JP4652239B2 - 遠心力成形コンクリート管の製造方法 - Google Patents

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本発明は、遠心力成形コンクリート管の製造方法に関する。
パイル、ポール、ライニング管、及びヒューム管等のコンクリート製品は、遠心力成形によって製造されている。
遠心力成形してコンクリート製品を製造する工程で、コンクリート中の水は遠心力によって脱水され、管の内側に、セメントや細骨材等の微粉末と水の混合物(以下、スラッジという)が発生する。
このスラッジは、強アルカリ性であるため、公害防止の面から、そのまま工場外に排出することができず、多くの時間と費用を掛けて、固形分処理や排水中和処理等を行っているのが現状である。
また、コンクリートを遠心力成形すると、コンクリートは遠心力で硬く締まり、コンクリートの内側には、コンクリートから脱水された水の層が形成され、遠心力成形を止めると、このコンクリートの内面に張り付いている水が落下して底部に溜まり、スラッジが発生する。そして、例えば、ヒューム管等の製造において、スラッジ排出後に内面仕上げする場合、セメントを粉体又はスラリーとして投入し、仕上げ棒で凹凸が無くなるように均し、最後に刷毛で仕上げる方法が実施されている。この仕上げ作業はヒューム管等を回転しながら行うため、危険が伴い、熟練が必要である。
しかしながら、このような、熟練が必要な作業ができる作業員を育てるには、時間を必要とするものであり、そのため、遠心力成形コンクリート製品工場では熟練作業員が不足し、人員確保に苦慮しているのが現状である。
この改善策としてスラッジの発生量を低減する方法が挙げられる。
例えば、凝結促進剤と非(陰)イオン界面活性剤とにより、遠心力成形で生ずるスラッジ中の固形分をコンクリート内面に凝結させ、スラッジから水を分離し、コンクリート内面のコテ仕上げを容易にし、かつ、平滑にする方法(特許文献1参照)、アルカリ性で水溶性となるカルボキシル基を有する高分子を、酸性の水溶液中に微粒子状に分散させた液を、遠心力成形中のセメント製品の仕上げ層に添加する方法(特許文献2参照)、スラッジの発生を低減又は防止する遠心力成形方法により遠心力成形した後、遠心力成形体内面に形成された柔らかいペースト又はモルタル層の表面に、遠心力成形体を回転させながら、急硬性成分のスラリーや吸水性物質を投入して硬化させ、平均厚さ0.2〜10mmのライニング層を形成する内面仕上げ方法(特許文献3〜特許文献5参照)、及び遠心力成形品のパイプの内面に速硬性セメントミルクを投入し、パイプを回転させて遠心力により速硬性セメントミルクをパイプ内面に付着、硬化させることにより内面を仕上げる方法(特許文献6参照)等が知られている。
しかしながら、これらコテ仕上げやライニング層の形成などの内面仕上げによって形成される内層には、管の仕上げの容易さの他に外圧強度(曲げ強度)の確保が求められている。
特開昭56−160358号公報 特開平04−077376号公報 特開平11−207725号公報 特開昭61−268406号公報 特開昭62−257811号公報 特開平03−187711号公報
本発明者は、遠心力成形コンクリート管の製造方法において、特定の遠心力成形仕上げ材を使用することによって、外圧強度(曲げ強度)を増加することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、遠心力成形コンクリート管の製造方法において、遠心力成形コンクリート管の外層を遠心力成形し、その後、セメントと、カルシウムアルミネートと、石膏類と、凝結調節剤と、セメント、カルシウムアルミネート、及び石膏類からなる結合材100部に対して50〜300部の細骨材とを含有してなる遠心力成形仕上げ材を用いて、内層を遠心力成形する遠心力成形コンクリート管の製造方法であり、内層の厚みが、2mmから管厚の30%である該遠心力成形コンクリート管の製造方法であり、内層を遠心力成形する遠心力成形条件が、重力加速度G2.5で回転後、G20〜40で5〜15分間締め固めることである該遠心力成形コンクリート管の製造方法であり、該遠心力成形コンクリート管の製造方法で製造された遠心力成形コンクリート管である。
本発明の遠心力成形コンクリート管の製造方法を用いることによって、管の仕上げが容易になり、外圧強度を増加させることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
本発明で使用するセメントは特に限定されるものではなく、通常のセメントが使用可能である。具体的には、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、ポルトランドセメントに、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
本発明で使用するカルシウムアルミネート(以下、CAという)は、CaOとAl2O3を主成分とする化合物を総称するものであり、その具体例としては、例えば、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、11CaO・7Al2O3・CaF2、及び3CaO・3Al2O3・CaF2などと表される結晶性のカルシウムアルミネートや、CaOとAl2O3成分を主成分とする非晶質の化合物が挙げられ、強度発現性の面から、非晶質が好ましい。
CAの粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では初期強度発現性が充分でない場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
CAの使用量は、セメント、CA、及び石膏類からなる結合材100部中、1.5〜20部が好ましく、3〜15部がより好ましい。1.5部未満では仕上げ時間が長くなり、製造効率が悪くなる場合があり、20部を超えると内側の硬化が速くなり、遠心力成形体内面に波が生じる場合がある。
本発明で使用する石膏類としては、無水、半水、又は二水の各石膏が挙げられ、強度発現性の面から、無水石膏又は半水石膏が好ましく、無水石膏がより好ましい。
石膏類の粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では寸法安定性が悪くなる場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性の確保が困難になる場合がある。
石膏類の使用量は、結合材100部中、1〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましい。1部未満では内側の硬化が速くなり、遠心力成形体内面に波が生じる場合があり、20部を超えると仕上げ時間が長くなり、スラッジが多くなる場合がある。
本発明で使用する凝結調節剤は特に限定されるものではなく、その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及びコハク酸等のカルボン酸又はそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、及びアルミニウムなどの塩の有機酸、さらに、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのアルカリ金属炭酸塩、炭酸アンモニウム、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、並びに、重炭酸アンモニウムなどの炭酸塩類が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能であり、本発明では、充分な可使時間と初期強度発現性の双方を満足する面から、有機酸とアルカリ炭酸塩の併用が好ましい。
凝結調節剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部に対して、0.2〜3.0部が好ましく、0.5〜2.5部がより好ましい。0.2部未満では可使時間の確保が困難な場合があり、3.0部を超えると強度発現性が悪くなる場合がある。
本発明の遠心力成形用仕上げ材に使用する細骨材としては、通常のモルタル又はコンクリートに使用できるものが挙げられ、その使用量は、結合材100部に対して、50〜300部が好ましく、100〜200部がより好ましい。50部未満では仕上げ時間が長くなり、製造効率が悪くなる場合があり、300部を超えると流動性が悪くなり、遠心力成形体内面に波が生じる場合がある。
本発明では、遠心力成形用仕上げ材に、セメント、CA、石膏類、凝結調節剤、及び細骨材の他、減水剤を使用することも可能である。
本発明の遠心力成形用仕上げ材の練り水は、モルタル又はコンクリートに通常使用可能なものや遠心力成形時に発生するスラッジ中のものが使用可能である。
練り水の使用量は、結合材100部に対して、30〜50部が好ましく、40〜45部がより好ましい。30部未満では遠心力成形用仕上げ材の流動性が悪くなり遠心力成形時の延びを悪くする場合があり、50部を超えると外圧強度が低下する場合がある。
遠心力成形仕上げ材で形成する内層厚は、2mmから管厚の30%が好ましく、3mm〜管厚の30%がより好ましい。2mm未満では外圧強度が上がらない場合があり、管厚の30%を超えても外圧強度ののびは期待できない。
本発明の遠心力成形コンクリート管は、まず、通常の遠心力成形方法で外層を成形し、次いで、遠心力成形仕上げ材を、例えば、低速G2.5程度で投入し、投入した遠心力成形仕上げ材を延ばし、G20〜40で5〜15分締め固めることが好ましく、7〜15分締め固めることがより好ましい。締め固める時間が5分未満では外圧が上がらない場合があり、15分超えても外圧強度はあまり変わらない場合がある。ここで、Gは重力加速度を示す。
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例1
各材料の単位量、セメントは450kg/m3、水は170kg/m3、細骨材Aは612kg/m3、粗骨材は1,145kg/m3、及び減水剤は2.7kg/m3で、スランプ8cm、s/a35%、及びW/C37.8%のコンクリート配合を用い、容量50リットルの遊星型強制練りミキサで3分間練混ぜ、30リットル分のコンクリートを作製した。測定したフロー値を表1に併記する。
作製したコンクリートを、直径20cm×長さ30cm×厚さ4cmの遠心力成形用型枠に投入し、遠心力の低速G2.5で5分、中速G10で2分、高速G30で5分の三段階の遠心力成形条件で成形した。
その後、表1に示すセメントとCA、石膏類10部、細骨材B150部、並びに、セメント、CA、及び石膏類からなる結合材100部に対して、凝結調節剤0.7部からなる遠心力成形仕上げ材と、結合材100部に対して水45部から調製したモルタルを、低速G2.5で、内層厚が6mmになるように投入し、低速G2.5で1分、高速G30で10分で遠心力成形コンクリート管を製造した。
養生は、前置き5時間、昇温20℃/時間、65℃×5時間保持で、以後自然降温とした。
なお、比較として、セメント100部、細骨材B150部、及び水45部を混合してプレーンモルタルを調製し、同様に成形した。
モルタルの硬化時間と、成形した遠心力成形コンクリート管の曲げ強度(外圧強度)を測定し、プレーンモルタルの外圧強度から外圧強度比を算出した。結果を表1に併記する。なお、試験は温度20℃で実施した。
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、電気化学工業社製、比重3.15
細骨材A :新潟県姫川水系産天然砂、比重2.62
細骨材B :珪砂、N40 20部、N50 40部、及びN60 40部の混合品
粗骨材 :新潟県姫川水系産砕石、骨材寸法5〜20mm、比重2.64
減水剤 :ナフタレン系減水剤、市販品
CA :12CaO・7Al2O3組成の非晶質、ブレーン値5,800cm2/g
石膏類 :無水石膏、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
凝結調節剤:試薬1級のクエン酸35部と試薬1級の炭酸カリウム65部の混合物
水 :水道水
<測定方法>
スランプ :JIS A 1101に準じて測定
フロー値 :JIS R 5202に準じて測定
硬化時間 :180ccの容器にモルタルを入れ、そこに熱電対を挿入し水和熱を測定し、その温度が練り上がり温度より4℃昇温した時点を硬化と判断
外圧強度比:外圧強度試験、製管した直径20×長さ30cm×厚さ4.6cmの試験体を、材齢14日にマルイ製作所社製商品名「HI-TRITRON(3000KN)圧縮試験機」を使用し、管軸方向に対して直角に上下から載荷して測定、プレーンモルタルの外圧強度から外圧強度比を算出
Figure 0004652239
実験例2
表2に示すセメントと石膏類と、CA10部とを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 0004652239
実験例3
結合材100部に対して表3に示す凝結調節剤、セメント80部、及びCA10部を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
Figure 0004652239
実験例4
表4に示す細骨材B、セメント80部、及びCA10部を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
Figure 0004652239
実験例5
セメント80部とCA10部を使用し、内層を表5に示す厚にしたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
Figure 0004652239
実験例6
セメント80部とCA10部を使用し、表6に示す内層の遠心力成形条件を採用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
Figure 0004652239
本発明の遠心力成形用仕上げ材は、曲げ強度を増加させることができ、遠心力成形コンクリート管に幅広く適用できる。

Claims (4)

  1. 遠心力成形コンクリート管の製造方法において、遠心力成形コンクリート管の外層を遠心力成形し、その後、セメントと、カルシウムアルミネートと、石膏類と、凝結調節剤と、セメント、カルシウムアルミネート、及び石膏類からなる結合材100部に対して50〜300部の細骨材とを含有してなる遠心力成形仕上げ材を用いて、内層を遠心力成形する遠心力成形コンクリート管の製造方法。
  2. 内層の厚みが、2mmから管厚の30%である請求項1に記載の遠心力成形コンクリート管の製造方法。
  3. 内層を遠心力成形する遠心力成形条件が、重力加速度G2.5で回転後、G20〜40で5〜15分間締め固めることである請求項1又は請求項2に記載の遠心力成形コンクリート管の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の遠心力成形コンクリート管の製造方法で製造された遠心力成形コンクリート管。
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