.3%以上、更に好ましくは1.4%以上である。一方、Mn量が1.8%を超えると、焼入れ性が良くなり過ぎてフェライトが生成し難く、強度が高くなり過ぎる。また、フェライト分率が低くなると、均一伸びも悪くなる。従ってMnは1.8%以下、好ましくは1.6%以下である。
CuおよびNiは、SiおよびMnと同様に、500〜300℃の温度域で保持したときに、γが分解してセメンタイトを形成するのを抑制し、残留γを生成させるのに作用する元素である。またCuとNiは、残留γ中にCを濃化させて均一伸びを高める元素である。また、本発明においてCuとNiは、Siの代替元素としての作用も有している。前述したように、Siの多量添加は母材靭性の低下を招き溶接性に悪影響をもたらすが、本発明によればSiと同様の作用を有するCuおよび/またはNiを添加することで、Si量を低減しても所望とする残留γを確保でき、均一伸びを充分高められる。CuやNiを含有させても、母材靭性は損なわれない。
Cr,Mo,V,Nb,Zr,HfおよびTaは、いずれも鋼中に炭化物を形成する元素であり、析出強化により強度を高めるのに有効に作用する。しかし炭化物が生成し過ぎると残留γが生成するのを阻害するため却って本発明の効果に悪影響を及ぼす。
Alは、γが分解してセメンタイトを形成するのを抑制し、所定量の残留γを生成させるのに作用する元素である。しかしAl量が1%を超えると、固溶Alが増加してフェライトが脆化し、均一伸びが低下する。従ってAlは1%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。上記作用を発揮させるには、0.02%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.025%以上である。
本実施例では、(a)フェライト分率、(b)残留γ分率、(c)残留γ中のC量は、厚鋼板の板厚1/4部位で測定した。但し、組織の観察部位はこれに限定されず、例えば、板厚1/2部位でも板厚1/4部位と同じ組織が生成していることを確認している。
厚鋼板の板厚1/4部位を鏡面研磨した試験片を、3%ナイタール溶液でエッチング(腐食)した後、光学顕微鏡を用いて400倍で10視野の写真を撮影した。個々の写真について白い等軸状の領域をフェライト、その他の領域を第二相としてトレースし、これを画像解析ソフト(micromedia製「Image−pro」)で解析してフェライトの面積率を測定し、10視野の平均値を算出した。このフェライト面積率をフェライト分率とした。
フェライト面積率=[トレースした線で囲まれたフェライトの面積/(観察視野の面積−トレースした線の総面積)]×100
厚鋼板の板厚1/4部位を鏡面研磨した試験片をX線回折し、リーベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求めて、残留γ分率を求めた。X線回折装置は、理学電気製の「RAD−RU300」を使用し、ターゲットはCo、ターゲット出力は40kV,200mAとした。
厚鋼板の板厚1/4部位を鏡面研磨した試験片に、標準物質としてSiを塗布し、Siと残留γ(γR)のピーク位置を決定し、これらのピークを用いて、D.J.Dyson et al., Journal of The Iron and Steel Institute,(1970),p469〜474に記載されている手順に基づいて、γRの格子定数a0を測定した。使用したピークは、(111),(200),(220),(311)である。
CγR=(a0−3.578−0.00095×[Mn]+0.0002×[Ni]−0.0006×[Cr]−0.022×[N]−0.0056×[Al]+0.0004×[Co]−0.0015×[Cu]−0.0031×[Mo]−0.0051×[Nb]−0.0039×[Ti]−0.0018×[V]−0.0018×[W])/0.033
(a)引張試験
厚鋼板の板厚1/4部位からJIS Z2201で規定されている14号試験片(平行部径は10mm)を用い、JIS Z2241で規定されている「金属材料引張試験方法」に基づいて降伏点(YP)、引張強度(TS)、均一伸び(UE)を測定した。引張試験時の試験速度は0.5mm/秒とした。TSが490MPa以上、590MPa未満の場合を合格、UEが18.0%以上の場合を合格とした。UEとは最高荷重点における伸びを意味する。また、残留γ中のC量と均一伸びの関係を図2に示す。
厚鋼板の板厚1/4部位からJIS Z2202で規定されているVノッチ試験片を用い、JIS Z2242で規定されている「金属材料衝撃試験方法」に基づいてシャルピー衝撃試験を行うことにより−40℃での吸収エネルギー(vE-40)を測定した。vE-40が100J以上の場合を合格とした。
Claims (4)
- C :0.02〜0.20%(質量%の意味。以下化学成分について同じ)、
Si:0.2〜0.5%、
Mn:1〜1.8%、
Cuおよび/またはNi:合計で0.2〜1%を含有し、
残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、
フェライト分率 :80体積%以上、
残留オーステナイト分率:1体積%以上で、且つ
前記残留オーステナイト中のC量が0.80〜1.10質量%であることを特徴とする高張力厚鋼板。 - 更に他の元素として、下記(a)〜(c)のうち少なくとも1種を含有する請求項1に記載の高張力厚鋼板。
(a)Cr:0.5%以下(0%を含まない)
(b)Mo:0.2%以下(0%を含まない)
(c)V,Nb,Zr,HfおよびTaよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない) - 更に他の元素として、Al:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の高張力厚鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の高張力厚鋼板を製造するに当たり、
80体積%以上のフェライトと1体積%以上の残留オーステナイトを生成させる第一の工程と、
前記残留オーステナイト中のC量を0.80〜1.10質量%の範囲内に制御する第二の工程とを含み、
前記第二の工程は、
500〜300℃の間の任意の温度範囲を1℃/秒以下の平均冷却速度で50〜3600秒間徐冷するか、または
500〜300℃の間の任意の温度で50〜3600秒間保持することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
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